JP2012208115A - 生体関連物質検出用ゲルマイクロアレイの製造方法 - Google Patents

生体関連物質検出用ゲルマイクロアレイの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】マイクロアレイ全体において均質なゲルスポットを形成すること。
【解決手段】以下の工程を含む、生体関連物質検出用マイクロアレイの製造方法。
(1)複数本の中空繊維を、中空繊維の各繊維軸が同一方向となるように3次元に配列し、その配列を樹脂で固定することにより、中空繊維束を製造する工程
(2)必要に応じて、前記中空繊維の中空部に液体を導入し、一定時間保持させる工程
(3)キャプチャープローブを含むゲル前駆体溶液を中空繊維の中空部に導入する工程
(4)水相中で、中空繊維の中空部に充填されたゲル前駆体溶液を重合させる工程
(5)中空繊維束を繊維の長手方向に交叉する方向で切断して薄片化する工程。
【選択図】図1

Description

本発明は、生体関連物質検出用マイクロアレイの製造方法に関する。
近年、多数遺伝子の一括発現解析を可能とするDNAマイクロアレイ法(DNAチップ法)と呼ばれる分析法が開発されている。このようなDNAマイクロアレイの一例として、複数の区画を有し、各区画が孔や中空繊維により形成されており、キャプチャープローブを含むゲル状物が各区画に保持されている生体関連物質検出用マイクロアレイが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
このようなマイクロアレイは、例えば以下の(1)〜(3)を順次行う方法により製造される。(1)複数本の有機材料からなる中空繊維を、中空繊維の各繊維軸が同一方向となるように3次元に配列し、その配列を樹脂で固定した中空繊維束を製造する工程;(2)キャプチャープローブを含むゲル前駆体溶液を各中空繊維の中空部に導入し、反応させることで、キャプチャープローブを含むゲル状物を中空繊維の中空部に保持する工程;(3)中空繊維束を繊維の長手方向に交叉する方向で切断して薄片化する工程。
このような製造方法は、平面基板にプローブを固定化する際に使用するフォトリソグラフィー法やスポッティング法と比較すると、高価な製造設備を必要とせず、安定した品質のものが大量に生産できるという利点を有する。
また、当該製造方法で製造されたマイクロアレイによれば、キャプチャープローブを含むゲル状物を中空繊維の中空部に保持するため、単に平面基板にキャプチャープローブを保持するマイクロアレイと比較して、一区画により多くの量のキャプチャープローブを保持することができるので、高い検出感度を達成することができる。さらには、電気泳動によるハイブリダイゼーション反応を行うことができるので、検査時間の短縮にもつながる。
国際公開第00/40942号パンフレット 国際公開第01/98781号パンフレット 特開平11−108928号公報 特開2001−133453号公報 特開2005−37303号公報 特許3834519号公報
しかしながら、前記のマイクロアレイは、外側(外周)に配置されるに従って、配列された中空繊維の中空部に保持されたゲル状物(以下、「ゲルスポット」という)を介して固定化されたキャプチャープローブの検体捕捉能力、即ちゲルに固定化されたオリゴDNA(キャプチャープローブ)と検体との反応性が低くなることがあった。即ち、マイクロアレイ全体において均質なゲルスポットが形成されないことがあった。
そこで、本発明の主な目的は、マイクロアレイ全体において均質なゲルスポットを有するマイクロアレイを製造する方法を提供することにある。

本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、中空繊維中に充填されたゲル前駆体溶液を水相中で重合させることにより上記課題を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の工程を含む生体関連物質検出用マイクロアレイの製造方法に関する。
(1)複数本の中空繊維を、中空繊維の各繊維軸が同一方向となるように3次元に配列し、その配列を樹脂で固定することにより、中空繊維束を製造する工程
(2)必要に応じて、前記中空繊維の中空部に液体を導入し、一定時間保持させる工程
