JP2012216276A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラス基板の主表面に対して遊離砥粒を含む研磨液を供給しつつ研磨パッドを摺接させて研磨する工程を備える。研磨パッドの表面には、ガラス基板の主表面と摺接する摺接部と、摺接部間に形成される溝とを設ける。そして、研磨パッドの表面の1平方メートル当たりに形成されている摺接部のエッジの長さの合計を200m以上とし、かつ、研磨パッドの表面の全領域に対する摺接部の領域の面積比率である充填率を80%以上とする。
【選択図】図1
Description
研磨剤として酸化セリウム砥粒を用いる方法によれば、磁気ディスク用ガラス基板の主表面に残留したキズや歪みを高い研磨レートで除去でき、磁気ディスク用ガラス基板の主表面における良好な表面凹凸のレベルを効率良く達成することができる。
そして発明者は、上述した課題に鑑み鋭意研究した結果、溝付きの研磨パッドでガラス表面を研磨する場合には、ガラス表面に対する研磨パッドの摺接面によるガラス表面の研磨(摺接面による研磨)が行われるのみならず、研磨パッドに形成されている摺接部のエッジもガラス表面の研磨に寄与し(エッジによる研磨)、溝付きの研磨パッドの溝形状を適切に設定することで、研磨パッドのガラス表面に与える物理的研磨作用を向上させる余地があることを見出した。
また、酸化セリウムのような化学的研磨作用が強い研磨剤を使用する場合であっても、研磨パッドのガラス表面に与える物理的研磨作用を向上させることで、さらに研磨レートを向上させることができる。
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。さらに、アモルファスのガラスを用いると、表面粗さをさらに低減できるので特に好ましい。
以下、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について、工程毎に説明する。ただし、各工程の順番は適宜入れ替えてもよい。
例えばフロート法による板状ガラスの成形工程では先ず、錫などの溶融金属の満たされた浴槽内に、例えば上述した組成の溶融ガラスを連続的に流し入れることで板状ガラスを得る。溶融ガラスは厳密な温度操作が施された浴槽内で進行方向に沿って流れ、最終的に所望の厚さ、幅に調整された板状ガラスが形成される。この板状ガラスから、磁気ディスク用ガラス基板の元となる所定形状の板状ガラス素材が切り出される。浴槽内の溶融錫の表面は水平であるために、フロート法により得られる板状ガラス素材は、その表面の平坦度が十分に高いものとなる。
また、例えばプレス成形法よる板状ガラスの成形工程では、受けゴブ形成型である下型上に、溶融ガラスからなるガラスゴブが供給され、下型と対向ゴブ形成型である上型を使用してガラスゴブがプレス成形される。より具体的には、下型上に溶融ガラスからなるガラスゴブを供給した後に上型用胴型の下面と下型用胴型の上面を当接させ、上型と上型用胴型との摺動面および下型と下型用胴型との摺動面を超えて外側に肉薄板状ガラス成形空間を形成し、さらに上型を下降してプレス成形を行い、プレス成形直後に上型を上昇する。これにより、磁気ディスク用ガラス基板の元となる板状ガラス素材が成形される。
なお、板状ガラス素材は、上述した方法に限らず、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法などの公知の製造方法を用いて製造することができる。
円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、円板状ガラス素材の中心部に内孔を形成し、円環状のガラス基板とする。
コアリング工程の後、端部(外周端面及び内周端面)に面取り面を形成するチャンファリング工程が行われる。チャンファリング工程では、円環状のガラス基板の外周端部及び内周端部に対して、例えば、ダイヤモンド砥粒を用いたメタルボンド砥石等によって面取りが施される。
次に、ガラス基板の端面研磨(エッジポリッシング)が行われる。
端面研磨では、ガラス基板の内周端面及び外周端面をブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含むスラリーが用いられる。端面研磨を行うことにより、ガラス基板の端面での塵等が付着した汚染、ダメージあるいはキズ等の損傷の除去を行うことにより、サーマルアスペリティの発生の防止や、ナトリウムやカリウム等のコロージョンの原因となるイオン析出の発生を防止することができる。
