JP2012200328A - ボール表皮材及び該ボール表皮材を用いたボール - Google Patents

ボール表皮材及び該ボール表皮材を用いたボール Download PDF

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Abstract

【課題】人工皮革からなる表皮材を用いた場合に生じる、縫製時に発生するシワの発生や繰り返し使用したときに縫製部分が引き裂かれることを抑制し、天然皮革により近い外観と耐久性を有する人工皮革からなるボール表皮材を提供することを目的とする。
【解決手段】人工皮革からなるボール表皮材であって、人工皮革は、三次元絡合不織布に高分子弾性体を含浸一体化させた基材と基材の表面に積層された樹脂表皮層とを備え、且つ、任意の1方向(AD)の20%強力とそれに直行する方向(OD)の20%強力との比(AD/OD)が0.8〜1.2の範囲であり、三次元絡合不織布は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含む、平均繊度が3デシテックス以下の極細長繊維束からなり、繊維密度が0.24g/cm3以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、野球やソフトボール等に用いられるボールの表皮材に関する。詳しくは、芯球を覆って縫製される、人工皮革からなるボールの表皮材に関する。
従来、硬式野球ボールはコルクやゴム等を主体とする芯球材を二片の牛皮で包み、縫糸で縫い合わせて作製されている。日本の公認野球規則によれば、試合用の硬式野球ボールは、原則として1球あたりの縫い目は108個であり、重量141.7〜148.8g、球の円周22.9〜23.5cmと規定されている。
試合用の硬式野球ボールとは別に、練習用の公式野球ボールも広く用いられている。練習用の硬式野球ボールには、安価且つ耐久性に優れていることが求められる。このような練習用の硬式野球ボールに用いられる表皮材としては、ボールが雨に濡れても水分を吸収しにくく、安価且つ耐久性に優れた人工皮革が広く用いられている。
例えば、下記特許文献1は、基体層、バインダー層およびフィルム層がこの順序に配置され、基体層は、繊維絡合体と多孔質高分子弾性体からなる含浸層を有し、フィルム層は、100%モジュラスが4〜8MPaの高分子弾性体および無機粒子を含有し、無機粒子の含有量が20〜50重量%であり、厚みが20〜150μmである野球ボール用表皮材を開示する。
また、従来の硬式野球ボールは表皮材が縫糸で縫い合わせて作製されていたが、縫糸が充分な耐久性を有しておらず、切れ易いという問題もあった。このような問題を解決するために、下記特許文献2は、天然皮革、人造皮革又は合成樹脂シートから形成された少なくとも2枚の表皮材を合成樹脂で接合した野球ボールを開示する。このような野球ボールは、表皮材を縫糸で縫い合わせる代わりに、接着剤である合成樹脂で接合することにより、縫い目を無くして、縫糸の劣化によるボールの劣化を抑制したものであると思われる。
また、下記特許文献3は、全芳香族ポリエステル繊維からなる硬式野球ボール用縫糸を開示する。このような縫糸を用いることにより、表皮材の縫合部の磨耗等が抑制されてボールの耐久性が向上すると思われる。
特開2011−24788号公報 特開2001―170214号公報 特開平1−135373号公報
硬式野球ボールは、通常、芯球材を二片の表皮材で包んで、1球あたりの縫い目が108個設けられるように縫糸で縫合される。このとき表皮材は、ある程度の張力が掛かった状態で縫合される。張力が掛かった状態で人工皮革からなる表皮材を縫合してボールの表皮層を形成する場合、牛皮等の天然皮革からなる表皮材を縫合した場合には生じない問題が生じることがあった。具体的には、図4に示す従来の硬式野球ボール20のように、縫い糸11の縫い穴12から球面に沿って延びるような大きなシワS1が発生したり、隣接する縫い穴同士の間の領域に小さいシワS2が発生したり、縫合糸の張力により繰り返し使用したときに表皮材の縫合部が裂けて割れ目cが生じたりするという問題があった。
本発明は、人工皮革からなる表皮材を用いた場合に生じる上述のような問題の発生を抑制し、天然皮革により近い外観と耐久性を有する人工皮革からなるボール表皮材を提供することを目的とする。
本発明に係るボール表皮材は、人工皮革からなるボール表皮材であって、人工皮革は、三次元絡合不織布に高分子弾性体を含浸一体化させた基材と基材の表面に積層された樹脂表皮層とを備え、且つ、任意の1方向(AD)の20%強力とそれに直行する方向(OD)の20%強力との比(AD/OD)が0.8〜1.2の範囲であり、三次元絡合不織布は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含む、平均繊度が3デシテックス以下の極細長繊維束からなり、繊維密度が0.24g/cm3以下である。このようなボール表皮材は、機械的特性の異方性が小さいために、ボールの表皮層として用いて縫製するときに縫い目から伸びる大きなシワが発生しにくく、そのために型崩れしにくく、また、ボールを繰り返し使用しても縫い目に裂け目が生じにくい耐久性の優れたボールの表皮材になる。
また、樹脂表皮層は、基材の表面に形成された多孔性ポリウレタン層と多孔性ポリウレタン層の表面に形成された無孔性ポリウレタン層とを含むことが好ましい。このような表皮層を形成することにより、縫い目の周囲に均質に発生する小さいシワの発生が抑制される。
また、極細長繊維がポリアミド繊維であり、高分子弾性体がポリウレタン樹脂であることが耐久性により優れる点から好ましい。
また、本発明に係るボールは、芯球と芯球の外周を覆う表皮層とを備えたボールであり、表皮層が、複数枚の上記ボール表皮材を糸で縫合せた縫合体である。
