以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、シャッター機構2と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、シャッター機構2、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N2))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は窒素ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、窒素ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。また、図3は保持部7を上面から見た平面図であり、図4は保持部7を側方から見た側面図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプター74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプター74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
基台リング71は円環形状の石英部材である。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。円環形状を有する基台リング71の上面に、その周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。なお、基台リング71の形状は、円環形状から一部が欠落した円弧状であっても良い。
平板状のサセプター74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。サセプター74は石英にて形成された略円形の平板状部材である。サセプター74の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、サセプター74は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。サセプター74の上面には複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76が立設されている。5個のガイドピン76はサセプター74の外周円と同心円の周上に沿って設けられている。5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76も石英にて形成されている。なお、ガイドピン76は、サセプター74と一体に石英のインゴットから加工するようにしても良いし、別途に加工したものをサセプター74に溶接等によって取り付けるようにしても良い。
基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプター74の周縁部の下面とが溶接によって固着される。すなわち、サセプター74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されており、保持部7は石英の一体成形部材となる。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、略円板形状のサセプター74は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプター74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。半導体ウェハーWは、5個のガイドピン76によって形成される円の内側に載置されることにより、水平方向の位置ずれが防止される。なお、ガイドピン76の個数は5個に限定されるものではなく、半導体ウェハーWの位置ずれを防止できる数であれば良い。
また、図2および図3に示すように、サセプター74には、上下に貫通して開口部78および切り欠き部77が形成されている。切り欠き部77は、熱電対を使用した接触式温度計130のプローブ先端部を通すために設けられている。一方、開口部78は、放射温度計120がサセプター74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。さらに、サセプター74には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプター74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプター74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
図8は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。また、図8に示すように、制御部3は、パルス発生器31および波形設定部32を備えるとともに、入力部33に接続されている。入力部33としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部33からの入力内容に基づいて波形設定部32がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってパルス発生器31がパルス信号を発生する。
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧(充電電圧)に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3によって制御される。
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートには制御部3のパルス発生器31からパルス信号が印加される。IGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Hiの電圧)が印加されるとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)が印加されるとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む駆動回路はIGBT96によってオンオフされる。IGBT96がオンオフすることによってフラッシュランプFLと対応するコンデンサ93との接続が断続される。
