JP4942725B2 - 成膜方法 - Google Patents

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Description

この発明は、成膜方法に関する。
ガラス材料で形成される基板に、前処理工程として酸素ガスのプラズマを接触させた後、前記基板にチタンターゲットのスパッタ物質を付着させ、これに酸素ガスのプラズマを接触させることにより、基板の表面に酸化チタンで形成される薄膜を成膜する方法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、前記基板にチタンターゲットのスパッタ物質を付着させた後、酸素ガスのプラズマを接触させ、その後さらに、後処理工程として前記基板に酸素ガスのプラズマを接触させ、基板の表面に酸化チタンの薄膜を成膜する方法も記載されている。
特開2007−314835号公報
ところで、酸化チタンで形成される薄膜は、紫外線を当てるとその表面が水になじみやすくなる性質(親水性)を有することが知られている。この親水性により、薄膜(以下、親水性薄膜)の表面に付着した水滴は薄い水の層となり、水滴による光の乱反射が生じなくなることで曇りが防止される。また、親水性薄膜は、親水化された水により表面に付着した汚れを浮き上がらせて除去するセルフクリーニング作用を備えている。さらに、親水化された水は蒸発面積が大きいため、親水性薄膜は、自身と接触する物質から効率的に蒸発潜熱を奪いながら蒸発することで、その物質の温度を低下させる冷却作用も有している。
こうした酸化チタンで形成される薄膜を、上述した従来手法で成膜する場合、本来の成膜工程以外の前処理工程又は後処理工程が必要であり、効率よく酸化チタンの薄膜を成膜することができなかった。
一方で、近年、耐熱性の低いプラスチック基板に対して、上述した親水性の薄膜を効率よく成膜する方法の開発が望まれている。
発明が解決しようとする課題は、特別な前処理や後処理を施さずに効率よく、親水性の薄膜をプラスチック基板に成膜することができる成膜方法を提供することである。
この発明は、真空容器の内部に形成された成膜プロセス領域と離間して形成された反応プロセス領域内に、反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量の不活性ガスを導入するとともに例えば1kW以下の低いプラズマ処理電力を供給した状態で、反応性ガスを、プラスチック基板に付着したチタンを含むターゲットのスパッタ物質に接触させることによって上記課題を解決する。
上記発明によれば、プラスチック基板に付着したスパッタ物質に反応性ガスを接触させるに際し、当該反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量の不活性ガスを導入するとともに例えば1kW以下の低いプラズマ処理電力を供給するので、前処理や後処理を施さなくとも、親水性の薄膜を基板に成膜することができる。
また、上記反応性ガス及び不活性ガスが導入される反応プロセス領域は基板にスパッタ物質を付着させる成膜プロセス領域とは離間して形成されているので、ターゲットの反応よる異常放電が生じにくく、基板の温度を上昇させなくてもプラズマ処理による反応を促進させることができる。その結果、耐熱性の低いプラスチック基板に対しても上記薄膜を成膜可能である。
すなわち上記発明によれば、特別な前処理や後処理を施すことなく、効率よく、親水性の薄膜をプラスチック基板に成膜することができる。
以下、図面を参照しつつ、発明の実施形態について説明する。
《薄膜形成装置》
まず、本発明の薄膜形成方法を実現することができる一例としての薄膜形成装置を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1は、真空容器11と、回転ドラム13と、モータ17と、スパッタ手段20と、スパッタガス供給手段30と、プラズマ発生手段60と、ガス供給手段70とを含む。なお、図中では、スパッタ手段20及びプラズマ発生手段60は破線で、スパッタガス供給手段30及びガス供給手段70は一点鎖線で表示する。
真空容器11は、公知の薄膜形成装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、ほぼ直方体形状をした中空体である。真空容器11の内部は、開閉扉としての扉11Cによって薄膜形成室11Aとロードロック室11Bに分けられる。真空容器11の上方には扉11Cを収容する扉収納室(不図示)が接続されており、扉11Cは、真空容器11の内部と扉収納室の内部との間でスライドすることで開閉する。
真空容器11には、ロードロック室11Bと真空容器11の外部とを仕切るための扉11Dが設けられている。扉11Dはスライド又は回動することで開閉する。薄膜形成室11Aには排気用の配管16a−1が接続され、この配管16a−1には真空容器11の内部を排気するための真空ポンプ15aが接続されている。真空容器11の内部において配管16a−1には開口が形成されており、この開口は真空容器11の内部の成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aとの間に位置している。これにより、成膜プロセス領域20Aで飛散した膜原料物質を真空ポンプ15aで吸引することが可能となり、成膜プロセス領域20Aから飛散した膜原料物質が反応プロセス領域60Aに侵入してプラズマ発生手段60を汚染したり、成膜プロセス領域20Aの外に位置する基板Sの表面に付着して汚染したりすることを防止している。
ロードロック室11Bには排気用の配管16bが接続され、この配管16bには真空容器11の内部を排気するための真空ポンプ15bが接続されている。
