JP2007302955A - 金属構造体内面への皮膜形成方法 - Google Patents

金属構造体内面への皮膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属管、金属容器等の中空部分を有する金属構造体の内面に、簡単な処理方法によって欠陥の無い良好な耐食性皮膜等の各種皮膜を形成できる方法を提供する。
【解決手段】金属構造体の内面に皮膜を形成する方法であって、
被処理物である金属構造体が、金属材料によって囲まれた中空部分を有し、且つ開口部を有するものであり、
薄膜を形成する方法が、金属構造体の中空部分を密閉状態として内部を排気した後、原料ガスを導入し、該金属構造体を構成する金属材料部分にパルス状の交番電圧を印加して、該金属構造体の中空部分にプラズマを発生させて、プラズマCVD法によって皮膜を形成する方法である、金属構造体内面への皮膜形成方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、中空部分を有する金属構造体の内面に皮膜を形成する方法に関する。
従来、薬品、腐食性ガス等を収容する容器や、これらを送るための配管、水道管などは、塩化ビニル等の高耐腐食性の高分子材料で形成されることが多い。しかしながら、この様な高分子材料は、機械的強度に乏しいために、破損が生じやすいという欠点がある。
一方、金属管、金属容器等は、機械的強度の点では優れているものの、耐食性が劣るために、腐食性を有する薬品、ガスなどを用いる場合には、内面に耐食性を有する皮膜を形成することが必要となる。
従来、金属管、金属容器等の内部に皮膜をする方法としては、皮膜形成成分を含む処理液中に被処理物を浸漬し、その後加熱して皮膜を形成する浸漬法;熱化学反応又はアークプラズマで生成されたコーティング材を金属容器内壁へ溶射する溶射法;高周波数正弦波電源を用いて被処理物の内部で前躯体又は反応生成ガスのプラズマを発生させて製膜する高周波プラズマ化学気相成長法等が知られている。
しかしながら、上記した方法の内で、浸漬法では均一な皮膜を得ることが難しく、しかも、被処理物全体を加熱し脱水する操作が必要であり、処理が煩雑である。溶射法は、被処理物の端部からコーティング材を溶射するため、溶射部からの距離によって皮膜の性質が変化するという欠点がある(下記特許文献1参照)。
一方、高周波プラズマを用いた化学気相成長法では,被処理物の内部に電極を設置することが必要であり、例えば、歪曲した金属管等への適用が困難である(下記非特許文献1参照)。更に、形成された皮膜によるチャージアップの影響により、製膜速度が低減し、更に、膜欠損部へ異常な電界集中が起こるため、更なる膜欠損を発生させる等の欠点があり、高い耐腐食性を有する皮膜を形成することは困難である。
特開平8-271190 Koumei Baba and Ruriko Hatada, "Ion implantation into inner wall surface of a 1-m-long steel tube by plasma source ion implantation" Surface and Coatings Technology 128-129 (2000) 112-115
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、金属管、金属容器等の中空部分を有する金属構造体の内面に、簡単な処理方法によって欠陥の無い良好な耐食性皮膜等の各種皮膜を形成できる方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、中空部分を有する金属構造体について、処理対象とする中空部分を排気した後、有機金属化合物、有機非金属化合物等の原料ガスを導入し、金属構造体自体にパルス状の交番電圧を印加する方法によれば、金属構造体の中空部分においてプラズマを発生させて、プラズマCVD法によって、金属構造体の内面に各種皮膜を形成することが可能となることを見出した。そして、上記したパルス状の交番電圧を印加する方法によれば、印加する正電圧と負電圧を個別に設定できることから、使用する反応ガスの種類に応じて最適パルス波形を選定する
