JP2006055899A - 溶接継手の疲労寿命改善方法 - Google Patents

溶接継手の疲労寿命改善方法 Download PDF

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知徳 冨永
Kazumi Matsuoka
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Abstract

【課題】 本発明は、溶接継手の端面の応力が集中する部分に応力集中を開放する処理を施し、溶接継手の疲労寿命を改善する方法を提供するものである。
【解決手段】 溶接継手の端面において、少なくとも溶接止端部或いは、少なくとも露出したルートの両端部に塑性変形を与えるものである。また、溶接継手の端面において、少なくとも露出したルートの両端部及び周辺部に塑性変形を与え、塑性変形により流動化した金属で露出したルートを閉じるようにするものである。塑性変形を与える手段として、好ましくは、超音波ピーニング処理装置を用いる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、橋梁や船舶など大型溶接構造物における溶接継手の疲労寿命の改善方法に関する。
橋梁や船舶など大型溶接構造物は、殆どが厚板部材を溶接により接合して組み立てられており、溶接部の仕様によっては溶接継手の端面の処理が疲労強度の問題となる場合がある。例えば、溶接継手を構成する板部材の端面の切断面にはノッチが残っていることがあり、これが応力集中源となって疲労亀裂発生の起点となる。
また、このような構造物に使用される板部材が例えば、ガス、レーザー、プラズマなどの加熱を伴う方法により切断された場合は、切断面には大きな応力や、場合によっては微細な割れを伴った硬化層などが残留していることがあり、これも疲労強度に悪影響を及ぼす。これらの問題を解決するために、特許文献1には、金属板の切断端面に超音波衝撃処理を施して疲労強度を向上させる方法が提案されている。
また、例えば、図8(a)、(b)に示すように、板部材を突合せ溶接する際に、両板部材3,3’の端部にエンドタブ13を設けて溶接を行い、溶接後に、エンドタブを切り落とすが、その切除した端面にビードの端部に角度が急変する個所、すなわち溶接止端部12があると、この箇所への応力集中が大きくなる。
また、十字溶接継手の場合も同様に、エンドタブを取り付けて溶接しエンドタブを切断した後の端面、或いは、補修などのため溶接継手を溶接線に垂直な断面で切除したような場合の端面4では、図9に示すように、溶接の未溶着部分であるルート部が見えるようになることがある。これを露出ルート部6と呼称する。
上記の露出ルート部の間隙が閉空間となっている場合は、この部位での応力集中は小さいが、その一部でも解放され、閉空間でなくなった場合は、応力集中が著しく大きくなる。
このように、溶接継手の端面には疲労強度に対して弱点となる応力集中箇所が多く存在する。そしてこのような溶接継手端面の弱点は、小型の疲労試験では顕在化しないことが多いが、大型の構造物では、板部材の端面、特に、溶接継手の端面に構造的な応力集中が生じるため、上述の端面の問題が他の場合よりも大きな問題となることが示されている(例えば、非特許文献1参照)。
このような溶接継手や板部材切断面の疲労強度の向上方法としては、グラインダーなどにより、溶接止端部の応力集中箇所の形状を平滑な形状に変更したり、板部材の切断面の硬化層を切削除去するのが主たる方法であった(例えば、非特許文献2参照)。板部材の切断面の硬化層をグラインダーで切削除去するのは、疲労寿命の向上にはある程度の効果はあるが、グラインダーなどにより、応力集中箇所の形状を平滑な形状に変更する方法では、溶接継手の端面の露出ルート部に対しては全くその効果が得られない。
ところで、最近、材料の表面に超音波ピーニング処理を施すことにより、材料表面に塑性変形を与え、表面の結晶組織を改善し、或いは残留応力を開放することによって耐疲労性能を改善できることが知られており、このような超音波ピーニング処理装置として、例えば特許文献2には、超音波を発生させるトランスデューサー、超音波を先端に導くためのウエーブガイドおよびその先端部に設けられ超音波により振動する打撃用のピンを備えた超音波ピーニング処理装置が提案されている。
特願第2002−333299号 米国特許第6,467,321号公報 「箱断面柱を有する鋼製橋脚に発生した疲労損傷の調査と応急対策」森河久ら、土木学会論文集I、703巻、I-59号、177-183頁2002年4月 「鋼構造物疲労設計指針・同解説」鋼構造協会
