JP2007092095A - 薄膜形成方法及び薄膜形成装置 - Google Patents

薄膜形成方法及び薄膜形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】窒素ガス等の反応性ガスによるターゲット自体の反応を防止し、所望の光学的・物理的特性を有する窒化物含有薄膜を形成することを可能にする。
【解決手段】ターゲット22a,22bをスパッタして基板Sの表面にケイ素を付着させるマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、このマグネトロンスパッタ電極21a,21bと離間した位置に形成された反応プロセス領域60Aに基板Sを搬送する回転ドラム13と、反応プロセス領域60Aに窒素ガスを供給する反応性ガス供給手段70と、反応プロセス領域60A内で窒素ガスのプラズマを発生させて基板Sに付着したケイ素を窒化ケイ素に変換するプラズマ発生手段60と、を備えた。ターゲット22a,22bに窒素ガスが供給されないため、窒素ガス等の反応性ガスによるターゲット22a,22b自体の反応が防止される。
【選択図】図1

Description

本発明は薄膜形成装置に係り、特に、窒化物を少なくとも含む窒化物含有薄膜を形成するための薄膜形成方法及び薄膜形成装置に関する。
窒化物を含む窒化物含有薄膜をガラスなどの基板の表面に堆積させた光学製品は、高硬度であり、また低誘電率であるという特性を有しているため、半導体LSI,太陽電池,各種光学製品など、様々な分野の製品に広く用いられている。
更に、窒化物のみならず他の反応物(例えば、酸化物)を含む複合薄膜は、窒化物及び他の反応物の構成比率に応じて様々な屈折率,減衰係数などの光学的特性や、膜厚,硬度などの物理的特性を示すため、様々な分野において広く利用されている。
このような窒化物含有薄膜を形成する技術の一つに、スパッタリングによって薄膜を形成する技術がある。
そして従来は、このような多様な光学特性を有する窒化物含有薄膜を連続的に形成するため、膜原料物質で構成されたターゲットをスパッタステーションでスパッタすると共に、スパッタステーションに窒素ガスを少なくとも含む反応性ガスを供給して膜原料物質を窒化して、フィルム表面に窒化物含有薄膜の形成を行っていた(例えば、非特許文献1)。
以下、この従来の窒化物含有薄膜を形成する技術について説明する。図8はこの従来の薄膜形成装置を模式的に示した説明図である。この従来技術の複合薄膜形成装置90は、装置内を真空にする複数の真空ポンプ91と、装置内でフィルム基板を移動する搬送装置92と、基板の搬送経路を変更する回転装置93と、装置内に設けられスパッタを行うスパッタステーション94と、スパッタステーション94内に設けられたターゲット95を主要な構成要素として具備している。
複合薄膜形成装置90内に搬入された基板は、搬送装置92によって図中の矢印方向に搬送され、回転装置93によって搬送方向に回転される。
スパッタステーション94には、スパッタガスと共に窒素ガス及び酸素ガスが供給されている。そして、スパッタステーション94内に設けられたターゲット95がスパッタされると共に、窒素ガス及び酸素ガスによりターゲット95を構成するケイ素が窒化及び酸化され、SiOxNy(0≦x≦2,0≦y≦4/3)からなる複合薄膜が基板表面に形成される。
この複合薄膜形成装置では、ターゲットをスパッタするスパッタステーションに窒素ガス及び酸素ガスの混合ガスを供給し、ターゲットの表面やスパッタによりターゲットから放出したケイ素に窒素ガス及び酸素ガスを反応させて、フィルム表面に窒化酸化ケイ素複合薄膜の形成を行っている。
そして、スパッタステーションに供給する窒素ガスと酸素ガスの割合を調整することで、所望の光学的・物理的特性(例えば、屈折率,消衰係数,膜厚,硬度など)を有するフィルム(すなわち、基板)を形成することが可能となる。
H.Bartzschら,Surface & Coatings Technology 180−181巻、616−620頁,2004年
しかしながら、この従来の複合薄膜形成装置では、ターゲットをスパッタするスパッタステーションに窒素ガス及び酸素ガスを供給しているため、ターゲットの表面にこれらのガスの反応物である窒化酸化ケイ素が形成される。
この窒化酸化ケイ素は電気的に絶縁性であるため、ターゲットに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる際に異常放電が発生しやすく、所望の光学的・物理的特性を有する薄膜を得られにくいという不都合があった。
特に、この従来の複合薄膜形成装置のように、少なくとも2種類の反応性ガスを供給する場合は、窒素ガスよりも酸素ガスのほうがケイ素に対する反応性が高いため、窒化ケイ素よりも酸化ケイ素の方が生成しやすく、このため成膜時間の経過に伴ってターゲットの表面における酸化ケイ素の割合が徐々に増加していく。
このため、このような従来の複合薄膜形成技術では、基板表面に形成される薄膜中の窒化ケイ素と酸化ケイ素の混合比が成膜時間の経過と共に変化していく。このため、生成する薄膜の光学特性が変化し、所望の光学的・物理的特性を有する薄膜を形成することが困難になるという不都合があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、窒素ガス等の反応性ガスによるターゲット自体の反応を防止し、所望の光学的・物理的特性を有する窒化物含有薄膜を形成することが可能な薄膜形成方法及び薄膜形成装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1の薄膜形成方法は、真空容器内に配設された基体に膜原料物質の窒化物を少なくとも含む薄膜を形成する薄膜形成方法であって、成膜プロセス領域内でターゲットをスパッタして基体の表面に膜原料物質を付着させるスパッタ工程と、前記成膜プロセス領域と離間した位置に形成された反応プロセス領域に基体を搬送する基体搬送工程と、前記反応プロセス領域に少なくとも窒素ガスを供給する反応性ガス供給工程と、前記反応プロセス領域内で前記窒素ガスのプラズマを発生させて前記基体の表面に付着した前記膜原料物質の窒化物を生成させるプラズマ処理工程と、を備えたことにより解決される。