ことによって、各種の形状の金属構造体の内部に良好な皮膜を形成することができ、均質で欠陥の無い良好な皮膜を形成できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
即ち、本発明は、下記の金属構造体内面への皮膜形成方法、及び内面に皮膜が形成された金属構造体を提供するものである。
1. 金属構造体の内面に皮膜を形成する方法であって、
被処理物である金属構造体が、金属材料によって囲まれた中空部分を有し、且つ開口部を有するものであり、
薄膜を形成する方法が、金属構造体の中空部分を密閉状態として内部を排気した後、原料ガスを導入し、該金属構造体を構成する金属材料部分にパルス状の交番電圧を印加して、該金属構造体の中空部分にプラズマを発生させて、プラズマCVD法によって皮膜を形成する方法である、金属構造体内面への皮膜形成方法。
2. 金属材料部分に印加するパルス状の交番電圧が、正パルス電圧Vpが、アース電位を基準として、30〜2000V、負パルス電圧Vnが、アース電位を基準として、―30〜−2000Vであって、正パルス電圧Vp及び負パルス電圧Vnの少なくとも一方の絶対値が200V以上であり、正パルスのパルス幅Tが、0.1μ秒≦T≦10μ秒、負パルスのパルス幅Tが、0.1μ秒≦T≦10μ秒、繰り返し周波数が100〜1MHzという条件を満足するものである上記項1に記載の金属構造体内面への皮膜形成方法。
3. 金属材料部分に印加するパルス状の交番電圧が、下記(1)〜(3)のいずれかの条件を満足するものである上記項2に記載の金属構造体内面への皮膜形成方法:
(1)負パルス電圧Vnの絶対値を正パルス電圧Vpの絶対値より大きくする,
(2)負パルスのパルス幅Tを、正パルスのパルス幅Tより長く設定する、
(3)上記(1)と(2)の条件を同時に満足する。
4. 処理対象とする金属構造体が、金属製管状材料又は金属容器である上記項1〜3のいずれかに記載の金属構造体内面への皮膜形成方法。
5. 上記項1〜4のいずれかの方法によって内面に、酸化物皮膜、窒化物皮膜又は炭素系皮膜が形成された金属構造体。
以下、本発明の皮膜形成方法について具体的に説明する。
金属構造体
本発明では、被処理物とする金属構造体は、金属材料によって囲まれた中空部分を有し、且つ開口部を有するものであればよい。本発明の皮膜形成方法によれば、この様な金属材料によって囲まれた中空部分を有する金属構造体における中空部分の内面に各種の皮膜を形成することができる。
具体的な金属構造体の構造については特に限定はなく、例えば、金属パイプ(直管、曲管等)等の金属製管状材料、開口部を有する各種形状の金属容器等を処理対象物とすることができる。
これらの中空部分を有する金属構造体は、後述するプラズマ処理方法において説明するように、プラズマ処理を行う際に、中空部分を排気した後、原料ガスを導入して所定の圧力状態に維持することが必要である。このため、例えば、管状材料については、両端の開口部をセラミックス、プラスチックス、ゴムなどの非導電性材料等の蓋材で塞ぐことが可能な構造であればよく、金属容器については、セラミックス、プラスチックス、ゴムなどの非導電性材料によって蓋をして内部を密閉状態に維持可能なものであればよい。金属構造体の具体的な形状については、特に限定はなく、例えば、管状材料については、直線状の管、歪曲した形状の管等、任意な形状の管状材料を処理対象物とすることができる。ま
た、管の内径は、一定である必要はなく、内径が変化するものであってもよい。金属容器についても、底面と開口部の面積が同一であってもよく、或いは、開口部が狭くなっている構造であってもよい。
金属構造体を構成する金属材料の材質についても特に限定はないが、該金属材料に電圧を直接印加するために、十分な導電性を有するものであることが必要である。金属構造体を構成する金属材料の一例としては、鋳鉄、ステンレス,銅,アルミニウム,亜鉛,チタン,ニッケル,マグネシウム,バナジウムまたはそれら各種合金等を挙げることができる。
更に、金属構造体は、後述する所定の圧力状態を維持するために十分な強度を有することが必要である。
尚、被処理物とする金属構造体は、皮膜を形成するための中空部分が金属材料によって構成されていればよく、その他、セラミックス、プラスチックス等の不導体部分を有するものであってもよい。
