JP2007327256A - 耐疲労鋼床版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】断面逆T字状縦リブ5または断面L字状縦リブのウェブ6が、溶接でデッキプレート2の下面に固定されて、前記断面逆T字状縦リブ5または断面L字状縦リブがデッキプレート2に設置され、前記断面逆T字状縦リブ5または断面L字状縦リブのフランジ8には、横桁4にボルト9で固定するためのボルト挿通孔を備えており、断面逆T字状縦リブ5または断面L字状縦リブのウェブ平面中心軸線C1と横桁の平面中心軸線C2との交差部を中心とする範囲であって、前記溶接によるウェブ長手方向の溶接ビードの少なくとも前記縦リブ高さ寸法の範囲に超音波ピーニングを施している。
【選択図】図1
Description
まず、図43(a)(b)に示すように、側板44に開先を設けない形態の溶接接合に対して、図43(c)(d)に示すように、断面U字状縦リブ40の側板44の溶接部の開先をつけることによる、溶け込み量の確保である。これは、前記(A)のルートき裂46による疲労き裂を防止するための対策であり、断面U字状縦リブ40とデッキプレート2の間の溶接の量を増加させることによって、溶接部の断面積を大きく(のど厚を大きく)し溶接ビード45に発生する応力を低減し、疲労寿命を向上しようというものである(例えば、非特許文献1参照)。
この措置は、鋼床版の製作仕様として、溶接部の70%の溶け込みが導入されているが、実際の構造で疲労き裂の発生を防止できていないことが既に判明している。これは、やはりグラインダーなどをかけることのできないビードのルート側の疲労強度が非常に低いことが一つの理由として挙げられる。
また、開先を取ったことによって、ルート側の溶接のフランク角がむしろ悪化していることも理由として想定される。さらに、この構造仕様は長い断面U字状縦リブ40の全長について、カイ先を設けるために部材加工に大きなコストが必要となることである。また、溶け込みを確保するために、しばしば溶接を2パスにする必要がある場合もあり、それも多大なコストアップの要因となる。
もちろん、この対策は、前記(B)の止端き裂48の防止にはなんら寄与しない。
また、図43(e)(f)に示すように、デッキプレート2と断面U字状縦リブ40の側板44との溶接部の疲労寿命を向上させるために、図43(e)に示すような12〜14mmのデッキプレート2から図43(f)に示すように、デッキプレート2の板厚を、16mmを超える板厚寸法や19mmに増加させる事も知られている(例えば、非特許文献2参照)。
これによって、デッキプレート2に発生する応力を低下させ、デッキプレート2と断面U字状縦リブ40の溶接部での発生応力を低下させ、疲労強度を向上させている。これにより、前記(A)のルートき裂を向上させるのには効果的であるが、前記(B)の止端き裂の防止への寄与度は小さい。しかも、デッキプレート2の板厚をあげることは、ダイレクトにコストの大幅な増加に繋がるのみならず、重量が激増するために、もともと重量を軽くするために用いられている鋼床版の意義を低下させる手法となっている。
前記(B)の止端き裂について、断面U字状縦リブ40と横リブ41の交差部の溶接部の疲労強度を向上させるために、図44に示すように、当該溶接部の回し溶接部51となっている部分をグラインダー50によるグラインディングで仕上げることも試みられている(例えば、非特許文献3参照)。
これは、当該溶接部51の疲労寿命を向上することに効果的である。しかしながら、この部分で十分な性能を発揮するグラインディングを行うには、断面U字状縦リブ40と横リブ41の溶接部の少なくとも回し溶接部51近傍を全溶け込み溶接にする必要がある。これは、すみ肉溶接部にグラインディングを行うと、全部ビードが削られてしまい、横リブ41のルートが露出してしまう、または、のど厚52が極端に低下してしまうために、グラインディングによってむしろ疲労強度が低下してしまうためである。このフルペネ化(フルペネトレーション:完全溶け込み溶接)は、構造の製作コストをまさに激増させてしまう。また当然、この技術は前記(A)のルートき裂の性能向上には寄与しない。
これは疲労強度向上を目的とした構造ではないが、現場での据付を容易にするために実施された構造がバトルデッキタイプの構造である。この形式には、図45に示すような米国において1930年代において仮設橋梁用として実施された形態と図46に示すような日本において提案された形式がある。