このように、請求項1の薄膜形成方法によれば、基体の表面に膜原料物質を付着させるスパッタ工程を行った後、この膜原料物質をプラズマ処理して膜原料物質の窒化物を生成するプラズマ処理工程を行うようにしている。すなわち、ターゲットに窒素ガスが供給されないため、窒素ガス等の反応性ガスによるターゲット自体の反応が防止される。このため、ターゲットの表面に膜原料物質の窒化物が堆積するという不都合を防止することが可能となる。これにより、所望の光学的・物理的特性を有する薄膜を得ることが可能となる。
また、請求項2の薄膜形成方法のように、請求項1の要件に加えて、前記膜原料物質は、ケイ素であることが好ましい。
すなわち、本発明の薄膜形成方法では、窒化ケイ素を含む薄膜を形成することが可能となる。
また、請求項3の薄膜形成方法のように、請求項1又は2の要件に加えて、前記反応性ガス供給工程は、前記反応プロセス領域に酸素ガスを更に供給し、前記プラズマ処理工程は、前記窒素ガス及び前記酸素ガスのプラズマを発生させて前記膜原料物質の窒化物及び酸化物を生成させることが好ましい。
すなわち、本発明の薄膜形成方法では、ケイ素に対して窒素ガス及び酸素ガスを反応させることが可能となるため、窒化酸化ケイ素複合薄膜を形成することが可能となる。
また、請求項4の薄膜形成方法のように、前記反応性ガス供給工程は、前記反応プロセス領域に供給される窒素ガス及び酸素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量比を0.42以上0.99以下に調整するガス流量調整工程を更に備えると好適である。
すなわち、この0.42から0.99という範囲では、基体表面に付着した膜原料物質が窒化及び酸化される。従って、全ガス流量に対する窒素ガスの流量比をこの範囲内で調整することで、所望の光学的・物理的特性を有する薄膜を形成することが可能となる。
また、上記課題を解決するために、請求項5の薄膜形成装置は、真空容器内に配設された基体に膜原料物質の窒化物を少なくとも含む薄膜を形成する薄膜形成装置であって、成膜プロセス領域内でターゲットをスパッタして基体の表面に膜原料物質を付着させるスパッタ手段と、前記成膜プロセス領域と離間した位置に形成された反応プロセス領域に基体を搬送する基体搬送手段と、前記反応プロセス領域に窒素ガスを供給する反応性ガス供給手段と、前記反応プロセス領域内で前記窒素ガスのプラズマを発生させて前記基体の表面に付着した膜原料物質の窒化物を生成させるプラズマ発生手段と、を備えたことにより解決される。
このように、請求項5の薄膜形成装置によれば、ターゲットをスパッタして基体の表面に膜原料物質を付着させるスパッタ手段と、窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段が離間した位置に設けられている。ターゲットに窒素ガスが供給されないため、窒素ガス等の反応性ガスによるターゲット自体の反応が防止される。このため、ターゲットの表面に膜原料物質の窒化物が堆積するという不都合を防止することが可能となる。これにより、所望の光学的・物理的特性を有する薄膜を得ることが可能となる。
また、請求項6の薄膜形成装置のように、請求項5の要件に加えて、前記膜原料物質は、ケイ素により構成されていることが好ましい。
すなわち、本発明の薄膜形成装置では、窒化ケイ素を含む薄膜を形成することが可能となる。
また、請求項7の薄膜形成装置のように、請求項5又は6の要件に加えて、前記反応性ガス供給手段は、前記反応プロセス領域に酸素ガスを更に供給し、前記プラズマ発生手段は、前記窒素ガス及び前記酸素ガスのプラズマを発生させて前記膜原料物質の窒化物及び酸化物を生成させることが好ましい。
すなわち、本発明の薄膜形成装置では、ケイ素に対して窒素ガス及び酸素ガスを反応させることが可能となるため、窒化酸化ケイ素複合薄膜を形成することが可能となる。
また、請求項8の薄膜形成装置のように、請求項7の要件に加えて、前記反応性ガス供給手段は、前記反応プロセス領域に供給される窒素ガス及び酸素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量比を0.42以上0.99以下に調整するガス流量調整手段を更に備えると好適である。
すなわち、この0.42から0.99という範囲では、基体表面に付着した膜原料物質が窒化及び酸化される。従って、全ガス流量に対する窒素ガスの流量比をこの範囲内で調整することで、所望の光学的・物理的特性を有する薄膜を形成することが可能となる。
このように、本発明の薄膜形成方法及び薄膜形成装置によれば、基体の表面に膜原料物質を付着させるスパッタ処理を行った後、この膜原料物質をプラズマ処理して膜原料物質の窒化物と酸化物を生成するプラズマ処理を行うようにしている。これにより、所望の光学的・物理的特性を有する薄膜を得ることが可能となる。
以下に、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1乃至図4は本発明の第一の実施形態に係る薄膜形成装置の説明図であり、図1は第一の実施形態に係る薄膜形成装置を上面から見た説明図、図2は図1の薄膜形成装置を側面から見た説明図、図3は図1の成膜プロセス領域周辺を拡大して示した説明図、図4は図1の反応プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。
本実施形態では、薄膜形成装置としてスパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行う薄膜形成装置を用いているが、本発明の薄膜形成装置としては、このようなマグネトロンスパッタに限定されず、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等の他の公知のスパッタを行う薄膜形成装置を用いることもできる。