皮膜形成方法
(1)被処理物
本発明の方法では、まず、被処理物である金属構造体の中空部分を密閉状態とする。このためには、例えば、管状材料を被処理物とする場合には、両端部を蓋材によって塞げばよい。また、開口部を有する金属容器を被処理物とする場合には、開口部に蓋を設ければよい。これらの場合、金属構造体の中空部分を密閉状態とするために用いる蓋材の形状及び蓋材の設置方法については特に限定はなく、後述するプラズマ処理に必要な圧力に中空部分を維持可能であればよい。蓋材の材質については、プラズマCVD法によって金属構造体の内部に各種皮膜を形成する際に、蓋材に皮膜が形成されることを防ぐために、セラミックス、プラスチックス、ゴムなどの非導電性材料を用いればよい。
本発明方法では、金属構造体の中空部分を蓋材によって密閉状態とした後、金属構造体の中空部分を排気して原料ガスを導入するために、通常、蓋材には、排気口、ガス導入口などを設ける。排気口、ガス導入口等の形状や個数については、原料ガス、反応ガス、不活性ガスなどの種類、導入方法などに応じて適宜決めればよいが、排気口及びガス導入口への皮膜形成を防止するためには、処理対象の金属材料部分から電気的に遮断された状態で設置することが必要である。
(2)原料ガス
原料ガスとしては、採用するプラズマ処理条件下において、被処理物である金属構造体の中空部分において気体状として存在し得る各種の有機化合物を使用することができる。
液体状の有機化合物を原料とする場合には、必要に応じて加熱又は減圧して、気体状として原料ガスとして導入すればよい。また、液体状の有機化合物中に不活性ガスや反応ガスをバブリングさせて、これらのガスに同伴させて有機化合物を導入しても良い。
具体的な有機化合物の種類は、目的とする皮膜の種類に応じて、有機金属化合物、有機非金属化合物などから適宜選択すればよい。
例えば、酸化物皮膜を形成する場合には、目的とする酸化物皮膜の金属成分を含む有機金属化合物を原料ガスとして導入し、更に、反応ガスとして酸素ガスを導入すればよい。
原料ガスの具体例としては、例えば、酸化珪素皮膜を形成する場合には有機金属化合物
として、ヘキサメチルジシラン[(CH3)3SiSi(CH3)3],ヘキサメチルジシロキサン[(CH3)3SiOSi(CH3)3],ヘキサメチルジシラザン[(CH3)3SiNHSi(CH3)3],テトラエチルシラン[Si(C2H5)4],ケイ酸メチル[Si(OCH4)4],ケイ酸エチル[Si(OC2H5)],シラン[SiH4]等を用いることができる。
更に、その他の酸化物皮膜を形成する場合にも、目的とする酸化物の金属成分を含む有機金属化合物であって、採用するプラズマ処理条件下において、気体状として存在し得る有機金属化合物を選択すればよい。その他の金属成分の具体例としては、Al, Mg, Ti, V,
Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, Zr, Mo, In, Sn, Ta, W, Pb等を挙げることができる。
原料ガスの導入速度については特に限定はなく、処理対象の中空部分においてプラズマ発生可能な圧力を維持できる程度の流量とすればよい。例えば、10〜300ml/分程度の流量とすることができる。
また、酸化物皮膜を形成する場合に反応ガスとして導入する酸素ガスと有機金属化合物との流量比については特に限定的ではないが、例えば、有機金属化合物/酸素ガス=0.1〜10程度、好ましくは0.3〜4程度の流量比とすればよい。
窒化物皮膜を形成する場合には、酸化物皮膜を形成する場合と同様に、原料ガスとして、目的とする窒化物膜の形成成分を含む有機化合物であって、採用するプラズマ処理条件下において、気体状として存在し得る有機化合物を選択すればよい。原料ガスの導入速度も酸化物皮膜を形成する場合と同様とすればよい。窒化物膜の形成成分を含む有機化合物としては、Al, Mg, Si, Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, Zr, Mo, In, Sn, Ta,
