JP2007084954A - 積層体の乾熱収縮処理方法およびその方法を用いた人工皮革の製造方法 - Google Patents

積層体の乾熱収縮処理方法およびその方法を用いた人工皮革の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、乾熱収縮率の異なる織編物と絡合不織布からなる積層体を乾熱収縮処理することにおいて、折れ、しわの発生および風合いを損なうことが無い乾熱収縮処理方法を提供する。
【解決手段】 織編物からなる層と該織編物と乾熱収縮率の異なる絡合不織布からなる層が絡合一体化された積層体を乾熱収縮処理する際に、該乾熱収縮率の低い層を構成する面側から熱風を吹き付けることを特徴とする積層体の乾熱収縮処理方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、乾熱収縮率の異なる織編物と絡合不織布からなる積層体を乾熱収縮処理することにおいて、折れやしわがなく、また風合いを損なうことが無い乾熱収縮処理方法に関するものである。また該処理によって得られた積層体を用いた人工皮革の製造方法に関する。
人工皮革は、従来から、インテリア、衣類、靴、鞄、手袋および乗物用座席の上張材などの様々な用途に利用されている。そのなかで、鉄道車両用座席、自動車用座席、航空機用座席および船舶用座席などの乗物用座席、クッションシート、ソファー、椅子などのインテリア家具の上張材の分野では、良好な表面耐摩耗性および長期間の使用においても伸び、へたりおよびしわの発生の無い高い形態安定性を兼ね備えた人工皮革が強く求められている。
近年、絡合不織布を基材とした人工皮革、特に極細繊維絡合不織布を基材とした人工皮革は天然皮革に近似したソフトで充実感のある風合いを有することから、用途を問わず高級素材として採用されている。しかし該基材が極細繊維不織布のみからなるものは、容易に変形しやすいという問題がある。例えば、該基材を椅子の上張り材として使用した場合は、長期に渡って繰り返し体重がかかるため、歪みを生じやすい。このような歪みが生じる問題に対して、一般的に織編物を人工皮革裏面に貼り合わせる方法が知られている。しかしながら該方法を用いた場合には、変形に対する効果はあるものの、風合いが硬くなる傾向があり、複雑なデザインを有するものに対しては、しわが生じるやすくなるため縫製し難い場合が多い。また、不織布ウエブに織編物を積層し、絡合一体化した基材を用いた人工皮革を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。得られる人工皮革は、織編物を人工皮革裏面に貼り合わせたものよりはソフトな風合を有し、形態安定性も高い傾向を示す。
また、人工皮革の風合い改善、絡合密度や強度の向上、あるいはバルキー性やストレッチ性付与などの手段として、基材となる不織布を収縮させることは公知であり、収縮させる方法として例えば、不織布を熱水中に浸漬させる方法が主に行われている。しかしながら、不織布内部への熱の加わり方や繊維に加わる応力が異なること、あるいは不織布内部の空気が水中で必ずしも100%除かれず所々気泡としてたまることなどにより、収縮斑によるしわを発生する問題を抱えていた。そこでこれまで様々な改善策が試みられてきた。
例えば、収縮不織布の全面積収縮率に対し、あらかじめ低温の水で特定の面積を予備収縮させ、その後高温の水で全収縮を行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、収縮斑は不織布処理中にかかるテンションによって増長されることから、不織布収縮による長さの減少分に見合う量だけ送り込みローラーで送り込む方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、これらの方法では幅方向の収縮斑によって発生するしわの改善にはある程度の効果が見られているものの、厚み方向の収縮斑によるしわに対する改善効果としては充分とはいえない。ここで厚み方向の収縮斑とは、不織布と織編物からなる積層体において不織布を構成する層と織編物を構成する層の収縮率が異なることによって発生する場合が典型的な例として挙げられる。この場合、相対的に収縮率が高い層の収縮に伴い相対的に収縮率が低い層が本来の収縮率以上に収縮し、その結果、歪やしわが生じて局部的に一方の層の厚みが厚くなる状態、あるいは該積層体を用いた人工皮革製品表面にスジ状の凹凸欠点が発生する状態をいう。特に積層体を構成する織編物や繊維不織布からなる各層の熱収縮率が大きく異なる場合この現象が顕著となり、いかに不離一体構造となるよう絡合一体化しても上層と下層で熱収縮率が異なるため、熱収縮時の収縮差によって積層体に生じる厚み方向の収縮斑によるしわや折れが発生し、さらに人工皮革とした場合に人工皮革の外観および風合いなどの品質を大きく損ねる原因となりやすい。前記した熱処理法を用いた場合、幅方向の収縮斑に起因するしわや折れの改善に効果は見られても、厚み方向の収縮斑に起因するしわや折れの解決は困難であった。
特公平4−1113号公報 1−4頁 特公昭48−39386号公報 1−3頁 特開平2−182964号公報 1−3頁
