JP2010029996A - 研磨パッド - Google Patents

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恵寛 成瀬
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憲一 田畑
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Abstract

【課題】極細繊維を用いても、半導体ウエーハ等の被研磨物が研磨パッドに貼り付かずに、鏡面加工することが可能な新規研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッドは、数平均直径が1〜1000nmである単繊維を含む繊維基材からなり、その繊維基材を構成する糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率が15%以下の研磨パッドであり、バインダーを含有している。また、表面が研磨層で構成されてなる研磨パッドにおいて、その研磨層が数平均直径1〜1000nmの単繊維を含む繊維基材からなり、その研磨層の表層部にすくなくとも1つの溝を有し、その研磨層の表面全体に占める溝の面積比率が5〜60%である研磨パッド。
【選択図】図3

Description

本発明は、研磨パッドに関し、更に詳しくは、シリコンを始めとした各種半導体ウエーハを鏡面加工するための研磨パッドに関するものである。
従来、シリコンウエーハを始めとする半導体ウエーハの鏡面研磨は、研磨パッドを回転可能な下定盤に貼り付け、研磨対象物である半導体ウエーハを上定盤側に保持して、研磨スラリーを供給しながら、半導体ウエーハと研磨パッドを加圧した状態で、半導体ウエーハと研磨パッドを互いに相対的に摺動させることにより行われてきた。すなわち、シリコンなどの半導体ウエーハの鏡面研磨では、スラリーを常に研磨パッド面に供給しながら比較的長時間(10分間〜60分間程度)研磨が行なわれ、半導体ウエーハを取り替えながら同じ研磨パッドで次々と複数枚の半導体ウエーハを研磨していくプロセスである。ここで、従来の研磨パッドとしては、例えば平均繊維径が10μm以上の単繊維を用いた不織布にポリウレタン(以下、PUと称することがある。)を含浸したPU含浸不織布パッドや、硬質の発泡ポリウレタン樹脂を板状にした樹脂パッドなどが用いられてきた(特許文献1および2参照。)。また、このような従来の研磨パッドの研磨レートを向上させたり、研磨後の加工物の表面形状を良くするために、研磨スラリーの循環や排出、および研磨屑の排出や凝集砥粒の排出をさせるための溝を設けた研磨パッドも知られている(特許文献3参照。)
一方、繊維シートをテープ状にカットした研磨テープが、ハードディスクのテクスチャー加工に用いられている。これは、微細な研磨砥粒を極細繊維で把持し、ハードディスク表面を平均表面粗さが0.5nm以下に平滑化するものである(特許文献4参照。)。より詳しくは、ハードディスクのテクスチャー加工では、研磨直前に極細繊維の研磨布テープ上に、ダイヤモンドのスラリーをごく少量供給し、比較的短時間(通常30秒間〜1分間程度)研磨テープをハードディスクに押し付けて研磨が行われ、研磨後には研磨布テープを送り出して、新しい研磨テープ面で次のハードディスクを研磨していくプロセスである。そして、微細砥粒を均一担持し、さらにハードディスク表面の平滑化を進めるために、この研磨テープに用いられる繊維は極細化が進められ、最近では単繊維径が100nm程度のものが用いられる例もある。
一方、半導体ウエーハのさらなる平滑化を狙い、より微細な砥粒が使用される傾向があるが、研磨パッドにおいても極細繊維を利用し、これに対応していくことが考えられる。しかしながら、本発明者らの検討によると、単繊維径を細くし過ぎると、半導体ウエーハなどの加工物が研磨パッドに貼り付き、研磨効率が極端に低下し、ひどい場合には研磨不能となるという致命的欠点があることがわかった。この傾向は、繊維径1000nm以下程度から発現し始め、繊維径が細くなるほど顕著となり、単繊維径が280nm以下ではほぼ研磨不能となった。これは、研磨パッド中の極細繊維束がスラリーを吸水することにより膨潤し、さらに半導体ウエーハと研磨パッドが湿潤状態で摩擦されることにより極細繊維束が単繊維まで開繊して平滑化してしまうために、研磨パッド中の極細繊維間にスラリーが多量に保持され、水の表面張力により半導体ウエーハが研磨パッドに貼り付くと考えられた。このように、単純にハードディスクのテクスチャー加工の知見を半導体ウエーハなどで用いられる研磨パッドに適用できるものではなく、極細繊維を研磨パッドに適用するためには、新たなブレークスルーが必要であった。
特開2001−198797号公報 特開2001−277101号公報 特開2004−188584号公報 特開2005−329534号公報
そこで本発明の目的は、極細繊維を用いても、半導体ウエーハ等の被研磨体が研磨パッドに貼り付かずに鏡面加工することが可能な新規研磨パッドを提供することにある。
本発明は、上述の目的を達成せんとするものであり、本発明の研磨パッドは、数平均直径が1〜1000nmである単繊維を含む繊維基材からなり、前記の繊維基材を構成する糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率が15%以下であることを特徴とする研磨パッドである。
また、本発明は、上述の目的を達成せんとするものであり、本発明の研磨パッドは、表面が研磨層で構成されてなる研磨パッドにおいて、該研磨層が数平均直径1〜1000nmの単繊維を含む繊維基材からなり、その研磨層の表層部に少なくとも1つ以上の溝を有し、研磨層の表面全体に占める溝の面積比率が5〜60%であることを特徴とする研磨パッドである。
本発明の研磨パッドの好ましい態様によれば、前記の湿潤摩擦後の目開きは40μm以上であり、そして、前記の湿潤摩擦後の目開き変化率は20%以下である。
本発明の研磨パッドの好ましい態様によれば、前記の溝の幅(A)は0.5〜5mmであり、前記の溝と隣り合う溝との間隔(B)が3〜15mmであり、そして、前記の溝の深さ(C)は溝の幅(A)の10〜90%である。
本発明の研磨パッドの好ましい態様によれば、前記の単繊維の数平均直径が1〜1000nmである熱可塑性繊維を含む研磨層の表層を部分的に熱溶融してその表層に凹部をつくることにより溝が形成されてなる研磨パッドの製造方法である。
また、本発明の研磨パッドの製造方法は、数平均直径が1〜1000nmである単繊維を含む繊維基材に、エマルジョン径が250nm以下の水系ポリウレタンを含浸し、前記の繊維基材を構成する単繊維同士を固定することを特徴とする研磨パッドの製造方法である。
本発明の研磨パッドによれば、極細繊維からなる糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率を15%以下とすることにより、研磨時の単繊維の開繊を抑制し、半導体ウエーハなどの被研磨体加工物と研磨層を構成する極細繊維との接触面積を小さくできるために、研磨パッドへの加工物の貼り付きを防止して長時間研磨することが可能である。
また、本発明によれば、研磨パッドの研磨層の表層部に少なくとも1つの溝を構成し、研磨層の表面全体に占める溝の面積比率を5〜60%にすることにより、半導体ウエーハ等の研磨対象物に直接接触する研磨層の面積が小さくなり、研磨層に含まれる極細繊維が湿潤時の摩擦によって開繊したとしても、研磨パッドに半導体ウエーハなどの研磨対象物が貼り付くことなく、長時間研磨することが可能な研磨パッドを提供することができる。
以下、さらに詳しく本発明の研磨パッドについて説明をする。
まず、本発明の研磨パッドは、数平均直径が1〜1000nmである単繊維を含む繊維基材からなり、その繊維基材を構成する糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率が15%以下のものである。
また、本発明の研磨パッドのもう1つの態様としては、数平均直径が1〜1000nmである単繊維を含む繊維基材の研磨層からなり、その研磨層の表層部に少なくとも1つの溝を有し、研磨層の表面全体に占める溝の面積比率を5〜60%としたものである。
ここで、本発明の研磨パッドの繊維基材を構成する単繊維は、その数平均直径が1〜1000nmであることが重要である。ここで単繊維の数平均直径は、次のようにして求められる。すなわち、単繊維を少なくとも一部に有する研磨パッドの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した30本以上の単繊維の直径を測定するものであるが、これを3カ所以上で行い、少なくとも合計90本以上の単繊維の直径を測定して、これを単純平均することによって単繊維の数平均直径を求めることができる。
本発明のように、単繊維の数平均直径が1nm以上1000nm以下(1μm以下)の極細繊維を研磨パッドに用いると、その表層部が極細繊維で構成された表面となる。そのため、単繊維の数平均直径が10μm以上の繊維が使用されている従来のPU樹脂含浸不織布や樹脂パッドとは異なり、微細な砥粒を含むスラリーをより均一に保持することができ、研磨時のスクラッチを抑制することができる。この意味から、単繊維の数平均直径は細い方が好ましく、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは280nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。また、あまりにも単繊維の数平均直径が小さいと、単繊維が負担できる力に限界があるため、研磨パッド表面の耐久性に問題が発生する可能性がある。また、あまりに細い繊維は、製造時の歩留まり低下やコストアップし易いという問題もある。そのため、単繊維の数平均直径の下限としては、1nm以上とすることが重要であり、好ましくは50nm以上である。
また、形態的にはその単繊維がバラバラに分散していなければ良く、単繊維が部分的に結合しているもの、あるいは複数の単繊維が凝集した集合体(例えば、束状のもの)であるものなどいずれの形態であっても好ましいが、その繊維長や断面形状などは適宜選択することができる。
さらに、本発明では、糸状繊維集合体は長繊維形状および/または紡績糸形状となっていることが好ましい。ここで、長繊維形状および/または紡績糸形状とは、次の状態を言うものである。すなわち、マルチフィラメントや紡績糸のように、複数の単繊維が1次元に配向した集合体が有限の長さで連続している状態を言うものである。
本発明において、繊維基材中の極細繊維が占める割合は少なくとも60%以上である。極細繊維の占める割合が60%以上であることで、微細な砥粒を研磨層に均一に把持できるために、半導体ウエーハ等の被研磨体を研磨した際に平滑性に優れた表面を得ることができる。ここで繊維基材中の極細繊維の占める割合は次のようにして求める。すなわち、SEMにより1視野中に1μm以下の直径の単繊維が少なくとも30本以上観察できる倍率で観察し、その視野内で確認できる1μm以下の極細繊維と1μmを超える他の繊維の本数をそれぞれ数える。それを繊維基材中の異なる3視野で行い、3視野で観察された全ての極細繊維と他の繊維の本数から本数比率を求め、それを繊維基材中の極細繊維が占める比率とした。半導体ウエーハ等の被研磨体を研磨した際の表面平滑性を向上させるためには繊維基材中の極細繊維の占める割合はより好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
本発明の単繊維を構成するポリマーとしては、より細い繊維を製造しやすいという観点からは、溶融紡糸可能なポリマーである熱可塑性ポリマーであることが好ましい。ここで言う熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと呼ぶことがある。)、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと呼ぶことがある。)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと呼ぶことがある。)およびポリ乳酸(以下、PLAと呼ぶことがある。)などのポリエステルや、ナイロン6(以下、N6と呼ぶことがある。)やナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン46(N46)、ナイロン56(N56)などのポリアミド、ポリエチレン(以下、PEと呼ぶことがある。)やポリプロピレン(以下、PPと呼ぶことがある。)、ポリメチルペンテン(PMP)などのポリオレフィン、さらにはさらにはポリエーテルエステルや熱可塑性PUなどのエラストマー、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと呼ぶことがある。)等が挙げられる。
