JP2012067397A - 銀付調皮革様シート - Google Patents

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Tsutomu Nagayama
励 永山
Daisuke Matsuda
大輔 松田
Hisashi Nonaka
寿 野中
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Abstract

【課題】自然で天然皮革ライクな充実感がありソフトな風合いを有し、かつ、機械的物性の縦横方向の差が小さく、適度な伸び難さおよび持続する回復力を有し、特に製靴性が求められる靴甲材構成部材用途に適する銀付調皮革様シートを提供すること。
【解決手段】極細長繊維束からなる絡合構造を含む極細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる基体層の表面に接着剤層を介して銀付層が形成されてなる銀付調皮革様シートであって、(1)前記基体層を構成する極細長繊維不織布と高分子弾性体の質量比極細長繊維/高分子弾性体が58/42〜50/50の範囲にあり、(2)接着剤層を形成する接着剤が、接着層と基体層の界面から基体層内部へ20〜50μm侵入し硬化している、ことを特徴とする銀付調皮革様シートである。
【選択図】図4

Description

本発明は、自然で天然皮革に近い充実感があり、ソフトな風合いを有し、且つ、機械的物性の縦横方向(MDおよびTD)の差が小さく、適度な伸び難さおよび持続する回復力を有する銀付調皮革様シート、および該銀付調皮革様シートを靴の甲材に用いてなる靴に関するものである。
従来、自然で天然皮革に近い充実感がありソフトな風合いを有し、さらに機械的物性の縦横方向の差が小さく、適度な伸び難さを有する皮革様シートに関する提案がいくつかなされてきた。例えば基材の見掛密度、基材中の不織布と高分子弾性体との質量比、銀面層の厚さ、皮革様シートのMDおよびTDの20%伸長荷重(σ20)/5%伸長荷重(σ5)の比などを特定範囲にすることで、風合いが柔らかく、かつ、大きな変形力が加わった場合においても伸びすぎず、一定の伸び止め感を有する皮革様シートが得られることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、提案されている皮革様シートは短繊維の絡合不織布により形成されているために、伸長されると徐々に繊維間の絡合が緩み、回復性が低下する難点がある。従って、この皮革様シートで縫製された靴は、着用中に徐々に大きくなっていくという不都合を生じる。
また、基体層の不織布を、繊度の異なる2層(より太い極細繊維からなる層およびそれより細い極細繊維からなる層)により形成し、厚さ方向に繊度の傾斜をつけ天然皮革に近い構造にすることにより、伸びにくく天然皮革に近い風合いを再現する試みがある(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この皮革様シートもまた、短繊維からなる絡合不織布により形成されているので、伸長されると徐々に繊維間の絡合が緩み、回復性が低下する難点がある。
極細長繊維束からなる不織布構造体およびその内部に含有された高分子弾性体からなる人工皮革用基材を形成し、平滑性や接着剥離強力、膨らみ感のある風合いを兼備する銀面調人工皮革とする試みがある(例えば、特許文献3参照。)。しかし、その製造方法は極細長繊維束を極めて緻密に集合させることのみを目的としており、本発明のように縦方向と横方向の機械物性の比が1に近い皮革様シートは得られていない。
また、極細長繊維からなる不織布とその内部に含浸された高分子弾性体(以下、「PU」と称する場合がある。)とからなる皮革様シートであって、繊維とPUの質量比(70/30〜40/60)、およびPUの分布状態を制御することで、ソフトな風合いと機械物性の縦横均質性、および伸長回復力を両立できる皮革様シートおよびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この特許文献4に記載の方法より得られる皮革用シートにおいても、特に製靴性が求められる靴甲材用途に銀付調皮革シートを使用した場合、靴底との接着部や糸縫い付け部などの引張応力の掛かった部位においては、シワ欠点を生ずる場合(製靴シワ)があり、製靴作業効率の低下、靴外観品質の低下の問題があった。
特開2003−13369号公報 特開平11−140779号公報 WO2007/069628号パンフレット WO2009/028610号パンフレット
本発明の目的は、自然で天然皮革ライクな充実感がありソフトな風合いを有し、かつ、機械的物性の縦横方向の差が小さく、適度な伸び難さおよび持続する回復力を有し、特に製靴性が求められる靴甲材構成部材用途に適する銀付調皮革様シートを提供するものである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基体層を構成する極細長繊維と高分子弾性体(例:ポリウレタン)の質量比と、銀面層と不織布層を接合する接着層の基体層(不織布)側への沈込み厚さを限定することで、風合い(柔軟性)と物性(強力、引裂、伸度、回復力等)を損なうことなく、製靴後の靴甲材の表面シワを抑制することができることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕 極細長繊維束からなる絡合構造を含む極細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる基体層の表面に接着剤層を介して銀付層が形成されてなる銀付調皮革様シートであって、