本発明に係るボール表皮材で芯球の外周を覆い、縫合することにより表皮層を形成して得られたボールは、型崩れやシワの発生が抑制されるために、牛皮等の天然皮革を表皮材として用いたボールに近い外観と耐久性を有する。特に、従来の人工皮革からなるボール表皮材を用いたボールに比べて、縫合部分の外観に優れ、また繰り返し使用しても縫合部分に引き裂けが生じにくいボールが得られる。
本実施形態に係るボール表皮材である人工皮革10の断面模式図である。 人工皮革10の製造工程において、長繊維ウェブを所定の折り返し角度αで折り畳んでいる様子を説明する説明図である。 人工皮革10の製造工程において、加熱処理しながらTD方向の幅を広げる拡幅処理を行う場合の形態変化を説明するための説明図である。 従来の人工皮革からなるボール表皮材を用いたボールの問題点を説明するためのボール表面の模式図である。
本発明に係るボール表皮材として用いられる人工皮革の一実施形態である、人工皮革10について説明する。図1は、人工皮革10の断面模式図である。図1中、1は極細長繊維束からなる三次元絡合不織布、2は高分子弾性体、3は基材、4は樹脂表皮層である。高分子弾性体2は三次元絡合不織布1の内部に含浸一体化されて、基材3を形成している。また、樹脂表皮層4は、基材3の表面に形成された多孔性樹脂層4aと、多孔性樹脂層4aの表面に形成された樹脂接着層4bと、樹脂接着層4bの表面に形成された無孔性樹脂層4cとからなる。
三次元絡合不織布1は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含む平均繊度3デシテックス以下の極細長繊維束を三次元的に絡合させて得られた、繊維密度が0.24g/cm3以下の不織布である。
また、人工皮革10は、任意の1方向(AD:Arbitrarily Direction)の20%強力と、それに直行する方向(OD:Orthogonal Direction)の20%強力との比(AD/OD)が0.8〜1.2の範囲である。人工皮革10の機械的特性の異方性は、後述するように、例えば、三次元絡合不織布1中の極細長繊維の配向性を制御することにより制御できる。三次元絡合不織布1を形成する極細長繊維束は、人工皮革10の面方向に配向している。この場合、後述するように、三次元絡合不織布1の極細長繊維束の面方向における配向を厚み方向に沿って変化させたり、製造工程において不織布に拡幅処理を施したりすることにより、三次元絡合不織布1全体として、MD方向(Machine Direction)とTD方向(Transverse Direction)の機械的特性の異方性を緩和することができる。
三次元絡合不織布1は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含む平均繊度が3デシテックス以下の極細長繊維束からなる。ここで極細長繊維とは、紡糸後に意図的にカットされた短繊維ではない、連続的な長繊維に由来する極細繊維であることを意味する。さらに具体的には、繊維長が3〜80mm程度になるように意図的に切断された短繊維に由来するものではない長繊維から得られた極細繊維であることを意味する。極細繊維化する前の長繊維の繊維長は100mm以上であることが好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、製造工程において不可避的に切断されない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。なお、後述する絡合時のニードルパンチや、表面のバフィングにより、製造工程において不可避的に長繊維の一部が切断されて短繊維になっていてもよい。
極細長繊維の平均単繊維繊度は0.5デシテックス以下であり、0.0001〜0.5デシテックス、さらには0.001〜0.2デシテックスであることが好ましい。0.5デシテックスを超える場合には、人工皮革の表面平滑性が低下して天然皮革により近い外観や風合いが得られなくなる。また、0.0001デシテックス未満の場合には量産性が低下する傾向がある。
極細長繊維束は、極細長繊維を5〜70本含む平均繊度が3デシテックス以下の繊維束である。極細長繊維束を形成する極細長繊維の本数が5本未満である場合には得られる人工皮革が伸びやすくなるために形態安定性が低下し、70本を超える場合には量産性や風合いが低下する。極細長繊維束を形成する極細長繊維の本数は、10〜50本であることがさらに好ましい。また、極細長繊維束の平均繊度が3デシテックスを超える場合にも、得られる人工皮革が伸びやすくなる。極細長繊維束の平均繊度は0.5〜2デシテックスであることがさらに好ましい。
極細長繊維束は、例えば、海島型複合繊維(以下、単に海島型繊維とも呼ぶ)のような極細長繊維発生型繊維の海成分のみを溶解または分解除去することによって得られる。以下では、極細長繊維発生型繊維として海島型繊維を用いた場合について代表的に詳しく説明する。
海島型繊維は、例えば、相溶性を有しない2種のポリマーを混合して溶融し、紡糸口金から吐出する混合紡糸方法や、相溶性を有しない2種のポリマーを別々に溶融し、各溶融物を紡糸口金で合流させ吐出する複合紡糸方法により紡糸される。そして、得られた海島型繊維の海成分を溶解または分解除去することによって極細長繊維束が形成される。海島型繊維の断面における島数は10〜100個、さらには15〜50個であるのが好ましく、また、海成分と島成分との質量比は10:90〜70:30であるのが好ましい。