また、熱可塑性ポリマーからなる繊維(熱可塑性繊維)を用いることで、後述する研磨パッドの製造方法において、研磨層の表層を部分的に熱溶融してその表層に凹部をつくることで溝を形成することができる。
本発明において、単繊維がポリアミド繊維である場合、ポリマーの親水性が高いために、研磨パッドとしたときに水系のスラリーとの馴染みが良い。また、シリコンウエーハの研磨時には通常アルカリ性のスラリーを使用するために、アルカリに対する耐性があり、パッドが長寿命化するという利点がある。さらにポリアミドはしなやかであり耐摩耗性が良いことから、パッドの長寿命化の観点から好ましい。ポリアミドの中では汎用性を考えるとN6、N66、N12が好ましい。
また、単繊維がポリエステル繊維の場合は、ポリアミド繊維に比べて湿潤時の強力保持率や寸法安定性に優れるために、単繊維の破断や擦過による研磨パッドからの単繊維の脱落が起こりにくいため、研磨パッドとしての耐久性が高まる。ポリエステルの中でも汎用性の観点からはPETが好ましく、耐アルカリやしなやかさの観点からはPTT、PBTが好ましい。
また、化合物半導体ウエーハの研磨やCMPの場合には、研磨スラリーのアルカリ性や酸性を強くしたり、有機溶剤や油成分および酸化剤などの各種添加剤を混合する場合、耐薬品性の観点からは、ポリオレフィン繊維やPPS繊維が好ましく用いられる。汎用性の観点からはPPが好ましい。また、先にポリアミドの長所としてしなやかさと耐摩耗性を挙げたが、この観点からさらに好ましいのがエラストマーであり、特にポリエーテルエステルは熱可塑性PUよりも製糸、製編織が容易でありより好ましい。ポリエーテルエステルとしてはポリテトラメチレングリコールやポリトリメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオールから成るソフトセグメントとテレフタル酸とブチレングリコールから成るハードセグメントから成る物が一般的である。ただし、ポリエチレングリコールをポリオールとして用いると繊維の吸水性が高くなりすぎ寸法安定性が低下するので注意が必要である。また、ソフトセグメントとしてはなるべく耐薬品性の良い、エーテル系やカーボネート系のものを選択することが研磨パッドの耐久性の観点から好ましい。以上挙げたポリマーの中でも、性能と汎用性のバランスを考慮すると、PET、N6、N66、N12、PPが特に好ましいポリマーである。
本発明の研磨パッドの研磨層に用いられる繊維基材としては、織物、編物および不織布などの繊維基材を好適に用いることができる。
本発明において、研磨層が織物の場合、織組織を変更するという織物設計によって研磨パッドの表面の凹凸を自由に設計することが可能であり、研磨層の表面粗さを所望の範囲内に制御することが容易となる。また、研磨層を織物にすることにより、経糸や緯糸の密度をそれぞれ変更することが可能であり、研磨スラリーの循環および排出の役割を持つ研磨層の目開きの大きさを自由に設計することが可能である。また、織物の経糸や緯糸のそれぞれに仮撚りや撚糸などの糸加工をすることが可能であり、研磨層の厚みを制御することも容易となる。さらに、研磨層を織物とすることにより経糸と緯糸のそれぞれにポリマー種の異なる繊維を組み合わせることが可能となり、研磨層の親水性や疎水性などの化学的性質を自由に制御することが可能となる。
ここで、織物の種類としては、平織や綾織や朱子織などの織組織の織物を代表例として挙げることができる。
例えば、平織組織とした場合、織物の経緯の糸の拘束点が他の織組織の織物に比べて多くなるために、研磨パッドの耐久性が向上する。平織りとしては縮緬、金巾、ブロード、ローン、ギンガム、羽二重、タフタ、ポプリン、モスリン、オックスフォード、クレープ、デシン、ボイル、トロピカル、ポーラ、ファイユ、シフォン、ジョーゼット、オーガンジーなどを例示することができ、これらの中から本発明の構成を満足する織物を選択すればよい。
また、朱子織組織の織物の場合には、組織点が平織組織や綾織組織のように規則的に連続せず、経糸または緯糸のみが表面に多く表れるため、織物としては表面がなめらかであり、すなわち研磨パッドの表面平滑性が向上する。
さらに、綾織組織の織物の場合には、平織組織と朱子織組織の中間のような織組織となるため、耐久性と表面平滑性のバランスが取れた研磨パッドとすることができる。綾織としてはギャバジン、デニム、サージ、バーバリなどを例示することができる。また、畝織、斜子織、杉綾、アムンゼンなどの変化織りを用いることもできる。さらに別途、コーデュロイなどのパイル組織、二重組織、紗や絽などの絡み組織、紋織組織などを用いることもできる。
本発明の研磨パッドにおいて、研磨層に用いられる繊維基材としては、編物も好適に用いることができ、緯編や経編などを用いることができる。研磨層を編物とすることで、編組織を変更するという編物設計によって研磨パッドの表面の凹凸を自由に設計することが可能であり、研磨層の表面粗さを所望の範囲内に制御することが容易となる。また、編物にすることで、編ゲージの変更によってループ密度を変更することが可能であり、スラリーの循環および排出の役割を持つ研磨層の目開きの大きさを自由に設計することが可能である。また、編物を作製する糸に仮撚りや撚糸などの糸加工をすることで、研磨層の厚みを制御することができる。さらに編物の利点としては、織物などに比べて伸縮性を有するため、研磨パッド作製時に支持体と積層する場合にも編物が伸びてシワなく貼り込むことが容易となる。
緯編には基本組織として天竺、ゴム編、パール編などが、変化組織としてタック編、ウエルト編、レース編、スムース、添毛編、ピケ、ミラノリブ、ポンチローマなどがある。目開きを強調したり、方向性を与える点からは経編を用いることが好ましい。また、経編は緯編に比べ糸が切れてもほつれが続きにくい(伝線しにくい)とか伸縮性が小さいため形態安定性に優れ支持体と積層する際に目開き変化が少ないというメリットもある。経編には、一重経編、二重経編、その他組織があるが、ほつれに対する耐性を考えると二重経編およびその他組織を用いることが好ましい。二重編みとしてはダブルデンビー編、ダブルアトラス編、ダブルコード編、トリコット(ハーフ、逆ハーフ)、クイーンズコード編、ダブルラッセル編などがある。中でもトリコット(特に逆ハーフ)やクイーンズコード編は伸びが少なく形態安定性に優れるため好ましい。
さらに、本発明において、研磨層に用いられる繊維基材としては、不織布を好適に用いることができる。研磨層に不織布を用いることで、織物や編物に比べて目付けの大きいものを設計しやすいために、厚みの大きな研磨パッドとすることが可能である。これにより、研磨パッドのクッション性が向上し、半導体ウエーハ等の研磨対象物を研磨する際に砥粒が凝集した場合にも、凝集砥粒が研磨対象物に押し付けられた際の局所的な研磨対象物への応力集中を緩和することができるために、研磨時の研磨対象物のスクラッチ生成を抑制することができる。ここで、不織布の種類としては、ニードルパンチ、メルトブローおよびスパンボンド等による作製された不織布、湿式抄紙およびスパンレースなどを代表例として挙げることができる。
本発明の大きな技術ポイントとしては、単繊維の数平均直径が1nm以上1000nm以下の極細繊維を用いても研磨可能な研磨パッドを実現するものであるが、ハードディスクのテクスチャー加工においては直径100nm程度の極細繊維でも研磨可能であるのに対し、半導体ウエーハの研磨加工では繊維が極細化するほど研磨不能になるのかについて検討する必要があった。そこで、本発明者らがその原因を追求したところ、ハードディスクのテクスチャー加工と半導体ウエーハの研磨加工のプロセス上の差異が大きく影響していることを突き止めた。これは、次の理由によるものと考えられる。
前記の[背景技術]の説明で述べたように、ハードディスクのテクスチャー加工に比べて半導体ウエーハの研磨では、研磨面が長時間にわたって濡れ、さらに摩擦されるという研磨加工プロセス上の大きな差異がある。実際、ハードディスクのテクスチャー加工では、スラリー付与から研磨終了まで1分以内となるのが普通であるのに対し、半導体ウエーハ研磨の場合、研磨面は常に研磨スラリーで濡れており、研磨時間も半導体ウエーハ1枚あたり10分〜20分程度であり、しかも同じ研磨パッドで複数枚の半導体ウエーハを研磨し、生産レベルでは数百枚から1000枚以上の半導体ウエーハを研磨するという研磨パッドにとっては過酷なプロセスである。
そのため、単繊維の数平均直径が1nm以上1000nm以下の極細繊維束からなる繊維基材を半導体ウエーハの研磨パッドとして適用した場合、図1のように、研磨パッド中の極細繊維束がスラリーを吸水することにより膨潤し、さらに半導体ウエーハと研磨パッドが湿潤状態で摩擦されることにより、図2のように、極細繊維束が単繊維まで開繊し、さらに平滑化してしまうことがわかった。
図1は、上記の極細繊維が凝集した繊維束の表面形状を示しており、また、図2は、上記の湿潤摩擦により開繊した極細繊維の表面形状を示している。
これにより、研磨パッド中の極細繊維間にスラリーが多量に保持され、しかも研磨パッド表面が平滑化されるため、水の表面張力により半導体ウエーハがパッドに貼り付くと考えられた。そこで、いかに極細繊維束の状態を保持し、単繊維までの開繊を抑制するかがポイントとなったのである。
そのため、本発明で用いられる繊維基材を構成する糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率が、15%以下であることが重要である。本発明で用いられるようなナノレベルの極細繊維は、その凝集力が強いために、上述した図1のように繊維基材を構成する糸の単繊維はそのほとんどが束状の糸状繊維集合体を形成している。この糸状繊維集合体が研磨時に湿潤摩擦されることにより単繊維が開繊するのであるが、この糸状繊維集合体が湿潤摩擦によって開繊して拡がらずに形態を保持することができると、半導体ウエーハのパッドへの貼り付きを抑制することができる。そのため、糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率は10%以下であることが好ましく、形態変化率はより好ましくは5%以下であり、更に好ましくは3%以下である。形態変化率は、小さいほど良くゼロ%であるが、0.5%程度であれば十分である。
ここで、糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率は、次のようにして求めることができる。研磨時の湿潤摩擦を想定して、JIS(1998年版) L0849の摩耗試験機II型の試験方法に準じて、研磨パッドを湿潤摩擦する。すなわち、研磨パッドの研磨層として用いられる研磨布(繊維基材)を、幅2cm長さ20cmに裁断試料として採取する。また別に、摩擦用白綿布[財団法人 日本規格協会製 JIS染色堅牢度試験用 綿(かなきん3号)]を6cm×6cmに裁断採取する。研磨布試料および摩擦用白綿布をそれぞれ水に1時間浸漬した後、研磨布試料および摩擦用白綿布を漬けていた水から引き上げて、それぞれを研磨布試料重量を100としたときに約100%の水分率(研磨布試料が100%の水分率まで吸水しない場合には最大の水分率)となるように、ろ紙で軽く挟んで余分な水分を拭う。その後、温度20℃±2℃、相対湿度65±2%の標準状態の測定室において、株式会社大栄科学精器製作所製の学振型摩擦堅牢度試験機RT−200に研磨布試料と摩擦用白綿布をセットし、荷重300gにて試験片である研磨布試料の長さ100mmの間を毎分30回往復する速度で100回往復させて湿潤摩擦を行う。試験後の研磨布試料を風乾した後、試験前の研磨布試料と試験後の研磨布試料を、それぞれSEM装置により倍率50倍で観察する。観察した糸状繊維集合体の繊維長手方向に対し垂直方向の最大の長さ(糸状繊維集合体1本の最も太い部分)を測定し、これを20箇所で測定した長さを単純平均して摩擦前後の糸状繊維集合体の太さをそれぞれ算出する。上記で得られた湿潤摩擦前後での糸状繊維集合体の太さから、糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率は次式で求められる。
・湿潤摩擦後の形態変化率(%)=(D1−D0)÷D0×100
ここで、D0は摩擦試験前の糸状繊維集合体の太さを表し、D1は摩擦試験後の糸状繊維集合体の太さを表している。
本発明において、糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率を小さくするために、研磨パッドを構成する繊維基材にバインダーが付与されていることが好ましい。繊維基材にバインダーを付与することにより、単繊維同士を固定することができるために、研磨時に単繊維が開繊しにくくなり、その結果研磨パッドへの半導体ウエーハ等の被研磨体の貼り付きを防止することができる。バインダーは、単繊維同士を繋ぎ止める効果があれば、繊維基材のいずれの部分に付与されていても良いが、繊維基材の表層を覆うように付与されていると、繊維の研磨パッドの特性が活かせなくなる場合もあるため、繊維基材の繊維集合体の交錯点に付与されていることが好ましい。