ただし、止端側は変わらないはずであるため、前記(B)止端き裂に対する十分な疲労強度が確保されているかどうかは不明である。非特許文献4に記載の疲労試験においては、断面逆T字状縦リブ55と横リブ41の溶接部においてルートからき裂が発生している。
縦リブの形状を断面I字状縦リブ53から断面逆T字状縦リブ55に変えたことによって、横リブ41がせん断で荷重を縦リブ55に伝えるような形態から、横リブ41が曲げ梁として直接荷重を受けてしまい、結果、スミ肉溶接で溶接された断面逆T字状縦リブ55と横リブ41の溶接部からルートき裂が発生したようである。なお、この実験は前記の従来対策2のデッキプレート2の板厚増加も同時に用いており、それぞれの効果の寄与分は分析することができない。ただし、まとめて言えば、前記(A)のルートき裂の疲労強度は向上するが、その向上は十分であるのかは確認されていない。また、前記(B)の止端き裂の疲労強度は特に改善されない。
(1) 等方性に近い版からなる旧設計基準によるコンクリート床版
(2) 一方向ひび割れの発生(乾燥収縮クラックの発生により異方性版に変化)
(3) 二方向ひび割れの発生(輪荷重により、異方性の方向が90°変化)
(4) 二方向ひび割れの拡大(サイコロ状に近い形態までクラック密度が増加)
(5) ひび割れ幅の拡大(クラック幅の拡大:すり磨き現象、浸透水の浸入凍結膨張等)
(6) 抜け落ち現象(押し抜きせん断強度の低下による抜け落ち)
従来の補修・補強工法としては、工法面(保全技術)からの最適な方法は、床版上面を増厚すると共に、かつ防水層を施し、床版下面にはコンクリート片の落下防止のためにFRP接着工法を行うのが望ましい方法である。しかし、路面高さを変更できない場合や、損傷が著しく、床版を取り替える必要がある場合がある。この場合は、再度RC床版で施工を行うと、長い工期を必要とするようになる。
道路橋示方書疲労設計編 合理化鋼床版の論文(勝俣・小笠原・町田・吉家・川瀬・溝江:これからの鋼床版―新しい構造の提案.川田技報,Vol17,1998) リーハイ型論文(Tsakopoulos and Fisher:Fatigue performance and design of steel orthotropic deck panels full-scale laboratory tests, International journal of steel structures, Vol5,No3,2005) 中村聖三 プレファブ鋼床版を用いた橋梁床版架け替え工法に関する研究,九州大学博士論文,平成7年4月
この両箇所の疲労強度を向上するために、前記の<対策1>では、前記(A)のルート疲労強度を十分に上げることができないことが判明している。また、前記(B)の止端疲労強度は向上しない。
前記<対策2>では、前記(A)のルート疲労強度を向上させるが、デッキプレート2厚が厚くなり重くなり、そのために鋼床版としての軽量化のメリットをなくしてしまう。また、前記(B)の止端疲労強度は向上しない。
前記<対策3>では、前記(B)の止端疲労強度は向上するが、前記(A)のルート疲労強度を向上しない。また、コストを激増させてしまう。
前記<対策4>では、前記(A)のルート疲労強度は向上するが、前記(B)の止端疲労強度は向上しない。
上記の状況に鑑み、鋼床版構造において、前記(A)のルート溶接部と前記(B)の止端溶接部の双方の疲労強度を向上させることを課題とする。このとき、過大な重量およびコストが必要とならないことが望まれる。
(2)デッキプレート上でのSFRC(繊維強化コンクリート)舗装することも知られている。これは損傷した前記(A)のルートき裂には著しく効果的である。しかし、前記(B)の止端き裂には効果がないという問題がある。また、SFRCは高価であるために、コストが高くなる。また、鋼材とSFRCの付着強度が低く剥がれやすい可能性があるという付着の問題があるために、長期での合成効果が確認されていないという課題も残る。
(3)断面逆T字状の縦リブ形態としたバトルデッキタイプの鋼床版では、損傷した前記(A)のルートき裂には効果的である。断面逆T字状縦リブのウエブの溶接が、そのウェブの両側のスミ肉溶接になるために、ルート疲労強度が著しく向上する。しかしながら、損傷した前記(B)の止端き裂には効果がない。しかも、その疲労き裂はルートからとなる、そのため仕上げを併用したことによる効果も期待しにくい。
本発明は、上記の状況に鑑み、鋼床版構造において、前記(A)のルート溶接部と前記(B)の止端溶接部の双方の疲労強度を向上させ、過大な重量増加およびコストの増加とならない耐疲労鋼床版を提供することを目的とする。