(1)前記基体層を構成する極細長繊維不織布と高分子弾性体の質量比 極細長繊維/高分子弾性体が58/42〜50/50の範囲にあり、
(2)接着剤層を形成する接着剤が、接着層と基体層の界面から基体層内部へ20〜50μm侵入し硬化している、
ことを特徴とする銀付調皮革様シート、
〔2〕前記基体層の縦方向と横方向の破断強力がそれぞれ50kg/2.5cm以上、その縦方向/横方向比が1/1〜1.3/1であり、かつ、縦方向と横方向の破断時伸長率がそれぞれ80%以上、その縦方向/横方向比が1/1〜1/1.5である前記〔1〕に記載の銀付調皮革様シート、
〔3〕前記基体層のウェブ配向角が73°以上である前記〔1〕または〔2〕に記載の銀付調皮革様シート、及び
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の銀付調皮革様シートを靴の甲材に用いてなる靴、
を提供する。
本発明の銀付調皮革様シートは、風合い(柔軟性)と強力、引裂、伸度、回復力等の物性を損なうことなく、製靴後の靴甲材の表面シワを抑制することができ靴甲材の品質を向上することができ、製靴作業効率の向上及び製品歩留りの向上を計ることができる。
また、本発明の銀付調皮革様シートを靴の甲材に用いてなる靴は、製靴のための縫製時にシワの発生がないので製靴性がよく、かつ、ソフトで型崩れのない、着用感に優れた靴として、特にスポーツ靴等に好適に提供できる。
ウェブの長さ方向に対する折り返し角度(ウェブ配向角)を説明するための概略図である。 形態角および形態角の差を説明するための概略図である。 本発明の銀付調皮革様シートの断面構造を示す電子顕微鏡写真である。 図3の基体層と銀付接着層との界面の断面構造を部分的に拡大して示す電子顕微鏡写真である。 図4の界面を説明するための補助図である。 本発明の実施例1の銀付調皮革様シートによる製靴後の表面写真である。 本発明の比較例1の銀付調皮革様シートによる製靴後の表面写真である。
以下、本発明について詳述する。本発明の銀付調皮革様シートに用いられる基体層を構成する極細繊維は長繊維であれば特に限定されるものではない。本発明において長繊維とは、紡糸で得られた連続繊維をカットすることなくそのまま用いることを意味する。より具体的には、長繊維とは、繊維長が通常3〜80mm程度である短繊維よりも長い繊維長を有する繊維であり、短繊維のように意図的に切断されていない繊維をいう。例えば、極細化する前の長繊維の繊維長は100mm以上が好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、物理的に切れない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。本発明の効果を損なわない限り、例えば後述する絡合時のニードルパンチ等や、基体層表面のバフィングにより一部の長繊維が切断されて短繊維になっていてもよい。
良好なハンドリング性、さらに天然皮革様の柔軟性や風合いを得るためには、本発明の銀付調皮革様シートに用いる基体層を構成する極細長繊維の平均単繊維繊度は0.5デシテックス以下、好ましくは0.0001〜0.5デシテックス、より好ましくは0.001〜0.2デシテックスである。本発明に用いる極細長繊維不織布は、平均単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細長繊維を5〜70本含み、かつ、平均繊度が3デシテックス以下の極細長繊維束により形成される。極細長繊維の平均単繊維繊度が0.5デシテックスを超えると風合いが硬くなり好ましくない。また極細長繊維束の繊度が3デシテックスを超えると得られる皮革様シートが伸びやすくなる傾向があるため好ましくない。さらに、極細長維束中の極細長繊維が5本未満であると皮革様シートが伸びやすくなる傾向があり、70本より多くなると逆に極端に伸びにくくなる傾向がある。
このような極細長繊維束は公知の方法、例えば、相溶性を有しない2種以上のポリマーを混合して溶融して紡糸口金から吐出する混合紡糸方法、または、該ポリマーを別々に溶融して溶融物を紡糸口金で合流させ吐出する複合紡糸方法により極細長繊維発生型繊維、いわゆる海島型繊維(複合繊維)を紡糸し、海成分を溶解または分解除去することによって得られる。海島型繊維の島数は10〜100であるのが好ましく、海成分と島成分の質量比は10:90〜70:30であるのが好ましい。長繊維からなるウェブを効率よく得るためには、種々の方法が採用されるが、スパンボンド法が好ましく用いられる。すなわち、紡糸口金から吐出された溶融ポリマーをエアージェットノズルのような吸引装置により2000〜5000m/分の速度で牽引細化した後、開繊させながら移動式の捕集面上に堆積させて長繊維ウェブまたは長繊維ウェブの積層体を形成する方法である。
