JP2012184575A - 鋼構造物の補修方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼構造物の補修方法は、鋼材で形成された構造物100の表面に、ポリマーセメント比が10重量%以上のゴム系ポリマーモルタルを吹き付けモルタル層10を形成する。モルタル層10の厚さが、構造物100の厚さとせん断弾性係数との積を、モルタル層10のせん断弾性係数で除した値にほぼ等しく設定されている。
【選択図】図1
Description
たとえば、鋼構造物の劣化した表面をケレン処理し、この表面に当て板を配設し、当て板を高力ボルトなどで鋼構造物に取り付ける方法がある。高力ボルトを取り付ける数は、鋼構造物に作用する応力に応じて決定される。
しかし、この補修方法は、一般的に狭隘な作業空間で行われるうえに、高力ボルト用の孔開け作業が煩雑であり、孔を開けることによる鋼構造物の剛性の低下を検討する必要がある。このため、充分な品質管理ができず補修コストもかかっており、補修後数年以内で補修した鋼構造物の部分から錆が生じることがあった。
上記の問題を解決するために、特許文献1に記載された補修方法が提案されている。
鋼桁をこのように補修することで、鋼桁の耐荷力を向上させる補強を容易に行うことができるという。
本発明の鋼構造物の補修方法は、鋼材で形成された構造物の表面に、ポリマーセメント比が10重量%以上のゴム系ポリマーモルタルを吹き付けモルタル層を形成することを特徴としている。
この発明によれば、モルタル層は、ゴム系のポリマーを含有しているため透水性が低くなっているとともに、モルタルを含有しているため一定以上の剛性を備えている。
また、上記の鋼構造物の補修方法において、前記構造物の表面上に引張り材を配してから前記ゴム系ポリマーモルタルを吹き付けてモルタル層を形成することで、前記モルタル層中に前記引張り材を埋設することがより好ましい。
また、上記の鋼構造物の補修方法において、前記モルタル層上に鉄筋コンクリート層を設けることがより好ましい。
請求項2に記載の鋼構造物の補修方法によれば、構造物およびモルタル層のせん断力に対する剛性をほぼ均等にすることで、構造物のせん断力に対する剛性をより効果的に高めることができる。
請求項3に記載の鋼構造物の補修方法によれば、モルタル層の引張り強度を補強することができる。
請求項4に記載の鋼構造物の補修方法によれば、せん断方向の接続強度は、モルタル層と構造物との間より、モルタル層とコンクリート層との間の方が大きいため、構造物の剛性をさらに高めることができる。
以下、本発明に係る鋼構造物の補修方法(以下、単に「補修方法」とも称する。)の第1実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。以下では、鋼構造物が橋梁である場合を例にとって説明する。
図1に示すように、本補修方法が用いられる橋梁100は鋼材で形成されていて、鉛直方向Zに延びる橋脚110と、橋脚110上に取り付けられた橋桁120とを備えている。
橋桁120は、鉛直方向Zに略平行に配置され水平方向Xに延びるウエブ121と、ウエブ121の上端および下端に接続されたフランジ122、123とを有している。ウエブ121とフランジ122、123とで、H型鋼を構成している。フランジ123上には、不図示の床版および舗装が配設され、舗装上を車両や歩行者が通行できるようになっている。
フランジ122と123との間であって、橋脚110の上方には、橋桁120を補強するための補強部材125が溶接などにより橋桁120に取り付けられている。
本実施形態の補修方法では、ゴム系ポリマーモルタルとして、たとえば、太平洋マテリアル(株)製のモルタル接着増強剤(CX−B)を用いたポリマーセメントであるゴムラテックスモルタルを好適に使用することができる。ゴムラテックスモルタルは、モルタル混練時に水と一緒に混和するモルタル接着増強剤の量を調節することで、ポリマーセメント比(ポリマーセメントにおける、セメント重量に対するポリマー重量の比のこと。以下、「P/C」と称する。)を、10重量%以上に調節している。
なお、ここで言う接続強度とは、ゴムラテックスモルタルの接続面に垂直な方向における強度を意味する。
なお、吹き付け工程を行う前に、劣化領域Rの表面をケレン処理(2種ケレン以上が好ましい。)してもよい。
吹き付け工程では、図2に示すように、劣化領域Rの表面にゴム系ポリマーモルタルを吹き付けて、モルタル層10を形成する。
吹き付け工程で行うゴムラテックスモルタルの吹き付けには、たとえば、ノズルから圧縮空気とともにモルタルを吹き出させる公知の吹き付け機を用いることができる。モルタル層10の厚さL1は、橋桁120の厚さL2と鋼材のせん断弾性係数との積を、モルタル層10のせん断弾性係数で除した値にほぼ等しく設定されている。
たとえば、劣化することで減肉した橋桁120の厚さL2が1.5mm、鋼材のせん断弾性係数が77,000N/mm2、使用したモルタル層10のせん断弾性係数が8,300N/mm2の場合には、モルタル層10の厚さL1は(1)式より求めることができる。
1.5×77,000/8,300=13.9mm ・・(1)
以上の工程により、本実施形態の補修方法が終了する。
また、吹き付けにより施工することで、劣化領域Rの表面に多少の凹凸があっても、容易に補修することができる。
前述の特許文献1に記載された補修方法とは異なりスタッドを設ける必要がないため、施工を容易に行うことができる。