本発明の課題は、乾熱収縮率の異なる織編物と絡合不織布からなる積層体を収縮処理するに際し、しわや折れの発生および風合いを損なうことが無い乾熱収縮処理方法を提供すること、また該処理によって得られた積層体を用いた人工皮革の製造方法を提供することである。そして、乗物用座席、クッションシート、ソファーおよび椅子等のインテリア製品の上張材として、長期間の使用においても型崩れが少なく、ソフトな風合いを有するに好適な人工皮革の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、
1.織編物からなる層と該織編物と乾熱収縮率の異なる絡合不織布からなる層が絡合一体化された積層体を乾熱収縮処理する際に、該乾熱収縮率の低い層を構成する面側から熱風を吹き付けることを特徴とする積層体の乾熱収縮処理方法。
2.乾熱収縮率の高い層を構成する面側から熱風を吸引する1.の積層体の乾熱収縮処理方法。
3.熱風を吹き付ける風量が1〜100cm/min・mである1.または2.の積層体の乾熱収縮処理方法。
4.熱風の温度が、絡合不織布および織編物を構成する高分子成分の中で最も軟化温度が低い成分に対して、軟化温度−50℃〜軟化温度+50℃である1.〜3.いずれかの積層体の乾熱収縮処理方法。
5.織編物と絡合不織布の乾熱収縮率差が5〜20%である1.〜4.いずれかの積層体の乾熱収縮処理方法。
6.下記の工程1)〜4)を含むことを特徴とする人工皮革の製造方法。
1)織編物からなる層と、該織編物と乾熱収縮率が異なり、かつ水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分を含む複合繊維からなる絡合不織布から構成される層とを絡合一体化し積層体とする工程、
2)該積層体の乾熱収縮率の低い層を構成する面側から熱風を吹き付けて乾熱収縮処理を行う工程、
3)高分子弾性体を該積層体の絡合空間に付与する工程、
4)複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分を抽出除去する工程、
7. 6.の工程1)において、織編物からなる層のいずれかの面側に、さらにポリウレタン不織布を積層し、絡合一体化してなる人工皮革の製造方法である。
本発明は、乾熱収縮率の異なる織編物と絡合不織布からなる積層体を折れやしわの発生がなくまた風合いを損なうことなく乾熱収縮させることが可能であり、該収縮積層体を用いた人工皮革は、長期間の使用においても型崩れしない等、形態安定性に優れ、ソフトで高級感に優れる良好な風合を有する。
本発明に用いられる絡合不織布からなる層(以下、単に絡合不織布と略すこともある。)を構成する繊維は、特に制限は無いが、例えば、極細繊維を単成分とし直接紡糸から得られるもの、あるいは、少なくとも2種類のポリマーからなる極細繊維発生型繊維等で代表される複合繊維から製造される。そして、人工皮革とした場合に天然皮革様の風合いが得られる点から、絡合不織布を構成する繊維は、0.5dtex以下の極細繊維或は0.5dtex以下の極細繊維を発生し得る極細繊維発生型繊維であることが好ましい。極細繊維発生型繊維は、例えば、海島型複合繊維で代表される海成分が溶剤または分解することで島成分がフィブリル化する抽出型繊維あるいは積層型や花弁型複合繊維で代表される、機械的にまたは処理剤によって複合繊維を構成する各成分からなる極細繊維にフィブリル化する分割型繊維等があげられる。極細繊維発生型繊維は、必要に応じて延伸、熱処理、機械捲縮、カット等の処理工程を経て、繊度1〜15dtexの短繊維、あるいは長繊維とする。極細繊維を構成するポリマーは、6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどの溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはそれらの共重合体の溶融紡糸可能なポリエステル類から選ばれる少なくとも1種類のポリマーが用いられる。また、抽出型繊維で抽出または分解除去される成分は、極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、極細繊維成分との相溶性の小さいポリマーであり、かつ紡糸条件下で極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーである必要があるが、本発明においては環境汚染、溶解時の収縮特性等総合的に考慮すれば熱水溶解可能な水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。さらに、上記極細繊維は、本発明の効果を損なわない限りにおいてカーボンブラック等に代表される顔料で着色あるいは公知の繊維添加剤を添加することは可能である。
絡合不織布は、ウエブを構成する繊維が短繊維であれば、公知の方法、例えば、カードで解繊し、ウェッバーを通してウエブを形成する。また、ウエブを構成する繊維が長繊維であれば、スパンボンド法等公知の方法により紡糸と同時にウエブを形成する。得られたウエブは、所望の重さ、厚さに積層することによって得られる。または、必要に応じ、続いて、該ウエブをニードルパンチ、高速水流などの公知の方法により仮絡合処理を行うことで得られる。上記ウエブの目付は、人工皮革等の目的物の目付に応じて設定されるが、得られる人工皮革の風合いを良好なものとするため織編物との絡合一体化を目指す上で、80〜2000g/mの範囲が好ましく、より好ましくは100〜1500g/mの範囲が好ましい。また、織編物との絡合性確保の点から、織編物と積層する前のウエブに対し、パンチ数20〜100P/cmの範囲の仮絡合処理を施すことが好ましい。なお、ここでいうパンチ数とは、ニードルパンチ工程を通してウエブの単位面積当たりに突き刺したフェルト針の累計本数であり、例えばフェルト針が10本/cmの密度で配置されたニードルボードをウエブへ50回突き刺せば、そのニードルパンチ工程でのパンチ数は500P/cmである。