本発明の銀付調皮革様シートに用いる皮革用基体層を構成する極細長繊維は、先述した海島型繊維の島成分に相当する。島成分としては、アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどが用いられ、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類等が好ましく、より好ましくはナイロン6が用いられる。また海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリスチレン、共重合ポリエステル、熱可塑性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
スポンボンド方式によって得られた所定の幅の長繊維ウェブを、ウェブの長さ方向に対する折り返し角度75°以上にて所定間隔(折り返し部分の間隔)で連続的に繰り返し折り畳むことで、所望の目付けおよび所望の幅を有する複数枚のウェブからなる積重ウェブにする。この積重ウェブをニードルパンチ処理や高圧水流などにより3次元絡合し、絡合不織布を得る。前記所定間隔は、得られる積重ウェブの幅に応じて選択される。図1に示すように、ウェブの長さ方向に対する折り返し角度3とは、折り返し前のウェブの端部1とウェブの折目2とがなす鋭角側の角度である。折り返し角度は75°以上、好ましくは78〜88°、より好ましくは80〜87°である。長繊維ウェブを上記折り返し角度で連続的に折り返して折り畳んだ積重ウェブは、絡合処理、高分子弾性体の含浸処理などの諸工程を経て基体層になる。本発明の銀付調皮革様シートは、好適に制御されたウェブ配向角を有する長繊維ウェブの絡合構造を含む不織布と、実質的に連続した状態で前記絡合構造の空間を充填するように存在する高分子弾性体との複合構造からなる基体層を有する。前記ウェブ配向角は、銀付調皮革様シート中の長繊維ウェブの折り返し角度のことである。この複合構造により、本発明の銀付調皮革様シートは、破断強力および破断時伸長率の縦方向と横方向との比が1に近いという従来にない極めて特異的な特性を有する。この特異的な特性は後に詳述する。折り返し角度、すなわちウェブ配向角が75°未満だと、その後の工程張力による形態変化をどのように抑制したとしても、得られる銀付調皮革様シートにおいて、縦方向と横方向における機械的物性の比が1に近いという特性を得ることができない。
基体層を構成する絡合不織布の目付けには限定がないが、300〜2000g/m2が好ましい。目的の目付けを有する長繊維ウェブをネット上に直接捕集することもできるが、絡合不織布の目付けムラを小さくするために、例えば20〜50g/m2程度の長繊維ウェブを捕集し、それをクロスラップなどの方法により目的の目付けに重ね合わせる方法が好ましい。ニードルパンチ処理は、両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件で行う。パンチング密度は、300〜5000パンチ/cm2の範囲が好ましく、より好ましくは500〜3500パンチ/cm2の範囲である。得られた絡合不織布には、必要に応じて加熱ロールによるプレスなどによって、表面の平滑化及び密度調整を行ってもよい。
絡合不織布には、前記絡合処理に続いて高分子弾性体が含浸される。高分子弾性体を絡合不織布内部に含浸する方法としては、高分子弾性体の有機溶媒溶液または有機溶媒分散液を含浸した後に湿式凝固させる方法が好ましく用いられる。これにより高分子弾性体は実質的に連続(島状、点状に孤立していない)した多孔構造となり、伸長後の回復力が発揮される。この高分子弾性体の含浸処理は、後述する極細化処理の後工程として実施してもよいし、必要に応じて極細化処理の前工程および後工程の2回に分けて実施してもよい。
前記高分子弾性体としては、特に限定されず、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの共重合体、シリコンゴム等が例示できるが、良好な風合が得られる点でポリウレタンが最も好ましい。ポリウレタンのソフトセグメントは、皮革様シートの用途に応じてポリエステル単位、ポリエーテル単位、ポリカーボネート単位の中から1種類または複数種類選択される。2種以上の高分子弾性体を併用してもよく、必要に応じて、顔料、染料、凝固調節剤、安定剤などと併用してもよい。
高分子弾性体の溶液を調整するための有機溶媒としては、アセトン、メチルエチケトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられ、ポリウレタンの良溶媒で、湿式凝固性に優れる点でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が特に好ましい。絡合不織布に含浸させた高分子弾性体の溶液は、液温25〜70℃の水浴中、あるいは高分子弾性体の良溶剤と水との混合液浴中で湿式凝固するのが好ましい。このようにすることにより、実質的に連続する多孔質の凝固高分子弾性体が得られる。
銀付調皮革様シートに用いる基体層を構成する極細長繊維不織布と高分子弾性体との質量比は、伸長時の回復力と風合いの観点から好ましくは58/42〜42/58の範囲内であり、さらに好ましくは、54/46〜50/50の範囲内である。極細長繊維の比率が低くなりすぎると、ゴムライクな風合いとなる傾向にあるため好ましくない。極細長繊維の比率が高くなりすぎると、伸長後の回復力が十分に発揮できなくなり好ましくない。