(3)キャプチャープローブを含むゲル前駆体溶液を中空繊維の中空部に導入する工程
(4)水相中で、中空繊維の中空部に充填されたゲル前駆体溶液を重合させる工程
(5)中空繊維束を繊維の長手方向に交叉する方向で切断して薄片化する工程。
本発明によれば、中空繊維の中空部に保持されたゲルスポット中のプローブの検体捕捉能力(検体との反応性)が配置された位置によって差異が生じることのない(マイクロアレイ全体において均質なゲルスポットを有する)マイクロアレイを製造することができる。
配列固定器具の概念図である。 実施例1で得られたマイクロアレイのゲルスポットの一部を示す顕微鏡写真である。 比較例1で得られたマイクロアレイのゲルスポットの一部を示す顕微鏡写真である。 作製したマイクロアレイのスポット配列を示す概念図である。
本発明に係る生体関連物質検出用マイクロアレイ(以下、「マイクロアレイ」ということがある。)の製造方法における各工程について、以下に詳細に説明する。
(1)複数本の中空繊維を、中空繊維の各繊維軸が同一方向となるように3次元に配列し、その配列を樹脂で固定することにより、中空繊維束を製造する工程(第1工程)
(1−1)中空繊維
「中空繊維」の成分は限定されず、有機材料を主成分とする中空繊維が好ましい。有機材料を主成分とする中空繊維としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系中空繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系中空繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系中空繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系中空繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系中空繊維、ポリビニルアルコール系中空繊維、ポリ塩化ビニリデン系中空繊維、ポリ塩化ビニル系中空繊維、ポリウレタン系中空繊維、フェノール系中空繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系中空繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系中空繊維等が挙げられる。
当該中空繊維の製造方法は限定されず、特許文献3に記載されたような公知の方法で製造することができる。例えば、溶融紡糸法が好ましく、ノズルとしては馬蹄型やC型ノズル、2重管ノズルなどを使用することができる。本発明においては、連続した均一な中空部を形成させることができる点で2重管ノズルを用いるのが好ましい。
本発明で使用する中空繊維は多孔質であってもよく、溶融紡糸法又は溶液紡糸法に延伸法、ミクロ相分離法、抽出法などの公知の多孔化技術を組み合わせることにより得ることができる。多孔度は特に限定されるものではないが、繊維材料単位長さ辺りに固定化される生体高分子の密度を高めるという観点から、比表面積が大きくなるように高い多孔度であることが望ましい。
中空繊維の内径は限定されず、本発明により得られるマイクロアレイを使用する実験目的や実験等に応じて適宜選択することができる。中空繊維の内径は、10〜2000μmが好ましく、150〜1000μmがより好ましい。
また、必要に応じて、中空繊維にはカーボンブラック等の黒色顔料を適量含有させたものを用いることもできる。黒色顔料を含有することにより、検出する際にゴミ等の夾雑物由来の光学的ノイズを軽減することができたり、また、樹脂の強度を上げたりすることができる。顔料の含有量は限定されず、中空繊維のサイズやマイクロアレイの使用目的等に応じて適宜選択することができる。顔料の含有量は、例えば0.1〜10質量%とすることができ、0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
(1−2)中空繊維束
上記中空繊維の複数本を、中空繊維の各繊維軸が同一方向となるように3次元に配列し、その配列が乱れないように接着剤等の樹脂で固定して、中空繊維束を得ることができる。
