JP5531879B2 - 研磨パッド - Google Patents

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Description

本発明は、マルチフィラメント強撚糸織物からなるポリッシング用研磨パッドに関するものである。
従来、ガラスやシリコンウエハを始めとする各種基板の研磨は、研磨パッドを回転可能な下定盤に貼り付け、研磨対象物を上定盤側に保持して、研磨スラリーを供給しながら、研磨対象物と研磨パッドを加圧した状態で、互いに相対的に摺動させるポリッシングにより行われてきた。ここで、研磨パッドとしては、従来から不織布にポリウレタン(PU)を含浸したPU含浸不織布パッドや、発泡PU樹脂を板状に仕上げた硬質発泡PUパッドが用いられてきた。
このような従来のPU含浸不織布パッド(図3)や硬質発泡PUパッド(図4)は、研磨スラリーを保持するためのポケットの役割を果たすものとして、表面に無数の細孔が形成されており、その細孔サイズが数十〜数百μmオーダーとバラツキが大きいため、研磨スラリーの保持だけでなく、研磨パッドの粘弾性などが面内で不均一なものであった。また、研磨対象物への研磨スラリーの接触を向上させて研磨レートを安定化させるために、研磨パッド表面をブラシやダイヤモンドドレッサーによりドレッシングして研磨パッドの目立てを行う。
しかしながら、ドレッサーの表面状態やドレッシング条件によって、その都度、研磨パッドの表面粗さが変化し、その凹凸サイズが数〜数十μmオーダーとバラツキが大きいため、研磨対象物への研磨スラリーの作用が研磨パッド面内で不均一となり、研磨対象物を高度に平坦化および平滑化するには限界があった。
そのため、従来のPU含浸不織布パッドや硬質発泡PUパッドよりも研磨物の平坦性・平滑性を向上しつつ、経時的にも安定研磨が実現できる新規研磨パッドが望まれていた。
そこで、従来とは異なる研磨パッドとして、織物を研磨層に用いた研磨パッドが検討されている。例えば、織物を研磨層とし、硬質の支持層を積層した研磨パッドが提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1には、2層積層パッドにより半導体ウエハエッジ部へのパッドからの応力集中を抑制し、半導体ウエハの縁ダレを抑制できることが記載されている。しかしながら、研磨後のウエハ全面の平坦性についてはさらなる向上が望まれていた。また、研磨によって発生する研磨屑がマルチフィラメントの間隙に目詰まりすることを抑制することも望まれていた。
一方、弾性糸からなる織物を研磨層とし、織組織によって弾性糸間に連続的な間隙をつくることによって目詰まりを抑制する研磨パッドが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、当該技術においても、長時間の研磨によって弾性糸マルチフィラメントの単繊維が拡がってしまい、間隙の形状が変形することから、耐久性の点で限界があった。
また、ポリッシング用とは異なり、テープ研磨用として、合成繊維のマルチフィラメント糸を用いた撚糸織物からなる研磨布帛が提案されている(特許文献3参照)。この提案は、テープ状の布帛に少量の研磨スラリーを浸み込ませて磁気記録ディスクを研磨するものであり、撚糸織物の作用効果として、磁気記録ディスク基板に傷を作らないように研磨する技術的思想が記載されている。具体的には織組織と線(朱子線や綾線)と撚糸の傾きについての関係の記載があり、この撚線の方向と織組織による線を逆向きにすることにより、磁気記録ディスク基板に部分的な深い傷ができにくくなるとするものである。
しかしながら、円周方向に研磨されるポリッシングにおいては、一方向に研磨されるテープ研磨と異なるため、同様の効果を期待することができない。また、ポリッシング用研磨パッドに用いた場合には撚数が小さいために長時間の研磨で単繊維が拡がり、上記と同様に耐久性の点でも限界があった。さらに、特許文献3に記載の研磨布のみでポリッシング研磨すると、むしろ大きな傷が発生することが判った。
一方、織物を研磨層とするものとは違う構造として、複数のフィラメントを平行に配列し、さらにそれらを直交するように交互に積み上げた、開放型格子構造を有するCMP研磨パッドが提案されている(特許文献4参照)。開放型格子構造の作用効果として、特許文献4には、流体(スラリー)の流れおよび熱放散を改善できることが記載されている。また、3次元にフィラメントが相互接続されることにより研磨パッドに剛性が得られ、それにより摩耗に対する耐性が向上するため、結果として研磨パッドと半導体ウエハの実接触面積が高くなることと、仮に研磨パッドが摩耗したとしても新しい研磨面が自己再生することが記載されている。
しかしながら特許文献4においては織物のように経糸と緯糸が互いに交錯して互いに絡み合った構造ではないために、研磨時のせん断力によってフィラメント同士で囲まれた格子部分の変形や接合の解除等が発生し、スラリーの流れが不均一となって研磨後のウエハの平坦性を向上させるには限界があった。これは長時間での研磨でより顕著となり、耐久性の点でも限界があった。
以上のように、特許文献1〜4では、織物やそれに類似した構造を研磨層とすることにより、従来のPU含浸不織布パッドや硬質発泡PUパッドよりも優れた研磨特性を有する研磨パッドについて検討がなされているものの、研磨対象物をさらに平坦化でき、かつ長時間の研磨によっても性能が低下せず耐久性に優れる研磨パッドが望まれていた。
そこで、本発明者らは織物構造設計について鋭意検討し、研磨スラリーの作用について考察し、研磨スラリーを保持するためのポケットの役割を果たす研磨層の構造設計の改善に取り組み、現在、さらには今後の要求レベルに対して十分対応できる研磨パッドを着想するに至った。
特開2008−207318号公報 特開2010−64216号公報 特開2000−182237号公報 特開2009−56586号公報
本発明の目的は、平坦性・平滑性等の研磨性能に優れ、かつ、長時間研磨での耐久性に優れるポリッシング用積層研磨パッドを提供することにある。
本発明の上記目的は、研磨層が経糸と緯糸からなる織物であり、撚数が1500〜4000T/Mのマルチフィラメント強撚糸織物とアスカーA硬度が60以上の支持体とからなるポリッシング用積層研磨パッドにより達成される。
本発明の研磨パッドの好ましい態様によれば、前記織物の経糸および緯糸に囲まれて形成された目開きが10〜150μmであり、前記織物の開孔率が5〜50%であり、前記織物の1mmあたりに10〜150μmの目開きが10個以上存在し、前記織物の織密度は130本/インチ以上であり、織物を構成する織糸の総繊維直径が5〜50μmであり、織物の厚さが10〜100μmである。
本発明によれば、平坦・平滑性の点で高い研磨性能を有しつつ、研磨耐久性にも優れた研磨パッドを提供することができる。
図1は、本発明で用いられるマルチフィラメント強撚糸織物の一例を示す写真代用平面図である。 図2は、本発明で用いられるマルチフィラメント強撚糸織物の厚みを説明するための写真代用断面図である。 図3は、従来のPU含浸不織布パッドの表面の一例を示す写真代用平面図である。 図4は、従来の硬質発泡PUパッドの表面の一例を示す写真代用平面図である。 図5は、対物レンズ倍率によるRaの変化を示す図である。 図6は、対物レンズ倍率によるPVの変化を示す図である。 図7は、対物レンズ倍率によるRaの変化を示す図である。 図8は、対物レンズ倍率によるPVの変化を示す図である。 図9は、対物レンズ倍率によるRaの変化を示す図である。 図10は、対物レンズ倍率によるPVの変化を示す図である。
以下、さらに詳しく本発明の研磨パッドについて説明をする。
本発明の研磨パッドはポリッシングに用いられる。本発明で言うポリッシングとは、定盤等に貼り付けた研磨パッドを、研磨液等を供給しながら、研磨対象物と接触させ、互いに相対的に摺動させて研磨することを指し、テープ状の研磨布が研磨対象物に対して1方向に走行する、いわゆるテープ研磨とはその方式が異なるものである。