そして該温度範囲における絡合不織布の乾熱収縮率は、縦横共に1〜30%であることが人工皮革とした場合に型崩れしない等形態安定性に優れ、得られる人工皮革の外観と風合の向上の点から好ましい。さらにスエード調人工皮革とした場合、毛羽密度向上に効果的である、。
一方、本発明に用いられる織編物からなる層(以下、単に織編物と略すこともある。)を構成する織編物の組織は、特に限定しない。また織編物を構成する繊維は、例えば人工皮革とした場合に、目的の用途における実用上の強度が得られるものを用いることが好ましい。そして、公知のポリマーからなる繊維を選ぶことが出来る。繊維を複数本束ねた糸により織編物を構成する際には、糸の撚り数は特に制限は無いが、得られる人工皮革の風合いの点から900T/m以下の低撚り数であることが風合と絡合性を両立する点で好ましい。また、糸番手としては、目的により適宜変更可能であるが、通常30dtexから200dtexのものが用いられる。上記番手が200dtexを越すと得られる人工皮革等で代表される製品の風合いが硬く、また、厚みの薄いものが得られにくい。また30dtexより細い場合、必要な強度を得るためには織密度を高くする必要があるが、その場合、ニードルパンチ法あるいは水流絡合での不織布との絡合の際に、不織布と織編物が一体化されにくい。織編物の目付は、得られる人工皮革の風合いの観点から、30〜200g/mが好ましい。目付が30g/m未満の場合、織編物の強度が不足し、また、糸ずれにより織編物の形態が崩れやすくなる。また、200g/mを越える場合、得られる人工皮革の風合いが硬くなりやすく、かつ、織編物と不織布の一体感が得られにくい。
そして該温度範囲における織編物の乾熱収縮率として、縦横共に1〜30%であることが、得られる人工皮革の外観と風合の向上の点から好ましい。
また本発明の積層体は、前記した絡合不織布と織編物を組み合わせたものであればいずれの構成でも構わないが、積層体を人工皮革として用いる場合、耐表面磨耗性を向上するためにポリウレタンシートからなる層(以下、単にポリウレタンシートと略すこともある。)をさらに積層することが好ましい。該ポリウレタンシートは、絡合不織布の極細繊維の一部に接着していればよく、その形態としては不織布状、フィルム状等特に形態は問わない。また、絡合不織布を構成する一部の繊維が、ポリウレタンシートを貫通および織編物と絡合一体化していれば、上記効果が得られる点で特に好ましい。なお、絡合不織布、ポリウレタンシートおよび織編物の積層形態は特に制限はなく、絡合不織布−ポリウレタンシート−織編物でも絡合不織布−織編物−ポリウレタンシートでも良い。そして、得られる積層体が不離一体構造となりやすく、また耐表面磨耗性に優れるといった点から、絡合不織布、ポリウレタンシートおよび織編物それぞれを絡合一体化させることが好ましい。特にポリウレタンシートがポリウレタン繊維からなる不織布であることが上記効果を容易に発揮可能な点でより好ましい。ポリウレタン不織布は、特に限定するものではなく、例えばメルトブローン方式等公知の方法により得られる。構成するポリウレタンとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜12の脂肪族ジオール、脂環族ジオールおよび脂環族ジオールから選ばれた少なくとも1種類のジオールと、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸およびそれらジカルボン酸のエステル等から選ばれた少なくとも1種類のジカルボン酸或いはそのエステルと反応させて得た平均分子量600〜3000のポリエステルジオールと、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族または脂環族のジイソシアネートを主体とした有機ジイソシアネート、それに必要に応じて脂肪族ジイソシアネートまたはナフタリン環を有するジイソシアネートから選ばれた有機ジイソシアネートと、例えば、ジオール、アミノアルコール、ヒドラジン、ジアミンなど活性水素原子を2個有する低分子化合物から選ばれた鎖伸長剤を反応させることにより得られるポリウレタンである。反応方法としては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤を所望の組成比で選び、溶融重合法、塊状重合法あるいは溶液重合法などによる重合反応が挙げられ、このようにして熱可塑性ポリウレタンとする。使用するポリウレタンの種類としては、上記ポリエステル系ポリウレタンに限定されるものでは無く、目的に応じてポリエーテル系、ポリカーボネート系、またはそれらの共重合体や混合物が適宜選択される。