中空繊維束を製造する方法としては、例えば、粘着シート等のシート状物に複数本の中空繊維を所定の間隔をもって平行に配置し、シート状とした後、このシートを螺旋状に巻き取る方法(特許文献3)が挙げられる。
また、複数の孔が所定の間隔をもって設けられた多孔板2枚を孔部が一致するように重ねあわせ、それらの孔部に、中空繊維を通過させ、2枚の多孔板の間隔を開き、2枚の多孔板間の、中空繊維の周辺に硬化性樹脂原料を充満させ硬化させる方法(特許文献4)が挙げられる。
硬化性樹脂原料としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の有機材料からなるものが好ましい。より詳細には、以下に例示する有機高分子等から構成される1種類以上の材料から形成されているものが好ましい。
有機高分子としては、ポリウレタン、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などのゴム材料や、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系樹脂、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系樹脂等が挙げられる。
有機高分子にはカーボンブラック等の黒色顔料を適量含有させることもできる。黒色顔料を添加することにより、検出する際にゴミ等の夾雑物由来の光学的ノイズを軽減することができたり、また、樹脂の強度を上げたりすることができる。
また、有機系のブロックを使用することもでき、有機系ブロックにレーザー等により複数の貫通孔を形成させて、マイクロアレイを作ることもできる。各貫通孔は有機系のブロックに互いに平行に配置され、所定の間隔をもって形成されることが好ましい。貫通孔の形状は、正方形、長方形、円形等である。円形の場合、その直径は10〜2000μm程度である。また貫通孔の配置は、同心円状、らせん状等である。貫通孔は10〜10,000孔/cmの密度でブロックに形成することができる。
更に、隣接する中空繊維の外表面を相互に融着することによっても中空繊維束を製造することもできる。
配列の固定は、配列した中空繊維の全長又は所定部分に対して行う。配列した中空繊維の少なくとも一方の端部から適当な長さの部分は固定しない状態とすることもできる。
本発明で配列する中空繊維の数、すなわちスポットの数は限定されず、目的とする実験等に応じて適宜選択することができる。従って、中空繊維同士の距離も、マイクロアレイの面積と配列する中空繊維の数等に応じて適宜選択することができる。
(2)必要に応じて、前記中空繊維の中空部に液体を導入し、一定時間保持させる工程(第2工程)
第2工程は任意であり、当該工程を行っても行わなくても良い。第2工程を行うことにより、マイクロアレイ全体において、より均質なゲルスポットを有するマイクロアレイを得ることができるので好ましい。
第2の工程では、第1の工程で得られた中空繊維束の各中空繊維の中空部に、液体を導入する工程である。本工程は、気相中で行っても良いし、水相中で行っても良い。
液体を導入する方法としては、例えば特許文献5記載の方法が挙げられる。より詳細には、一端を封止した中空繊維の中空部を一旦真空にしておき、該中空繊維の開放しているもう一端の先端部分を液体に浸漬させた後、圧力を真空から常圧にして、中空部内と外側との圧力差を利用して液体を中空部へ導入する方法などが挙げられる。この方法の他に、中空繊維の両端を開放しておき、片方の先端部を液体に浸漬させて、もう片方から吸い上げて中空部へ液体を導入してもよい。
中空繊維の中空部に導入した液体は、一定時間保持させた後、排出させる。一定時間とは、導入した液体の一部が中空繊維の中空部内壁面から中空繊維中に浸透するのに要する時間である。当該時間は、中空繊維の中空部に満たされた液体が十分に中空部内壁面から中空繊維に浸透できれば限定されない。例えば、自然拡散により液体を中空繊維へ浸透させる場合は、少なくとも3時間以上保持させることが好ましく、より好ましくは10時間、更に好ましくは15時間以上である。また、中空繊維の中空部へ液体を導入した後、該中空繊維束の外側を真空にして、中空部内側と外側の圧力差を利用して中空部に導入した液体の一部を強制的に浸透させることもできる。