固定砥粒による研削工程では、両面研削装置を用いてガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。研削による取り代は、例えば数μm〜100μm程度である。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作することにより、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることで、このガラス基板の両主表面を研削することができる。
次に、研削されたガラス基板の主表面に第1研磨が施される。第1研磨による取り代は、例えば数μm〜50μm程度である。第1研磨は、固定砥粒による研削により主表面に残留したキズ、歪みの除去、主表面のマイクロウェービネスおよび粗さの調整を目的とする。
[研磨装置]
第1研磨工程で使用される研磨装置について、図1を参照して説明する。図1は、第1研磨工程で使用される研磨装置(両面研磨装置)の概略断面図である。なお、この研磨装置と同様の構成は、上述した研削工程に使用される研削装置においても適用できる。
研磨装置において、下定盤60の上面および上定盤50の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド10が取り付けられている。太陽歯車61、外縁に設けられた内歯車62および円板状のキャリア30は全体として、中心軸CTRを中心とする遊星歯車機構を構成する。円板状のキャリア30は、内周側で太陽歯車61に噛合し、かつ外周側で内歯車62に噛合するともに、ガラス基板G(ワーク)を1または複数を収容し保持する。下定盤60上では、キャリア30が遊星歯車として自転しながら公転し、ガラス基板Gと下定盤60とが相対的に移動させられる。例えば、太陽歯車61がCCW(反時計回り)の方向に回転すれば、キャリア30はCW(時計回り)の方向に回転し、内歯車62はCCWの方向に回転する。その結果、研磨パッド10とガラス基板Gの間に相対運動が生じる。同様にして、ガラス基板Gと上定盤50とを相対的に移動させてよい。
なお、この研磨装置では、ガラス基板Gに対する所望の研磨負荷を設定する目的で、ガラス基板Gに与えられる上定盤50の荷重が調整されることが好ましい。研磨荷重は、例えば100〜200[g/cm2]の範囲内に設定することができるが、特に130[g/cm2]以上とするとモータ負荷の低減効果が顕著に得られるためより好ましい。
本実施形態の研磨液に含有させる研磨剤は、例えば、酸化セリウム砥粒、あるいはジルコニア砥粒である。チタニア砥粒やコロイダルシリカ砥粒を用いることもできるが、好ましくは酸化セリウム砥粒とジルコニア砥粒である。
なお、本実施形態では、特にジルコニア砥粒を用いることが有効であり、それは以下の理由による。すなわち、一般にジルコニアは酸化セリウム砥粒よりも硬く割れ難いため、ジルコニア砥粒を含むスラリーを用いて遊星歯車機構を動作させるときには、モータにより大きな負荷が掛かる。ここで、後述するように、本実施形態の研磨パッドを用いることで研磨装置のモータの負荷が小さくなるため、ジルコニア砥粒を使用した場合であっても、モータに掛かる負荷を従来よりも低減できるようになる。
また、ジルコニア砥粒を含むスラリーを循環させて使用する(再使用する)場合には、ジルコニア粒子のハードケーキ化の進行によって、研磨中に徐々に研磨レートが低下し、スクラッチが増加するため、分散剤及びハードケーキ化防止剤(再凝集防止剤)を含む添加物をスラリーに含ませることが好ましいが、これらの添加物によってスラリーの粘度が増大し、同じ研磨荷重・回転数の条件下では、モータへの負荷が増大する。また、研磨の進行に伴うガラススラッジの増加によってもモータへの負荷が増大する。よって、ジルコニア砥粒と添加物を含むスラリーを循環させて使用する場合には、モータへの負荷を低減させる観点から、本実施形態の研磨パッドが有効となる。
なお、上記分散剤として、リン酸塩、スルホン酸塩、ポリカルボン酸及びポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む第1添加剤が0.01〜5重量%含まれることが好ましい。リン酸塩、スルホン酸塩、ポリカルボン酸及びポリカルボン酸塩の中では、分散剤としての効果に加え、ハードケーキ化防止効果をより高めることができる点で、ポリカルボン酸が好ましい。
上記再凝集防止剤として、第2添加剤が0.01〜5重量%含まれることが好ましい。再凝集防止剤の種類を特に限定するものではないが、例えばセルロース(微結晶)、カルボキシメチルセルロース、マルトース、フルクトースなどの糖類や繊維から適宜選択されてよい。