さらに、本発明の研磨パッドにおいては、繊維基材を構成する糸状繊維集合体の単繊維間にバインダーが付与されていることが好ましい。単繊維と単繊維の間をバインダーで繋ぎ止めることにより、研磨時に単繊維が開繊しにくくなり、その結果、研磨パッドへの半導体ウエーハ等の被研磨体の貼り付きを防止することができる。また、研磨パッドは半導体ウエーハ等を繰り返し研磨するために、消耗品ではあるものの、かなりの耐久性が要求される。特に、本発明のようなナノレベルの極細繊維を使用した研磨パッドは、単繊維が非常に細いために、単繊維の破断や擦過によって研磨パッド表面の耐久性が不十分である場合があり、単繊維同士をバインダーで固定することにより研磨パッドの耐久性が3倍以上向上する。
ここで、単繊維間にバインダーが付与されているとは、次のような状態を言うものである。すなわち、研磨パッドの表面をSEMなどで観察した際に、極細繊維束中の単繊維と単繊維の間にバインダーが入り込み、単繊維同士が接着あるいは接合して固定されている状態を指す。
本発明で用いられるバインダーとしては、高分子弾性体であることが好ましい。バインダーとして高分子弾性体を使用した場合、単繊維同士の接着剤としての役割だけでなく、研磨時の振動吸収のためのクッションとしての役割も果たすことができ、研磨時に砥粒が凝集してしまった場合にも、半導体ウエーハ等の被研磨体にキズがつきにくく、スクラッチの抑制効果に優れている。
上記の高分子弾性体としては、ウレタン系、シリコーン系およびアクリル系等の高分子弾性体を使用することができる。中でも、研磨プロセスにおけるクッション性や繊維基材への浸透性および含浸加工性の容易さから、ポリウレタン(PU)が好ましく用いられる。また、高分子弾性体からなるバインダーとしては、大別すると溶剤系のバインダーと、水系エマルジョン系のバインダーがあるが、溶剤系のバインダーを用いると織物や編物などの繊維基材の中まで高分子弾性体が浸透しにくく、繊維基材表面に膜を形成しやすくなり、繊維表面をバインダーの膜で覆ってしまうために、単繊維同士を固定するというよりも、むしろ繊維基材における繊維の交錯点(例えば、織物の経糸および緯糸の交錯点)を固定する効果の方が高い。特に、本発明のように繊維基材を構成する糸が極細繊維の集合体を形成している場合には、束状の極細繊維の単繊維間にバインダーを浸透させて、単繊維同士を選択的に固定し、単繊維を開繊しにくくすることにより研磨パッドへの半導体ウエーハ等の貼り付を抑制することが好ましい。
そこで、繊維基材中の極細繊維束への浸透性が良く、高分子弾性体が凝固する際にも極細繊維束の表面に膜を形成しにくい水系エマルジョン系の高分子弾性体を用いることが好ましい。本発明で用いられる単繊維は、繊維径が1nm以上1000nm以下の極細繊維であるため、単繊維間に比較的均一に浸透して付着させるためにはそのエマルジョン径も小さい方が好ましい。そのため、水系エマルジョン系の高分子弾性体のエマルジョン径は、250nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。エマルジョン径は、好ましくは1nm以上である。
高分子弾性体の繊維基材への付着量は、少なすぎると単繊維同士の固定効果や繊維の補強効果があまり期待できず、多すぎると繊維表面を高分子弾性体が膜状に覆ってしまい、繊維の研磨パッドとしての特性が損なわれる場合があるため、繊維重量に対し1〜30重量%であることが好ましく、付着量は、より好ましくは4〜20重量%であり、更に好ましくは7〜15重量%である。
高分子弾性体の繊維基材への付与方法としては、高分子弾性体を塗布あるいは含浸後に、凝固させる方法などを採用することができる。
高分子弾性体の付着量は、研磨パッドに用いられる面積1mの繊維構造体(繊維基材)を試料として用い測定をすることができる。高分子弾性体の付着量の確認は、試料面積1mの繊維基材から高分子弾性体を溶媒などで溶出除去させ、該溶出除去処理の前後の重量をそれぞれ求めることにより、確認をすることができる。
本発明の研磨パッドは、湿潤摩擦後の目開きが40μm以上のものであることが好ましい。ここで目開きの測定は、上述の繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率を求めたときと同様に湿潤摩擦を行い、試験後の研磨パッド試料の表面をSEM装置で観察し、例えば、織物の場合には経糸および緯糸で囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算したときの一辺の大きさを目開きとする。また、編物の場合には、編地のループで囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算したときの一辺の大きさを目開きとする。
この湿潤摩擦後の目開きの大きさは、研磨時の湿潤摩擦時の極細繊維束中の単繊維の開繊がどの程度抑制されるかを示す指標になり、単繊維の開繊度合いが強いと、織物の経糸および緯糸で囲まれた空間や編物のループで囲まれた空間(目開き部分)が開繊した単繊維で覆われてしまい、研磨パッド表面が非常に平滑となる。そのため、結果として研磨パッドに半導体ウエーハ等が貼り付きやすくなるのである。もちろん、目開きの大きさは元の織物や編物の布帛設計にもよるが、繊維径280nm以下になると特に繊維集合体から単繊維が開繊し易くなるため、これの指標として用いることができるのである。
湿潤摩擦後の目開きは、極細繊維束からの単繊維の開繊を抑制する観点から、60μm以上であることがより好ましく、更に好ましくは90μm以上である。また、目開きが60μm以上であると、スラリーの循環性を向上させたり、研磨屑の一時貯蔵部分となり効率的に研磨屑を排出することにより研磨パッドの目詰まりを抑制できる効果もある。一方、湿潤時の学振試験後の織物の目開きがあまり大きすぎると、半導体ウエーハ等に対する研磨パッドの接触面積が小さくなるために、研磨レートが小さくなる場合があったり、布帛(繊維基材)が変形し易くなり、耐久性が低下する場合があるので、目開きは150μm以下であることが好ましい。
また、本発明においては、湿潤摩擦後の目開き変化率が20%以下であることが好ましい。目開きの変化率が20%以下であれば、研磨時に研磨パッドが湿潤摩擦されても目開きの大きさが保持され、半導体ウエーハ等の貼り付きを抑制することができる。目開き変化率の評価手法としては、湿潤摩擦前後での繊維基材の目開きの変化率を見ればよく、目開きの変化率は、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下である。目開きの変化率は、小ささければ小さいほど良く、0.5%程度で十分である。
目開きの変化率は、次のようにして求めることができる。すなわち、上述の繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率を求めたときと同様に湿潤摩擦を行い、試験前後の研磨パッド試料の表面をそれぞれSEM装置で観察し、例えば、織物の場合には経糸および緯糸で囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算したときの一辺の大きさを目開きとする。また、編物の場合には、編地のループで囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算したときの一辺の大きさを目開きとする。
そして、次式により求めることができる。
・目開きの変化率(%)=(Z−Y)/Z×100
(式中、Zは湿潤摩擦前の目開きの大きさを表し、Yは湿潤摩擦後の目開きの大きさを表す。)
本発明の研磨パッドは半導体ウエーハと研磨パッドの貼り付きを抑制するために、いかに研磨効率を落とさずに半導体ウエーハと研磨パッドの接触面積を小さくするかがポイントとなるため、その研磨層の表層部に溝を有していることも重要である。ここで、従来のPU含浸不織布や発泡PU樹脂などからなる研磨パッドにおいても、研磨層に溝(グルーブ)を付けることは行われてきており、ここでの溝の役割はスラリーの循環や排出のため、あるいは研磨屑や凝集砥粒の排出孔としてのものである。そのため、溝の大きさとして溝の幅や深さを数mm〜数十mmオーダーの大きさにしなければ研磨屑や凝集砥粒が溝に詰まってしまうために排出経路としての役割をなさなかったと考えられる。
一方、本発明における溝の役割としては、研磨対象物と研磨パッドの直接的な接触を防ぎ、本発明のようにナノレベルの極細繊維を研磨層に用いた場合にも研磨対象物が研磨パッドに貼り付くことなく研磨可能となるようにするためのものであり、研磨対象物と研磨パッドが貼り付かなければ、その大きさとしては1mm以下であってもなんら問題はなく、従来のように排出経路として溝をつけるという技術思想とは、本発明はそもそも考え方が異なるものである。
本発明における溝は、研磨パッドの表層部における表面の凹部(へこみ)のことを指し、そのへこみの大きさとしては研磨パッドを横断面方向から見た場合に研磨パッドの表面を基準面として50μm以上へこんでいるという程度ものである。へこみの大きさは、150μm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは300μm以上である。また、研磨パッドの厚みは通常1〜2mm程度であることから、へこみの大きさの上限としては900μm程度である。
研磨パッドの研磨層に溝を形成することにより、極細繊維が湿潤時の摩擦によって開繊して平滑化したとしても、半導体ウエーハなどの研磨対象物に直接接触する研磨層の面積が小さくなるため、研磨パッドへの研磨対象物の貼り付きを防止することができる。
溝の形状は、研磨対象物のパッドへの貼り付きを防止できるものであり、格子状、螺旋状、同心円状、放射状およびドット状などの形状が好ましい。特に溝の方向性や大きさを制御しやすいという観点からは、溝の形状は格子状であることが好ましい。
また、本発明の研磨層に付けられた溝は加工物の研磨パッドへの貼り付きを防止することを第1の目的として付けられたものであるが、それ以外の効果として研磨スラリーの循環や排出、および研磨屑の排出や凝集砥粒の排出にも寄与するため、溝が研磨パッドの表層部の周縁において開口していることが好ましい。
本発明の研磨パッドは、研磨層に占める溝の面積比率が5〜60%であることが重要である。図4は、本発明の溝付き研磨パッドの表面部分を例示する概略平面図であり、格子状の溝1が示されている。本発明でいう溝の面積比率とは、研磨パッドの全面積に対する溝部分の面積の割合のことであり、この溝の面積比率が大きいほど、研磨時に半導体ウエーハなどの研磨対象物と研磨パッドの接触面積が小さくなることを表している。溝の面積比率を上記範囲内にすることにより、研磨層と半導体ウエーハの接触面積が適正化され、研磨レートの低下を抑制しつつ研磨パッドへの半導体ウエーハの貼り付きを防止することができる。研磨層への半導体ウエーハの貼り付きを防止して研磨レートを向上させる観点から、研磨層に占める溝の面積比率は好ましくは10〜40%であり、より好ましくは15〜30%である。
ここで、研磨層に占める溝の面積比率は、次のようにして求めることができる。すなわち、研磨パッドから100mm角のサンプルを採取し、採取したサンプルが1視野中に最大に入るようにデジタルカメラで撮影し、この画像を画像処理ソフトを用いて溝部分の面積を測定する。これを3つのサンプルで行い、得られた溝の面積それぞれを100mm角の面積で除して、面積比率を算出し、これを単純平均して求める。
次に、本発明の溝のサイズについて図面を用いて説明する。図4は、本発明の溝付き研磨パッドの溝構造を例示説明するための概略断面図である。図4において、研磨パッドの表層部には溝1が形成されている。図5には、次に説明する溝の幅(A)2、溝と隣り合う溝との間隔(B)3および溝の深さ(C)4が示されている。
本発明において、溝の幅(A)は0.5〜5mmであることが好ましい。溝の幅(A)をかかる範囲内にすることにより、研磨屑や凝集砥粒が溝に詰まりにくくなり、その結果、経時的な研磨性能の変動が小さくなるために、半導体ウエーハなどの研磨対象物の面内均一性が向上する。また、溝の幅(A)をかかる範囲内にすることにより研磨パッドと研磨対象物の接触面積が適正化されるため、研磨レートが向上する。より好ましくは、溝の幅(A)は0.7〜4mmであり、さらに好ましくは1〜3mmである。
ここで、研磨パッドの溝の幅(A)は、ノギスを用いて測定し、研磨パッドの任意の場所を20箇所測定し、これを単純平均して求める。
また、本発明において、溝と隣り合う溝との間隔(B)は3〜15mmであることが好ましい。溝と隣り合う溝との間隔をかかる範囲内にすることにより、半導体ウエーハなどの研磨対象物と研磨パッドの接触面積が適正化されて、研磨パッドに研磨対象物が貼り付きにくくなる。より好ましくは、溝と隣り合う溝との間隔(B)は5〜12mmであり、さらに好ましくは5〜10mmである。
ここで、研磨パッドの溝と隣り合う溝との間隔(B)は、ノギスを用いて測定し、研磨パッドの任意の場所を20箇所測定し、これを単純平均して求める。
