JP2011214196A - 針穴加工付銀付調人工皮革、およびその製造方法 - Google Patents

針穴加工付銀付調人工皮革、およびその製造方法 Download PDF

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大輔 松田
Tetsuya Ashida
哲哉 芦田
Tsutomu Nagayama
励 永山
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Abstract

【課題】優れた通気性および透湿性と、高い耐摩耗性を有し、表面外観にも優れた、発熱、発汗が激しい背中に密着させる背負い鞄の背裏部に用いられる針穴加工付銀面調人工皮革、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】極細長繊維束からなるウェブの絡合構造を含む微細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる皮革様シートと、前記皮革様シートの少なくとも片面に形成された銀面層と、からなる銀付調人工皮革であって、銀面層および皮革様シートを針で貫通させて形成した長径30〜100μm、短径3〜5μmの針穴を、銀面層表面上に10〜100個/cm2有し、背負い鞄の背裏部に用いられることを特徴とする針穴加工付銀付調人工皮革、およびその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、銀付調人工皮革に関するものである。さらに詳しくは、発熱、発汗が激しい背中に密着させる背負い鞄の背裏部に用いられ、優れた通気性、透湿性、および耐磨耗性を有する針穴加工が施された針穴加工付銀付調人工皮革に関するものである。
従来、繊維質と高分子弾性体とからなる皮革様シートに銀面層を形成した銀付調人工皮革は、衣料、手袋、靴、鞄等の様々な用途で使用されている。ただ、この銀付調人工皮革は、銀面層を形成しているために物理強度は強くなるが、通気性や透湿性が低下してしまう点が問題となる。特に、発熱、発汗が激しい背中に密着させる背負い鞄の背裏部として用いる場合、銀付調人工皮革の通気性や透湿性が悪いと商品価値が低下してしまう。
特許文献1には、繊維質と高分子弾性体とからなる基体の片面に、連通多孔質ポリウレタンを形成し、その表面上に所定の開放孔を有する仕上ポリウレタン被膜を有する銀面調人工皮革が開示されている。仕上ポリウレタン被膜がその開放孔の孔壁を多い、連通多孔質ポリウレタン層まで達するように形成することで、耐摩耗性を向上させると共に、通気性、および透湿性の向上を図っている。
また、特許文献2には、0.3デシテックス以下の極細繊維を主体とする繊維からなる三次元絡合不織布とその内部に含有された多孔質状態の高分子弾性体からなる基体層、および該基体層より連なる非多孔質状態の高分子弾性体と同じく該基体層より連なる極細繊維とが混在一体化し表皮層からなる皮革様シートが開示されている。特許文献2では、自然な一体感のあるソフトな風合い、自然なシュリンク皺があり高級感を有する外観を備えつつ、優れた通気性、透湿性を有する皮革様シートを得ることを目的としている。
特許第3081405号公報 特開2002−173876号公報
しかしながら、特許文献1記載の銀面調人工皮革は、微細孔を数多く有することで、通気性と透湿性の向上を図っているが、開放孔の深さは銀面層までであり、十分な通気性および透湿性が得られているとは言い難い。また、銀面層が多孔質ポリウレタンからなるため、耐摩耗性が劣り、長期間使用すると、表面が擦れて外観が損なう傾向がある。
また、特許文献2記載の皮革様シートは、一定の通気性と透湿性を有しているが、発熱、発汗が激しい背中等に密着させる背負い鞄の背裏部に使用するためには、さらなる優れた通気性、透湿性が求められる。
本発明は、上記問題の解決を鑑みたものであり、優れた通気性および透湿性と、高い耐摩耗性を有し、表面外観にも優れた、発熱、発汗が激しい背中に密着させる背負い鞄の背裏部に用いられる針穴加工付銀面調人工皮革を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記目的を達成する針穴加工付銀付調人工皮革、およびその製造方法を見出し本発明に至った。すなわち、本発明は、下記の[1]および[2]を提供するものである。
[1]極細長繊維束からなるウェブの絡合構造を含む微細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる皮革様シートと、前記皮革様シートの少なくとも片面に形成された銀面層と、からなる銀付調人工皮革であって、銀面層および皮革様シートを針で貫通させて形成した長径30〜100μm、短径3〜5μmの針穴を、銀面層表面上に10〜100個/cm2有し、背負い鞄の背裏部に用いられることを特徴とする針穴加工付銀付調人工皮革。
[2]上記[1]に記載の銀付調人工皮革の製造方法であって、皮革様シートを得た後、前記皮革様シートの少なくとも片面に銀面層を形成して銀付調人工皮革を得、前記銀付調人工皮革に対して、MD方向に3〜10kg/4cmの張力をかけながら、針を銀付層および皮革様シートを貫通させて、長径60〜300μm、短径1〜10μmの針穴を10〜100個/cm2形成する針穴加工付銀付調人工皮革の製造方法。
本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、優れた通気性および透湿性と、高い耐摩耗性を有し、表面外観にも優れた銀付調人工皮革である。そのため、本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、発熱、発汗が激しい背中に密着させる背負い鞄の背裏部に用いても、背中に汗がつかない快適な状態を保持し、また、長期間使用することによる磨耗劣化を低減することができる。