本発明の研磨パッドは、経糸と緯糸からなる織物であり、撚数が1500〜4000T/Mのマルチフィラメント強撚糸織物を研磨層とするものである。
本発明では、強撚糸織物の経糸あるいは緯糸を構成する繊維は、マルチフィラメントが撚糸されたものであることが重要である。単純に撚が係っていないマルチフィラメント織物を用いるだけでは繊維がパッド表面で開繊してしまい、研磨スラリーを保持するためのポケット構造の制御が不十分となる。そこで、本発明では、マルチフィラメントに強く撚をかけて集束して強撚糸とし、繊維の開繊を抑えることにより織物に規則的・周期的に研磨スラリーを保持するためのポケット(目開き)を配列させ、さらにこのポケットのサイズを均一に制御することが可能となる。
また、マルチフィラメント中の各単繊維1本1本は細いため、研磨時の摩擦により単繊維が摩耗や切断を起こす場合があるが、撚糸することにより耐久性を向上することができる。このため、本発明で用いられる繊維は、撚糸の中でも強撚されていることが重要である。ここで言う強撚とは、糸長1m辺り1500回以上撚られたもの(撚数1500T/M以上)のことを指し、マルチフィラメント中の各単繊維の収束性や耐久性を向上させるために、撚数は2000T/M以上であることが好ましく、より好ましくは2500T/M以上であり、さらに好ましくは3000T/M以上である。撚数の上限値は、マルチフィラメントを撚りすぎるとその応力により単繊維切れや撚り戻りによる収束後の繊維のねじれが起こるため、上限値は好ましくは6000T/M以下であり、より好ましくは4500T/M以下である。撚数は、織物の表層を光学顕微鏡やマイクロスコープ、SEMなどで観察し、織物を構成する経糸または緯糸の撚線の数を計測して求めることができる。また、一般織物試験方法であるJIS L1096(2005)8.8.2で規定された方法により、織物から糸を抜き取り計測することも可能である。
ここで、撚数が同じ繊維であっても繊維(織糸の総繊維直径)の大きさによって繊維のねじれ角の程度が変わるため、撚りの状態を比較するために、撚りの程度を以下の撚係数で定義するのが一般的である。
撚係数K=T×D
T:糸長1m当たりの撚数
D:繊維(マルチフィラメントからなる織糸)の総直径
繊維の収束性や耐久性を向上させるために、上記の撚係数Kは20000以上であることが好ましく、より好ましくは50000以上であり、さらに好ましくは100000以上である。撚係数Kの上限は、200000以下であることが好ましい。
本発明のマルチフィラメントの材質としては、有機ポリマーなど目的に応じて適宜選定すればよい。
例えば、有機ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)やポリアクリロニトリル(PAN)などの湿式紡糸可能な有機ポリマーも挙げられるが、湿式紡糸は低吐出量の紡糸設備がまれであるため、低吐出量でマルチフィラメントを製造しやすいという観点からは、溶融紡糸可能な熱可塑性ポリマーであることが好ましい。ここで言う熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリ乳酸(PLA)などのポリエステル、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン46(N46)およびナイロン56(N56)などのポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリメチルペンテン(PMP)などのポリオレフィン、さらにはポリエーテルエステルや熱可塑性PUなどのエラストマー、液晶ポリエステル、およびポリフェニレンスルフィド(PPS)等が挙げられる。
熱可塑性ポリマーがポリアミドである場合、ポリアミドの親水性が高いために、研磨パッドとしたときに水系の研磨スラリーとの馴染みが良い。また、シリコンウエハの研磨時には通常アルカリ性のスラリーを使用するために、ポリアミドはアルカリに対する耐性があり、パッドが長寿命化するという利点がある。さらに、ポリアミドはしなやかであり、耐摩耗性が良いことから、研磨パッドの長寿命化の観点から好ましく用いられる。ポリアミドの中では、汎用性を考えるとN6、N66およびN12が好ましく用いられる。
また、熱可塑性ポリマーがポリエステルの場合は、ポリアミドに比べて湿潤時の強力保持率や寸法安定性に優れる。ポリエステルの中でも汎用性の観点からはPETが好ましく、耐アルカリ性やしなやかさの観点からはPTT、PBTが好ましく用いられる。また、化合物半導体の研磨やCMPの場合には、研磨時の研磨スラリーのアルカリや酸を強くしたり、有機溶剤や油成分、また酸化剤などの各種添加剤を混合する場合があり、耐薬品性の観点からは、ポリオレフィンやPPSであることが好ましい。なかでも汎用性の観点からは、PPが好ましく用いられる。
また、マルチフィラメント強撚糸織物の厚みを小さくするためには、マルチフィラメント中の単繊維直径を小さくすることが有効であるが、この際、繊維の高強度・高弾性率化が重要となり、この観点からは高強度・高弾性率が得られる液晶ポリエステルを用いることが好ましい。また、液晶ポリエステルからなるマルチフィラメント強撚糸織物は、織物硬度が高いため、研磨物をより平坦化し易いという利点もある。
以上挙げた熱可塑性ポリマーの中でも、性能と汎用性のバランスを考慮すると、PET、N6、N66、N12およびPPが特に好ましいポリマーである。
また、研磨時には研磨物によってマルチフィラメント表面が擦られるため、マルチフィラメントの摩耗を低減するために、繊維表層部分の耐摩耗性を向上させることが好ましい。例えば、マルチフィラメント表層である鞘部に耐摩耗性ポリマーであるポリアミドやエラストマーを配し、マルチフィラメント糸条の芯部に強度と寸法安定性が優れた熱可塑性ポリマーであるポリエステル(特にPET)やPPを配した芯鞘複合マルチフィラメントなどを好適に用いることができる。また、ポリエステル同士からなる複合マルチフィラメントであっても、鞘部に低分子量(低固有粘度)ポリエステルを配し、芯部に高分子量(高固有粘度)ポリエステルを配した芯鞘複合マルチフィラメントにすると、鞘部の分子配向が低いためにポリステルであっても良好な耐摩耗性を実現することができる。
PETの場合では、鞘部の固有粘度は0.40〜0.60で、芯部の固有粘度は0.72〜1.20とすると、高強度と耐摩耗性を両立したPETマルチフィラメントを得ることができる。このときの芯鞘複合比は、なるべく鞘比率が低い方がマルチフィラメントの高強度化の観点からは良いが、複合安定性や製糸性などを考慮すると、芯:鞘=9:1〜5:5であることが好ましい。また、芯鞘複合マルチフィラメントではなく、後加工でマルチフィラメント表層に耐摩耗性ポリマーをコーティングしても良い。ここで、コーティングが容易な耐摩耗性ポリマーとしては、PUやアクリルおよびシリコーンが好ましく用いられる。
また、本発明では易フィブリル繊維やポリマーブレンド繊維から筋状に分散した易溶出成分を溶出したミクロスリット繊維や、微粒子含有繊維を減量したミクロクレーター繊維などを用いることもできる。さらに、このようなミクロンやナノ〜サブミクロンサイズの形態制御を繊維側面に施したマルチフィラメント強撚糸繊維を用いると、研磨物上に存在する、研削、エッチングおよび研磨工程で生成した欠陥になりうる反応物やゴミなどを効率的に除去することも可能である。
本発明のマルチフィラメントを構成する単繊維の断面形状は、丸断面だけでなく、三葉、十字型、六葉および八葉などの多葉断面、三角や四角、楕円や星型、および扁平などの異型断面などを採用することができる。また、マルチフィラメントとして扁平断面糸を用いると、繊維が摩耗しても繊維としての形状変化があまりないため、研磨層としての状態変化も小さく、結果的にパッド寿命を延ばすことができる。この観点から、扁平断面糸を用いることも好ましく、その際扁平率は好ましくは1.5以上であり、より好ましくは3以上である。扁平率の上限値は10以下であることが好ましく、より好ましくは5以下である。