本発明は、上記のような従来の問題に鑑み、溶接継手の端面に存在する溶接止端部、或いは端面に出現する露出ルート部などの応力集中個所に対して適切な手段を講じることにより、これらの応力集中を低減し、或いはさらに応力集中箇所を低減して、溶接継手の疲労寿命を改善することを課題とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、溶接継手の端面の応力が集中する個所に、応力集中を開放する処理、或いは応力集中箇所を低減する処理を施し、溶接継手の疲労寿命を改善するものである。すなわち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)溶接継手の端面において、少なくとも溶接止端部に塑性変形を与えることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
(2)溶接継手の端面において、少なくとも露出したルートの両端部に塑性変形を与えることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
(3)溶接継手の端面において、少なくとも露出したルートの両端部及び周辺部に塑性変形を与え、塑性変形により流動化した金属により露出したルートを閉じることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
(4)溶接継手の端面において、少なくとも溶接止端部および露出したルートの両端部に塑性変形を与えることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
(5)前記塑性変形を与える手段が超音波ピーニング処理であること特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の溶接継手の疲労寿命改善方法。
(6)前記塑性変形により金属を流動化させ、露出ルートを閉口させる手段が摩擦撹拌接合であることを特徴とする(3)に記載の溶接継手の疲労寿命改善方法。
なお、本発明における溶接継手の端面とは、部材の幅方向の端部断面をいうものであり、溶接線の方向に垂直な方向の板部材および溶接部の断面を含む面である。また、切断端面や切除端面に限定されるものではなく、エンドタブ等を設けずに板部材を突合せ溶接した場合などの、板幅方向の板端面も含むものである。
本第1発明の方法によれば、溶接継手の端面において、溶接止端部に塑性変形を与えることによって、溶接止端部の残留応力が軽減され、亀裂の発生および初期疲労亀裂の進展を遅延させることができ、疲労寿命が向上する。
また、本第2発明の方法によれば、溶接継手の端面において、露出したルートの両端部に塑性変形を与えることによって、この最も応力集中度の強い露出ルートの両端部の応力分布を圧縮状態とすることができ、亀裂の進展を大きく遅延させ、溶接継手の疲労寿命改善することができる。
また、本第3発明の方法によれば、溶接継手の端面において、露出したルートの両端部及び周辺部に塑性変形を与えると共に、塑性変形により流動化した露出したルートの周辺部の金属により、露出したルートの開口部を覆って閉空間とすることができ、この箇所への応力集中を大幅に低減して溶接継手の疲労寿命を改善することができる。
また、本第4発明によれば、溶接継手の端面において、溶接止端部に加えて、露出したルートの両端部にも塑性変形を与えることによって、本第1発明と本第2発明の効果を得ることができ、さらに確実に溶接継手の疲労寿命を向上させることができる。
本第5発明の方法によれば、本第1〜第4発明の方法において、好ましくは塑性変形を超音波ピーニング処理によって与えるので、通常のショットピーニング処理に比べて極めて効率的に塑性変形を与えることができる。
本第6の発明によれば、本第3の発明の方法において、塑性変形により金属を流動化させ、露出したルートを閉じる手段に、好ましくは、摩擦撹拌接合法を用いるので、露出ルートの間隙が大きくても露出したルートを効率的に閉じることができる。
以下、本発明を、添付の実施形態の図面を参照して、詳細に説明する。なお、以下においては、図1〜図3に示すように、第1板部材2と第2板部材3、3’とを十字状に溶接した十字溶接継手1を例にとって説明するが、本発明は、板部材のみに限定されず、また、十字溶接継手に限定されるものではない。