W, Pb等の金属成分を含む有機金属化合物、ホウ素含有有機化合物等を例示できる。また、窒化炭素膜を形成する場合には、後述する炭素系薄膜を形成する場合と同様の有機非金属化合物を用いればよい。
窒化物皮膜を形成する場合には、更に、反応ガスとして窒素ガスを導入する。導入する有機化合物と窒素ガスの流量比については特に限定的ではないが、例えば、有機化合物/窒素ガス=0.1〜10程度、好ましくは0.3〜4程度の流量比とすることができる。
アモルファスカーボン,グラファイト,ダイヤモンド様カーボン等の炭素系薄膜を形成する場合には、原料ガスとして、炭素原子の他に、水素原子、酸素原子、窒素原子等を含む有機非金属化合物であって、採用するプラズマ処理条件下において気体状として存在し得る有機非金属化合物を用いればよい。この様な有機非金属化合物の具体例としては、メタノール[CH3OH], エタノール[C2H5OH], アセトン[(CH3)2CO], アセトニトリル[CH3CN], ジエチルアミン[(C2H5)2NH], アゾイソブタン[(t-C4H9)2N2], トリエチルアミン[(C2H5)3N], プロパン[C3H8], メタン[CH4]等を例示できる。
炭素系薄膜を形成する場合には、更に、水素ガスを導入しても良い。導入する有機非金属化合物と水素ガスの流量比については特に限定的ではないが、例えば、有機非金属化合物/水素ガス=0.1〜10程度、好ましくは0.3〜4程度の流量比とすることができる。
更に、上記した酸化物皮膜、窒化物皮膜、及び炭素系皮膜のいずれの皮膜を形成する場合にも、Ar、He、Ne、Kr、Xe等の不活性ガスを添加しても良い。不活性ガスを添加することによって、原料ガスの分解を促進することができる。不活性ガスを添加する場合には、導入する原料ガスと不活性ガスの流量比については特に限定的ではないが、例えば、原料ガス/不活性ガス=0.1〜10程度、好ましくは、0.5〜5程度の流量比
とすることができる。
(3)プラズマ処理条件
本発明の皮膜形成方法では、まず、密閉状態とされた金属構造体の中空部分を排気した後、中空部分に原料ガスと、必要に応じて、反応ガス及び/又は不活性ガスを導入する。
この際、中空部分の排気の程度については特に限定的ではないが、通常、1Pa程度以下まで排気すればよい。
次いで、金属構造体の中空部分に原料ガスを導入して、該金属構造体の金属材料部分にパルス状の交番電圧を直接印加する。電圧を印加する位置については特に限定的ではなく、処理対象となる中空部分を構成する金属材料の任意の位置に電気接点を設ければよい。
金属材料部分にパルス状の交番電圧を直接印加して、金属構造体の中空部分にプラズマを発生させることにより、原料ガスから生じた活性種が金属構造体の内部に堆積し、いわゆるプラズマCVDによって金属構造体の内面に膜状の堆積物が形成される。
本発明では、皮膜形成方法として、パルス状の交番電圧を印加する方法を採用することにより、電位が反転する際に、金属構造体の内壁の電位と反対電位の電子やイオンが内壁へ衝突し、チャージアップの緩和効果が生じ、更に、堆積した膜の表面部分の付着物の脱離等が生じることによって膜表面が活性化される。更に、印加する正電圧と負電圧を個別に設定できることから、膜の堆積と表面活性化、それぞれのプロセスに応じた正、負イオンの役割に対する最適なパルス波形を選択することが可能であり、膜の堆積と表面活性化が繰り返し行われ、高品質な膜形成が継続的に進行し、優れた密着性を有する均質な膜を形成することができる。
具体的なプラズマ処理条件については、特に限定はなく、使用する有機化合物の種類、中空部分の圧力等に応じて、金属構造体の中空部分においてプラズマが発生する条件とすればよい。
プラズマを発生させるために用いるパルス状の交番電圧は、例えば、高圧直流電源及びスイッチング回路を有するインバーター電源から発生させることができる。スイッチング回路としては、例えば、MOSFET素子、TTL素子等の小型半導体素子から構成されたものを使用できる。
電圧の大きさは特に限定的ではなく、使用する原料ガスの種類や、金属構造体の中空部分の圧力などに応じて、安定したプラズマが発生するように設定すればよい。例えば、正パルス電圧Vpの大きさは、アース電圧を基準として、30〜2000V程度とすればよく、負パルス電圧Vnの大きさは、アース電圧を基準として、−30〜−2000V程度とすればよい。ただし、正パルス電圧Vp及び負パルス電圧Vnの少なくとも一方については、その絶対値がプラズマ発生閾値電圧の200V以上であることが必要である。