また、本実施形態では、成膜プロセス領域20Aのみを設けて、1種類の材料からなるターゲットをスパッタしているが、成膜プロセス領域20Aとは別の領域にもうひとつの成膜プロセス領域を設けて、それぞれ異なる種類のターゲットをスパッタすることで、2種類の金属材料からなる複合薄膜を形成するようにしてもよい。
本実施形態の薄膜形成装置では、目的の膜厚よりも相当程度薄い薄膜を基板表面に付着するスパッタ処理工程と、この薄膜に対して酸化などの処理を行って薄膜の組成を変換するプラズマ処理工程とにより基板表面に中間薄膜を形成し、このスパッタ処理とプラズマ処理を複数回繰り返すことで、中間薄膜を複数層積層して目的の膜厚を有する最終薄膜を基板表面に形成している。
具体的には、スパッタ処理とプラズマ処理によって組成変換後における膜厚の平均値が0.01〜1.5nm程度の中間薄膜を基板表面に形成する工程を、回転ドラムの回転毎に繰り返すことにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜を形成している。
以下、本発明の一実施形態に係る薄膜形成装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1は、真空容器11と、回転ドラム13と、モータ17と、スパッタ手段20と、スパッタガス供給手段30と、プラズマ発生手段60と、反応性ガス供給手段70と、を主要な構成要素としている。
なお、図中では、スパッタ手段20は破線、スパッタガス供給手段30は一点鎖線、プラズマ発生手段60は破線、反応性ガス供給手段70は二点鎖線で表示している。
真空容器11は、公知の薄膜形成装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、略直方体形状をした中空体である。真空容器11の内部は、図1に示すように、開閉扉としての扉11Cによって薄膜形成室11Aとロードロック室11Bに分けられる。真空容器11の上方には扉11Cを収容する扉収納室(不図示)が接続されており、扉11Cは、真空容器11の内部と扉収納室の内部との間でスライドすることで開閉する。
真空容器11には、ロードロック室11Bと真空容器11の外部とを仕切る扉11Dが設けられている。扉11Dはスライドまたは回動することで開閉する。真空容器11の内部の薄膜形成室11Aには、排気用の配管16a−1が接続され、この配管16a−1には真空容器11内を排気するための真空ポンプ15aが接続されている。配管16a−1には開口が設けられており、この開口は真空容器11内の成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aとの間に配設されている。これにより、成膜プロセス領域20Aで飛散した膜原料物質を真空ポンプ15aで吸引することが可能となり、成膜プロセス領域20Aから飛散した膜原料物質が反応プロセス領域60Aに侵入して基板表面やプラズマ発生手段を汚染することを防止している。
また、真空容器11の内部のロードロック室11Bには、排気用の配管16bが接続され、この配管16bには真空容器11内を排気するための真空ポンプ15bが接続されている。
本実施形態の薄膜形成装置は、このようなロードロック室11Bを備えているため、薄膜形成室11A内の真空状態を保持した状態で基板の搬入出を行うことが可能となる。従って、基板を搬出する毎に真空容器内を脱気して真空状態にする手間を省くことが可能となり、高い作業効率で成膜処理を行うことができる。
なお、本実施形態の真空容器11は、ロードロック室11Bを備えるロードロック方式を採用しているが、ロードロック室を設けないシングルチャンバ方式を採用することも可能である。また、複数の真空室を備え、それぞれの真空室で独立に薄膜形成を行うことが可能なマルチチャンバ方式を採用することも可能である。
回転ドラム13は、表面に薄膜を形成させる基板Sを真空容器11内で保持するための筒状の部材であり、本発明の基体保持手段に該当する。図2に示すように、回転ドラム13は、複数の基板保持板13aと、フレーム13bと、基板保持板13a及びフレーム13bを締結する締結具13cを主要な構成要素としている。
基板保持板13aはステンレススチール製の平板状部材で、基板Sを保持するための複数の基板保持孔を、基板保持板13aの長手方向に沿って板面中央部に一列に備えている。基板Sは基板保持板13aの基板保持孔に収納され、脱落しないようにネジ部材等を用いて基板保持板13aに固定されている。また、基板保持板13aの長手方向における両端付近の板面には、後述する締結具13cを挿通可能なネジ穴が設けられている。
フレーム13bはステンレススチール製からなり、上下に配設された2つの環状部材で構成されている。フレーム13bのそれぞれの環状部材には、基板保持板13aのネジ穴と対応する位置に複数のネジ穴が設けられている。基板保持板13aとフレーム13bはボルト及びナットからなる締結具13cを用いて固定される。具体的には、ボルトを基板保持板13a及びフレーム13bのネジ穴に挿通してナットで固定することにより固定される。なお、本実施形態における回転ドラム13は、平板状の基板保持板13aを複数配置しているため横断面が多角形をした多角柱状をしているが、このような多角柱状のものに限定されず、中空の円筒状や円錐状のものであってもよい。
基板Sは本発明の基体に該当するものである。本実施形態では、基板Sはガラス製の円板状部材であり、薄膜形成処理により表面に薄膜が形成されるが、本発明の基体としては本実施形態のような円板状のものに限定されず、レンズ状のものや管状のもの等を用いることもできる。また、基板Sの材質も本実施形態のようなガラス製に限定されず、プラスチックや金属等であってもよい。
真空容器11内部に設置された回転ドラム13は、図1に示す薄膜形成室11Aとロードロック室11Bの間を移動できるように構成されている。本実施形態では、真空容器11の底面にレール(不図示)が設置されており、回転ドラム13はこのレールに沿って移動する。回転ドラム13は、円筒の筒方向の回転軸線Z(図2参照)が真空容器11の上下方向になるように真空容器11内に配設される。基板保持板13aをフレーム13bに取り付ける際やフレーム13bから取り外す際には、回転ドラム13はロードロック室11Bに搬送されて、ロードロック室11B内で回転可能な状態にロックされている。一方、成膜中にあっては、回転ドラム13は薄膜形成室11Aに搬送されて、薄膜形成室11A内で回転可能な状態にロックされている。