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
また、図1のリフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射された光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4の内部には複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLが内蔵されている。複数のハロゲンランプHLはチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも端部側の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、図1に示すように、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4およびチャンバー6の側方にシャッター機構2を備える。シャッター機構2は、シャッター板21およびスライド駆動機構22を備える。シャッター板21は、ハロゲン光に対して不透明な板であり、例えばチタン(Ti)にて形成されている。スライド駆動機構22は、シャッター板21を水平方向に沿ってスライド移動させ、ハロゲン加熱部4と保持部7との間の遮光位置にシャッター板21を挿脱する。スライド駆動機構22がシャッター板21を前進させると、チャンバー6とハロゲン加熱部4との間の遮光位置(図1の二点鎖線位置)にシャッター板21が挿入され、下側チャンバー窓64と複数のハロゲンランプHLとが遮断される。これによって、複数のハロゲンランプHLから熱処理空間65の保持部7へと向かう光は遮光される。逆に、スライド駆動機構22がシャッター板21を後退させると、チャンバー6とハロゲン加熱部4との間の遮光位置からシャッター板21が退出して下側チャンバー窓64の下方が開放される。
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。また、図8に示したように、制御部3は、パルス発生器31および波形設定部32を備える。上述のように、入力部33からの入力内容に基づいて、波形設定部32がパルス信号の波形を設定し、それに従ってパルス発生器31がIGBT96のゲートにパルス信号を出力する。この制御部3と、トリガー回路97と、IGBT96とによってフラッシュランプFLの発光を制御する発光制御手段が構成される。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その添加された不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプター74の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプター74に受け渡されて水平姿勢に保持される。半導体ウェハーWは、イオン注入がなされた表面を上面としてサセプター74に保持される。また、半導体ウェハーWは、サセプター74の上面にて5個のガイドピン76の内側に保持される。サセプター74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
半導体ウェハーWが保持部7のサセプター74に載置されて保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWの温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
図9は、半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。半導体ウェハーWが搬入されてサセプター74に載置された後、制御部3が時刻t0に40本のハロゲンランプHLを点灯させてハロゲン光照射によって半導体ウェハーWを800℃以下の予備加熱温度T1(本実施形態では500℃)にまで昇温している。半導体ウェハーWの温度は接触式温度計130および放射温度計120によって測定されている。これらによって測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。すなわち、制御部3は、接触式温度計130および放射温度計120による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御している。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、接触式温度計130および放射温度計120によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時刻t1にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御して半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。さらに、チャンバー側部61に装着された反射リング69の内周面は鏡面とされているため、この反射リング69の内周面によって半導体ウェハーWの周縁部に向けて反射する光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一なものとすることができる。