ウェブの長さ方向に対する折り返し角度を説明するための概略図である。 形態角および絡合処理直前の形態角と加熱処理直後の形態角の差を説明するための概略図である。 走査型電子顕微鏡(1000倍)による張力を緩めた状態での実施例1によって得られた針穴加工付銀付調人工皮革の銀面層表面の針穴の写真である。 走査型電子顕微鏡(100倍)による張力を緩めた状態での実施例1によって得られた針穴加工付銀付調人工皮革の断面図の写真である。
以下、本発明について詳述する。
本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、皮革様シートと銀面層とからなる銀付調人工皮革であって、銀面層および皮革様シートを針で貫通させて形成した長径30〜100μm、短径3〜5μmの針穴を、銀面層表面上に10〜100個/cm2有する針穴加工付銀付調人工皮革であり、背負い鞄の背裏部に用いられる。
はじめに、本発明の針穴加工付銀付調人工皮革を構成する、皮革様シート、および銀面層について説明する。
[皮革様シート]
本発明で用いられる皮革様シートを構成する極細繊維は長繊維であれば特に限定されるものではない。本発明において長繊維とは、紡糸で得られた連続繊維をカットすることなくそのまま用いることを意味する。より具体的には、長繊維とは、繊維長が通常3〜80mm程度である短繊維よりも長い繊維長を有する繊維であり、短繊維のように意図的に切断されていない繊維をいう。例えば、極細化する前の長繊維の繊維長は100mm以上が好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、物理的に切れない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。本発明の効果を損なわない限り、例えば後述する絡合時のニードルパンチや、皮革様シート表面のバフィングにより一部の長繊維が切断されて短繊維になっていてもよい。
良好なハンドリング性、さらに天然皮革様の柔軟性や風合いを得るためには、本発明の皮革様シートを構成する極細長繊維の平均単繊維繊度は好ましくは0.5デシテックス以下、より好ましくは0.0001〜0.5デシテックス、さらに好ましくは0.001〜0.2デシテックスである。本発明の極細長繊維不織布は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含み、かつ、平均繊度が3デシテックス以下の極細長繊維束により形成されることが好ましい。極細長繊維の平均単繊維繊度が0.5デシテックス以下であれば、風合いが硬くなりすぎず好ましい。また、極細長繊維束の繊度が3デシテックス以下であれば、適度な伸びを有する皮革様シートが得られるため好ましい。さらに、極細長維束中の極細長繊維が5本以上であれば、皮革様シートが必要以上に伸びてしまい型崩れを起こすということがなく、70本以下であれば、適度な伸びを有する皮革様シートを得ることができるため好ましい。
このような極細長繊維束は公知の方法、例えば、相溶性を有しない2種以上のポリマーを混合して溶融して紡糸口金から吐出する混合紡糸方法、又は、該ポリマーを別々に溶融して溶融物を紡糸口金で合流させ吐出する複合紡糸方法により極細長繊維発生型繊維、いわゆる海島型繊維(複合繊維)を紡糸し、海成分を溶解又は分解除去することによって得られる。海島型繊維の島数は10〜100であるのが好ましく、海成分と島成分の質量比は10:90〜70:30であるのが好ましく、30:70〜55:45がさらに好ましい。長繊維からなるウェブを効率よく得るためには、種々の方法が採用されるが、スパンボンド法が好ましく用いられる。すなわち、紡糸口金から吐出された溶融ポリマーをエアージェットノズルのような吸引装置により2000〜5000m/分の速度で牽引細化した後、開繊させながら移動式の捕集面上に堆積させて長繊維ウェブ又は長繊維ウェブの積層体を形成する方法である。
極細長繊維は、先述した海島型繊維の島成分に相当する。島成分としては、アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が用いられ、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類等が好ましく、より好ましくはナイロン6が用いられる。また、海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリスチレン、共重合ポリエステル、熱可塑性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
スパンボンド方式によって得られた長繊維ウェブを、ウェブの長さ方向に対する折り返し角度75°以上にて所定間隔(折り返し部分の間隔)で連続的に繰り返し折り畳むことで、所望の目付けおよび所望の幅を有する複数枚のウェブからなる積重ウェブにすることが好ましい。この積重ウェブをニードルパンチ処理や高圧水流等により3次元絡合し、絡合不織布を得る。前記所定間隔は、得られる積重ウェブの幅に応じて選択される。図1に示すように、ウェブの長さ方向に対する折り返し角度3とは、折り返し前のウェブの端部1とウェブの折目2とがなす鋭角側の角度である。折り返し角度は75°以上、好ましくは78〜88°、より好ましくは80〜87°である。長繊維ウェブを上記折り返し角度で連続的に折り返して折り畳んだ積重ウェブは、絡合処理、高分子弾性体の含浸処理等の後述する諸工程を経て皮革様シートになる。本発明で用いる皮革様シートは、好適に制御されたウェブ配向角を有する長繊維ウェブの絡合構造を含む不織布と、実質的に連続した状態で前記絡合構造の空間を充填するように存在する高分子弾性体との複合構造を有することが好ましい。前記ウェブ配向角は、皮革様シート中の長繊維ウェブの折り返し角度のことである。この複合構造により、当該皮革様シートは、破断強力および破断時伸長率の縦方向と横方向との比が1に近いという特異的な特性を有する。この特異的な特性は後に詳述する。折り返し角度が75°以上であれば、得られる皮革様シートにおいて、縦方向と横方向における機械的物性の比が1に近いという特性を得ることができる。