なお、真空容器11は、ロードロック室11Bを備えるロードロック方式に限定されず、ロードロック室11Bを設けないシングルチャンバ方式を採用することも可能である。また、複数の真空室を備え、それぞれの真空室で独立に薄膜形成を行うことが可能なマルチチャンバ方式を採用することも可能である。
回転ドラム13は、表面に薄膜を形成させる基板Sを真空容器11の内部で保持するための筒状の部材であり、複数の基板保持板13aと、フレーム13bと、基板保持板13a及びフレーム13bを締結する締結具13cとを含む。
基板保持板13aはステンレススチール製の平板状部材で、基板Sを保持するための複数の基板保持孔を、基板保持板13aの長手方向に沿って板面中央部に一列に備えている。基板Sは、基板保持板13aの基板保持孔に収納され、脱落しないようにネジ部材等を用いて基板保持板13aに固定される。また、基板保持板13aの長手方向の両端部には、締結具13cを挿通可能なネジ穴が板面に設けられている。
フレーム13bはステンレススチール製からなり、上下に配設された2つの環状部材で構成されている。フレーム13bのそれぞれの環状部材には、基板保持板13aのネジ穴と対応する位置にネジ穴が設けられている。基板保持板13aとフレーム13bはボルト及びナットからなる締結具13cを用いて固定される。具体的には、ボルトを基板保持板13a及びフレーム13bのネジ穴に挿通してナットで固定することにより固定される。
なお、回転ドラム13は、平板状の基板保持板13aを複数配置しているため横断面が多角形をした多角柱状をしているが、このような多角柱状のものに限定されず、円筒状や円錐状のものであってもよい。
回転ドラム13は、薄膜形成室11Aとロードロック室11Bとの間を移動できるように構成されている。本実施形態では、真空容器11の底面にレール(不図示)が設置されており、回転ドラム13はこのレールに沿って移動する。回転ドラム13は、円筒の筒方向の回転軸線Zが真空容器11の上下方向になるように真空容器11の内部に配設される。基板保持板13aをフレーム13bに取り付ける際やフレーム13bから取り外す際には、回転ドラム13はロードロック室11Bに搬送されて、このロードロック室11B内で基板保持板13aがフレーム13bに着脱される。一方、成膜中にあっては、回転ドラム13は薄膜形成室11Aに搬送されて、薄膜形成室11A内で回転可能な状態になっている。
回転ドラム13の下面中心部はモータ回転軸17aの上面と係合する形状になっている。回転ドラム13とモータ回転軸17aとは、モータ回転軸17aの中心軸線と回転ドラム13の中心軸線とが一致するよう位置決めされ、両者が係合することにより連結されている。回転ドラム13下面のモータ回転軸17aと係合する面は絶縁部材で構成されている。これにより、基板Sの異常放電を防止することが可能となる。また、真空容器11とモータ回転軸17aとの間は、Oリングで気密が保たれている。
回転ドラム13の上面にはドラム回転軸18が設けられており、回転ドラム13の回転に伴ってドラム回転軸18も回転するように構成されている。真空容器11の上壁面には孔部が形成されており、ドラム回転軸18はこの孔部を貫通して真空容器11の外部に通じている。孔部の内面には軸受が設けられており、回転ドラム13の回転をスムーズに行えるようにしている。また、真空容器11とドラム回転軸18との間は、Oリングで気密が保たれている。
真空容器11の内壁には、回転ドラム13へ面した位置に仕切壁12と仕切壁14が立設されている。仕切壁12と仕切壁14は、いずれも真空容器11と同じステンレススチール製の部材である。仕切壁12と仕切壁14は、いずれも上下左右に一つずつ配設された平板部材により構成されており、真空容器11の内壁面から回転ドラム13に向けて四方を囲んだ状態となっている。これにより、成膜プロセス領域20A及び反応プロセス領域60Aが真空容器11の内部でそれぞれ区画される。
真空容器11の側壁は、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはスパッタ手段20が設けられている。成膜プロセス領域20Aは、真空容器11の内壁面と、仕切壁12と、回転ドラム13の外周面と、スパッタ手段20により囲繞された領域に形成されている。成膜プロセス領域20Aでは、成膜対象としての基板Sの表面に膜原料物質を付着させるスパッタ処理が行われる。
成膜プロセス領域20Aから回転ドラム13の回転軸を中心として90°離間した真空容器11の側壁もまた、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはプラズマ発生手段60が設けられている。反応プロセス領域60Aは、真空容器11の内壁面と、仕切壁14と、回転ドラム13の外周面と、プラズマ発生手段60により囲繞された領域に形成されている。反応プロセス領域60Aでは、基板Sの表面に付着した膜原料物質と所定ガス(本実施形態では不活性ガス及び反応性ガス)との反応が行われる。
図3に示すように、成膜プロセス領域20Aにはスパッタ手段20が設置されている。スパッタ手段20は、一対のターゲット22a,22bと、ターゲット22a,22bを保持する一対のマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに電力を供給する交流電源24と、交流電源24からの電力量を調整する電力制御手段としてのトランス23とを含む。
真空容器11の壁面は外方に突出しており、この突出部の内壁にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが側壁を貫通した状態で配設されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、接地電位にある真空容器11に不図示の絶縁部材を介して固定されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、複数の磁石が所定の方向に配置された構造を有している。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス23を介して交流電源24に接続され、両電極に1kHz〜100kHzの交番電界が印加できるように構成されている。
マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット22a,22bがそれぞれ保持されている。ターゲット22a,22bは、膜原料物質を平板状に形成したものであり、図2に示すように、ターゲット22a,22bの長手方向が回転ドラム13の回転軸線Zと平行になり、しかも回転ドラム13の側面に対向するように設置されている。
成膜プロセス領域20Aの周辺にはアルゴン等のスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段30が設けられている。スパッタガス供給手段30は、スパッタガス貯蔵手段としてのスパッタガスボンベ32と、スパッタガス供給路としての配管35a及び配管35cと、スパッタガスの流量を調整するスパッタガス流量調整手段としてのマスフローコントローラ31とを含む。
スパッタガスボンベ32、マスフローコントローラ31はいずれも真空容器11の外部に設けられている。マスフローコントローラ31は、スパッタガスを貯蔵する単一のスパッタガスボンベ32に配管35cを介して接続されている。
マスフローコントローラ31は配管35aに接続されており、配管35aの一端は真空容器11の側壁を貫通して成膜プロセス領域20A内のターゲット22a,22bの近傍に延びている。図2に示すように、配管35aの先端部はターゲット22a,22bの下部中心付近に配設され、その先端にはターゲット22a,22bの前面中心方向に向けて導入口35bが開口している。
図3に戻り、マスフローコントローラ31はガスの流量を調節する装置であり、スパッタガスボンベ32からのガスが流入する流入口と、スパッタガスを配管35aへ流出させる流出口と、ガスの質量流量を検出するセンサと、ガスの流量を調整するコントロールバルブと、流入口より流入したガスの質量流量を検出するセンサと、センサにより検出された流量に基づいてコントロールバルブの制御を行う電子回路とを含む。電子回路には外部から所望の流量を設定することが可能となっている。
図4に示すように、反応プロセス領域60Aに対応する真空容器11の壁面には、プラズマ発生手段60を設置するための開口が形成されている。また、反応プロセス領域60Aには、Y字型の配管75aが接続されており、この配管75aは真空容器11の外で分岐している。分岐した配管75aの一端にはマスフローコントローラ72が接続されており、このマスフローコントローラ72は更に反応性ガスボンベ71に接続されている。また、分岐した配管75aの他端にはマスフローコントローラ74が接続されており、このマスフローコントローラ74は更に不活性ガスボンベ73に接続されている。このため、反応プロセス領域60A内に、反応性ガスボンベ71から反応性ガスと、不活性ガスボンベ73から不活性ガスとを供給することができるようになっている。
反応プロセス領域60Aに面する側の仕切壁14の壁面には、熱分解窒化硼素(PBN)からなる保護層が被覆されている。さらに、真空容器11の内壁面の反応プロセス領域60Aに面する部分にもPBNからなる保護層が被覆されている。PBNは、化学的気相成長法(CVD)を利用した熱分解法によって仕切壁14や真空容器11の内壁面へ被覆される。このような保護層は、必要に応じて設けることができる。
プラズマ発生手段60は、反応プロセス領域60Aに面して設けられており、ケース体61と、誘電体板62と、アンテナ63と、マッチングボックス64と、高周波電源65とを含む。
ケース体61は、真空容器11の壁面に形成された開口11aを塞ぐ形状を備え、ボルト(不図示)で真空容器11の開口11aを塞ぐように固定されている。ケース体61が真空容器11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段60は真空容器11の壁面に取り付けられている。ケース体61はステンレスなどで構成される。誘電体板62は、板状の誘電体で形成されている。本実施形態において、誘電体板62は石英で形成されているが、Al等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体板62は、図示しない固定枠でケース体61に固定されている。誘電体板62がケース体61に固定されることで、ケース体61と誘電体板62によって囲繞された領域にアンテナ収容室61Aが形成される。
ケース体61に固定された誘電体板62は、開口11aを介して真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に臨んで設けられている。このとき、アンテナ収容室61Aは、真空容器11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部とは、誘電体板62で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部は、ケース体61で仕切られた状態で独立の空間を形成している。このように独立の空間として形成されたアンテナ収容室61Aの中に、アンテナ63が設置されている。なお、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部との間は、それぞれOリングで気密が保たれている。
本実施形態では、配管16a−1から配管16a−2が分岐している。この配管16a−2はアンテナ収容室61Aに接続されており、アンテナ収容室61Aの内部を排気して真空状態にする際の排気管としての役割を備えている。
