JPH11152563A - 防曇性薄膜を有する部材およびその製造方法 - Google Patents

防曇性薄膜を有する部材およびその製造方法

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JPH11152563A
JPH11152563A JP9315326A JP31532697A JPH11152563A JP H11152563 A JPH11152563 A JP H11152563A JP 9315326 A JP9315326 A JP 9315326A JP 31532697 A JP31532697 A JP 31532697A JP H11152563 A JPH11152563 A JP H11152563A
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JP
Japan
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thin film
substrate
film
antifogging
fogging
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JP9315326A
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English (en)
Inventor
Kazunori Ohashi
一記 大橋
Toru Nakamura
徹 中村
Fumito Kimura
文人 木村
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 部材の撥水性を向上させる。 【解決手段】 本願発明の部材は、無機化合物からな水
の静止接触角が略0度である防曇性薄膜が基材上に形成
されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鏡、窓ガラス、自動車
ガラス、眼鏡レンズ、サングラス、その他の光学部品等
の防曇性が要求される物品に広くかつ有効に用いられる
防曇性薄膜を有する部材およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】ガラス、プラスチック等の透明材料は、
温度及び湿度の異なる環境にさらされると、曇りを生じ
透明性が損なわれしまう。これは、露点以下の温度に下
がった透明材料の表面に湿った空気が触れ、結露が生じ
ることに起因するものである。このような曇りを防止す
る手段として、透明材料の最外層に防曇膜を形成するこ
とが行われている。光学部品等の透明材料の表面に対し
て防曇性を付与する従来の手段としては、以下のような
ものがあげられる。例えば界面活性剤やヒドロキシエチ
ルメタクリレート、ポリエーテル、ポリビニルアルコー
ル等の親水性官能基を有する有機化合物を用い、この有
機化合物を基板表面に塗布もしくはスプレーにより塗装
することにより、防曇性薄膜を形成する方法があげられ
る。また親水性ビニル化合物と有機シラン化合物を組み
合わせた材料を用い、この材料を基板表面に塗布する方
法があげられる。更に、プラスチック成形体となる液状
プラスチック中に界面活性剤を予め添加して練り込んだ
後に成形する方法が行われてきた。
【0003】また、特開昭60−210641号公報に
はプラスチック成型品の表面に真空蒸着法を用い、珪素
酸化物または珪素またはその混合物を蒸発材料として薄
膜を形成する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、界面活
性剤やヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエーテ
ル、ポリビニルアルコール等の親水性官能基を有する有
機化合物を用い、これを浸漬法、刷毛塗り法等によりプ
ラスチック基板上に塗布して防曇性薄膜を形成した。ま
たスプレーを用い、前記有機化合物をプラスチック基板
上に噴霧することで防曇性薄膜の形成を試みた。形成さ
れた防曇性薄膜の耐久性を調べたところ、防曇効果は長
続きせず、満足のいく耐久性を備えた薄膜を得ることが
できなかった。また、基材上に反射防止膜を形成した後
に従来の材料、成膜方法で防曇性薄膜を形成すると、反
射防止効果に悪影響を及ぼすことがあった。
【0005】本発明者等は、材料を変えて防曇性薄膜を
形成し、薄膜の耐久性の向上を試みた。そして、本発明
者等は、防曇性材料として親水性ビニル化合物と有機シ
ラン化合物を組み合わせたものを用いることにした。そ
してこの材料を塗布法によりプラスチック基板の表面に
塗布し、防曇性薄膜を形成した。しかし、防曇性薄膜の
耐久性の向上を実現することはできなかった。
【0006】更に本発明者等は、液状のプラスチック材
料中に界面活性剤を添加し、これを練り込んだ後に成形
する方法により、成形されたプラスチック基材に防曇性
を付与することを試みた。しかし、この方法でも防曇性
薄膜の耐久性を向上させることはできなかった。特にこ
の方法では、使用できるプラスチック材料と界面活性剤
の組み合わせが限られ、汎用性が乏しい上に、練り込み
可能な界面活性剤の量に限りがあることから効率の悪い
製造方法であった。
【0007】また、蒸着物質として珪素酸化物または珪
素またはこれらの混合物を用いて真空蒸着法によりプラ
スチック基材の表面に防曇性薄膜を形成することを試み
て、形成された防曇性薄膜の性状を調査した。その結
果、水との静止接触角は、約10度程度であることが判
った。しかし、水との静止接触角が約10度程度では膜
の表面に水が沈着して、水滴が島状になって残るために
散乱が生じ、実用的に有用な防曇性を有する膜にはなら
なかった。
【0008】そこで、本発明は、十分な防曇性を有し、
防曇性薄膜の耐久性が高く防曇性が長続きし、かつ反射
防止性能等に悪影響を及ぼさないような実用的に有用な
防曇性薄膜及びその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、防曇性薄
膜となる材料や成膜方法、成膜条件等を変化させて更に
研究を進めた。その結果、防曇性薄膜の形成方法として
スパッタリング法を用いて、特定の材料で特定の膜厚の