絡合不織布の目付けには限定がないが、300〜2000g/m2が好ましい。目的の目付けを有する長繊維ウェブをネット上に直接捕集することもできるが、絡合不織布の目付けムラを小さくするために、例えば20〜50g/m2程度の長繊維ウェブを捕集し、それをクロスラップ等の方法により目的の目付けに重ね合わせる方法が好ましい。ニードルパンチ処理は、両面から同時又は交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件で行う。パンチング密度は、300〜5000パンチ/cm2の範囲が好ましく、より好ましくは500〜3500パンチ/cm2の範囲である。得られた絡合不織布には、必要に応じて加熱ロールによるプレス等によって、表面の平滑化および密度調製を行ってもよい。
絡合不織布には、好ましくは前記絡合処理に続いて高分子弾性体が含浸される。高分子弾性体を絡合不織布内部に含浸する方法としては、高分子弾性体の有機溶媒溶液又は有機溶媒分散液を含浸した後に湿式凝固させる方法が好ましく用いられる。これにより高分子弾性体は実質的に連続(島状、点状に孤立していない)した多孔構造となり、伸長後の回復力が発揮される。この高分子弾性体の含浸処理は、後述する極細化処理の後工程として実施してもよいし、必要に応じて極細化処理の前工程および後工程の2回に分けて実施してもよい。
前記高分子弾性体としては、特に限定されず、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの共重合体、シリコンゴム等が例示できるが、良好な風合が得られる点でポリウレタンが最も好ましい。ポリウレタンのソフトセグメントは、皮革様シートの用途に応じてポリエステル単位、ポリエーテル単位、ポリカーボネート単位の中から1種類又は複数種類選択される。2種以上の高分子弾性体を併用してもよく、必要に応じて、顔料、染料、凝固調節剤、安定剤等と併用してもよい。
高分子弾性体の溶液を調製するための有機溶媒としては、アセトン、メチルエチケトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられ、ポリウレタンの良溶媒で、湿式凝固性に優れる点でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が特に好ましい。絡合不織布に含浸させた高分子弾性体の溶液は、液温25〜70℃の水浴中、あるいは高分子弾性体の良溶剤と水との混合液浴中で湿式凝固するのが好ましい。このようにすることにより、実質的に連続する多孔質の凝固高分子弾性体が得られる。
皮革様シートを構成する極細長繊維と高分子弾性体との質量比は、伸長時の回復力と風合いの観点から好ましくは40/60〜70/30の範囲内であり、さらに好ましくは、50/50〜60/40の範囲内である。極細長繊維の比率が低くなりすぎると、ゴムライクな風合いとなる傾向にあり、極細長繊維の比率が高くなりすぎると、伸長後の回復力が十分に発揮できなくなる点に鑑みたとき、40/60〜70/30の範囲内が好ましい。
次に極細化処理を行い極細長繊維不織布を得る。極細化は、例えば、極細長繊維発生型繊維が海島型繊維の場合、極細繊維成分(島成分)および高分子弾性体の非溶剤であり、かつ、海成分の溶剤又は分解剤である液体を使用し、好ましくは70〜150℃で処理して、海島型繊維を極細長繊維からなる極細長繊維束に変成する。例えば高分子弾性体がポリウレタン、島成分がナイロン又はポリエチレンテレフタレート、海成分がポリエチレンである場合には、溶剤としてトルエン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等が使用される。また、極細繊維成分(島成分)がナイロン又はポリエチレンテレフタレートであり、海成分が易アルカリ分解性の変性ポリエステルである場合には、分解剤として苛性ソーダ水溶液等が使用される。このような処理により、海島型繊維から海成分が除去されて、海島型繊維が極細長繊維束に変成され、高分子弾性体が含浸された極細長繊維不織布(以下、単に極細長繊維不織布という)が得られる。
前記した3次元絡合処理の初期段階では、積重ウェブは十分に絡合されておらず、ウェブを横方向に繰り返し折り畳んだに過ぎない状態なので、工程張力によって容易に形態が変化する。従来の製造方法では、所望の絡合構造に至るまでに工程張力によって縦方向に50%以上、場合によっては100%ほども伸びてしまい、それに応じて横方向には20%以上収縮してしまう。 このようにウェブの絡合工程中の形態変化が抑制できないことから、皮革様シート中のウェブの配向角は絡合処理の段階で既に73°以上保つことは困難となる。また、前記した極細化処理は、運動の自由度が高い極細繊維および繊維束を発生させるので、皮革様シートの風合い等の商品価値を飛躍的に高める上で本発明において必須の処理工程である。その反面、絡合不織布構造が一気に弛緩する。そのため、従来の皮革様シートの製造方法では、工程張力によって絡合不織布構造が、極細化工程の前後で縦方向に10%程度かそれ以上伸ばされ、それに応じて横方向に15%以上収縮してしまう。従って、従来の製造方法では、皮革様シートの絡合不織布構造を得る上で極めて重要な絡合処理および極細化処理を経る過程において、工程張力の影響を受けることなくウェブの配向角を73°以上に保つのは極めて困難である。
しかしながら、前記した本発明の製造方法では、絡合処理および極細化処理での工程張力による形態変化が大幅に抑制されるので、皮革様シート中のウェブ配向角が73°以上、すなわち、縦方向および横方向における繊維配向状態が同様である繊維絡合構造を得ることができる。その結果、自然で天然皮革ライクな充実感とソフトな風合いを有し、縦横方向の機械的物性の差が小さく、適度な伸びにくさおよび回復力の持続性を兼ね備えた皮革様シートが得られる。本発明の皮革様シートのウェブ配向角は73°以上であり、好ましくは75°以上である。ウェブ配向角の上限は86°以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、破断強力および破断時伸長率の縦方向と横方向との比が1に近づく。