これらポリウレタン不織布の均一性を向上させるためには、ポリウレタン製造時の組成において、ソフトセグメントとなるポリマージオールの含有量が、溶融ポリマーの紡糸性や極細化の点のみならず、得られるポリウレタン不織布の柔軟化、伸縮性、形態の安定化、面の平滑性などの点で45〜75質量%となるようにすることが好ましい。また、鎖伸長剤は特に低分子量の脂肪族ジオールまたはイソホロンジアミンから選ばれた化合物を主体とした鎖伸長剤を用いて重合したポリウレタンであって、ポリウレタンの固有粘度〔η〕が0.5〜1.5dl/gの範囲となるように重合度を調整することが柔軟性、紡糸性、極細化、良好な繊維流の形成が得られる点で好ましい。また、上記ポリウレタンに適量のブロッキング防止剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤等の添加剤を加えることもできる。
上記ポリウレタン不織布を得るためのメルトブローン方式としては、紡糸温度を220〜280℃の範囲内で、ポリウレタンの溶融粘度が500ポイズ以下となるように設定し、所望のポリウレタン不織布層の目付となるよう噴出空気量を設定する。そして該ポリウレタンの繊度としては0.1〜5dtexであることが紡糸安定性の点から好ましい。
また上記で得られるポリウレタンシートの目付は10〜150g/mの範囲が好ましい。上記範囲とすることで十分な伸縮性および耐表面磨耗性を付与し人工皮革としたとき全体の重量が重くなり過ぎず、優れた風合いとなる。
絡合不織布からなる層、ポリウレタンシートからなる層および織編物からなる層の絡合は、特に方法を制限するものでは無いが、高目付のウエブを使用する場合、効果的に絡合させる方法としてはニードルパンチ法が好ましい。ニードルパンチの際のパンチ数は、上記3層を絡合一体化させるために、300〜4000P/cmの範囲が好ましく、より好ましくは500〜3500P/cmの範囲である。300P/cm未満では、絡合が不充分であり、4000P/cmを越えると絡合不織布および織編物の繊維損傷が目立つようになる。ニードルパンチの際の針の突き刺し深さは、人工皮革特にスエード調人工皮革とした際の耐表面磨耗性を確保する観点から、絡合不織布を構成する繊維が、ポリウレタンシートからなる層および織編物からなる層を貫通する必要があるため、絡合不織布からニードルパンチする場合、針のバーブが少なくともポリウレタンシートからなる層および織編物からなる層を貫通する深さに設定しておく必要がある。また、ポリウレタンシートからなる層および織編物からなる層の側からニードルパンチする場合は、表面に織編物を構成する繊維が露出しないように、バーブが絡合不織布からなる層の表面から貫通しない位置に設定する必要がある。
得られた積層体の積層比率としては特に限定されるものではないが、得られる人工皮革の風合いがゴムライクとならないために絡合不織布からなる層/織編物からなる層=95/5〜70/30、および布帛ライクとならないために絡合不織布からなる層/ポリウレタンシートからなる層=95/5〜70/30であることが好ましい。また得られた積層体の目付けは目的とする人工皮革の目付に応じて設定されるが、得られる人工皮革が絡合一体化されたものであるため、120〜2350g/mの範囲が好ましく、より好ましくは150〜1500g/mの範囲が好ましい。
本発明で用いられる積層体を人工皮革に用いる場合、繊維の毛羽密度を増加させ、外観、風合いの良好なものを得るため、またスエード調人工皮革とした際の耐表面磨耗性の点からポリウレタンシートを加熱処理して、ポリウレタンシートを絡合不織布の極細繊維に密着させるために、乾熱収縮処理を行う。さらに、相対的に乾熱収縮率の高い層(以下、高収縮層と称することもある。)と相対的に乾熱収縮率の低い層(以下、低収縮層と称することもある。)が接している状態あるいは絡合一体化している状態で、従来から行われている熱水収縮処理を行うと、積層体へ付与する熱が表裏面に同時に付与され、表裏面を選択的に熱処理することができない。そして、同時に乾熱収縮処理を開始する場合、乾熱収縮処理により高収縮層が完全に収縮すると低収縮層は高収縮層の収縮に十分に追随できないことから、折れ曲がるなどの歪みを生じることで収縮しきれない部分を緩和しようとする現象が起こると本発明者らは推定している。その結果、収縮差に伴い低収縮層にしわが発生し、風合いが損なわれるばかりか、しわによる表面の凹凸から外観品位の低下を招くことが問題となる。
以上の問題点を、本発明者らが鋭意検討した結果、低収縮層を先行して収縮させ、高収縮層の収縮応力によって歪難いレベルまで低収縮層の繊維を優先的に収縮熱固定することが重要であることが判明した。そして、積層体の乾熱収縮処理において乾熱収縮させる熱風をまず低収縮層を構成する面側から吹き付けることが重要であり、さらに、熱風を低収縮層内部を通過させ、さらに高収縮層内部を通過させることが特に好ましいことが判明した。