次に、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t2にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を実行する。なお、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時刻t1からフラッシュランプFLが発光する時刻t2までの時間は数秒程度である。フラッシュランプFLがフラッシュ光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95によってコンデンサ93に電荷を蓄積しておく。そして、コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にて、制御部3のパルス発生器31からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。第1実施形態においては、IGBT96のオンオフ駆動によってコンデンサ93とフラッシュランプFLとの接続を断続することにより、フラッシュランプFLを2回発光、つまり2回のフラッシュ光照射を行っている。
パルス発生器31が出力するパルス信号の波形は、パルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とをパラメータとして順次設定したレシピを入力部33から入力することによって規定することができる。図10は、第1実施形態にて入力部33から入力するレシピの一例を示す図である。図10に示すレシピの例では、2回のフラッシュ光照射に対応する2つのステップが設定されており、第1ステップでは1ミリ秒(=1000マイクロ秒)のオン時間と3ミリ秒のオフ時間が設定され、第2ステップでは0.9ミリ秒のオン時間が設定されている。なお、第2ステップにオフ時間が設定されていないのは、第2ステップでのフラッシュ光照射が最終段の発光となり、特段にオフ時間を設定する必要がないためである(適当な任意の数値を設定するようにしても良い)。
図10に示すようなパラメータを記述したレシピをオペレータが入力部33から制御部3に入力すると、それに従って制御部3の波形設定部32はオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。そして、波形設定部32によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器31がパルス信号を出力する。その結果、IGBT96のゲートにはオンオフを繰り返す波形のパルス信号が印加され、IGBT96のオンオフ駆動が制御されることとなる。
図11は、パルス信号の波形と回路に流れる電流との相関を示す図である。図11(a)はパルス発生器31から出力されるパルス信号の波形を示し、図11(b)はフラッシュランプFLを含む図8の回路に流れる電流の波形を示す。図10に示す如きレシピが入力部33から制御部3に入力されると、図11(a)に示すような波形が波形設定部32によって設定され、かかる波形のパルス信号がパルス発生器31から出力される。図11(a)に示すパルス波形においては、第1のフラッシュ光照射に対応する幅1ミリ秒の第1パルスが設定されるとともに、第2のフラッシュ光照射に対応する幅0.9ミリ秒の第2パルスが設定されている。第1パルスと第2パルスとの間の間隔は3ミリ秒である。図11(a)に示すような波形のパルス信号がIGBT96のゲートに印加され、IGBT96のオンオフ駆動が制御されることとなる。具体的には、IGBT96のゲートに入力されるパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、パルス信号がオフのときにはIGBT96がオフ状態となる。
また、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになる毎にオンになるタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧(トリガー電圧)を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96のゲートに第1パルスが入力され、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、フラッシュランプFLのガラス管92内の両端電極間で電流が流れ始め、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出されて第1のフラッシュ光照射が行われる。そして、1ミリ秒後に第1パルスがオフになると、フラッシュランプFLのガラス管92内に流れる電流値が減少し、一旦フラッシュランプFLが完全に消灯する。すなわち、第1のフラッシュ光照射におけるフラッシュランプFLの照射時間は、第1パルスのオン時間と同じ1ミリ秒である。
次に、第1パルスがオフとなって3ミリ秒後にIGBT96のゲートに第2パルスが入力され、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、ガラス管92内の両端電極間で再び電流が流れ始め、フラッシュランプFLから第2のフラッシュ光照射が行われる。そして、0.9ミリ秒後に第2パルスがオフになると、ガラス管92内に流れる電流値が減少してフラッシュランプFLが再び消灯する。すなわち、第2のフラッシュ光照射におけるフラッシュランプFLの照射時間は、第2パルスのオン時間と同じ0.9ミリ秒である。このようにして、フラッシュランプFLには図11(b)に示すような波形の電流が流れ、フラッシュランプFLは2回発光する。なお、各パルスに対応する個々の電流波形はコイル94の定数によって規定される。
フラッシュランプFLの発光出力は、フラッシュランプFLに流れる電流にほぼ比例する。従って、フラッシュランプFLの発光出力の出力波形(プロファイル)は図11(b)に示した電流波形と同じようなパターンとなる。図11(b)に示すのと同様のフラッシュランプFLからの出力波形にて、保持部7のサセプター74に載置された半導体ウェハーWにフラッシュ光照射が行われる。