得られた極細長繊維不織布には必要に応じて繊維間の摩擦係数を制御する目的で油剤を付与する。通常は、摩擦係数を下げるための滑剤となる油剤を付与する。油剤としては、シリコン系のものが好ましく用いられる。付与方法としては、油剤の水溶液又は水分散液をディップ・ニップし強制的に極細長繊維不織布に含浸する方法、スプレー等で噴霧し浸透させる方法、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター等で極細長繊維不織布に刷り込み浸透させる方法、これらの方法の組み合わせが用いられる。付与量は、油剤固形分として最終的に得られる皮革様シートに対して0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。この範囲内であると上記特定の極細長繊維束からなるウェブの絡合構造を含む極細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる複合構造によって、適度な繊維間のすべり効果が得られ、適度な伸びと伸長後の迅速な回復が得られる。
その後、極細長繊維不織布を、スチーム乾燥機や赤外線乾燥機等の公知の方法にて加熱処理する。このとき、少なくとも横方向(TD)には所定幅に極細長繊維不織布を保持する必要がある。加熱によって極細長繊維不織布が横方向に自然に伸びる場合は、その伸びを考慮した幅に保持すればよい。このような自然の伸びの有無に関わらず、加熱処理中あるいは加熱処理後に保持する幅を徐々に広げていきながら加熱処理するのが好ましい。保持する幅以外の加熱処理条件は、前記した範囲の極細長繊維不織布であれば、通常は雰囲気温度が80〜130℃、処理時間が5〜20分間である。処理する極細長繊維不織布が湿潤状態である場合、この加熱処理はその乾燥処理を兼ねてもよい。保持する幅を広げていきながら加熱処理する場合、加熱処理のライン速度を加熱処理直前のライン速度より遅くし、いわゆるオーバーフィードすることにより、極細長繊維不織布の縦方向(MD)の自然な収縮を阻害せずに横方向に無理なく拡幅させるのが好ましい。オーバーフィードの条件は、特に限定することはないが、皮革様シートの物性および形態の縦方向および横方向の斑を解消するために、例えば、縦方向のオーバーフィード率(収縮率)は0.5〜5%が好ましく、横方向の拡幅率は1〜10%が好ましい。
上述の特異的な特性を有する皮革様シートを得るためには、加熱処理直後の形態角と、前記絡合処理直前の形態角との差の絶対値が、好ましくは18°以下、より好ましくは15°以下、さらに好ましくは0〜13°になるように加熱処理条件を設定する。絡合処理直前の形態角とは、図2に示すように、絡合処理直前に積重ウェブ表面に描いた正方形4の対角線5と横方向の辺6がなす角X(45°)のことである。正方形4はその後の工程で変形して通常は長方形になる。例えば、縦方向の張力により、正方形4は長方形7に変形する。長方形7の対角線8と横方向の辺6がなす角Yが加熱処理直後の形態角である。この場合、形態角は45°を超える。横方向に張力がかかった場合、形態角は45°未満になる。
極細繊維束に変性可能な複合繊維の絡合不織布から、織編物等の補強シートを用いないで皮革様シートを製造する従来の方法においては、工程張力、特に極細化段階での工程張力によって、縦方向に伸びることが避けられず、形態角の差の絶対値はどうしても20〜30°、あるいは目付が小さな場合には30°を超えていた。しかし、本発明では前記したように長繊維ウェブを特定の折り返し角度で折り畳んで絡合処理した上で得られた絡合不織布の内部に特定の存在状態にて高分子弾性体を含有させた複合構造としているので、形態角の差(図2のZ)の絶対値を18°以下にすることができる。さらに、皮革様シート中のウェブ配向角を73°以上の状態とすることができる。上記範囲を満足する皮革様シートは機械的物性において縦横方向の差が小さく、適度な伸びにくさおよび回復力の持続性を兼ね備える。
本発明では、このような従来にない製造方法を採用することで、得られる皮革様シートの縦方向と横方向の機械的物性(例えば、破断強力、破断時伸長率、回復力等)を同等又はその差を極めて小さくすることができる。破断強力の縦方向/横方向の比率は1/1〜1.3/1であり、縦方向および横方向の破断時伸長率はそれぞれ80%以上、好ましくは80〜150%であり、その縦方向/横方向の比率は1/1〜1/1.5である。
上記のようにして得られる本発明で用いられる皮革様シートの見掛け密度は好ましくは0.2〜0.98g/cm3、厚みは好ましくは0.25〜2.9mm、目付は好ましくは250〜1000g/m2である。極細長繊維束の周囲は実質的に連続した多孔質高分子弾性体で覆われているのが好ましい。
[銀面層]
本発明の皮革様シートの片面又は両面に造面、すなわち銀面層を形成することにより銀付調人工皮革を得ることができる。造面法としては、例えば、離型紙上に形成した高分子弾性体を主とする樹脂膜を接着剤(例えば、ポリウレタン接着剤)にて皮革様シートの表面に接着させた後、離型紙を剥離するいわゆるラミネート法、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター等で皮革様シート表面に高分子弾性体溶液を塗布して膜を形成し、エンボス等で型押しして目的の外観を形成する方法、又は、よりソフトな触感を得るために皮革様シート表面に多孔膜を形成する方法が用いられる。多孔膜は、例えば、高分子弾性体溶液を皮革様シート表面に塗布した後、ジメチルホルムアミド(DMF)水溶液又は水のみからなる凝固槽に浸漬し凝固させる方法、高分子弾性体溶液に熱膨張粒子を加え、これを塗布する方法、又は、高分子弾性体溶液を機械攪拌した後、皮革様シートに塗布することにより形成することができる。