第2発明では、第1発明の耐疲労鋼床版において、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブと桁構造物の桁との交差部において、デッキプレートと縦リブのフランジとの間に、デッキプレートからの鉛直方向の力を受ける、断面溝形または断面L形状の支承金具を、デッキプレートに当接または近接するように配置すると共に、前記支承金具をボルトで断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブのウエブ部に固定することを特徴とする。
第3発明では、第1発明の耐疲労鋼床版において、間隔をおいて横方向に隣り合う断面逆T字状縦リブ間または断面L字状縦リブ間に、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブの座屈耐荷力を向上させるために、横桁に支持鋼材を介してボルト接合が可能なスタッドをデッキプレートに設置したことを特徴とする。
第4発明では、第1発明の耐疲労鋼床版において、一端側をデッキプレートに溶接により固定し、他端側を断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブにボルト接合とした短尺横リブを配置し、デッキプレートと短尺横リブとの溶接部を超音波ピーニングしたことを特徴とする。
(1)鋼床版の重量およびコストの増加はほとんどなく、あるとしてもわずかで、前記(A)のルート溶接部と、前記(B)の止端溶接部の疲労の疲労寿命が向上し、鋼床版の耐久性を向上させることができる。また、超音波ピーニングを施す部分は、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブのウェブとデッキプレートとの長い溶接ビードの内の短い範囲であるので、効率よく経済的に鋼床版の疲労寿命を向上させることができる。
(2)鋼床版に疲労損傷が生じた場合でも、桁下で交通を阻害することなく補修を行うことができる。
(3)架替用として用いた場合、コンクリート床版に比べて軽いので、重量の増加が無く、短い工期で床版の交換を行うことができる。
第2発明によると、デッキプレートを支承する支承金具を、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブのウェブに固定したので、第1発明の効果に加えて、ウェブ先端部の応力負担を軽減して、疲労寿命を向上させることができる。
第3発明によると、横桁に支持鋼材を介してボルト接合が可能なスタッドをデッキプレートに設置したので、第1発明の効果に加えて、鋼床版が浮き上がるような引張力に支持鋼材を介してスタッドを抵抗させることができ、その結果、デッキプレートの橋軸方向圧縮力に対する座屈耐力を向上することができると同時に、縦リブのウェブ溶接部の発生応力を低減させることにより、さらに溶接部の疲労寿命を向上させ、鋼床版の疲労寿命を向上させることができる。
第4発明によると、第1発明の効果に加えて、鋼床版が浮き上がるような引張力と、鋼床版から交通荷重等を伝達するような圧縮力とに短尺横リブを抵抗させることができ、その結果、デッキプレートの橋軸方向圧縮力に対する座屈耐力を向上することができると同時に、縦リブのウェブ溶接部の発生応力を低減させることにより、さらに短尺横リブの溶接部の疲労寿命を向上させ、鋼床版の疲労寿命を向上させることができる。
第5発明の耐疲労鋼床版によると、既設の鉄筋コンクリート床版の厚さ寸法より、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブとデッキプレートの合計厚さ寸法が大きくならないように、適宜高さ調整板を介在させて、調整既設の床版上面レベルと同じレベルとすることができ、道路設計により設定された線形を変えることがない。
図1から図7は、本発明の第1実施形態の耐疲労鋼床版1およびその耐疲労鋼床版1を横桁4に取り付けた状態を示すものであって、図1は斜視図、図2は正面図、図3はデッキプレート2の一部を切り欠いて示す平面図、図4は図1の一部を拡大して示す斜視図、図5は図4の裏面側から見て一部を切り欠いて示す一部切り欠き斜視図、図6(a)は図2におけるデッキプレート2の一部を切り欠いた部分を拡大して示す平面図、図6(b)は(a)の正面図、図7は超音波ピーニング部11を示す側面図である。
前記溶接部の溶接ビード7(図7参照)のうち、断面逆T字状縦リブ5のウェブ平面中心軸線C1と横桁4の平面中心軸線C2との交差部を中心とする範囲であって、溶接ビード長手方向に、好ましい範囲として、例えば、前記縦リブ高さ寸法の2/(√3)の範囲の溶接ビード7に超音波ピーニングを施して、溶接ビード7の部分の疲労強度を向上させていると共に溶接止端部の疲労強度を向上させている。