図2に示すように、回転ドラム13の下面中心部はモータ回転軸18aの上面と係合する形状になっている。回転ドラム13とモータ回転軸18aとは、モータ回転軸18aの中心軸線と回転ドラム13の中心軸線とが一致するよう位置決めされ、両者が係合することにより連結されている。回転ドラム13下面のモータ回転軸18aと係合する面は絶縁部材で構成されている。これにより、基板における異常放電を防止することが可能となる。また、真空容器11とモータ回転軸18aとの間は、Oリングで気密が保たれている。
真空容器11内の真空状態を維持した状態で、真空容器11の下部に設けられたモータ17を駆動させることによってモータ回転軸18aが回転する。この回転に伴って、モータ回転軸18aに連結された回転ドラム13は回転軸線Zを中心に回転する。各基板Sは回転ドラム13上に保持されているため、回転ドラム13が回転することで回転軸線Zを公転軸として公転する。
回転ドラム13の上面にはドラム回転軸18bが設けられており、回転ドラム13の回転に伴ってドラム回転軸18bも回転するように構成されている。真空容器11の上面には孔部が設けられており、ドラム回転軸18bはこの孔部を貫通して真空容器11の外部に通じている。孔部の内面には軸受が設けられており、回転ドラム13の回転をスムーズに行えるようにしている。また、真空容器11とドラム回転軸18bとの間は、Oリングで気密が保たれている。
次に、基板Sの表面に薄膜を形成する成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aについて説明する。図1に示すように、真空容器11の内壁には、回転ドラム13へ面した位置に仕切壁12及び仕切壁14が立設されている。本実施形態における仕切壁12及び仕切壁14は真空容器11と同じステンレススチール製の部材である。仕切壁12及び仕切壁14は、いずれも上下左右に一つずつ配設された平板部材により構成されており、真空容器11の内壁面から回転ドラム13に向けて四方を囲んだ状態となっている。これにより、それぞれ成膜プロセス領域20A及び反応プロセス領域60Aが真空容器内で区画される。
真空容器11の側壁は外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはスパッタ手段20が設けられている。成膜プロセス領域20Aは、真空容器11の内壁面,仕切壁12,回転ドラム13の外周面及びスパッタ手段20に囲繞された領域に形成されている。成膜プロセス領域20Aでは、基板Sの表面に薄膜を形成するスパッタ処理が行われる。
また、成膜プロセス領域20Aから回転ドラム13の回転軸を中心として90°離間した真空容器11の側壁もまた、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはプラズマ発生手段60が設けられている。反応プロセス領域60Aは、真空容器11の内壁面,仕切壁14,回転ドラム13の外周面およびプラズマ発生手段60に囲繞された領域に形成されている。反応プロセス領域60Aでは、基板S上の薄膜に対してプラズマ処理が行われる。
モータ17によって回転ドラム13が回転すると、回転ドラム13の外周面に保持された基板Sが公転して、成膜プロセス領域20Aに面する位置と反応プロセス領域60Aに面する位置との間を繰り返し移動することになる。そして、このように基板Sが公転することで、成膜プロセス領域20Aでのスパッタ処理と、反応プロセス領域60Aでのプラズマ処理とが順次繰り返し行われて、基板Sの表面に薄膜が形成される。
(成膜プロセス領域20A)
以下に、本発明の成膜プロセス領域20Aについて説明する。図3に示すように、本発明の成膜プロセス領域20Aにはスパッタ手段20が設置されている。
スパッタ手段20は、一対のターゲット22a,22bと、これらターゲット22a,22bを保持する一対のマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに電力を供給する交流電源24と、電力制御手段としてのトランス23により構成される。真空容器11の壁面は外方に突出しており、この突出部の内壁にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが側壁を貫通した状態で配設されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、接地電位にある真空容器11に不図示の絶縁部材を介して固定されている。
本例のターゲット22a,22bは、膜原料物質を平板状に形成したものであり、後述するように回転ドラム13の側面に対向するようにマグネトロンスパッタ電極21a,21bにそれぞれ保持される。ターゲットの材質としては、製造する光学製品の目的にあった任意のもの、例えば、ケイ素,ニオブ,チタン,アルミニウム,ゲルマニウムなどを採用することが可能である。
本実施形態では、ターゲット22a,22bとしてケイ素(Si)を用いている。
マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、複数の磁石が所定の方向に配置された構造を有している。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス23を介して交流電源24に接続され、両電極に1k〜100kHzの交番電界が印加できるように構成されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット22a,22bがそれぞれ保持されている。ターゲット22a,22bの形状は平板状であり、図2に示すように、ターゲット22a,22b(図中にはターゲット22として記載)の長手方向が回転ドラム13の回転軸線Zと平行になるように設置されている。