銀面層の厚みは無孔膜の場合には10〜200μmの範囲が好ましい。上記範囲内であると、表面強度が良好であり、ソフトな風合いの銀付調皮革様シートを得ることができる。上記範囲内であると、ソフトな触感を有する銀付調人工皮革を得ることができる。また、厚ぼったくゴム感が強くなることを防ぐことができ、天然皮革様の風合いを有する銀付調人工皮革を得ることができる。
また、銀面層は、表面強度を向上させて優れた耐摩耗性を付与するために、非多孔質状態であることが好ましい。
銀面層を形成するための高分子弾性体溶液には、公知の添加物、例えば、増粘剤、硬化促進剤、増量剤、充填剤、耐光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴材、難燃剤、浸透剤、界面活性剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子化合物、染料、顔料、接着剤等を配合することができる。
銀面層および接着剤に用いられる高分子弾性体はポリウレタンが最も好適に用いられる。公知のポリウレタンを用いれば良く、適宜他の樹脂を混合しても良い。近年多くの用途で耐久性が要求されていることから、ポリエーテル系あるいはポリカーボネート系等の耐久性に優れたポリウレタンを用いることがより好ましい。ポリウレタンの硬さの目安である100%伸張時のモジュラスは10〜150kg/cm2であることが好ましい。上記範囲内であると、ポリウレタンの機械強度が充分であり柔軟性も良好であるので、ソフトな風合いを有し、不自然で粗いシワを生じることがない銀付調人工皮革が得られる。
銀面層を形成する前、又は形成した後、必要に応じて揉み処理し、柔軟性をさらに良好にし、天然皮革ライクな揉みシワを付与するのが好ましい。揉み処理は、高圧液体流染色機、ウインス、タンブラー、および機械的な揉み機等公知の手段を用いることができ、これらの手段を組み合わせてもよい。いずれの方法を用いても、柔軟性をさらに良好にし、天然皮革ライクな揉みシワの付与が可能である。銀面層を形成後さらに機械的な揉み処理を行うことにより柔軟性が良好で天然皮革並みの揉みシワを有する銀付調人工皮革を得ることができる。
[銀付調人工皮革の回復性(ストレッチ性)]
本発明で用いる銀付調人工皮革の回復性(ストレッチ性)は、縦方向および横方向の皮革様シートの破断強力がそれぞれ50kg/2.5cm以上、好ましくは50〜80kg/2.5cmのとき、8kg/2.5cmの荷重下での伸長率Aおよび荷重を除いた後の伸長率Bを用いて次のように評価した。任意の厚さ、縦方向(MD)25cm、横方向(TD)2.54cmの試料を垂直に保持し(縦方向が垂直方向になるように保持)、縦方向20cmの間隔で標線を引いた。試料の下端に、8kg/2.5cmの荷重をかけた。10分後試料の標線間の長さ(荷重下での長さ)を測定し、直ちに荷重を除いた。荷重を除いてから10分後、試料の標線間の長さ(除重状態での長さ)を測定した。(荷重下での長さ−当初の長さ)/(当初の長さ)×100により荷重下での伸長率A1を求め、(除重状態での長さ−当初の長さ)/(当初の長さ)×100により除重後の伸長率B1を求めた。本発明の皮革様シートの荷重下での伸長率A1は、好ましくは40%以下(A1≦40%)、より好ましくは16〜40%、さらに好ましくは18〜35%である。除重後の伸長率B1は、好ましくは15%以下(B1≦15%)、より好ましくは5〜15%、さらに好ましくは7〜10%である。また、伸長率A1と伸長率B1の差は、好ましくは10〜30%(10%≦A1−B1≦30%)、より好ましくは15〜25%である。上記のような伸長率を示すので、本発明で用いる銀付調人工皮革は良好な初期回復性を示す。
前記8kg/2.5cmの荷重下での伸長操作(10分間)と除重状態に保持する操作(10分間)を9回繰り返した後、再度荷重をかけて荷重下での伸長率A10を伸長率A1と同様に求めた。また、上記伸長操作/除重状態に保持する操作を10回繰り返した後、除重後の伸長率B10を伸長率B1と同様に求めた。本発明で用いる銀付調人工皮革の荷重下での伸長率A10は、好ましくは40%以下(A10≦40%)、より好ましくは17〜40%、さらに好ましくは20〜36%である。除重後の伸長率B10は、好ましくは15%以下(B10≦15%)、より好ましくは10〜15%、さらに好ましくは10〜13%である。また、伸長率A10と伸長率B10の差は、好ましくは10〜30%(10%≦A10−B10≦30%)、より好ましくは15〜25%である。上記のような伸長率を示すので、本発明で用いる銀付調人工皮革は繰り返し伸長した後においても良好な回復性を示す。
また、本発明で用いる銀付調人工皮革において、荷重下での伸長率A10とA1の差は、好ましくは9%以下(A10−A1≦9%)、より好ましくは1〜6%、さらに好ましくは2〜5%である。除重後の伸長率B10とB1の差は、4%以下(B10−B1≦4%)、より好ましくは0〜3%、さらに好ましくは1〜3%である。上記のような伸長率を示すので、本発明の銀付調人工皮革皮は繰り返し伸長した後においても適度な伸びにくさを示す。
このような条件を有する銀付調人工皮革は、適度な回復性(ストレッチ性)を有するため、後述する通り、上記の張力をかけた状態で針穴を形成した後、張力を緩めたときに、当該針穴が目視できない程度に縮まるため、銀面層表面の外観を損なうことがない。また、表面に応力がかかることで、針穴が開いて湿気を吸収し易いといった効果も得られる。
[針穴加工付銀付調人工皮革]
本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、銀付調人工皮革に対して、銀面層および皮革様シートを貫通する針穴を形成することにより得られる。用いる銀付調人工皮革は、公知の銀付調人工皮革でもよく、好ましくは上述の銀付調人工皮革である。形成された針穴は、銀付調人工皮革の厚み方向にほぼ沿って連続して貫通するように形成されるので、不連続な穴で構成される多孔質層を有する銀付調人工皮革に比べて、空気や水蒸気の通気性、透過性が非常に高い。
