JP2004068162A - 皮革様シート基材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】カード処理、ニードルパンチ処理後においても繊維の長手方向に剥離、割繊することのなく、その後の熱水浴中の処理において割繊することが可能な接合型複合ステープル繊維と高分子弾性体からなる風合いの優れた皮革様シートの製造方法を提供する。
【構成】A層およびB層が相互に5層以上接合してなる接合型複合繊維の接合部を剥離し割繊極細化して得られる繊維絡合不織布と高分子弾性体からなる皮革様シート基材において、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足することを特徴とする皮革様シート基材。
【選択図】 なし
【構成】A層およびB層が相互に5層以上接合してなる接合型複合繊維の接合部を剥離し割繊極細化して得られる繊維絡合不織布と高分子弾性体からなる皮革様シート基材において、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足することを特徴とする皮革様シート基材。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮革様シート基材の製造方法および得られる皮革様シート基材に関する。さらに詳しくは、本発明は、有機溶剤やアルカリ水溶液を使用することなく、極細繊維化することが可能で、カード処理、ニードルパンチ処理後においても繊維の長手方向に剥離、割繊することのない接合型複合繊維を分割極細化した繊維と高分子弾性体からなる皮革様シート基材およびその製造方法に関する。
【0002】
単繊維が0.1デシテックス以下の極細繊維を製造するには、直接紡糸では糸切れが起こり易くなるために細さに限界があり、複合紡糸方法が従来から用いられている。複合紡糸方法で得られる複合紡糸繊維は、繊維断面の状態で大別すると、▲1▼2成分が高度に分割相互配列した接合型(多層張り合わせ型や花弁型など)と、▲2▼1成分が他成分中に高度に分散した海島型とがある。▲2▼の海島型繊維の場合、その海成分を除去することにより0.01デニール以下の極細繊維を得ることができるが、海成分を除去するためには、例えば海成分がポリエチレンやポリスチレンなどの場合にはトルエンやパークレンなどの有機溶剤を使用する必要があり、アルカリ易溶性の変性ポリエチレンテレフタレートなどの場合には高濃度のアルカリ液を使用する必要がある。近年、環境面からこのような有機溶剤の使用や高濃度アルカリ液およびその中和廃液などの削減が求められている。
【0003】
また除去された海成分は再利用しにくいため、廃棄物量の増加は避けられず、エコロジーの観点から、1成分の除去が不要となる▲1▼の接合型繊維から極細繊維を得ることが好ましい。このような接合型の複合繊維においてはその成分相互の剥離によって鋭い縁のある繊維や、極細繊維が形成され、その剥離方法または分割方法には、特開昭54−96181号公報に見られるように、▲1▼ベンジルアルコールのような薬液の入った液で1成分を膨潤させて、その力で相互に分離させる方法や、特公昭53−10170号公報や特開平2−169722号公報、さらに特開平9−217233号公報に見られるように、▲2▼物理的な力、すなわち、擦過したり、もんだり、バフィング等で表面を処理したり、ウォータージェット流を噴射するなどして、強制的に分離させる方法、▲3▼低濃度のアルカリ液で、少し溶かして相互に分離する方法を挙げることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような繊維から皮革様シートを製造する場合、割繊処理は不織布を製造した後、または不織布を製造し高分子弾性体を付与した後に行い、その結果、柔軟で優れた風合いを有する皮革様シートを得ることができるが、それ以前の不織布化の工程で割繊が生じると工程通過性、収率が著しく悪化し、得られる不織布も不均一で風合いが著しく劣る。具体的には不織布を製造する際に、カードを使用すると、接合型複合繊維の成分の剥離が起き、繊維が細化され、ネップが発生し、これが詰まることで紡出速度を著しく低下させなければならない必要が生じたり、カード装置中に蓄積して安定な紡出ができなくなる。また、繊維を交絡するためにニードルパンチを使用すると、損傷により剥離が起き、単繊維が交絡されにくく、不織布の剥離強度が上がらないといった問題点が生ずる。
【0005】
しかし、一方でこのような工程通過性の悪化を引き起こさないために、繊維を構成する2成分の接着性を高める方法もあるが、この方法の場合には、不織布化に問題を生じないものの、後工程としてこの後に前述の割繊処理を行っても全く割繊しなかったり、ごく一部しか割繊しなかったり、全てを割繊するために非常に強い物理的な力を要したり、極めて長時間の処理を要したり、高濃度のアルカリ液を使用したりする必要が生じるので好ましい方法ではない。
【0006】
そこで、もうひとつの方法として2成分中の片方の成分によりもう片方の成分を被覆する方法が最近提案されている。このような例として、特開2000−129538号公報には、1成分によりもう1成分を被覆する8分割以上の花弁型の断面構造を有する複合繊維が記載されているが、花弁型の場合は中心部分へ向かうにつれて2成分間の間隔が狭くなり、さらに中心部分では実質的に1成分が繋がっているなどから見かけの層の数まで完全に割繊することは困難であり、このような繊維から得られる不織布からなる皮革様シートの風合いは従来の極細繊維からなる不織布から得られる皮革様シートに比べて劣るものである。
【0007】
さらに、上述のごとく2成分の割繊方法として▲1▼ベンジルアルコールのような薬液の入った液で1成分を膨潤させて、その力で相互に分離させる方法、▲2▼物理的な力、すなわち、擦過したり、もんだり、バフィング等で表面を処理したり、ウォータージェット流を噴射するなどして、強制的に分離させる方法、▲3▼低濃度のアルカリ液で、少し溶かして相互に分離する方法を挙げたが、▲1▼の方法においては、有機溶剤を膨潤剤として使用しているためエコロジーの観点で問題になること、▲2▼の方法においては、スポーツシューズなどに使用される厚み1.0〜2.0mm程度の厚みを有する皮革様シート基材を製造する場合に繊維成分の剥離または分割が、特に中心部へ向かうほど進行しないため、風合いの点で劣ること、▲3▼の方法においては、高濃度アルカリ液を用いた抽出処理に比べて、圧倒的に少量ではあるが、アルカリ液を使用するため危険物の取り扱いおよび廃棄処分に問題があることなど、それぞれ固有の問題点を有しているのが現状である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、カード処理、ニードルパンチ処理後においても繊維の長手方向に実質的に剥離、割繊することがなく不織布化でき、かつ、この後の割繊処理においては、有機溶剤やアルカリ性水溶液を使用することなく、実質的に従来のリラックス加工処理に用いられる程度の物理的な力によって速やかに割繊できる接合型複合ステープル繊維を使用することにより環境への負荷が少ない極細繊維からなる風合いの優れた皮革様シートを得ることを課題とし、鋭意検討した結果、以下に述べる方法を用いることによって上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、A層およびB層が相互に5層以上接合してなる接合型複合繊維の接合部を剥離し割繊極細化して得られる繊維絡合不織布と高分子弾性体からなる皮革様シート基材において、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足することを特徴とする皮革様シート基材である。そして、好ましくは樹脂(b)がB層を構成する樹脂である皮革様シート基材である。
また、下記の工程▲1▼▲2▼▲3▼または▲1▼▲3▼▲2▼の順序で行うことを特徴とする皮革様シート基材の製造方法。
▲1▼A層およびB層が相互に5層以上接合し、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足する接合型複合繊維より不織布を製造する工程、
▲2▼不織布に高分子弾性体を付与する工程、
▲3▼A層とB層を80〜160℃の熱水で割繊する工程、
そして、好ましくは液流染色機を用いてA層とB層を割繊する皮革様シート基材の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる接合型複合繊維は、これを構成するA層、B層の繰り返しからなる多層張り合わせ型の横断面構造を有し、A層がポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)の混合成分からなり、かつ該A層中の混合成分の質量比は(a)/(b)=25/75〜75/25の範囲内にあることが重要である。また、好ましくは40/60〜60/40の範囲である。A層中の(a)/(b)の質量比において、(b)の比率が75を越す場合は、ポリオレフィン系樹脂が分散相(島)状態、B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が連続相(海)状態になる。このためA層とB層の接合面において接合力が強く接合型複合繊維は熱水中で容易に割繊できない。
またA層中において(b)の比率が25未満の場合は、ポリオレフィン系樹脂が連続相(海)状態、B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が分散相(島)状態になるため、A層とB層の接合面においてポリオレフィン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂との接触となるため、接合力が弱くカードを通過さすための捲縮工程、カード工程、および絡合処理工程で接合型繊維の層の剥離が起き、繊維が極細化され、ネップが発生し、これが詰まることで、安定な紡出が出来なくなる。
【0011】
本発明の特徴は、捲縮、カード、絡合処理工程において、繊維の層間剥離が起こらず、かつ簡単な熱水処理で割繊出来うる接合型複合繊維にある。これは、該複合繊維をA層(ポリオレフィン系樹脂+B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂)とB層(B層構成樹脂)とし、さらにA層には一般ポリマーと接着性の悪いポリオレフィン系樹脂と、B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂、好ましくはB層と最も接着性の強いB層を構成する樹脂のチップブレンドしたものを使用しかつ、A層が明確な海島構造をとらない状態にする。
