JP2012207243A - 被覆部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラズマCVD装置1は、直流パルスプラズマCVD法により被覆部材を製造するためのものである。被覆部材の製造時には、円筒状の基材200は、処理室3内で宙吊りにされる。宙吊り状態の基材200は、その軸線Cが水平方向に延びるような姿勢にされている。プラズマ電源8をオンすることにより、隔壁2と基台5との間に直流パルス電圧を印加してプラズマを発生させる。このプラズマの発生により、処理室3内において原料ガスがプラズマ化し、基材200の内周面および外周面にDLC膜が堆積される。
【選択図】図1
Description
ところで、プラズマCVD法では一般的に、基材を収容する処理室内に原料ガスを導入しつつ、基材に電圧を印加する。これにより、基材表面の周辺に、プラズマ化した原料ガス(以下、単に「プラズマ」という場合がある。)が存在するようになる。このとき、基材とプラズマとの間には、基材の表面の近傍にイオンシース(イオンが多く集まった状態)が形成される。このイオンシースの電位差でプラズマ中のイオンが加速され、イオンビームとなって、基材表面にほぼ垂直に衝突する。イオンが繰り返し衝突することにより、基材表面にDLCの堆積膜が形成される。
また、請求項2記載の発明は、前記DLC膜形成工程に先立って実行され、前記処理室内で、前記基材を、その軸線(C)が水平に延びるような姿勢で吊り下げる吊設工程をさらに含む、請求項1記載の被覆部材の製造方法である。
図1は、本発明の被覆部材20(図3および図4参照)の製造方法に用いるプラズマCVD装置1の構成を模式的に示す図である。このプラズマCVD装置1を用いて、直流パルスプラズマCVD法により被覆部材20を製造することができる。
プラズマCVD装置1は、隔壁2で取り囲まれた処理室3と、基台5と、処理室3内に原料ガスを導入するためのガス導入管6と、処理室3内を真空排気するための排気系7と、処理室3内に導入されたガスをプラズマ化させるための直流パルス電圧を発生させるプラズマ電源8とを備えている。プラズマCVD装置1は、直流パルスプラズマCVD(Direct Current Plasma Chemical Vapor Deposition)法を実施するための装置である。
ガス導入管6には、成分ガスである原料ガスが供給される。ガス導入管6には、成分ガスの供給源(ガスボンベや液体を収容する容器等)からそれぞれの成分ガスを処理室3に導くための複数の分岐導入管(図示せず)が接続されている。各分岐導入管には、各供給源からの成分ガスの流量を調節するための流量調節バルブ(図示せず)等が設けられている。また供給源のうち液体を収容する容器には、必要に応じて、液体を加熱するための加熱手段(図示せず)が設けられている。
第1排気管13の途中部には、第1開閉バルブ15および第1ポンプ17が、処理室3側からこの順で介装されている。第1ポンプ17としては、たとえば油回転真空ポンプ(ロータリポンプ)やダイヤフラム真空ポンプなどの低真空ポンプが採用される。油回転真空ポンプは、油によってロータ、ステータおよび摺動翼板などの部品の間の気密空間および無効空間の減少を図る容積移送式真空ポンプである。第1ポンプ17として採用される油回転真空ポンプとしては、回転翼型油回転真空ポンプや揺動ピストン型真空ポンプが挙げられる。
図2(a)および図2(b)に示すように、基材200は円筒状をなしている。基材200の内径をDとし、基材200の軸線(軸線C)方向長さをLとすると、この実施形態では、L/D=約2.0である。しかしながら、円筒状の基材200は、L/Dが2.0程度のものだけでなく、L/Dが1.0程度のものやL/Dが3.0程度のものなど、任意の形状のものを採用できるのはもちろんのことである。L/Dの下限は0に近く、L/Dの上限はたとえば5.0程度である。また、基材200の肉厚をWとする。
図3は、被覆部材20の内周の表層部分の断面図である。図4は、被覆部材20の内周の表層部分の断面図である。
被覆部材20は、ガイドブッシュ、シリンダ、ベアリングなど他の部材と摺動する摺動部材する部材であってもよい。また、被覆部材20は金属配管などであってもよい。
図1に示すように、プラズマCVD装置1を用いて基材200の内周面201および外周面202にDLC膜21およびDLC膜22をそれぞれ形成して被覆部材20を製造するには、まず処理室3内に基材200を吊り下げた後処理室3を閉じる。
原料ガスとしては、たとえば炭素系化合物に、水素ガスおよびアルゴンガス等を加えたものを用いる。炭素系化合物としては、たとえばメタン(CH4)、アセチレン(C2H2)、ベンゼン(C6H6)等の、常温、常圧下で気体ないし低沸点の液体である炭化水素化合物の1種または2種以上が挙げられる。水素ガスおよびアルゴンガスはプラズマを安定化させる作用をする。またアルゴンガスは、基材200の内周面201または外周面202に堆積したCを押し固めてDLC膜21,22を硬膜化する作用もする。
処理圧力が50Pa未満では、先に説明したように処理室3中に導入される原料ガスの量が少ないためDLC膜21,22の成膜速度が小さく、所定の厚みを有するDLC膜21を形成するのに長時間を要する。
次いでプラズマ電源8をオンして、隔壁2と基台5との間に電位差を生じさせることにより、処理室3内にプラズマを発生させる。