図3に示すように、成膜プロセス領域20Aの周辺にはアルゴンなどのスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段30が設けられている。スパッタガス供給手段30は、スパッタガス貯蔵手段としてのスパッタガスボンベ32と、スパッタガス供給路としての配管35aおよび配管35cと、スパッタガスの流量を調整するスパッタガス流量調整手段としてのマスフローコントローラ31と、を主要な構成要素として具備している。
スパッタガスとしては、例えばアルゴンやヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。
スパッタガスボンベ32、マスフローコントローラ31はいずれも真空容器11の外部に設けられている。マスフローコントローラ31は、スパッタガスを貯蔵する単一のスパッタガスボンベ32に配管35cを介してそれぞれ接続されている。
マスフローコントローラ31は配管35aに接続されており、配管35aの一端は真空容器11の側壁を貫通して成膜プロセス領域20A内のターゲット22a,22bの下部に延びている。配管35aの先端部には導入口35bが形成されており、図2に示すように、この導入口35bはターゲット22a,22bの下部中心付近に配置され、ターゲット22a,22bの中心方向に向かって開口している。
そして、配管35aを通じて供給されるガスは、配管35aに設けられた導入口35bからターゲット22a,22bの前面に向かって供給される。
マスフローコントローラ31はガスの流量を調節する装置であり、ガスボンベからのガスが流入する流入口と、ガスを真空容器11側へ流出させる流出口と、ガスの質量流量を検出するセンサと、ガスの流量を調整するコントロールバルブと、流入口より流入したガスの質量流量を検出するセンサと、センサにより検出された流量に基づいてコントロールバルブの制御を行う電子回路とを主要な構成要素として備えている(いずれも不図示)。電子回路には外部から所望の流量を設定することが可能となっている。
スパッタガスボンベ32からのスパッタガスは、マスフローコントローラ31により流量を調節されて配管35a内に導入される。配管35aに流入した不活性ガスは、配管35aの導入口35bより成膜プロセス領域20Aに配置されたターゲット22a,22bの前面に導入される。
成膜プロセス領域20Aにスパッタガス供給手段30からスパッタガスが供給されて、ターゲット22a,22bの周辺が不活性ガス雰囲気になった状態で、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から交番電極が印加されると、ターゲット22a,22b周辺のスパッタガスの一部は電子を放出してイオン化する。マグネトロンスパッタ電極21a,21bに配置された磁石によりターゲット22a,22bの表面に漏洩磁界が形成されるため、この電子はターゲット表面近傍に発生した磁界中を、トロイダル曲線を描きながら周回する。この電子の軌道に沿って強いプラズマが発生し、このプラズマに向けてスパッタガスのイオンが加速され、ターゲット22a,22bに衝突することでターゲット表面のケイ素原子が叩き出される。このケイ素は薄膜の原料である膜原料物質であり、基板Sの表面に付着して薄膜を形成する。
(反応プロセス領域60A)
続いて、反応プロセス領域60Aについて説明する。上述したように、反応プロセス領域60Aでは、成膜プロセス領域20Aで基板Sの表面に付着した膜原料物質であるケイ素を酸化して、ケイ素の不完全酸化物や完全酸化物からなる薄膜の形成を行っている。
図4に示すように、反応プロセス領域60Aに対応する真空容器11の壁面には、プラズマ発生手段60を設置するための開口が形成されている。また、反応プロセス領域60Aには、マスフローコントローラ72を介して窒素ガスボンベ71内の窒素ガスを供給するためのY字型の配管75aの一端が接続されている。また、Y字型の配管75aの他端には、マスフローコントローラ74が接続されており、酸素ガスボンベ73内の酸素ガスを反応プロセス領域60Aに供給することが可能となっている。
反応プロセス領域60Aに面する側の仕切壁14の壁面には、熱分解窒化硼素(Pyrolytic Boron Nitride)からなる保護層(不図示)が被覆されている。更に、真空容器11の内壁面の反応プロセス領域60Aに面する部分にも熱分解窒化硼素からなる保護層が被覆されている。熱分解窒化硼素は、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition)を利用した熱分解法によって仕切壁14や真空容器11の内壁面へ被覆される。
プラズマ発生手段60は、反応プロセス領域60Aに面して設けられている。本実施形態のプラズマ発生手段60は、ケース体61と、誘電体板62と、アンテナ63と、マッチングボックス64と、高周波電源65と、を有して構成されている。
ケース体61は、真空容器11の壁面に形成された開口11aを塞ぐ形状を備え、ボルト(不図示)で真空容器11の開口11aを塞ぐように固定されている。ケース体61が真空容器11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段60は真空容器11の壁面に取り付けられている。本実施形態において、ケース体61はステンレスで形成されている。
誘電体板62は、板状の誘電体で形成されている。本実施形態において、誘電体板62は石英で形成されているが、誘電体板62の材質としてはこのような石英だけではなく、Al等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体板62は、図示しない固定枠でケース体61に固定されている。誘電体板62がケース体61に固定されることで、ケース体61と誘電体板62によって囲繞された領域にアンテナ収容室61Aが形成されている。