すなわちA層中は、B層(B層構成樹脂)と接着力の強いB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が分散相(島)である部分や、連続相(海)である部分が混在した状態とする。いいかえればA層はポリオレフィン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂の双方の樹脂が互いに分散層(島)および連続相(海)の状態をもついわゆる二重海島構造の層とする必要がある。この構造にすることにより、A層内部の側面にB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が部分的に存在する構造となる。A層とB層が接した面において、A層中の側面部分のB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂とB層中の側面部分のB層構成樹脂との部分的な接着が起こることで、カード工程等でA層、B層間の剥離が起こらない強さにコントロールすることができる。
【0012】
前述の二重海島構造をもつA層は、混合される樹脂の混合比率および溶融粘度比を変化させることによって得られる。たとえばナイロンとポリフ゜ロピレンの混合系でそれぞれ溶融粘度を紡糸時の糸曳性の良好な、その紡糸温度におけるMFR(g/10分・荷重350g・孔径2mm)で8〜60の範囲内で一定にして、混合組成を質量比でナイロン/ポリフ゜ロピレンを50/50から35/65変化させるとナイロンが均一な連続相(海)状態から分散相(島)状態に相反転する。すなわちナイロン組成を50〜35%の間にすることによってナイロンが分散相である部分や連続相である部分が混在する二重海島構造となる傾向がある。また、ナイロンとポリプロピレンの混合系において混合比率を質量比で50/50の一定とし、ナイロンの溶融粘度がポリプロピレンより高い場合にはナイロンが分散相(島)状態となる傾向があり、また通常、MERを測定してポリプロピレン樹脂を選択し溶融粘度をナイロンの2倍以上とする場合には、ナイロンが分散相(島)状態である部分や連続相(海)状態である部分が混在する二重海島構造となる傾向がある。
以上のことから、目的、ポリマー種により適宜、混合比率、溶融粘度を組み合わせることによりA層中にポリオレフィン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂を互いに連続相および分散相として混在させることが可能となり、A層をいわゆる二重海島構造とすることができる。
【0013】
A層とB層の組み合わせとして、ポリプロピレン(PPと略すこともある)/高密度ポリエチレン(HDPEと略すこともある)等のオレフィン/オレフィンの組み合わせ、あるいは、ナイロン6(NY6と略すこともある)/ナイロン12/(NY12と略すこともある)等のポリアミド/ポリアミドの組み合わせからなる接合型複合繊維は、ポリマーの相溶性が良いため層間の接着性が良く、カード工程で層間の剥離は起こりにくいが、分割性に劣る。
また、従来のポリエステル/ポリアミドの組み合わせでは、層間の接着力が弱く分割性には、優れていいるが、その利点がカード工程での層間剥離につながり、接合型分割繊維の層間で剥離が起き易く、繊維が極細化され、ネップが発生し、これが詰まることで、安定な紡出が出来なくなる。このためポリエステル/ポリアミドの組み合わせの接合型分割繊維においては、カードを通過させるため繊維の周辺を薄いポリエステル皮膜で覆う等の複雑な紡糸ノズルが必要となる。
【0014】
本発明では、A層とB層の繰り返しからなる複合分割型ノズルで、A層にB層と同質の相溶性の良いポリマーと相溶性の悪いポリマーをブレンドし、A層側面に前述した様に混合するポリマー種により、組成比、粘度比を変えることで、B層に相溶性の良いポリマーと悪いポリマーが存在するニ重海島構造にする。
A層とB層の層間剥離の強さは、使用ポリマー種により変るため、組成比、粘度比等を変えて、その接合型複合繊維からなるウェブのカード、絡合工程通過安定性と熱水での割繊性を容易にすることを同時に満足するように、それらの適正条件を確認することが好ましい。
【0015】
本発明において、A層中にポリオレフィン系樹脂を用いるのは、その他一般樹脂との混合溶融紡糸する際に、反応することがなく、またナイロンやポリエステルで代表される一般的に皮革様シートを構成する合成繊維として用いられる繊維成分と相溶性、接着性が悪いので、層間剥離強力をコントロールするのに適する点から重要なポリマーである。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチールペンテン、ポリエチレン、ポリブテン等の重合体、あるいはその共重合体を挙げることができる。特に融点が130℃以上、より好ましくは150℃以上のポリオレフィン系樹脂を用いると、耐熱性の面で優れ都合が良い。
他方、A層中のB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂としては、例えばB層を構成する樹脂がポリエステル系重合体の場合には、ポリエステル系重合体であれば何でも良く、より好ましくは、B層を構成する樹脂と同一の樹脂であることが好ましい。また、B層を構成する樹脂がポリアミド系重合体の場合には、ポリアミド系重合体であれば何でも良く、より好ましくは、B層を構成する樹脂と同一の樹脂であることが好ましい。
【0016】
本発明における接合型複合繊維に用いられるB層を構成する樹脂としては、その用途、性能に応じて可紡糸性重合体の中から適宜選ぶことができる。その例としては、ポリエチレンテレフタレート系やポリトリメチレンテレフタレートなどのポリプロピレンテレフタレート系やポリブチレンテレフタレート系などのポリエステル系重合体、ナイロン6やナイロン66などで代表されるポリアミド系重合体、その他にポリスチレン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−エチレン共重合体などを挙げることができる。この中でも得られる皮革様シート基材の風合いが優れることから成分Bがポリエステル系重合体とりわけポリエチレンテレフタレート系重合体、およびポリアミド系重合体を好適に使用することができる。
【0017】
上記、ポリエチレンテレフタレート系重合体に代表されるポリエステル系重合体は、必要に応じて他のジカルボン酸成分、オキシカルボン酸成分、他のジオール成分の1種または2種以上を共重合単位として有していてもよい。その場合に、他のジカルボン酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)などの金属スルホネート基含有芳香族カルボン酸またはその誘導体;シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を挙げることができる。また、オキシカルボン酸成分の例としては、p−オキシ安息香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸またはそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。ジオール成分としてはジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール;1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコールなどを挙げることができる。
【0018】
またポリアミド系重合体は公知であるナイロン4、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンと1、10−デカメチレンジカルボン酸からのポリアミド、1,9−ノナメチレンジカルボン酸からのポリアミドを挙げることができ、さらにこれらポリアミド成分と他成分を本発明の効果を損なわない範囲内で共重合したもの、あるいは、これらポリアミド成分と他成分を本発明の効果を損なわない範囲内で混合したものを挙げることができる。これらのポリアミド化合物の中でも得られる皮革様シートの風合いが優れることからナイロン6を好適に使用できる。
【0019】
また、繊維中のA層とB層の質量比は目的とする接合型複合繊維の断面構造が形成される限り問題はないが、好ましくは90/10〜10/90の範囲にあり、さらに好ましくは80/20〜20/80の範囲である。ただしA、B両層の質量比の何れか一方が10%未満の場合には、紡糸口金より吐出する前に口金内において成分Aと成分Bとを交互に配列する際に、一方の重合体の量が少ないために目的とする断面を形成することが難しくなる傾向がある。
【0020】
本発明の接合型複合繊維の断面構造は、多層張り合わせ型、花弁型、中空花弁型等の形状を採ることが可能であるが、多層張り合わせ型であることが割繊処理時容易に割繊することが可能といった点から好ましい。
多層張り合わせ型の接合型複合繊維は、割繊処理により得られる繊維の断面形状が平らな割繊面部分と元の複合繊維の側面部分からなる偏平繊維のため、皮革様シート基材に応力がかかった場合、剥離面方向に繊維が折れ易い。この特徴をもつことで、同じ繊度で形成された円断面、楕円断面の断面構造を有する繊維からなる不織布から製造された皮革様シート基材に比べ風合いがより柔軟になるといった効果がある。
また、本発明を構成する接合型複合繊維の層の数は、5層以上であることが必須である。そして、より好ましい層の数は、9〜20層の範囲である。層の数が4層以下では割繊処理後も繊度は小さくならず、得られる皮革様シート基材の風合いが劣る。また、断面構造が花弁型の場合は中心部分へ向かうにつれて2成分間の間隔が狭くなり、さらに中心部分では実質的に1成分が繋がり易いため、見かけ上数えられる層まで完全に割繊しにくく、得られる皮革様シート基材の風合いは劣る傾向がある。
【0021】
