JP2012207352A - トリコット編地 - Google Patents

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Abstract

【課題】
良好な通気性を有しながら、十分な強度と外観上の品位をも兼ね備え、車両内装材、特には、ベンチレーションシート用表皮材として好適に用いることができる布帛を提供する。
【解決手段】
2つの開口組織が一体化されてなるトリコット編地であって、
第1の開口組織は、2枚の筬に編糸の振り幅に応じて糸抜き導糸された異収縮混繊糸からなる編糸により、所定の範囲の振り幅で編成されてなる開口組織であり、
第2の開口組織は、2枚の筬に1in1outで導糸された77〜110dtexの範囲の繊度を有する編糸により、ダブルアトラス組織で編成されてなる開口組織であることを特徴とするトリコット編地。
【選択図】 なし

Description

本発明はトリコット編地に関する。特には、車両内装材に適した通気性の良好なトリコット編地に関する。
車両内装材、特にシート用表皮材(椅子張り地)においては、長時間の使用により蒸れ感が生じるという問題があった。
このような問題に対し、カーシートの背もたれ部や座面にファンを取り付け、ファンの送風により背もたれ部や座面の蒸れ感を解消する、所謂ベンチレーションシートが採用されている。
ベンチレーションシート用の表皮材には通気性を有することが求められ、例えば、表皮材として合成皮革や天然皮革などを用いる場合には、パンチング加工による孔開けが行われている。
また、表皮材として布帛を用いる場合には、ネット状組織やメッシュ状組織などの開口組織としたり(例えば、特許文献1および2)、織目や編目の粗い組織としたり(例えば特許文献3)、繊度の小さい糸条を用いたりすることによって、通気性を確保している。しかしながら、このような方法を採った場合、概して、表皮材として十分な強度を得ることができないという問題や、外観上の品位が損なわれる(低密度の布帛は、高級感に欠ける傾向にある)という問題があった。皮革類と比較して低価格であり、しかも、圧力損失の少ない(よって、送風機の小型軽量化、製造コストの削減が可能である)布帛は、ベンチレーションシート用表皮材として要望が強く、改善が求められている。
特開2006−346359号公報 特開2010−52494号公報 特開2005−297661号公報
本発明の目的は、良好な通気性を有しながら、十分な強度と外観上の品位をも兼ね備え、車両内装材、特には、ベンチレーションシート用表皮材として好適に用いることができる布帛を提供することである。
本発明は、2つの開口組織が一体化されてなるトリコット編地であって、
第1の開口組織は、2枚の筬に編糸の振り幅に応じて糸抜き導糸された異収縮混繊糸からなる編糸により、所定の範囲の振り幅で編成されてなる開口組織であり、
第2の開口組織は、2枚の筬に1in1outで導糸された77〜110dtexの範囲の繊度を有する編糸により、ダブルアトラス組織で編成されてなる開口組織であることを特徴とするトリコット編地である。
本発明によれば、車両内装材として十分な強度と外観上の品位を有し、かつ、ベンチレーションシート用表皮材に求められる通気性を有するトリコット編地を提供することができる。
第2の開口組織であるダブルアトラス組織の組織図(a)と模式図(b)による説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のトリコット編地は、2つの開口組織が一体化されてなるトリコット編地であって、第1の開口組織は、2枚の筬に編糸の振り幅に応じて糸抜き導糸された異収縮混繊糸からなる編糸により、所定の範囲の振り幅で編成されてなる開口組織であり、第2の開口組織は、2枚の筬に1in1outで導糸された77〜110dtexの範囲の繊度を有する編糸により、ダブルアトラス組織で編成されてなる開口組織であることを特徴とするものである。
本発明のトリコット編地は、一体化する2つの組織の双方に開口組織を採用することで、ベンチレーションシート用表皮材として良好な通気性を有することができ、また、2つの開口組織を一体化することで、開口部の形成による編地の強度低下を抑制することができる。さらに、異収縮混繊糸を用いることで、編目を適度に締め付け、強度を向上させることができるとともに、その膨らみにより開口部などが隠蔽され、外観上の品位を良好ならしめることができる。