極細長繊維は、海島型繊維の島成分を形成する樹脂からなる。島成分を形成する樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,ポリアミド612等のポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;アクリル系ポリマー;ポリオレフィン等が挙げられる。これらの中では、ポリアミド6及びポリエチレンテレフタレートが耐久性に優れている点から特に好ましい。海成分を形成する樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、共重合ポリエステル、熱可塑性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
三次元絡合不織布の製造においては、海島型繊維の長繊維からなる長繊維ウェブを形成する。このような長繊維ウェブは、いわゆるスパンボンド法により形成されることが好ましい。具体的には、長繊維ウェブは、例えば、紡糸口金から吐出された海島型繊維を形成するための溶融ポリマーをエアージェットノズルのような吸引装置により2000〜5000m/分の速度で牽引細化した後、開繊させながら移動式の捕集面上に堆積させて長繊維ウェブを形成させることにより形成される。長繊維ウェブの目付けとしては、例えば20〜50g/m2程度であることが好ましい。
そして、複数層の長繊維ウェブを積層した積重ウェブを得た後、積重ウェブを三次元絡合させることにより海島型繊維からなる絡合不織布が得られる。
長繊維ウェブを積層して積重ウェブを形成する方法や、積重ウェブを三次元絡合させる方法は、繊維密度0.24g/cm3以下の極細長繊維束からなる三次元絡合不織布が得られ、また、得られる人工皮革のAD方向の20%強力比とOD方向の20%強力比との比(AD/OD)が0.8〜1.2の範囲になるように、長繊維ウェブの配向性を制御できる方法であればとくに限定なく用いられうる。具体的には、例えば、次のような方法が挙げられる。
図2に示すように、スパンボンド法によって形成された長繊維ウェブ5を製造ラインの進行方向に平行なMD方向に沿って、所定の折り返し角度α及び所定の間隔ごとに、所定の積層数になるように折り畳む。折り返し角度αとは、図2に示すように長繊維ウェブ5のMD方向に平行な軸6と長繊維ウェブの折目に平行な軸7とがなす鋭角の角度である。このような工程により、長繊維ウェブが複数層に重なるように折り畳まれて積層された積重ウェブが得られる。
積重ウェブの折り返し角度αは配向特性を調整するために適宜調整される。具体的には、折り返し角度αは90度未満であることが好ましく、75〜89度、さらには78〜88度、とくには80〜87度の範囲であることが好ましい。また、折り返し間隔及び積層数は所望の目付け及び密度を調整するために適宜選択される。折り返し間隔はとくに限定されないが、30〜250mm程度、さらには60〜200mm程度であり、また、積層数もとくに限定されないが10〜40層、さらには12〜32層程度であることが好ましい。
このようにして形成された積重ウェブをニードルパンチ処理や高圧水流などにより三次元絡合処理することにより海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布が得られる。ニードルパンチ処理の場合、例えば、両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件で行うことが好ましい。パンチング密度はとくに限定されないが、300〜5000パンチ/cm2の範囲、さらには500〜3500パンチ/cm2の範囲であることが好ましい。
海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布の目付けは特に限定されないが、300〜2000g/m2であることが好ましい。
海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布は、ニードルパンチ処理の後、機械的特性の異方性を緩和するために、TD方向の幅を広げる拡幅処理を施されることが好ましい。TD方向の幅を広げる拡幅処理の拡幅率としては、拡幅処理前のTD方向の幅に対して、6〜10%程度であることが好ましい。また、TD方向の幅を広げる拡幅処理を施した後は、加熱ロール等によるプレス処理することにより、拡幅された幅を固定することが好ましい。海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布の拡幅された幅を固定することにより、20%強力のAD方向/OD方向の差が少なくなる。
次に、海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布に高分子弾性体を含浸させる。高分子弾性体を海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布に含浸させる方法としては、例えば、高分子弾性体の溶液または分散液を海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布に含浸させた後、高分子弾性体を凝固させる方法が挙げられる。高分子弾性体の含浸は、海島型繊維の極細繊維化処理の前に行っても、極細繊維化処理の後に行っても、極細繊維化処理の前及び後のそれぞれで行ってもよい。
高分子弾性体の種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの共重合体、シリコンゴム等が挙げられる。これらの中では、良好な風合が得られる点からポリウレタンがとくに好ましい。ポリウレタンのソフトセグメントはポリエステル単位、ポリエーテル単位、ポリカーボネート単位の中から1種類または複数種類選択される。また、高分子弾性体は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、顔料、染料、凝固調節剤、安定剤などを含有してもよい。