また、本発明を構成する接合型複合繊維が中空花弁型の場合、割繊は可能だが中空部が存在するために繊維の外的応力に対して多層張り合わせ型に比べ低下し易い傾向を示し、カード開繊処理、ニードルパンチ絡合処理工程で割れを生じてしまう場合がある。また、花弁型、中空花弁型ではニードル工程での絡合の進行が本発明の多層張り合わせ型に比べ遅く繊維間の絡合効率が低いため、得られる皮革様シートの風合い、充実感および機械的強度が劣る傾向にある。
【0022】
本発明における多層張り合わせ型の断面の接合型複合繊維を製造するには、A層を構成する成分とB層を構成する成分とを溶融状態とし、これを常法により交互に配列させた状態で口金ノズル孔に導き該ノズル孔より吐出させることで製造することができる。
接合型複合ステープル繊維の単繊維繊度は、特に限定されず、用途によって任意に繊度を選ぶことができるが、得られる皮革様シートの風合いが優れることから、0.5〜10デシテックス、より好ましくは2〜7デシテックスである。また、カット長もその用途により、任意に選ぶことができる。また、割繊後の各層の繊度としては平均0.01〜1.0デシテックスの範囲が、得られる皮革様シートの風合いの点で好ましい。また接合型複合ステーブル繊維が多層張り合わせ型の場合、横断面形状としては、外周は楕円形で積層面が該楕円の短径とほぼ並行であることが繊度を小さくすることが容易な点で好ましく、内部はA層、B層を合わせて5層以上の多層張り合わせ、かつA層(ポリオレフン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂との混合体)がB層の間に挟まれた形状であることが、カード開繊処理、ニードルパンチ絡合処理の不織布製造中に繊維の長手方向に剥離、割繊しにくく、割繊後の繊維が偏平化され相対的に割繊された平らな割繊面方向に繊維が折れ易く風合いが柔軟になることから重要である。
【0023】
接合型複合ステープル繊維には、必要に応じて各種添加剤を配合し使用することができる。例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子などが含まれてもよい。また、添加剤の配合はA層、B層樹脂のいずれか一方でも良いし、または両方であっても良い。
不織布を製造する際に用いられる繊維絡合方法としては、ニードルパンチ方法や水流絡合方法などが挙げられるが、ニードルパンチ方法が、より皮革様シートに類似した3次元絡合不織布が得られ、またスポーツシューズ等に使用できる厚み1.0mm以上の不織布を容易に処理可能であるといった点から好ましい。ニードル条件としては1バーブのニードル針で400〜2000パンチ/cm2処理するのが接合型複合繊維の層間剥離の防止および不織布の充実感向上の点から好ましい。
【0024】
本発明方法に用いられる不織布は、上記の接合型複合ステープル繊維からなる適度の厚みと充実感を有し、かつ柔軟な風合いを有するものでよく、不織布の厚みは得られる皮革様シートの用途などによって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、0.3〜3.0mm程度であることが好ましく、0.5〜2.5mm程度であることがより好ましい。不織布の見かけ密度は、柔軟な風合いを有する皮革様シートを得るためには0.1〜0.6g/cm3であることが好ましく、0.15〜0.55g/cm3であることがより好ましい。見かけ密度が0.6g/cm3より大きくなると、得られるシートが硬い風合いとなる傾向がある。一方、見かけ密度が0.1g/cm3より小さくなると、反発性および腰感が劣り、風合いが損なわれる傾向がある。
【0025】
本発明の皮革様シートに用いる不織布にシリコーン系またはフッ素系の油剤、撥水剤、柔軟剤、帯電防止剤や耐光安定剤、紫外線吸収剤などの公知の化合物を付着させるなどの処理を行うことができる。また、不織布は、前記した接合型複合ステープル繊維の他に本発明の効果が損なわない程度に他の繊維が加えられていてもよい。
【0026】
本発明の皮革様シートに用いられる高分子弾性体は、従来から皮革様シートを製造する際に使用されている高分子弾性体であればよい。このような高分子弾性体として、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド系樹脂、ポリエステルエラストマーなどのポリエステル系樹脂、弾性を有するポリスチレン系樹脂、弾性を有するポリオレフィン系樹脂などがあるが、この中でも得られる皮革様シートに優れた風合いを与えることから、ポリウレタン系樹脂やアクリル系樹脂が好適に使用される。
【0027】
樹脂の付与方法としてはポリウレタンなどのジメチルホルムアミド溶液を不織布に含浸し、水中で湿式凝固、脱洗する、いわゆる湿式凝固法と、エマルジョンを含浸して熱風、スチーム、マイクロ波、熱水浴などのいずれかの方法により樹脂の固化またはゲル化および乾燥を行うエマルジョン法を好適例として挙げることができる。湿式凝固法を採用すれば、より天然皮革調の風合いを得ることができる。またポリウレタンエマルジョン、アクリル系エマルジョンのようなエマルジョン、とりわけ水のみで分散された水性エマルジョンを使用すれば、本発明方法で得られる皮革様シートは有機溶剤を使用することなく製造することができ、さらに環境への負荷が少ない皮革様シートの製造方法となるため好ましい。
【0028】
これらのエマルジョンが感熱ゲル化性を有している場合、エマルジョン粒子をマイグレーションを引き起こすことなく感熱ゲル化させ均一に付与することができる。エマルジョンは乳化する界面活性剤としてHLBの低いノニオン性界面活性剤で乳化したり、いわゆるマイグレーション防止剤と称する物質を感熱ゲル化剤としてエマルジョン中に添加することにより感熱ゲル化性が得られる。添加する感熱ゲル化剤としては、例えば、塩化カルシウムなどの無機塩類とポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、シリコーンポリエーテル共重合体、ポリシロキサン等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
高分子弾性体の付与量は用途によって適宜選択することができるが、一般に不織布の質量に対して5〜150質量%であることが好ましく、15〜120質量%であることがより好ましく、30〜100質量%であることがさらに好ましい。樹脂付着量が5質量%未満では、高分子弾性体によるバインダー効果の不足により、繊維の脱落が発生したり、加工中に不織布が伸びたり、得られるシートの充実感が不足するなどの問題が発生し、得られるシートの風合いが悪くなる傾向がある。一方、150質量%を越えると、得られるシートは硬くなり、皮革様シートの風合いが低下する傾向がある。
【0030】
繊維質基体と高分子弾性体からなる皮革様シートは、下記の工程▲1▼▲2▼▲3▼または、▲1▼▲3▼▲2▼の順序で行うことで製造することができる。特に▲1▼▲2▼▲3▼の順序で実施すれば不織布に高分子弾性体が付与された後に割繊が行われるため、柔軟化され優れた風合いの皮革様シートが得られ好ましい。また工程▲1▼または工程▲2▼の後に熱ロール等を用い熱プレス処理を行うことによって、所望の比重にしたり、平滑な表面を形成させることなどが出来る。
▲1▼A層およびB層が相互に5層以上接合し、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足する接合型複合繊維より不織布を製造する工程、
▲2▼不織布に高分子弾性体を付与する工程、
▲3▼A層とB層を80〜160℃の熱水で割繊する工程、
【0031】
染色した皮革様シートを得る場合は、染色工程時に接合型複合繊維を同時に割繊することにより工程の合理化を行うことができる。また、この場合は先に熱水により割繊して得られた皮革様シートを、別途、もう一度熱水中で染色処理することも可能であるが、工程の合理化といった観点と、加熱時間が長くなり機械的物性が低下し易くなるので好ましい方法ではない。
【0032】
本発明におけるA層とB層の割繊を進行させる方法としては、熱水または染料を加えた熱水液中での割繊処理方法が挙げられる。そして、アルカリ液やその中和廃液を発生することなく皮革様シート基材を得ることができる。この場合の割繊処理は、例えばサーキュラー染色機等で代表される液流染色機やジガーの使用またはパッド・ロール法などを用いて行うことができるが、80℃以上の熱水を使用する点と得られる皮革様シート基材の柔軟性が優れることから、サーキュラー染色機等で代表される液流染色機を用いることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明において重要な点は熱水による割繊処理を行う温度であり、処理温度は80〜160℃である必要がある。特に加圧系の80℃以上の熱水において皮革様シート基材を形成する繊維および樹脂は軟化し易くなり、これとサーキュラー染色機中での物理的な力の相乗効果により、カード、ニードル処理工程で層間接着を維持してきたA層とB層の接着界面(同成分同志の部分的な接着部分)の割繊が進行し、かつリラックス効果によって風合いに優れた柔軟な皮革様シート基材になると考えられる。従って処理温度が80℃よりも低いと得られるシート基材の繊維成分の割繊が進行しないため柔軟性に劣るものとなるか、同等の柔軟性を発現させるために非常に多大な時間の処理を要することになる。処理温度が80〜160℃である場合は処理時間は10分〜1時間程度で行うことで割繊することができる。また、上記の理由から処理温度は高いほど割繊の進行およびリラックス効果により得られる皮革様シート基材は柔軟かつより均一な風合いとなる傾向がある。しかしながら160℃よりも高いと皮革様シート基材を構成する樹脂成分または繊維成分が劣化して風合いが悪化したり、物性が低下することがある。また分散染料による染色を同時に行う場合には、染色のムラ、染色堅牢性の面から85〜140℃の温度で処理することが好ましい。また、割繊をさらに進行させる補助的な手段として、不織布化の後に物理的な力、すなわち、擦過したり、機械もみ処理を行うか、ウォータージェット流処理を行う処理方法を用いることもできる。
【0034】