本発明において、第1の開口組織は、2枚の筬に編糸の振り幅に応じて糸抜き導糸された編糸により、所定の範囲の振り幅で編成されてなる開口組織である。
編糸の振り幅については、得られるトリコット編地の通気性と強度を考慮すると、3〜5針の範囲であることが好ましく、3〜4針の範囲であることがより好ましい。振り幅が3針未満の場合、得られるトリコット編地の開口部が小さくなり、通気性が不十分となる虞がある。振り幅が5針を超える場合、得られるトリコット編地の厚みが大きくなり、通気性が不十分となったり、伸び特性が低下したり、風合いが粗硬になったりする虞がある。
また、「編糸の振り幅に応じて糸抜き」とは、例えば、編糸の振り幅を3針とする場合は3in3out、4針とする場合は4in4outと、編糸の振り幅の針数と同数糸抜きを行うことをいう。
第1の開口組織の編糸(糸条)には、異収縮混繊糸を用いることが肝要である。異収縮混繊糸とは、熱収縮率の異なる複数種の繊維を混ぜ合せて1本の糸条にしたものであり、複数種の繊維原料を同時に複合紡糸する方法や、別々に紡糸して原糸を製造後、後工程で混ぜ合わせるなどの方法により得ることができるものである。このような異収縮混繊糸を用いることで、熱処理により高収縮繊維ひいては混繊糸全体が収縮する結果、トリコット編地全体の編目が締まり、強度が向上する。また、高収縮繊維の収縮にともなって低収縮繊維が膨らみ、第2の開口組織の凹凸や開口部などが隠蔽され、外観上の品位に優れたトリコット編地とすることができる。
車両内装材として用いられる編地には、意匠性の向上を目的に、変化に富んだ開口組織が採用されることが多い。しかしながら、前述のように、過度に目の粗い編地は高級感に欠ける傾向にある。ところが、第2の開口組織(車両内装材として適用された場合に、車室内空間と接しない側の組織である)の開口部などが隠蔽されることで、外観上の品位を保つことができるのである。
異収縮混繊糸は、典型的には、熱収縮率の異なる2種の繊維から構成される。このとき、高収縮繊維と低収縮繊維の熱収縮率差は、20〜70%の範囲であることが好ましく、25〜35%の範囲であることがより好ましい。熱収縮率差が20%未満の場合、異収縮混繊糸を用いることによる前述の効果が十分に発揮されず、得られるトリコット編地の外観上の品位が損なわれたり、強度が不十分となったりする虞がある。熱収縮率差が70%を超える場合、得られるトリコット編地の外観上の品位が損なわれたり、強度が不十分となったりする虞がある。
異収縮混繊糸は、上記熱収縮率差の条件を満足する限り、3種以上の繊維から構成されていてもよい。
異収縮混繊糸を構成する繊維の素材は、熱収縮率の異なる2種以上である限り特に限定されるものでなく、従来公知の繊維素材を用途に応じて適宜選択することが可能であるが、物性に優れるという理由により、高収縮繊維、低収縮繊維ともに合成繊維であることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。ポリエステル異収縮混繊糸として具体的には、レギュラーポリエステルと共重合ポリエステルとを混繊したものや、同一のポリエステル未延伸糸を、熱処理条件を異ならせて延伸後、混繊したものなどを挙げることができる。
異収縮混繊糸やその原糸の形態は、通常、マルチフィラメント糸であるが、捲縮などの加工が施されていてもよい。
異収縮混繊糸の繊度(糸繊度または総繊度ともいう)は特に限定されるものではないが、56〜167dtexの範囲であることが好ましく、84〜110dtexの範囲であることがより好ましい。繊度が56dtex未満の場合、得られるトリコット編地の強度が不十分となる虞がある。繊度が167dtexを超える場合、得られるトリコット編地の厚みが大きくなり、通気性が不十分となる虞がある。
異収縮混繊糸を構成する繊維のうち、高収縮繊維の繊度(単繊維繊度ともいう)は特に限定されるものではなく、通常、2〜5dtexの範囲のものが用いられる。
一方、低収縮繊維の繊度(単繊維繊度ともいう)は、0.3〜1.2dtexの範囲であることが好ましく、0.5〜1.0dtexの範囲であることがより好ましい。単繊維繊度が0.3dtex未満の場合、得られるトリコット編地の強度が不十分となる虞がある。単繊維繊度が1.2dtexを超える場合、得られるトリコット編地の風合いが粗硬になったり、外観上の品位が損なわれたりする虞がある。
次に、第2の開口組織について説明する。
本発明において第2の開口組織は、2枚の筬に1in1outで導糸された編糸により、ダブルアトラス組織で編成されてなる開口組織である。