防曇性薄膜を形成すれば防曇効果の向上を達成すること
ができることを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】そこで本発明は、「無機化合物からなり水
の静止接触角が略0度である防曇性薄膜が基材上に形成
されていることを特徴とする防曇性を備えた部材(請求
項1)」を提供する。第2「基材上に形成されたコーテ
ィング層と、無機化合物からなり水の静止接触角が略0
度である防曇性薄膜が前記コーティング層上に形成され
ていることを特徴とする防曇性を備えた部材(請求項
2)」を提供する。第3に「前記防曇性薄膜が反射防止
効果を有する薄膜であることを特徴とする請求項1また
は2記載の部材(請求項3)」を提供する。第4に「前
記コーティング層がミラーまたはフィルターまたは反射
防止膜であることを特徴とする請求項2記載の部材(請
求項4)」を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の防曇性薄膜及び該
薄膜の成膜に関わるスパッタリング装置及び成膜方法の
一例について図を用いて説明する。まず本発明に関わる
スパッタリング装置の構成について説明する。図1は本
発明の防曇性薄膜の成膜に使用されるスパッタリングリ
ング装置の概略の構成を示す横断面図であり、図2は、
同装置の概略の縦断面図である。
【0012】図1に示すように、本発明に関わるスパッ
タリング装置のチャンバー内のほぼ中央には、薄膜が成
膜される基板15が設置される円筒状の基板ホルダー1
4が設けられている。基板ホルダーの直径は約50cm
であり、高さは約50cmである。基板ホルダー14
は、中心軸を中心に回転可能なように設置されており、
高速回転も可能になっている。図2に示すように、基板
15は基板ホルダー14に複数設置可能である。
【0013】本スパッタリング装置において、基板ホル
ダー14の周囲は、マスク18によって区切られた4つ
の部屋が設けられている。このうち基板15表面に防曇
性薄膜となる物質を基材上に沈着させるための部屋であ
る成膜室12、20が2個所に設置されている。図1に
示すように、成膜室12、20には、それぞれスパッタ
リングガスの導入口11、21が設けられている。
【0014】本発明において使用可能なスパッタリング
ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガ
ス、クリプトンガス、キセノンガス等があげられる。ま
た成膜室12、20には金属ターゲット13、19が設
置されている。金属ターゲット13、19の材料として
は、Si、Al、Zr、Ti、Mg等を用いることがで
きるが、これらに限定されるものではなく、膜の性能に
合わせて他の材料を選択することも可能である。また金
属ターゲットとしては、単結晶、多結晶またはこれらの
混合状態のものが使用可能である。
【0015】成膜室12に導かれたスパッタリングガス
は、グロー放電によってイオン化される。成膜室12に
隣接する場所には、反応室17が設けられている。図1
において基板ホルダーは、時計まわりに回転する。従っ
て、成膜質12で所望の金属材料が沈着された基板は、
その後基板ホルダーが回転することで反応室に移動させ
られる。
【0016】反応室17には反応ガスの導入口16が設
置されている。反応ガスとしては、酸素ガス、弗素ガ
ス、窒素ガス等を用いることが可能である。そして、反
応ガスの種類と金属ターゲットの材料の種類により酸化
珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、弗化マグネシウ
ム 、窒化チタン、酸化アルミニウム等の化合物からな
る薄膜を形成することが可能であるが、これらに限定さ
れるものではない。
【0017】スパッタリング装置内は、3.0×10-5
Torr以下に減圧されている。図1の22の領域は未
使用の領域であるが、場合により成膜室または反応室と
して利用することも可能である。次に前記したスパッタ
リング装置を用いて、防曇性薄膜を形成する方法につい
て説明する。
【0018】本発明では、防曇性薄膜となる物質を基板
表面に沈着させた後、これに反応ガスを作用させて、沈
着した物質の化合物を形成させるという工程を連続して
行い防曇性薄膜を形成するものである。本発明のような
連続した工程は、前記した中心軸を中心とした回転が可
能である円筒状の基板ホルダー14により実現すること
が可能となっている。この基板ホルダーの回転速度は、
50〜150rpmの速度で回転させることが可能であ
る。本発明に係わる防曇性薄膜の形成では、約100r
pm以上が好ましい回転速度である。本発明の防曇性薄
膜を有する部材の製造装置は、基板ホルダー14は高速
で回転させることが可能であり、数原子程度の膜厚を有
する薄膜を成膜することも可能である。
【0019】成膜室12において前記のようにイオン化
されたスパッタリングガスは、金属ターゲット13に入
射する。これにより金属ターゲット13を構成する材料
の金属原子が金属ターゲット13から叩き出される。こ
のとき、基板ホルダー14に装着されている基板15が
成膜室12に達すると、金属ターゲット13から叩き出
された原子が基板15表面に沈着する。沈着する原子か
らなる膜の膜厚は、基板の回転速度や成膜室12の通過
回数等により制御可能である。
【0020】本発明の防曇性薄膜の膜厚は、使用するタ
ーゲットの材料にもよるが数原子程度〜10000Åの
ものが好ましく、特に100〜1000Åが好ましい膜
厚である。この膜厚よりも厚くなると膜にクラックが生
じてしまう。また膜厚が薄すぎると十分な防曇効果が得
られない。成膜室12内で金属原子が表面に沈着された
基板15は、軸回転する基板ホルダー14と共に反応室
17に移動する。反応室17には、前記したように反応
ガスの導入口16から反応ガスが導かれており、反応ガ
スは高周波コイル(不図示)によりプラズマ状になって
いる。そして、移動してきた基板15が反応室17を通
過するときに基板15上に沈着した金属原子がイオン化
された反応ガスと作用し、無機化合物薄膜が得られる。
【0021】反応ガスとしては、酸素、水素、弗素及び
窒素等を用いることができるが、これらに限定されるも
のではなく、成膜する膜により自由に選択することがで