ケース体61に固定された誘電体板62は、開口11aを介して真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に臨んで設けられている。このとき、アンテナ収容室61Aは、真空容器11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部とは、誘電体板62で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部は、ケース体61で仕切られた状態で独立の空間を形成している。本実施形態では、このように独立の空間として形成されたアンテナ収容室61Aの中に、アンテナ63が設置されている。なお、アンテナ収容室61Aと真空容器11内部、アンテナ収容室61Aと真空容器11外部との間は、それぞれOリングで気密が保たれている。
本実施形態では、配管16a−1から配管16a−2が分岐している。この配管16a−2はアンテナ収容室61Aに接続されており、アンテナ収容室61Aの内部を排気して真空状態にする際の排気管としての役割を備えている。
配管16a−1には、真空ポンプ15aから真空容器11の内部に連通する位置にバルブV1、V2が設けられている。また、配管16a−2には、真空ポンプ15aからアンテナ収容室61Aの内部に連通する位置にバルブV3が設けられている。バルブV2,V3のいずれかを閉じることで、アンテナ収容室61Aの内部と真空容器11の内部との間での気体の移動は阻止される。真空容器11の内部の圧力や、アンテナ収容室61Aの内部の圧力は、真空計(不図示)で測定される。
本実施形態では、薄膜形成装置1に制御装置(不図示)を備えている。この制御装置には、真空計の出力が入力される。制御装置は、入力された真空計の測定値に基づいて、真空ポンプ15aによる排気を制御して、真空容器11の内部やアンテナ収容室61Aの内部の真空度を調整する機能を備える。本実施形態では、制御装置がバルブV1,V2,V3の開閉を制御することで、真空容器11の内部とアンテナ収容室61Aの内部を同時に、又は独立して排気できる。
アンテナ63は、高周波電源65から電力の供給を受けて、真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に誘導電界を発生させ、反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させるためのものである。本実施形態のアンテナ63は、銅で形成された円管状の本体部と、本体部の表面を被覆する銀で形成された被覆層を備えている。アンテナ63のインピーダンスを低下するためには、電気抵抗の低い材料でアンテナ63を形成するのが好ましい。そこで、高周波の電流がアンテナの表面に集中するという特性を利用して、アンテナ63の本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、アンテナ63の表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆している。このように構成することで、高周波に対するアンテナ63のインピーダンスを低減して、アンテナ63に電流を効率よく流すことによりプラズマを発生させる効率を高めている。
本実施形態の薄膜形成装置では、高周波電源65からアンテナ63に周波数1〜27MHzの交流電圧を印加して、反応プロセス領域60Aに反応性ガスのプラズマを発生させるように構成されている。
アンテナ63は、マッチング回路を収容するマッチングボックス64を介して高周波電源65に接続されている。マッチングボックス64内には、図示しない可変コンデンサが設けられている。
アンテナ63は、導線部を介してマッチングボックス64に接続されている。導線部はアンテナ63と同様の素材からなる。ケース体61には、導線部を挿通するための挿通孔が形成されており、アンテナ収容室61A内側のアンテナ63と、アンテナ収容室61A外側のマッチングボックス64,高周波電源65とは、挿通孔に挿通される導線部を介して接続される。導線部と挿通孔との間にはシール部材が設けられ、アンテナ収容室61Aの内外で気密が保たれる。
また、反応プロセス領域60Aの周辺には反応性ガス供給手段70が設けられている。反応性ガス供給手段70は、窒素ガスを貯蔵する窒素ガスボンベ71と、窒素ガスボンベ71より供給される窒素ガスの流量を調整するマスフローコントローラ72と、酸素ガスを貯蔵する酸素ガスボンベ73と、酸素ガスボンベ73より供給される酸素ガスの流量を調整するマスフローコントローラ74と、窒素ガス及び酸素ガスからなる混合ガスを反応プロセス領域60Aに導入する配管75aを主要な構成要素として具備している。
なお、窒素ガスボンベ71及び酸素ガスボンベ73は成膜プロセス領域20Aのスパッタガスボンベ32と同様の装置とすることが可能である。また、マスフローコントローラ72及びマスフローコントローラ74は、成膜プロセス領域20Aのマスフローコントローラ33と同様の装置を採用することが可能である。
窒素ガスボンベ71及び酸素ガスボンベ73から配管68を通じて窒素ガスや酸素ガスが反応プロセス領域60Aに導入された状態で、アンテナ63に高周波電源65から電力が供給されると、反応プロセス領域60A内のアンテナ63に面した領域にプラズマが発生し、基板Sの表面に形成された薄膜中のケイ素が窒化及び酸化されてケイ素の窒化物及び酸化物となる。すなわち、ケイ素の窒化物及び酸化物からなる複合薄膜(SiOxNy)が基板Sの表面に形成される。
本発明の薄膜形成装置は、上述した成膜プロセス領域20Aでターゲットをスパッタして基板Sの表面に膜原料物質を付着させるスパッタ工程を行った後、回転ドラム13を回転させて基板Sを反応プロセス領域60Aに搬送する基体搬送工程を行う。そして、反応プロセス領域60Aには、少なくとも窒素ガスを含む反応性ガスを供給する反応性ガス供給工程が行われ、この供給された反応性ガスにより反応プロセス領域60A内に反応性ガスのプラズマを発生させて基板Sの表面に付着した膜原料物質の反応物を生成させるプラズマ処理工程を行っている。
そして、回転ドラム13を連続して回転することで、上記一連の工程を複数回行い、基板Sの表面に薄膜を積層させて、最終的に所望の光学的・物理的特性を有する光学製品を得ることが可能となっている。