ダブルアトラス組織とは、2枚の筬がそれぞれ反対方向に運動して2つのアトラス組織を編成することにより、交差縞を形成するものである。本発明においては、各々のアトラス組織を形成する編糸を、1in1outで導糸することにより、図1の組織図(a)、及びこれに対応する模式図(b)に示すように、小さな開口部1が多数形成されるため、強度を損なうことなく、通気性を付与することができる。かかる第2の開口組織を、第1の開口組織に重ねるように一体化することにより、通気性を確保しつつトリコット編地の強度をさらに向上させることができる。
第2の開口組織の編糸(糸条)は、特殊な糸条である必要がなく、後述の繊度条件を満足する限り、通常の糸条(ここでは、異収縮混繊糸でないということを意味する)を用いることができる。糸条を構成する繊維の素材は特に限定されるものでなく、従来公知の繊維素材を用途に応じて適宜選択することが可能であるが、物性に優れるという理由により、合成繊維であることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。
糸条の形態は特に限定されるものでなく、紡績糸、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸のほか、各種加工糸など従来公知の形態の糸条を用途に応じて適宜選択することが可能である。
糸条の繊度(糸繊度または総繊度ともいう)は、77〜110dtexの範囲であることが求められ、77〜84dtexの範囲であることが好ましい。繊度が77dtex未満の場合、得られるトリコット編地の強度が不十分となる虞がある。繊度が110dtexを超える場合、得られるトリコット編地の厚みが大きくなり、通気性が不十分となる虞がある。
糸条を構成する単繊維の繊度は特に限定されるものではないが、0.5〜5.0dtexの範囲であることが好ましく、2.0〜3.5dtexの範囲であることがより好ましい。単繊維繊度が0.5dtex未満の場合、得られるトリコット編地の強度が不十分となる虞がある。単繊維繊度が5.0dtexを超える場合、得られるトリコット編地の風合いが粗硬になったり、外観上の品位が損なわれたりする虞がある。
本発明のトリコット編地は、必要に応じて起毛加工を施してもよい。第1の開口組織側に起毛加工を施すことにより、スエード調やヌバック調の外観となり意匠性や触感が向上する。
起毛加工の方法としては、例えば、針布による針布起毛加工やサンドペーパーによるエメリー起毛加工などを挙げることができる。針布起毛加工の場合は、針布の密度や長さなどの諸条件を選択することにより、編糸の起毛状態を適宜設定できる。また、エメリー起毛加工においても、サンドペーパーのペーパーメッシュや、起毛時のサンドペーパーとトリコット編地との接触回数などの諸条件を選択することにより、編糸の起毛状態を適宜設定できる。さらに、必要に応じて、起毛後に毛足を整えるための揃毛加工を施してもよい。
かくして、本発明のトリコット編地を得ることができる。本発明のトリコット編地は、車両内装材、特には、ベンチレーションシート用表皮材として好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における各評価試験は以下の方法に従った。
[通気性]
JIS L1018 8.33.1(フラジール形試験機を使用)に従って測定し、以下の基準に従って判定した。
○ : 150cc/cm・sec以上
× : 150cc/cm・sec未満
[引張強度]
50mm×250mmの大きさの試験片を、タテ方向(長手方向)・ヨコ方向(幅方向)・正バイアス方向・逆バイアス方向の4方向からそれぞれ5枚ずつ採取した。室温20±2℃、湿度65±5%RHの雰囲気下、試験片を、つかみ幅が50mm、つかみ間隔が100mmとなるように、引張試験機:オートグラフAG−100A(株式会社島津製作所製)のつかみ具に取り付けた。取り付けた試験片を、つかみ具の移動速度200mm/minで試験片が破断するまで引っ張り、破断時の最大荷重(N/50mm)を測定した。各方向における測定値(N=5)のうち最小値を引張強度の値とし、以下の基準に従って判定した。
○ : 500N/50mm以上
× : 500N/50mm未満
[実施例1]