きる。尚、成膜室12と反応室17の間には、スパッタ
リングガスと反応ガスが混ざり合わないようにマスク1
8が取り付けてある。また、本発明で使用可能な基板
は、ガラス、セラミック、プラスチック等であるが、こ
れらに限定されるものではない。また、本発明の防曇性
薄膜は眼鏡レンズに好ましく使用される。
【0022】使用されるプラスチックレンズ基板として
は、エポキシ樹脂、アクリル酸エステル及び/またはメ
タクリル酸エステルの共重合体(ビニルモノマーとの共
重合体も含む)、ポリアミド、ポリエステル、(アルキ
ド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を含む)、各種アミノ
酸(メラミン樹脂、尿素樹脂等を含む)、ウレタン樹
脂、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルア
ルコール、スチレン樹脂、透明塩化ビニル樹脂、繊維素
系樹脂及びジエチレングリコールビスアリルカーボネー
ト重合体(CR−39)、また紫外線などの活性エネル
ギー線を照射することにより重合する樹脂(例えば紫外
線硬化型樹脂)等が挙げられる。
【0023】本発明の防曇性薄膜は、プラスチック基板
上に直接形成してもよいし、またコーティング層上に形
成してもよい。コーティング層としては、ミラー、フィ
ルター、または無機化合物からなる単層または多層から
成る反射防止膜等である。材料としては、二酸化珪素、
フッ化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムを
用いて形成する。の表面に形成してもよい。反射防止膜
上に形成する場合、反射防止膜の構成は一般的に高屈折
率の膜と低屈折率の膜の交互層から成るものが好まし
い。低屈折率の膜を形成する材料としては、弗化化マグ
ネシウム、一酸化珪素、二酸化珪素等を使用することが
でき、高屈折率の膜を形成する材料としては、酸化アル
ミニウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化チ
タン、酸化タンタル、酸化錫、酸化タングステン、酸化
鉄、酸化セリウム等が使用可能である。これらの反射防
止膜は、真空蒸着法、イオンプレーティング、スパッタ
リング等を用いて形成する。
【0024】また、本発明の防曇性薄膜は、反射防止膜
の性質を兼ね備えるように形成することも可能である。
この場合、反射防止膜を形成している層の内の最上層が
防曇性薄膜を兼ねることになる。反射防止膜と防曇性薄
膜を兼ね備える膜の材料としては酸化珪素からなるもの
が好ましく使用される。プラスチックレンズ基材表面に
ハードコート層を形成し、この上に本発明の防曇性薄膜
を形成することも可能である。この場合、防曇性を有す
る耐擦傷性の高いプラスチックレンズを得ることができ
る。特に、ハードコート層を形成する材料としては、下
記一般式で表わされる有機珪素化合物またはその加水分
解物が好ましい。
【0025】一般式: R1aR2bSi(OR34-(a+b) (但し、式中、R1 は、官能基又は不飽和2重結合を有
する炭素数4〜14の基であり、R2 は、炭素数1〜6
の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基であり、R3
炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基又は
アシル基であり、a及びbは、それぞれ0又は1であ
り、かつa+bは、1又は2である。) 前記一般式の化合物のうち、R1 が官能基としてエポキ
シ基を有するものについて言うと、例えば、次のものが
使用される。
【0026】これらはエポキシ基を有するのでエポキシ
シランとも呼ばれる。エポキシシランの具体例として
は、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキ
シシランなどが挙げられる。
【0027】また、前記一般式の化合物のうち、R1
官能基としてエポキシ基を有すもの以外(a=0のもの
を含む)の例としては、例えば次のものが使用される。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラ
ン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキ
シエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメ
トキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、3−
アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピ
ルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、
フェニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリ
メトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシ
シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキ
シシランなどの各種トリアルコキシシラン、トリアシロ
キシシランあるいはトリアルコキシアルコキシシラン化
合物。
【0028】以上に挙げた前記一般式の例示化合物は、
いずれもSi原子に結合するOR3基が3個ある(a+
b=1)3官能の例であるが、OR3 基が2個ある(b
=2)2官能の相当する化合物ももちろん使用すること
ができる。2官能の相当する化合物の例としては、ジメ
チルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、
メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメト
キシシラン、ジメチルジエトキシシランなどがある。
【0029】前記一般式の化合物は、1種類で使用して
もよいが、目的に応じて2種類以上を混合して使用して
もよい。更に、a+b=0の4官能の相当する化合物を
併用することも可能である。4官能の相当する化合物の