なお、窒化物のみからなる薄膜を形成する場合には、酸素ガスボンベ73を設置しないようにするか、或いは酸素ガスボンベ73から酸素ガスを反応プロセス領域60Aに供給しないようにすればよい。この結果、基板Sの表面に酸化ケイ素(SiO)からなる薄膜が形成される。
以下に、このような窒化物のみからなる薄膜を形成した例について説明する。
図5は反応プロセス領域60Aに窒素ガスのみを供給して作成した窒化ケイ素(Si)の光学特性を示すグラフである。横軸は波長、左側縦軸は屈折率、右側縦軸は消衰係数を示す。
成膜条件として、成膜プロセス領域でのスパッタ電力5kW、周波数40kHz、アルゴンガスの流量150sccm、反応プロセス領域でのアンテナに印加される電力3kW、周波数13.56MHz、窒素ガスの流量100sccmで、成膜レート0.43nm/sとなるように成膜を行った。
この図に示すように、350〜750nmの可視光領域では、窒化ケイ素薄膜は2.00以上と十分に高い屈折率を示していることがわかる。
なお、波長550nmでは、屈折率が2.02、消衰係数は4.1×e−4となっている。
次に、本発明の薄膜形成装置を用いて異なる2種類の反応物からなる複合薄膜を形成する例について説明する。本発明の薄膜形成方法及び薄膜形成装置は、反応プロセス領域60Aに窒素ガス及び酸素ガスを供給することで、異なる2種類の反応物からなる複合薄膜を形成することができる点においても特徴を有する。そして、反応プロセス領域60Aに供給される窒素ガス及び酸素ガスの流量比を調整することで、所望の光学的・物理的特性を有する複合薄膜を形成することが可能となる。
図6は反応プロセス領域60Aに供給される全ガス流量(すなわち、窒素ガスと酸素ガスの合計流量)に対する窒素ガスの流量の割合と、基板Sに形成される薄膜の屈折率との関係を示すグラフである。このグラフは、550nmにおける薄膜の屈折率を示している。なお、この図中で点線は、全ガス流量に対する窒素ガスの流量比が0.42のポイントを示すものである。また、表1は、このグラフ中の各ポイントの数値を表すものである。

Figure 2007092095
成膜条件として、成膜プロセス領域でのスパッタ電力5kW、周波数40kHz、アルゴンガスの流量150sccm、反応プロセス領域でのアンテナに印加される電力3kWV、周波数13.56kHz、窒素ガス及び酸素ガスの全流量100sccmで、膜厚450nmとなるまで成膜を行った。
なお、他の元素を含まず酸化物のみからなる酸化ケイ素(SiO)の屈折率は1.48、他の元素を含まず窒化物のみからなる窒化ケイ素(Si)の屈折率は2.02である。
表1及び図6に示すように、全ガス流量に対する窒素ガスの流量比が0.0から0.42の間(すなわち、図中の点線よりも左側)では、得られる薄膜の屈折率が1.48と一定であり、薄膜中にはほぼ酸化ケイ素(SiO)のみが生成してケイ素の窒化物がほとんど生成していないことがわかる。すなわち、窒素ガスの流量比が0.42よりも小さい場合は、ケイ素に対する窒化がほとんど行われず、酸化のみが行われる。
一方、0.42以上(すなわち、図中の点線よりも右側)では、窒素ガスの流量比が増大するにつれて屈折率が漸増することがわかる。すなわち、この範囲では、薄膜中にケイ素の窒化物及び酸化物からなる複合薄膜(SiOxNy)が形成されていることがわかる。
以上より、反応プロセス領域60Aに供給される全ガス流量に対する窒素ガスの流量比が0.42以上であることが、窒化物及び酸化物からなる複合薄膜(SiOxNy)を形成する上で不可欠である。
また、2種類の反応物からなる複合薄膜を成形するためには、全ガス流量に対する窒素ガスの流量比が1.00よりも小さければよい。より具体的には、例えば0.99以下であると、複合薄膜を形成することが可能となる。
そして、この0.42以上0.99以下の範囲で、このグラフの結果に基づいて全ガス流量に対する窒素ガスの流量比を調整することで、基板表面に形成される薄膜の屈折率を所望の屈折率とすることが可能となる。
特に、屈折率が1.48から1.51程度の低い屈折率の複合薄膜を形成することは、成膜プロセス領域に混合ガスを導入する従来の方法や装置では困難であったが、本発明の薄膜形成方法及び薄膜形成装置では、全ガス流量に対する窒素ガスの流量比を0.42から0.58の範囲で調整することにより、屈折率1.48〜1.51の範囲内で所望の屈折率を有する複合薄膜を形成することが可能となる。
次に、上記条件で作成した薄膜中に含まれる窒素、酸素、及びケイ素の原子濃度とガスの流量比との関係について説明する。図7は反応プロセス領域に供給される全ガス流量に対する窒素ガスの流量の割合と、薄膜中に含まれる原子の原子濃度との関係を示すグラフである。縦軸が、薄膜中に含まれる各原子の濃度のパーセント(%)を示している。横軸が、反応プロセス領域に供給される全ガス流量に対する窒素ガスの割合を示す。
なお、原子濃度はXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)(Perkin−Elmaer社製 PHI−5500、14kV−400W、Al−K)にて計算した。
この図に示すように、全ガス流量に対する窒素ガスの流量比が0.42よりも小さい場合(すなわち、図中の点線よりも左側)は、薄膜中には窒素原子がほとんど含まれていない。逆に、窒素ガスの流量比が0.42以上では、薄膜中に窒素原子及び酸素原子が含まれているため、窒化物及び酸化物からなる複合薄膜が形成されていることがわかる。
以上、本発明の薄膜形成方法及び薄膜形成装置は、スパッタにより基板表面に膜原料物質を付着させる成膜プロセス領域と、この膜原料物質をプラズマ処理する反応プロセス領域を分離しているため、ターゲットの表面に膜原料物質の酸化物や窒化物が生成しにくい。
このため、成膜時間の経過に伴ってターゲットの表面に酸化ケイ素の割合が高くなったり、ターゲットに高周波電圧を印加する際に異常放電が発生するといった不都合を防止することが可能となる。
また、本発明の薄膜形成方法及び薄膜形成装置は、反応プロセス領域60Aに供給される全ガス流量に対する窒素ガスの流量比を0.42以上としたため、所望の工学的・物理的特性を有する薄膜を形成することが可能となる。