本発明において、溝の深さ(C)は、溝の幅(A)の10〜90%であることが好ましい。溝の深さ(C)をかかる範囲内にすることにより砥粒の凝集物や研磨屑の排出機能が高まるために、研磨屑や凝集砥粒による研磨パッドの目詰まりを抑制することができる。より好ましくは、溝の深さ(C)は溝の幅(A)の20〜70%であり、さらに好ましくは40〜60%である。
ここで、研磨パッドの溝の深さ(C)は、研磨パッドの縦断面をSEMで観察し、これを10箇所で行って、得られた値を単純平均して求めた。溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は、次式により求めた。
・溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合(%)=溝の幅(C)÷溝の深さ(A)×100
本発明の研磨パッドは、研磨層とアスカーA硬度が60以上の支持体とが積層されていることが好ましい。本発明の研磨パッドは、繊維基材からなる研磨層のみからなるものでも構わないが、研磨時には研磨パッドを定盤に貼って使用するため、厚みの小さな繊維基材の場合、研磨パッドを繰り返し使用していて万一破けてしまった場合に、定盤側を傷つけてしまう可能性がある。そこで、研磨層と支持体とを積層して一体化した研磨パッドとすることが好ましい。支持体としては、繊維基材からなる研磨層が柔らかいために、研磨時にウエーハが研磨パッドに沈み込むことによるエッジ・ロールオフを抑制するために、なるべく硬い方が好ましく、アスカーA硬度はより好ましくは70以上であり、さらに好ましくは85以上である。
支持体の種類は、硬いシート状のものであれば良く、フィルム、不織布および発泡フォームなどが挙げられ、定盤からの振動を吸収して研磨精度を向上させるという観点からは、ゴムシートが好ましく用いられる。ゴムシートの材質としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、およびウレタンゴムなどが挙げられるが、機械的強度、反発弾性および耐薬品性などを考慮すると、ウレタンゴムであることが好ましい。
支持体の厚みは、あまり厚すぎても研磨パッドのコストが高くなり、薄すぎても定盤からの振動を吸収しにくくなるため、0.5〜30mmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜10mmであり、更に好ましくは1〜5mmである。
次に、本発明の研磨パッドの製造方法の一例について説明する。
まず始めに、単繊維の数平均直径が1〜1000nmである極細繊維を用い、本発明の目的に応じた織物や編物および不織布などの繊維基材を作製する。この繊維基材にポリウレタン等の水系のエマルジョン高分子弾性体を含浸し、上下ゴムローラーのマングルなどを用いて所定のピックアップ率となるように絞った後、ピンテンターやネットコンベア式乾燥機などで繊維基材を乾燥して作製することができる。
この際、極細繊維の糸状繊維集合体を形成している繊維束内部にまで高分子弾性体が浸透するように、エマルジョン径はなるべく小さい方が良く、例えば、エマルジョン径は250nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
エマルジョン径が1000nm(1μm)を超えると、繊維束内部まで高分子弾性体が浸透しにくくなる場合があり、単繊維同士を固定が弱くなることがある。また、疎水性の繊維基材の表面にエマルジョンを浸透させやすくするために、適宜界面活性剤や浸透剤を用いることが好ましい。
また、高分子弾性体の皮膜強度の観点からは、エマルジョンの種類としては、強制乳化タイプよりも自己乳化タイプの方が好ましい。強制乳化タイプのエマルジョンの場合には、高分子弾性体を水中に分散させるために乳化剤が添加されているために、高分子弾性体同士の皮膜ができる際に乳化剤が間に入って固化するために皮膜強度が弱くなる傾向にある。そのた、単繊維同士の固定が弱くなり、研磨時の湿潤摩擦によって開繊し易い。
また、高分子弾性体調整液中のエマルジョン濃度は、あまり高すぎると、繊維基材に含浸した際に高分子弾性体の均一な付着がしにくくなり、エマルジョ濃度があまり低すぎても繊維基材への高分子弾性体の付着が少なくなってしまうため、エマルジョン濃度は、好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは1〜20重量%であり、更に好ましくは5〜15重量%である。
次に、このようにして得られた高分子弾性体を含有する繊維基材からなる研磨布を、支持体のゴムシートと積層して研磨パッドを作製する。ゴムシートと研磨布の接着は、市販の接着剤や研磨パッド用両面テープなど用いて行うことができる。例えば、ゴムシート面と両面テープの接着は、ゴムシート自体空気が抜けないために、ゴムシートと両面テープの接着面に空気が入り易く、その部分が膨らんで研磨パッドの平坦性を損なわないように、ラミネート機などを使って気泡が入らないように貼り込む必要がある。一方、研磨布とゴムシートの接着の場合は。研磨布自体が目開きを持ち、通気性を有するために、両面テープと接着する際にも空気が逃げやすいために、貼り込む際に気泡が入る心配が少ない。そのため、例えば、従来の高分子弾性体含浸不織布パッドや樹脂パッドと支持体とを積層するよりも、繊維からなる研磨布の方が支持体との積層が容易であるという利点がある。
本発明の研磨パッドの製造方法としては、研磨層に溝を形成できるような方法であれば良く、従来のPU樹脂含浸不織布パッドや樹脂パッドのように切削加工などにより研磨パッドの表層を削りだすことにより溝を形成することも可能である。しかしながら、本発明の研磨パッドのように極細繊維を用いた繊維基材を研磨層とする場合には、研磨層が軟らかいために切削加工により削りだす手法で溝を形成すると、単繊維が切削加工の刃に絡まって研磨層から引き抜かれたり、形成された溝のエッジ部に絡まった単繊維が残ってバリとなったりするため、精密な溝形状を作るには好ましくない場合がある。
そこで、本発明の研磨パッドを構成する単繊維が熱可塑性のポリマーからなる熱可塑性繊維の場合には、研磨層の表層部分を部分的に押圧熱溶融してその表層に凹部をつくることにより溝を形成することが好ましい。特に、本発明のように研磨層が極細繊維からなる場合には、通常の繊維に比べて繊維が熱溶融し易いために、溝のエッジ部もシャープとなり易く、精密な溝形状を形成することができる。熱溶融による溝の形成方法としては、溶断機などを用いて研磨パッドの表層をなぞって筋状の溝を構成したり、加熱した格子状の型枠などをプレス機などで研磨パッドの表面に押し付けて溝を形成したり、エンボスロールなどの予めドットや格子状のパターンが形成されているローラーに研磨層を構成する繊維基材を通すことで溝を形成するなどの各種手法を適宜用いることができる。
溝の方向性やその大きさ、また溝と隣り合う溝の間隔や溝の深さを精密に制御するためには、型枠をプレス機で研磨パッドの表面に押し付けて溝を形成したり、エンボスローラーに研磨層を構成する繊維基材を通すことで溝を形成する手法を用いることが好ましい。
本発明の研磨パッドを用い、4インチシリコンベアウエーハ(エッチドウエーハ)の粗研磨を行い、ウエーハの平滑性をZygo社製New View 6300 を用い対物レンズ50倍で評価すると、Raが2nm以下と、従来のPU含浸不織布や硬質PUパッドを用いた場合よりも良好な平滑性の研磨ウエーハが得られる。また、50倍以上対物レンズでないと確認できないウエーハ表面の微細な傷も防止することができる。このように、単繊維直径がナノレベルの極細繊維を用いると非常に繊細な研磨、また異物などを絡め取ることが可能であるため、研磨物表面に微少傷さえ発生させることなく、研磨物表面の微少凹凸、また反応物やパーティクルなどの異物を除去することが可能である。この特性は、特に研磨物の平滑性や研磨物の表面欠陥抑制に重点を置く研磨(ベアウエーハの仕上げ研磨など)に有効である。
本発明の研磨パッドは、極細繊維からなる繊維基材を研磨層とし、表面平滑性に優れているため、シリコン(Si)ウエーハ、アニールウエーハ、エピウエーハ、SOIウエーハ、埋め込みウエーハ、貼り合せウエーハおよび再生ウエーハ等の半導体ウエーハだけでなく、ガリウムナイトライド(GaN)、ガリウム砒素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)およびサファイア等の化合物半導体ウエーハ等にも好適に用いることができる。また、本発明の研磨パッドは、半導体ウエーハの研磨用のみに限らず、トランジスタ形成後のCMPや素子形成後のバックグラインドに用いることも可能である。本発明の研磨パッドは、さらに、テクスチャー加工前のアルミディスクやガラスディスクなどのハードディスク用基板の研磨用、さらに液晶ディスプレイ用ガラスやレンズなどの光学ガラスおよびフォトマスクなどのガラス研磨用など種々の研磨用途に好適に用いることができる。
以下、本発明の研磨パッドについて、実施例を用いて詳細に説明する。実施例中の測定方法には、次の方法を用いた。
A.ポリマーの溶融粘度
東洋精機製作所(株)製“キャピログラフ1B”(登録商標)により、ポリマーの溶融粘度を測定した。サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は、10分とした。
B.融点
Perkin Elmaer DSC−7を用いて、2nd runでポリマーの融解を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分であり、サンプル量は10mgとした。
C.SEM観察
サンプルに白金を蒸着し、超高分解能電解放射型走査型電子顕微鏡で観察した。SEM装置には、日立製作所(株)製UHR−FE−SEM S−5000を用いた。
D.単繊維の数平均直径
上記のSEM装置で、少なくとも30本以上の単繊維を1視野中に観察できる倍率で観察し、その観察画像から、三谷商事(株)製の画像処理ソフト“WIN・ROOF”(登録商標)を用いて、繊維長手方向に対して垂直な方向の繊維幅を繊維の直径として算出した。この際、同一横断面内で無作為に抽出した30本の単繊維の直径を測定し、これを3カ所で行い、合計90本の単繊維の直径を測定して、これを単純平均して数平均直径を求めた。
E.力学特性
25℃の室温で、初期試料長を200mmとし、引っ張り速度を200mm/分として、JIS L1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に、破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り、伸度として強伸度曲線を求めた。
F.研磨評価
研磨機には、ラップマスターSFT株式会社製の片面研磨機である「“ラップマスターLM−15E“(登録商標)」を用いた。研磨パッドは、実施例および比較例で作製した研磨パッドをそれぞれ用い、研磨スラリーにはコロイダルシリカの水分散体である株式会社フジミインコーポレーテッド製“GLANZOX1302”(登録商標)を用いた。ウエーハには、4インチのシリコンエッチドウエーハを用い研磨を行なった。このときの研磨条件は、下記のとおりである。
<研磨条件>
・定盤回転数 : 50rpm
・研磨圧力 : 269g/cm
・研磨時間 : 10分
・スラリー濃度 : 1%
・スラリー供給量 : 30ml/分
研磨する際には、セラミックス製プレートに市販のPUスエードをバッキング材としたテンプレートを貼り付けて、それにウエーハを保持した。
(1)ウエーハの貼り付き
研磨パッドへのウエーハの貼り付き度合いは、次のようにして評価した。研磨後にプレートを研磨パッドから剥がした際に、研磨パッド面にシリコンウエーハが貼り付かなかったものを○とし、研磨後にプレートを研磨パッドから剥がした際に研磨パッド面にシリコンウエーハが貼り付いてしまったものを△とし、研磨中にウエーハが研磨パッドに貼り付いてテンプレートから外れてしまったものを×として、ウエーハの貼り付き度合いの評価を行った。上記の○と△を合格とした。
(2)研磨パッドの目詰まり
研磨パッドの目詰まりは、次のようにして評価した。すなわち、上記の研磨条件でウエーハを取り替えながら連続して10枚のウエーハを研磨した後に、研磨パッドの表面をSEM装置で観察し、繊維間の空隙に汚れがほとんどなくて目詰まりしていないものを○とし、繊維間の空隙に汚れが少し目立ち、やや目詰まりしているものを△とし、繊維間の空隙に汚れがびっしりと詰まっており目詰まりがひどいものを×として、研磨パッドの目詰まりの度合いを評価した。○と△を合格とし、×を不合格とした。
(3)表面粗さRa
研磨後のシリコンウエーハの表面粗さRaは、Zygo社製の白色干渉顕微鏡“NewView6300”(登録商標)により、対物レンズ50倍で測定して求めた。
G.高分子弾性体の含有量
高分子弾性体の含有量の確認は、試料面積1mの研磨パッドの研磨層から高分子弾性体を溶媒などで溶出除去させ、該溶出除去処理の前後の重量をそれぞれ求めることにより確認をした。
H.湿潤時の学振試験
糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率については、次のようにして求める。研磨時の湿潤摩擦を想定して、JIS L0849(1998年版)の摩耗試験機II型の試験方法に準じて研磨布を湿潤摩擦する。すなわち、試料として研磨布(繊維基材)を幅2cm、長さ20cmに裁断試料として採取する。また別に、摩擦用白綿布[財団法人 日本規格協会製 JIS染色堅牢度試験用 綿(かなきん3号)]を6cm×6cmに裁断採取する。研磨布試料および摩擦用白綿布をそれぞれ水に1時間浸漬した後、研磨布試料および摩擦用白綿布を漬けていた水から引き上げて、それぞれを約100%の湿潤状態となるように、ろ紙で軽く挟んで余分な水分を拭う。その後、温度20℃±2℃、相対湿度65±2%の標準状態の測定室において、株式会社大栄科学精器製作所製の学振型摩擦堅牢度試験機RT−200に研磨布試料と摩擦用白綿布をセットし、荷重300gにて試験片である研磨布試料の長さ100mmの間を毎分30回往復する速度で100回往復させて湿潤摩擦を行う。試験後の研磨布試料を風乾した後、試験前の研磨布試料と試験後の研磨布試料をそれぞれSEM装置により倍率50倍で観察する。観察した糸状繊維集合体の繊維長手方向に対し垂直方向の長さを測定し、これを20箇所で行い、測定した長さを単純平均して摩擦前後の糸状繊維集合体の太さをそれぞれ算出する。上記で得られた湿潤摩擦前後での糸状繊維集合体の太さから糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率は、次式で求められる。
・湿潤摩擦後の形態変化率(%)=(D1−D0)÷D0×100
(式中、D0は摩擦試験前の糸状繊維集合体の太さを表し、D1は摩擦試験後の糸状繊維集合体の太さを表している。)
I.湿潤摩擦後の目開き
目開きの測定は、糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率を求めたときと同様に湿潤摩擦を行い、試験後の研磨布試料の表面をSEMで50倍で観察し、その画像を三谷商事(株)製の画像処理ソフト“WIN・ROOF”(登録商標)を用いて、目開き溝部分の面積を算出する。例えば、織物の場合には経糸および緯糸で囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算した時の一辺の大きさを算出する。また、編物の場合には、編地のループで囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算したときの一辺の大きさを目開きとする。これを20箇所で行い、それを単純平均することで目開きとした。
J.目開き変化率
目開きの変化率は、次のようにして求める。すなわち、上記湿潤摩擦後の形態変化率を求めたときと同様に湿潤摩擦を行い、試験前後の研磨布試料表面をそれぞれSEM装置により50倍で観察し、例えば、織物の場合には経糸および緯糸で囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算したときの一辺の大きさを目開きとし、これを20箇所で行い、試験前後の研磨布でそれぞれの目開きを算出する。そして、目開きの変化率を次式により求めることができる。
・目開きの変化率(%)=(Z−Y)/Z×100
(式中、Zは湿潤摩擦前の目開きの大きさを表し、Yは湿潤摩擦後の目開きの大きさを表す。)
また、編物の場合には、編地のループで囲まれた空間の面積を求め、その面積を正方形換算したときの一辺の大きさを目開きとし、上記の織物の場合と同様にして目開きの変化率を求める。
K.アスカーA硬度
高分子計器株式会社製のアスカーゴム硬度計A型を定圧荷重器(CL−150型)に支持体サンプルを取り付け、荷重1000gで支持体の硬度を測定した。支持体の厚みが6mm以下の場合には、厚みが6mm以上となるように支持体を複数枚重ねて測定を行った。
L.研磨層に占める溝の面積比率
ここで、研磨層に占める溝の面積比率は、次のようにして求める。すなわち、研磨パッドから100mm角のサンプルを採取し、採取したサンプルが1視野中に最大に入るようにデジタルカメラで撮影し、撮影した画像を三谷商事(株)製の画像処理ソフト(“WINROOF”(登録商標))を用いて溝部分の面積を算出する。これを3つのサンプルで行い、得られた溝の面積それぞれを100mm角の面積で除して、面積比率を算出し、これを単純平均して求めた。
M.溝幅
研磨パッドの溝の幅(A)は、ノギスを用いて測定し、研磨パッドの任意の場所を20箇所測定し、これを単純平均して求めた。
N.溝間隔
研磨パッドの溝と隣り合う溝の間隔(B)は、ノギスを用いて測定し、研磨パッドの任意の場所を20箇所測定し、これを単純平均して求めた。
O.溝深さ
研磨パッドの溝の深さ(C)は、研磨パッドの縦断面をSEMで観察し、これを10箇所で行って、得られた値を単純平均して求めた。溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は、次式により求めた。
・溝の幅に対する溝の深さの割合(%)=(C)÷(A)×100
(参考例1)
溶融粘度212Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6(N6)を40重量%と、重量平均分子量12万、溶融粘度30Pa・s(240℃、剪断速度2432sec−1)で融点170℃のポリL乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)を60重量%を、2軸押出混練機で220℃の温度で溶融混練してポリマーアロイチップを得た。このポリL乳酸の215℃、剪断速度1216sec−1での溶融粘度は、86Pa・sであった。さらに、このときの混練条件は次のとおりであった。
・ポリマー供給 :N6とポリL乳酸を別々に計量し、別々に混練機に供給した
・スクリュー型式:同方向完全噛合型 2条ネジ
・スクリュー :直径37mm、有効長さ1670mm
・L/D :45
・温度 :220℃
・ベント :2箇所。
このようにして得られたポリマーアロイチップを、230℃の温度の溶融部で溶融し、紡糸温度230℃のスピンブロックに導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、口金面温度215℃とした紡糸口金から紡糸速度3500m/分で溶融紡糸した。
このとき、紡糸口金には、口金孔径0.3mm、吐出孔長0.55mmの口金を使用し、単孔あたりの吐出量は0.94g/分とした。吐出された糸条は、20℃の温度の冷却風で1mにわたって冷却固化され、紡糸口金から1.8m下方に設置した給油ガイドで給油された後、非加熱の第1引き取りローラーおよび第2引き取りローラーを介して巻き取った。その後、糸条を、温度90℃の第1ホットローラーと、温度130度の第2ホットローラーとで延伸熱処理した。このとき、第1ホットローラーと第2ホットローラーによる延伸倍率を1.5倍とした。得られたポリマーアロイ繊維は、総繊度67dtex、36フィラメント、強度3.6cN/dtex、伸度40%であった。
(参考例2)
溶融粘度67Pa・s(230℃、1216sec−1)、融点170℃のPLAを60重量%と、溶融粘度177Pa・s(230℃、1216sec−1)、融点210℃のイソフタル酸が10mol%共重合されたポリブチレンテレフタレート(PBT)(PBT−I 10mol%)を40重量%を、2軸混練機で240℃で溶融混練して、ポリマーアロイチップを得た。このときの混練条件は、次のとおりであった。
・ポリマー供給 :PBT−IとポリL乳酸を別々に計量し、別々に混練機に供給した
・スクリュー型式:同方向完全噛合型 2条ネジ
・スクリュー :直径37mm、有効長さ1670mm
・L/D :48
・温度 :240℃
・ベント :2箇所。
このようにして得られたポリマーアロイチップを、235℃の温度の溶融部で溶融し、紡糸温度235℃のスピンブロックに導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、口金面温度220℃とした紡糸口金から紡糸速度1350m/分で溶融紡糸した。
このとき、紡糸口金としては、計量部孔径0.4mmφ(L/D=2.0)、吐出孔径1.0mm(L/D=2.5)の孔を有した紡糸用口金を使用し、単孔あたりの吐出量は0.83g/分とした。吐出された糸条は環状チムニーを用い、紡糸口金から30mm下流から冷却範囲1.0m、冷却風速20m/分、冷却風温20℃の条件でポリマー流郡の周囲から冷却風を均等に吹き付けることにより強制冷却し、紡糸口金から1.8m下方に設置した給油ガイドで給油された後、未延伸糸を巻き取った。その後、得られた未延伸糸を温度84℃の第1ホットローラーと、温度135℃の第2ホットローラーとで延伸熱処理した。このとき、第1ホットローラーと第2ホットローラーによる延伸倍率を2.2倍とした。得られたポリマーアロイ繊維は、総繊度100dtex、36フィラメント、強度3.5cN/dtex、伸度40%であった。
(参考例3)
参考例1のN6を溶融粘度350Pa・s(220℃、121.6sec−1)、融点162℃のポリプロピレン(PP)に代え、そのPPの比率を23重量%、ポリ乳酸(PLA)の比率を77重量%としたこと以外は、参考例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。ポリL乳酸の220℃、121.6sec−1における溶融粘度は、107Pa・sであった。このこのようにして得られたポリマーアロイチップを、溶融温度230℃、紡糸温度230℃(口金面温度215℃)、単孔吐出量1.5g/分、紡糸速度900m/分で参考例1と同様にして溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率を2.7倍、熱セット温度130℃として、参考例1と同様に延伸熱処理した。得られたポリマーアロイ繊維は、総繊度77dtex、36フィラメント、強度2.5cN/dtex、伸度50%であった。
(参考例4)
溶融粘度280Pa・s(300℃、1216sec−1)のポリエチレンテレフタレート(PET)60重量%と、溶融粘度160Pa・s(300℃、1216sec−1)のポリフェニレンスルフィド(PPS)40重量%を、下記条件で2軸押出混練機を用いて溶融混練を行いポリマーアロイ溶融体を得た。ここで、PPSは直鎖型で分子鎖末端がカルシウムイオンで置換されたものを用いた。また、ここで用いたPETを300℃の温度で5分間保持したときの重量減少率は0.9%であった。
・スクリュー L/D=45
途中2個所のバックフロー部有り
・ポリマー供給 PPSとPETを別々に計量し、別々に混練機に供給した
・温度 300℃
・ベント 無し
ここで得られたポリマーアロイ溶融体をそのまま紡糸機に導き、紡糸を行った。このとき、紡糸温度は315℃であり、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、紡糸口金面温度292℃とした口金から溶融紡糸した。このとき、紡糸口金としては、吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.6mmのものを用い、このときの単孔あたりの吐出量は1.1g/分とした。さらに、紡糸口金下面から冷却開始点までの距離は、7.5cmであった。吐出された糸条は20℃の温度の冷却風で1mにわたって冷却固化され、脂肪酸エステルが主体の工程油剤が給油された後、非加熱の第1引き取りローラーおよび第2引き取りローラーを介して1000m/分で巻き取られた。そして、これを第1ホットローラーの温度を100℃とし、第2ホットローラーの温度を130℃として延伸熱処理した。このとき、第1ホットローラーと第2ホットローラー間の延伸倍率を3.1倍とした。得られたポリマーアロイ繊維は、総繊度430dtex、240フィラメント、強度4.4cN/dtex、伸度26%であった。
(参考例5)
海成分に5−ナトリウムスルホイソフタル酸を5mol%共重合したアルカリ可溶型共重合ポリエステル樹脂60重量%を用い、島成分にN6樹脂40重量%を用い、溶融紡糸で島成分を400島とし、単繊維繊度5.3dtexの高分子配列体複合繊維(以後、複合繊維と称することがある。)を作成後、3.0倍の倍率で延伸して単繊維繊度2.0dtexの複合繊維を得た。この複合繊維の強度は2.5cN/dtexであり、伸度は32%であった。
(参考例6)
海成分にアルカリ可溶型共重合ポリエステル樹脂60重量%を用い、島成分にN6樹脂40重量%を用い、溶融紡糸で島成分を70島とし、単繊維繊度5.3dtexの高分子配列体複合繊維(以後、複合繊維と称することがある。)を作成後、2.5倍の倍率で延伸して単繊維繊度2.1dtexの複合繊維を得た。この複合繊維の強度は2.6cN/dtexであり、伸度は35%であった。
[実施例1]