正パルスのパルス幅Tと負パルスのパルス幅Tについては、例えば、それぞれ、0.1μ秒≦T≦10μ秒程度と、0.1μ秒≦T≦10μ秒程度とすればよい。正パルス幅Tと負パルス幅Tの各パルス期間中、電圧値は一定でなくてもよく、上記範囲内で多少変動させてもよい。
このようなパルス波形を有するパルス状の交番電圧では、TとTの合計時間である一周期をTとした場合に、1/Tで表される繰り返し周波数fは、通常、100Hz〜1MHz程度とすればよい。
また、正パルス期間Tと負パルス期間Tとの間に無電圧期間T及びTを設けてもよい。この場合、一周期Tは、T=T+T+T+Tとなる。繰り返し周波数f(1/T(T=T+T+T+T))は、上記した場合と同様に100Hz〜1MHz程度とすればよい。
その他、正パルス電圧Vpと負パルス電圧Vnとを交互に印加せず、正パルス電圧Vpをn回連続して印加した後、負パルス電圧Vnを印加するように設定してもよい。
特に、上記したパルス波形を有する交番電圧の条件において、(1)負パルス電圧Vnの絶対値を正パルス電圧Vpの絶対値より大きくする、(2)負パルスのパルス幅Tを、正パルスのパルス幅Tより長く設定する、(3)上記(1)と(2)の条件を同時に満足する、という上記(1)〜(3)のいずれかの条件を満足することが好ましい。この様な条件を満足することによって、原料ガスから生じた正電荷の活性種の堆積量を増加させると同時に、電子の照射時間を短くして形成される皮膜温度の上昇を抑制して、低温で高品質の膜を形成することが可能となる。
原料ガスと、必要に応じて用いる反応ガス及び/又は不活性ガスを導入した金属構造体の中空部分の圧力については、特に限定的ではなく、使用する原料ガスの種類や電圧の印加条件等に応じて、プラズマが発生する圧力範囲であればよい。通常は、10Pa〜300Pa程度の範囲とすればよい。
本発明の製造方法において、プラズマ処理時間は特に限定されず、目的とする皮膜の厚さ等に応じて適宜決めればよい。通常10秒〜1時間程度の範囲とすればよい。
形成される皮膜の厚さについては、特に限定的ではなく、目的に応じて適宜決めればよいが、例えば、耐食性皮膜を形成する場合には、0.1〜20μm程度とすればよい。
金属構造体
上記した方法によれば、任意の形状の金属構造体の中空部分の内壁面に、酸化物皮膜、窒化物皮膜又は炭素系皮膜を形成することができる。形成される皮膜は、欠陥部分が少なく、緻密性、平坦性、均質性等に優れたものとなる。例えば、ピンホールが分子サイズレベル以下(2nm以下)であって、表面粗さが10nm以下の良好な皮膜を形成できる。
本発明方法によって内面に皮膜を形成した金属構造体は、皮膜の種類に応じて各種の用途に有効に利用できる。例えば、酸化ケイ素膜,窒化ケイ素膜,炭化窒化ケイ素膜,ダイヤモンド様炭素やグラファイト等の炭素膜,窒化炭素膜,酸化チタン膜等の耐食性に優れた皮膜を形成した金属構造体は、薬品、腐食性ガス等を収容する容器、これらを送るための配管等として有効に利用できる。
本発明の皮膜形成方法によれば、金属管、金属容器等の各種の形状の金属構造体の内面に、簡単な処理方法によって、欠陥部分が少なく、緻密性、平坦性、均質性等に優れた各種の皮膜を形成できる。
従って、本発明方法によって内面に皮膜が形成された金属構造体は、例えば、従来使用できなかった反応性の高い液体、気体等の配管材や容器に利用することができ、一般家庭の水道管から化学薬品工場等の各種容器、配管などの産業分野へ広範囲にわたって応用できるものである。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
図1に示す形状の外径φ34mm、厚さ2mmのステンレス製曲管(SUS304)を被処理物として、図2に示す構成のプラズマ処理システムを用いて、以下の方法によって該ステンレス管の内面に酸化珪素膜を形成した。
図2に示すシステムでは、被処理物であるステンレス管2-1は、その両端に、シリコー
ンゴム製の絶縁性パイプ2-2が直列に固定されており、絶縁性パイプ2-2の両端には真空排気口2-3とガス導入口2-4が接続されている。