本発明で乾熱処理する処理装置は、特に限定しないが、装置内に赤外線ヒーター等の加熱装置で加熱された熱風を積層体の低収縮層を構成する面側から熱風を吹き付けられる装置であることが重要であり、積層体の低収縮層側から高収縮層側に向かって熱風が通過するような吹き出し口が設置されていることが好ましい。吹き出された熱風は積層体の内部を通ることにより温度低下を起こすが、高収縮層側に吸引ファンを設置することで熱風を積極的に積層体内部を通過させることが可能となり、積層体の内部を通過させることによって、安定的にかつ効率よく低収縮層を先行して収縮させ、高収縮層の収縮応力によって歪めないレベルまで低収縮層の繊維を優先的に収縮熱固定可能とする点で好ましい。さらに吸引後の温度低下した熱風を再び赤外線ヒーター等の加熱装置に戻す循環装置を追加することが連続的に安定かつ効率的に乾熱収縮処理を行う点で特に好ましい。また、該乾熱収縮装置には熱風が貫通可能なメッシュサイズを有するネットを走行させ、積層体を該ネット上に乗せ、乾熱処理装置内を搬送する時に積層体のテンションをフリーの状態とすることが、安定的に積層体の巾方向および厚み方向に乾熱収縮を起こし易い点で特に好ましい。そして熱風が積層体の内部を完全に通過するため、循環する熱風がネットを貫通する際の貫通巾が、積層体よりも狭い設定であれば、熱風は積層体内部全体を斑なく完全に貫通し、安定的に斑なく積層体の収縮処理を行うことが無駄なく効率的できることから工業的に有利となる。仮に、低収縮層を構成する面側から高収縮層を構成する面側の順に熱風を吹き付けた場合、積層体中央付近へ存在する繊維を両面と同程度の収縮、および緩和効果を得るためには中央付近へ熱を充分に伝えることが必要となる。このためには長い処理時間が必要となる。また、本発明の効果を損なわない範囲にて、必要に応じて、熱プレス処理を行ってもよい。
本発明の乾熱収縮処理で用いる熱風を吹き付ける風量としては、積層体の密度・目付け等によって適宜変更可能であるが、積層体を貫通していくことが可能な量および圧力であることが乾熱収縮処理装置内部の風の流れを乱し、乾熱収縮率の低い層を構成する面側と反対側の面に熱風が最初にあたることを防止する点で好ましい。風量が強すぎると全ての熱風が積層体を貫通しきれず、乾熱収縮処理装置内部の風の流れを乱し、乾熱収縮率の低い層を構成する面側と反対側の面に熱風が最初にあたる場合もあり、また余剰熱風は実質的に積層体収縮への寄与しないため、生産効率の点で好ましくない。熱風を効率よく吹き付ける上で、熱風を吹き付ける量が1〜100cm/min・mであること好ましく、5〜80cm/min・mがより好ましい。また、熱風の温度は、絡合不織布、織編物を構成する高分子成分の中で最も軟化温度が低い成分に対して、軟化温度−50℃〜軟化温度+50℃であることが、熱風処理時に積層体を構成する繊維の緩和状態が充分であり、その後、人工皮革を仕上げていくために必要な加熱処理における収縮を防止する点、また収縮に伴うしわや折れの防止が容易な点で好ましい。さらに熱風処理時の熱風温度が積層体を構成する繊維を溶融することを避けることができ、積層体の強度物性の低下を防止する点で好ましい。
本発明で処理する積層体の絡合不織布と織編物の組み合わせとしては、前記したものの組み合わせであればいずれの組み合わせでも構わない。しかし、仮に積層する織編物と絡合不織布の乾熱収縮率差が小さすぎる場合、本発明の乾熱収縮処理方法であっても従来の熱収縮処理方法であってもどちらでもよく本発明の効果がわかりにくい。また乾熱収縮率差が大きすぎる場合、本発明が目的とする低収縮層の折れ曲がりなどの歪みは回避できるものの、低収縮層側から高収縮層側へ若干反り返る傾向が見られる。このため、積層する織編物と絡合不織布の縦横各々の乾熱収縮率差が縦横共に5〜20%であれば本発明の効果を最大限に発揮できることから特に好ましく、8〜15%であればより好ましい。特にスエード調人工皮革の表面部分を構成する絡合不織布の乾熱収縮率が織編物よりも上記範囲内で高くなるように調整することが、表面の毛羽密度が高く、ライティング効果に優れ、天然皮革並みのソフトで充実感のある風合を有する点で好ましい。
なお、上記の収縮率差が上記範囲から外れる場合は、あらかじめ絡合不織布を構成する繊維、あるいは織編物を構成する繊維を、繊維の段階でいずれか片方、あるいは両方を熱処理しておくことで上記範囲内へ調整することが可能である。
得られた積層体に対し、極細繊維発生型繊維からなる絡合不織布の場合、極細化する前、あるいは極細化後に、高分子弾性体を積層体の絡合空間に付与し、人工皮革基体とすることが、さらに皮革様の充実感ある風合いと機械的物性の向上の点で用いられる。高分子弾性体としては、風合いや機械物性を兼ね備える点でポリウレタンが好ましい。また、高分子弾性体の付与については、本発明では、積層体にポリウレタンシートを積層する場合があり、該ポリウレタンシートを溶解させないように高分子弾性体を水分散液の状態、例えばポリウレタンエマルジョンで付与することが好ましい。
上記ポリウレタンエマルジョンには、必要に応じて種々の有機系顔料および無機系顔料などを添加してもよく、その場合の有機顔料としては、例えばフタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ぺリレン系、チオインジゴ系、アゾ系顔料等が挙げられ、また無機系顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、べんがら、クロムレッド、モリブデンレッド、リサージ、酸化鉄等が挙げられる。また高分子弾性体水溶液を含浸した後、高分子弾性体を加熱凝固する。凝固する方法としては、公知の方法が挙げられるが、例えば、熱処理して乾式凝固、あるいは熱水処理、スチーム処理して感熱凝固する方法が好ましく挙げられる。