また、各断面逆T字状縦リブ5のフランジ8には、横桁4のフランジ4bにボルト9により取り付けるために、横桁4のボルト挿通孔に対応した位置にボルト挿通孔12がフランジ長手方向(橋軸方向)に間隔をおくと共にフランジ幅方向(橋軸直角方向)に間隔をおいて設けられている。このように断面逆T字状縦リブ5のフランジ8を横桁4に、溶接ではなくボルト接合することにより、溶接による疲労強度の問題を解消している。
横リブが存在しない場合は、鋼床版部の補剛板としての圧縮耐荷力が低下するために、新設構造に用いることは困難である。一方、架替構造では死荷重を床版構造で負担しないでよいために、ほとんど橋軸方向の負担応力は発生しない。
図9〜図16は、本発明の第2実施形態の耐疲労鋼床版3および横桁上に設置した構造を示したもので、前記第1実施形態の構造に、さらに各断面逆T字状縦リブ5(図示を省略するが各断面L字状縦リブ)のウェブ6の両側に、横断面C形等の横断面溝形の鋼製の支承金具13のウェブ13aを、縦リブ5のウェブ6を介して背中合わせとなるようにボルト9により固定し、各支承金具13の上端面によりデッキプレート2の下面を支承し、横桁直上のウェブ13aの応力負担を軽減すると共にウェブ6の剛性を高めるべく横桁直上に位置するように設置した形態である。
各支承金具13の上端面はデッキプレート2の下面に接触した状態または近接した状態でよく、デッキプレート2に輪重等の鉛直荷重(圧縮荷重)が作用した場合に支承金具13により支承するようにしている。支承金具13としては、横断面溝形の支承金具13における一方のフランジを省略した横断面L字状の支承金具13でもよく、すなわち、一片をフランジとし他辺をウェブとする横断面L字状の支承金具でもよく、このような横断面L字状の支承金具のウェブ13aを、縦リブ5のウェブ6の両側に当接させて対称に配置し、ボルト・ナットにより固定するようにしてもよい。
その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付している。
前記のように支承金具13を設置する場合は、支承金具13により縦リブ5のウェブ6を拘束するため、この拘束により、縦リブ5の応力が集中する範囲が狭くなるので、図15に示すように、各支承金具13におけるフランジ13bの両側におけるデッキプレート2と縦リブ5のウェブ6との表裏両側の溶接ビード7の部分で、デッキプレート2の板厚tの2倍程度の範囲(2t)の溶接ビード7を、超音波ピーニングを行えばよい。その後、支承金具13を設置する。
支承金具13としては、断面C形で高さ200mmのチャンネルや断面L形で高さ200mmのアングル材に加工した支承金具13を縦リブ5のウェブ6両側に配置し、これらのボルト挿通孔に渡ってボルト9を挿通してナットにより締め付け固定する。ボルト9としては、M20〜M24でF10Tの高力ボルトを使用して固定するとよく、支承金具13の下端部と縦リブ5のフランジ8との間は間隙があってもよく、図16に示すように、支承金具13下端部と縦リブ5のフランジ8との間に、楔式のスペーサー20を打ち込んだ状態でもよく、この場合、支承金具13の上端面をデッキプレート2の下面に当接してもよい。
縦リブ5が断面L字形の場合には、断面L字形の片側下部にはフランジがあるので、前記と同様に支承金具13を配置することができるが、反対側はフランジがないので、支承金具13と横桁との間は間隙がある状態、または前記間隙に楔式のスペーサ−20を打ち込んだ状態でもよい。
前記のように支承金具13とデッキプレート2は溶接されていないので、その間に引張力は生じないが、圧縮力は伝達することができる。トラックの輪荷重は圧縮応力を生じさせるため、交通荷重に対しては十分な効果を発揮することができる。支承金具13の高さは設計で決めることができるが、スペーサー20を打ち込めば、輪荷重の反作用で生じるわずかな負方向の曲げについても拘束し、縦リブ5のウェブ6に作用する発生応力を低下させることができる。支承金具13は、縦リブ5の高さの1/2以上であるのが、十分なデッキプレートの補剛効果を得るためにはよい。
横桁4の間隔は、2.5mを標準とするが、それ以上の間隔でも適宜、設計により設定すればよい。横桁4と縦リブ5のフランジ8をボルト9で固定する点は前記の実施形態の場合と同様である。