極細長繊維不織布の極細化は、例えば、極細長繊維発生型繊維が海島型繊維の場合、極細繊維成分(島成分)および高分子弾性体の非溶剤であり、かつ、海成分の溶剤または分解剤である液体を使用し、好ましくは70〜150℃で処理して、海島型繊維を極細長繊維からなる極細長繊維束に変成する。例えば高分子弾性体がポリウレタン、島成分がナイロンまたはポリエチレンテレフタレート、海成分がポリエチレンである場合には、溶剤としてトルエン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどが使用される。また、極細繊維成分(島成分)がナイロンまたはポリエチレンテレフタレートであり、海成分が易アルカリ分解性の変性ポリエステルである場合には、分解剤として苛性ソーダ水溶液などが使用される。このような処理により、海島型繊維から海成分が除去されて、海島型繊維が極細長繊維束に変成され、高分子弾性体が含浸された極細長繊維不織布(以下、単に極細長繊維不織布という)が得られる。
絡合不織布の3次元絡合処理の初期段階では、積重ウェブは十分に絡合されておらず、ウェブを横方向に繰り返し折り畳んだに過ぎない状態なので、工程張力によって容易に形態が変化する。従来の製造方法では、所望の絡合構造に至るまでに工程張力によって縦方向に50%以上、場合によっては100%ほども伸びてしまい、それに応じて横方向には20%以上収縮してしまう。 このようにウェブの絡合工程中の形態変化が抑制できないことから、基体層中のウェブの配向角は絡合処理の段階で既に75°以上に保つことは困難となる。また、前記した極細化処理は、運動の自由度が高い極細繊維および繊維束を発生させるので、基体層の風合いなどの商品価値を飛躍的に高める上で必須の処理である。その反面、絡合不織布構造が一気に弛緩する。そのため、従来の皮革様シートの製造方法では、工程張力によって絡合不織布構造が、極細化工程の前後で縦方向に10%程度かそれ以上伸ばされ、それに応じて横方向に15%以上収縮してしまう。従って、従来の製造方法では、皮革様シートの絡合不織布構造を得る上で極めて重要な絡合処理および極細化処理を経る過程において、工程張力の影響を受けることなくウェブの配向角を73°以上に保つのは極めて困難である。
しかしながら、前記した本発明の銀付調皮革様シートに用いる基体層では、絡合処理および極細化処理での工程張力による形態変化が大幅に抑制し、皮革様シート中のウェブ配向角が73°以上、すなわち、縦方向および横方向における繊維配向状態が同様である繊維絡合構造とすることができる。その結果、自然で天然皮革ライクな充実感とソフトな風合いを有し、縦横方向の機械的物性の差が小さく、適度な伸び難さおよび回復力の持続性を兼ね備えた基体層が得られる。本発明に用いる基体層のウェブ配向角は73°以上であり、好ましくは75°以上である。ウェブ配向角の上限は86°以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、破断強力および破断時伸長率の縦方向と横方向との比が1に近づく。
得られた極細長繊維不織布には必要に応じて繊維間の摩擦係数を制御する目的で油剤を付与する。通常は、摩擦係数を下げるための滑剤となる油剤を付与する。油剤としては、シリコン系のものが好ましく用いられる。付与方法としては、油剤の水溶液または水分散液をディップ・ニップし強制的に極細長繊維不織布に含浸する方法、スプレー等で噴霧し浸透させる方法、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター等で極細長繊維不織布に刷り込み浸透させる方法、これらの方法の組み合わせが用いられる。付与量は、油剤固形分として最終的に得られる皮革様シートに対して0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。この範囲内であると上記特定の極細長繊維束からなるウェブの絡合構造を含む極細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる複合構造によって、適度な繊維間のすべり効果が得られ、適度な伸びと伸長後の迅速な回復が得られる。
その後、極細長繊維不織布を、スチーム乾燥機や赤外線乾燥機等の公知の方法にて加熱処理する。このとき、少なくとも横方向(TD)には所定幅に極細長繊維不織布を保持する必要がある。加熱によって極細長繊維不織布が横方向に自然に伸びる場合は、その伸びを考慮した幅に保持すればよい。このような自然の伸びの有無に関わらず、加熱処理中あるいは加熱処理後に保持する幅を徐々に広げていきながら加熱処理するのが好ましい。保持する幅以外の加熱処理条件は、前記した範囲の極細長繊維不織布であれば、通常は雰囲気温度が80〜130℃、処理時間が5〜20分間である。処理する極細長繊維不織布が湿潤状態である場合、この加熱処理はその乾燥処理を兼ねてもよい。保持する幅を広げていきながら加熱処理する場合、加熱処理のライン速度を加熱処理直前のライン速度より遅くし、いわゆるオーバーフィードすることにより、極細長繊維不織布の縦方向(MD)の自然な収縮を阻害せずに横方向に無理なく拡幅させるのが好ましい。オーバーフィードの条件は、特に限定することはないが、皮革様シートの物性および形態の縦方向および横方向の斑を解消するために、例えば、縦方向のオーバーフィード率(収縮率)は0.5〜5%が好ましく、横方向の拡幅率は1〜10%が好ましい。