また、本発明で用いられるマルチフィラメントは、その単繊維直径が1〜25μmであることが好ましい。ここで単繊維直径は、次のようにして求められる。すなわち、研磨パッドの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率200倍で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した20本の単繊維の直径を測定する。そして、これを3つの研磨パッドで行い、少なくとも合計60本の単繊維の直径を測定して、これを単純平均することによってマルチフィラメントの単繊維直径を求めることができる。
本発明において、単繊維直径が1〜25μmのマルチフィラメントからなる強撚糸織物を研磨層に用いると、研磨後の研磨対象物の平坦性・平滑性が向上する理由については今のところはっきりとわかっているわけではないが、次のように考えられる。本発明のように単繊維直径が1〜25μmのマルチフィラメントからなる強撚糸織物を研磨パッドに用いると、その表層に数μm〜数十μmオーダーの比較的均一な凹凸が形成される。このため、従来のPU含浸不織布や樹脂パッドのようにドレッシングにより目立てされた表面とは異なり、凹凸の大きさが比較的均一で、研磨パッド面内での凹凸の位置が制御された表面となるために、微細な砥粒を含む研磨スラリーの流れをより均一に制御することができ、そのために高精度の研磨が可能となり、研磨後の研磨対象物の平坦性・平滑性が向上するものと考えられる。
そのため、研磨パッドの表層に微細な凹凸が多数存在する方が良く、その意味から単繊維直径は細い方が良く、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは17μm以下であり、さらに好ましくは13μm以下である。また、繊維径が小さすぎると、マルチフィラメントの強力が小さくなるため、研磨パッド表面の耐久性に問題が発生する可能性がある。また、より細い単繊維は、製造時の歩留まり低下が起こるためにコストアップし易いという問題もある。このため、単繊維直径の下限値は、5μm以上とすることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。
本発明では、織物を構成する織糸の総繊維直径が5〜50μmであることが好ましい。ここで織糸の総繊維直径は、次のようにして求めることができる。すなわち、研磨パッドの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率50倍で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した20本の経糸または緯糸の直径を測定する。そして、これを3つの研磨パッドで行い、少なくとも合計60本の織糸の総繊維直径を測定して、これを単純平均することによって求めることができる。織糸の総繊維直径を上記範囲内にすることにより、織物の厚みを小さく設計することができるため、研磨層となる織物の厚み方向への変形が抑制され、研磨パッドに保持された研磨スラリーの流れを均一にすることができる。さらに、織糸の総繊維直径を上記範囲内にすることにより、織糸に撚りを入れやすくなり、繊維の収束性が向上する。織糸の総繊維直径は、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。
本発明において、織物の経糸および緯糸に囲まれて形成された目開きが10〜150μmであることが好ましい。これにより、研磨スラリー流れを微視的に均一化することができ、研磨物の平坦性・平滑性を向上させることができるのである。本発明で言う目開きとは、マルチフィラメント強撚糸織物において経糸および緯糸に囲まれて形成された細孔を意味するものであり、この細孔は織物の厚み方向に貫通しているものである(図1)。図1は、本発明で用いられるマルチフィラメント強撚糸織物の一例を示す写真代用平面図であり、目開き部分1が○の位置で示されている。目開きによる細孔は、研磨スラリーのポケットであり、その流れを制御したり、研磨クズなどを一時貯蔵したり排出する役割を果たす。
目開きサイズは120μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは60μm以下である。一方、研磨スラリー流れを均一化させる観点からは、目開きサイズは15μm以上であることが好ましい。
目開きおよびそのサイズは、研磨パッド表面に貼り付けた強撚糸織物表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した像から特定することができる。観察倍率は、目開きサイズや総繊維直径の大きさから50〜300倍の中で適当なものを選ぶものとする。また、場合によりSEM観察が困難な場合はレーザー顕微鏡を用いても良い。これでも難しい場合は、ピント合わせが難しいが通常の光学顕微鏡を用いても良い。
また、目開きサイズは、同一織物内で異なる20カ所を測定した平均値を用いるものとする。
また、本発明では、マルチフィラメント強撚糸織物の表面積全体に占める目開き部分の面積の比率を開孔率として定義する。このときは、織物、縦×横=2mm×2mm中に存在する目開きそれぞれの面積の総和を目開き総面積とし、その面積から開孔率(%)=(目開き総面積/(織物表面積=4mm))×100(%)を計算するものとする。また、目開き総面積については、画像処理ソフトを用いて評価することも可能である。さらに、マルチフィラメント強撚糸織物2mm×2mmに相当するSEMなどの画像を紙に印刷し、これから目開き部分を切り取った総重量と強撚糸織物2mm×2mmに相当する紙重量との重量比で求めることもできる。本発明では、開孔率を5〜50%とすることが好ましく、これにより研磨スラリー流れを効率的に制御できるのである。また、目詰まり抑制の観点からは、開孔率は大きい方が好ましい。一方、スラリーの流れをより均一に制御する観点からは開孔率は小さい方が好ましく、開孔率は40%以下とすることが好ましい。
さらに、本発明の研磨パッドでは、織物の1mmあたりに10〜150μmの目開きが10個以上存在することが好ましい。目開きの個数については上記開孔率を測定したときと同様に、SEM観察により求めることができる。目開きの個数が10個未満であると、研磨スラリーの流れを制御する細孔部分が研磨物に対して相対的に少なくなるために、研磨物の平坦性・平滑性を向上させることが難しくなる。目開きの個数は、20個以上であることが好ましく、より好ましくは40個以上である。目開きの個数としては上限値は、好ましくは500個以下であり、より好ましくは150個以下である。
本発明で用いられる織物としては、平織り、ツイルおよびサテンなどの織組織のものを用いることができるが、研磨層として研磨における剪断方向(横方向)の形態安定性を重視する場合には、経糸と緯糸の拘束力が最も強い平織り組織のものが好ましい。また、マルチフィラメントの単繊維直径を小さくしても目開きを小さくするためには織密度を増加させる必要があるが、このときはツイルやサテンなどの浮き組織のものを用いることが好ましい。ツイルは、形態安定性と織密度の点からバランスが取れており、最も好ましく用いられる。
ツイル織物は綾織または斜文織とも呼ばれ、その変化組織としては急斜文織、緩斜文織、曲がり斜文織、破れ斜文織および山形斜文織などが挙げられる。
また、織物の経糸と緯糸のそれぞれにポリマー種の異なるマルチフィラメントを組み合わせると、研磨層の親水性や疎水性などの化学的性質を自由に制御することが可能となる。