高分子弾性体の溶液または分散液を調整するための溶媒または分散媒は特に限定されない。具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、メチルエチケトン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒であっても、水系溶媒であってもよい。これらの中ではポリウレタンの良溶媒で、湿式凝固性に優れている点から、DMFがとくに好ましい。このような高分子弾性体の溶液または分散液を絡合不織布に含浸させて、液温25〜70℃の水浴中あるいは高分子弾性体の良溶剤と水との混合液浴中に浸漬することにより高分子弾性体を湿式凝固させることができる。このような高分子弾性体は多孔質であることが好ましい。
高分子弾性体の含有割合は、形成される極細長繊維束からなる不織布と高分子弾性体との質量比が、40/60〜70/30、さらには、50/50〜60/40の範囲であることが好ましい。高分子弾性体の割合が高すぎる場合には、得られる人工皮革がゴムライクな風合いになる傾向があり、高分子弾性体の割合が低すぎる場合には、得られる人工皮革の形態安定性が低下する傾向がある。
海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布に極細繊維化処理を施すことにより、極細長繊維束からなる不織布が形成される。極細繊維化処理は高分子弾性体を付与する前でも、付与した後でも、何れの段階で行ってもよい。海成分を選択的に除去する溶剤または分解剤に、海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布を所定の時間浸漬することにより、海島型繊維の長繊維が極細長繊維からなる極細長繊維束に変換される。例えば、島成分がポリアミドまたはポリエチレンテレフタレート、海成分がポリエチレンである場合には、溶剤としてトルエン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどが好ましく用いられうる。また、島成分がポリアミドまたはポリエチレンテレフタレートであり、海成分が易アルカリ分解性の変性ポリエステルである場合には、分解剤として苛性ソーダ水溶液などが好ましく用いられうる。このような処理により、海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布から海成分が除去されて、三次元絡合不織布である極細長繊維束からなる不織布(以下単に、極細長繊維不織布とも呼ぶ)が得られる。
極細長繊維不織布には、必要に応じて繊維間の摩擦係数を制御する目的でシリコン系油剤等の油剤を付与してもよい。付与方法としては、油剤の水溶液または水分散液をディップ・ニップして強制的に含浸させる方法や、スプレー等で噴霧し浸透させる方法、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター等で刷り込んで浸透させる方法、これらの方法を組み合わせた方法が挙げられる。油剤の付与量としては、得られる人工皮革に対して0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%であることが好ましい。
高分子弾性体を含浸された極細長繊維不織布は、機械的特性の異方性を緩和するために加熱処理されながら、TD方向の幅を広げる拡幅処理されることが好ましい。このような処理により異方性がさらに緩和される。
加熱処理しながらTD方向の幅を広げる拡幅処理を行う場合、MD方向に進行する加熱処理のライン速度を加熱処理直前のライン速度より遅くする、いわゆるオーバーフィードにより、MD方向の自然な収縮を阻害せずにTD方向に拡幅させることが好ましい。このようなオーバーフィードの条件は特に限定されないが、例えば、MD方向のオーバーフィード率は0.5〜5%が好ましく、TD方向のオーバーフィード率(拡幅率)は1〜10%程度であることが好ましい。加熱処理手段はとくに限定されず、スチーム乾燥機や赤外線乾燥機を用いることができる。加熱条件としては、例えば、雰囲気温度80〜130℃、処理時間5〜20分間のような条件が選ばれる。
また、加熱処理しながらTD方向の幅を広げる拡幅処理を行う場合、次のように形態が変化するように処理されることがとくに好ましい。図3に示すように、例えば、絡合処理直前の積重ウェブ表面に仮想の正方形を描いた場合、仮想の正方形の対角線がなす角は45度である。そして、積重ウェブ表面に描かれた仮想の正方形は、加熱処理しながらTD方向の幅を広げる拡幅処理を行った後には、正方形が伸縮して長方形に変形している。これは、生産ライン方向であるMD方向に、より大きな張力が掛かるため、MD方向に伸び易く、TD方向に縮み易いためである。そして、加熱処理しながらTD方向の幅を広げる拡幅処理を行った後に、長方形の対角線と辺がなす角Yは45度よりも大きいY度になっているとする。本実施形態においては、長方形の対角線と辺とがなす角であるY度と45度との差Z(度)=Y−45が18度以下、さらには15度以下、とくには0〜13度の範囲になるように拡幅処理を行う処理条件を設定することが好ましい。
なお、極細長繊維不織布に変換可能な海島型繊維の長繊維の絡合不織布は、極細繊維化段階において、MD方向の張力により縦方向に著しく伸びる傾向があるために、通常、Zが20度以上、目付が小さな場合には30度以上になるまで変形してしまう。本実施形態においては、上述したように、例えば、長繊維ウェブを特定の折り返し角度を維持して返し折り畳んで積重ウェブを形成した後、絡合処理したり、海島型繊維からなる絡合不織布に拡幅処理を施したり、オーバーフィード率を制御することにより、図3に示すようにZを18度以下に抑えている。