図12は、図9のフラッシュ加熱近傍(時刻t2前後)を拡大した図である。図12において、実線にて示すのは半導体ウェハーWの表面の温度であり、点線にて示すのは半導体ウェハーWの裏面の温度である。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階では半導体ウェハーWの全体が均一に加熱されており、表面および裏面の双方が同じ予備加熱温度T1に昇温されている。そして、時刻t21にてIGBT96のゲートに第1パルスが入力され、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、フラッシュランプFLから第1のフラッシュ光照射が行われる。この第1のフラッシュ光照射により半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に1000℃以上の処理温度T2(本実施形態では約1200℃)まで上昇する一方、その瞬間の裏面温度は予備加熱温度T1からさほどには上昇しない。すなわち、半導体ウェハーWの表面と裏面とに瞬間的に温度差が発生するのである。
このようなフラッシュ光照射時に生じる半導体ウェハーWの表面と裏面との温度差は、表面から裏面への熱伝導によって短時間のうちに消滅する。すなわち、瞬間的に昇温した半導体ウェハーWの表面から裏面に向けて熱伝導が生じ、それによって表面の温度が急速に低下するとともに裏面の温度が若干上昇する。そして、短時間のうちに半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなる。例えば、φ300mmの半導体ウェハーW(厚さは0.775mm)であれば、フラッシュ光照射の瞬間から表面温度と裏面温度とが等しくなるまでに要する時間は約15ミリ秒程度である。
第1実施形態においては、時刻t21にて第1のフラッシュ光照射が行われた後、半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなる前に、時刻t22にてIGBT96のゲートに第2パルスが入力され、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されてフラッシュランプFLから第2のフラッシュ光照射が行われる。この第2のフラッシュ光照射により半導体ウェハーWの表面温度は再び瞬間的に処理温度T2にまで上昇する。そして、第2のフラッシュ光照射の後、再び半導体ウェハーWの表面から裏面に向けての熱伝導が生じ、時刻t23に半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなる。なお、図9の時刻スケールは秒であるのに対して、図12の時刻スケールはミリ秒であるため、t21からt23はいずれも図9ではt2に重ねて表示されるものである。
このような2回のフラッシュ光照射により、半導体ウェハーWに添加された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。図9に戻り、第2のフラッシュ光照射が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが降温を開始する。また、ハロゲンランプHLが消灯するのと同時に、シャッター機構2がシャッター板21をハロゲン加熱部4とチャンバー6との間の遮光位置に挿入する。ハロゲンランプHLが消灯しても、すぐにフィラメントや管壁の温度が低下するものではなく、暫時高温のフィラメントおよび管壁から輻射熱が放射され続け、これが半導体ウェハーWの降温を妨げる。シャッター板21が挿入されることによって、消灯直後のハロゲンランプHLから熱処理空間65に放射される輻射熱が遮断されることとなり、半導体ウェハーWの降温速度を高めることができる。
そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプター74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプター74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
第1実施形態においては、半導体ウェハーWに対して1回目のフラッシュ光照射を行って半導体ウェハーWの表面を加熱した後、その半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなる前に2回目のフラッシュ光照射を行って半導体ウェハーWの表面を再加熱している。具体的には、フラッシュ光照射の瞬間から表面温度と裏面温度とが等しくなるまでに要する時間は約15ミリ秒程度であるため、1回目のフラッシュ光照射を行ってから15ミリ秒以内に2回のフラッシュ光照射を行って半導体ウェハーWの表面を再加熱している。
1回目のフラッシュ光照射を行った後、半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなった後に2回目のフラッシュ光照射を行うと、表面の温度が裏面への熱伝導によって相当に低下してから2回目のフラッシュ光照射を行うこととなるため、2回目のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の到達温度も比較的低いものとならざるを得ない。第1実施形態のように、1回目のフラッシュ光照射を行った後、半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなる前に2回目のフラッシュ光照射を行うようにすれば、半導体ウェハーWの表面温度が低下する前に2回目のフラッシュ光照射を行うこととなるため、2回目のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の到達温度を上記よりも高くすることができる。
その結果、図10に示したように、2回目のフラッシュ光照射の照射時間を1回目よりも短くしてフラッシュ光照射に消費するエネルギーを少なくしたとしても、2回目のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面到達温度を1回目と同じ処理温度T2とすることができる。このことは、1回目のフラッシュ光照射によって蓄積している電荷量が減少しているコンデンサ93から再びフラッシュランプFLに電荷を供給して2回目のフラッシュ光照射を行う場合に好適である。
第1実施形態においては、2回のフラッシュ光照射を行うようにしていたが、フラッシュ光照射の回数は2回に限定されるものではなく、3回以上であっても良い。例えば、3回のフラッシュ光照射を行う場合には、上記と同様にして2回目のフラッシュ光照射を行った後、半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなる前に3回目のフラッシュ光照射を行う。