本発明の研磨パッドを構成する織物の織密度は、130本/インチ以上であることが好ましい。ここで言う織密度とは、織物の経糸または緯糸の1インチ当たりの本数のことであり、経糸または緯糸のいずれかの密度もしくはその両方の織密度が130本/インチ以上あれば良いのであるが、本発明の技術的思想によれば、経糸と緯糸の両方の織密度が130本/インチ以上であることが好ましい。織密度を130本/インチ以上にすることにより、織物の目開きサイズをより小さく設計することができるため、単位面積当たりに存在する研磨スラリーを保持するポケットの数をより多くすることができ、その結果、研磨後のウエハ表面の平滑性や平坦性を向上することができる。
織密度は、好ましくは150本/インチ以上であり、より好ましくは200本/インチ以上であり、さらに好ましくは250本/インチ以上である。織密度は、高ければ高いほど好ましいが、織物の経糸あるいは緯糸に過剰な張力がかかったり、織物を織る際に経糸と緯糸が擦れて毛羽になるため、織密度の上限としては600本/インチ程度である。
ここで、織密度の測定は、JIS L1096(2005)に記載されている単位長さあたりの糸本数の測定に準じて行う。具体的には、デンシメータを用い、デンシメータを織物上に置いたときに現れる干渉バンドの数を測定して求めることができる。また、デンシメーターでは織密度を測定しにくい織物の場合には、織物から糸を引き出してして測定する分解法や織物分解鏡を用いる方法や、移動式糸数計測器(実体顕微鏡)を用いる方法で織密度を測定しても良い。
また、研磨層に用いられるマルチフィラメント強撚糸織物の厚みは、小さい方が好ましい。これは、研磨時に押圧された際に、研磨層である織物の目開きの形状やサイズの変形を抑制し、設計通りの作用効果を発現させるためである。このため、マルチフィラメント強撚糸織物の厚みは、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは80μm以下である。マルチフィラメント強撚糸織物の厚みは、織物断面をSEMで観察することによって特定することができ、マルチフィラメント強撚糸織物の経糸と緯糸の交錯点における織物表面の経糸表面と織物裏面の緯糸表面との距離を織物の厚みとする(図2)。図2は、本発明で用いられるマルチフィラメント強撚糸織物の厚みを説明するための写真代用断面図であり、接着層4により支持層に積層されたマルチフィラメント強撚糸織物2において、織物表面の緯糸側面と織物裏面の経糸断面との距離を織物厚み3とすることを示している。
厚みの測定は、同一マルチフィラメント強撚糸織物内で異なる5カ所で行い、その平均値を採るものとする。
本発明では、方向性を持ったマルチフィラメント強撚糸織物が研磨層となるため研磨クズを排出し易く、ドレッシング頻度を減らすことができるという利点がある。しかしながら、本発明において、ドレッシングを行う場合に、従来のダイヤモンドドレッサーやナイロンブラシを用いても、目開きや繊維間の研磨クズを効率的に掻き出すことができないばかりか、マルチフィラメントを切断しパッドを痛めてしまう場合がある。このため、本発明のマルチフィラメント強撚糸織物を研磨層とした研磨パッドでは、高圧により水滴をジェットにして飛ばすドレッシング方法を用いることが好ましい。
また、本発明では、従来のPU含浸不織布や硬質発泡PUパッドに比べ、目詰まりし難く、研磨による研磨パッド表面状態変化の程度が低いため、ドレッシング頻度を大幅に減らせることができるという利点がある。
ところで、従来の研磨パッドでは、研磨を始める前の初期ドレッシング、また研磨パッドの表面状態を定常状態にするための長時間におよぶ立ち上げ研磨(数時間程度)を行うことが普通であるが、本発明ではこれらを省略することも可能である。本発明では、マルチフィラメント強撚糸織物を用いることにより、研磨前後での目開きの状態変化がほとんど無いため、これらの前処理の必要性がほとんど無い。
本発明の研磨パッドは、研磨層となるマルチフィラメント強撚糸織物が接着層を介してアスカーA硬度が60以上の支持体に積層されていることが重要である。この場合、支持体と研磨定盤を接着するための接着層を設けることが普通である。ここで支持体とは、次のように定義される。すなわち、支持体とは、研磨層であるマルチフィラメント強撚糸織物との接着層および研磨定盤との接着層に挟まれ、マルチフィラメント強撚糸織物の横方向の変形を防止するために設けられる層のことを言う。本発明では研磨層である強撚糸織物自体の厚みが通常の織物に比べて薄いために、研磨層としては硬く、支持体についてもアスカーA硬度が60以上と比較的硬いものであるため、これらを積層して研磨パッドとした際には、研磨パッド全体として硬いものとなり、よりウエハを平坦化し易い。
本発明の支持体は、単層でも良いし異なる物性の2層、3層などの多層構造でも良いが、多層間での平坦性のばらつきや接着による支持体の平坦性悪化や、製造の効率化を考慮すると、支持体は単層であることが好ましい。接着のために用いられる両面粘着テープなどは接着層であり、本発明では支持体には含めないものとする。
本発明の研磨パッドを、シリコンなどの半導体ベアウエハやガラス(光学ガラス、フラットパネルディスプレイ用ガラス、露光に用いるガラスマスクなど)の粗研磨用として適用する場合には、支持体はアスカーA硬度が70以上の支持体であることが好ましい。これにより、研磨パッド全体だけでなくサイトフラットネスに対応するサイズ(十〜数十mm程度)のたわみを抑制し、研磨物表面の凹凸のうち凸部から優先的に研磨することにより、研磨物の平坦性を向上させることが可能である。このため、支持体はなるべく硬い方が好ましく、アスカーA硬度はより好ましくは80以上であり、さらに好ましくは85以上である。アスカーA硬度の上限値は、100である。
ここでアスカーA硬度は以下のようにして測定されるものである。すなわち、研磨パッドから支持体部分のみを採取する。そして、高分子計器株式会社製のアスカーゴム硬度計A型を定圧荷重器(CL−150L型)に取り付け、荷重1000gで支持体の硬度を測定する。もし支持体の厚みが6mm以下の場合には、厚みが6mm以上となるように支持体を複数枚重ねて測定を行う。もちろん、研磨パッドを作製する前の支持体そのものを入手できれば、これで測定を行っても良い。なお、測定はサンプルの異なる5ヶ所で行い、その平均値をアスカーA硬度とする。
また、支持体の厚みが薄い場合にはマイクロゴムA硬度で評価することも可能である。この場合、マイクロゴムA硬度は70以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、85以上であることがさらに好ましい。なお、マイクロゴムA硬度の上限値は100である。
一方、本発明の研磨パッドをシリコンなどの半導体ベアウエハやガラスの仕上げ研磨用として適用する場合には、アスカーA硬度が60以上、70未満の支持体であることが好ましい。これにより、研磨物の反りやうねりに沿って研磨パッドが変形して追従し、研磨物表面の数nm〜数μm程度の微小凹凸を除去することが可能となり、研磨物の表面平滑性を向上することができる。また、支持体の厚みが薄い場合には、マイクロゴムA硬度で評価することも可能である。この場合、マイクロゴムA硬度は60以上、70未満であることが好ましい。
また、半導体の酸化膜や金属膜などのCMPに用いる場合には、アスカーA硬度が60〜90の支持体であることが好ましい。これにより、研磨物の凹凸にある程度追従しつつ全体の面内均一性も向上させることができる。
本発明で用いられる支持体の種類は、平坦なシート状のもので、フィルム、不織布、ガラス板、金属板、セラミックス板および発泡フォームなどを用いることも可能である。ガラス板や金属板は、高硬度であることや表面平坦性を制御しやすいという利点があるが、マルチフィラメント強撚糸織物との接着や研磨時の研磨スラリーに対する耐薬品性において問題のない物を選択することが課題である。