本発明が目的とする、従来にない極めて特異的な特性を有する銀付調皮革様シートを得るためには、加熱処理直後の形態角と、前記絡合処理直前の形態角との差の絶対値が、好ましくは18°以下、より好ましくは15°以下、さらに好ましくは0〜13°になるように加熱処理条件を設定する。絡合処理直前の形態角とは、図2に示すように、絡合処理直前に積重ウェブ表面に描いた正方形4の対角線5と横方向の辺6がなす角X(45°)のことである。正方形4はその後の工程で変形して通常は長方形になる。例えば、縦方向の張力により、正方形4は長方形7に変形する。長方形7の対角線8と横方向の辺6がなす角Yが加熱処理直後の形態角である。この場合、形態角は45°を超える。横方向に張力がかかった場合、形態角は45°未満になる。
極細繊維束に変性可能な複合繊維の絡合不織布から、織編物などの補強シートを用いないで皮革様シートを製造する従来の方法においては、工程張力、特に極細化段階での工程張力によって、縦方向に伸びることが避けられず、形態角の差の絶対値はどうしても20〜30°、あるいは目付が小さな場合には30°を超えていた。しかし、本発明では前記したように長繊維ウェブを特定の折り返し角度で折り畳んで絡合処理した上で得られた絡合不織布の内部に特定の存在状態にて高分子弾性体を含有させた複合構造としているので、形態角の差(図2のZ)の絶対値を18°以下にすることができる。さらに、皮革様シート中のウェブ配向角を73°以上の状態とすることができる。上記範囲を満足する皮革様シートは機械的物性において縦横方向の差が小さく、適度な伸び難さおよび回復力の持続性を兼ね備える。
本発明では、このようなWO2009/028610号パンフレットに記載の製造方法を採用することで、得られる皮革様シートの縦方向と横方向の機械的物性(例えば、破断強力、破断時伸長率、回復力など)を同等またはその差を極めて小さくすることができる。破断強力の縦方向/横方向の比率は1/1〜1.3/1であり、縦方向および横方向の破断時伸長率はそれぞれ80%以上、好ましくは80〜150%であり、その縦方向/横方向の比率は1/1〜1/1.5である。
本発明の銀付調皮革様シートに用いる基体層の回復性は、縦方向および横方向の基体層の破断強力がそれぞれ50kg/2.5cm以上、好ましくは50〜80kg/2.5cmのとき、8kg/2.5cmの荷重下での伸長率Aおよび荷重を除いた後の伸長率Bを用いて次のように評価した。任意の厚さ、縦方向(MD)25cm、横方向(TD)2.54cmの試料を垂直に保持し(縦方向が垂直方向になるように保持)、縦方向20cmの間隔で標線を引いた。試料の下端に、8kg/2.5cmの荷重をかけた。10分後試料の標線間の長さ(荷重下での長さ)を測定し、直ちに荷重を除いた。荷重を除いてから10分後、試料の標線間の長さ(除重状態での長さ)を測定した。(荷重下での長さ−当初の長さ)/(当初の長さ)×100により荷重下での伸長率A1を求め、(除重状態での長さ−当初の長さ)/(当初の長さ)×100により除重後の伸長率B1を求めた。本発明の銀付調皮革様シートに用いる基体層の荷重下での伸長率A1は、好ましくは40%以下(A1≦40%)、より好ましくは16〜40%、さらに好ましくは18〜35%である。除重後の伸長率B1は、好ましくは15%以下(B1≦15%)、より好ましくは5〜15%、さらに好ましくは7〜10%である。また、伸長率A1と伸長率B1の差は、好ましくは10〜30%(10%≦A1−B1≦30%)、より好ましくは15〜25%である。上記のような伸長率を示すので、本発明の銀付調皮革様シートに用いる基体層は良好な初期回復性を示し、よって銀付調皮革様シートも良好な回復性を示す。
前記8kg/2.5cmの荷重下での伸長操作(10分間)と除重状態に保持する操作(10分間)を9回繰り返した後、再度荷重をかけて荷重下での伸長率A10を伸長率A1と同様に求めた。また、上記伸長操作/除重状態に保持する操作を10回繰り返した後、除重後の伸長率B10を伸長率B1と同様に求めた。本発明に用いる基体層の荷重下での伸長率A10は、好ましくは40%以下(A10≦40%)、より好ましくは17〜40%、さらに好ましくは20〜36%である。除重後の伸長率B10は、好ましくは15%以下(B10≦15%)、より好ましくは10〜15%、さらに好ましくは10〜13%である。また、伸長率A10と伸長率B10の差は、好ましくは10〜30%(10%≦A10−B10≦30%)、より好ましくは15〜25%である。上記のような伸長率を示すので、本発明に用いる基体層は繰り返し伸長した後においても良好な回復性を示す。
また、本発明に用いる基体層において、荷重下での伸長率A10とA1の差は、好ましくは9%以下(A10−A1≦9%)、より好ましくは1〜6%、さらに好ましくは2〜5%である。除重後の伸長率B10とB1の差は、4%以下(B10−B1≦4%)、より好ましくは0〜3%、さらに好ましくは1〜3%である。上記のような伸長率を示すので、本発明に用いる基体層は繰り返し伸長した後においても適度な伸び難さを示す。
上記のようにして得られる本発明に用いる基体層の見掛け密度は好ましくは0.2〜0.98g/cm3、厚みは好ましくは0.25〜2.9mm、目付は好ましくは250〜1000g/m2である。極細長繊維束の周囲は実質的に連続した多孔質高分子弾性体で覆われているのが好ましい。