ここで使用する液体の種類は、後の工程でゲルが中空繊維の中空部に十分に保持されるのを妨げないものであれば限定されず、ゲルの種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、水、緩衝液等を使用することができ、ゲル前駆体溶液の溶媒として水を好適に使用することから、水が好ましい。
液体を一定時間保持させた後、中空繊維の中空部へ導入した余剰の液体を排出させる。排出させる方法は、例えば特許文献5記載の方法で行うことができる。より詳細には、液体を導入した中空繊維の中空部を再び真空にして、導入した液体を排出させる方法がある。この他、中空繊維の片端から吸引することもできるし、片端から気体を中空部に吹き込んで中空繊維端のもう一方の端から液体を押し出すこともできる。また、気体を吹き込む代わりに、下で述べるゲル前駆体溶液を導入することによろい液体を押し出すこともできる。
(3)キャプチャープローブを含むゲル前駆体溶液を中空繊維の中空部に導入する工程(第3工程)
第3の工程では、キャプチャープローブを含むゲル前駆体溶液を導入する。本工程は、気相中で行っても良いし、水相中で行っても良い。
「キャプチャープローブ」とは、核酸(DNA、RNA等)、アミノ酸、ペプチド、糖、脂質、抗体、さらには化学結合、物理結合などの相互作用により生体関連物質を検出しうる有機化合物、無機化合物等をいう。それらは、生細胞からの抽出、化学合成等により調製される。
例えば、生細胞からのDNAの調製は、Blinらの方法(Nucleic Acids Res.3.2303(1976))等により行うことができる。また、RNAの調製は、Favaloroらの方法(Methods.Enzymol.65.718(1980))等により行うことができる。
「生体関連物質」とは、生体内に存在する高分子有機化合物のことをいい、核酸(DNA、RNA等)、アミノ酸、ペプチド、糖、脂質、抗体を例示することができる。
「ゲル前駆体溶液」とは、架橋構造を形成してゲル化をもたらす化学物質を含む溶液をいう。例えば、単量体、多官能性単量体、重合開始剤及び水等を含む溶液である。また、アルギン酸等の多糖類と二価のイオン及び水を含む溶液、又はゼラチン等のタンパク質、タンパク質のアミノ酸残基と結合性のある多官能性単量体及び水を含む溶液であってもよい。
単量体としては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸及びアリルデキストリン等が挙げられる。多官能性単量体としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単量体成分の濃度は特には限定されず、単量体の種類、目的とするゲルの種類等に応じて適宜選択することができる。単量体成分の濃度は、例えば0.5〜20質量%とすることができ、1〜10質量%が好ましく、3〜5質量%がより好ましい。また、例えば、アクリルアミド系単量体の場合は2.5〜10質量%程度、好ましくは3〜7質量%、より好ましくは3〜5質量%とすることができる。
上記ゲル前駆体溶液は、例えば、微細な針を有するシリンジに前記溶液を吸引し、各中空繊維の中空部に針を差し込むことにより導入すればよい。また、中空繊維束の一方の端部が固定されていない場合は、以下の方法によりゲル前駆体溶液を中空繊維内へ導入することもできる。即ち、まず中空繊維束とゲル前駆体溶液をデシゲーター内に設置する。次いで、中空繊維束の中空繊維が固定されていない端部を、この溶液中に浸し、デシゲーター内を減圧状態し、中空繊維の中空部にこの溶液を導入すればよい。
(4)水相中で、中空繊維の中空部に充填されたゲル前駆体溶液を重合させる工程(第4工程)
第4工程では、先(第3)の工程で中空繊維束に充填されたゲル前駆体溶液を、水相中で重合させる。水相中でゲル前駆体溶液を重合させることにより、マイクロアレイ中の全スポットにおいて均質なゲルスポットを得ることができる。従って、本発明で得られたマイクロアレイを使用することにより、より精度の優れた測定結果を得ることができる。
本明細書中における水相中とは、水中だけでなく、水蒸気濃度が高い環境中も含む。水蒸気濃度が高いとは、例えば、55℃において50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上のことをいう。