この点、ゴムシートは、適度な硬度や耐薬品性を得やすく、また比較的ゴムシート表面の平坦性も制御しやすいため好ましく用いられる。また、定盤からの振動を吸収して研磨精度を向上させるという観点からも、ゴムシートであることが好ましい。ゴムシートの材質としては、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPT)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、シリコーンゴム(SR)、フッ素ゴム(FR)、およびウレタンゴム(UR)などが挙げられるが、機械的強度、反発弾性および耐薬品性などを考慮すると、URであることが好ましい。
これらの中でも、現状、汎用性やゴムシートの平坦性から、URとNBRが好ましく用いられる。
支持体の厚みは、厚くすると研磨定盤のブレや振動の影響を吸収しやすくなり、薄くすると研磨パッドのコスト低減に役立つ。この観点から、支持体の厚みは、0.5〜20mmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜10mmであり、さらに好ましくは1〜5mmである。
支持体と研磨層である織物の積層方法は、目的に応じて適宜選択することが可能である。例えば、先に言及した接着層として、接着剤や両面粘着テープにより接着する方法やホットメルトタイプのテープや熱融着繊維を用いることも可能である。また、両面粘着テープの基材は、研磨パッドの硬度を保持するためPETやPPなど比較的硬い材質の物が好ましい。
次に、本発明の研磨パッドの製造方法について述べる。
本発明の強撚糸織物を構成するマルチフィラメントは、公知の紡糸方法により製造することができ、マルチフィラメントの単繊維直径や断面形状を制御するには溶融紡糸法を採用することができる。
また、マルチフィラメントを撚糸するには公知の撚糸方法を用いることができ、強撚糸についてはイタリー式撚糸機やダブルツイスターにより製造することができる。
さらに、強撚糸織物を作製するには、公知の織機を採用することができるが、高密度の強撚糸織物については、グリッパー織機やレピア織機、ウォータージェット織機により製造することができる。
次に、本発明の支持体については、上述のようにゴムシートからなる樹脂板であれば硬度の選択幅が広く、また樹脂板の平坦性も良好であるので好適に用いることができる。例えば、PUゴムシートは熱硬化性のものや熱可塑性のものがあり、金型による硬化や溶融押出しによってシート状に成形することができ、シートの幅や厚みを自由に制御することができる。また、PUのハードセグメントとソフトセグメント、架橋剤の種類や配合量を変更することによって、ゴムシートの硬度を制御することが可能であり、ゴムシートの硬度としてはアスカーA硬度で30〜95の範囲で制御可能である。
本発明の研磨パッドは、上記支持体にマルチフィラメント強撚糸織物を積層して製造するが、両者を接着する場合には、市販の接着剤や研磨パッド用両面粘着テープなど用いて行うことができる。例えば、支持体面と両面粘着テープの接着は、支持体を通して空気が抜けないために、支持体と両面テープの接着面に空気が入りやすく、その部分が膨らんで研磨パッドの平坦性が損なわれる場合がある。そのため、ラミネート機などを使って気泡が入らないように注意して貼り込む。一方、マルチフィラメント強撚糸織物と支持体の接着では、織物が目開きを持ち、通気性を有するために、両面粘着テープと接着する際にも空気が逃げやすいために、貼り込む際に気泡が入る心配が少ない。このため、例えば従来のPU含浸不織布パッドや発泡PU樹脂パッドと支持体とを積層するよりも、マルチフィラメント強撚糸織物の方が支持体との積層が容易である。特にマルチフィラメント強撚糸織物では、目開きや開孔率が通常の織物に比べて大きいために空気が抜けやすい。さらに、支持体の裏側に研磨定盤と接着するための両面粘着テープ(例えば厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製することができる。
本発明の研磨パッドは、半導体ウエハとして、シリコーン(Si)ウエハ、アニールウエハ、エピウエハ、SOIウエハ、埋め込みウエハ、貼り合せウエハおよび再生ウエハなどの研磨だけでなく、ガリウムナイトライド(GaN)、ガリウム砒素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)およびサファイアなどの化合物半導体ウエハの研磨にも用いることができる。また、半導体ウエハの研磨用のみに限らず、酸化膜や金属膜などを形成した後のCMPや素子形成後のバックグラインドの研磨もに用いることも可能である。さらに、アルミディスクやガラスディスクなどのハードディスク用基板の研磨用、さらに液晶ディスプレイ用ガラス、光学ガラスおよびフォトマスクなどのガラス研磨用など種々の研磨用途に好適に用いることができる。
以下、本発明の研磨パッドについて、実施例を用いて詳細に説明する。実施例中の測定方法は、次の方法を用いた。
A.織密度
織密度(経糸密度と緯糸密度)の測定は、JIS L1096(2005)に記載されている単位長さあたりの糸本数の測定に準じて行った。すなわち、デンシメーターを用い、デンシメーターを織物上に置いたときに現れる干渉バンドの数を測定し、それを5箇所で行って単純平均して求めた。
B.SEM観察
サンプルに白金を蒸着し、超高分解能電解放射型走査型電子顕微鏡(SEM装置)で観察した。
・SEM装置:日立製作所(株)製UHR−FE−SEM S−5000
C.織物の撚数
撚数は、織物の表層をSEMで100倍で観察し、織物を構成する経糸または緯糸の撚線の数を計測した。計測する糸の本数を10本とし、その平均値より撚数を求めた。
D.織物の目開き
研磨パッド表面を、上記SEM装置により100倍で観察することにより目開きを特定し、目開き面積を異なる20カ所で測定し、その平方根の平均値を目開きサイズとした。
E.開孔率
マルチフィラメント強撚糸織物の表面積全体に占める目開き部分の面積の比率を、開孔率として定義する。このときは、マルチフィラメント強撚糸織物、縦×横=2mm×2mm中の目開き数と目開き1つ当たりの面積から開孔率(%)=(目開き総面積/(織編物表面積=4mm))×100(%)を計算し、これを5箇所で行って単純平均して求めた。目開きは、SEM装置観察(100倍)により行った。
F.マルチフィラメント強撚糸織物の厚み
接着層によりマルチフィラメント強撚糸織物が支持体に積層された研磨パッドをカミソリで切断することにより、織物断面の面出しを行った。そして、織物断面をできる限り垂直に立ててSEM装置観察し、図2のように経糸と緯糸の交錯点における織物表面の経糸表面と織物裏面の緯糸表面との距離を測定した。測定は同一織物内で異なる5カ所で行い、その平均値を織物の厚みとした。また、SEM装置観察倍率は500倍とした。
G.織糸の総繊維直径
上記のSEM装置を用いて倍率50倍で観察し、その観察画像から、三谷商事(株)製の画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、経糸または緯糸の長手方向に対して垂直な方向の最大繊維幅を織糸の総繊維直径として算出した(ただし、織物の経糸と緯糸の交錯点ではマルチフィラメントがつぶされて見かけ上繊維幅が大きく見えるため、交錯点以外の部分を測定するものとする)。この際、同一横断面内で無作為に抽出した20本の織糸の直径を測定し、これを3カ所で行い、合計60本の織糸の直径を測定して、これを単純平均して数平均直径を求めた。
H.単繊維の数平均直径
上記のSEM装置を用いて倍率200倍で観察し、その観察画像から、三谷商事(株)製の画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、単繊維直径を算出した。この際、同一横断面内で無作為に抽出した20本の単繊維の直径を測定し、これを3カ所で行い、合計60本の単繊維の直径を測定して、これを単純平均して数平均直径を求めた。
H.支持体の硬度
支持体の硬度は以下のようにして測定した。すなわち、研磨パッドから支持体部分のみを採取する。そして、高分子計器株式会社製のアスカーゴム硬度計A型を定圧荷重器(CL−150L型)に取り付け、荷重1000gで支持体の硬度を測定する。もし支持体の厚みが6mm以下の場合には、厚みが6mm以上となるように支持体を複数枚重ねて測定を行った。測定はサンプルの異なる5ヶ所で行い、その平均値をアスカーA硬度とした。