配管16a−1には、真空ポンプ15aから真空容器11の内部に連通する位置にバルブV1、V2が設けられている。また、配管16a−2には、真空ポンプ15aからアンテナ収容室61Aの内部に連通する位置にバルブV3が設けられている。バルブV2,V3のいずれかを閉じることで、アンテナ収容室61Aの内部と真空容器11の内部との間での気体の移動は阻止される。真空容器11の内部の圧力や、アンテナ収容室61Aの内部の圧力は、真空計(不図示)で測定される。
薄膜形成装置1には制御装置(不図示)が備えられている。この制御装置には、真空計の出力が入力される。制御装置は、入力された真空計の測定値に基づいて、真空ポンプ15aによる排気を制御して、真空容器11の内部やアンテナ収容室61Aの内部の真空度を調整する機能を備える。制御装置がバルブV1,V2,V3の開閉を制御することで、真空容器11の内部とアンテナ収容室61Aの内部を同時に、又は独立して排気できる。
アンテナ63は、高周波電源65から電力の供給を受けて真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に誘導電界を発生させ、反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させる手段である。アンテナ63は、銅で形成された円管状の本体部と、本体部の表面を被覆する銀で形成された被覆層を備える。すなわち、アンテナ63の本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、アンテナ63の表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆している。これにより、高周波に対するアンテナ63のインピーダンスを低減して、アンテナ63に電流を効率よく流すことによりプラズマを発生させる効率を高めている。本実施形態では、高周波電源65からアンテナ63に周波数100kHz〜50MHzの交流電圧を印加して、反応プロセス領域60Aに反応性ガスのプラズマを発生させるように構成されている。
アンテナ63は、マッチング回路を収容するマッチングボックス64を介して高周波電源65に接続されている。マッチングボックス64内には、図示しない可変コンデンサが設けられている。アンテナ63は、導線部を介してマッチングボックス64に接続されている。導線部はアンテナ63と同様の素材からなる。ケース体61には、導線部を挿通するための挿通孔が形成されており、アンテナ収容室61A内側のアンテナ63と、アンテナ収容室61A外側のマッチングボックス64とは、挿通孔に挿通される導線部を介して接続される。導線部と挿通孔との間にはシール部材が設けられ、アンテナ収容室61Aの内外で気密が保たれる。
アンテナ63と回転ドラム13との間には、イオン消滅手段としてのグリッド66が設けられている。グリッド66は、アンテナ63で発生したイオンの一部や電子の一部を消滅させるためのものである。グリッド66は、導電体からなる中空部材であり、アースされている。中空部材からなるグリッド66の内部に冷却媒(例えば冷却水)を流すために、グリッド66の端部には冷却媒を供給するホース(不図示)が接続されている。
反応プロセス領域60Aの内部及びその周辺にはガス供給手段70が設けられている。ガス供給手段70は、反応性ガスを貯蔵する反応性ガスボンベ71と、反応性ガスボンベ71より供給される反応性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ72と、不活性ガスを貯蔵する不活性ガスボンベ73と、不活性ガスボンベ73より供給される不活性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ74と、これらのガスを反応プロセス領域60Aに導入する配管75aとを含む。すなわち、本実施形態では、ガス供給手段70から供給される反応性ガスと不活性ガスのそれぞれの流量を、マスフローコントローラ72,74にて個別に調整することができるようになっている。
なお、反応性ガスボンベ71と不活性ガスボンベ73は、成膜プロセス領域20Aのスパッタガスボンベ32と同様の装置とすることが可能である。また、マスフローコントローラ72とマスフローコントローラ74は、成膜プロセス領域20Aのマスフローコントローラ31と同様の装置を採用することが可能である。
本実施形態の薄膜形成装置1は、スパッタによる膜原料物質を供給する成膜プロセス領域20Aと、膜原料物質と反応性ガスの反応を行う反応プロセス領域60Aが真空容器11内の離間した位置に分離した状態で形成されている。このため、従来の一般的な反応性スパッタリング装置を用いた場合のように、ターゲット22a,22bと反応性ガスが反応して異常放電が起こるとの不都合を生じにくい。従って、従来のように基板Sの温度を上昇させて反応性を向上させる必要が無く、低い温度で十分に反応を行うことが可能となる。これにより、耐熱性の低いプラスチック樹脂などで構成される基板Sに対しても、十分に反応を行うことが可能となる。
本実施形態の薄膜形成装置1は、基板Sの温度を制御するための温度制御手段を備えていないが、温度制御手段を備えていなくても、上述した理由により基板Sの温度を上昇させる必要がないため、100℃以下の低温で成膜を行うことが可能となっている。なお、基板Sの温度を制御する温度制御手段を設けて基板Sの温度を所定の温度とすることができるのはいうまでもない。この場合、基板Sの耐熱性温度より低い温度となるように温度制御手段を制御することが好ましい。具体的には、温度を上昇させる加熱手段と、温度を下降させる冷却手段の両方を設けると共に、基板Sの配置される位置に温度センサを設けて、この温度センサで検知した温度に基づいて温度制御手段をフィードバック制御すると好ましい。