すなわち、n回(nは2以上の整数)のフラッシュ光照射を行う場合に、半導体ウェハーWに対してi回目(iは(n−1)以下の自然数)のフラッシュ光照射を行って半導体ウェハーWの表面を加熱した後、当該半導体ウェハーWの表面の温度と裏面の温度とが等しくなる前に(i+1)回目のフラッシュ光照射を行って半導体ウェハーWの表面を再加熱するようにフラッシュランプFLの発光を制御すれば良い。このようにすれば、n回のフラッシュ光照射を行う場合に、i回目のフラッシュ光照射の後に半導体ウェハーWの表面温度が低下する前に(i+1)回目のフラッシュ光照射を行うこととなり、回数の増加にともなって消費エネルギーが少なくなったとしても各回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の加熱効率を向上させることができる。i回目のフラッシュ光照射と(i+1)回目のフラッシュ光照射との間隔を上記よりも短くすればi回目よりも(i+1)回目の表面到達温度を高くすることができ、逆に長くすればi回目よりも(i+1)回目の表面到達温度を低くすることができる。なお、1回目のフラッシュ光照射から最後(n回目)のフラッシュ光照射が完了するまでの時間は1秒未満である。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の構成は第1実施形態と全く同じである。また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順についても概ね第1実施形態と同様(図9参照)であり、複数回のフラッシュ光照射を行う。
第1実施形態と同様に、ハロゲンランプHLによる予備加熱によって半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t2にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を実行する。フラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行うに際しては、予めコンデンサ93に電荷を蓄積した状態にて、制御部3のパルス発生器31からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。第2実施形態においては、IGBT96のオンオフ駆動によってコンデンサ93とフラッシュランプFLとの接続を断続することにより、フラッシュランプFLを3回発光、つまり3回のフラッシュ光照射を行っている。
図13は、3回のフラッシュ光照射におけるそれぞれのフラッシュランプFLの照射時間を1ミリ秒としたときの半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。具体的には、図10に示すようなレシピにおいて、3回のフラッシュ光照射に対応する3つのステップのオン時間をいずれも1ミリ秒に設定し(オフ時間は4ミリ秒)、そのレシピを入力部33から制御部3に入力する。これにより、幅1ミリ秒の3つのパルスが順次にIGBT96のゲートに印加され、IGBT96の1ミリ秒オン状態となることが3回繰り返されることとなる。
また、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになる毎にそのタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧を印加する。その結果、フラッシュランプFLが3回発光し、照射時間1ミリ秒のフラッシュ光照射が3回繰り返されることとなる。このような照射時間1ミリ秒のフラッシュ光照射を3回繰り返した場合、図13に示すように、3回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面到達温度は概ね等しくなる。
一方、図14は、3回のフラッシュ光照射におけるそれぞれのフラッシュランプFLの照射時間を1.4ミリ秒としたときの半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。上記と同様に、3回のフラッシュ光照射に対応する3つのステップのオン時間をいずれも1.4ミリ秒に設定し(オフ時間は4ミリ秒)、そのレシピを入力部33から制御部3に入力する。そして、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになる毎にそのタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧を印加する。その結果、フラッシュランプFLが3回発光し、照射時間1.4ミリ秒のフラッシュ光照射が3回繰り返されることとなる。このような照射時間1.4ミリ秒のフラッシュ光照射を3回繰り返した場合、図14に示すように、1回目のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面到達温度は高くなるものの、2回目以降のフラッシュ光照射による表面到達温度は回数が増えるごとに低くなる。
図13と図14とを対比すると明らかなように、同じように3回のフラッシュ光照射を行う場合であっても、照射時間が1ミリ秒では半導体ウェハーWの表面到達温度がほぼ等しくなるのに対して、照射時間が1.4ミリ秒と長くなると表面到達温度が次第に低くなる。照射時間1.4ミリ秒では、1回目のフラッシュ光照射による表面到達温度を2,3回目のフラッシュ光照射では維持することができない。これは、照射時間が長くなるほど1回のフラッシュ光照射による消費エネルギーが多くなり、その分だけコンデンサ93に蓄えられている電荷が少なくなり、2回目以降のフラッシュ光照射時にフラッシュランプFLを流れる電流値が大幅に少なくなるためである。