次に、研磨パッド10の表面のパターンについて、図2〜4を参照して説明する。図2〜4はそれぞれ、実施形態に係る研磨パッド10が採りうる様々な溝パターン(平面視)を例示する図である。なお、図1に示した研磨パッド10は、図2に示した溝パターンを例示したものである。
(要件1)研磨パッド10の表面の1平方メートル当たりに形成されている溝12のエッジの長さの合計が200m以上となること。
(要件2)研磨パッド10の表面の全領域に対する摺接部11の領域の面積比率である充填率が80%以上であること。
発明者の研究によって、溝付きの研磨パッドでガラス基板の表面を研磨する場合のガラス基板に与える物理的研磨作用には、ガラス表面に対する研磨パッドの摺接面によるガラス表面の研磨(摺接面による研磨)のみならず、研磨パッドに形成されている溝のエッジによるガラス表面の研磨(エッジによる研磨)も寄与することが分かった。
さらに、溝によって研磨パッドに形成されるエッジの長さの合計値が大きいということは、研磨パッドの単位面積当たりにおいてより多くの溝が形成されることを意味しており、エッジの長さの合計値が小さい場合よりも、ガラス基板との摺接部の面積(摺接面積)が小さくなることを意味する。そのため、研磨パッドの摺接面とガラス基板の表面と間の摩擦による負荷が相対的に小さくなり、研磨装置のモータの負荷が小さくなる。その結果、エッジの長さの合計値が小さい場合(つまり、溝が少なく形成されガラス基板との摺接面積が大きい場合)と比較して、同一の条件(例えば、上下定盤の荷重、定盤の回転数など)の下では、より少ないモータの電流で研磨装置を稼動させることができる。言い換えれば、モータに流れる電流の上限値に近い一定の電流で研磨装置を稼動させる場合には、エッジの長さの合計値が大きい方が相対的に高い荷重および/または高い回転数で研磨装置を稼動させることができるため、ガラス基板に対する研磨レートを向上させることができるようになる。エッジ(摺接面のエッジ)による研磨の方が摺接面による研磨よりもモータ負荷を低減できる理由については必ずしも明確ではないが、エッジの方が近傍にスラリーが多く存在するため、研磨剤の転がりにより抵抗が低くなるためと推察される。また、エッジの近傍にスラリーが多く存在することによって、研磨レートが高くなっている可能性も考えられる。
以上の知見の下、発明者が、様々な溝パターンの研磨パッドによる研磨レートを測定した結果、研磨パッドの表面の1平方メートル当たりに形成されている溝のエッジの長さの合計を200m以上とすれば、良好な研磨レートが得られることが確認された(要件1)。
以上の知見の下、研磨パッドの表面の全領域に対する摺接部の領域の面積比率を充填率と定義し、発明者が、様々な大きさの充填率の研磨パッドについて、研磨後のガラス基板の端部のだれの悪化の発生有無を観察した結果、充填率を80%以上にすると、ガラス基板の端部のだれが悪化しないことが確認された(要件2)。
研磨パッド10において、それぞれ要件1および要件2に記載した、1平方メートル当たりに形成されている溝のエッジの長さおよび充填率を変更するための設計上のパラメータは、図2〜4の各図に示した溝幅Wと隣接する溝間のピッチPである。この溝幅Wは、研磨液の排出能力や溝形成時の加工条件等の制約によって、その最小値が定まっている場合があるため、ここでは、溝幅Wは一定であるとする。例えば、溝幅Wは1.5mmとする。このとき、図2に示すように、ピッチPを一辺とする正方形パターンによって摺接部を形成したときには、上記要件1および要件2を共に充足するピッチPを決定できない場合が生じうる。つまり、ピッチPを短くした場合には、研磨パッド10の表面の単位面積当たりの溝の数が多くなって充填率が要件2を充足せず、逆にピッチPを長くした場合には、研磨パッド10の表面の単位面積当たりの溝の数が少なくなって溝のエッジ長が要件1を充足しないことが想定される。
また、溝深さについては、0.5〜2.0mm程度とすることができるが、より好ましくは、1〜1.5mmである。0.5mmよりも浅いと前述のとおりスラリーの流れを妨げられ、2.0mmよりも深いと摺接部の剛性が低下して端部形状が悪化してしまうため好ましくない。
図4は、図3と同様に、研磨パッド10の個々の摺接部を三角形にしたものであるが、形状としてはハニカム形状を6分割することで個々の三角形の摺接部を形成した点で図3と異なる。図4の溝パターンによっても、ピッチPを長くした場合であっても溝の十分なエッジ長を確保することができるようになる。