本発明の皮革様シート基材は、適度な柔軟性と充実感を有し、マットレス、鞄内張り材料、衣料芯地、靴用芯材、クッション材、自動車内装材、壁材、カーペットなどに好適に使用することができる。さらに片面にポリウレタン等を既知の方法により付与することによりスポーツシューズ、紳士靴、鞄などに用いられる銀付き人工皮革としても好適に使用することができる。その際、表皮層へのポリウレタン等を水性エマルジョンを用いて付与した場合は有機溶剤を使用することなく銀付き人工皮革を得ることができる。また、表面をエメリーペーパーなどでバフィングすることによりスエード調の人工皮革とすることもできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明方法により、工程通過性に優れ、かつその後に熱水浴中で容易に割繊して極細繊維化することができる接合型複合ステープル繊維からなる不織布と高分子弾性体からなる風合いの優れた皮革様シート基材を得ることができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例によって本発明方法を具体的に説明するが、本発明はそれによって何ら限定されるものではない。以下の例において、各種樹脂を組み合わせた接合型複合ステープル繊維のカード通過性、ニードルパンチ通過性、および割繊処理後の割繊状態の評価方法は以下の方法により行った。
【0037】
[カード処理通過性];50g/m2の目付質量になるようにミニチュアカードを通してウエッブを作製し、このウエッブから取り出した繊維の約100本の側面状態を走査型電子顕微鏡にて観察し、割れているものを数えて以下の式で割繊割合を求めた。
割繊割合(%)=(割れている繊維数/全繊維数)×100(%)
【0038】
[ニードルパンチ処理通過性];カード、クロスラッパーの工程を経て得られたウエッブを適宜積層し、800本/cm2のニードルパンチを行なった後に、その不織布の断面状態における約100本の繊維断面状態を走査型電子顕微鏡で観察し、割れているものを数えて以下の式で割繊割合を求めた。
割繊割合(%)=(割れている繊維数/全繊維数)×100(%)
【0039】
[割繊処理];熱水による割繊処理を行って得られた皮革様シートの断面状態における約100本の繊維断面状態を走査型電子顕微鏡で観察し以下の式で割繊割合を求めた。
割繊割合(%)=(割れている繊維数/全繊維数)×100(%)
【0040】
実施例1
A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23(g/10分)のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で60/40の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に295℃の口金より吐出させて紡糸した。紡糸後、延伸し、機械捲縮を付与し、その後51mmにカットし、A5層、B6層、計11層からなる繊度3.3デシテックスの接合型複合ステーブル繊維を得た。走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はニ重海島構造を形成しA層中の側面にはポリエステルとポリプロピレンが混在する状態であった。
【0041】
この複合ステープル繊維を用い、カード処理を行なってウエッブを作製したところ、カード処理後では繊維の割繊割合は0.8%であった。ウエッブ作製での工程トラブルは発生せず、良好な通過性を示した。さらに、ニードルパンチ処理を行ったが、工程通過性は良好であった。この時点での繊維の割繊は2.6%であった。このようにして得られた不織布へ水性ポリウレタンエマルジョン(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名ボンディック1310NSA)を乾燥後の固形分質量で不織布の60質量%となるように含浸して、乾燥した後に表面温度165℃のロールで熱プレスし表面の平滑化と比重合わせを実施した。
【0042】
さらにサーキュラー染色機を用いて、分散染料(日本化薬株式会社製、Kayalon Polyester Red AUL−S)を3.0%owfの濃度、浴比1/20の条件で130℃のサーキュラー染色機で40分間染色処理を行った。乾燥後に得られたシート基材は風合いの優れた皮革様のシート基材であった。断面観察の結果、繊維の割繊は94%であった。エメリーペパーによるバフィング処理をして仕上げを行いスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は外観、風合いに優れたものであり、繊維の染めムラなどは認められなかった。
【0043】
実施例2
A層の樹脂成分Aとしてナイロン6(宇部興産株式会社製SF1018A、相対粘度3.17)とMFR15のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA2D、融点168℃)を質量比で65/35の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のナイロン6を用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に285℃の口金より吐出させて紡糸した。
紡糸後、延伸し、機械捲縮を付与し、その後51mmにカットし、A5層、B6層、計11層からなる繊度3.3デシテックスの接合型複合ステーブル繊維を得た。走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はニ重海島構造を形成しA層側面にはナイロンとポリプロピレンが混在する状態であった。
【0044】
この複合ステープル繊維を用い、カード処理を行なってウエッブを作製したところ、カード処理後では繊維の割繊割合は1%であった。ウエッブ作製での工程トラブルは発生せず、良好な通過性を示した。さらに、ニードルパンチ処理を行ったが、工程通過性は良好であった。この時点での繊維の割繊は2.2%であった。このようにして得られた不織布へ水性ポリウレタンエマルジョン(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名ボンディック1310NSA)を乾燥後の固形分質量で不織布の80質量%となるように含浸して、乾燥した後にに表面温度165℃のロールで熱プレスし平滑化と比重合わせを実施した。
【0045】
さらにサーキュラー染色機を用いて、90℃の熱水中で40分間処理を行い乾燥を経てシート基材を得た。得られたシートは風合いの優れた皮革様シートであった。断面観察の結果、繊維の割繊割合は92%であった。さらに得られたシートの一面へ離型紙による乾式造面法により白顔料で着色した厚み50ミクロンのポリウレタンフィルムを水性ポリウレタン系接着剤を介して張り合わせて銀付き調人工皮革を得た。得られた銀付き調人工皮革は柔軟で風合いに優れていた。
【0046】
実施例3
実施例1と全く同様にして得られた水性ポリウレタンエマルジョン含浸不織布をサーキュラー染色機を用いて、分散染料(日本化薬株式会社製、Kayalon Polyester Red AUL−S)を2.5%owfの濃度、浴比1/20の条件で実施例1よりも低温処理となる70℃のサーキュラー染色機で40分間染色処理した。乾燥後に得られたシート基材は実施例1で得られた皮革様シート基材に比べて非常に硬いシート基材となった。断面観察の結果、繊維の割繊は11%であった。次に実施例1と同様にしてバフィング処理をして仕上げを行いスエード調人工皮革を得たが、得られたスエード調人工皮革は実施例2と比較した場合には硬い風合いで、染めムラの目立つものであったが実用性は問題なかった。
【0047】
比較例1
A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で80/20の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に295℃の口金より吐出させて紡糸した以外は実施例1と同じ処理をした。
【0048】
走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はポリプロピレンが島でポリエステルが海の海島構造を形成しA層側面のほとんどポリエステルとなっていた。また得られた複合ステーブルのカード、ニードル性には問題なかったが、染色後の割繊は2.8%とほとんど割繊できておらず、実施例1に比べて風合い面で実施例1に比べて、劣るものであった。繊維の染めムラなどは認められなかった。
【0049】
比較例2
A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で20/80の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に295℃の口金より吐出させて紡糸した以外は実施例1と同じ処理をした。
【0050】
走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はポリプロピレンが海でポリエステルが島の海島構造を形成しA層側面のほとんどポリプロピレンとなっていた。また得られた複合ステーブルのカード性は5分後にはネップが多量に発生し、カード装置がつまりを生じ、良好なウエッブを得ることができなくなった。このときの割繊割合は75%であった。
【0051】
比較例3
実施例1と同じ組成で、A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で60/40の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、A層を1層、B層を2層、計3層に配列させた後に口金より吐出させて紡糸した以外は実施例1と同じ処理をした。
【0052】
51mmにカットし、繊度3.3デシテックスのA1層、B2層、計3層からなる接合型複合ステーブル繊維を得た。走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層は2重海島構造を形成しA層側面にはポリエステルとポリプロピレンが混在する状態であった。また得られた複合ステーブルのカード、ニードル性には問題なくそれぞれの割繊割合は0.7%および2.4%と、実施例1とほぼ同じ挙動を示し、染色後の割繊も95%と良好であったが、風合い面で実施例1に比べて、劣るものであった。繊維の染めムラなどは認められなかった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮革様シート基材の製造方法および得られる皮革様シート基材に関する。さらに詳しくは、本発明は、有機溶剤やアルカリ水溶液を使用することなく、極細繊維化することが可能で、カード処理、ニードルパンチ処理後においても繊維の長手方向に剥離、割繊することのない接合型複合繊維を分割極細化した繊維と高分子弾性体からなる皮革様シート基材およびその製造方法に関する。