本発明においては、銀付調人工皮革に対して、MD方向に張力をかけながら、銀面層および皮革様シートを針で貫通させ針穴を形成させる。貫通させて針穴を形成後に、かけていた張力を緩めると、MD方向に伸びていた銀面層および皮革様シートは、その針穴をふさぐように縮まる。その結果、針穴は、目視できない程度の大きさになり、表面の外観が損なわれることがない。張力を緩めた際の針穴の大きさは、長径30〜100μmで短径3〜5μmの範囲であり、好ましくは長径30〜60μmで短径3〜5μmの範囲であり、目視ができない大きさの範囲である。
しかし、張力を緩めた際に、針穴は完全に穴を閉じたわけではなく、銀付調人工皮革の厚み方向にほぼ沿って連続して貫通した状態は保持されているため、優れた通気度および透湿度は有している。
つまり、本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、形成した針穴が目視できない程度まで縮まっているため、銀面層表面の外観を損なうことがなく、また、形成した針穴が銀面層から皮革様シートにかけて貫通した状態を保持しているため、優れた通気性と透湿性を有している。
銀付調人工皮革に対して、MD方向にかける張力の大きさとしては、3〜10kg/4cmが好ましく、5〜8kg/4cmがさらに好ましい。3kg/4cm以上であれば、張力を緩めたときに、形成した針穴の孔径が目視できない大きさまで縮み、銀面層表面の外観を損ねることがない。また、10kg/4cm以下であれば、銀付調人工皮革の最大限伸ばすことができると共に、針穴が極端に伸ばされて大きくなることを抑えることができる。
張力をかけている状態における針穴の長径は、60〜300μmの範囲であることが好ましく、90〜200μmの範囲であることがより好ましい。長径が60μm以上であれば、かけていた張力を緩めても、通気性と透湿性を十分に確保できるだけの針穴の大きさを確保することができる。また、長径が300μm以下であれば、張力を緩めた状態における針穴が、目視できない程度の大きさに縮まるため、銀面層表面の外観を損なうことがない。一方、当該針穴の短径は、張力の状態にもよるが、1〜20μmの範囲であることが好ましく、1〜10μmの範囲であることがより好ましい。
銀面層表面に形成する針穴の個数は、10〜100個/cm2であり、好ましくは10〜50個/cm2であり、さらに好ましくは10〜30個/cm2である。針穴の個数が10個/cm2以上であれば、優れた通気性と透湿性を確保できる。また、100個/cm2以下であれば、長期間の使用に耐えることができる優れた耐摩耗性を確保することができる。
上記の針穴加工は、ニードルパンチングマシーン等により針穴を形成することができ、針穴加工方法については特に限定されない。また、使用する針の針径(直径)は、適当な孔径を有する針穴を形成する観点から、50〜1000μmの範囲が好ましく、80〜800μmの範囲がさらに好ましい。
このような本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、優れた通気性および透湿性と、高い耐摩耗性を有し、表面外観にも優れているため、背負い鞄の背裏部の材料として用いた場合でも、背中に汗がつかない快適な状態を保持することができる。背負い鞄としては、背中で背負う鞄を意味し、例えば、ナップサック、リュックサック、登山用リュックサック、ランドセル等が挙げられる。これらの中でも、特に、本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、長期間使用することによる磨耗劣化を低減することができるため、ランドセルの背裏部の材料として好適である。
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部および%はことわりのない限り質量に関するものである。
各種物性は以下の方法により測定した。
(1)極細長繊維の平均単繊維繊度、極細長繊維束中の極細長繊維本数およびの極細長繊維束の繊度
皮革様シートの厚さ方向と平行な任意の断面を走査型電子顕微鏡(100〜300倍程度)で観察した。観察視野から断面に対してほぼ垂直に配向した極細長繊維束を20個、万遍なく、かつ、無作為に選び出した。次いで選び出した個々の極細長繊維束の断面を1000〜3000倍程度の倍率に拡大して、極細長繊維の断面積の平均値を求めた。該平均断面積と極細長繊維を構成するポリマーの比重から極細長繊維の平均単繊維繊度を求めた。また、同様にして、極細長繊維束中の極細長繊維の本数を求めた。
(2)極細長繊維束の繊度
上記の方法により測定した極細長繊維の断面積および極細長繊維の本数から20個の極細長繊維束の各断面積を計算により求めた。最大の断面積および最小の断面積を削除し、残った18個の断面積を算術平均した。得られた平均断面積と極細長繊維を構成するポリマーの比重から極細長繊維束の平均繊度を求めた。
(3)厚さおよび目付
それぞれ、JIS L1096:1999 8.5、JIS L1096:1999 8.10.1に規定の方法により測定した。
(4)破断強力および破断時伸長率
JIS L1096の6.12「引張り強度試験」に準じて行なった。応力−歪み曲線から破断したときの応力を読み取り、また、そのときの伸びから破断時伸長率を求めた。
(5)伸長率A1、A10、B1およびB10
上記した通りである。
(6)通気度
JIS L−1096 8.27.2に準じる。
(7)透湿度
JIS K−6549に準じる。
(8)針穴の長径、短径および穴の頻度
針穴加工付銀付調人工皮革の任意の表面を走査型電子顕微鏡にて、1000倍で撮影し、10点の穴を選び、それぞれの穴において一番長い径を10点選びその平均値を長径とし、それぞれの穴において一番長い径に対して垂直な方向で一番短い径を10点選びその平均値を短径とした。また、走査型電子顕微鏡にて、100倍で10点撮影し、1cm2当たりの平均個数により穴の頻度を求めた。
[実施例1]