また、摺接部を、研磨パッド10の表面において複数の三角形の領域から構成することで、四角形の領域から構成するよりもモータの負荷を減らすことができる。これは、四角形では全ての溝の交点が4叉であるのに対して、三角形では6叉または8叉の溝交点が発生するため、スラリーが溝の交点を通って動きやすくなるためであると考えられる。これにより、以下の利点がある。すなわち、研磨加工時にさらなる高荷重・高回転が可能となるため、研磨レートを高くすることが可能となる。摺動がスムーズになるためガラス基板の端部形状も良好になり、それによってプロセス設計の自由度が増すメリットがある。また、研磨加工時の負荷が減ると研磨装置からのモータによる発熱が少なくなるため、研磨終了後のガラス基板を次工程へ移載する際に基板が乾きにくくなる。その結果、遊離砥粒などのスラリーの成分が主表面上に残りにくくなるため、基板の表面品質が向上する。また、研磨装置の故障も少なくなる。
また、図3に示したように、摺接部を構成する領域の形状である三角形は直角二等辺三角形であることが好ましい。これにより、摺接部に形成される溝の交点を4叉と8叉とすることができる。他方、正三角形の場合(図4)は、全ての溝の交点が6叉となる。直角二等辺三角形の場合には8叉の交点が存在することによって、スラリーの動きが格段によくなるため、研磨装置のモータ負荷をより低減することができる。
主表面の粗さは、JIS B0601:2001により規定される算術平均粗さRaで表され、0.006μm以上200μm以下の場合は、例えば、ミツトヨ社製粗さ測定機SV−3100で測定し、JIS B0633:2001で規定される方法で算出できる。その結果、粗さが0.03μm以下であった場合は、例えば、日本Veeco社製走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡;AFM)ナノスコープで計測しJIS R1683:2007で規定される方法で算出できる。本願においては、1μm×1μm角の測定エリアにおいて、512×512ピクセルの解像度で測定したときの算術平均粗さRaを用いることができる。
次に、第1研磨後の円環状のガラス基板は化学強化される。
化学強化液として、例えば硝酸カリウム(60重量%)と硫酸ナトリウム(40重量%)の混合液等を用いることができる。化学強化では、化学強化液が、例えば300℃〜400℃に加熱され、洗浄したガラス基板が、例えば200℃〜300℃に予熱された後、ガラス基板が化学強化液中に、例えば3時間〜4時間浸漬される。
ガラス基板を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化液中のイオン半径が相対的に大きいナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。なお、化学強化処理されたガラス基板は洗浄される。例えば、硫酸で洗浄された後に、純水等で洗浄される。
次に、化学強化されて十分に洗浄されたガラス基板に第2研磨が施される。第2研磨による取り代は、例えば1μm程度である。第2研磨は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨では例えば、第1研磨で用いた研磨装置を用いる。このとき、第1研磨と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。
第2研磨に用いる遊離砥粒として、例えば、スラリーに混濁させたコロイダルシリカ等の微粒子(粒子サイズ:直径10〜50nm程度)が用いられる。
研磨されたガラス基板を中性洗剤、純水、IPA等を用いて洗浄することで、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
第2研磨工程を実施することは必ずしも必須ではないが、ガラス基板の主表面の表面凹凸のレベルをさらに良好なものとすることができる点で実施することが好ましい。第2研磨工程を実施することで、主表面の算術平均粗さ(Ra)を0.1nm以下かつ前記主表面のマイクロウェービネス(MW-Rq)を0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下とすることができる。
磁気ディスクは、磁気ディスク用ガラス基板を用いて以下のようにして得られる。
磁気ディスクは、例えば磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に、主表面に近いほうから順に、少なくとも付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層が積層された構成になっている。