【0002】
単繊維が0.1デシテックス以下の極細繊維を製造するには、直接紡糸では糸切れが起こり易くなるために細さに限界があり、複合紡糸方法が従来から用いられている。複合紡糸方法で得られる複合紡糸繊維は、繊維断面の状態で大別すると、▲1▼2成分が高度に分割相互配列した接合型(多層張り合わせ型や花弁型など)と、▲2▼1成分が他成分中に高度に分散した海島型とがある。▲2▼の海島型繊維の場合、その海成分を除去することにより0.01デニール以下の極細繊維を得ることができるが、海成分を除去するためには、例えば海成分がポリエチレンやポリスチレンなどの場合にはトルエンやパークレンなどの有機溶剤を使用する必要があり、アルカリ易溶性の変性ポリエチレンテレフタレートなどの場合には高濃度のアルカリ液を使用する必要がある。近年、環境面からこのような有機溶剤の使用や高濃度アルカリ液およびその中和廃液などの削減が求められている。
【0003】
また除去された海成分は再利用しにくいため、廃棄物量の増加は避けられず、エコロジーの観点から、1成分の除去が不要となる▲1▼の接合型繊維から極細繊維を得ることが好ましい。このような接合型の複合繊維においてはその成分相互の剥離によって鋭い縁のある繊維や、極細繊維が形成され、その剥離方法または分割方法には、特開昭54−96181号公報に見られるように、▲1▼ベンジルアルコールのような薬液の入った液で1成分を膨潤させて、その力で相互に分離させる方法や、特公昭53−10170号公報や特開平2−169722号公報、さらに特開平9−217233号公報に見られるように、▲2▼物理的な力、すなわち、擦過したり、もんだり、バフィング等で表面を処理したり、ウォータージェット流を噴射するなどして、強制的に分離させる方法、▲3▼低濃度のアルカリ液で、少し溶かして相互に分離する方法を挙げることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような繊維から皮革様シートを製造する場合、割繊処理は不織布を製造した後、または不織布を製造し高分子弾性体を付与した後に行い、その結果、柔軟で優れた風合いを有する皮革様シートを得ることができるが、それ以前の不織布化の工程で割繊が生じると工程通過性、収率が著しく悪化し、得られる不織布も不均一で風合いが著しく劣る。具体的には不織布を製造する際に、カードを使用すると、接合型複合繊維の成分の剥離が起き、繊維が細化され、ネップが発生し、これが詰まることで紡出速度を著しく低下させなければならない必要が生じたり、カード装置中に蓄積して安定な紡出ができなくなる。また、繊維を交絡するためにニードルパンチを使用すると、損傷により剥離が起き、単繊維が交絡されにくく、不織布の剥離強度が上がらないといった問題点が生ずる。
【0005】
しかし、一方でこのような工程通過性の悪化を引き起こさないために、繊維を構成する2成分の接着性を高める方法もあるが、この方法の場合には、不織布化に問題を生じないものの、後工程としてこの後に前述の割繊処理を行っても全く割繊しなかったり、ごく一部しか割繊しなかったり、全てを割繊するために非常に強い物理的な力を要したり、極めて長時間の処理を要したり、高濃度のアルカリ液を使用したりする必要が生じるので好ましい方法ではない。
【0006】
そこで、もうひとつの方法として2成分中の片方の成分によりもう片方の成分を被覆する方法が最近提案されている。このような例として、特開2000−129538号公報には、1成分によりもう1成分を被覆する8分割以上の花弁型の断面構造を有する複合繊維が記載されているが、花弁型の場合は中心部分へ向かうにつれて2成分間の間隔が狭くなり、さらに中心部分では実質的に1成分が繋がっているなどから見かけの層の数まで完全に割繊することは困難であり、このような繊維から得られる不織布からなる皮革様シートの風合いは従来の極細繊維からなる不織布から得られる皮革様シートに比べて劣るものである。
【0007】
さらに、上述のごとく2成分の割繊方法として▲1▼ベンジルアルコールのような薬液の入った液で1成分を膨潤させて、その力で相互に分離させる方法、▲2▼物理的な力、すなわち、擦過したり、もんだり、バフィング等で表面を処理したり、ウォータージェット流を噴射するなどして、強制的に分離させる方法、▲3▼低濃度のアルカリ液で、少し溶かして相互に分離する方法を挙げたが、▲1▼の方法においては、有機溶剤を膨潤剤として使用しているためエコロジーの観点で問題になること、▲2▼の方法においては、スポーツシューズなどに使用される厚み1.0〜2.0mm程度の厚みを有する皮革様シート基材を製造する場合に繊維成分の剥離または分割が、特に中心部へ向かうほど進行しないため、風合いの点で劣ること、▲3▼の方法においては、高濃度アルカリ液を用いた抽出処理に比べて、圧倒的に少量ではあるが、アルカリ液を使用するため危険物の取り扱いおよび廃棄処分に問題があることなど、それぞれ固有の問題点を有しているのが現状である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、カード処理、ニードルパンチ処理後においても繊維の長手方向に実質的に剥離、割繊することがなく不織布化でき、かつ、この後の割繊処理においては、有機溶剤やアルカリ性水溶液を使用することなく、実質的に従来のリラックス加工処理に用いられる程度の物理的な力によって速やかに割繊できる接合型複合ステープル繊維を使用することにより環境への負荷が少ない極細繊維からなる風合いの優れた皮革様シートを得ることを課題とし、鋭意検討した結果、以下に述べる方法を用いることによって上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、A層およびB層が相互に5層以上接合してなる接合型複合繊維の接合部を剥離し割繊極細化して得られる繊維絡合不織布と高分子弾性体からなる皮革様シート基材において、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足することを特徴とする皮革様シート基材である。そして、好ましくは樹脂(b)がB層を構成する樹脂である皮革様シート基材である。
また、下記の工程▲1▼▲2▼▲3▼または▲1▼▲3▼▲2▼の順序で行うことを特徴とする皮革様シート基材の製造方法。
▲1▼A層およびB層が相互に5層以上接合し、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足する接合型複合繊維より不織布を製造する工程、
▲2▼不織布に高分子弾性体を付与する工程、
▲3▼A層とB層を80〜160℃の熱水で割繊する工程、
そして、好ましくは液流染色機を用いてA層とB層を割繊する皮革様シート基材の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる接合型複合繊維は、これを構成するA層、B層の繰り返しからなる多層張り合わせ型の横断面構造を有し、A層がポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)の混合成分からなり、かつ該A層中の混合成分の質量比は(a)/(b)=25/75〜75/25の範囲内にあることが重要である。また、好ましくは40/60〜60/40の範囲である。A層中の(a)/(b)の質量比において、(b)の比率が75を越す場合は、ポリオレフィン系樹脂が分散相(島)状態、B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が連続相(海)状態になる。このためA層とB層の接合面において接合力が強く接合型複合繊維は熱水中で容易に割繊できない。
またA層中において(b)の比率が25未満の場合は、ポリオレフィン系樹脂が連続相(海)状態、B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が分散相(島)状態になるため、A層とB層の接合面においてポリオレフィン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂との接触となるため、接合力が弱くカードを通過さすための捲縮工程、カード工程、および絡合処理工程で接合型繊維の層の剥離が起き、繊維が極細化され、ネップが発生し、これが詰まることで、安定な紡出が出来なくなる。
【0011】
本発明の特徴は、捲縮、カード、絡合処理工程において、繊維の層間剥離が起こらず、かつ簡単な熱水処理で割繊出来うる接合型複合繊維にある。これは、該複合繊維をA層(ポリオレフィン系樹脂+B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂)とB層(B層構成樹脂)とし、さらにA層には一般ポリマーと接着性の悪いポリオレフィン系樹脂と、B層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂、好ましくはB層と最も接着性の強いB層を構成する樹脂のチップブレンドしたものを使用しかつ、A層が明確な海島構造をとらない状態にする。
すなわちA層中は、B層(B層構成樹脂)と接着力の強いB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が分散相(島)である部分や、連続相(海)である部分が混在した状態とする。いいかえればA層はポリオレフィン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂の双方の樹脂が互いに分散層(島)および連続相(海)の状態をもついわゆる二重海島構造の層とする必要がある。この構造にすることにより、A層内部の側面にB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂が部分的に存在する構造となる。A層とB層が接した面において、A層中の側面部分のB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂とB層中の側面部分のB層構成樹脂との部分的な接着が起こることで、カード工程等でA層、B層間の剥離が起こらない強さにコントロールすることができる。