本発明者がフラッシュランプFLの照射時間とコンデンサ93に蓄えられている電荷によるエネルギーの消費量との相関について鋭意調査を行った結果、図15のような結果が得られた。フラッシュランプFLの照射時間については、図10の如きレシピに設定するパルス幅の時間(オン時間)によって変化させている。一方、コンデンサ93に蓄えられている電荷のエネルギーは、コンデンサ93の静電容量をC、電荷による電圧をVとしたときにCV2/2として算定される。いずれのパルス幅についても、フラッシュ光照射前の電源ユニット95による初期の充電電圧は4000Vとしている。そして、設定したパルス幅での1回のフラッシュ光照射が終了した時点でコンデンサ93に残留している電荷の電圧(残留電圧)と初期の充電電圧との差分から消費したエネルギーを算定し、その消費量を図15に記載している。
図15に示すように、照射時間(パルス幅時間)が1.0ミリ秒では1回の照射で初期にコンデンサ93に蓄えられていたエネルギーの25%が消費されるのに対して、1.4ミリ秒では初期にコンデンサ93に蓄えられていたエネルギーの40%が消費される。このため、照射時間1.4ミリ秒にて3回のフラッシュ光照射を行った場合には、特に後段のフラッシュ光照射時にコンデンサ93に十分なエネルギーが残留しておらず、フラッシュランプFLに流れる電流値が大幅に少なくなって発光強度が弱くなり、半導体ウェハーWの表面到達温度が低くなったものと考えられる。
そこで、第2実施形態においては、n回(nは2以上の整数)のフラッシュ光照射を行う場合における各回のフラッシュ光照射で消費するエネルギーPflashを次の式(1)のように規定している。式(1)において、Pinitialは最初のフラッシュ光照射を行う前の初期のコンデンサ93に蓄えられているエネルギーである(充電ユニット95による充電直後のエネルギー)。
式(1)によれば、フラッシュ光照射を2回行うのであれば、フラッシュランプFLから1回のフラッシュ光照射を行うときに消費するエネルギーPflashを、最初のフラッシュ光照射を行う前にコンデンサ93に蓄えられたエネルギーPinitialの1/3以下とする。また、フラッシュ光照射を3回行うのであれば、フラッシュランプFLから1回のフラッシュ光照射を行うときに消費するエネルギーPflashを、最初のフラッシュ光照射を行う前にコンデンサ93に蓄えられたエネルギーPinitialの1/4以下とする。要するに、フラッシュ光照射をn回(nは2以上の整数)行うのであれば、フラッシュランプFLから1回のフラッシュ光照射を行うときに消費するエネルギーPflashを、最初のフラッシュ光照射を行う前にコンデンサ93に蓄えられたエネルギーPinitialの1/(n+1)以下とするのである。なお、1回目のフラッシュ光照射から最後(n回目)のフラッシュ光照射が完了するまでの時間は1秒未満である。
1回のフラッシュ光照射で消費するエネルギーPflashは図15の表に基づいてパルス幅の時間をレシピに設定することによって調整することができる。例えば、1回の消費エネルギーPflashを初期のエネルギーPinitialの1/3以下とするのであれば、パルス幅の時間を1.2ミリ秒以下とすれば良い。また、1回の消費エネルギーPflashを初期のエネルギーPinitialの1/4以下とするのであれば、パルス幅の時間を1.0ミリ秒以下とすれば良い。このようなパルス幅を設定したレシピを入力部33から制御部3に入力することにより、当該パルス幅を有するパルスがIGBT96のゲートに入力され、そのパルス幅の時間だけIGBT96がオン状態となってコンデンサ93とフラッシュランプFLとの接続を断続する。
このようにすれば、n回のフラッシュ光照射を行う際に、各回のフラッシュ光照射に必要な最低限のエネルギーを確保することができ、n回のフラッシュ光照射の全体にわたって各回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の加熱効率を向上させることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の構成は第1実施形態と全く同じである。また、第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順についても概ね第1実施形態と同様(図9参照)であり、複数回のフラッシュ光照射を行う。
第1実施形態と同様に、ハロゲンランプHLによる予備加熱によって半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t2にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を実行する。フラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行うに際しては、予めコンデンサ93に電荷を蓄積した状態にて、制御部3のパルス発生器31からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。第3実施形態においては、IGBT96のオンオフ駆動によってコンデンサ93とフラッシュランプFLとの接続を断続することにより、フラッシュランプFLを3回発光、つまり3回のフラッシュ光照射を行っている。
図16は、第3実施形態にて用いるレシピの一例を示す図である。第3実施形態の例では、3回のフラッシュ光照射に対応する3つのステップが設定されており、第1ステップでは1.15ミリ秒(=1150マイクロ秒)のオン時間と4ミリ秒のオフ時間が設定され、第2ステップでは1.2ミリ秒のオン時間と4ミリ秒のオフ時間が設定され、さらに第3ステップでは1.4ミリ秒のオン時間が設定されている。なお、最終段の第3ステップにオフ時間が設定されていないのは、上記図10の例と同じく、特段にオフ時間を設定する必要がないためである。
図16に示すようなパラメータを記述したレシピをオペレータが入力部33から制御部3に入力すると、それに従って制御部3の波形設定部32はオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。そして、波形設定部32によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器31がパルス信号をIGBT96のゲートに出力し、IGBT96をオンオフ駆動する。また、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになる毎にそのタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧を印加する。その結果、オンオフ駆動されるIGBT96によってコンデンサ93とフラッシュランプFLとの接続が断続され、フラッシュランプFLの発光が制御される。