《薄膜形成方法》
次に、図1〜図4に示す薄膜形成装置1を用いた、本発明の薄膜形成方法の一例を説明する。以下の説明では、基板上に酸化チタン(TiO)の薄膜を形成する場合を例示する。ただし、酸化チタン薄膜を形成し、さらにその上に酸化チタン薄膜以外の他の薄膜を積層して、多層膜とすることもできる。
本実施形態の薄膜形成方法では、目的の膜厚よりも相当程度薄い薄膜を基板Sの表面に付着するスパッタ工程(図5のS4)と、この薄膜に対して酸化などの処理を行って薄膜の組成を変換する反応工程(図5のS5)とにより基板Sの表面に中間薄膜を形成し、このスパッタ工程と反応工程を複数回繰り返すことで、中間薄膜を複数層積層して目的の膜厚を有する最終薄膜を基板Sの表面に形成する。具体的には、スパッタ工程と反応工程によって組成変換後における膜厚の平均値が0.01〜1.5nm程度の中間薄膜を基板Sの表面に形成する工程を、回転ドラムの回転毎に繰り返すことにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜を形成する。以下、その一例を説明する。
(1)まず、図5のステップ(以下「S」と略す。)1にて、マグネトロンスパッタ電極21a,21bの上にターゲット22a,22bを保持させる。これとともに、真空容器11の外で回転ドラム13に基板Sをセットし、真空容器11のロードロック室11B内に収容する(ターゲットと基板の設置)。
ターゲット22a,22bとしては、例えばチタン(Ti)の他に、チタン(Ti)と亜鉛(Zn)の合金であってもよい。
基板Sは、プラスチック材料で構成されている。プラスチック材料としては、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート−ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリカーボネート−ポリブチレンテレフタレート共重合体、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂材料や、これらの樹脂材料とガラス繊維及び/又はカーボン繊維との混合物なども含む。基板Sの形状は、円板状に限らず、その表面に薄膜を形成できる他の形状、例えばレンズ形状、円筒状、円環状などの形状であってもよい。基板Sの厚みは、携帯電話のボディの用途であれば、例えば1〜3mm程度である。
本実施形態では、上述した理由により基板Sの温度を上昇させる必要がないので、基板Sの構成材料にプラスチック材料を用いることができる。
(2)次に、図5のS2にて、図示しないレールに沿って回転ドラム13を薄膜形成室11Aに移動させた後、扉11C及び扉11Dを閉じた状態で真空容器11内を密閉し、真空ポンプ15aを用いて真空容器11内を10−5〜0.1Pa程度の高真空状態にする(回転ドラムの移動と真空容器内の真空化)。このとき、バルブV1,V2,V3が開放され、アンテナ収容室80Aも同時に排気される。
(3)次に、図5のS3にて、真空容器11の下部に設けられたモータ17を駆動させることでモータ回転軸17aを回転させる。この回転に伴って、モータ回転軸17aに連結された回転ドラム13は回転軸線Zを中心に回転する。各基板Sは、回転ドラム13上に保持されているため、回転ドラム13が回転することで回転軸線Zを公転軸として公転する(回転ドラムの駆動)。
回転ドラム13の回転速度は、例えば50rpm以下(0rpmを除く)、好ましくは10rpm以下(0rpmを除く)、より好ましくは6rpm以下(0rpmを除く)の範囲で適宜選択される。
モータ17によって回転ドラム13が回転すると、回転ドラム13の外周面に保持された基板Sが公転して、成膜プロセス領域20Aに面する位置と反応プロセス領域60Aに面する位置との間を繰り返し移動することになる。基板Sを公転させることで、後述するように、成膜プロセス領域20Aでのスパッタ処理と、反応プロセス領域60Aでの反応処理とが順次繰り返し行われて、基板Sの表面に薄膜を生成させることになる。
(4)次に、真空容器11内の圧力が安定したら、成膜プロセス領域20A内の圧力を例えば0.05〜0.2Paに調整し、その後、成膜プロセス領域20A内にスパッタガスをスパッタガスボンベ32からマスフローコントローラ31で流量を調節して配管35a内に導入する(スパッタガスの導入)。配管35aに導入されたスパッタガスは、導入口35bより成膜プロセス領域20Aに配置されたターゲット22a,22bの前面に導入され、これにより成膜プロセス領域20A内のスパッタ雰囲気を調整する。
スパッタガスとしては、例えばアルゴンやヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。スパッタガスの導入流量は、例えば100〜300sccm程度に調整される。なお、「sccm」は、0℃、101325Paにおける1分間あたりの流量を表すもので、cm/minに等しい。
次に、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から、例えば周波数1kHz〜100kHzの交流電圧を印加し、ターゲット22a、22bに交番電界が掛かるようにする(交番電界の印加)。本実施形態では、例えば4〜7kW程度の電力(スパッタ電力)を供給する。これにより、ある時点においてはターゲット22aがカソード(マイナス極)となり、その時ターゲット22bは必ずアノード(プラス極)となる。次の時点において交流の向きが変化すると、今度はターゲット22bがカソード(マイナス極)となり、ターゲット22aがアノード(プラス極)となる。このように一対のターゲット22a、22bが、交互にアノードとカソードとなることにより、プラズマが形成され、カソード上のターゲットに対してスパッタを行う。