ゲル前駆体溶液が充填された中空繊維束を水相中に置く方法としては何ら限定されない。例えば、中空繊維束を直接水中に浸漬させてもよい。その際、中空繊維束にかける静水圧は限定されず、効率良く重合が行われれば良い。静水圧は50N/m以上とすることが好ましく、100N/m以上とすることがより好ましい。50N/m以上とすることにより、重合が十分に行われ、均一なキャプチャープローブを有するマイクロアレイを得ることができる。また、加湿可能な気密性容器に中空繊維束を入れ、飽和水蒸気を吹き込んで加湿してもよい。
次いで、中空繊維の中空部に導入されたゲル前駆体溶液を重合させることにより、キャプチャープローブを含むゲル状物を中空繊維の中空部に保持させる。重合条件は特には限定されず、使用するゲル前駆体の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ゲル前駆体としてアクリルアミド系の単量体を使用する場合、ラジカル系重合開始剤を使用して重合することができ、ラジカル系重合開始剤の中でも、アゾ系開始剤を利用した熱重合反応による重合がより好ましい。
キャプチャープローブは目的に応じて必要な種類(数)を準備することができる。例えば、中空繊維の数と同一の数のキャプチャープローブを準備し、各中空繊維に互いに異なる1種類のキャプチャープローブを導入することができる。また、複数の中空繊維に同じキャプチャープローブを導入することもできる。
(5)中空繊維束を繊維の長手方向に交叉する方向で切断して薄片化する工程(第5工程)
第5工程では、先(第4)の工程を経て得られた中空繊維束を繊維の長手方向に交叉する方向で、好ましくは直交する方向で切断して、薄片化を行う。
切断の方法は、薄片化することができれば限定されない。例えば、ミクロトーム、レーザー等により行うことができる。得られる薄片の厚みは限定されず、実験の目的等に応じて適宜選択することができる。薄片の厚みは、例えば5mm以下とすることができ、0.1〜1mmが好ましい。
生体関連物質検出用マイクロアレイ
このようにして得られた生体関連物質検出用マイクロアレイは、最外周に位置するスポットさえもキャプチャープローブの検体捕捉能力(キャプチャープローブと検体との反応性)を十分に備えた、すなわちマイクロアレイ全体において均質なゲルスポットを有するマイクロアレイである。
本発明により得られるマイクロアレイが均質なゲルスポットを有することは、顕微鏡による観察で確認することができる。また、均質な検体捕捉能力を有することは、蛍光等で標識されたモデル検体を用いた実験により確認することができる。
蛍光で標識されたモデル検体を用いた実験に使用する場合、本発明で得られたマイクロアレイは、内側のスポットの蛍光シグナル強度の平均値に対する最外周スポットの蛍光シグナル強度の平均値で表される蛍光強度比(=最外周スポットの蛍光シグナル強度の平均値/内側のスポットの蛍光シグナル強度の平均値)が0.7〜1.2、好ましくは0.8〜1.15、より好ましくは0.9〜1.10である。当該範囲内にあると、そのマイクロアレイは全体的に均質であるといえるからである。
ここで、「最外周のスポット」とは、図4で例示されるようにマイクロアレイにおいて最も外側に位置するスポットのことである。例えば、16列×16列のマイクロアレイにおいては60スポット存在することになる。また、「内側のスポット」とは、最外周のスポット以外のスポットのことをいう。例えば、16列×16列のマイクロアレイにおいては196スポット存在することになる。
蛍光シグナル強度を測定する方法は限定されず、例えば、特許文献6に記載された公知の方法で測定することができる。より詳細には、マイクロアレイと検体とを65℃で16時間ハイブリダイゼーション反応した後、洗浄バッファーを用いて未結合の検体を除去し、マイクロアレイに蛍光物質の励起波長を有する光を照射し(必要により複数の時間)、発せられる蛍光を検出機で測定することができる。ハイブリダイゼーション反応および洗浄方法については、特に限定されず、教本DNAマイクロアレイ実戦マニュアル(羊土社)などに記載された公知の方法を使用することができる。