例えば基板を真空引きを行った成膜装置内に導入し、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、基板主表面上に付着層から磁性層まで順次成膜する。付着層としては例えばCrTi、下地層としては例えばCrRuを用いることができる。磁性層としては、例えばCoPt系合金を用いることができる。また、L10規則構造のCoPt系合金やFePt系合金を形成して熱アシスト磁気記録用の磁性層とすることもできる。上記成膜後、例えばCVD法によりC2H4を用いて保護層を成膜し、続いて表面に窒素を導入する窒化処理を行うことにより、磁気記録媒体を形成することができる。その後、例えばPFPE(パーフルオロポリエーテル)をディップコート法により保護層上に塗布することにより、潤滑層を形成することができる。
以下の組成のガラスが得られるように原料を秤量し、混合して調合原料とした。この原料を熔融容器に投入して加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製した。得られたガラス中には泡や未熔解物、結晶の析出、熔融容器を構成する耐火物や白金の混入物は認められなかった。
[ガラスの組成]
酸化物基準に換算し、モル%表示で、SiO2を50〜75%、Al2O3を1〜15%、Li2O、Na2O及びK2Oから選択される少なくとも1種の成分を合計で5〜35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜20%、ならびにZrO2、TiO2、La2O3、Y2O3、Ta2O5、Nb2O5及びHfO2から選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜10%、有する組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラス
清澄、均質化した上記熔融ガラスをパイプから一定流量で流出するとともにプレス成形用の下型で受け、下型上に所定量の熔融ガラス塊が得られるよう流出した熔融ガラスを切断刃で切断した。そして熔融ガラス塊を載せた下型をパイプ下方から直ちに搬出し、下型と対向する上型および胴型を用いて、薄肉円盤状にプレス成形した。プレス成形品を変形しない温度にまで冷却した後、型から取り出してアニールする。その後、プレス成形により得られた板状ガラス素材に対して、ラッピング加工を行った。ラッピング加工では、遊離砥粒としてアルミナ砥粒(#1000の粒度)を用いた。
円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、円盤状ガラス素材の中心部に内孔を形成し、円環状のガラス基板とした(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(チャンファリング)。
次に、円環状のガラス基板の端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、パーティクル等の発塵を防止できる鏡面状態に加工された。
図1に示した研磨装置にガラス基板をセットし、以下に示す従来例、比較例および実施例に係る研磨剤および研磨パッドを使用して研磨を行い、研磨性能および端部のだれについて評価を行った(表1参照)。なお、スラリーは循環させず、掛け流しで使用した。
なお表1において、研磨剤を「CeO2」としている研磨液は、研磨剤として平均粒子径1μmの酸化セリウム(CeO2)砥粒を13重量%、純水ろ過水(RO水)もしくは純水に混入し十分に攪拌して生成した。
また、研磨剤を「ZrO2」としている研磨液は、研磨剤として平均粒径は0.8〜1.4μmのジルコニア(ZrO2)を13重量%、純水ろ過水(RO水)もしくは純水に混入し十分に攪拌して生成した。なお、平均粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さいほうから計算して50%となる粒径を意味している。
CeO2を研磨剤とした研磨液を用い、摺接部の基本形状が正方形(図2参照)である研磨パッドによってガラス基板の研磨を行った。研磨装置の定盤の回転数は35rpm、ガラス基板への荷重は500Kgfにセットして行った。研磨後、EDTA(1vol%)、純水、IPAを順次用いて洗浄および乾燥を実施した。
・比較例