例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イ
ソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−
ブチルシリケート、t−ブチルシリケート、sec−ブ
チルシリケートなどが挙げられる。
【0030】これら組成物を使用した場合、硬度の向
上、干渉縞の発生防止、帯電防止性能を更に付与するた
めに微粒子状無機物を添加することも可能である。ハー
ドコート層には微粒子状無機酸化物を混入することが可
能である。無機酸化物を混入することにより、屈折率の
調整や硬度の調整を行うことが可能となる。ゾルとして
は、例えば、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化アルミニウム、
酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ベ
リリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セ
リウム、酸化スズ、酸化タングステンの微粒子が使用可
能である。
【0031】また、これらの微粒子は、単独で使用する
だけでなく、必要に応じて2種類以上を混合または複合
状態で使用することも可能である。例えば、酸化スズ微
粒子を核として、これを酸化タングステンと酸化スズの
複合形態の微粒子で被覆した変性状態のものも使用可能
である。このような変性状態にしたものは溶媒中で凝集
せず、良好な分散状態を形成する。特に、酸化チタニウ
ム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウ
ム、酸化ジルコニウム、酸化スズを使用した場合には、
組成物の屈折率を高くすることができる。
【0032】微粒子の粒子径は、1〜200nm、特に
5〜100nmのものが好ましい。これより小さいと製
造が困難であり、微粒子自身の安定性も悪く、かつ効果
も小さい。これより大きいと、コーティング組成物の安
定性、塗膜の透明性、平滑性などが低下する。このよう
なゾルは、一部市販品として入手可能である。また、塗
布時における流れ性を向上し、硬化膜の平滑性を向上す
るために、例えば、水、低級アルコール、アセトン、エ
ーテル、ケトン、エステルなど各種の溶媒を使用するこ
とが可能である。以上の成分の他に、更に必要に応じて
各種添加剤を併用してもよい。添加剤をもちいることに
より、例えば塗布される側の基材(成形物)との接着性
改良を目的として、或いは、コーティング組成物の安定
性を向上させることが可能となる。
【0033】添加剤の例としては、pH調節剤、粘度調
節剤、レベリング剤、つや消し剤、安定剤、紫外線吸収
剤、酸化防止剤等がある。塗布方法は、刷毛塗り、浸
漬、ロール塗り、スプレー塗装、流し塗り等、通常の塗
布法を用いることができる。この際、塗布条件は、主と
してビヒクルの性質によって決定される。
【0034】このような湿式法による形成方法の他、乾
式法であるCVD法によりハードコート層を形成するこ
とも可能である。CVD法によりハードコート層を形成
する場合、基材表面に変性層を形成した後にハードコー
ト層を形成することが好ましいが、ハードコート層のみ
を形成することも可能である。前記変性層とは、基材の
表面上に形成され、基材側から膜厚方向に徐々に屈折率
が変化している層である。そして変性層内の物質の組成
比は徐々に変化している。
【0035】変性層及びハードコート層の製造に用いら
れるSiを含む有機化合物としては、テトラエトキシシ
ラン、ジメトキシシラン、メチルメトキシシラン、テト
ラメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエト
キシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン等が好
適に用いられる。またTiを含む有機化合物としては、
テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ
イソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタ
ン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシ
チタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t
−ブトキシチタン、テトラジエチルアミノチタン等が好
適に用いられる。
【0036】これらのSiおよびTiを有機化合物は、
その一種類を単独で用いても、2種類以上を併用しても
よい。ハードコート層の膜厚は0.4μmよりも厚く、
5μmよりも薄いことが好ましい。また変性層の膜厚は
100nmよりも厚く、900nmよりも薄いことが好
ましい。
【0037】プラスチックレンズ基材表面にプライマー
層を形成することも可能である。プライマー層を形成す
ることにより、その上に形成するハードコート層と基材
を被覆した硬化被膜との密着性を向上させることが可能
であり、また耐衝撃性を向上させることも可能である。
これにより防曇性を有するプラスチックレンズに衝撃に
対する耐久性を付与することが可能となり、様々な使用
環境に耐え得るプラスチックレンズが製造できる。
【0038】プライマー層に用いられる材料としては、
ウレタン系材料からなるものが好ましく使用できる。ウ
レタン系材料からなるプライマー層の組成物は、活性水
素含有化合物とポリイソシアネートとからなる。ここ
で、活性水素含有化合物としては、エチレングリコー
ル、1,2−プロピレングリコール,1,3−ブタンジ
オール,1,6ヘキサンジオール,ネオペンルグリコー
ル,ジプロピレングリコー,ジエチレングリコールなど
のアルキレングリコール類;ポリプロピレングリコー
ル,ポリエチレングリコール,ポリテトラメチレングリ
コールなどのポリアルキレングリコール類;ポリ(ジエ
チレンアジペート),ポリ(テトラメチレンアジペー
ト),ポリ(ヘキサメチレンアジペート),ポリ(ネオ
ペンチレンアジペート)などのポリアルキレンアジペー
ト類;ポリ−ε−カプロラクトン;ポリ(1,4−ブタ
ンジエン)グリコール、ポリ(1,2−ブタンジエン)
グリコールなどのポリブタジエングリコール類;ポリ