【0012】
前述の二重海島構造をもつA層は、混合される樹脂の混合比率および溶融粘度比を変化させることによって得られる。たとえばナイロンとポリフ゜ロピレンの混合系でそれぞれ溶融粘度を紡糸時の糸曳性の良好な、その紡糸温度におけるMFR(g/10分・荷重350g・孔径2mm)で8〜60の範囲内で一定にして、混合組成を質量比でナイロン/ポリフ゜ロピレンを50/50から35/65変化させるとナイロンが均一な連続相(海)状態から分散相(島)状態に相反転する。すなわちナイロン組成を50〜35%の間にすることによってナイロンが分散相である部分や連続相である部分が混在する二重海島構造となる傾向がある。また、ナイロンとポリプロピレンの混合系において混合比率を質量比で50/50の一定とし、ナイロンの溶融粘度がポリプロピレンより高い場合にはナイロンが分散相(島)状態となる傾向があり、また通常、MERを測定してポリプロピレン樹脂を選択し溶融粘度をナイロンの2倍以上とする場合には、ナイロンが分散相(島)状態である部分や連続相(海)状態である部分が混在する二重海島構造となる傾向がある。
以上のことから、目的、ポリマー種により適宜、混合比率、溶融粘度を組み合わせることによりA層中にポリオレフィン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂を互いに連続相および分散相として混在させることが可能となり、A層をいわゆる二重海島構造とすることができる。
【0013】
A層とB層の組み合わせとして、ポリプロピレン(PPと略すこともある)/高密度ポリエチレン(HDPEと略すこともある)等のオレフィン/オレフィンの組み合わせ、あるいは、ナイロン6(NY6と略すこともある)/ナイロン12/(NY12と略すこともある)等のポリアミド/ポリアミドの組み合わせからなる接合型複合繊維は、ポリマーの相溶性が良いため層間の接着性が良く、カード工程で層間の剥離は起こりにくいが、分割性に劣る。
また、従来のポリエステル/ポリアミドの組み合わせでは、層間の接着力が弱く分割性には、優れていいるが、その利点がカード工程での層間剥離につながり、接合型分割繊維の層間で剥離が起き易く、繊維が極細化され、ネップが発生し、これが詰まることで、安定な紡出が出来なくなる。このためポリエステル/ポリアミドの組み合わせの接合型分割繊維においては、カードを通過させるため繊維の周辺を薄いポリエステル皮膜で覆う等の複雑な紡糸ノズルが必要となる。
【0014】
本発明では、A層とB層の繰り返しからなる複合分割型ノズルで、A層にB層と同質の相溶性の良いポリマーと相溶性の悪いポリマーをブレンドし、A層側面に前述した様に混合するポリマー種により、組成比、粘度比を変えることで、B層に相溶性の良いポリマーと悪いポリマーが存在するニ重海島構造にする。
A層とB層の層間剥離の強さは、使用ポリマー種により変るため、組成比、粘度比等を変えて、その接合型複合繊維からなるウェブのカード、絡合工程通過安定性と熱水での割繊性を容易にすることを同時に満足するように、それらの適正条件を確認することが好ましい。
【0015】
本発明において、A層中にポリオレフィン系樹脂を用いるのは、その他一般樹脂との混合溶融紡糸する際に、反応することがなく、またナイロンやポリエステルで代表される一般的に皮革様シートを構成する合成繊維として用いられる繊維成分と相溶性、接着性が悪いので、層間剥離強力をコントロールするのに適する点から重要なポリマーである。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチールペンテン、ポリエチレン、ポリブテン等の重合体、あるいはその共重合体を挙げることができる。特に融点が130℃以上、より好ましくは150℃以上のポリオレフィン系樹脂を用いると、耐熱性の面で優れ都合が良い。
他方、A層中のB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂としては、例えばB層を構成する樹脂がポリエステル系重合体の場合には、ポリエステル系重合体であれば何でも良く、より好ましくは、B層を構成する樹脂と同一の樹脂であることが好ましい。また、B層を構成する樹脂がポリアミド系重合体の場合には、ポリアミド系重合体であれば何でも良く、より好ましくは、B層を構成する樹脂と同一の樹脂であることが好ましい。
【0016】
本発明における接合型複合繊維に用いられるB層を構成する樹脂としては、その用途、性能に応じて可紡糸性重合体の中から適宜選ぶことができる。その例としては、ポリエチレンテレフタレート系やポリトリメチレンテレフタレートなどのポリプロピレンテレフタレート系やポリブチレンテレフタレート系などのポリエステル系重合体、ナイロン6やナイロン66などで代表されるポリアミド系重合体、その他にポリスチレン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−エチレン共重合体などを挙げることができる。この中でも得られる皮革様シート基材の風合いが優れることから成分Bがポリエステル系重合体とりわけポリエチレンテレフタレート系重合体、およびポリアミド系重合体を好適に使用することができる。
【0017】
上記、ポリエチレンテレフタレート系重合体に代表されるポリエステル系重合体は、必要に応じて他のジカルボン酸成分、オキシカルボン酸成分、他のジオール成分の1種または2種以上を共重合単位として有していてもよい。その場合に、他のジカルボン酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)などの金属スルホネート基含有芳香族カルボン酸またはその誘導体;シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を挙げることができる。また、オキシカルボン酸成分の例としては、p−オキシ安息香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸またはそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。ジオール成分としてはジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール;1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコールなどを挙げることができる。
【0018】
またポリアミド系重合体は公知であるナイロン4、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンと1、10−デカメチレンジカルボン酸からのポリアミド、1,9−ノナメチレンジカルボン酸からのポリアミドを挙げることができ、さらにこれらポリアミド成分と他成分を本発明の効果を損なわない範囲内で共重合したもの、あるいは、これらポリアミド成分と他成分を本発明の効果を損なわない範囲内で混合したものを挙げることができる。これらのポリアミド化合物の中でも得られる皮革様シートの風合いが優れることからナイロン6を好適に使用できる。
【0019】
また、繊維中のA層とB層の質量比は目的とする接合型複合繊維の断面構造が形成される限り問題はないが、好ましくは90/10〜10/90の範囲にあり、さらに好ましくは80/20〜20/80の範囲である。ただしA、B両層の質量比の何れか一方が10%未満の場合には、紡糸口金より吐出する前に口金内において成分Aと成分Bとを交互に配列する際に、一方の重合体の量が少ないために目的とする断面を形成することが難しくなる傾向がある。
【0020】
本発明の接合型複合繊維の断面構造は、多層張り合わせ型、花弁型、中空花弁型等の形状を採ることが可能であるが、多層張り合わせ型であることが割繊処理時容易に割繊することが可能といった点から好ましい。
多層張り合わせ型の接合型複合繊維は、割繊処理により得られる繊維の断面形状が平らな割繊面部分と元の複合繊維の側面部分からなる偏平繊維のため、皮革様シート基材に応力がかかった場合、剥離面方向に繊維が折れ易い。この特徴をもつことで、同じ繊度で形成された円断面、楕円断面の断面構造を有する繊維からなる不織布から製造された皮革様シート基材に比べ風合いがより柔軟になるといった効果がある。
また、本発明を構成する接合型複合繊維の層の数は、5層以上であることが必須である。そして、より好ましい層の数は、9〜20層の範囲である。層の数が4層以下では割繊処理後も繊度は小さくならず、得られる皮革様シート基材の風合いが劣る。また、断面構造が花弁型の場合は中心部分へ向かうにつれて2成分間の間隔が狭くなり、さらに中心部分では実質的に1成分が繋がり易いため、見かけ上数えられる層まで完全に割繊しにくく、得られる皮革様シート基材の風合いは劣る傾向がある。
【0021】
また、本発明を構成する接合型複合繊維が中空花弁型の場合、割繊は可能だが中空部が存在するために繊維の外的応力に対して多層張り合わせ型に比べ低下し易い傾向を示し、カード開繊処理、ニードルパンチ絡合処理工程で割れを生じてしまう場合がある。また、花弁型、中空花弁型ではニードル工程での絡合の進行が本発明の多層張り合わせ型に比べ遅く繊維間の絡合効率が低いため、得られる皮革様シートの風合い、充実感および機械的強度が劣る傾向にある。
【0022】
本発明における多層張り合わせ型の断面の接合型複合繊維を製造するには、A層を構成する成分とB層を構成する成分とを溶融状態とし、これを常法により交互に配列させた状態で口金ノズル孔に導き該ノズル孔より吐出させることで製造することができる。
接合型複合ステープル繊維の単繊維繊度は、特に限定されず、用途によって任意に繊度を選ぶことができるが、得られる皮革様シートの風合いが優れることから、0.5〜10デシテックス、より好ましくは2〜7デシテックスである。また、カット長もその用途により、任意に選ぶことができる。また、割繊後の各層の繊度としては平均0.01〜1.0デシテックスの範囲が、得られる皮革様シートの風合いの点で好ましい。また接合型複合ステーブル繊維が多層張り合わせ型の場合、横断面形状としては、外周は楕円形で積層面が該楕円の短径とほぼ並行であることが繊度を小さくすることが容易な点で好ましく、内部はA層、B層を合わせて5層以上の多層張り合わせ、かつA層(ポリオレフン系樹脂とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂との混合体)がB層の間に挟まれた形状であることが、カード開繊処理、ニードルパンチ絡合処理の不織布製造中に繊維の長手方向に剥離、割繊しにくく、割繊後の繊維が偏平化され相対的に割繊された平らな割繊面方向に繊維が折れ易く風合いが柔軟になることから重要である。