図17〜図24は、本発明の第3実施形態の鋼床版3およびこれを横桁4に設置した状態を示すものであって、この形態では、前記の第2実施形態に、さらに、間隔をおいて横方向に隣り合う断面逆T字状縦リブ5間(または図示省略の断面L字状縦リブ間)に、断面逆T字状縦リブ5(または図示省略の断面L字状縦リブ)の座屈耐荷力を向上させるために、横桁4にボルト接合が可能なスタッド21をデッキプレート2に設置した形態の鋼床版3である。
また、スタッド21の溶接部にもUITを処理してもよい、スタッド14の固着は、完全溶け込み溶接であるので、非常に効率よくUITによって疲労強度が向上する。
図25は、本発明の第4実施形態の鋼床版3の一部を示したもので、この形態では、前記第1実施形態の鋼床版3における横方向に隣り合う各断面逆T字状縦リブ5間で、横桁4直上に位置するように、横断面L形(図25(a)および(b)の場合)または横断面C形等の横断面溝形あるいは横断面H形の等の短尺横リブ16(図25(c、dの場合)のウェブ16a上端部をデッキプレート2の下面に当接して、その当接部全周を全周すみ肉溶接で溶接し、その全周を超音波ピーニングしている形態である。
図25(c)(d)に示す形態では、横方向に隣り合う断面逆T字状縦リブ5における各ウェブ6に、断面溝形の短尺横リブ16のフランジ16bを当接し、断面逆T字状縦リブ5のウェブ6とその両側の短尺横リブ16のボルト挿通孔に渡って、ボルト9が挿通されている共にナットにより固定されている構造であるので、橋軸直角方向に連続した横リブ構造とすることができる。
また、前記の超音波ピーニングをした後に、断面逆T字状縦リブ5と短尺横リブ16とのボルト挿通孔に渡って、ボルト9を挿通し、ナットをねじ込んで、ボルト接合を行う。短尺横リブ16は、溶接でデッキプレート2と接合されるために、デッキプレート2の座屈を拘束し、デッキプレート2の座屈耐力を確保することができる。
(実施例)
図36は、比較例である従来技術の鋼床版49における載荷荷重の移動方向を示した図であり、横リブ41を基点として、橋軸方向に載荷荷重が移動するものとした。実際の条件としては、図37(a)、(b)に示すように、載荷荷重走行試験機を用いて、一点の輪荷重(15t)を断面U字状縦リブ40の真上におけるデッキプレート2上に載荷して、橋軸方向に移動するようにした。その際、図37(a)に示した部位A1および部位A2に2軸のひずみゲージを貼って、輪荷重移動の際の発生応力を測定した。部位A1の位置としては、下部に横リブ41が存在するデッキプレート2上であって、且つ断面U字状縦リブ40とデッキプレート2との接触部から30mm離れた位置とした。部位A2の位置としては、部位A1のデッキプレート2を挟んで反対側のデッキプレート2の裏面位置とした。尚、本載荷試験では、被労性能も評価するため、輪荷重はデッキプレート2上を橋軸方向に往復移動させるようにした。
また、図38は、比較例にて、輪荷重がA1点を通る橋軸直角方向の線(荷重の中央線と呼ぶ)において橋軸方向に移動した際の、A1点及びA2点における発生応力を示し(横軸は輪荷重をかけている位置の荷重の中央線からの距離(mm)を表し、縦軸は発生応力(MPa)を表す)、そのうち左図は、発生応力のうち橋軸直角方向成分の応力(デッキプレート2の上面A1と下面A2)、右図は、発生応力のうち橋軸方向成分の応力(デッキプレート2の上面A1と下面A2)である。
また、図40のグラフは、輪荷重が荷重の中央線から橋軸方向に移動した際の、A3点及びA4点における発生応力を示し(横軸は輪荷重をかけている位置の荷重の中央線からの距離(mm)を表し、縦軸は発生応力(MPa)を表す)、そのうち左図は、発生応力のうち橋軸直角方向成分の応力(デッキプレート2の上面A3と下面A4)を示し、右図は、発生応力のうち橋軸方向成分の応力(デッキプレート2の上面A3と下面A4)を示す。
試験した結果を表1に示す。尚、比較例、実施例共に、輪荷重試験の往復運動回数は、溶接部にき裂が生じるまで行い、き裂が生じない場合は、400万回迄行った。
表1からわかるように、比較例では、部位A1及び部位A2での発生応力振幅Δが共に140MPaであり、溶接部のき裂は、デッキプレートと断面U字状横リブの溶接部では1,500,000回で発生し、縦リブと横リブとの交差部(表中では、縦横リブ交差部と記載)では1,000,000回で発生している。
それに対して、実施例における部位A3及び部位A4での発生応力振幅Δは、共に150MPaと、比較例に比べて僅かに大きい値となったが、疲労き裂は発生しなかった。
これは、実施例では、デッキプレート2と断面逆T字状縦リブ5との溶接部を超音波ピーニングによるUIT処理をしており、断面逆T字状縦リブ5といるため、疲労的な弱点が押さえられたためと考えられる。