(ヘキサメチレンカーボネート)などのポリ(アルキレ
ンカーボネート)類;シリコンポリオール等が挙げられ
るが、その他の公知の活性水素含有化合物の使用も可能
である。
【0039】ポリイソシアネートの例としては,トリレ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5
−ナフタレンジイソシアネート、3,3’ジメチル−
4,4’ジフェニルジイソシアネート、芳香族系ジイソ
シアネート、;1,6ヘキサメチレンジイソシアネー
ト,イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロ
ヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソ
シアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチルヘキサメ
チレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート
が挙げられる。さらにポリイソシアネートとして、ブロ
ック型ポリイソシアネートを用いることもできる。
【0040】また活性水素含有化合物とポリイソシアネ
ートとの混合物でも使用でき、また重合物でもよい。こ
のようなウレタン系材料は、ウレタン系材料からなる溶
液、またはウレタン系材料からなる粒子を水等の溶媒中
に分散させたもの(エマルジョン状)でもよい。更に、
ウレタン系材料の他、架橋されたポリビニルアセタール
からなる材料からプライマー層を形成することも可能で
ある。ポリビニルアセタールからなるプライマー層は、
主成分であるポリビニルアセタールと、加水分解性オル
ガノシラン化合物又はその加水分解縮合物、アルミニウ
ム又はチタニウムのアルコキシド化合物あるいはアルミ
ニウム又はチタニウムのアルコキシドジケトネート化合
物及び硬化触媒を溶解したプライマー組成物を用いて、
プラスチックレンズ基材表面に塗布し、加熱処理するこ
とにより形成可能である。
【0041】プライマー組成物のプラスチックレンズ基
材上への塗布方法は、スピンコート法、ディッピング法
など公知の方法であれば特に制限はない。プライマー層
の硬化後の膜厚は、0.1〜5μmであり好ましくは
0.2〜3μmである。プライマー層の膜厚が0.1μ
mより薄いと耐衝撃性の改善が十分でなく、また5μm
より厚いと耐衝撃性の点では問題がないが、耐熱性と面
精度が低下する。
【0042】また、プライマー溶液には、前記したよう
なハードコート層に混入させたような微粒子状無機酸化
物を混入させることが可能である。微粒子の混入によ
り、屈折率の調整、硬度の向上などの効果を付与するこ
とができる。これら微粒子としては、市販されている水
又は有機溶媒に分散した微粒子をそのまま用いることが
できる。
【0043】微粒子状無機酸化物又はこれらの微粒子の
複合体の平均粒子径は1〜300nmであり、好ましく
は1〜50nmである。平均粒子径が300nmを越え
ると光の散乱によるレンズの曇りが生ずる。プライマー
組成物中の微粒子の添加量は固形分濃度として0.1〜
30重量%であるが、硬化したプライマー層の屈折率が
プラスチックレンズ基材の屈折率に一致するか、もしく
は極めて近くなるように無機酸化物微粒子の種類、添加
量が調整される。
【0044】また本防曇性薄膜はガラス、プラスチック
等幅広い基板上に形成することができ、鏡、窓、自動車
ガラス、眼鏡レンズ、サングラス、その他の光学部品
等、防曇性が要求される物品に優れた防曇性を付与する
ことが可能である。また本願発明の防曇性薄膜の水の静
止接触角は略0度であるが、略0度とは、実質的には0
度から約5度程度の接触角を意味するものである。
【0045】
【実施例1】本実施例では、図1に示すスパッタリング
装置を用い、眼鏡用プラスチックレンズ基板15上に酸
化珪素系物質からなる防曇性薄膜を形成する場合につい
て説明する。また、本実施例は酸化珪素系物質の単一物
質からなる薄膜を形成することから、成膜室は12のみ
使用する。成膜速度を速くしたい場合、図1の成膜室2
0にターゲット19を設置することも可能である。更に
また図1の22の領域を反応室として用いることも可能
である。
【0046】本実施例では、ジエチレングリコールビス
アリルカーボネート製(屈折率1.50)の眼鏡用プラ
スチックレンズ基板を使用した。金属ターゲット13、
19には多結晶Siを使用し、酸化珪素系物質からなる
防曇性薄膜をプラスチックレンズ基板上に直接に成膜す
ることにした。真空槽内の圧力は、3.2×10-3To
rrに設定し、スパッタリングガスとしては、アルゴン
ガスを用い、流量を390sccmに設定し、導入口1
1から成膜室12に導入した。導入したアルゴンガスを
グロー放電によりイオン化し、多結晶Siターゲット1
3に入射させた。スパッタリング電力は3.75kWに
設定した。
【0047】アルゴンイオンの入射によりスパッタリン
グされたSi原子は、高速で回転する基板ホルダー14
に保持された眼鏡用プラスチックレンズ基板15の表面
上に数原子層程度の厚さで沈着する。本実施例におい
て、成膜室12を1回通過したときのSi原子の沈着し
た層の膜厚は10Å以下であった。このときの基板の温
度は室温程度である。基板ホルダー14の回転速度は1
00rpmに設定した。
【0048】前記の工程により成膜室12において、数
原子程度の膜厚でSi原子が沈着した基板15は、高速
で回転する基板ホルダー14と共に反応室17に移動す
る。反応室17には反応ガスである酸素が導入口16か
ら導かれ、高周波放電により反応ガスがプラズマ状にな
る。このときのプラズマ電力は1.2kWとした。Si
原子が沈着された基板は、反応室17を通過するときに
酸素プラズマに暴露される。ここで酸素プラズマと基材
15表面上に沈着したSi原子が反応し、酸化珪素系薄
膜が成膜される。この酸化珪素系薄膜の膜厚は、先に基
板上に沈着したSi原子の成す膜と略同じ膜厚であっ
た。
【0049】前記のように酸化珪素系の薄膜が形成され
た基板15は、高速で回転する基板ホルダー14と共に
反応室17から出て、再び成膜室12に移動する。以上
のような成膜室から反応室への基板の移動により、数原
子程度の膜の形成を行うことができ、これを複数回繰り