蛍光物質の種類も限定されず、下記表1に例示する蛍光物質を使用することができる。これらの蛍光色素を用いて検体に標識する方法としては、例えば、検体調製を行う段階で、検体を増幅させる際に予めビオチン修飾したUTPを検体の塩基配列中に導入し、蛍光色素を修飾したストレプトアビジンを使って間接的に蛍光標識する方法、具体的には、アンビョン社製MessageAmp(登録商標)II−Biotin Enhanced KitのInstruction Manual記載の方法、あるいはA Highly Reproducible, Linear, and Automated Sample Preparation Method for DNA Microarrays, David R. Dorris, Ramesh Ramakrishnan, Dionisios Trakas, et al., Genome Res. 2002 12: 976-984記載の方法などが利用できる。その他、臭化エチジウムなどのDNAインターカレーターに蛍光色素を修飾して直接的に検体を標識する方法も使用できる。
以下、具体的態様について実施例で説明する。
<実施例1>
(1)キャプチャープローブの調製
配列番号1(gctgcgaaat cactctatcc ttcccatgga cttacctgcc ggtatagcgt)の5’末端がアミノ化された核酸をDNA合成装置で合成した(インビトロジェン社にて受託合成)。この核酸を100pmol/μLの濃度になるように滅菌水に溶解し、アミノ化核酸溶液を調製した。
この溶液5μLに、25mM炭酸1水素ナトリウム−25mM炭酸2水素ナトリウム水溶液2.5μL及び10mMのメタクリル酸無水物溶液(DMSOに溶解)2.5μLを添加し、25℃で30分間インキュベートした。
40μLの滅菌水を加えて反応を停止し、ビニル基で修飾された核酸溶液(以下、キャプチャープローブ溶液)を得た。
(2)中空繊維束の製造
図1に示す配列固定器具を利用して中空繊維束を製造した。なお、図中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。
まず、直径0.32mmの孔が、孔の中心間距離を0.12mmとして、縦横各16列で合計256個設けられた厚さ0.1mmの多孔板2枚を準備した。これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、外径280μm、内径180μm、長さ150mmのポリカーボネート中空繊維を1本づつ、通過させた。
X軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板の位置を移動させて、中空繊維の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板の間隔を80mmとした。次いで、多孔板間の空間の周囲3面を板状物で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
次に、この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総質量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板と板状物を取り除き、中空繊維束を得た。得られた中空繊維束をデシケーター中に入れ内部を窒素置換した後、16時間静置した。
(3)中空繊維束の中空部を水で飽和させる処理
水の入った容器を準備し、前述のデシゲーター内に設置した。デシケーター内を減圧状態にしたのち、中空繊維束の繊維束が固定されていない一方の中空繊維の端部(以下、端部と称す)を水に浸漬した。デシケーター内に窒素ガスを封入し、中空繊維の中空部に水を導入した。
中空繊維の中空部に水を導入した状態で16時間放置した。16時間後、中空部の水を真空減圧により放出した。中空繊維束の吸水率(吸水率(%)=〔(中空部に水を導入し16時間保持後、中空部の水を放出した後の中空繊維束質量)−(水を導入する前の中空繊維束の質量)〕/水を導入する前の中空繊維束の質量×100)は1.4%であった。
(4)ゲル前駆体溶液の中空繊維中空部への導入
表2に示す水溶液Aを調製し、デシゲーター内に設置した。前述の方法と同様に端部から水溶液Aを吸引し、中空繊維の中空部に導入した。
(5)中空繊維束を水相中に配置する工程