上記人工皮革基体に占める高分子弾性体の比率としては、得られた積層体に柔軟な風合いと弾性回復性を持たせるために、さらに、高分子弾性体付与後の工程でのしわや歪の発生を防止するために、極細繊維化する前で、固形分として質量比で5〜50%、好ましくは10〜40%の範囲で含有させるのがよい。ポリウレタン比率が5%未満の場合には、緻密な弾性体スポンジ(多孔構造)が形成されにくく、充実感ある風合いや弾性回復性が得られにくい。ポリウレタン比率が50%を越える場合には、風合いがゴムライクになるので本発明が目的とする用途における素材としては好まれない傾向が強く、また織編物による型崩れ防止効果を阻害する傾向もみられる。
絡合不織布を構成する繊維に極細繊維発生型繊維等の複合繊維を用いた場合には、該極細繊維発生型繊維を、繊維構成ポリマーのうちの少なくとも1成分(好ましくは海成分構成ポリマー)を溶解剤若しくは分解剤で処理して、または機械的若しくは化学的処理により極細繊維あるいは極細繊維束に変性する。極細繊維発生型繊維の変性処理は高分子弾性体の付与前であってもよいが、極細繊維束に変性後に高分子弾性体を含浸、凝固すると、高分子弾性体が極細繊維に接着し風合いが硬くなりやすいため、高分子弾性体付与後に極細繊維あるいはその束に変性することが好ましい。高分子弾性体付与前に変性処理を行う場合には、極細繊維と高分子弾性体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後に高分子弾性体を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
上記で得られた人工皮革基体は、スライス、バフィング等により所望の厚みに調整した後、人工皮革基体表面をサンドペーパー等による公知の方法でバフィングすることにより極細繊維束は起毛され、染色することによりスエード調人工皮革とすることができる。
得られたスエード調人工皮革の厚みは、使用目的によっても異なるが、椅子張りの表皮として使用する場合、0.4〜3.0mmであることが好ましく、見かけ密度は充実感、ドレープ性、優れた機械的物性をもたらす点で0.1〜0.8g/cmであることが好ましい。
以下本発明の実施態様を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部、%等の量、比率に関する記載は断わりが無い限りすべて質量に関するものである。また、定荷重伸びおよび残留歪みの測定はシート表皮用布材料の試験方法(JASO M 403−88 6.5、社団法人自動車技術会制定)に従い、次の方法で行った。
[乾熱収縮率の測定]
サンプルをA4サイズに切り出し、縦×横=15cm×15cmの形態を記入した後、200℃の温度で3分間処理後形態測定し、縦および横の乾熱収縮率をそれぞれ下記の式にて算出した。
A=(15−B)/15×100
A:乾熱収縮率(%)
B:乾熱処理後の形態(cm)
[定荷重伸び率、残留歪み率の測定]
幅80mm、長さ250mmの試験片を縦および横の方向から3枚ずつ取り、その中央部に距離100mmの標線を付ける。次にマルテンス形疲労度試験機を用い、上側のつかみに試験片の一端をつかみ、つかみ間隔を150mmとして下側にはつかみ具を含め98.1N(10kgf)の荷重をかける。10分経過後の標線間距離(mm)を測定して荷重を取り去り、試験片を平らな台の上に置き、除重から10分後の標線間距離を測る。定荷重伸び率(%)、残留歪み率(%)は次式で計算し、それぞれ縦および横方向について3枚の平均値で表す。そして、定荷重伸びおよび残留歪みの数値が低い方が、実際の椅子張り表皮に使用した際、長期間の使用に際しても形態安定性が良い。
定荷重伸び率(%) =(L−L)/L×100
残留歪み率(%) =(L−L)/L×100
:試験前の標線間距離(mm)
:荷重をかけて10分後の標線間距離(mm)
:除重から10分後の標線間距離(mm)
[表面摩耗測定]
また、表面摩耗性は、JIS L1096に規定されているマーチンデール磨耗試験測定方法に準じたものであり、荷重12kPa、磨耗回数5000回の条件で行う。
[折れ・しわ評価方法]
折れ・しわはサンプル表面から30cm程度の距離で目視確認し、折れやしわの存在有無で判定した。
絡合不織布の作成
エチレン単位10モル%含有し、けん化度98.4モル%、軟化温度170℃、融点210℃のポリビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製 エクセバール)を海成分に用い、固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等質量混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸8モル%含有したポリエチレンテレフタレ−ト(融点234℃)チップを島成分とし、島成分が37島となるような溶融複合紡糸用口金(0.25φ、550ホール)を用い、海成分/島成分比率=30/70の比率、口金温度250℃で吐出し紡糸した。該紡糸繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸した。紡糸性、連続ランニング性、延伸性は良好で全く問題がなかった。この海島型複合繊維を、捲縮機で捲縮を付与し51mmにカットしてステープル化した。この海島型複合繊維ステープルは単繊度4.13デシテックス、強度3.2cN/dtex、伸度40%と良好であった。