返すことにより所望の膜厚の防曇性薄膜を形成すること
も可能である。
【0050】本実施例で得られた酸化珪素系防曇性薄膜
の水に対する静止接触角を測定した。測定には協和界面
科学株式会社製の接触角測定装置を用いた。その結果、
水の静止接触角は、測定限界値以下(つまり、非常に静
止接触角が小さい状態)であり、本測定装置では測定不
能であった。つまり本実施例で形成した防曇性薄膜の水
に対する静止接触角は、略0度であることが確認され
た。そして水滴が垂らされた基板上を観察したところ、
水は薄膜表面全体に拡がり、接触角は測定不能であるこ
とが確認された。
【0051】次に、眼鏡使用を想定し、実質的な防曇性
を直接確かめることにした。本発明者等は、酸化珪素系
物質からなる防曇性薄膜が形成されている本実施例の眼
鏡用プラスチックレンズを沸騰した湯の水面上、約15
cmの所で蒸気にさらし、そのときのレンズの透明性を
調べた。その結果、レンズ基板の防曇性薄膜の形成面に
達した蒸気は、防曇性薄膜の形成面全体にほぼ均一に拡
がっていた。そしてレンズ基板を通してみた像は、蒸気
にさらす前とほぼ変化しておらず、明瞭な像を見ること
が可能であった。
【0052】更に本発明者等は、防曇性薄膜を基板上に
成膜してから3ヶ月後に前記と同様の測定方法で静止接
触角を測定した。その結果、成膜後3ヶ月の測定結果
は、成膜直後の測定結果と全く同じ結果であった(つま
り、測定限界値以下であり、非常に静止接触角が小さ
い)。また、前記と同様の観察方法で本実施例で得られ
た防曇性薄膜の防曇性を確かめたところ、レンズ基板を
通して見た像は、蒸気にさらす前とほぼ変化しておら
ず、明瞭な像を見ることが可能であり、優れた防曇性が
持続していることが確かめられた。
【0053】
【実施例2】本実施例においても実施例1と同様に、図
1に示すスパッタリング装置を用いた。基板も実施例1
と同じものを用いた。本実施例では、低屈折率の層と高
屈折率の層とを積層した防曇性薄膜を形成する。そのた
め、金属ターゲット13には多結晶Ta、19には多結
晶Siを設置し、酸化珪素系薄膜と酸化タンタル薄膜か
らなる防曇性薄膜をプラスチックレンズ基板上に直接に
成膜することにした。
【0054】(1)酸化タンタル薄膜の形成 真空槽内の圧力は、3.0×10-3Torrに設定し、
スパッタリングガスとしては、アルゴンガスを用い、流
量を350sccmに設定し、導入口11から成膜室1
2に導入した。導入したアルゴンガスをグロー放電によ
りイオン化し、多結晶Taターゲット13に入射させ
た。スパッタリング電力は3.00kWに設定した。基
板ホルダー14の回転速度は、100rpmに設定し
た。
【0055】アルゴンイオンの入射によりスパッタリン
グされたTa原子は、高速で回転する基板ホルダー14
に保持された眼鏡用プラスチックレンズ基板15の表面
上に数原子層程度の厚さで沈着する。このときの基板の
温度は室温程度である。前記の工程により成膜室12に
おいて、数原子程度の膜厚でTa原子が沈着した基板1
5は、回転する基板ホルダー14と共に反応室17に移
動する。反応室17には反応ガスである酸素が導入口1
6から導かれ、反応ガスは高周波放電によりプラズマ状
になる。このときの酸素ガスの流量は、70sccm、
プラズマ電力は2.0kWとした。
【0056】Ta原子が沈着された基板は、反応室17
を通過するときに酸素プラズマに暴露される。ここで酸
素プラズマと基材15表面上に沈着したTa原子が反応
し、酸化タンタル薄膜が成膜される。この酸化タンタル
薄膜の膜厚は、先に基板上に沈着したTa原子の成す膜
と略同じ膜厚であった。本実施例においてもTaターゲ
ット13からの沈着工程と反応室17での酸化タンタル
薄膜成膜工程を繰り返すことにより所望の膜厚の酸化タ
ンタル薄膜を形成することができる。
【0057】(2)酸化珪素系薄膜の形成 前記の工程により酸化タンタル薄膜が形成された基板1
5は、高速で回転する基板ホルダー14と共に反応室1
7から出て、成膜室20に移動する。成膜室20には多
結晶Siターゲット19が設置されている。真空槽内の
圧力は、3.0×10-3Torrである。スパッタリン
グガスとしては、アルゴンガスを用い、流量を250s
ccmに設定し、導入口21から成膜室20に導入し
た。導入したアルゴンガスをグロー放電によりイオン化
し、多結晶Siターゲット19に入射させた。スパッタ
リング電力は3.00kWに設定した。基板ホルダー1
4の回転速度は、100rpmに設定した。
【0058】アルゴンイオンの入射によりスパッタリン
グされたSi原子は、高速で回転する基板ホルダー14
に保持された眼鏡用プラスチックレンズ基板15の表面
上に数原子層程度の厚さで沈着する。このときの基板の
温度は室温程度である。前記の工程により成膜室20に
おいて、数原子程度の膜厚でSi原子が沈着した基板1
5は、回転する基板ホルダー14と共に再び反応室17
に移動する。反応室17には反応ガスである酸素が導入
口16から導かれ、高周波放電により反応ガスはプラズ
マ状になる。このときの酸素ガスの流量は、80scc
m、プラズマ電力は2.0kWとした。
【0059】酸化タンタル薄膜上にSi原子が沈着され
た基板は、反応室17を通過するときに酸素プラズマに
暴露される。ここで酸素プラズマと酸化タンタル薄膜上
に沈着したSi原子とが反応し、酸化珪素系薄膜が成膜
された。この酸化珪素系薄膜の膜厚は、先に酸化タンタ
ル薄膜上に沈着したSi原子の成す膜と略同じ膜厚であ
った。ここでもSiターゲット19からの沈着工程と反
応室17での酸化珪素系物質からなる層の形成工程を繰
り返すことにより所望の膜厚の酸化珪素系物質からなる
層を形成することができる。
【0060】本実施例では、前記のように酸化タンタル
薄膜を成膜した後に酸化珪素系薄膜を成膜し、再び基板
15の酸化珪素系薄膜上に成膜室12でイオン化された
アルゴンガスのスパッタリングによりタンタル原子を沈
着させる。これを反応室17に移動させ酸化タンタル層
を形成する。更に上記の酸化珪素系薄膜の成膜時と同じ
条件で酸化タンタル層上に酸化珪素系薄膜を成膜した。
従って、本実施例での防曇性薄膜は、基板側から酸化タ
ンタル層、酸化珪素層、酸化タンタル層、酸化珪素層か
らなるものである。各々の層の膜厚は、基板側から0.