ナイロン−6とポリエチレンをそれぞれ1軸押し出し機中で溶融し、複合紡糸ノズルから質量比50:50、25島の海島型複合繊維を溶融紡糸した。複合紡糸ノズルから吐出される海島型複合繊維を3500m/分の空気流で延伸しつつ捕集ネットに吹き付けることで長繊維ウェブを得た。得られた長繊維ウェブの目付けは36g/m2であり、海島型複合繊維の単繊維繊度は2デシテックスであった。この長繊維ウェブを、ウェブの長さ方向に対する折り返し角度84°にて一定間隔で連続的に繰り返し折り畳み、10枚のウェブが積み重ねられた、幅が210cmで目付けが360g/m2の積重ウェブを得た。この積重ウェブに、1バーブのフェルト針を用いて1400パンチ/cm2のニードルパンチ処理を実施した後、加熱ロール間を通過させることで熱プレス処理して、目付け416g/m2、厚み1.43mmの海島型複合繊維からなる絡合不織布を得た。次いで、絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸し、水中で多孔質状に湿式凝固させた後、海島型複合繊維の海成分(ポリエチレン)を95℃のトルエンで抽出除去して極細長繊維束に変性することで極細長繊維不織布を得た。さらに、ナイロン−6極細繊維同士の滑り性を向上させる滑剤であるシリコン系油剤の水分散液を用いて、得られる皮革様シートに対して1.8%になるように油剤を極細長繊維不織布に付与した。絡合処理直前の積重ウェブの形態角を45°としたとき、油剤付与直後の形態角は56°であった。次いで、縦方向(MD)に2%のオーバーフィード、横方向(TD)に3%の拡幅、雰囲気温度120℃の条件にて乾燥を兼ねた加熱処理を実施して皮革様シートを得た。加熱処理直後の形態角は55°であり、絡合処理直前の形態角との差の絶対値は10°であった。
この皮革様シートの片側に次の条件にてラミネート法による造面処理を行った。
離型紙:DE−123
塗布液の組成
表皮層
100部:NY−214(大日本インキ化学工業(株)製シリコン変性ポリエーテル系ポリウレタン)
30部:DUT−4790(大日精化工業(株)製黒顔料)
35部:DMF
ウェット塗布量:120g/m2
接着層
100部:UD−8310(大日精化工業(株)製ポリエーテル系ポリウレタン)
10部:D−110N(武田薬品工業(株)製架橋剤)
1.5部:QS(武田薬品工業(株)製架橋促進剤)
10部:DMF
20部:酢酸エチル
ウェット塗布量:150g/m2
造面処理後に雰囲気温度60℃の乾燥機内で48時間のキュアリング(接着層に用いたポリウレタンと架橋剤、架橋促進剤との架橋反応の促進)処理を行った。離型紙を剥がした後に機械的な揉み加工処理を行い、厚さ50μmの銀面層を有する黒色の銀付調人工皮革を得た。
得られた銀付調人工皮革の物性値は以下の通りである。( )は単位を示す。
(1)破断強力(kg/2.5cm)
縦方向=59、横方向=53、縦方向/横方向=1.11/1
(2)破断時伸長率(%)
縦方向=110、横方向=140、縦方向/横方向=1/1.27
(3)伸長率AおよびB(%)
伸長率A1=28、伸長率B1=8、A1−B1=20、伸長率A10=31、伸長率B10=11、A10−B10=20、A10−A1=3、B10−B1=3
上記の銀付調人工皮革を、MD方向に張力6kg/4cmをかけて、針径500μmの針を有するニードルパンチングマシーンを用いて、銀面層表面から銀付調人工皮革を貫通させて針穴を形成した。上記張力をかけている状態における針穴の長径は約200μm、短径は約10μmのであった。その後、張力を緩め、針穴加工付銀付調人工皮革を得た。
図3は、走査型電子顕微鏡(1000倍)による張力を緩めた状態での得られた針穴加工付銀付調人工皮革の銀面層表面の針穴の写真である。図3より、張力を緩めると、円状の穴ではなく、針穴の幅が縮んだ形である様子が観察できる。また、図4は、走査型電子顕微鏡(100倍)による張力を緩めた状態での針穴加工付銀付調人工皮革の断面図の写真である。図4から、形成した針穴は、銀面層から皮革様シートにかけて貫通した状態を保持していることがわかる。
実施例1の針穴加工付銀付調人工皮革は長径60μm、短径5μmの約21個/cm2の針穴を有し、通気度は、0.57(cc/cm2・sec)であり、透湿度は、5590(mg/cm2・24H)であった。
得られた針穴加工付銀付調人工皮革をランドセルの背裏部に用いて、ランドセルを背中で背負った状態で0.6時間歩行し維持したところ、背中に汗がつかない快適な状態であった。また、長期間の使用によっても、表面の状態に変化が見られなかった。
[比較例1]
ポリエステルと6−ナイロンが交互に隣接する分割可能な繊維を分割してなる繊維75%とレーヨン繊維25%との混合繊維からなる不織布に、ポリエステル/ポリエーテル系ポリウレタン−ジメチルホルムアミド溶液を含浸させた含浸基布の片面に、ポリウレタン−ジメチルホルムアミド溶液をコーティングしたのち、水浸凝固、水洗、乾燥して厚さ1.0mmの皮革様シートを得た。
その皮革様シート表面に、18%濃度のポリウレタン−ジメチルホルムアミド溶液を650g/m2の目付でコーティングしたのち、凝固して、厚さ280μmの銀面層を形成した。
さらに、当該銀面層表面に開放孔発現処理として、メチルエチルケトン30%、ジメチルホルムアミド70%の混合液をグラビア塗布機(120メッシュのロール使用)で塗布し、乾燥し、被膜を形成した。被膜表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、約20μmの開放孔が無数に形成されていた。前記の開放孔発現処理した基体の表面にグラビア塗布機で塗布、乾燥を2回繰り返し、次にその表面にグラビア塗布機で塗布、乾燥を2回繰り返し、さらに加熱エンボスロールで血筋調に柄付けし、銀付調人工皮革を得た。
比較例1の銀付調人工皮革の通気度は、0.14(cc/cm2・sec)であり、透湿度は、144(mg/cm2・24H)であった。
得られた銀付調人工皮革をランドセルの背裏部に用いて、ランドセルを背中で背負った状態で0.6時間歩行し維持したところ、背中に汗がつく不快な状態であった。また、銀付調人工皮革の銀面層が多孔質のため表面強度に劣っているため、長期間の使用により、表面が擦れて、表面が磨耗した状態が部分的に見られた。