第3実施形態においては3回のフラッシュ光照射が行われ、それぞれにおけるフラッシュランプFLの照射時間は各ステップのオン時間と同じである。図16に示すように、第3実施形態では、1回目のフラッシュ光照射の照射時間(1.15ミリ秒)よりも2回目のフラッシュ光照射の照射時間(1.2ミリ秒)の方が長い。また、2回目のフラッシュ光照射の照射時間(1.2ミリ秒)よりも3回目のフラッシュ光照射の照射時間(1.4ミリ秒)の方が長い。
図17は、第3実施形態における半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。図16に示すレシピに基づいて生成されたパルス信号によってIGBT96をオンオフ駆動し、後段ほど照射時間が長くなるようにフラッシュランプFLの発光を制御することにより、図17に示すように、3回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面到達温度を概ね等しくすることができる。これは、複数回のフラッシュ光照射における後段ほど照射時間(オン時間)を長くすることにより、前段で消費されて減少したコンデンサ93に残留しているエネルギーより多く取り出すことができるため、2回目以降のフラッシュ光照射であっても必要な最低限のエネルギーを確保することができ、その結果各回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の加熱効率を向上させることができたためである。
このように、第3実施形態においては、n回(nは2以上の整数)のフラッシュ光照射を行う場合に、半導体ウェハーWに対してi回目(iは(n−1)以下の自然数)のフラッシュ光照射を照射時間tiにて行った後、(i+1)回目のフラッシュ光照射をtiよりも長い照射時間t(i+1)にて行うようにフラッシュランプFLの発光を制御している。これにより、n回のフラッシュ光照射の後段ほど照射時間が長くなり、前段で消費されて減少したコンデンサ93の残留エネルギーをより多く取り出して各回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の加熱効率を向上させることができる。なお、1回目のフラッシュ光照射から最後(n回目)のフラッシュ光照射が完了するまでの時間は1秒未満である。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱処理装置の構成は第1実施形態と全く同じである。また、第4実施形態における半導体ウェハーWの処理手順についても概ね第1実施形態と同様(図9参照)であり、複数回(第4実施形態では少なくとも3回以上)のフラッシュ光照射を行う。
第1実施形態と同様に、ハロゲンランプHLによる予備加熱によって半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t2にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を実行する。フラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行うに際しては、予めコンデンサ93に電荷を蓄積した状態にて、制御部3のパルス発生器31からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。第4実施形態においては、IGBT96のオンオフ駆動によってコンデンサ93とフラッシュランプFLとの接続を断続することにより、フラッシュランプFLを3回発光、つまり3回のフラッシュ光照射を行っている。
図18は、第4実施形態にて用いるレシピの一例を示す図である。第4実施形態の例では、3回のフラッシュ光照射に対応する3つのステップが設定されており、第1ステップでは1.2ミリ秒(=1200マイクロ秒)のオン時間と4ミリ秒のオフ時間が設定され、第2ステップでは1.2ミリ秒のオン時間と1.5ミリ秒のオフ時間が設定され、さらに第3ステップでは1.2ミリ秒のオン時間が設定されている。なお、最終段の第3ステップにオフ時間が設定されていないのは、上記図10の例と同じく、特段にオフ時間を設定する必要がないためである。
図18に示すようなパラメータを記述したレシピをオペレータが入力部33から制御部3に入力すると、それに従って制御部3の波形設定部32はオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。そして、波形設定部32によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器31がパルス信号をIGBT96のゲートに出力し、IGBT96をオンオフ駆動する。また、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになる毎にそのタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧を印加する。その結果、オンオフ駆動されるIGBT96によってコンデンサ93とフラッシュランプFLとの接続が断続され、フラッシュランプFLの発光が制御される。すなわち、コンデンサ93に蓄積された電荷をフラッシュランプFLで放電させることによって半導体ウェハーWに対して1回目のフラッシュ光照射を行った後、コンデンサ93に残留している電荷をフラッシュランプFLで放電させることによって2回目のフラッシュ光照射を行い、その後コンデンサ93に残留している電荷をフラッシュランプFLでさらに放電させることによって3回目のフラッシュ光照射を行う。