本発明では、基体層の片面または両面に造面、即ち銀面層を形成することにより銀付調皮革様シートを得ることができる。造面法としては、例えば、離型紙上に形成した高分子弾性体を主とする樹脂膜を接着剤(例えば、ポリウレタン接着剤)にて基体層の表面に接着させた後、離型紙を剥離するいわゆるラミネート法、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター等で皮革様シート表面に高分子弾性体溶液を塗布して膜を形成し、エンボス等で型押しして目的の外観を形成する方法、または、よりソフトな触感を得るために基体層表面に多孔膜を形成する方法が用いられる。多孔膜は、例えば、高分子弾性体溶液を基体層表面に塗布した後、ジメチルホルムアミド(DMF)水溶液又は水のみからなる凝固槽に浸漬し凝固させる方法、高分子弾性体溶液に熱膨張粒子を加え、これを塗布する方法、または、高分子弾性体溶液を機械攪拌した後、基体層に塗布することにより形成することができる。発泡率や発泡状態は、例えば、高分子弾性体溶液の濃度、凝固液中のDMF濃度および凝固液温度などの湿式凝固条件、熱膨張粒子の添加量、高分子弾性体溶液の攪拌条件等を適宜選択することによって調節することができる。
銀面層の厚みは無孔膜の場合には10〜200μmの範囲が好ましい。上記範囲内であると、表面強度が良好であり、ソフトな風合いの銀付調皮革様シートを得ることができる。多孔膜の場合は、50〜300μmの範囲が好ましい。上記範囲内であると、ソフトな触感を有する銀付調皮革様シートを得ることができる。また、厚ぼったくゴム感が強くなることを防ぐことができ、天然皮革様の風合いを有する銀付調皮革様シートを得ることができる。
銀面層を形成するための高分子弾性体溶液には、公知の添加物、例えば、増粘剤、硬化促進剤、増量剤、充填剤、耐光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴材、難燃剤、浸透剤、界面活性剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料、接着剤等を配合することができる。
銀面層および接着剤に用いられる高分子弾性体はポリウレタンが最も好適に用いられる。公知のポリウレタンを用いれば良く、適宜他の樹脂を混合しても良い。近年多くの用途で耐久性が要求されていることから、ポリエーテル系あるいはポリカーボネート系などの耐久性に優れたポリウレタンを用いることがより好ましい。ポリウレタンの硬さの目安である100%伸張時のモジュラスは10〜150kg/cm2であることが好ましい。上記範囲内であると、ポリウレタンの機械強度が充分であり柔軟性も良好であるので、ソフトな風合いを有し、不自然で粗いシワを生じることがない銀付調皮革用シートが得られる。
銀付(接着層を含む)層と基体層を接着する接着剤が、接着層と基体層の界面から基体層内部へ20〜50μm侵入し硬化している(以下、この侵入している厚みを「侵入硬化厚み」という。)ようにするには、接着剤のウェット塗布量(g/m2)と、半乾燥炉の設定温度および処理時間を調整することにより達成できる。すなわち、接着剤の侵入硬化厚みは、従来から風合いや剥離強力の改善を目的に調整していた。そして、剥離強力はその厚みが15μmを超えると高止まりとなることから、概ね15μmとしていたが、本発明では、更に接着剤の侵入硬化厚みを20〜50μmに増やすことによって、初めて製靴シワの改善を計ることができる。風合い、製靴シワの抑制効果と剥離強力を同時に満足するために、25〜45μmが好ましく、30〜40μmがより好ましい。
なお、本発明において、接着層と基体層の界面とは、基体層の表面層と接着剤の接触面である。
銀面層を形成する前、または形成した後、必要に応じて揉み処理し、柔軟性をさらに良好にし、天然皮革ライクな揉みシワを付与するのが好ましい。揉み処理は、高圧液体流染色機、ウインス、タンブラー、および機械的な揉み機等公知の手段を用いることができ、これらの手段を組み合わせてもよい。いずれの方法を用いても、柔軟性をさらに良好にし、天然皮革ライクな揉みシワの付与が可能である。銀面層を形成後さらに機械的な揉み処理を行うことにより柔軟性が良好で天然皮革並みの揉みシワを有する銀付調皮革様シートを得ることができる。
上記のようにして得られる銀付調皮革様シートは、それを構成する基体層とほぼ同等の機械的物性(破断強力、破断時伸長率、伸長率A1、A10、B1、B10)を示す。
また、本発明は、前述の本発明の銀付調皮革様シートを靴の甲材に用いてなる靴をも提供する。すなわち、本発明の銀付調皮革様シートは、自然で天然皮革に近い充実感がありソフトな風合いを有する皮革様シートなので、縦横方向の差がなく、適度な伸び難さ、回復力を有し、かつ、製靴のための縫製時にシワが発生しないので製靴性が良く、スポーツ靴等の靴甲材構成部材等に好適に利用でき、それから得られる靴は、ソフトで型崩れのない、着用感に優れた靴として提供できる。
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
各種物性は以下の方法により測定した。
(1)極細長繊維の平均単繊維繊度、極細長繊維束中の極細長繊維本数およびの極細長繊維束の繊度