このようにして、極細長繊維不織布に高分子弾性体を含浸一体化させた基材が得られる。このような基材の表面に樹脂表皮層を積層形成することにより、本実施形態の人工皮革からなるボール表皮材が得られる。
基材の表面に形成される樹脂表皮層は、人工皮革の表面に耐久性を付与するとともに天然皮革に似た外観を付与することにも寄与する高分子弾性体からなる層である。高分子弾性体としては、上述した極細長繊維不織布に含浸されるものと同様のものを用いることができる。
樹脂表皮層は、例えば、離型紙上に乾式造面された高分子弾性体シートを基材表面に接着剤で接着した後、離型紙を剥離する乾式造面法や、基材表面に高分子弾性体を含む塗布液を塗布した後、水またはDMFと水との混合液を貯留した凝固槽に浸漬して基材表面で高分子弾性体を凝固させる湿式造面法等により形成される。なお、乾式造面法によれば無孔性の膜が形成され、湿式造面法によれば多孔性の膜が形成される。また、乾式造面法によっても、発泡剤を用いて多孔性の膜を形成することもできる。
樹脂表皮層は、好ましくはポリウレタンを樹脂成分とすることが好ましい。また、樹脂表皮層に要求される耐磨耗性を充分に確保する点から、ポリエーテル系ポリウレタンまたはポリカーボネート系ポリウレタンを樹脂成分とすることがとくに好ましい。なお、樹脂表皮層を形成するポリウレタンの100%伸張時のモジュラスとしては、10〜100kg/cm2、さらには30〜50kg/cm2の範囲であることが好ましい。モジュラスがこのような範囲である場合にはポリウレタンの機械的特性と柔軟性とのバランスに優れるために、ソフトな風合いを維持しながら、縫製時にできる大きなシワの発生が起こりにくい人工皮革が得られる。
樹脂表皮層の厚みとしては10〜50μm、さらには20〜40μmの範囲であることが好ましい。樹脂表皮層の厚みがこのような範囲である場合には、ソフトな風合いの人工皮革が得られる。
また、ボール表皮材に要求されるソフトな触感を得、ボールの外表面に要求される耐久性及び縫い目にできる小さなシワの発生を抑制するためには、外表面側に無孔性の高分子弾性体層を形成し、基材表面に近い側に多孔性の高分子弾性体層を形成することが好ましい。この場合においては、外表面側の無孔性の高分子弾性体層の厚みとしては30〜100μm程度であり、基材表面に近い側に多孔性の高分子弾性体層の厚みとしては150〜250μm程度であることが好ましい。
樹脂表皮層は、必要に応じて、顔料、充填剤、耐光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤等の添加剤を含有してもよい。
このようにして本実施形態の人工皮革が得られる。なお、得られた人工皮革は、樹脂表皮層の形成後、または樹脂表皮層の形成前に、必要に応じて公知の揉み処理を行ってもよい。揉み処理により、柔軟性及び天然皮革に似た揉みシワを付与することができる。揉み処理は、高圧液体流染色機、ウインス、タンブラー、および機械的な揉み機等公知の手段を用いることができる。
このようにして得られた本実施形態の人工皮革は、任意の1方向(AD)とそれに直行する方向(OD)の20%強力比(AD/OD)が0.8〜1.2の範囲であり、含まれる三次元絡合不織布は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含む、平均繊度が3デシテックス以下の極細長繊維束からなり、繊維密度が0.24g/cm3以下である。
三次元絡合不織布の繊維密度は0.24g/cm3以下であり、好ましくは0.15〜0.24g/cm3の範囲である。三次元絡合不織布の繊維密度が高すぎる場合には、重量が重くなりすぎてソフト感が失われるとともに、日本の公認野球規則の規格から外れやすくなり、また材料コストも高くなる。
また、人工皮革の任意の1方向(AD)とそれに直行する方向(OD)の20%強力比(AD/OD)が0.8〜1.2の範囲であり、好ましくは0.9〜1.1の範囲である。20%強力比(AD/OD)が0.8未満の場合及び1.2を超える場合には縫製時に大シワが発生しやすくなる。
このようにして得られた人工皮革の全厚としては、0.8〜2.0mm、さらには1.3〜1.8mmであることが好ましい。ボール表皮材の全厚が薄すぎる場合には縫製時に大シワになりやすく、厚すぎる場合には重量が重くなり規格から外れ易くなる。
このようにして得られた人工皮革は、野球やソフトボールの硬式野球ボールの表皮材として好ましく用いられる。このような人工皮革からなるボール表皮材は、硬式野球ボール等の公知の製造方法を用いてボールを作成する際の表皮層の形成に用いられる。具体的には、例えば、コルク材からなるコアの外周にゴム層及び毛糸層が形成された芯球の周りを、所定形状に裁断して得られた2枚のボール表皮材で包み、ボール表皮材の継ぎ目をポリエステル縫糸で108個の縫い目ができるように縫い合わせて作製することができる。
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。各種特性は以下の方法により測定した。
(1)極細長繊維の平均単繊維繊度、及び極細長繊維束中の極細長繊維の本数
人工皮革の厚さ方向と平行な任意の断面を走査型電子顕微鏡(100〜300倍程度)で観察した。観察視野から断面に対してほぼ垂直に配向した20個の極細長繊維束を、万遍なく、かつ、無作為に選び出した。次いで選び出した個々の極細長繊維束の断面を1000〜3000倍程度の倍率に拡大して、極細長繊維の断面積の平均値を求めた。該平均断面積と極細長繊維を構成するポリマーの比重から極細長繊維の平均単繊維繊度を求めた。また、極細長繊維束中の極細長繊維の本数を数えた。
(2)極細長繊維束の平均繊度