[比較例2]
ナイロンとポリエチレンを50/50の量率で混合して、押出機にて島成分が6−ナイロンであって、海成分が高流動性低密度ポリエチレン(海成分/島成分比率=50/50)からなる600島の海島型断面繊維を紡糸した。得られた糸を延伸、クリンプ、カットして、3.5デシテックス、カット長51mmのステープル繊維を得た。該ステープル繊維をカードに通し、クロスラッパー方式によりウエッブとし、積層した。次に980パンチ/cm2の針刺し密度でニードルパンチして目付450g/m2の不織布を得た。この不織布を加熱後、プレスして該ポリエチレン成分を溶融固着させて不織布表面を平滑にした後に、13%のポリウレタンのDMF溶液を含浸し、そしてDMF水溶液中に浸漬してポリウレタンをスポンジ状に凝固した後、ポリエチレンを抽出除去し、単繊維0.6デシテックスの極細繊維とポリウレタンからなる皮革様シートを得た。
この皮革様シートを厚さの中間で2分割し、分割面をサンドペーパーでバフィングして厚さを0.5mmとした後、凝固時の表面をエメリーバフ機で処理して立毛面を形成し、DMFとシクロヘキサノンからなる溶剤(DMF/シクロヘキサノン=50/50)を200メッシュのグラビアロールで塗布し(DMF塗布量:約5g/m2)、150℃に加熱した毛穴形状の凹凸模様を有するロールで加圧型押した後、染色して、厚さ0.5mm、目付210g/m2の銀付調人工皮革を得た。
比較例2の銀付調人工皮革の通気度は、0.60(cc/cm2・sec)であり、透湿度は、1500(mg/cm2・24H)であった。
得られた銀付調人工皮革をランドセルの背裏部に用いて、ランドセルを背中で背負った状態で0.6時間歩行し維持したところ、背中に汗がつく不快な状態であった。また、長期間の使用により、表面が擦れて、表面が磨耗した状態が部分的に見られた。
[比較例3]
銀付調人工皮革に対して、MD方向に張力をかけずに針穴を形成した以外は、実施例1と同様な方法で針穴加工付銀付調人工皮革を得た。
比較例3の針穴加工付銀付調人工皮革の通気度は、0.14(cc/cm2・sec)であり、透湿度は、6190(mg/cm2・24H)であった。
得られた針穴加工付銀付調人工皮革の表面外観は針穴が目立ち、外観を損なうものであった。また、得られた銀付調人工皮革をランドセルの背裏部に用いて、ランドセルを背中で背負った状態で0.6時間歩行し維持したところ、背中に汗がつかない快適な状態であった。しかし、目立っていた針穴が長期間の使用により、部分的に磨耗した状態が見られた。
本発明の針穴加工付銀付調人工皮革は、優れた通気性および透湿性と、高い耐摩耗性を有し、表面外観にも優れているため、例えば、ランドセル等の背中に背負う鞄の背裏部の材料として適している。

Claims (5)

  1. 極細長繊維束からなるウェブの絡合構造を含む微細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる皮革様シートと、
    前記皮革様シートの少なくとも片面に形成された銀面層と、からなる銀付調人工皮革であって、
    銀面層および皮革様シートを針で貫通させて形成した長径30〜100μm、短径3〜5μmの針穴を、銀面層表面上に10〜100個/cm2有し、背負い鞄の背裏部に用いられることを特徴とする針穴加工付銀付調人工皮革。
  2. 前記皮革様シートが、
    (1)極細長繊維束が平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含 み、
    (2)極細長繊維束の平均繊度が3デシテックス以下であり、
    (3)極細長繊維束からなるウェブが積み重ねられており、
    (4)極細長繊維と高分子弾性体の質量比が70/30〜40/60の範囲にあり、
    (5)高分子弾性体が実質的に連続した状態で存在しており、かつ
    (6)縦方向/横方向の破断強力比が1/1〜1.3/1であり、かつ、縦方向と横方向の破断時伸長率がそれぞれ80%以上であり、その縦方向/横方向比が1/1〜1/1.5である請求項1に記載の針穴加工付銀付調人工皮革。
  3. 前記銀付調人工皮革が、下記式(1)〜(8):
    A1≦40% (1)
    B1≦15% (2)
    10%≦A1−B1≦30% (3)
    A10≦40% (4)
    B10≦15% (5)
    10%≦A10−B10≦30% (6)
    A10−A1≦9 % (7)
    B10−B1≦4 % (8)
    (式中、A1は垂直に保持した銀付調皮革様シートの下端に8kg/2.5cmの荷重をかけたとき、(荷重下での長さ−当初の長さ)/(当初の長さ)×100により求められる伸長率;B1は荷重を除いた後、(除重状態での長さ−当初の長さ)/(当初の長さ)×100により求められる伸長率;A10は、荷重/除重操作を9回繰り返した後、再度荷重をかけたとき、A1と同様にして求められる伸長率;および、B10は、荷重/除重操作を10回繰り返した後、B1と同様にして求められる伸長率である)
    を満たすストレッチ性を有する請求項1又は2に記載の針穴加工付銀付調人工皮革。
  4. 前記背負い鞄が、ランドセルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の針穴加工付銀付調人工皮革。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀付調人工皮革の製造方法であって、
    皮革様シートを得た後、
    前記皮革様シートの少なくとも片面に銀面層を形成して銀付調人工皮革を得、
    前記銀付調人工皮革に対して、MD方向に3〜10kg/4cmの張力をかけながら、針を銀付層および皮革様シートを貫通させて、長径60〜300μm、短径1〜20μmの針穴を10〜100個/cm2形成する針穴加工付銀付調人工皮革の製造方法。
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