I.研磨評価
研磨機は、ラップマスターSFT株式会社製の片面研磨機である“ラップマスターLM−15E”(登録商標)を用いた。研磨パッドは、実施例および比較例で作製した研磨パッドをそれぞれ用い、研磨スラリーにはコロイダルシリカの水分散体である株式会社フジミインコーポレーテッド製“GLANZOX1302”(登録商標)を用いた。半導体ウエハは、4インチのシリコーンエッチドウエハを用い研磨を行なった。このときの研磨条件は、下記のとおりである。
<研磨条件>
・定盤回転数 : 50rpm
・研磨圧力 : 255gf/cm
・研磨時間 : 10分
・スラリー濃度 : 1%
・スラリー供給量 : 35mL/分
研磨する際には、セラミックス製プレートに市販のPUスエードをバッキング材としたテンプレートを貼り付けて、それに水貼りでウエハを保持した。
また、上記研磨を繰り返し行い、2時間経過した後のパッドで研磨したウエハの評価も行い、長時間の耐久性について調べた。なお、研磨間には高圧ジェット水によるパッドの洗浄(ドレッシング)を行った。
J.研磨後ウエハの平坦性・平滑性および表面状態の評価
Zygo社の白色干渉顕微鏡である“New View 6300”(登録商標)を用い、中間レンズを1倍とし、対物レンズとして50倍、10倍および2.5倍で評価を行った。
測定は、研磨物の中心とそれから端までの中間点4カ所の合計5カ所の測定を行い、RaとPVについてはその平均値で評価を行った。
また、50倍での観察図(2次元での高さ表示、高さの微分表示)から研磨物に入った目視では観察できない微細傷の評価を行う。
ここで対物レンズ倍率を高倍率から低倍率まで、すなわち高分解能から低分解能まで、また測定エリアも狭い領域から広い領域まで変化させて評価を行う理由としては次の通りである。高倍率レンズを用いる高分解能測定では、短波長(高周波)の表面粗さである平滑性を評価し、低倍率レンズを用いる低分解能測定では、長波長(低周波)の表面粗さである平坦性を評価する。低倍率レンズでは分解能が低くなるのみならず測定視野も大きくなるため、長波長粗さを捉え易くなる。粗さ値は、主としてRaを用いて評価を行う。測定エリアでの山と谷の差の最大値であるPV値は、ウエハ表面にゴミなどが付着していると異常値として出るため、明らかにゴミと思われる大きな値は無視して評価を行う。RaおよびPVとも値が低いほど平坦性・平滑性に優れている。また、レンズ倍率を横軸(高倍率が左、低倍率が右)に、RaとPVの変化の折れ線グラフを描いた場合(図5〜10)、折れ線の傾きが大きいと、粗さの長波長成分が加算されていることを表すため、平坦性が悪く、レンズ倍率を変えてもRaとPVが変化しないと粗さの長波長成分が加算されないため、平坦性が良いと判断できる。
[実施例1]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、撚数1700T/MのPETマルチフィラメントを経密度158本/インチとし、緯密度180本/インチとして織ったマルチフィラメント強撚糸平織物(表1)を用い、支持体として、アスカーA硬度90、厚み1mmのPU樹脂板を用いた。上記支持体に、上記織物を研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらに支持体の裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが2.7nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが4.2nmと、従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した。また、レンズ倍率を変化させても、Raの変化が2nm以下と長波長成分の付加が少なく、優れた平坦性を示した(図5)。さらに、PVを見ても、2.5倍レンズで40nm以下と優れ、しかもレンズ倍率を変化させてもPVの変化が小さいことから長波長成分の付加が少なく、優れた平坦性を示した(図6)。さらに、50倍レンズでの観察において、微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
また、2時間連続で研磨後のウエハについても評価したところ、50倍レンズでRaが2.6nm、2.5倍レンズでRaが4.1nmであり、長時間研磨しても性能が低下することはなく、良好な結果であった。
[実施例2]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、撚数3000T/MのPETマルチフィラメントを経密度314本/インチとし、緯密度202本/インチで織ったマルチフィラメント強撚糸サテン織物(表1)を用い、支持体として、アスカーA硬度90、厚み1mmのPU樹脂板を用いた。上記支持体に上記織物を研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらに支持体の裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが4.2nmと従来のPU含浸不織布(比較例3)や発泡PU樹脂(比較例4)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが9.2nmであり、従来のPU含浸不織布パッド(比較例2)に比べて優れた平坦性を示した(図5)。さらに50倍レンズでの観察において微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
[実施例3]
研磨層として、8dtex−5フィラメント(丸断面)を用い、撚数4000T/MのN6マルチフィラメントを経密度209本/インチとし、緯密度194本/インチで織ったマルチフィラメント強撚糸平織物(表1)を用い、支持体としてアスカーA硬度90、厚み1mmのPU樹脂板を用いた。上記支持体に上記織物を研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらに支持体の裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが4.1nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して、優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが7.0nmと従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した(図5)。さらに、50倍レンズでの観察において微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
[実施例4]
研磨層として、22dtex−12フィラメント(丸断面)を用い、撚数1500T/MのPETマルチフィラメントを経密度140本/インチとし、緯密度136本/インチで織ったマルチフィラメント強撚糸平織物(表1)を用い、支持体としてアスカーA硬度90、厚み1mmのPU樹脂板を用いた。上記支持体に上記織物を研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらに支持体の裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが3.3nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが6.3nmと従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した(図5)。さらに、PVを見ても、2.5倍レンズで51nmと優れ、しかもレンズ倍率を変化させてもPVの変化が小さいことから長波長成分の付加が少なく、優れた平坦性を示した(図6)。さらに50倍レンズでの観察において微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