上記の方法により測定した極細長繊維の断面積および極細長繊維の本数から20個の極細長繊維束の各断面積を計算により求めた。最大の断面積および最小の断面積を削除し、残った18個の断面積を算術平均した。得られた平均断面積と極細長繊維を構成するポリマーの比重から極細長繊維束の平均繊度を求めた。
(3)繊維密度
造面前の基材から、極細長繊維束を形成するポリアミド6をメタノールと塩化カルシウムの飽和溶液を用いて、常温で浸漬し、絞りを繰り返し、抽出することにより基材中の高分子弾性体の重量を求めた。そして基材の重量から高分子弾性体の重量を引いた値から極細長繊維束を形成するポリアミド6の重量を求めた。そして、ポリアミド6の重量を基材の見掛け体積で除することにより繊維密度(g/cm3)を求めた。
(4)目付および厚さ
目付および厚さをそれぞれ、JIS L1096:1999 8.5、JIS L1096:1999 8.10.1に規定された方法に準じて求めた。
(5)20%強力、破断強力および破断時伸長率
JIS L1096の8.12.1「引張強度試験」において、試験片2.5cm×16cmを記載の測定方法に準じて求めた。応力−歪み曲線から20%伸びたときの応力及び破断したときの応力を読み取り、20%強力及び破断強力を求めた。また、破断時の伸びから破断時伸長率を求めた。
(6)引裂強力
JIS L1096の8.15.1 A−1法(シングルタング)「引裂強力試験」において、試験片4cm×10cmを記載の測定方法に準じて、タテ方向・ヨコ方向に引裂く時の最大荷重を測定により、ヨコ糸引裂強さ及びタテ糸引裂強さを求めた。
(7)縫製耐久性
大学の野球部にて1日あたり約6時間程度使用してもらい、2ヵ月後の縫い目付近の表皮材の状況で判断した。
A:縫い目に裂け目が生じていない。
B:縫い目に裂け目が生じている。
(8)縫製時に縫い穴から伸びる大きなシワの有無
A:縫製時に発生する、縫い穴から球面に沿って伸びる、シワの長さが2mm以上、シワの深さが約20μm以上の大きなシワが現れなかった。
B:縫製時に発生する、縫い穴から球面に沿って伸びる、シワの長さが2mm以上、シワの深さが約20μm以上の大きなシワが現れた。
(9)縫製時に縫い穴同士の間に生じる小シワの有無
A:縫い目同士の間に、微細なシワが生じなかった。
B:縫い目同士の間に、微細なシワが生じた。
[実施例1]
島成分であるポリアミド6と海成分であるポリエチレンとをそれぞれ1軸押し出し機中で溶融し、複合紡糸ノズルから質量比50:50、25島の海島型繊維を溶融紡糸した。そして、複合紡糸ノズルから吐出された海島型繊維を3500m/分の空気流で延伸しながら捕集ネットに吹き付けることにより長繊維ウェブを形成させた。得られた長繊維ウェブの目付けは30g/m2であり、海島型繊維の単繊維繊度は2デシテックスであった。
得られた長繊維ウェブを、ウェブの長さ方向に対して、折り返し角度84°にて一定間隔で連続的に折り畳みを繰り返すことにより長繊維ウェブが10層積み重ねられた、幅176cm、目付け593g/m2の積重ウェブを得た。そして、得られた積重ウェブに、1バーブのフェルト針を用いて1400パンチ/cm2のニードルパンチ処理した後、幅方向に張力を付与して拡幅処理することにより、10%の巾出しを行い、さらに、加熱ロール間を通過させて熱プレス処理することにより、目付け599g/m2、厚み1.92mmの海島型繊維の長繊維からなる絡合不織布を得た。
次に、海島型繊維からなる絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%DMF溶液を含浸させ、水中で多孔質状に湿式凝固させた。そして、海島型繊維の海成分であるポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去することにより、海島型繊維を極細長繊維に変換した。このようにして、目付け526g/m2、厚み1.25mmである、高分子弾性体を含む極細長繊維不織布が得られた。
そして、極細長繊維同士の滑り性を向上させるために、高分子弾性体を含む極細長繊維不織布に対して油分が1.8%になるようにシリコン系油剤の水分散液を付与した。なお、図3に示す、絡合処理される前の積重ウェブ表面に描かれた仮想の正方形の対角線のなす角45度と、油剤付与後の高分子弾性体を含む極細長繊維不織布の仮想の長方形の対角線と辺とがなす角Y度との差Zは11度であった。
次に、形態調整と乾燥を兼ねて、雰囲気温度120℃であり、MD方向に2%収縮し、TD方向に3%拡幅するような条件で高分子弾性体を含む極細長繊維不織布の加熱処理を行った。加熱処理された後の高分子弾性体を含む極細長繊維不織布のZは10°であった。このようにして、人工皮革基材が得られた。
一方、得られた人工皮革基材の一表面に多孔性ポリウレタン層を湿式造面した。湿式造面は、エステル系ポリウレタン100部(MA1032:トーヨーポリマー(株)製)、DMF60部、ネオコールP(ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩:第一工業製薬(株)製)2.4部、イオネットS−80(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル:三洋化成工業(株)製)1.2部、及び白色顔料20部を含有する湿式造面用塗布液を人工皮革基材の一表面に塗布した後、水中で多孔性ポリウレタン層を多孔質状に湿式凝固させた。
次に、得られた人工皮革基材の一表面に、次のようにして樹脂表皮層を形成した。離型紙の表面に、表皮になる無孔性ポリウレタン層を乾式造面した。具体的には、ポリカーボネート系ポリウレタン(NY−373:DIC(株)製)100部、白色顔料20部、DMF20部、イソプロパノール10部、酢酸エチル10部、バーノックDN950(DIC(株)製)3部を含む表皮用塗布液を離型紙の表面にウェット塗布量85g/m2で塗布した後、乾燥することにより第一の無孔性ポリウレタン層を形成した。