ZrO2を研磨剤とした研磨液を用い、摺接部の基本形状が三角形(図3参照)である研磨パッドによってガラス基板の研磨を行った。研磨装置の定盤の回転数は35rpm、ガラス基板への荷重は500Kgfにセットして行った。研磨後、従来例と同様の洗浄および乾燥を実施した。
・実施例
ZrO2を研磨剤とした研磨液を用い、摺接部の基本形状が三角形(図3参照)である研磨パッドによってガラス基板の研磨を行った。研磨装置の定盤の回転数は35rpm、ガラス基板への荷重は500Kgfにセットして行った。研磨後、従来例と同様の洗浄および乾燥を実施した。
・アスカー硬度(°):90
・密度(g/cm3):0.7
・ポア径 (μm):90
・研磨レート:
3.0μm/min以上を「○○」、3.0μm/min未満から1.5μm/min以上を「○」、1.5μm/min未満から1.2μm/min以上を「△」、1.2μm/min未満を「×」とした(単位:μm/min)。△、○、○○が合格である。
・端部のだれの有無(程度):
非接触3D微細表面形状・粗さ測定装置(Phase Shift社製、MicroXAM)を用いて主表面上の周縁部における端部形状(Dub-off)の評価を実施し、ダブオフ値(Dub-off)を測定した。このときダブオフ値について、35nm以上を「×」、35nm未満から30nm以上を「△」、30nm未満を「○」とした。△、○が合格である。
なお、ここでの「端部のだれ」とは、主表面の周縁部以外の平坦部分に対する隆起形状(スキージャンプ形状)や沈降形状(ロールオフ形状)の両方を含む。
また、ダブオフ値の算出方法は、以下のとおりである。図5は、ダブオフ値の算出方法を概念的に説明するために、ガラス基板の端部の断面を拡大して表した図である。ダブオフ値を算出するためには、ガラス基板の中心点と、その中心点から外縁に向けて30mm離れた主表面上の位置(X1とする。)と、その中心点から外縁に向けて31.5mm離れた主表面上の位置(X2とする。)とが、図5に示すように定義される(外径65mmのガラス基板の場合)。なお、ガラス基板の中心点とX1とX2は、ガラス基板を上から見たときには同一線上にある。このとき、X1とX2を結ぶ基準線Lに対して主表面が突出している場合には、ガラス基板の端部はロールオフ形状(図5の(a)の場合)であり、その最大突出量をダブオフ値D(プラス値)とする。逆に、X1とX2を結ぶ基準線に対して主表面が凹んでいる場合には、ガラス基板の端部はスキージャンプ形状(図5の(b)の場合)であり、その最大凹み量をダブオフ値D(マイナス値)とする。上述したように、ダブオフ値の測定には上述したMicroXAMを用いた。
1枚の円環状のガラス基板に対するダブオフ値の算出は以下のようにして行う。一方の面について90度間隔で4点(X1とX2について4個の組合せ)のダブオフ値を算出し、得られた4個のダブオフ値のうち絶対値が最も大きい値をその面のダブオフ値(プラス値またはマイナス値である)とする。同様にして、他方の面についてもダブオフ値を算出する。
表1の比較例1に示すように、従来例と同一の研磨パッドを用いて研磨剤をZrO2とした場合には、ZrO2による化学的研磨作用がCeO2に対して劣るために、研磨レートが低下することが分かる。
表1の比較例2〜5に示すように、上記要件1および要件2を充足しない範囲で研磨パッドの形状を変更しても、良好な研磨レートおよび端部のだれが無いことが両立しないことが分かる。
表1の実施例1〜4に示すように、上記要件1および要件2を充足する範囲で研磨パッドの場合には、その形状、ピッチ、溝幅の如何に関わらず、良好な研磨レートおよび端部のだれが無いことが両立することが分かる。
実施例1、実施例4、比較例3の研磨パッドを用いて第1研磨を10バッチ連続加工し、10バッチ目に得られたガラス基板に対して、上述の化学強化工程、第2研磨工程、洗浄・乾燥を順に行い、磁気ディスク用ガラス基板を作製した。さらにガラス基板に成膜して磁気ディスクとし、DFHヘッドを用いてDFH素子部の突き出し試験を実施した。
作製した上記磁気ディスクに対し、クボタコンプス社製HDFテスタ(Head/Disk Flyability Tester)を用いて、DFHヘッド素子部の突き出し試験を行った。この試験は、DFH機構によって素子部を徐々に突き出していき、AEセンサーによって磁気ディスク表面との接触を検知することによって、素子部が磁気ディスク表面と接触するまでの距離を評価するものである。突き出し量が大きいものほど磁気的スペーシングが低減するため高記録密度化に適しており、磁気信号の正確な記録・再生が可能である。