上記ステープルを使用して、カード、クロスラッパーの工程を経て、ウエブを作成し、仮絡合処理として40P/cmのニードルパンチを行い、目付300g/mの上記海島型複合繊維ステープルからなる絡合不織布を得た。この絡合不織布の200℃の乾熱収縮率は縦×横=18%×18%であった。
ポリウレタンシートの作成
平均分子量1150のポリ3−メチル−1,5ペンチルアジペートグリコールと、平均分子量2000のポリエチレングリコールと4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールを0.9:0.1:4:3のモル比(イソシアネート基に基づく理論窒素量4.63%)で仕込みスクリュー式混練型重合機を用い溶融重合法でポリウレタンを重合した。このポリウレタンの軟化点は125℃であった。得られたポリウレタンは溶融状態のままメルトブロ−法で、温度260℃に加熱したダイオリフィスの両側にあるスロットから温度260℃に加熱した高速空気流で繊維状溶融ポリウレタンを微細繊維状に搬送し、2m/分で移動する金網上に捕集距離40cmの位置で捕集した。捕集したウエブは微細繊維のランダムウエブであり、平均目付45g/m、平均厚み1.8mm見かけ密度0.25g/cmのポリウレタンシートとしてメルトブローン不織布を得た。
織物の作成
84dtex/36fの仮撚り加工を施したポリエステル(軟化温度240℃)製の糸に、600T/mの追加撚糸加工をした後、織密度82本×76本/inchで織り加工を行い、目付70g/mの平織物を得た。この織物の200℃の乾熱収縮率は縦×横=12.5%×9.5%であった。絡合不織布と織物の乾熱収縮率差は縦×横=5.5%×8.5%であった。
(絡合不織布、ポリウレタンシートおよび織物の積層体の作成)
上記絡合不織布にポリウレタンシートおよび平織物を順に積層し、シングルバーブのフェルト針を使用して、最初に絡合不織布側から1200P/cm、次いで織物側から400P/cmのパンチ数でニードルパンチを行い絡合不織布、ポリウレタンシートおよび平織物を絡合一体化させて、目付430g/mの3次元繊維絡合体からなる積層体を得た。ニードルパンチの際、絡合不織布側から突き刺したフェルト針の突き刺し深さは、バーブが平織物を貫通する深さとし、平織物側から突き刺したフェルト針の突き刺し深さは、バーブが絡合不織布側の表面には突き出ない深さとした。得られた3次元繊維絡合体からなる積層体の幅は180cm、目付け594g/m、乾熱収縮率縦×横=7.0%×1.0%であった。
得られた積層体を上/下=平織物からなる層/絡合不織布からなる層の向きとし、熱風を上から下方向に吹き付け、さらに下側には熱風を吸引し循環する装置を含む熱風貫通乾熱処理機(京都機械株式会社製)の中を、熱風温度200℃(ポリビニルアルコール共重合体の軟化温度170℃に対し、+30℃)、熱風量42.5cm/min・m、速度3m/min、熱風貫通幅100cmの条件でメッシュシート上に乗せて通過させることで乾熱収縮処理を行った。得られた積層体は、折れおよびしわ共に無く風合いが良好なものであった。その後、積層体を金属プレスロールで見かけ密度を0.45g/cm(厚み1.07mm)とした後、ポリウレタン含浸液として、ポリエーテル系水系ポリウレタンエマルジョン40%液(日華化学株式会社製 エバファノールAP−12)を上記積層体に含浸後ピックアップ率65%になるようにマングルで絞り付着量を合わせた。その後、連続的にピンテンター乾燥機で150℃、7分間加熱乾燥した。この積層体をさらに熱水90℃中に浸漬絞液を繰り返し、海成分のPVAを除去し乾燥後、さらにピンテンター乾燥機で140℃、5分間加熱乾燥し人工皮革基体を得た。得られた人工皮革基体の断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリウレタンシートは溶融しフィルム化しており、ポリウレタンシートを貫通している絡合不織布を構成している繊維の一部にポリウレタンシートのポリウレタンが接着した状態であった。その後絡合不織布側の表面をサンドペーパーにて研削し、起毛処理を行った。この起毛シートをグレー色になるように分散染料を用い130℃で1時間液流染色し、仕上げ加工して厚さ0.9mm、目付400g/mのスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革の定荷重伸びは2%、残留歪みは1%以下であり、形態安定性に優れたものであった。また得られたスエード調人工皮革は折れやしわが無く、風合いは丸みがあり、適度な伸縮性を有していた。このスエード調人工皮革を座面全体の上張りに用いた椅子を作成し、1時間連続して着座使用した後で座面の状態を確認したところ、椅子の座面としての品位を大きく損なうような特段の歪み、しわは見られなかった。また、得られたスエード調人工皮革の前記マーチンデール摩耗試験において減量値は3mg以下であり、ピリングなど外観変化は無いものであった。