06λ、0.05λ、0.5λ、0.25λ(λ=52
0nm)とした。
【0061】本実施例で得られた最上層の防曇性薄膜で
ある酸化珪素系薄膜の水に対する静止接触角を測定し
た。測定には協和界面科学株式会社製の接触角測定装置
を用いた。その結果、水の静止接触角は、測定限界値以
下(つまり、非常に静止接触角が小さい状態)であり、
本測定装置では測定不能であった。つまり本実施例で形
成した防曇性薄膜の水に対する静止接触角は、略0度で
あることが確認された。そして水滴が垂らされた基板上
を観察したところ、水は薄膜表面全体に拡がり、接触角
は測定不能であることが確認された。
【0062】次に、眼鏡使用を想定し、実質的な防曇性
を直接確かめることにした。本発明者等は、酸化珪素か
らなる防曇性薄膜が形成されている本実施例の眼鏡用プ
ラスチックレンズを沸騰した湯の水面上、約15cmの
所で蒸気にさらし、そのときのレンズの透明性を調べ
た。その結果、レンズ基板の防曇性薄膜の形成面に達し
た蒸気は、防曇性薄膜の形成面全体にほぼ均一に拡がっ
ていた。そしてレンズ基板を通してみた像は、蒸気にさ
らす前とほぼ変化しておらず、明瞭な像を見ることが可
能であった。
【0063】更に本発明者等は、防曇性薄膜を基板上に
成膜してから3ヶ月後に前記と同様の測定方法で静止接
触角を測定した。その結果、成膜後3ヶ月の測定結果
は、成膜直後の測定結果と全く同じ結果であった(つま
り、測定限界値以下であり、非常に静止接触角が小さ
い)。また、前記と同様の観察方法で本実施例で得られ
た防曇性薄膜の防曇性を確かめたところ、レンズ基板を
通して見た像は、蒸気にさらす前とほぼ変化しておら
ず、明瞭な像を見ることが可能であり、優れた防曇性が
持続していることが確かめられた。
【0064】
【実施例3】実施例1、2と同様に図1に示すスパッタ
リング装置を用い、基板も同様なものを用いた。本実施
例では、実施例2のようにターゲットに用いる物質を2
種類用意し、各々交互に積層することにし、本実施例で
得られる積層物は、防曇性と反射防止性の両者を兼ね備
えた性質を有するようにした。従って本実施例では、こ
の積層物を防曇性反射防止膜と称する。
【0065】本実施例では、積層物中の最上層は酸化珪
素系薄膜で形成する。ターゲット13には、低屈折率用
金属ターゲットとして多結晶を使用し、ターゲット19
には、高屈折率用金属ターゲットとして多結晶Zrを使
用した。スパッタリングガスとして用いるアルゴンガス
は導入口11および21から成膜室12、20にそれぞ
れ導かれイオン化される。このときのアルゴンガスの流
量は、390sccmに設定した。
【0066】本実施例では、最初に基板15上に酸化ジ
ルコニウムからなる薄膜を形成させる。まずグロー放電
により、成膜室12内にイオン化されたアルゴンガスを
発生させる。このアルゴンイオンを多結晶Zrターゲッ
ト19に入射させる。アルゴンイオンの入射によりスパ
ッタリングされたZr原子は、基板ホルダー14に保持
された眼鏡用プラスチックレンズ(ジエチレングリコー
ルビスアリルカーボネート製)基板15上に沈着する。
本実施例では、沈着による形成された膜の膜厚を数原子
程度とした。沈着時の基板の温度は室温程度とした。ま
たZrターゲット19のスパッタリング電力は2.60
kWとした。またZr原子を数原子層だけ沈着させるた
めに基板ホルダ14を100rpmで回転させた。この
回転により、成膜室20から反応室17への基板15の
移動を行うことが可能となり、また回転速度が高速であ
るため、沈着する膜の膜厚を非常に薄くすることが可能
となる。
【0067】反応ガスである酸素は、導入口16から反
応室17に導かれた後、高周波放電によりプラズマ状に
なる。このときのプラズマ電力を1.2kWとし、酸素
ガスの流量をは120sccm、真空槽内の圧力は3.
2×10-3Torrとした。Zr原子が数原子程度の膜
厚で沈着した基板15は、100rpmで回転している
基板ホルダ14と共に回転し、成膜室20を出て反応室
17に入り、反応室17を高速で通過していく。このと
き、反応室17内に存在している酸素プラズマに暴露さ
れ、酸素プラズマとZr原子が反応することにより酸化
ジルコニウム薄膜が形成される。この酸化ジルコニウム
薄膜の膜厚は、酸化前の金属Zrの沈着した状態での膜
厚と略同じであった。
【0068】本実施例では、前記の酸化ジルコニウム薄
膜の形成を繰り返すことにより、眼鏡用プラスチックレ
ンズ基板上に所定の膜厚の酸化ジルコニウム薄膜を形成
することができる。言うまでもなく、酸化ジルコニウム
の形成回数を多くすれば、膜厚の厚い膜を得ることが可
能となる。次に、前記工程により基板15上に形成され
た酸化ジルコニウム薄膜上に酸化珪素系薄膜からなる薄
膜を形成する。まず成膜室12に導入されたアルゴンガ
スをグロー放電によりイオン化されたアルゴンガスにす
る。そして、アルゴンイオンを多結晶Siターゲット1
3に入射する。アルゴンイオンの入射によりスパッタリ
ングされたSi原子は、基板15上に形成されている酸
化ジルコニウム薄膜上に沈着する。
【0069】このときのSiターゲット13のスパッタ
リング電力は3.75kWである。また数原子層だけ沈
着させるために基板ホルダは100rpmで回転してい
る。反応ガスである酸素は、導入口16から反応室17
に導かれた後、高周波放電によりプラズマ状になる。こ
のときのプラズマ電力は1.2kWとし、酸素ガスの流
量は120sccmであり、真空槽内の圧力は3.2×
10-3Torrである。Si原子が沈着された基板15
が反応室17を通過するとき、基板15上に沈着された
Si原子が酸素プラズマに暴露されることにより、Si
原子と酸素プラズマが反応し酸化珪素系薄膜となる。
【0070】このような工程により基板15上に酸化ジ
ルコニウム薄膜と酸化珪素系薄膜を交互に積層させるこ
とができた。このようにして得られた防曇性反射防止膜