なお、ヘッドは、320GB/P磁気ディスク(2.5インチサイズ)向けのDFHヘッドを用いた。素子部の突き出しがないときのヘッド本体の浮上量は10nmである。また、その他の条件は以下のとおり設定した。
評価半径:22mm
磁気ディスクの回転数:5400rpm
温度:25℃
湿度:60%
ヘッドの突き出し量によって以下の4段階で評価した。突き出し量5.0nm以上が合格である。
○○:8.0nm以上
○:7.0nm以上8.0nm未満
△:5.0nm以上7.0nm未満
×:5.0nm未満
11…摺接部
12…溝
30…キャリア
31…歯部
32…孔部
50…上定盤
60…下定盤
61…太陽歯車
62…内歯車
Claims (11)
- ガラス基板の主表面に対して遊離砥粒を含む研磨液を供給しつつ研磨パッドを摺接させて研磨する工程を備えた磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記研磨パッドの表面には、ガラス基板の主表面と摺接する摺接部と、摺接部間に形成される溝とが設けられており、
研磨パッドの表面の1平方メートル当たりに形成されている摺接部のエッジの長さの合計が200m以上であって、かつ、研磨パッドの表面の全領域に対する摺接部の領域の面積比率である充填率が80%以上であることを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 前記研磨パッドの摺接部は、研磨パッドの表面において、同一形状の複数の三角形の領域からなることを特徴とする、請求項1に記載された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記研磨パッドの摺接面は、発泡性ウレタン樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記発泡性ウレタン樹脂の発泡ポアの開口径が30〜200μmであることを特徴とする、請求項3に記載された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記研磨する工程は、前記研磨パッドを取り付けた上定盤および下定盤を有する遊星歯車機構を用い、上定盤と下定盤の間にガラス基板を狭持させ、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることでガラス基板の主表面を研磨することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記遊離砥粒はジルコニア砥粒であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記磁気ディスク用ガラス基板は、DFHヘッドを用いて記録される磁気ディスクの製造に用いられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- ガラス基板の主表面に対して遊離砥粒を含む研磨液を供給しつつ研磨パッドを摺接させて研磨する工程を備えた磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記研磨パッドの表面には、ガラス基板の主表面と摺接する摺接部と、摺接部間に形成される溝とが設けられており、
前記摺接部は、前記研磨パッドの表面において、複数の三角形の領域からなることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 同一形状の四角形または六角形の領域の各辺上とその対角線上に溝が形成され、それによって複数の三角形の領域から形成された摺接部を有する研磨パッドでガラス基板を研磨することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記三角形の領域は直角二等辺三角形の領域であることを特徴とする、請求項2、8又は9のいずれかに記載された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 磁気ディスク用ガラス基板のガラス基板の主表面に摺接させて当該主表面を研磨するための研磨パッドであって、
前記研磨パッドの表面には、ガラス基板の主表面と摺接する摺接部と、摺接部間に形成される溝とが設けられており、
研磨パッドの表面の1平方メートル当たりに形成されている摺接部のエッジの長さの合計が200m以上であって、かつ、研磨パッドの表面の全領域に対する摺接部の領域の面積比率である充填率が80%以上であることを特徴とする、研磨パッド。
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