成膜プロセス領域20Aにスパッタガス供給手段30からスパッタガスが供給されて、ターゲット22a,22bの周辺が不活性ガス雰囲気になった状態で、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から交流電圧を供給すると、ターゲット22a,22b周辺のスパッタガスの一部が電子を放出してイオン化する。
マグネトロンスパッタ電極21a,21bに配置された磁石によりターゲット22a,22bの表面に漏洩磁界が形成されるため、この電子はターゲット22a,22bの表面近傍に発生した磁界中を、トロイダル曲線を描きながら周回する。この電子の軌道に沿って強いプラズマが発生し、このプラズマに向けてスパッタガスのイオンが加速され、ターゲット22a,22bに衝突することでターゲット22a,22bの表面の原子や粒子(ターゲット22a,22bがチタンの場合はチタン原子やチタン粒子)が叩き出される(スパッタ)。
スパッタを行っている最中は、基板温度を例えば室温に保持し、回転ドラム13を回転駆動させて、基板Sを移動させながら、基板Sの表面に、叩き出された薄膜の原料である膜原料物質としてのチタン原子やチタン粒子を付着させる。
スパッタを開始する時には、スパッタが安定して行われるようになるまでターゲット22a、22bと回転ドラム13との間をプレスパッタシールドで遮断し、スパッタが安定して行われるようになった後にターゲット22a、22bと回転ドラム13との間を開放する。これにより、スパッタが安定してから基板Sへスパッタ原子を堆積させることができる。
スパッタ処理後に堆積するスパッタ原子は、本実施形態では膜原料物質の不完全酸化超薄膜であると考えられる。ここで超薄膜とは、超薄膜が複数回堆積されて最終的な薄膜となることから、この「薄膜」との混同を防止するために用いた用語であり、最終的な「薄膜」より十分薄いという意味である。
なお、スパッタ電極21a、21bと回転ドラム13との間に、補正板及び遮蔽板(いずれも図示省略)を設け、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布の薄膜を形成させるようにしてもよい。以上が、図5のS5における成膜プロセス領域20Aでの処理である。
(5)次に、回転ドラム13の回転駆動により基板Sを、成膜プロセス領域20Aから反応プロセス領域60Aに移動させる。反応プロセス領域60Aでは、回転ドラム13の回転駆動により、成膜プロセス領域20Aから反応プロセス領域60Aに移動してきた基板Sの表面に付着した膜原料物質の不完全酸化超薄膜をプラズマ処理し、膜原料物質の完全酸化物を生成させる(反応プロセス領域での処理)。
本実施形態では、反応プロセス領域60Aには、反応性ガスボンベ71から配管75aを通じて反応性ガスを導入させるとともに、不活性ガスボンベ73から配管75aを通じて不活性ガスを、反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量で、好ましくは反応性ガスの導入流量よりも多い流量で導入させる点が特徴である。反応性ガスとしては、酸素ガスに限定されず、窒素ガス、フッ素ガス、オゾンガスなどであってもよい。不活性ガスとしては、アルゴンガスに限定されず、ネオンガス、ヘリウムガスなどであってもよい。
本発明者らは、プラズマ処理後に生成される膜原料物質の完全酸化物の膜特性について鋭意検討してみた。その結果、従来から認識していた事項(すなわち、反応プロセス領域60Aには、酸素などの反応性ガスを導入する効果を阻害しない程度の少量(反応性ガス100sccmに対する不活性ガスの導入量が例えば数〜数十sccm)であれば、この反応性ガスとともにアルゴンなどの不活性ガスを導入してもよいとの知見)が、上記膜特性に与える影響については当てはまらないことが判明した。そして検討を進めてみたところ、反応プロセス領域60Aに、反応性ガスと、この反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量の不活性ガスとを導入した状態で、プラズマ処理することにより、プラズマ処理後に生成される膜原料物質の完全酸化物の膜特性、特に親水性を有効に改善できることを見出した。
すなわち、本実施形態によれば、基板Sに付着した、スパッタ物質としての膜原料物質の不完全酸化超薄膜に反応性ガスを接触させるに際し、その雰囲気中に当該反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量の不活性ガスを導入することにより、特別な前処理や後処理を施さなくても、成膜直後の薄膜に親水性を発現させることができること、特に紫外線を照射しなくとも親水性を発現する薄膜を成膜することができることを見出した。
反応プロセス領域60Aへの不活性ガスの導入流量は、上述したように反応性ガスの導入流量と少なくとも同一であればよい。ただし、親水性をより強く発現させるには、不活性ガスの導入流量を反応性ガスの導入流量よりも多くするとよい。より好ましくは、不活性ガスの導入流量を反応性ガスの導入流量の少なくとも3倍にし、さらに好ましくは5倍以上、最も好ましくは7倍以上とする。具体的には例えば、100sccmの反応性ガスに対する不活性ガスの導入流量を、好ましくは300sccm以上、より好ましくは500sccm以上、さらに好ましくは700sccm以上とする。反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量の不活性ガスを反応プロセス領域60Aへ導入することで、生成される膜原料物質の完全酸化物の親水性が改善される。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らの推測によれば、基板Sの最表面に存在する不完全酸化超薄膜が反応性ガスプラズマにより完全酸化されるとともに、高濃度の不活性ガスプラズマが照射されることにより、超薄膜が親水性を発現する構造に変態するのではないかと思われる。