皮革様シートの厚さ方向と平行な任意の断面を走査型電子顕微鏡(100〜300倍程度)で観察した。観察視野から断面に対してほぼ垂直に配向した極細長繊維束を20個、万遍なく、かつ、無作為に選び出した。次いで選び出した個々の極細長繊維束の断面を1000〜3000倍程度の倍率に拡大して、極細長繊維の断面積の平均値を求めた。該平均断面積と極細長繊維を構成するポリマーの比重から極細長繊維の平均単繊維繊度を求めた。また同様にして、極細長繊維束中の極細長繊維の本数を求めた。
(2)極細長繊維束の繊度
上記の方法により測定した極細長繊維の断面積および極細長繊維の本数から20個の極細長繊維束の各断面積を計算により求めた。最大の断面積および最小の断面積を削除し、残った18個の断面積を算術平均した。得られた平均断面積と極細長繊維を構成するポリマーの比重から極細長繊維束の平均繊度を求めた。
(3)厚さおよび目付
それぞれ、JIS L1096:1999 8.5、JIS L1096:1999 8.10.1に規定の方法により測定した。
(4)破断強力および破断時伸長率
JIS L1096の6.12「引張り強度試験」に準じて行なった。応力−歪み曲線から破断したときの応力を読み取り、また、そのときの伸びから破断時伸長率を求めた。
(5)伸長率A1、A10、B1およびB10
段落〔0028〕及び段落〔0029〕に記載の方法で測定した。
基体層1の作製
ナイロン−6とポリエチレンをそれぞれ1軸押し出し機中で溶融し、複合紡糸ノズルから質量比50:50、25島の海島型複合繊維を溶融紡糸した。複合紡糸ノズルから吐出される海島型複合繊維を3500m/分の空気流で延伸しつつ捕集ネットに吹き付けることで長繊維ウェブを得た。得られた長繊維ウェブの目付けは31g/m2であり、海島型複合繊維の単繊維繊度は2デシテックスであった。この長繊維ウェブを、ウェブの長さ方向に対する折り返し角度82°にて一定間隔で連続的に繰り返し折り畳み、12枚のウェブが積み重ねられた、幅が210cmで目付けが360g/m2の積重ウェブを得た。この積重ウェブに、1バーブのフェルト針を用いて1400パンチ/cm2のニードルパンチ処理を実施した後、加熱ロール間を通過させることで熱プレス処理して、目付け416g/m2、厚み1.6mm、比重260g/m2の海島型複合繊維からなる絡合不織布を得た。次いで、絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸し、水中で多孔質状に湿式凝固させた後、海島型複合繊維の海成分(ポリエチレン)を95℃のトルエンで抽出除去して極細長繊維束に変性することで極細長繊維不織布を得た。さらに、ナイロン−6極細繊維同士の滑り性を向上させる滑剤であるシリコン系油剤の水分散液を用いて、得られる皮革様シートに対して1.8%になるように油剤を極細長繊維不織布に付与した。絡合処理直前の積重ウェブの形態角を45°としたとき、油剤付与直後の形態角は56°であった。次いで、縦方向(MD)に2%のオーバーフィード、横方向(TD)に3%の拡幅、雰囲気温度120℃の条件にて乾燥を兼ねた加熱処理を実施して基体層1を得た。加熱処理直後の形態角は55°であり、絡合処理直前の形態角との差の絶対値は10°であった。得られた基体層1の物性測定結果を表1に示す。
実施例1および比較例1、2
この基体層の片側に次の条件にてラミネート法による造面処理を行い、接着剤の、接着層と基体層の界面から基体層内部への侵入硬化厚みの異なる実施例1及び比較例1,2の銀付調皮革様シートを得た。
離型紙:DE−123
塗布液の組成
表皮層
100部:ME−1085(大日精化工業(株)製ポリエーテル系ポリウレタン)
30部:DUT−4790(大日精化工業(株)製黒顔料)
45部:DMF
30部:MEK
ウェット塗布量:130g/m2
接着層
100部:UD−8310(大日精化工業(株)製ポリエーテル系ポリウレタン)
10部:D−110N(武田薬品工業(株)製架橋剤)
14部:NE−CLA(武田薬品工業(株)製架橋促進剤)
6部:DMF
35部:酢酸エチル
ウェット塗布量:150g/m2(実施例1)、130g/m2(比較例1)80g/m2(比較例2)
接着剤の基体層内部への侵入硬化厚み(接着剤沈み込み量)は、上記のウェット塗布量と、半乾燥炉の設定温度および処理時間により調製した。すなわち、実施例1では、接着剤の侵入硬化厚みを35μmとすべく、ウェット塗布量を150g/m2として、75℃に設定された半乾燥炉中で2分間処理し、比較例1では、侵入硬化厚みを10μmとすべく、ウェット塗布量を130g/m2として85℃に設定された半乾燥炉中で2分間処理し、比較例2では、侵入硬化厚みを60μmとすべくウェット塗布量を180g/m2として65℃に設定された半乾燥炉中で2分間処理した。
造面処理後に雰囲気温度60℃の乾燥機内で48時間のキュアリング(接着層に用いたポリウレタンと架橋剤、架橋促進剤との架橋反応の促進)処理を行った。離型紙を剥がした後に機械的な揉み加工処理を行い、総厚み100μmの銀面層を有する黒色の銀付調皮革様シートを得た。得られた銀付調皮革様シートの物性測定結果を表2に示す。
得られた実施例1の銀付調皮革様シートは、ソフトな風合いで伸びにくく、かつ回復性が良く、天然皮革調の風合いをもち、製靴性も良く(シワ発生せず)スポーツ靴等の用途に好適な銀付調皮革様シートであった。
一方、比較例1の銀付調皮革様シートは、製靴シワが発生し、比較例2の銀付調皮革様シートは問題となるほどの製靴シワは発生しないが、風合いが硬く、総合評価では「×」であった。
基体層2の作製