ここで、実施例の試験体構造に支承金具を入れた構造におけるFEM解析結果を見ると、発生応力振幅Δは40MPaであり、支承金具を入れたことにより、デッキプレート2と断面逆T字状縦リブ5との溶接部での応力は劇的に低下していることが判る。
実施例の構造では、発生応力振幅Δが160MPaであっても、疲労き裂が発生していないことから、支承金具を入れた構造においては、疲労によるき裂発生は、更に生じにくくなるものと考えられる。
2 デッキプレート
3 耐疲労鋼床版
4 横桁
4a ウェブ
4b フランジ
5 断面逆T字状縦リブ
6 ウェブ
7 溶接ビード
8 フランジ
9 ボルト
10 フランジ
11 超音波ピーニング
12 ボルト挿通孔
13 支承金具
13a ウェブ
13b フランジ
14 スタッド
15 支持鋼材
16 短尺横リブ
16a ウェブ
16b フランジ
17 RC床版
18 主桁
19 底版
20 スペーサー
21 スタッド
22 一次覆工
23 2次覆工
29 超音波ピーニング装置
30 トランスデューサー
31 ウエーブガイド
33 ホルダー
34 自由振動体
35 支持体
36 ハンドル
37 ケース
38 電源
40 断面U字状縦リブ
41 横リブ
42 横桁
43 主桁
44 側板
45 溶接ビード
46 ルートき裂
47 U字状スリット部
48 止端き裂
49 鋼床版
50 グラインダー
51 回し溶接部
52 のど厚
53 断面I字状縦リブ
54 上フランジ
55 断面逆T字状縦リブ
56 スカーラップ
57 ウエブ
Claims (5)
- 桁構造物に載置される鋼床版であって、
デッキプレートと、当該デッキプレートの下側に複数並べて配置されると共にウェブ及びフランジを有する断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブとを備え、
前記縦リブのウェブが溶接でデッキプレートの下面に固定されていると共に、前記縦リブのフランジには、前記桁構造物の桁にボルトで固定するためのボルト挿通孔を備えており、
前記溶接により形成されるウェブ長手方向の溶接ビードに対して、前記溶接部における断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブのウェブ平面中心軸線と横桁の平面中心軸線との交差部を中心とする範囲であって、少なくとも前記縦リブ高さ寸法の範囲に、超音波ピーニングを施していることを特徴とする耐疲労鋼床版。 - 請求項1の耐疲労鋼床版において、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブと桁構造物の桁との交差部において、デッキプレートと縦リブのフランジとの間に、デッキプレートからの鉛直方向の力を受ける、断面溝形または断面L形状の支承金具を、デッキプレートに当接または近接するように配置すると共に、前記支承金具をボルトで断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブのウエブ部に固定することを特徴とする耐疲労鋼床版。
- 請求項1の耐疲労鋼床版において、間隔をおいて横方向に隣り合う断面逆T字状縦リブ間または断面L字状縦リブ間に、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブの座屈耐荷力を向上させるために、横桁に支持鋼材を介してボルト接合が可能なスタッドをデッキプレートに設置したことを特徴とする耐疲労鋼床版。
- 請求項1の耐疲労鋼床版において、一端側をデッキプレートに溶接により固定し、他端側を断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブにボルト接合とした短尺横リブを配置し、デッキプレートと短尺横リブとの溶接部を超音波ピーニングしたことを特徴とする耐疲労鋼床版。
- 既設の鉄筋コンクリート床版を架け替える場合に設置される請求項1〜4のいずれかに記載の耐疲労鋼床版であって、断面逆T字状縦リブまたは断面L字状縦リブとデッキプレートの合計厚さ寸法が、既設の鉄筋コンクリート床版の厚さ寸法以下とされていることを特徴とする耐疲労鋼床版。
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JP2006159515A JP2007327256A (ja) | 2006-06-08 | 2006-06-08 | 耐疲労鋼床版 |
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