本実施形態では、例えば、JIS−R3257に準拠した方法(ぬれ性試験)で算出される、水に対する接触角が10°以下である場合に、親水性があると判断する。
なお、反応プロセス領域60Aの圧力は、例えば0.07〜1Paに維持される。また、少なくとも反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させている際中は、アンテナ収容室80Aの内部の圧力は、0.001Pa以下を保持する。
反応性ガスボンベ71や不活性ガスボンベ73から反応性ガスや不活性ガスを導入した状態で、アンテナ63に高周波電源65から、例えば100kHz〜50MHzの交流電圧が供給されると、反応プロセス領域60A内のアンテナ63に面した領域にプラズマが発生する。
本実施形態では、反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量の不活性ガスを導入するとともに、反応プロセス領域60Aに、高周波電源65から、例えば1kW以下、好ましくは0.8kW以下、より好ましくは0.5kW以下の小さな電力(プラズマ処理電力)を供給する点も特徴である。供給するプラズマ処理電力を低くすることで、成膜温度の低温化が図られる。その結果、プラスチック材料で構成される基板Sへの成膜を行うことができる。
発生したプラズマ中には、少量の反応性ガスの活性種が存在し、この反応性ガスの活性種は、反応プロセス領域60Aに導かれる。そして、回転ドラム13が回転して、膜原料物質であるチタン(Ti)の不完全酸化超薄膜が付着した基板Sが反応プロセス領域60Aに導入されると、反応プロセス領域60Aでは、チタンを反応させる工程を行う。これにより、チタンの完全酸化物である酸化チタン(TiO)が生成する。
以上が、図5のS6における反応プロセス領域60Aでの処理である。
(6)本実施形態では、図5のS4における成膜プロセス領域20Aでの処理と、図5のS5における反応プロセス領域60Aでの処理を、基板Sの表面に形成される薄膜が所定の膜厚となるまで複数回繰り返す。これにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜が基板Sの表面に形成される。
本実施形態の薄膜形成方法では、目的の膜厚よりも相当程度薄い薄膜を基板Sの表面に付着するスパッタ処理工程と、この薄膜に対して酸化などの処理を行って薄膜の組成を変換するプラズマ処理工程とにより、基板Sの表面に中間薄膜を形成し、このスパッタ処理とプラズマ処理を複数回繰り返すことで、中間薄膜を複数層積層して目的の膜厚を有する最終薄膜を基板Sの表面に形成する。具体的には、スパッタ処理とプラズマ処理によって組成変換後における膜厚の平均値が0.01〜1.5nm程度の中間薄膜を基板Sの表面に形成する工程を、回転ドラムの回転毎に繰り返すことにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜を形成する。
本実施形態によれば、プラズマ処理の際に、酸素などの反応性ガスと、この反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量の不活性ガスを反応プロセス領域60Aに導入する。また、反応プロセス領域60Aに導入するプラズマ処理電力を上述したように低パワーとする。これにより、特別な前処理や後処理を施さなくとも、生成される薄膜の親水性が改善される。また、反応性ガス及び不活性ガスが導入される反応プロセス領域60Aは基板Sにスパッタ物質を付着させる成膜プロセス領域20Aとは離間して形成されているので、ターゲット22a,22bの反応よる異常放電が生じにくく、基板Sの温度を上昇させなくてもプラズマ処理による反応を促進させることができる。その結果、耐熱性の低いプラスチック基板Sに対しても上記薄膜を成膜することが可能である。このように実施形態の技術は、酸化チタンの薄膜を、耐熱性が低いプラスチック材料に形成することができるので、産業上の利用価値が極めて高い。
以上説明した実施形態は、上記発明の理解を容易にするために記載されたものであって、上記発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、上記発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
本実施形態では、スパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行う薄膜形成装置1により薄膜形成装置が構成されているものとして説明したが、これに限定されず、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等、他の公知のスパッタを行う薄膜形成装置で構成することもできる。
次に、上記発明の実施形態をより具体化した実験例を挙げ、上記発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実験例に上記発明を限定する趣旨でないことは勿論である。
《実験例1〜6》
図1〜4に示す薄膜形成装置1を用いて、基板Sの表面に酸化チタン(TiO)の薄膜と酸化ケイ素(SiO)の薄膜を交互に各3層づつ積層した多層膜を形成した。基板Sとして、プラスチック樹脂材料であるポリカーボネート(PC)基板(縦50mm×横50mm×厚さ1mm)を用いた。成膜は以下の条件で行った。なお、成膜レートは0.18nm/sとした。
《成膜プロセス領域20A》
基板温度:表1を参照、
ターゲット22a,22b:チタン(Ti)、
ターゲット22a,22bに供給される電力(スパッタ電力):5.0kW、
スパッタ電極21a,21bに印加する交流電圧の周波数:40kHz、