次に、第一の無孔性ポリウレタン層の表面に、無孔性ポリウレタン層の中間層をさらに乾式造面した。具体的には、ポリエーテル系ポリウレタン100部(ME8116:トーヨーポリマー(株)製)100部、白色顔料30部、DMF30部、メチルエチルケトン30部、NE架橋剤(大日精化(株)製)3部を含む中間層用塗布液を第一の無孔性ポリウレタン層の表面にウェット塗布量 140g/m2で塗布した後、乾燥することにより第二の無孔性ポリウレタン層を形成した。
そして、多孔性ポリウレタン層の表面に接着層用塗布液をウェット塗布量 120g/m2で塗布した後、第二の無孔性ポリウレタン層の表面を接着した。なお、接着層用塗布液は、ポリエーテル系ポリウレタン(UD−8310:大日精化工業(株)製)100部、架橋剤タケネートD110N(三井化学(株)製)10部、架橋促進剤(QS:武田薬品工業(株)製)2部、DMF15部、及び酢酸エチル15部を含有する塗布液である。造面処理後に、接着層の架橋反応を促進するために、雰囲気温度60℃の乾燥機内で48時間のキュアリング処理を行った。そして、離型紙を剥がすことにより、人工皮革基材の表面に、第一の無孔性ポリウレタン層、第二の無孔性ポリウレタン層、接着層、及び多孔性ポリウレタン層からなる樹脂表皮層が形成された。そして、機械的な揉み加工処理を行うことにより、厚さ85μmの樹脂表皮層を有する人工皮革Aを得た。
そして、人工皮革Aを用いて硬式野球ボールを作成した。具体的には、コルク材からなるコアの外周にゴム層及び毛糸層が形成された芯球の周りを、人工皮革Aを所定形状に裁断して得られた2枚のボール表皮材で包み、ボール表皮材の継ぎ目をポリエステル縫糸で縫い目間隔が約2mmで108個の縫い目ができるように縫い合わせて作製した。そして、上述した評価方法により、ボールの特性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2012200328
[実施例2]
拡幅処理前のTD方向の幅に対して8%拡幅する以外は実施例1と同様にして、目付け599g/m2、厚み1.92mmの海島型繊維からなる絡合不織布を得た。以下実施例1と同様にして、人工皮革基材を得、実施例1と同様にして人工皮革基材の一表面に樹脂表皮層を形成することにより人工皮革Bを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
拡幅処理前のTD方向の幅に対して6%拡幅する以外は実施例1と同様にして、目付け599g/m2、厚み1.92mmの海島型繊維からなる絡合不織布を得た。以下実施例1と同様にして、人工皮革基材を得、実施例1と同様にして人工皮革基材の一表面に樹脂表皮層を形成することにより人工皮革Cを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、人工皮革基材の一表面に多孔性ポリウレタン層を湿式造面する代わりに、無孔性ポリウレタン層を形成した以外は実施例1と同様にして人工皮革Dを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同様にして、積重ウェブを形成しニードルパンチ処理を行った後、10%の巾出しを行わずに、加熱ロール間を通過させて熱プレス処理することにより、目付け421g/m2、厚み1.60mmの海島型繊維からなる絡合不織布を得た。以下実施例1と同様にして、人工皮革基材を得、実施例1と同様にして人工皮革基材の一表面に樹脂表皮層を形成することにより人工皮革Eを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
拡幅処理前のTD方向の幅を12%広げる拡幅処理以外は実施例1と同様にして、目付け599g/m2、厚み1.92mmの海島型繊維からなる絡合不織布を得た。以下実施例1と同様にして、人工皮革基材を得、実施例1と同様にして人工皮革基材の一表面に樹脂表皮層を形成することにより人工皮革Fを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例3]
長繊維ウェブの目付けを28g/m2に調整した以外は実施例1と同様にして長繊維ウェブを形成した。そして、幅186cm、目付け563g/m2になるように調整した以外は、実施例1と同様にして積重ウェブを得た。そして、実施例1と同様にニードルパンチ処理を行った後、10%の巾出しを行わずに、加熱ロール間を通過させて熱プレス処理することにより、目付け578g/m2、厚み2.01mmの海島型繊維からなる絡合不織布を得た。次に、実施例1と同様にして、絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%DMF溶液を含浸させ、水中で多孔質状に湿式凝固させた。そして、海成分であるポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去することにより、海島型繊維を極細長繊維に変換した。このようにして、目付け585g/m2、厚み1.54mmである、高分子弾性体を含む極細長繊維不織布が得られた。そして、実施例1と同様にして、シリコン系油剤の水分散液を付与した。なお、絡合処理される前の積重ウェブの仮想の正方形の対角線の角度45°に対して、油剤付与後の高分子弾性体を含む極細長繊維不織布の仮想の長方形の対角線と辺とがなす角Y度は56°であった。次に、実施例1と同様の条件で高分子弾性体を含む極細長繊維不織布の加熱処理を行った。加熱処理された後の高分子弾性体を含む極細長繊維不織布の仮想の長方形の対角線と辺とがなす角Y度は55°であった。このようにして、人工皮革基材が得られた。そして、実施例1と同様にして人工皮革基材の一表面に樹脂表皮層を形成することにより人工皮革Gを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例4]