【0023】
接合型複合ステープル繊維には、必要に応じて各種添加剤を配合し使用することができる。例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子などが含まれてもよい。また、添加剤の配合はA層、B層樹脂のいずれか一方でも良いし、または両方であっても良い。
不織布を製造する際に用いられる繊維絡合方法としては、ニードルパンチ方法や水流絡合方法などが挙げられるが、ニードルパンチ方法が、より皮革様シートに類似した3次元絡合不織布が得られ、またスポーツシューズ等に使用できる厚み1.0mm以上の不織布を容易に処理可能であるといった点から好ましい。ニードル条件としては1バーブのニードル針で400〜2000パンチ/cm2処理するのが接合型複合繊維の層間剥離の防止および不織布の充実感向上の点から好ましい。
【0024】
本発明方法に用いられる不織布は、上記の接合型複合ステープル繊維からなる適度の厚みと充実感を有し、かつ柔軟な風合いを有するものでよく、不織布の厚みは得られる皮革様シートの用途などによって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、0.3〜3.0mm程度であることが好ましく、0.5〜2.5mm程度であることがより好ましい。不織布の見かけ密度は、柔軟な風合いを有する皮革様シートを得るためには0.1〜0.6g/cm3であることが好ましく、0.15〜0.55g/cm3であることがより好ましい。見かけ密度が0.6g/cm3より大きくなると、得られるシートが硬い風合いとなる傾向がある。一方、見かけ密度が0.1g/cm3より小さくなると、反発性および腰感が劣り、風合いが損なわれる傾向がある。
【0025】
本発明の皮革様シートに用いる不織布にシリコーン系またはフッ素系の油剤、撥水剤、柔軟剤、帯電防止剤や耐光安定剤、紫外線吸収剤などの公知の化合物を付着させるなどの処理を行うことができる。また、不織布は、前記した接合型複合ステープル繊維の他に本発明の効果が損なわない程度に他の繊維が加えられていてもよい。
【0026】
本発明の皮革様シートに用いられる高分子弾性体は、従来から皮革様シートを製造する際に使用されている高分子弾性体であればよい。このような高分子弾性体として、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド系樹脂、ポリエステルエラストマーなどのポリエステル系樹脂、弾性を有するポリスチレン系樹脂、弾性を有するポリオレフィン系樹脂などがあるが、この中でも得られる皮革様シートに優れた風合いを与えることから、ポリウレタン系樹脂やアクリル系樹脂が好適に使用される。
【0027】
樹脂の付与方法としてはポリウレタンなどのジメチルホルムアミド溶液を不織布に含浸し、水中で湿式凝固、脱洗する、いわゆる湿式凝固法と、エマルジョンを含浸して熱風、スチーム、マイクロ波、熱水浴などのいずれかの方法により樹脂の固化またはゲル化および乾燥を行うエマルジョン法を好適例として挙げることができる。湿式凝固法を採用すれば、より天然皮革調の風合いを得ることができる。またポリウレタンエマルジョン、アクリル系エマルジョンのようなエマルジョン、とりわけ水のみで分散された水性エマルジョンを使用すれば、本発明方法で得られる皮革様シートは有機溶剤を使用することなく製造することができ、さらに環境への負荷が少ない皮革様シートの製造方法となるため好ましい。
【0028】
これらのエマルジョンが感熱ゲル化性を有している場合、エマルジョン粒子をマイグレーションを引き起こすことなく感熱ゲル化させ均一に付与することができる。エマルジョンは乳化する界面活性剤としてHLBの低いノニオン性界面活性剤で乳化したり、いわゆるマイグレーション防止剤と称する物質を感熱ゲル化剤としてエマルジョン中に添加することにより感熱ゲル化性が得られる。添加する感熱ゲル化剤としては、例えば、塩化カルシウムなどの無機塩類とポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、シリコーンポリエーテル共重合体、ポリシロキサン等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
高分子弾性体の付与量は用途によって適宜選択することができるが、一般に不織布の質量に対して5〜150質量%であることが好ましく、15〜120質量%であることがより好ましく、30〜100質量%であることがさらに好ましい。樹脂付着量が5質量%未満では、高分子弾性体によるバインダー効果の不足により、繊維の脱落が発生したり、加工中に不織布が伸びたり、得られるシートの充実感が不足するなどの問題が発生し、得られるシートの風合いが悪くなる傾向がある。一方、150質量%を越えると、得られるシートは硬くなり、皮革様シートの風合いが低下する傾向がある。
【0030】
繊維質基体と高分子弾性体からなる皮革様シートは、下記の工程▲1▼▲2▼▲3▼または、▲1▼▲3▼▲2▼の順序で行うことで製造することができる。特に▲1▼▲2▼▲3▼の順序で実施すれば不織布に高分子弾性体が付与された後に割繊が行われるため、柔軟化され優れた風合いの皮革様シートが得られ好ましい。また工程▲1▼または工程▲2▼の後に熱ロール等を用い熱プレス処理を行うことによって、所望の比重にしたり、平滑な表面を形成させることなどが出来る。
▲1▼A層およびB層が相互に5層以上接合し、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足する接合型複合繊維より不織布を製造する工程、
▲2▼不織布に高分子弾性体を付与する工程、
▲3▼A層とB層を80〜160℃の熱水で割繊する工程、
【0031】
染色した皮革様シートを得る場合は、染色工程時に接合型複合繊維を同時に割繊することにより工程の合理化を行うことができる。また、この場合は先に熱水により割繊して得られた皮革様シートを、別途、もう一度熱水中で染色処理することも可能であるが、工程の合理化といった観点と、加熱時間が長くなり機械的物性が低下し易くなるので好ましい方法ではない。
【0032】
本発明におけるA層とB層の割繊を進行させる方法としては、熱水または染料を加えた熱水液中での割繊処理方法が挙げられる。そして、アルカリ液やその中和廃液を発生することなく皮革様シート基材を得ることができる。この場合の割繊処理は、例えばサーキュラー染色機等で代表される液流染色機やジガーの使用またはパッド・ロール法などを用いて行うことができるが、80℃以上の熱水を使用する点と得られる皮革様シート基材の柔軟性が優れることから、サーキュラー染色機等で代表される液流染色機を用いることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明において重要な点は熱水による割繊処理を行う温度であり、処理温度は80〜160℃である必要がある。特に加圧系の80℃以上の熱水において皮革様シート基材を形成する繊維および樹脂は軟化し易くなり、これとサーキュラー染色機中での物理的な力の相乗効果により、カード、ニードル処理工程で層間接着を維持してきたA層とB層の接着界面(同成分同志の部分的な接着部分)の割繊が進行し、かつリラックス効果によって風合いに優れた柔軟な皮革様シート基材になると考えられる。従って処理温度が80℃よりも低いと得られるシート基材の繊維成分の割繊が進行しないため柔軟性に劣るものとなるか、同等の柔軟性を発現させるために非常に多大な時間の処理を要することになる。処理温度が80〜160℃である場合は処理時間は10分〜1時間程度で行うことで割繊することができる。また、上記の理由から処理温度は高いほど割繊の進行およびリラックス効果により得られる皮革様シート基材は柔軟かつより均一な風合いとなる傾向がある。しかしながら160℃よりも高いと皮革様シート基材を構成する樹脂成分または繊維成分が劣化して風合いが悪化したり、物性が低下することがある。また分散染料による染色を同時に行う場合には、染色のムラ、染色堅牢性の面から85〜140℃の温度で処理することが好ましい。また、割繊をさらに進行させる補助的な手段として、不織布化の後に物理的な力、すなわち、擦過したり、機械もみ処理を行うか、ウォータージェット流処理を行う処理方法を用いることもできる。
【0034】
本発明の皮革様シート基材は、適度な柔軟性と充実感を有し、マットレス、鞄内張り材料、衣料芯地、靴用芯材、クッション材、自動車内装材、壁材、カーペットなどに好適に使用することができる。さらに片面にポリウレタン等を既知の方法により付与することによりスポーツシューズ、紳士靴、鞄などに用いられる銀付き人工皮革としても好適に使用することができる。その際、表皮層へのポリウレタン等を水性エマルジョンを用いて付与した場合は有機溶剤を使用することなく銀付き人工皮革を得ることができる。また、表面をエメリーペーパーなどでバフィングすることによりスエード調の人工皮革とすることもできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明方法により、工程通過性に優れ、かつその後に熱水浴中で容易に割繊して極細繊維化することができる接合型複合ステープル繊維からなる不織布と高分子弾性体からなる風合いの優れた皮革様シート基材を得ることができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例によって本発明方法を具体的に説明するが、本発明はそれによって何ら限定されるものではない。以下の例において、各種樹脂を組み合わせた接合型複合ステープル繊維のカード通過性、ニードルパンチ通過性、および割繊処理後の割繊状態の評価方法は以下の方法により行った。
【0037】
[カード処理通過性];50g/m2の目付質量になるようにミニチュアカードを通してウエッブを作製し、このウエッブから取り出した繊維の約100本の側面状態を走査型電子顕微鏡にて観察し、割れているものを数えて以下の式で割繊割合を求めた。