参考例1で得られたポリマーアロイ繊維を用いて平織組織の織物(経123本/インチ、緯82本/インチ)を作製し、この織物を98℃の温度の3%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し、乾燥し、N6の極細繊維からなる織物を得た。
第一工業製薬株式会社製の熱反応型の水系ポリウレタン樹脂である“エラストロンH−3”(登録商標)(エマルジョン径10nm、自己乳化タイプ)の原液(エマルジョン濃度20%)に、ノニオン系の界面活性剤である“ノイゲンXL−80”(登録商標)(第一工業製薬製)の原液を、上記溶液に対して1重量%となるように添加し、含浸用のポリウレタン溶液を調製した。上記で得られた織物をポリウレタン溶液に浸漬し、圧力0.2MPaに設定したゴムローラーのマングルで絞り、この操作を3回繰り返してウエットピックアップ率を70重量%(織物重量を100重量%として)に調製して、熱風乾燥機で110℃の温度で30分間乾燥した後、さらに130℃の温度で30分間キュアリングして、ポリウレタン樹脂を含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタン樹脂の付着量は14.2重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は2%であり、目開きは106μmであり、目開き変化率は3%であった。
上記のようにして得られたポリウレタン樹脂含浸織物を、アスカーA硬度90、厚み1mmのウレタンゴムシートに研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらにゴムシートの裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
得られた研磨パッドの表面をSEM装置で観察したところ、図3に示すように、単繊維間にポリウレタン樹脂が浸透し、単繊維同士がポリウレタン樹脂で固定されていた。また、得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハ(4インチのシリコンエッチドウエーハ)を研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、鏡面加工ができた。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.0nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例2]
日華化学株式会社製の水系ポリウレタン樹脂である“エバファノールHA−15”(登録商標)(エマルジョン径50nm、自己乳化タイプ)をエマルジョン濃度が15重量%となるように水で希釈し、さらにこの溶液に浸透剤である“テキスポートSN−10”(登録商標)(日華化学株式会社製)の原液を、上記溶液に対して1重量%となるように添加し、含浸用のポリウレタン溶液を調製した。実施例1で得られた織物を用い、実施例1と同様にポリウレタン溶液に浸漬し、マングルで絞った後に乾燥し、キュアリングして、ポリウレタン樹脂を含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタン樹脂の付着量は10.5重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は5%であり、目開きは92μmであり、目開き変化率は5%であった。
上記のようにして得られたポリウレタン樹脂含浸織物を、実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドの表面をSEM装置で観察したところ、単繊維間にポリウレタン樹脂が浸透し、単繊維同士がポリウレタンで固定されていた。また、得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.1nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例3]
第一工業製薬株式会社製の熱反応型の水系ポリウレタン樹脂である“エラストロンE−37”(登録商標)(エマルジョン径200nm、自己乳化タイプ)をエマルジョン濃度が5重量%となるように水で希釈し、さらにこの溶液にノニオン系の界面活性剤である“ノイゲンXL−80”(登録商標)(第一工業製薬株式会社製)の原液を上記溶液に対して0.5重量%となるように添加し、含浸用のポリウレタン溶液を調製した。参考例1で得られた織物を用い、実施例1と同様にポリウレタン溶液に含浸し、マングルで絞った後に乾燥、キュアリングして、ポリウレタンを含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタンの付着量は3.4重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は12%、目開きは63μm、目開き変化率は14%であった。
実施例1において、アスカーA硬度70のウレタンゴムシートを用いた以外は、実施例1と同様に織物をゴムシートに貼り付けて研磨パッドを作製した。この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドにやや貼り付きやすかったが、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.9nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例4]
参考例2得られたポリマーアロイ繊維を用いて朱子織組織の織物(5枚裏朱子、経230本/インチ、緯100本/インチ)を作製し、この織物を80℃の温度の2%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99重量%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し、乾燥し、PBT−Iの極細繊維からなる織物を得た。次に、日華化学株式会社製の水系ウレタン樹脂である“エバファノールHA−15”(登録商標)(エマルジョン径50nm、自己乳化タイプ)をエマルジョン濃度が15重量%となるように水で希釈し、さらにこの溶液に浸透剤である“テキスポートSN−10”(登録商標)(日華化学株式会社製)の原液を上記溶液に対して1重量%となるように添加し、含浸用のポリウレタン樹脂溶液を調製した。上記のようにして得られた織物をポリウレタン樹脂溶液に含浸し、実施例1と同様にポリウレタン樹脂を含浸し、乾燥し、キュアリングして、ポリウレタン樹脂を含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタン樹脂の付着量は9.8重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は7%であり、目開きは98μmであり、目開き変化率は6%であった。
次に、この織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。
得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、PBT−I極細繊維の数平均直径は150nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.4nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例5]
参考例3で得られたポリマーアロイ繊維を用いてトリコット編組織の編物(28ゲージ、30ウェール、50コース)を作製し、この編物を98℃の温度の3%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することによりポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99重量%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し、乾燥し、PPの極細繊維からなる編物を得た。次に、実施例1と同様にポリウレタン樹脂を含浸し、乾燥し、キュアリングして、ポリウレタン樹脂を含浸した編物を作製した。この編物へのポリウレタン樹脂の付着量は7.5重量%であった。また、この編物の湿潤摩擦後の形態変化率は8%であり、目開きは120μmであり、目開き変化率は10%であった。次にこの編物を、実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、PP極細繊維の数平均直径は240nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けて、研磨スラリーに添加剤として過酸化水素をスラリーに対して1.5重量%濃度となるように添加してウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.7nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例6]
参考例4で得られたポリマーアロイ繊維を用いて朱子織組織の織物(5枚裏朱子、経230本/インチ、緯100本/インチ)を作製し、この織物を98℃の温度の3%水酸化ナトリウム水溶液に減量促進剤として明成化学工業(株)社製“マーセリンPES”(登録商標)3%owfを併用した脱海処理液に3時間浸浸することにより、ポリマーアロイ繊維中のPET成分の99重量%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し、乾燥し、PPSの極細繊維織物を得た。次に、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂を含浸し、乾燥し、キュアリングして、ポリウレタン樹脂を含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタン樹脂の付着量は13.2重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は3%であり、目開きは69μmであり、目開き変化率は5%であった。次に、この織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付けて、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、PPS極細繊維の数平均直径は90nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けて、研磨スラリーに過マンガン酸カリウムをスラリーに対して2%となるように添加してウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドにやや貼り付きやすかったが、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.3nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例7]
参考例5で得られた複合繊維を用いて綾織組織の織物(2/1綾、経157本/インチ、緯94本/インチ)を作製し、この織物を実施例1と同様にポリエステル成分の99重量%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し、乾燥してN6の極細繊維からなる織物を得た。次に、実施例3と同様に織物をポリウレタン樹脂溶液に浸漬し、乾燥し、キュアリングを行ってポリウレタン樹脂を含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタンの付着量は3.7重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は5%であり、目開きは165μmであり、目開き変化率は7%であった。次に、この織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は900nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨後のウエーハの表面粗さRaは3.1nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1で得られた研磨パッドを用い、ガラスの研磨を行なった。研磨機はラップマスターSFT株式会社製の片面研磨機である“ラップマスターLM−15E”(登録商標)を用いた。研磨スラリーには、粒径2μmの酸化セリウムを用いた。ガラスは大きさ50mm角、厚さ5mmの板ガラスを用いた。このときの研磨条件は、下記のとおりである。
<研磨条件>
・定盤回転数 : 50rpm
・研磨圧力 : 172g/cm
・研磨時間 : 30分
・スラリー濃度 : 1%
・スラリー供給量 : 30ml/分