図5は、プラズマ電源8から基材200に印加される直流パルス電圧の波形の一例を示すグラフである。直流パルス電圧の設定電圧値は、たとえば1000V程度の値に設定される。すなわちプラズマ電源8がオンされると、隔壁2と基台5との間に1000Vの電位差が生じる。言い換えれば1000Vの負極性の直流パルス電圧が、処理室3内に前述のようにセットされた(図1に示す宙吊り状態の)基材200に印加されている。波形がパルス状であるので、かかる高電圧が印加されても処理室3内に異常放電は生じず、基材200の温度上昇を抑制して、処理温度をたとえば300℃以下に抑制することができる。
デューティー比=τ×f ・・・(1)
また、基材200に印加される電圧が直流パルス電圧であり、かつ処理室3内の処理圧力が50Pa以上と高圧であるので、基材200の内周面201の近傍、および基材200の外周面202の近傍における電界の偏りがそれぞれ比較的小さい。そのため、基材200の内周面201の近傍に形成されるイオンシース204のシース幅206(図2(b)参照)、および基材200の外周面202の近傍に形成されるイオンシース205のシース幅207(図2(b)参照)が、それぞれ基材200に直流電圧を印加する場合と比較して狭くなる。そのため、基材200の内部空間においてプラズマが存在可能な領域が広くなり、基材200の内部空間における基材軸線方向の中央部分にまで十分な量のプラズマが届くようになる。これにより、基材200の内周面201に形成されるDLC膜21の厚みが、基材軸線方向に関して均一になる。
DLC膜形成工程を実施して、基材200の内周面201および外周面202にそれぞれ、所定の膜厚を有するDLC膜21,22が形成された時点で、プラズマ電源8をオフするとともに、原料ガスの導入を停止した後、第1ポンプ17による排気を続けながら常温まで冷却する。次いで第1開閉バルブ15を閉じ、代わってリークバルブ(図示しない)を開いて処理室3内に外気を導入して処理室3内を常圧に戻した後、処理室3から基材200を取り出す。これにより、基材200の内周面201の少なくとも一部がDLC膜21によって被覆されているとともに、基材200の外周面202の少なくとも一部がDLC膜22によって被覆された被覆部材20が製造される。
実施例では、図1に示すプラズマCVD装置1を用いて、ステンレス鋼(たとえばSUS304)からなる基材200の内周面201および外周面202にそれぞれDLC膜21,22を形成した。
原料ガスとして実施例では、炭素系化合物としてのメタン、水素ガス、およびアルゴンガスの混合ガスを用い、メタン、水素ガスおよびアルゴンガスの3成分の流量はそれぞれ100ccm、水素:60ccmおよびアルゴン:60ccmとした。
先に説明した手順で処理室3内を真空排気した後、原料ガスを導入して処理室3内の処理圧力を200Paに調節した。次いで再びプラズマ電源8をオンして処理室3内にプラズマを発生させて、直流パルスプラズマCVD法により基材2000の内周面201および外周面202にDLC膜21,22を形成した。一方開口端から奥側に3mmの箇所、基材軸線方向の中央部分、および他方開口端から奥側に3mmのそれぞれの箇所において、形成したDLC膜21,22の膜厚をそれぞれ測定した。
<実施例1>
基材200の内径Dを20mm、軸方向長さLを40mmとした。すなわち、L/D=2.0である。また、厚みWは2mmである。
<実施例2>
基材200の内径Dを10mm、軸方向長さLを20mmとした。すなわち、L/D=2.0である。また、厚みWは2mmである。
図6および図7より、実施例1および実施例2では、DLC膜21,22の厚みが、基材軸線方向にほぼ均一であることが理解される。
以上によりこの実施形態によれば、基材200の内周面201に形成されるDLC膜21の厚みが、基材軸線方向に関して均一になる。すなわち、小径で長尺な筒状の基材200であっても、基材200の内周面201を均一厚みのDLC膜21で被覆することができる。
たとえば、処理室3内で基材200を、図2(b)に二点鎖線で示すように基台5のプレート9の上面に直置きにすると、基材200の外周面202とプレート9の上面とが線接触する。この状態で、直流パルスプラズマCVD法が実施されると、基材200の外周面202における微小空間CLの周囲では、プレート9の上面との間に微小空間CLが形成される。この微小空間CLではプラズマの異常放電が生じ、この微小空間CLの周りの外周面202では、DLC膜22の形成が不十分になるおそれがある。
たとえば、基材200をプレート9から吊り下げた状態で、直流パルスプラズマCVD法を実施する場合を例に挙げたが、基材200は、基台5のうちプレート9を除く部分から吊り下げられた状態であってもよいし、たとえば隔壁2の天面から吊り下げられた状態であってもよい。
また、基材200として、円筒状のものでなく、たとえば正四角筒状など角筒状のものを採用することもできる。
Claims (2)
- 筒状基材の内面の少なくとも一部がDLC膜で被覆された被覆部材の製造方法であって、
前記基材を収容する処理室内に、少なくとも炭素系化合物を含む原料ガスを導入して処理圧力50Pa以上の条件下で直流パルス電圧を前記基材に印加させる直流パルスプラズマCVD法により、前記基材内面にDLC膜を形成するDLC膜形成工程を含む、被覆部材の製造方法。 - 前記DLC膜形成工程に先立って実行され、前記処理室内で、前記基材を、その軸線が水平に延びるような姿勢で吊り下げる吊設工程をさらに含む、請求項1記載の被覆部材の製造方法。
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