割繊割合(%)=(割れている繊維数/全繊維数)×100(%)
【0038】
[ニードルパンチ処理通過性];カード、クロスラッパーの工程を経て得られたウエッブを適宜積層し、800本/cm2のニードルパンチを行なった後に、その不織布の断面状態における約100本の繊維断面状態を走査型電子顕微鏡で観察し、割れているものを数えて以下の式で割繊割合を求めた。
割繊割合(%)=(割れている繊維数/全繊維数)×100(%)
【0039】
[割繊処理];熱水による割繊処理を行って得られた皮革様シートの断面状態における約100本の繊維断面状態を走査型電子顕微鏡で観察し以下の式で割繊割合を求めた。
割繊割合(%)=(割れている繊維数/全繊維数)×100(%)
【0040】
実施例1
A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23(g/10分)のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で60/40の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に295℃の口金より吐出させて紡糸した。紡糸後、延伸し、機械捲縮を付与し、その後51mmにカットし、A5層、B6層、計11層からなる繊度3.3デシテックスの接合型複合ステーブル繊維を得た。走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はニ重海島構造を形成しA層中の側面にはポリエステルとポリプロピレンが混在する状態であった。
【0041】
この複合ステープル繊維を用い、カード処理を行なってウエッブを作製したところ、カード処理後では繊維の割繊割合は0.8%であった。ウエッブ作製での工程トラブルは発生せず、良好な通過性を示した。さらに、ニードルパンチ処理を行ったが、工程通過性は良好であった。この時点での繊維の割繊は2.6%であった。このようにして得られた不織布へ水性ポリウレタンエマルジョン(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名ボンディック1310NSA)を乾燥後の固形分質量で不織布の60質量%となるように含浸して、乾燥した後に表面温度165℃のロールで熱プレスし表面の平滑化と比重合わせを実施した。
【0042】
さらにサーキュラー染色機を用いて、分散染料(日本化薬株式会社製、Kayalon Polyester Red AUL−S)を3.0%owfの濃度、浴比1/20の条件で130℃のサーキュラー染色機で40分間染色処理を行った。乾燥後に得られたシート基材は風合いの優れた皮革様のシート基材であった。断面観察の結果、繊維の割繊は94%であった。エメリーペパーによるバフィング処理をして仕上げを行いスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は外観、風合いに優れたものであり、繊維の染めムラなどは認められなかった。
【0043】
実施例2
A層の樹脂成分Aとしてナイロン6(宇部興産株式会社製SF1018A、相対粘度3.17)とMFR15のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA2D、融点168℃)を質量比で65/35の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のナイロン6を用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に285℃の口金より吐出させて紡糸した。
紡糸後、延伸し、機械捲縮を付与し、その後51mmにカットし、A5層、B6層、計11層からなる繊度3.3デシテックスの接合型複合ステーブル繊維を得た。走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はニ重海島構造を形成しA層側面にはナイロンとポリプロピレンが混在する状態であった。
【0044】
この複合ステープル繊維を用い、カード処理を行なってウエッブを作製したところ、カード処理後では繊維の割繊割合は1%であった。ウエッブ作製での工程トラブルは発生せず、良好な通過性を示した。さらに、ニードルパンチ処理を行ったが、工程通過性は良好であった。この時点での繊維の割繊は2.2%であった。このようにして得られた不織布へ水性ポリウレタンエマルジョン(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名ボンディック1310NSA)を乾燥後の固形分質量で不織布の80質量%となるように含浸して、乾燥した後にに表面温度165℃のロールで熱プレスし平滑化と比重合わせを実施した。
【0045】
さらにサーキュラー染色機を用いて、90℃の熱水中で40分間処理を行い乾燥を経てシート基材を得た。得られたシートは風合いの優れた皮革様シートであった。断面観察の結果、繊維の割繊割合は92%であった。さらに得られたシートの一面へ離型紙による乾式造面法により白顔料で着色した厚み50ミクロンのポリウレタンフィルムを水性ポリウレタン系接着剤を介して張り合わせて銀付き調人工皮革を得た。得られた銀付き調人工皮革は柔軟で風合いに優れていた。
【0046】
実施例3
実施例1と全く同様にして得られた水性ポリウレタンエマルジョン含浸不織布をサーキュラー染色機を用いて、分散染料(日本化薬株式会社製、Kayalon Polyester Red AUL−S)を2.5%owfの濃度、浴比1/20の条件で実施例1よりも低温処理となる70℃のサーキュラー染色機で40分間染色処理した。乾燥後に得られたシート基材は実施例1で得られた皮革様シート基材に比べて非常に硬いシート基材となった。断面観察の結果、繊維の割繊は11%であった。次に実施例1と同様にしてバフィング処理をして仕上げを行いスエード調人工皮革を得たが、得られたスエード調人工皮革は実施例2と比較した場合には硬い風合いで、染めムラの目立つものであったが実用性は問題なかった。
【0047】
比較例1
A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で80/20の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に295℃の口金より吐出させて紡糸した以外は実施例1と同じ処理をした。
【0048】
走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はポリプロピレンが島でポリエステルが海の海島構造を形成しA層側面のほとんどポリエステルとなっていた。また得られた複合ステーブルのカード、ニードル性には問題なかったが、染色後の割繊は2.8%とほとんど割繊できておらず、実施例1に比べて風合い面で実施例1に比べて、劣るものであった。繊維の染めムラなどは認められなかった。
【0049】
比較例2
A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で20/80の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、11層に交互に配列させた後に295℃の口金より吐出させて紡糸した以外は実施例1と同じ処理をした。
【0050】
走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層はポリプロピレンが海でポリエステルが島の海島構造を形成しA層側面のほとんどポリプロピレンとなっていた。また得られた複合ステーブルのカード性は5分後にはネップが多量に発生し、カード装置がつまりを生じ、良好なウエッブを得ることができなくなった。このときの割繊割合は75%であった。
【0051】
比較例3
実施例1と同じ組成で、A層の樹脂成分Aとして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートとMFR23のポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製:商品名SA03A、融点168℃)を質量比で60/40の割合でチップブレンドして用いた。またB層の樹脂成分BとしてA層中成分のポリエチレンテレフタレートを用いて、A層/B層の質量比を34/66の割合で、A層を1層、B層を2層、計3層に配列させた後に口金より吐出させて紡糸した以外は実施例1と同じ処理をした。
【0052】
51mmにカットし、繊度3.3デシテックスのA1層、B2層、計3層からなる接合型複合ステーブル繊維を得た。走査型電子顕微鏡で観察した繊維横断面では、A層は2重海島構造を形成しA層側面にはポリエステルとポリプロピレンが混在する状態であった。また得られた複合ステーブルのカード、ニードル性には問題なくそれぞれの割繊割合は0.7%および2.4%と、実施例1とほぼ同じ挙動を示し、染色後の割繊も95%と良好であったが、風合い面で実施例1に比べて、劣るものであった。繊維の染めムラなどは認められなかった。
Claims (4)
- A層およびB層が相互に5層以上接合してなる接合型複合繊維の接合部を剥離し割繊極細化して得られる繊維絡合不織布と高分子弾性体からなる皮革様シート基材において、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足することを特徴とする皮革様シート基材。
- 樹脂(b)がB層を構成する樹脂である請求項1に記載の皮革様シート基材。
- 下記の工程▲1▼▲2▼▲3▼または▲1▼▲3▼▲2▼の順序で行うことを特徴とする皮革様シート基材の製造方法。
▲1▼A層およびB層が相互に5層以上接合し、該A層はポリオレフィン系樹脂(a)とB層を構成する樹脂と相溶性のある樹脂(b)が互いに連続相かつ分散相として混在しており、さらに該混在比率が質量比で(a)/(b)=25/75〜75/25を満足する接合型複合繊維より不織布を製造する工程、
▲2▼不織布に高分子弾性体を付与する工程、
▲3▼A層とB層を80〜160℃の熱水で割繊する工程、 - 液流染色機を用いてA層とB層を割繊する請求項3に記載の皮革様シート基材の製造方法。
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