真空排気口2-3には、排気システムとして、仕切りバルブ1-8,1-4,1-2,1-5.高真空
排気ポンプ(例えば拡散ポンプ)1-3、及び油回転ポンプ1-1がそれぞれ金属製真空配管で接続されている。仕切りバルブ1-8と1-4の間には、ピラニ真空計1-6および電離真空計1-7が接続され、ステンレス管2-1内の圧力を測定しモニターできるようになっている。
被処理物であるステンレス管2-1には、交番電圧を印加するための電源4-1が接続されている。尚、真空排気口2-3およびガス導入口2-4は接地されており、ステンレス管2-1と真
空排気口2-3およびガス導入口2-4とは電気的に絶縁されている。
ガス導入口2-4には、バルブ3-1, 3-2, 3-3を介して、原料ガス容器3-5、反応ガスであ
る酸素ガス用ボンベ3-10が接続され、更に、バルブ3-4を介して不活性ガス用ボンベ3-9が接続されている。更に、各配管には、流量計3-6、3-7、3-8が接続されている。
まず、上記した排気システムによってステンレス管2-1の内部を約10-4Pa以下の圧力ま
で排気した。排気後、バルブ3-1, 3-2および3-3を開いて、ヘキサメチルジシロキサンを
流量50 ml/minでステンレス管2-1に導入し、酸素ガスボンベ3-10の元バルブを開放して、1気圧の酸素ガスを流量30 ml/minでステンレス管2-1に導入した。
ステンレス管2-1内の圧力が約100Paで安定した後、電源4-1により、図3に示す波形の
正電圧700V,パルス幅5msec,負電圧-1000V,パルス幅5msec,繰り返し周波数10kHzの方
形波の交番電圧を金属管2-1に印加してプラズマを発生させた。
上記の方法で10分間プラズマ処理を行ってステンレス管2-1の内壁に酸化ケイ素膜を形
成した。また、同様の方法でステンレス管2-1に対して30分間のプラズマ処理を行った試
料も作製した。
これらのステンレス管の内壁を切り出し,各部位の内壁表面の腐食試験を行った。腐食試験方法としては、3.5% NaClを用いて30℃で、JIS G 0577 ステンレス孔食電位測定方法によって分極試験を行い、電流密度100μA/cm2になった時の電位(Vc’100)で評価した。
上記したプラズマ処理前のステンレス管2-1の内壁部位における浸漬電位および孔食電
位の最小値は、それぞれ132 mVと 276 mVであったのに対して、プラズマ処理を10分間
行った後のステンレス管の各内壁部位における浸漬電位および孔食電位の最小値はそれぞれ-131 mVと712 mV、30分間プラズマ処理後のステンレス管の各内壁部位での浸漬電位お
よび孔食電位の最小値はそれぞれ-54 mVと1299 mVであり、処理前と比較して耐食性が大
きく向上したことが確認できた。
尚、比較として、交番電源に代えて、高周波電源(2.45 GHz)を用いること以外は、上
記した方法と同様にしてプラズマ処理を行った。その結果,処理後の試料の平均の浸漬電位および孔食電位は、それぞれ-94 mVと 199 mVであり、処理前のステンレス管よりも耐
腐食性が劣る結果となった。これは,高周波プラズマによるCVD法では、形成される皮膜に欠損が生じるために、欠損部分で集中的に腐食が進行することによるものと思われる。
さらに交番電源に代えて、片極性パルス電源を印加した場合においても,上記した方法と同様にしてプラズマ処理を行った.正電圧パルス1100Vを印加して作成した試料では,
平均の浸漬電位および孔食電位は、それぞれ-134 mVと 240 mVであり、負電圧パルス-1100Vを印加して作製した試料では平均の浸漬電位および孔食電位は、それぞれ-104 mVと313
mVであった.これも,高周波プラズマによるCVD法同様,形成される皮膜に欠損が生じるために、欠損部分で集中的に腐食が進行することによるものと思われる。
尚、腐食試験後の各試料の外観を目視で観察した結果、プラズマ処理を行っていないステンレス管の内壁の表面は変色が生じているのに対して、交番電圧を印加して10分間のプラズマ処理を行った試料では、表面形状および色彩に大きな変化がなく、耐食性に優れた均質な酸化ケイ素皮膜が形成されていることが確認できた。また、高周波プラズマをCVD法で処理された試料および片極性パルス電源を印加した試料では、膜が欠落し腐食が進行していた。