研磨パッドを定盤に貼り付けて板ガラスを研磨したところ、板ガラスが研磨パッドに貼り付くことはなかった。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にして、N6の極細繊維からなる織物を得た。この織物には水系ウレタン樹脂を含浸しなかった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は25%であり、目開きは3μmであり、目開き変化率は97%であった。次にこの織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付き易く、研磨途中でウエーハがテンプレートから外れて研磨パッドに貼り付いてしまい、修正リングに接触して割れてしまった。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例7と同様にして、N6の極細繊維からなる織物を得た。この織物には水系ウレタン樹脂を含浸しなかった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は18%であり、目開きは28μmであり、目開き変化率は83%であった。次に、この織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は900nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、やや研磨パッドにウエーハが貼り付き易く、研磨後のウエーハにキズが入りやすかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは3.4nmとやや平滑性に劣るものであった。結果を表1に示す。
(比較例3)
参考例6で得られたポリマーアロイ繊維を用いて朱子織組織の織物(5枚裏朱子、経230本/インチ、緯100本/インチ)を作製し、この織物を98℃の温度の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中の共重合ポリエステル成分の99重量%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し、乾燥し、N6の極細繊維からなる織物を得た。この織物には水系ウレタン樹脂を含浸しなかった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は3%であり、目開きは17μmであり、目開きの変化率は4%であった。次に、この織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は2000nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなかったが、研磨後のウエーハのRaは3.6nmであり、やや表面平滑性に劣るものであった。結果を表1に示す。
(比較例4)
日華化学株式会社製の水系ウレタン樹脂である“エバファノールAP−6”(登録商標)(エマルジョン径170nm、強制乳化タイプ)をエマルジョン濃度が15重量%となるように水で希釈し、さらにこの溶液に浸透剤である“テキスポートSN−10”(登録商標)((日華化学株式会社製)の原液を上記溶液に対して1重量%となるように添加し、含浸用のポリウレタン樹脂溶液を調製した。実施例1で得られた織物を用い、実施例1と同様にポリウレタン樹脂溶液に浸漬し、マングルで絞った後に乾燥し、キュアリングして、ポリウレタン樹脂を含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタン樹脂の付着量は7.8重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は17%であり、目開きは34μmであり、目開き変化率は68%であった。
上記で得られたポリウレタン樹脂含浸織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドの表面をSEMで観察したところ、単繊維間にポリウレタン樹脂が浸透している部分もあったが、ポリウレタン樹脂が単繊維同士を固定していない部分も見られた。また、得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところウエーハが研磨パッドに貼り付き易く、研磨途中でウエーハがテンプレートから外れて研磨パッドに貼り付いてしまい、修正リングに接触してートから外れて割れてしまった。結果を表1に示す。
(比較例5)
第一工業製薬株式会社製の水系ウレタン樹脂である“スーパーフレックスE−2000”(登録商標)(エマルジョン径1600nm、強制乳化タイプ)をエマルジョン濃度が15重量%となるように水で希釈し、さらにこの溶液にノニオン系の界面活性剤である“ノイゲンXL−80”(登録商標)(第一工業製薬株式会社製)の原液を上記溶液に対して0.5重量%となるように添加し、含浸用のポリウレタン樹脂溶液を調製した。実施例1で得られた織物を用い、実施例1と同様にポリウレタン樹脂溶液に浸漬し、マングルで絞った後に乾燥、キュアリングして、ポリウレタン樹脂を含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタンの付着量は6.7重量%であった。また、この織物の湿潤摩擦後の形態変化率は12%であり、目開きは22μmであり、目開き変化率は79%であった。上記のようにして得られたポリウレタン含浸織物を実施例1と同様にゴムシートに貼り付け、研磨パッドを作製した。得られた研磨パッドの表面をSEMで観察したところ、単繊維間にポリウレタンが浸透している部分もあったが、ポリウレタン樹脂が単繊維同士を固定していない部分も見られた。また、得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところウエーハが研磨パッドに貼り付き易く、研磨途中でウエーハがテンプレートから外れて研磨パッドに貼り付いてしまい、修正リングに接触してートから外れて割れてしまった。結果を表1に示す。
[実施例9]
上記の参考例1で得られたポリマーアロイ繊維を用いて平織組織の織物(経123本/インチ、緯82本/インチ)を作製し、この織物を98℃の温度の3%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99重量%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥して、N6の極細繊維からなる織物を得た。
次に、第一工業製薬株式会社製の熱反応型の水系ウレタン樹脂であるエラストロンE−37(エマルジョン径200nm)を、エマルジョン濃度が10%となるように水で希釈し、さらにこの溶液にノニオン系の界面活性剤である“ノイゲンXL−80”(登録商標)(第一工業製薬株式会社製)の原液を、上記溶液に対して1%となるように添加し、含浸用のポリウレタン溶液を調製した。上記で得られた織物を、ポリウレタン溶液に浸漬し、圧力0.2MPaに設定したゴムローラーのマングルで絞り、この操作を3回繰り返してウエットピックアップ率を70重量%(織物重量を100重量%として)に調製して、熱風乾燥機で110℃の温度で30分間乾燥した後、さらに130℃の温度で30分間キュアリングして、ポリウレタンを含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタンの付着量は6.9重量%であった。
上記で得られたポリウレタンを含浸した織物を、アスカーA硬度90、厚み1mmのウレタンゴムシートに中間接着用の研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらにゴムシートの裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付けた。さらに、研磨層部分である織物の表層に溶断機を用いて、溝の幅(A)が1.0mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が10mm、溝の深さ(C)が0.5mmの図3のような格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は、50%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は、120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付いたり、研磨パッドが目詰まりすることはなかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.0nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表2に示す。
[実施例10]
上記の参考例1で得られたポリマーアロイ繊維をパイル糸として用い、総繊度75dtex、24フィラメントのナイロン6繊維をグランド糸として用い、シンカーパイル付きシングル丸編み機にて、パイル長2.2mmの丸編みのループパイル編物(28ゲージ、30ウェール、40コース)を作製した。このようにして得られた編物を、実施例1と同様にポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥して、N6の極細繊維からなるパイル編物を得た。
上記で得られた編物を、実施例1と同様にしてゴムシートに貼り付けた。さらに、研磨層部分であるパイル織物の表層に溶断機を用いて、溝の幅(A)が1.5mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が5mm、溝の深さ(C)が0.3mmの格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は、20%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付いたり、研磨パッドが目詰まりしたりすることはなかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.3nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表2に示す。
[実施例11]
参考例1で得られたポリマーアロイ繊維を用い、この繊維に捲縮付与およびカットを行い、カット長51mmのポリマーアロイ原綿を得た。得られたポリマーアロイ原綿をカーディングおよびラッピングを施した後、さらにニードルパンチを3000本/cm施し、目付500g/mのポリマーアロイ原綿からなる不織布を得た。このようにして得られた不織布を、実施例1と同様にしてポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥した。
次に、このようにして得られた不織布に、ポリビニルアルコールを不織布中の繊維に対して固形分で20重量%となるように付与した。さらに、この不織布にポリエステル−ポリエーテル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、固形分として不織布中の繊維に対して固形分で30重量%となるように含浸し、湿式凝固して目付390g/mのN6極細繊維からなる不織布を得た。
得られた不織布の表面を、JIS#240、#350、#500番のサンドペーパーでバフィングし、さらに、これを隙間が1.0mmの表面温度150℃の上下2本のフッ素加工した加熱ローラーでニップし、0.7kg/cmの圧力でプレスした後、表面温度15℃の冷却ローラーで急冷した。
上記で得られた不織布を、実施例1と同様にしてゴムシートに貼り付けた。さらに、研磨層部分である不織布の表層に溶断機を用いて、溝の幅(A)が0.7mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が15mm、溝の深さ(C)が0.5mmの格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は71%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨パッドの目詰まりも少なかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.5nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表2に示す。
[実施例12]