水溶液Aを導入後、一旦デシケーターから中空繊維束を取り出して、予め脱気処理および窒素置換処理を施した500mLの純水が入った容器に、封止していない方の中空繊維の先端を上側にし、該先端が純水に接触しないように注意深く中空繊維の接着部が完全に漬かるように中空繊維束を浸漬させた。この時、中空繊維束を浸漬させた容器内にある中空繊維束の接着部の最上部で水圧を計測すると、50N/mであった。
(6)重合反応
次いで、前記の中空繊維束を浸漬させた純水の入った容器を前記デシケーター内に設置し、55℃で3時間、重合反応を実施した。
(7)薄片化
重合反応終了後、ミクロトームを用い、中空繊維束を中空繊維の長手方向に直角方向に厚さ250μmに薄片化した。このようにして、256個のキャプチャープローブを含むゲルスポットを搭載した厚さ250μmのマイクロアレイを100枚得た。
(8)マイクロアレイの評価
ゲルスポットは、顕微鏡(Nikon社製 蛍光顕微鏡エクリプス E600 対物レンズ×10 NA=0.3)を使用して観察した。
水を満たした光透過性のシャーレにマイクロアレイを浸漬し、シャーレを顕微鏡のステージに載せ、シャーレの底部より白色光を照射した。レンズのピントを調整しながら、前述で得た100枚のマイクロアレイに関して、最外周に配置されたゲルスポットとその内側に配置されたゲルスポットをそれぞれ顕微鏡にて観察した。
その結果、すべてのマイクロアレイにおいて、最外周に配置されたゲルスポットとその内側のゲルスポットでピントの合う位置に差異は認められず、均質なゲルスポットが形成されていることが確認された。観察結果の一部を図2に示した。
<比較例1>
前述の(5)の処理を行わない以外は、実施例1と同様に操作を行った。その結果、すべてのマイクロアレイで最外周とその内側のゲルスポットとでピントの合う位置に差異が認められた。観察結果の一部を図3に示した。
<実施例2>
次に、本発明の製造方法で作製したマイクロアレイの各スポットの検出シグナル強度を評価するために、モデル検体となるオリゴDNAを使ってハイブリダイゼーション反応を行った。
(1)マイクロアレイの製造
実施例1のキャプチャープローブの配列を配列番号2(tctcgaaagg cttcctactc ggctgtgagt ctttacggca accctgtccg gtattgggaa atctt)(インビトロジェン社にて受託合成)に変更した以外は、実施例1の(1)から(7)と同様の方法でマイクロアレイを製造した。
(2)モデル検体の蛍光標識
まず、配列番号2と相補の配列となる配列番号3(aagatttccc aataccggac agggttgccg taaagactca cagccgagta ggaagccttt cgaga)(インビトロジェン社にて受託合成)の1pmol/μLの超純水溶液を調製した。
次に、モデル検体の標識液をクレアテック社製の蛍光標識試薬PlatinumBright(登録商標)を使って以下の通り調製した。先に調製したオリゴDNA(配列番号3)の溶液1pmol/μLとPlatinumBright(登録商標)の構成品であるPlatinumBright647 infrared(励起光647nm、蛍光665nmの蛍光標識剤)及び同じく同試薬の構成品である10x Labeling Solutionの表3の通り配合した溶液を調製した。

表3の配合で溶液を以下の手順で蛍光標識剤とオリゴDNAとを反応させることにより、蛍光標識液を調整した。
まず、表3で配合した溶液20μLを85℃で30分インキュベートして、反応させた。次に、PlatinumBright(登録商標)の構成品である精製カラム(KREAPure purification columns)をボルテックスで内容物をよく攪拌した後、カラムの先を折り、ふたを1/4開けて2mLのチューブにのせて、14,000rpmで1分遠心した。得られた溶出液を捨て、D.W.300μL加えて、再度14,000rpmで1分間遠心した。その後、カラムを1.5mLのチューブに移し、先の反応させた標識液を樹脂用にロードし、更に14,000rpmで1分遠心させた。
(3)ハイブリダイゼーション
(2)で調製した標識液から1μLを計り取り、表4に記載された組成でハイブリダイゼーション溶液を作製した。
次に、先に製造したマイクロアレイをハイブリダイゼーション溶液200μLにハイブリチャンバー内で完全に浸漬させ、設定温度65℃で16時間ハイブリオーブン中にてインキュベートした。