の膜構成及び膜厚は、レンズ基材側から酸化ジルコニウ
ム薄膜が約130Å、酸化珪素系薄膜が約180Å、酸
化ジルコニウム薄膜が約1280Å、酸化珪素系薄膜が
約870Åとした。
【0071】本実施例で得られた防曇性反射防止膜の水
への接触角を実施例1、2と同様な方法で測定した結
果、やはり測定限界値以下であり、測定不能であった。
そこで、同様に前記防曇性反射防止膜上に水を一滴滴下
して観察したところ、水は薄膜表面全体に拡がり、接触
角は測定不能(実質的に0度)であることが確認され
た。
【0072】次に、本実施例で得られた防曇性反射防止
膜が形成された眼鏡用プラスチックレンズ基板15を沸
騰した湯の水面上15cmの所で蒸気にさらし、そのと
きのレンズの透明性を調べた。その結果、蒸気はレンズ
表面全体にほぼ均一に拡がり、レンズを通してみた像は
蒸気にさらす前と変化しなかった。更に防曇性反射防止
膜を成膜してから3ヶ月後に前記と同様の方法で水の静
止接触角を調べた。その結果、成膜直後とまったく同じ
く測定不能であり、防曇性が低下していないことが確認
された。更に前記と同様の方法で本実施例で得られた防
曇性反射防止膜の防曇性を確かめた所、レンズを通して
みた像は蒸気にさらす前と変化せず、優れた防曇性が持
続していることが確かめられた。
【0073】尚、本実施例では酸化珪素系物質との表現
を用いたが、これは一酸化珪素、二酸化珪素を総称した
意味である。従って、酸化珪素系薄膜の成分は、一酸化
珪素または二酸化珪素が単独で存在する状態や両者の混
合物である。
【0074】
【比較例1】RFイオンプレーティング法により、青板
ガラス上に酸化珪素系薄膜を形成する。蒸発材料はSi
2粉末で、電子銃加熱により蒸発させた。真空槽内の
圧力は7×10-4Torrとし、反応ガスの酸素ガスの
分圧は全体の40%になるようにした。また、成膜中は
200Wの高周波電界を印加してアルゴンガスをプラズ
マ状にして蒸着した。形成された酸化珪素系薄膜の膜厚
は、約1000Åであった。
【0075】こうして得られた酸化珪素系薄膜の水の接
触角を実施例1と同様の装置で測定したところ、約30
度であった。更に、防曇性を直接確かめる為に、本比較
例で得られた酸化珪素系薄膜が形成された青板ガラスを
沸騰した湯の水面上約15cmの所で蒸気にさらし、ガ
ラスの透明性を調べた。その結果、本比較例のものは、
蒸気はガラス表面で拡がるものの、島状に存在するため
光が乱反射し、蒸気にさらす前に比べてガラスの透明感
は低下した。
【0076】
【発明の効果】本発明の防曇性薄膜を有する部材は、水
との静止接触角が略0度であり、非常に優れた防曇性を
示すのに加え、防曇性薄膜を成膜してから3ヶ月後の静
止接触角は、膜形成時の静止接触角と変化がないことか
ら、耐久性も優れた防曇性薄膜が得られる。従って、本
発明では、過酷な使用条件にも長時間にわたって防曇性
が持続する耐久性の優れた部材を得ることができる。
【0077】更に、本発明の製造方法によれば、従来、
使用していた反射防止膜形成用のスパッタリング用ター
ゲットを用いることができ、防曇性を有する新たな材料
を用意する必要がないので、コストが増加することもな
い。また、本発明の防曇性薄膜は反射防止膜性を兼ね備
えることができるので、部材の反射防止性能を損なわせ
ることなく防曇性を付与することが可能となり、より光
学性能のすぐれた防曇性能を有する部材が得られる。
【0078】更に反射防止膜の製造工程と同一の工程で
防曇性薄膜を形成できるので、従来のように反射防止膜
の形成後、別工程により防曇性薄膜の形成工程を行う必
要が無く、製造時間、製造コストが低減でき、製造効率
を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の防曇性薄膜の成膜装置を上から見
たときの概略を示す平面図である。
【図2】は、本発明の防曇性薄膜の成膜装置を上から見
たときの概略を示す縦断面図である。
【符号の説明】
11、21・・・アルゴンガス導入口 12、20・・・成膜室 13、19・・・金属ターゲット 14・・・基板ホルダ 15・・・基板(レンズ等) 16・・・反応ガス導入口 17・・・反応室 18・・・マスク

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機化合物からなり水の静止接触角が略0
    度である防曇性薄膜が基材上に形成されていることを特
    徴とする防曇性を備えた部材。
  2. 【請求項2】基材上に形成されたコーティング層と、無
    機化合物からなり水の静止接触角が略0度である防曇性
    薄膜が前記コーティング層上に形成されていることを特
    徴とする防曇性を備えた部材。
  3. 【請求項3】前記防曇性薄膜が反射防止効果を有する薄
    膜であることを特徴とする請求項1または2記載の部
    材。
  4. 【請求項4】前記コーティング層がミラーまたはフィル
    ターまたは反射防止膜であることを特徴とする請求項2
    記載の部材。
  5. 【請求項5】軸回転可能な基材ホルダーに基材を装着す
    る工程と、前記基材ホルダーを軸回転させる工程と、ス
    パッタリング法により無機物質を飛散させ該無機物質を
    前記基材上に付着させる付着工程と、前記基材上に付着
    された無機物質と反応ガスを反応させ前記無機物質を無
    機化合物にする反応工程を有し、前記付着工程及び前記
    反応工程とを1回以上行うことを特徴とする防曇性薄膜
    を有する部材の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項5記載の製造方法で製造された防曇
    性薄膜を有する部材。
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