実施例2
実施例1と同一のステンレス管を被処理物として、実施例1と同様のプラズマ処理システムを用いて、該ステンレス管の内面に炭素系皮膜を形成した。
原料ガスとしてはエチルアルコールを用い、ステンレス管2-1の内部を約10-4Pa以下の
圧力まで排気した後、バルブ3-1, 3-2および3-3を開いて、ステンレス管2-1に流量200 ml/minで気化したエチルアルコールを導入した。反応ガスとバブリング用の不活性ガスは用いなかった。
ステンレス管内の圧力が約80Paで安定した後、図3に示す波形の正電圧500V、パルス幅5msec、負電圧-900V、パルス幅5msec、繰り返し周波数10kHzの方形波の交番電圧をステンレス管2-1に印加してプラズマを発生させた。
上記の方法で10分間プラズマ処理を行い、ステンレス管2-1の内壁に炭素系薄膜を形成
した。また、同様の方法で30分間のプラズマ処理を行って炭素系薄膜を形成した試料も作製した。
これらのステンレス管の内壁を切り出し、実施例1と同様にして各部位の内壁表面の腐食試験を行った。
プラズマ処理を10分間行った後のステンレス管の各内壁部位における浸漬電位および孔食電位の最小値はそれぞれ-25 mVと 877 mV、30分間プラズマ処理後のステンレス管の
各内壁部位での浸漬電位および孔食電位の最小値はそれぞれ7 mV,と898 mVであり、処理
前と比較して耐食性が大きく向上したことが確認できた。
この結果から、上記方法によってステンレス管内壁に均質なダイヤモンド様炭素薄膜が形成されていることが判る。
実施例1で用いたステンレス製曲管の形状を示す図面。 実施例1で用いたプラズマ処理システムの構成を示す図面。 実施例1で用いた交番電流の波形を示す図面。

Claims (5)

  1. 金属構造体の内面に皮膜を形成する方法であって、
    被処理物である金属構造体が、金属材料によって囲まれた中空部分を有し、且つ開口部を有するものであり、
    薄膜を形成する方法が、金属構造体の中空部分を密閉状態として内部を排気した後、原料ガスを導入し、該金属構造体を構成する金属材料部分にパルス状の交番電圧を印加して、該金属構造体の中空部分にプラズマを発生させて、プラズマCVD法によって皮膜を形成する方法である、金属構造体内面への皮膜形成方法。
  2. 金属材料部分に印加するパルス状の交番電圧が、正パルス電圧Vpが、アース電位を基準として、30〜2000V、負パルス電圧Vnが、アース電位を基準として、−30〜−2000Vであって、正パルス電圧Vp及び負パルス電圧Vnの少なくとも一方の絶対値が200V以上であり、正パルスのパルス幅Tが、0.1μ秒≦T≦10μ秒、負パルスのパルス幅Tが、0.1μ秒≦T≦10μ秒、繰り返し周波数が100〜1MHzという条件を満足するものである請求項1に記載の金属構造体内面への皮膜形成方法。
  3. 金属材料部分に印加するパルス状の交番電圧が、下記(1)〜(3)のいずれかの条件を満足するものである請求項2に記載の金属構造体内面への皮膜形成方法:
    (1)負パルス電圧Vnの絶対値を正パルス電圧Vpの絶対値より大きくする,
    (2)負パルスのパルス幅Tを、正パルスのパルス幅Tより長く設定する、
    (3)上記(1)と(2)の条件を同時に満足する。
  4. 処理対象とする金属構造体が、金属製管状材料又は金属容器である請求項1〜3のいずれかに記載の金属構造体内面への皮膜形成方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの方法によって内面に、酸化物皮膜、窒化物皮膜又は炭素系皮膜が形成された金属構造体。
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JP2009235469A (ja) * 2008-03-26 2009-10-15 Tokyo Electron Ltd プラズマ処理装置、プラズマ処理方法、及びこの方法で処理された被処理体

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