(4)洗浄
65℃で16時間インキュベートした後、マイクロアレイをハイブリチャンバーから取り出し、以下の手順で洗浄操作を行った。
まず、ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイをチャンバーからピンセットを用いて取り出し、あらかじめ65℃にしておいた洗浄バッファーA(0.12M Tris・HCl/0.12M NaCl/0.05% Tween−20溶液:10ml)の入ったチューブにマイクロアレイを浸漬させ、65℃で20分間静置した。
次に、65℃にしておいた洗浄バッファーA(0.12M−NaCl/0.05%−Tween 20溶液:10ml)の入った別のチューブに入れ替えて、さらに65℃で20分間静置した。
その後、65℃にしておいた洗浄バッファーB(0.12M Tris・HCl/0.12M NaCl溶液10ml)の入ったチューブに入れ替えて、65℃で10分間静置した。
(5)蛍光シグナル強度の検出
本発明の方法で得たマイクロアレイを5枚用意し、それぞれ検出用のチャンバーに載せ、マイクロアレイを洗浄バッファーBで満たした。次にマイクロアレイを載せたチャンバーを冷却CCDカメラ式蛍光顕微鏡の試料台に載せ、波長650nmで4秒間励起光をマイクロアレイに照射し、発光される蛍光の強度をそれぞれ測定した。
<比較例2>
キャプチャープローブの配列として配列番号2のものを使用した以外は比較例1と同様の方法でマイクロアレイを作製し、実施例2と同じモデル検体を使用して、実施例2と同様の方法で、ハイブリダイゼーション反応を行い、各スポットの蛍光シグナル強度データを取得した。
蛍光シグナル強度の比較
本発明の方法の効果を調べるために、以下の通りマイクロアレイの検出シグナル強度のバラツキを実施例2と比較例2で比較した。
(イ)蛍光シグナル強度のCVの比較
まず、測定したマイクロアレイの全スポット(256スポット)の蛍光シグナル強度の変動係数CV(coefficient of variation)、即ち全スポットの蛍光シグナル強度値の標準偏差をその平均値で除した値をマイクロアレイ5枚についてそれぞれ算出し、その平均値を求めた。実施例2と比較例2とで比較したところ、比較例2のCVが約26%であったのに対し、実施例2のCVは10%未満であった(表5)。
(ロ)スポット位置における蛍光シグナル強度の比較
次に、最外周スポット(60スポット)の蛍光シグナル強度の平均値を内側のスポット(196スポット)の蛍光シグナル強度の平均値で割った値をそれぞれ5枚のマイクロアレイについて算出し、その値の5枚の平均値を実施例2と比較例2とで比較した。なお、最外周スポットと内側のスポットの位置は図4に示した。
その結果、実施例2で得られた数値は0.94であり、均質なゲルスポットを有するマイクロアレイが得られたことが確認できた。これに対して、比較例2では0.44であった(表5)。
以上の結果から、本発明の方法により各スポットの蛍光シグナル強度がより均一になることが確認できた。
1 配列固定器具
11 孔部
21 多孔板
31 中空繊維
41 板状物

Claims (4)

  1. 以下の工程を含む、生体関連物質検出用マイクロアレイの製造方法。
    (1)複数本の中空繊維を、中空繊維の各繊維軸が同一方向となるように3次元に配列し、その配列を樹脂で固定することにより、中空繊維束を製造する工程
    (2)キャプチャープローブを含むゲル前駆体溶液を中空繊維の中空部に導入する工程
    (3)水相中で、中空繊維の中空部に充填されたゲル前駆体溶液を重合させる工程
    (4)中空繊維束を繊維の長手方向に交叉する方向で切断して薄片化する工程。
  2. 工程(1)の後、工程(2)の前に、中空繊維の中空部に液体を導入し、一定時間保持させる工程を含む、請求項1記載の方法。
  3. 水相中が、水中又は55℃において50%以上の水蒸気濃度の環境中である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 水相中が、50N/m以上の静水圧を有する水中である、請求項4記載の方法。
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