[実施例5]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、撚数3000T/MのPETマルチフィラメントを経密度295本/インチとし、緯密度300本/インチで織ったマルチフィラメント強撚糸ツイル織物(表1)を用い、支持体としてアスカーA硬度90、厚み1mmのPU樹脂板を用いた。上記支持体に上記織物を研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらに支持体の裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが2.8nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが6.8nmと従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した(図7)。また、50倍レンズでの観察において微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
[実施例6]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、撚数3000T/MのPETマルチフィラメントを経密度295本/インチとし、緯密度150本/インチで織ったマルチフィラメント強撚糸ツイル織物(表1)を用い、支持体としてアスカーA硬度90、厚み1mmのPU樹脂板を用いた。上記支持体に上記織物を研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらに支持体の裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが2.7nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが6.9nmと従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した(図7)。また、50倍レンズでの観察において微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
また、2時間連続で研磨後のウエハについても評価したところ、50倍レンズでRaが2.9nm、2.5倍レンズでRaが6.7nmであり、長時間研磨しても性能が低下することはなく、良好な結果であった。
[比較例1]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、撚数1300T/MのPETマルチフィラメントを経密度120本/インチとし、緯密度100本/インチで織ったマルチフィラメント撚糸ツイル織物(表1)を準備した。支持体として、アスカーA硬度90、厚み1mmのPU樹脂板を準備した。上記支持体に上記マルチフィラメント撚糸ツイル織物を、研磨パッド固定用テープ(厚み130μm、中間接着用で基材は不織布)で貼り付け、さらに支持体の裏側に定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが5.8nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して大差はなく、平滑性に劣るものであった。また、2.5倍レンズでRaが9.8nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)よりもやや優れるものの、従来の発泡PU樹脂パッドに比べてRaは大きく、平坦性には劣るものであった(図5、図7)。また、PVについても50倍レンズで39nmと大きく、さらに10倍レンズで57nm、2.5倍レンズで89nmとPVの変化が大きく、長波長成分の付加が多いことから、平坦性に劣るものであった(図6、図8)。この理由として、撚数が1300T/Mと少ないために繊維が開繊して目開き部分を繊維が覆ってしまい、研磨スラリーの流れを均一に制御できなかったためと考えられる。
また、2時間連続で研磨後のウエハについても評価したところ、50倍レンズでRaが7.0nm、2.5倍レンズでRaが11.7nmであり、長時間研磨により性能が低下していた。この理由として、撚数が1300T/Mと少ないために繊維が開繊して、目開き部分のサイズが変化してしまったためと考えられる。
[比較例2]
PU含浸不織布パッドとして、ニッタ・ハース社製“SUBA800”(登録商標)を用い、実施例1と同様に研磨実験を行った後、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行った(表2)。比較例2においては、いずれの倍率でも実施例1〜4よりも大きなRaを示し、平滑性と平坦性とも劣るものであった。また、レンズ倍率を変化させたときのRaの増加が大きく、長波長成分の付加が多いことからも平坦性に劣ることがわかった(図5、図7、図9)。比較例2では現状では問題となるほどではないが、50倍レンズでの観察において若干の微小傷の発生が認められた。
[比較例3]
発泡PU樹脂パッドとして、ニッタ・ハース社製“MH−S15A”(登録商標)を用い、実施例1と同様に研磨実験を行った後、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行った(表2)。比較例3においては、いずれの倍率でも実施例1および4よりも大きなRaを示し、平滑性と平坦性とも劣るものであった(図5)。比較例3では、現状では問題となるほどではないが、50倍レンズでの観察において若干の微小傷の発生が認められた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も若干認められた。
[実施例7および8]
研磨層として、実施例7および実施例8では実施例1と同じマルチフィラメント強撚糸平織物(表1)を用い、支持体として、実施例7ではアスカーA硬度70、厚み1mmのPU樹脂板を用い、実施例8ではアスカーA硬度60、厚み1mmのPU樹脂板を用い、実施例1と同様に研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、実施例7においては50倍レンズでRaが2.4nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが4.7nmと、従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した(図9)。また、50倍レンズでの観察において、微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
実施例8についても同様に、50倍レンズでRaが2.1nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが5.6nmと、従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した(図9)。また、50倍レンズでの観察において、微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
[比較例4]