次に、本発明の第2実施形態について図3および図4などを参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図3に示すように、本実施形態の補修方法は、前記第1実施形態の補修方法において、吹き付け工程の後に鉄筋コンクリート配設工程を備え、モルタル層10上に鉄筋コンクリート層20を設けている。
本補修方法は、前記第1実施形態の補修方法における吹き付け工程までは同一なので説明を省略する。
以上の工程により、本実施形態の補修方法が終了する。
鉄筋を備えなくても、モルタル層10とコンクリート層とにより本実施形態と同様の接続強度を得られるからである。
引張り材としては、引張り強度および耐水性が高い材料を用いることが好ましく、炭素繊維以外にも、ポリ塩化ビニル樹脂の繊維などを好適に用いることができる。
一般的に、モルタル層10の引張り強度は弱いため、モルタル層10中に炭素繊維30を埋設することで、モルタル層10の引張り強度を補強することができる。
以下では、JISに規定される一般構造用角型鋼管STKR400(断面の外形が300mm×300mmの矩形状で、厚さが6mmの鋼材。以下、単に「角型鋼管」とも称する。)が、設計基準強度σckが25MPaのコンクリート層に埋め込まれた場合で説明する。この状態から、コンクリート層に対して、角型鋼管を角型鋼管の長手方向に引っ張るときの耐荷重を検討する。
まず、第1の参考例として、図5および図6に示すように、角型鋼管200に多数のスタッド201が取り付けられている場合について説明する。この場合、スタッド201が取り付けられた角型鋼管200とコンクリート層250とを接続した接続構造となる。
スタッド201は、角型鋼管200におけるコンクリート層250に埋め込まれた側の端部200aから角型鋼管200の長手方向Dに100mm離間した位置から、角型鋼管200の外周面に8本ずつ、55mm置きに設けられている。なお、スタッド201のコンクリート層250のかぶり厚さを100mmとする。
Ta=σta×As×100=974,820N ・・(2)
スタッド201の軸径dを22mmとすると、スタッド201の許容耐力Qaは(3)式より求めることができる。
Qa=9.4×d2×√σck=22,748N ・・(3)
角型鋼管200をコンクリート層250に定着させるために必要なスタッド201の本数Naは、スタッド201が長手方向Dに8本ずつ設けられていること、および(4)、(5)式より、5.36より大きい自然数で6列、すなわち48本となる。
Ta/Qa=42.853 ・・(4)
42.853/8=5.36 ・・(5)
よって、定着に必要な角型鋼管200の長さL6は、(6)式より求められる。
L6=100+55×(6−1)+100=475mm ・・(6)
コンクリート層250と角型鋼管200との間のせん断方向の接続強度τuは0.9N/mm2となるため、安全率γaを3とすると、角型鋼管200の外周長さLrと、定着に必要な角型鋼管200の長さL7は、(7)、(8)式よりそれぞれ求められる。
Lr=300×4=1,200mm ・・(7)
L7=Ta×γa/(Lr×τu)=2,708mm ・・(8)
モルタル層10と角型鋼管200との間のせん断方向の接続強度τuは4.5N/mm2、モルタル層10とコンクリート層250との間のせん断方向の接続強度は4.5N/mm2より充分大きな値となる。
この場合、定着に必要な角型鋼管200の長さL8は、(9)式より求められる。
L8=Ta×γa/(Lr×τu)=542mm ・・(9)
このように、角型鋼管200とコンクリート層250とのせん断方向の接続強度は、スタッド201やモルタル層10を用いることで同程度に高められる。
また、モルタル層10は、透水性が低く引張り強度が高いため、角型鋼管200とコンクリート層250との接続面を防食することができる。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、予め劣化領域R上に金網を張っておき、この金網を覆うようにゴムラテックスモルタルを吹き付けてもよい。このような補修方法とすることで、モルタル層10が劣化領域Rに付着する強度を高めることができる。
前記第1実施形態および第2実施形態では、構造物が橋梁である場合を例にとって説明した。しかし、鋼構造物は橋梁に限ることなく、建築物や堤防などでもよい。
20 鉄筋コンクリート層
30 炭素繊維(引張り材)
100 橋梁(構造物)
Claims (4)
- 鋼材で形成された構造物の表面に、ポリマーセメント比が10重量%以上のゴム系ポリマーモルタルを吹き付けモルタル層を形成することを特徴とする鋼構造物の補修方法。
- 前記モルタル層の厚さが、前記構造物の厚さとせん断弾性係数との積を、前記モルタル層のせん断弾性係数で除した値にほぼ等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼構造物の補修方法。
- 前記構造物の表面上に引張り材を配してから前記ゴム系ポリマーモルタルを吹き付けてモルタル層を形成することで、前記モルタル層中に前記引張り材を埋設することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼構造物の補修方法。
- 前記モルタル層上に鉄筋コンクリート層を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の鋼構造物の補修方法。
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