参考例5で得られた複合繊維を用いて綾織組織の織物(2/1綾、経157本/インチ、緯94本/インチ)を作製し、この織物を実施例1と同様にポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥してN6の極細繊維からなる織物を得た。上記で得られた織物を、アスカーA硬度70、厚み1mmのウレタンゴムシートに中間接着用の研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらにゴムシートの裏側にさらに定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付けた。さらに、研磨層部分である織物の表層に溶断機を用いて、溝の幅(A)が3.0mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が11mm、溝の深さ(C)が3.0mmの格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は100%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨パッドの目詰まりも少なかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.8nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表2に示す。
[実施例13]
参考例2で得られたポリマーアロイ繊維を用いて綾織組織の織物(2/1綾、経157本/インチ、緯94本/インチ)を作製し、この織物を80℃の温度の2%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥して、PBT−Iの極細繊維からなる織物を得た。
第一工業製薬株式会社製の熱反応型の水系ウレタン樹脂であるエラストロンH−3(エマルジョン径10nm)の原液(エマルジョン濃度20%)に、ノニオン系の界面活性剤である“ノイゲンXL−80”(登録商標)(第一工業製薬製)の原液を、上記溶液に対して1.5%となるように添加し、含浸用のポリウレタン溶液を調製した。上記で得られた織物を用い、実施例1と同様にポリウレタン溶液に含浸し、マングルで絞った後に乾燥しキュアリングして、ポリウレタンを含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタンの付着量は15.3重量%であった。
上記で得られたポリウレタン含浸織物を、実施例1と同様にしてゴムシートに貼り付けた。さらに実施例9と同様にして、溝の幅(A)が0.3mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が2mm、溝の深さ(C)が0.5mmの格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は167%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、PBT−I極細繊維の数平均直径は150nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハがやや研磨パッドに貼り付きやすく、やや研磨パッドの目詰まりが見られた。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは3.0nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表2に示す。
[実施例14]
参考例3で得られたポリマーアロイ繊維を用いてトリコット編組織の編物(28ゲージ、30ウェール、50コース)を作製し、この編物を98℃の温度の3%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥して、PPの極細繊維からなる編物を得た。上記で得られた編物を、実施例1と同様にしてゴムシートに積層した。さらに、研磨層部分である編物の表層に溶断機を用いて、溝の幅(A)が5.0mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が18mm、溝の深さ(C)が2.0mmの格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は40%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、PP極細繊維の数平均直径は240nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けて、研磨スラリーに添加剤として過酸化水素をスラリーに対して2%濃度となるように添加してウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドにやや貼り付きやすかったが、研磨パッドの目詰まりはなかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.4nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表2に示す。
[実施例15]
参考例4で得られたポリマーアロイ繊維を用いて朱子織組織の織物を作製し、この織物を98℃の温度の3%水酸化ナトリウム水溶液に減量促進剤として明成化学工業(株)社製「マーセリンPES」3%owfを併用した脱海処理液に3時間浸浸することでポリマーアロイ繊維中のPET成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥して、PPSの極細繊維織物を得た。
上記で得られた織物を実施例1と同様にしてゴムシートに積層した。さらに、研磨層部分である織物の表層に溶断機を用いて、溝の幅(A)が2.5mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が8mm、溝の深さ(C)が0.8mmの格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は32%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、PPS極細繊維の数平均直径は90nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けて、研磨スラリーに過マンガン酸カリウムをスラリーに対して1.5%となるように添加してウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨パッドの目詰まりもなかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは2.2nmであり、表面平滑性に優れたものであった。結果を表2に示す。
[実施例16]
参考例2で得られたポリマーアロイ繊維を用いて朱子織組織の織物(5枚裏朱子、経230本/インチ、緯100本/インチ)を作製し、この織物を80℃の温度の2%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥して、PBT−Iの極細繊維からなる織物を得た。
日華化学株式会社製の水系ウレタン樹脂である“エバファノールHA−15”(登録商標)(エマルジョン径50nm)をエマルジョン濃度が15%となるように水で希釈し、さらにこの溶液に浸透剤である“テキスポートSN−10”(登録商標)(日華化学株式会社製)の原液を上記溶液に対して5%となるように添加し、含浸用のポリウレタン溶液を調製した。上記で得られた織物を用い、実施例1と同様にポリウレタン溶液に含浸し、マングルで絞った後に乾燥、キュアリングして、ポリウレタンを含浸した織物を作製した。この織物へのポリウレタンの付着量は9.8重量%であった。
上記で得られたポリウレタン含浸織物を、実施例1と同様にしてゴムシートに貼り付けた。さらに実施例9と同様にして、溝の幅(A)が0.9mm、溝と隣り合う溝の間隔(B)が12mm、溝の深さ(C)が0.5mmの格子状の溝をつけて研磨パッドを作製した。このときの溝の幅(A)に対する溝の深さ(C)の割合は、56%であった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、PBT−I極細繊維の数平均直径は、150nmであった。
この研磨パッドを用いて、ガラスの研磨を行なった。研磨機はラップマスターSFT株式会社製の片面研磨機である「ラップマスターLM−15E」を用いた。研磨スラリーには粒径2μmの酸化セリウムを用いた。ガラスは大きさ50mm角、厚さ5mmの板ガラスを用いた。このときの研磨条件は、次のとおりである。
<研磨条件>
・定盤回転数 : 50rpm
・圧力 : 172g/cm
・研磨時間 : 60分
・スラリー濃度 : 1%
・スラリー供給量 : 30ml/分
研磨パッドを定盤に貼り付けて板ガラスを研磨したところ、板ガラスが研磨パッドに貼り付くことはなく、研磨パッドの目詰まりもなかった。結果を表2に示す。
(比較例6)
参考例1で得られたポリマーアロイ繊維を用い、実施例1と同様にN6の極細繊維からなる織物を得た。上記で得られた織物を実施例1と同様にしてゴムシートに積層して研磨パッドを作製した。この研磨パッドには溝をつけなかった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は120nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、研磨中にウエーハがパッドに貼り付いてしまい、研磨することができなかった。結果を表2に示す。
(比較例7)
参考例6で得られたポリマーアロイ繊維を用いて朱子織組織の織物(5枚裏朱子、経230本/インチ、緯100本/インチ)を作製し、この織物を98℃の温度の5%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬することにより、ポリマーアロイ繊維中の共重合ポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗し乾燥して、N6の極細繊維からなる織物を得た。上記で得られた織物を実施例1と同様にしてゴムシートに積層し、研磨パッドを作製した。この研磨パッドには溝をつけなかった。得られた研磨パッドをSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は2000nmであった。
この研磨パッドを定盤に貼り付けてウエーハを研磨したところ、ウエーハが研磨パッドに貼り付くことはなかったが、研磨パッドの目詰まりはひどかった。また、研磨後のウエーハの表面粗さRaは3.5nmであった。結果を表2に示す。
本発明の研磨パッドにより、従来では達成できなかったシリコンウエーハを始めとする半導体の高精度な研磨加工が可能となる。
図1は、極細繊維が凝集した繊維束の表面形状を示す拡大図面代用写真である。 図2は、湿潤摩擦により開繊した極細繊維の表面形状を示す拡大図面代用写真である。 図3は、実施例1で得られた研磨パッドの表面SEM写真を示す拡大図面代用写真である。 図4は、本発明の溝付き研磨パッドの表面部分を例示する概略平面図である。 図5は、本発明の溝付き研磨パッドの溝構造を例示説明するための概略断面図である。
符号の説明
1:溝
2:溝の幅(A)
3:溝と隣り合う溝との間隔(B)
4:溝の深さ(C)

Claims (9)

  1. 数平均直径が1〜1000nmである単繊維を含む繊維基材からなり、前記の繊維基材を構成する糸状繊維集合体の湿潤摩擦後の形態変化率が15%以下であることを特徴とする研磨パッド。
  2. 表面が研磨層で構成されてなる研磨パッドにおいて、該研磨層が数平均直径1〜1000nmの単繊維を含む繊維基材からなり、該研磨層の表層部に少なくとも1つの溝を有し、研磨層の表面全体に占める溝の面積比率が5〜60%であることを特徴とする研磨パッド。
  3. 湿潤摩擦後の目開きが40μm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の研磨パッド。
  4. 湿潤摩擦後の目開き変化率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研磨パッド。
  5. 溝の幅(A)が0.5〜5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の研磨パッド。
  6. 溝と隣り合う溝との間隔(B)が3〜15mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の研磨パッド。
  7. 溝の深さ(C)が溝の幅(A)の10〜90%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の研磨パッド。
  8. 数平均直径が1〜1000nmである単繊維を含む繊維基材に、エマルジョン径が250nm以下の水系ポリウレタンを含浸し、前記の繊維基材を構成する単繊維同士を固定することを特徴とする研磨パッドの製造方法。
  9. 単繊維の数平均直径が1〜1000nmである熱可塑性繊維を含む研磨層の表層を部分的に熱溶融してその表層に凹部をつくることにより溝を形成することを特徴とする研磨パッドの製造方法。
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