実施例1のウエブを予め85℃で熱処理した後に絡合不織布からなる層とした。この絡合不織布の200℃の乾熱収縮率は縦×横=11×12.4%であった。また織物として84dtex/16fのポリエステル製の糸に、700T/mの追加撚糸加工をした後、織密度本82×79本/inchで織り加工を行い、目付62g/mの平織物を得た。この織物の200℃の乾熱収縮率は27.5×21%であり、絡合不織布と織物の乾熱収縮率差は16.5×8.6%であった。この絡合不織布と織物を用い、実施例1と同様の乾熱収縮処理条件にて乾熱収縮処理を行って積層体を得た。その結果、得られた収縮積層体は折れやしわが無く、風合いが良好なものであった。また、該積層体を用いたスエード調人工皮革を実施例1と同様に作製した結果、折れやしわが無く、風合いが良好なものであり、定荷重伸びは2%、残留歪みは1%以下であり、形態安定性に優れたものであった。また、得られたスエード調人工皮革を座面全体の上張りに用いた椅子を作成し、1時間連続して着座使用した後で座面の状態を確認したところ、椅子の座面としての品位を大きく損なうような特段の歪み、しわは見られなかった。また、得られたスエード調人工皮革の前記マーチンデール摩耗試験において減量値は3mg以下であり、ピリングなど外観変化が無く耐摩耗性にも優れたものであった。
比較例1(乾熱収縮率の高い層の面側から熱風を吹き付けた例)
乾熱収縮処理において積層体を上/下逆向きとした以外は、実施例1と同様の処理を行った。その結果、得られた積層体は折れやしわが生じ、外観および風合いの非常に劣ったものであった。また、この積層体を用いて実施例1と同様にスエード調人工皮革としたところ、得られた人工皮革は折れやしわが目立ち、さらに風合いに劣ったものであった。
比較例2(両側から熱風を吹き付けた例)
乾熱収縮処理において絡合不織布側と織物側の両側から同時に同じ温度の熱風を吹きつけた以外は、実施例1と同様の処理を行った。その結果、得られた積層体は折れやしわが生じ、風合いの劣ったものであった。また、この積層体を用いて実施例1と同様にスエード調人工皮革を仕上げたところ、折れやしわ等が目立つ外観および風合いに劣ったものであった。
比較例3(熱水収縮)
実施例1の乾熱収縮を90℃の熱水収縮とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。その結果、得られた積層体は折れやしわがひどく、風合いが劣ったものであった。また該積層体を用いたスエード調人工皮革を実施例1と同様に作製した結果、折れやしわが目立ち、風合いに劣ったものであった。
比較例4(二段階熱水収縮)
実施例1の熱収縮を予め60℃の温水に浸漬させマングルで絞った後、90℃の熱水で追加収縮を行う以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、得られた積層体は折れやしわが発生し、風合いが劣ったものであった。
本発明の乾熱収縮方法で得られた積層体からなるスエード調人工皮革は、折れ、しわの発生が無く、風合いが良好であり、また長期間の使用においても型崩れしない等、形態安定性に優れ、ソフトで高級感に優れる良好な風合を有しており、その優れた特性を活かし、優れた形態安定性が要求される鉄道乗物用座席、自動車用座席、航空機用座席、船舶用座席などの乗物用座席の上張材、ソファー、クッション、椅子などのインテリア製品の上張材として特に有効であり、またそれ以外の用途、例えば衣料、靴、鞄、小物入れ、手袋などの広範な用途にも有効に用いることができる。

Claims (7)

  1. 織編物からなる層と該織編物と乾熱収縮率の異なる絡合不織布からなる層が絡合一体化された積層体を乾熱収縮処理する際に、該乾熱収縮率の低い層を構成する面側から熱風を吹き付けることを特徴とする積層体の乾熱収縮処理方法。
  2. 乾熱収縮率の高い層を構成する面側から熱風を吸引する請求項1に記載の積層体の乾熱収縮処理方法。
  3. 熱風を吹き付ける風量が1〜100cm/min・mである請求項1または2に記載の積層体の乾熱収縮処理方法。
  4. 熱風の温度が、絡合不織布および織編物を構成する高分子成分の中で最も軟化温度が低い成分に対して、軟化温度−50℃〜軟化温度+50℃である請求項1〜3いずれか1項に記載の積層体の乾熱収縮処理方法。
  5. 織編物と絡合不織布の乾熱収縮率差が5〜20%である請求項1〜4いずれか1項に記載の積層体の乾熱収縮処理方法。
  6. 下記の工程1)〜4)を含むことを特徴とする人工皮革の製造方法。
    1)織編物からなる層と、該織編物と乾熱収縮率が異なり、かつ水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分を含む複合繊維からなる絡合不織布から構成される層とを絡合一体化し積層体とする工程、
    2)該積層体の乾熱収縮率の低い層を構成する面側から熱風を吹き付けて乾熱収縮処理を行う工程、
    3)高分子弾性体を該積層体の絡合空間に付与する工程、
    4)複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分を抽出除去する工程、
  7. 請求項6に記載の工程1)において、織編物からなる層のいずれかの面側に、さらにポリウレタンシートからなる層を積層し、絡合一体化してなる人工皮革の製造方法。
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