撚数を1000T/Mとした以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメント撚糸平織物(表1)と支持体とからなる研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが6.0nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して大きく、平滑性に劣るものであった。また、2.5倍レンズでRaが11.4nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)よりもやや優れるものの、従来の発泡PU樹脂パッドに比べてRaは大きく、平坦性には劣るものであった(図9)。また、PVについても50倍レンズで40nmと大きく、さらに10倍レンズで59nm、2.5倍レンズで70nmとPVの変化が大きく、長波長成分の付加が多いことから、平坦性に劣るものであった(図10)。この理由として、撚数が1000T/Mと少ないために繊維が開繊して目開き部分を繊維が覆ってしまい、研磨スラリーの流れを均一に制御できなかったためと考えられる。また、支持体のアスカーA硬度が50と軟らかく、これによりパッド全体の硬度としても軟らかくなるため、研磨後のウエハの平坦性が劣る要因だと考えられる。
また、2時間連続で研磨後のウエハについても評価したところ、50倍レンズでRaが7.8nm、2.5倍レンズでRaが15.0nmであり、長時間研磨により性能が低下していた。この理由として、撚数が1000T/Mと少ないために繊維が開繊して、目開き部分のサイズが変化してしまったためと考えられる。
[実施例9]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、撚数2000T/MのPETマルチフィラメントを経密度300本/インチとし、緯密度188本/インチとして織ったマルチフィラメント強撚糸平織物(表1)を用い、支持体として、アスカーA硬度80、厚み1mmのPU樹脂板を用い、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが2.1nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して優れた平滑性を示した。また、2.5倍レンズでのRaが4.8nmと、従来のパッド(比較例2、3)に比べて優れた平坦性を示した(図9)。さらに、PVを見ても、2.5倍レンズで40nm以下と優れ、しかもレンズ倍率を変化させてもPVの変化が小さいことから長波長成分の付加が少なく、優れた平坦性を示した(図10)。さらに、50倍レンズでの観察において、微小傷の発生は認められず、研磨後のウエハは優れた鏡面を形成していた。また、目視判定可能な大きな傷の発生も認められなかった。
[比較例5]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、撚数800T/MのPETマルチフィラメントを経密度140本/インチとし、緯密度160本/インチとして織ったマルチフィラメント強撚糸平織物(表1)を用い、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが6.5nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して大きく、平滑性に劣るものであった。また、2.5倍レンズでRaが12.5nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)よりもやや優れるものの、従来の発泡PU樹脂パッドに比べてRaは大きく、平坦性には劣るものであった(図9)。また、PVについても50倍レンズで45nmと大きく、さらに10倍レンズで69nm、2.5倍レンズで78nmとPVの変化が大きく、長波長成分の付加が多いことから、平坦性に劣るものであった(図10)。この理由として、撚数が800T/Mと少ないために繊維が開繊して目開き部分を繊維が覆ってしまい、研磨スラリーの流れを均一に制御できなかったためと考えられる。
また、2時間連続で研磨後のウエハについても評価したところ、50倍レンズでRaが9.1nm、2.5倍レンズでRaが17.5nmであり、長時間研磨により性能が低下していた。この理由として、撚数が800T/Mと少ないために繊維が開繊して、目開き部分のサイズが変化してしまったためと考えられる。
[比較例6]
研磨層として、17dtex−12フィラメント(三角断面)を用い、マルチフィラメントに撚が入っていないこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが8.5nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して大きく、平滑性に劣るものであった。また、2.5倍レンズでRaが16.3nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して大きく、平坦性には劣るものであった(図9)。また、PVについても50倍レンズで59nmと大きく、さらに10倍レンズで90nm、2.5倍レンズで101nmとPVの変化が大きく、長波長成分の付加が多いことから、平坦性に劣るものであった(図10)。この理由として、マルチフィラメントに撚が入っていないために目開きがないためだと考えられる。また、2時間連続で研磨後のウエハについても評価したところ、50倍レンズでRaが8.7nm、2.5倍レンズでRaが16.6nmと耐久性の低下は認められなかったが、50倍レンズでの観察において、微小傷の発生が認められた。この理由としては、マルチフィラメントが撚糸されていないために、単繊維間に研磨屑等が蓄積されたためだと考えられる。
[比較例7]
研磨層として、比較例1と同じマルチフィラメント撚糸ツイル織物を用い、支持体は用いずに、織物をの裏側に直接定盤接着用の両面テープ(厚み110μm、定盤接着用で基材はポリエステルフィルム)を貼り付け、研磨パッドを作製した。
この研磨パッドを用いてシリコンウエハの研磨実験を行い、白色干渉顕微鏡により平坦性・平滑性の評価を行ったところ(表2)、50倍レンズでRaが7.0nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)や発泡PU樹脂(比較例3)と比較して平滑性に劣るものであった。また、2.5倍レンズでRaが11.8nmと従来のPU含浸不織布(比較例2)よりもやや優れるものの、従来の発泡PU樹脂パッドに比べてRaは大きく、平坦性には劣るものであった(図9)。また、PVについても50倍レンズで47nmと大きく、さらに10倍レンズで68nm、2.5倍レンズで107nmとPVの変化が大きく、長波長成分の付加が多いことから、平坦性に劣るものであった(図10)。さらに、50倍レンズでの観察において、微小傷の発生が認められ、目視判定可能な大きな傷の発生も認められた。この理由として、支持体がないために、定盤からの振動が研磨層に直接伝わり、さらに支持体がないことによりクッション性がないために、研磨屑や凝集砥粒などがウエハに強く作用するためだと考えられる。
上記の結果を、表1と表2に示す。
1:目開き部分
2:マルチフィラメント強撚糸織物
3:織物厚み
4:接着層

Claims (5)

  1. 研磨層が経糸と緯糸からなる織物であり、撚数が1500〜4000T/Mのマルチフィラメント強撚糸織物とアスカーA硬度が60以上の支持体とからなるポリッシング用積層研磨パッド。
  2. 織物の経糸および緯糸に囲まれて形成された目開きが10〜150μmであり、前記織物の開孔率が5〜50%であり、前記織物の1mmあたりに10〜150μmの目開きが10個以上存在する請求項1に記載のポリッシング用積層研磨パッド。
  3. 織物の織密度が130本/インチ以上である請求項1または2に記載のポリッシング用積層研磨パッド。
  4. 織物を構成する織糸の総繊維直径が5〜50μmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリッシング用積層研磨パッド。
  5. 織物の厚さが10〜100μmである請求項1〜4のいずれかに記載のポリッシング用積層研磨パッド。
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