28ゲージで4枚筬を有するトリコット編機を使用して、筬L1および筬L2に84dtex/36f(単繊維繊度:2.33dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸を1in1outで導糸して第2の開口組織を、筬L3および筬L4に84dtex/144f(単繊維繊度:0.58dtex)のポリエステルマルチフィラメント低収縮糸(加工糸)と33dtex/12f(単繊維繊度:2.75dtex)のポリエステルマルチフィラメント高収縮糸とからなる異収縮混繊糸(熱収縮率差:28%)を3in3outで導糸して第1の開口組織を、それぞれ以下に示す組織(組織1)で編成して、編機上の密度が60コース/2.54cmのトリコット編地を得た。
得られたトリコット編地を、ヒートセッターにより150℃で90秒間熱処理してプレセットし、液流染色機により130℃で30分間染色した後、ヒートセッターにより150℃で90秒間熱処理して乾燥した。
次いで、パイル針布ローラーを12本、カウンターパイルローラーを12本有する針布起毛機により、針布トルク2.5MPa、布速12m/分にて、編み始め方向より起毛処理を6回行って、第1の開口組織側の編糸をセミカットした。次いで、ヒートセッターにより150℃で90秒間熱処理して仕上げセットし、密度64コース/2.54cm、40ウエル/2.54cmの本発明のトリコット編地を得た。
組織1
L1)1−0/1−2/2−3/3−4/4−5/4−3/3−2/2−1
L2)4−5/4−3/3−2/2−1/1−0/1−2/2−3/3−4
L3)3−4/1−0/3−4/6−7/4−3/6−7/4−3/1−0
L4)4−3/6−7/4−3/1−0/3−4/1−0/3−4/6−7
[実施例2〜4および比較例1〜4]
表1に従って、実施例1と同様の手順で、トリコット編地を得た。なお、実施例4と比較例4は、以下に示す組織(組織2)でトリコット編地を編成した。
組織2
L1)1−0/1−2/1−0/1−2/2−3/3−4/4−5/4−3/4−5/4−3/3−2/2−1
L2)4−5/4−3/4−5/4−3/3−2/2−1/1−0/1−2/1−0/1−2/2−3/3−4
L3)3−4/1−0/3−4/1−0/3−4/6−7/4−3/6−7/4−3/6−7/4−3/1−0
L4)4−3/6−7/4−3/6−7/4−3/1−0/3−4/1−0/3−4/1−0/3−4/6−7
実施例および比較例のトリコット編地について評価した結果を表1に示す。
実施例のトリコット編地は、いずれも、十分な通気性と引張強度を有するものであった。
実施例2では、第1の開口組織に太繊度の低収縮繊維を含む異収縮混繊糸を用いたことにより、実施例1と比べて、トリコット編地の引張強度が向上し、また、仕上がり密度が低くなることにより通気性が向上した。
実施例3では、第1の開口組織に実施例1に用いた異収縮混繊糸の双糸を用いたことにより、実施例1と比べて、トリコット編地の引張強度が向上した。
実施例4では、第1の開口組織、および、第2の開口組織の編組織を変更して開口の大きい組織としたことにより、実施例1と比べて、トリコット編地の通気性が向上した。
比較例1では、第2の開口組織の糸抜きを5in1outとして開口の小さい組織としたことにより、トリコット編地の通気性が著しく損なわれ、所望の効果は得られなかった。
比較例2では、第2の開口組織に細繊度の糸条を用いたことにより、トリコット編地の引張強度が著しく損なわれ、所望の効果は得られなかった。
比較例3では、第2の開口組織に細繊度の糸条を用いたことに加え、編機上のコース数を調節して密度の高い組織としたことにより、トリコット編地の通気性、引張強度、特に引張強度が著しく損なわれ、所望の効果は得られなかった。
比較例4では、第2の開口組織に細繊度の糸条を用いたことに加え、第1の開口組織、および、第2の開口組織の編組織を変更して開口の大きい組織としたことにより、トリコット編地の引張強度が著しく損なわれ、所望の効果は得られなかった。
なお、いずれの実施例および比較例も、外観上の品位は良好であった。
Figure 2012207352
1・・・開口部
2・・・非開口部

Claims (1)

  1. 2つの開口組織が一体化されてなるトリコット編地であって、
    第1の開口組織は、2枚の筬に編糸の振り幅に応じて糸抜き導糸された異収縮混繊糸からなる編糸により、所定の範囲の振り幅で編成されてなる開口組織であり、
    第2の開口組織は、2枚の筬に1in1outで導糸された77〜110dtexの範囲の繊度を有する編糸により、ダブルアトラス組織で編成されてなる開口組織であることを特徴とするトリコット編地。
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