繊維密度を0.21g/cm3にした以外は実施例1と同様にして、目付け524g/m2、厚み1.68mmの海島型繊維からなる絡合不織布を得た。以下実施例1と同様にして、人工皮革基材を得、実施例1と同様にして人工皮革基材の一表面に樹脂表皮層を形成することにより人工皮革Hを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例5]
溶融流動特性の異なる二種のポリマーとして、島成分である数平均分子量18000のポリアミド6と海成分であるメルトインデックス(MI)70の低密度ポリエチレンとを質量比50:50になるように、それぞれ独立した溶融系で溶融し、両溶融物の接合−分割を連続的に繰り返して両者のモザイク状複合断面形状を形成する口金により溶融紡糸する海島型複合紡糸装置に仕込み、溶融紡糸して繊度15デシテックスの海島型繊維を得た。得られた海島型繊維を、油剤を混和した湿熱浴中で2.9倍に延伸し、捲縮を付与した後、繊維長51mmの短繊維に切断し、カードで解繊した後クロスラッパーウェバーで短繊維ウェブとした。
得られた短繊維ウェブに、バーブが先端から3mmの位置にあるニードルを用い、ウェブ面側から突き刺し深さ10mmで426パンチ/cm2のニードルパンチ処理を行い、さらに、120℃の乾燥機内で加熱した後、ポリエチレンが軟化した状態で2本のロールでプレスすることにより、目付け619g/m2、厚み1.9mmの海島型繊維の短繊維からなる絡合不織布を得た。
次に、海島型繊維の短繊維からなる絡合不織布に、ポリエーテル系ポリウレタン17.5%DMF溶液を含浸させ、水中で多孔質状に湿式凝固させた。なお、ポリエーテル系ポリウレタン17.5%DMF溶液には、さらにポリエーテル系ポリウレタンに対して2.0%の青色顔料を配合した。そして、海島型繊維の海成分であるポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去することにより、海島型繊維の短繊維を極細短繊維に変換した。このようにして、目付け536g/m2、厚み1.3mmである、高分子弾性体を含む極細短繊維不織布が得られた。
以下実施例1と同様にして、人工皮革基材を得、実施例1と同様にして人工皮革基材の一表面に樹脂表皮層を形成することにより人工皮革Iを得た。そして、人工皮革Aの代わりに人工皮革Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬式野球ボールを作成し、評価した。結果を表1に示す。
実施例1〜4で得られた人工皮革A〜Dを用いて得られた硬式野球ボールは、縫製時に縫い目から伸びる大きなシワが見られず、型崩れも見られなかった。また、AD方向及びOD方向の何れの方向に対しても引裂強力が高く、繰り返し使用しても、縫い目から裂け目が生じない耐久性に優れたものであった。また、ソフトな風合いで伸びにくく、牛皮からなる天然皮革のような風合いと触感を備えていた。また、とくに、実施例1〜3は縫い目間で生じる小さなシワも発生しなかった。一方、比較例1で得られた20%強力のAD/OD比が高い人工皮革Eを用いて得られた硬式野球ボールは、縫製時に縫い目から伸びる大きなシワが発生し、型崩れした。また、比較例2で得られた20%強力のAD/OD比が低い人工皮革Fを用いて得られた硬式野球ボールも、縫製時に縫い目から伸びる大きなシワが発生し、型崩れした。また、比較例4で得られた人工皮革Hを用いて得られた硬式野球ボールは、繊維密度が低いために、縫い目から裂け目が生じて耐久性に劣ったものであった。また、比較例5で得られた極細短繊維不織布を含む人工皮革Iを用いて得られた硬式野球ボールは、AD方向及びOD方向の何れの方向の引裂強力も低いために、繰り返し使用した場合に、縫い目から裂け目が生じて耐久性に劣ったものであった。また、AD方向の伸度が極めて低いため、縫製時に縫い目から伸びる大きなシワが発生し、型崩れした。
1 極細長繊維束からなる三次元絡合不織布
2 高分子弾性体
3 基材
4 樹脂表皮層
4a 多孔性樹脂層
4b 樹脂接着層
4c 無孔性樹脂層
5 長繊維ウェブ
6 MD方向に平行な軸
7 長繊維ウェブの折目に平行な軸
10 人工皮革
11 縫い糸
12 縫い穴
20 従来の硬式野球ボール

Claims (4)

  1. 人工皮革からなるボール表皮材であって、
    前記人工皮革は、三次元絡合不織布に高分子弾性体を含浸一体化させた基材と前記基材の表面に積層された樹脂表皮層とを備え、且つ、任意の1方向(AD)の20%強力とその方向(AD)に直行する方向(OD)の20%強力との比(AD/OD)が0.8〜1.2の範囲であり、
    前記三次元絡合不織布は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含む、平均繊度が3デシテックス以下の極細長繊維束からなり、繊維密度が0.24g/cm3以下である、ことを特徴とするボール表皮材。
  2. 前記樹脂表皮層は、前記基材の表面に形成された多孔性ポリウレタン層と多孔性ポリウレタン層の表面に形成された無孔性ポリウレタン層とを含む請求項1に記載のボール表皮材。
  3. 前記極細長繊維がポリアミド繊維であり、前記高分子弾性体がポリウレタン樹脂である請求項1または請求項2に記載のボール表皮材。
  4. 芯球と前記芯球の外周を覆う表皮層とを備えたボールであり、
    前記表皮層が、複数枚の請求項1〜3の何れか1項に記載のボール表皮材を糸で縫合わせた縫合体であることを特徴とするボール。
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