アルゴンガスの導入流量:300sccm。
《反応プロセス領域60A》
高周波電源65からアンテナ63に供給される電力(プラズマ処理電力):表1を参照、
アンテナ63に印加する交流電圧の周波数:13.56MHz、
酸素ガスの導入流量:100sccm、
アルゴンガスの導入流量:表1を参照。
以上の条件で、PC基板の表面に、厚み280nm(成膜時間:26分)の酸化チタン薄膜を形成した。
《薄膜の評価》
得られた酸化チタン薄膜の親水性を評価した。親水性の評価は、JIS−R3257のぬれ性試験に準拠した方法で、水に対する接触角を測定することにより行った。具体的には、試験台に基板Sを載置し、基板Sの酸化チタン薄膜側に蒸留水を滴下し、静置した状態で水滴の接触角を光学的に測定することにより行った。また、得られた酸化チタン薄膜に紫外線を照射し(照射量:10mW/cm、照射時間:24時間)、24時間経過後の親水性を評価した。さらに、紫外線照射後、蛍光灯の下で、120分放置後の親水性も評価した。いずれの親水性の評価も上記方法と同様とした。結果を表1に示す。
Figure 0004942725
《考察》
表1に示すように、反応プロセス領域60Aに対し、アルゴンガスを酸素ガスと同一流量以上で導入するとともにプラズマ処理電力(高周波電源からの供給電力)を低パワーにすることで(実験例2〜4)、基板Sに形成される酸化チタン薄膜(成膜直後)の水に対する接触角が小さくなる傾向がある。特に酸素ガスの3倍以上、アルゴンガスを導入することで、水に対する接触角が十分に小さくなり、親水性が改善されることが確認できた。また、紫外線を照射し、その後24時間経過した後の接触角については、アルゴンガスの導入量が多いほど、水に対する接触角が小さくなることが確認できた。さらに、紫外線を照射し、その後、蛍光灯の下で120分放置した後の接触角については、アルゴンガスの導入量が多いほど、水に対する接触角が維持できていることが確認できた。
また、プラズマ処理電力を変化させても、同様の傾向があることが確認できた(実験例4〜6)。
なお、実験例4の試料については、得られた酸化チタン薄膜の屈折率(@550nm)と減衰係数(@550nm)も算出した。その結果、2.41、6.40×10−4であった。
図1は本実施形態に係る薄膜形成装置を上面から見た説明図である。 図2は図1の薄膜形成装置を側面から見た説明図である。 図3は図1の薄膜形成装置の成膜プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。 図4は図1の薄膜形成装置の反応プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。 図5は本実施形態に係る薄膜形成方法の流れを示す工程図である。
符号の説明
1…薄膜形成装置、11…真空容器、13…回転ドラム、S…基板、20…スパッタ手段、20A…成膜プロセス領域、30…スパッタガス供給手段、31…マスフローコントローラ、32…スパッタガスボンベ、35a…配管、35b…導入口、35c…配管、60
プラズマ発生手段、60A…反応プロセス領域、70…ガス供給手段、71…反応性ガスボンベ、72…マスフローコントローラ、73…不活性ガスボンベ、74…マスフローコントローラ、75a…配管。

Claims (6)

  1. プラスチック基板の表面に薄膜を形成する方法であって、
    真空容器の内部に形成された成膜プロセス領域でチタンを含むターゲットのスパッタ物質を前記基板に付着させる第1の工程と、
    前記真空容器の内部に前記成膜プロセス領域とは離間して形成された反応プロセス領域で反応性ガスである酸素ガスを前記基板に接触させ、前記スパッタ物質の組成を変換させる第2の工程とを有し、
    前記反応性ガスの導入流量よりも多い流量で不活性ガスを導入するとともに1kW以下のプラズマ処理電力を供給した状態で、前記反応性ガスを前記基板に接触させることを特徴とする成膜方法。
  2. 請求項記載の成膜方法であって、前記不活性ガスを、前記反応性ガスの導入流量の少なくとも3倍の流量で導入することを特徴とする成膜方法。
  3. 請求項1記載の成膜方法であって、前記不活性ガスを、前記反応性ガスの導入流量の少なくとも5倍の流量で導入することを特徴とする成膜方法。
  4. 請求項1〜3の何れか一項記載の成膜方法であって、前記不活性ガスとしてアルゴンガスを用いることを特徴とする成膜方法。
  5. 請求項1〜4の何れか一項記載の成膜方法であって、前記成膜プロセス領域と前記反応プロセス領域の間で前記基板を移動させる第3の工程を有し、前記第3の工程後に前記プラスチック基板上に付着した前記スパッタ物質の組成変換物に対して、前記第1の工程及び前記第2の工程を複数回繰り返すことを特徴とする成膜方法。
  6. プラスチック基板の表面に薄膜を形成する方法であって、
    真空容器の内部に形成された成膜プロセス領域でチタンで構成されるターゲットのスパッタ物質を前記基板に付着させる第1の工程と、
    前記真空容器の内部に前記成膜プロセス領域とは離間して形成された反応プロセス領域に前記基板に移動させる第2の工程と、
    前記反応プロセス領域で酸素ガスを前記基板に接触させ、前記スパッタ物質の組成を変換させる第3の工程と、
    前記第3の工程後に前記プラスチック基板上に付着した前記スパッタ物質の組成変換物に対して、前記第1の工程、前記第2の工程及び前記第3の工程を複数回繰り返す第4の工程とを有し、
    前記酸素ガスの導入流量よりも多い流量でアルゴンガスを導入するとともに1kW以下のプラズマ処理電力を供給した状態で、前記酸素ガスを前記基板に接触させることを特徴とする成膜方法。
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