このようにして第4実施形態では3回のフラッシュ光照射が行われ、それぞれにおけるフラッシュランプFLの照射時間は各ステップのオン時間と同じである。また、1回目のフラッシュ光照射と2回目のフラッシュ光照射との間の間隔(非照射時間)は第1ステップのオフ時間と同じであり、2回目のフラッシュ光照射と3回目のフラッシュ光照射との間の非照射時間は第2ステップのオフ時間と同じである。図18に示すように、第4実施形態では、3回のフラッシュ光照射の照射時間は互いに等しく1.2ミリ秒であり、1回目のフラッシュ光照射と2回目のフラッシュ光照射との間の非照射時間(4ミリ秒)よりも、2回目のフラッシュ光照射と3回目のフラッシュ光照射との間の非照射時間(1.5ミリ秒)の方が短い。
図19は、第4実施形態における半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。図18に示すレシピに基づいて生成されたパルス信号によってIGBT96をオンオフ駆動し、後段ほど非照射時間が短くなるようにフラッシュランプFLの発光を制御することにより、図19に示すように、3回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面到達温度を概ね等しくすることができる。これは、複数回のフラッシュ光照射における後段ほど非照射時間(オフ時間)を短くすることにより、フラッシュ光照射後に半導体ウェハーWの表面温度が低下する前に次のフラッシュ光照射を行うことができるため、後段ほどコンデンサ93に残留しているエネルギーが少なくなったとしても各回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の加熱効率を向上させることができたためである。
このように、第4実施形態においては、n回(nは3以上の整数)のフラッシュ光照射を行う場合に、半導体ウェハーWに対してi回目(iは(n−2)以下の自然数)のフラッシュ光照射を行ってから(i+1)回目のフラッシュ光照射を行うまでの非照射時間よりも、(i+1)回目のフラッシュ光照射を行ってから(i+2)回目のフラッシュ光照射を行うまでの非照射時間の方が短くなるようにフラッシュランプFLの発光を制御している。これにより、n回のフラッシュ光照射の後段ほど照射間隔(非照射時間)が短くなり、フラッシュ光照射後に半導体ウェハーWの表面温度が低下する前に次のフラッシュ光照射を行うことができるため、各回のフラッシュ光照射による半導体ウェハーWの表面の加熱効率を向上させることができる。なお、1回目のフラッシュ光照射から最後(n回目)のフラッシュ光照射が完了するまでの時間は1秒未満である。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになる毎にそのタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧を印加するようにしていたが、これに限定されるものではなく、最初にパルス信号がオンになるときのみトリガー電極91に高電圧を印加するようにしても良い。このようにする場合、フラッシュ光照射の間に小刻みにIGBT96をオンオフ駆動させて小さなフラッシュを繰り返し発生させることにより、フラッシュランプFLに弱い電流を流し続けるようにしておいた方が、次のフラッシュ光照射時にフラッシュランプFLを確実に発光させることができる。もっとも、フラッシュ光照射の間隔(非照射時間)が10ミリ秒以内程度であれば、微弱電流を流し続けなくても次にIGBT96がオン状態となってコンデンサ93とフラッシュランプFLとを接続するだけでフラッシュランプFLを再発光させることが可能な場合もある。
また、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになる毎にトリガー電極91に高電圧を印加する場合には、フラッシュランプFLの放電を確実なものとすべくパルス信号がオンになってから所定時間後にトリガー電圧を印加するようにしても良い。このようにした場合、フラッシュランプFLの照射時間は、トリガー電極91に高電圧が印加されてからパルス信号がオフとなるまでの時間となり、上記実施形態(照射時間=パルス幅の時間)とは異なる。また、フラッシュランプFLの照射間隔(非照射時間)はパルス信号がオフとなってから次のパルスに対応するトリガー電圧が印加されるまでの時間となる。すなわち、レシピ上でのオン時間、オフ時間と実際のフラッシュランプFLの照射時間、非照射時間とが一致しなくなる。このため、レシピで設定するオン時間をトリガー電極91にトリガー電圧が印加されてからパルス信号がオフとなるまでの時間とし、オフ時間をパルス信号がオフとなってから次のパルスに対応するトリガー電圧が印加されるまでの時間とした方がオペレータの操作性が向上する。
また、パルス信号の波形の設定は、入力部33から逐一パルス幅等のパラメータを入力することに限定されるものではなく、例えば、オペレータが入力部33から波形を直接グラフィカルに入力するようにしても良いし、以前に設定されて磁気ディスク等の記憶部に記憶されていた波形を読み出すようにしても良いし、或いは熱処理装置1の外部からダウンロードするようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、スイッチング素子としてIGBT96を用いていたが、これに代えてゲートに入力された信号レベルに応じて回路をオンオフできる他のトランジスタを用いるようにしても良い。もっとも、フラッシュランプFLの発光には相当に大きな電力が消費されるため、大電力の取り扱いに適したIGBTやGTO(Gate Turn Off)サイリスタをスイッチング素子として採用するのが好ましい。
また、上記各実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
また、上記各実施形態においては、ハロゲンランプHLからのハロゲン光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、予備加熱の手法はこれに限定されるものではなく、ホットプレートに載置することによって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。