なお、反応プロセス領域60Aには、反応性ガスのみならずアルゴンなどの不活性ガスを反応プロセス領域60Aに導入することが可能である。これにより、プラズマ中における反応性ガスのラジカルの密度を向上させることが可能となり、高効率にプラズマ処理を行うことが可能となる。
第一の実施形態に係る薄膜形成装置を上面から見た説明図である。 図1の薄膜形成装置を側面から見た説明図である。 図1の成膜プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。 図1の反応プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。 生成した窒化ケイ素薄膜の波長に対する屈折率及び消衰係数の関係を示したグラフである。 反応プロセス領域に供給される全ガス流量に対する窒素ガスの流量の割合と、基板に形成される薄膜の屈折率との関係を示すグラフである。 反応プロセス領域に供給される全ガス流量に対する窒素ガスの流量の割合と、薄膜中に含まれる原子の原子濃度との関係を示すグラフである。 従来の薄膜形成装置を模式的に示した説明図である。
符号の説明
1 薄膜形成装置
11 真空容器
11a 開口
11A 薄膜形成室
11B ロードロック室
11C 扉
11D 扉
12 仕切壁
13 回転ドラム(基体搬送手段)
13a 基板保持板
13b フレーム
13c 締結具
14 仕切壁
15a 真空ポンプ
15b 真空ポンプ
16a−1 配管
16a−2 配管
16b 配管
17 モータ
18a モータ回転軸
18b ドラム回転軸
19 仕切壁
20 スパッタ手段
20A 成膜プロセス領域
21a マグネトロンスパッタ電極(スパッタ手段)
21b マグネトロンスパッタ電極(スパッタ手段)
22a ターゲット
22b ターゲット
23 トランス
24 交流電源
30 スパッタガス供給手段
31 マスフローコントローラ
32 スパッタガスボンベ
33 マスフローコントローラ
34 反応性ガスボンベ
35a 配管
35b 導入口
35c 配管
35d 配管
60 プラズマ発生手段
60A 反応プロセス領域
61 ケース体
61A アンテナ収容室
62 誘電体板
63 アンテナ
64 マッチングボックス
65 高周波電源
70 反応性ガス供給手段
71 窒素ガスボンベ
72 マスフローコントローラ(ガス流量調整手段)
73 酸素ガスボンベ
74 マスフローコントローラ(ガス流量調整手段)
75a 配管
75b 導入口
75c 配管
75d 配管
90 複合薄膜形成装置
91 真空ポンプ
92 搬送装置
93 回転装置
94 スパッタステーション
95 ターゲット
S 基板(基体)
V1 バルブ
V2 バルブ
V3 バルブ

Claims (8)

  1. 真空容器内に配設された基体に膜原料物質の窒化物を少なくとも含む薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
    成膜プロセス領域内でターゲットをスパッタして基体の表面に膜原料物質を付着させるスパッタ工程と、
    前記成膜プロセス領域と離間した位置に形成された反応プロセス領域に基体を搬送する基体搬送工程と、
    前記反応プロセス領域に少なくとも窒素ガスを供給する反応性ガス供給工程と、
    前記反応プロセス領域内で前記窒素ガスのプラズマを発生させて前記基体の表面に付着した前記膜原料物質の窒化物を生成させるプラズマ処理工程と、
    を備えたことを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 前記膜原料物質は、ケイ素により構成されていることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法。
  3. 前記反応性ガス供給工程は、前記反応プロセス領域に酸素ガスを更に供給し、
    前記プラズマ処理工程は、前記窒素ガス及び前記酸素ガスのプラズマを発生させて前記膜原料物質の窒化物及び酸化物を生成させることを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜形成方法。
  4. 前記反応性ガス供給工程は、前記反応プロセス領域に供給される窒素ガス及び酸素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量比を0.42以上0.99以下に調整するガス流量調整工程を更に備えたことを特徴とする請求項3記載の薄膜形成方法。
  5. 真空容器内に配設された基体に膜原料物質の窒化物を少なくとも含む薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
    成膜プロセス領域内でターゲットをスパッタして基体の表面に膜原料物質を付着させるスパッタ手段と、
    前記成膜プロセス領域と離間した位置に形成された反応プロセス領域に基体を搬送する基体搬送手段と、
    前記反応プロセス領域に窒素ガスを供給する反応性ガス供給手段と、
    前記反応プロセス領域内で前記窒素ガスのプラズマを発生させて前記基体の表面に付着した膜原料物質の窒化物を生成させるプラズマ発生手段と、
    を備えたことを特徴とする薄膜形成装置。
  6. 前記膜原料物質は、ケイ素により構成されていることを特徴とする請求項5記載の薄膜形成装置。
  7. 前記反応性ガス供給手段は、前記反応プロセス領域に酸素ガスを更に供給する酸素ガス供給手段を更に備え、
    前記プラズマ発生手段は、前記窒素ガス及び前記酸素ガスのプラズマを発生させて前記膜原料物質の窒化物及び酸化物を生成させることを特徴とする請求項5又は6記載の薄膜形成装置。
  8. 前記反応性ガス供給手段は、前記反応プロセス領域に供給される窒素ガス及び酸素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量比を0.42以上0.99以下に調整するガス流量調整手段を更に備えたことを特徴とする請求項7記載の薄膜形成装置。
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