基体層1の製造において、長繊維ウェブの目付けを33g/m2とし、加熱ロールのプレス圧力を変えて、目付け421g/m2、厚み1.45mm、比重290g/m2の海島型複合繊維からなる絡合不織布を得た後、絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸し、水中で多孔質状に湿式凝固させた後、海島型複合繊維の海成分(ポリエチレン)を95℃のトルエンで抽出除去して極細長繊維束に変性することで極細長繊維不織布を得た。さらに、ナイロン−6極細繊維同士の滑り性を向上させる滑剤であるシリコン系油剤の水分散液を用いて、得られる皮革様シートに対して1.8%になるように油剤を極細長繊維不織布に付与した。絡合処理直前の積重ウェブの形態角を45°としたとき、油剤付与直後の形態角は56°であった。次いで、縦方向(MD)に2%のオーバーフィード、横方向(TD)に3%の拡幅、雰囲気温度120℃の条件にて乾燥を兼ねた加熱処理を実施して基体層2を得た。加熱処理直後の形態角は55°であり、絡合処理直前の形態角との差の絶対値は10°であった。
得られた基体層2の物性測定結果を表1に示す。
実施例2および比較例3、4
基体層2を用いた他は、実施例1と同様にして実施例2、比較例1と同様にして比較例3、比較例2と同様にして比較例4の、接着剤の基体層内部への侵入硬化厚みの異なる総厚み100μmの銀面層を有する黒色の銀付調皮革様シートを得た。
得られた実施例2、比較例3,4の銀付調皮革様シートの物性測定結果を表2に示す。
得られた実施例2の銀付調皮革様シートは、ソフトな風合いで伸びにくく、かつ回復性が良く、天然皮革調の風合いをもち、問題となるほどの製靴シワは発生せず、スポーツ靴等の用途に使用可能な銀付調皮革様シートであった。
一方、比較例3の銀付調皮革様シートは、製靴シワが発生し、比較例4の銀付調皮革様シートは問題となるほどの製靴シワは発生しないが、風合いが硬く、いずれも総合評価では「×」であった。
基体層3の作製
基体層1の製造において、長繊維ウェブの目付けを29g/m2とし、加熱ロールのプレス圧力を変えて、目付け396g/m2、厚み1.8mm、比重220g/m2海島型複合繊維からなる絡合不織布を得た後、絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸し、水中で多孔質状に湿式凝固させた後、海島型複合繊維の海成分(ポリエチレン)を95℃のトルエンで抽出除去して極細長繊維束に変性することで極細長繊維不織布を得た。さらに、ナイロン−6極細繊維同士の滑り性を向上させる滑剤であるシリコン系油剤の水分散液を用いて、得られる皮革様シートに対して1.8%になるように油剤を極細長繊維不織布に付与した。絡合処理直前の積重ウェブの形態角を45°としたとき、油剤付与直後の形態角は56°であった。次いで、縦方向(MD)に2%のオーバーフィード、横方向(TD)に3%の拡幅、雰囲気温度120℃の条件にて乾燥を兼ねた加熱処理を実施して基体層3を得た。加熱処理直後の形態角は55°であり、絡合処理直前の形態角との差の絶対値は10°であった。
得られた基体層3の物性測定結果を表1に示す。
比較例5
この基体層3の片側に次の条件にてラミネート法による造面処理を行い、接着剤の基体層内部への侵入硬化厚みが35μmの銀付調皮革様シートを得た。
得られた比較例5の銀付調皮革様シートの物性測定結果を表2に示した。
比較例5の銀付調皮革様シートは、製靴シワは発生しないが、引裂物性および回復力に劣り、風合いがゴム的で、総合評価が「×」であった。
本発明で得られた銀付調皮革様シートは、自然で天然皮革に近い充実感がありソフトな風合いを有する皮革様シートであって、縦横方向の差がなく適度な伸び難さ、回復力を有し、かつ、製靴のための縫製時にシワが発生しないので製靴性が良く、スポーツ靴等の靴甲材構成部材等に好適に利用できる。
また、本発明の銀付調皮革様シートを靴の甲材に用いてなる靴は、製靴のための縫製時にシワの発生がないので製靴性がよく、かつ、ソフトで型崩れのない、着用感に優れた靴として、特にスポーツ靴等に好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 極細長繊維束からなる絡合構造を含む極細長繊維不織布とその内部に含浸された高分子弾性体とからなる基体層の表面に接着剤層を介して銀付層が形成されてなる銀付調皮革様シートであって、
    (1)前記基体層を構成する極細長繊維不織布と高分子弾性体の質量比 極細長繊維/高分子弾性体が58/42〜50/50の範囲にあり、
    (2)接着剤層を形成する接着剤が、接着層と基体層の界面から基体層内部へ20〜50μm侵入し硬化している、
    ことを特徴とする銀付調皮革様シート。
  2. 前記基体層の縦方向と横方向の破断強力がそれぞれ50kg/2.5cm以上、その縦方向/横方向比が1/1〜1.3/1であり、かつ、縦方向と横方向の破断時伸長率がそれぞれ80%以上、その縦方向/横方向比が1/1〜1/1.5である請求項1に記載の銀付調皮革様シート。
  3. 前記基体層のウェブ配向角が73°以上である請求項1または2に記載の銀付調皮革様シート。
  4. 前記請求項1〜3のいずれかに記載の銀付調皮革様シートを靴の甲材に用いてなる靴。
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