本発明において、溶接継手の端面とは、板部材の幅方向の端部断面をいうものであり、溶接線の方向に垂直な方向の部材および溶接部の断面を含む面である。また、切断端面や切除端面に限定されるものではなく、エンドタブ等を設けずに板部材を突合せ溶接した場合などの板幅方向の板端面も含むものである。
先ず、図1に示す実施形態は、溶接継手の溶接部がフルペネトレーション状態、すなわち、溶接部において各部材が溶着金属と共に完全に溶融一体化して溶着している状態である。この場合は、溶接継手1の端面4には、露出ルート、すなわち、溶接部において板部材が完全に溶融せず未溶着部となっているルート部、は存在しない。
従って、疲労寿命改善の観点からは、図1の溶接継手1の端面4の斜線で示した少なくとも溶接止端部5に塑性変形を与える処理(以下、塑性変形処理とも記す)を施せばよい。すなわち、板部材の端面にある溶接止端部5に応力集中が起こりやすく、この部位から疲労亀裂が発生するからである。この処理によって、少なくとも端面の溶接止端部近傍に塑性変形が与えられ、溶接残留応力の軽減、組織微細化などによりこの部位への応力集中が緩和され、疲労亀裂の発生が抑制され疲労寿命が向上する。端面の溶接止端部5として示した斜線の範囲は、板部材の表面の止端部12が溶接継手の端面4に現れる点を基点として半径1〜1.5mm程度を示している。少なくともこの範囲に塑性変形処理を加えることで疲労亀裂の発生が大幅に抑制されることを見出したものである。
なお、溶接継手の端面における溶接止端部の周辺に塑性変形処理を施す場合、端面部分に加えて板部材の角部11(端面と板幅方向の板表面との境目の角部)を処理して曲率をつけ、角部11においても応力集中を低減させることはより好ましい。また、板部材の表面の止端部12、例えば端面から板部材の幅方向に板部材の厚さ相当の幅(1t)以上の範囲、にも塑性変形処理を施すことも、疲労寿命をさらに向上させる点で好ましい。
次に、図2に示す実施形態は、溶接継手1の端面4に、露出ルート6が存在する場合、すなわち、溶接部の板部材が完全に溶融して溶着しておらず、ルートに未溶着の部分(開口部とも記す)が存在する場合を示している。そして、この露出ルート6の最大間隔Gは、1mm未満ときわめて小さい場合である。
このような場合は、露出ルート6の少なくとも両端部8及び周辺部9に塑性変形処理を施す。
露出ルート6の両端部8及び周辺部9に十分な塑性変形処理を施すことにより、図4(a)、(b)に示すように、両端部8および周辺部9の材料に流動が生じ、流動化した材料によって露出ルートの開口部7が覆われる。すなわち、これによって露出ルート6の開口部7を閉じて閉空間10とすることができる。なお、この場合、塑性変形処理によって、露出ルートの開口部が閉口されたかどうかは、浸透検査(PT)や磁粉検査(MT)によって確認することが好ましい。
このように、露出ルートがあっても、本発明により端面の所定部位に塑性変形処理を施すことによって、露出ルート6の開口部7を閉じて閉空間10に変えることができるため、応力が集中する部位が減少し、疲労寿命が大きく改善される。
また、図1と同様に、図2の溶接継手1の端面4の斜線で示した少なくとも溶接止端部5を含む範囲に塑性変形処理を施すことで、溶接継手の端面における止端部起因の疲労亀裂の発生も抑制されて、溶接継手全体としての疲労寿命が向上する。
また、さらに、端面の溶接止端部、露出ルートの両端部及び周辺部以外の端面に広範囲に塑性変形処理を施すこと、すなわち、図1で説明したように、端面の角部や板部材の表面の止端部などに塑性変形処理を施すことなどは、疲労寿命をさらに向上させる点で好ましい。
次に、図3に示す実施形態は、図2の実施形態と同様に、溶接継手の端面4に、露出ルート6が存在する場合を示しているが、露出ルート6の最大間隔Gは、図2の場合と異なり、1mm以上である。このような場合は、露出ルート6の少なくとも両端部8に塑性変形処理を施す。
この処理によって、露出ルート6の両端部8に塑性変形が与えられ、溶接残留応力の軽減、組織微細化などにより、この部位への応力集中が緩和され、疲労亀裂の発生が抑制され疲労寿命が向上する。
ここで、露出ルート6の最大間隔Gが1mm未満であった図2の実施形態の場合には、露出ルートの両端部8及び周辺部9に塑性変形処理を施して両端部8及び周辺部9の材料を流動化し、これによって露出ルート6の開口部7を覆い、露出ルートの開口部を閉じることで、疲労寿命を改善したが、この間隔が1mm位以上となると、塑性変形処理では開口部を閉じることは困難である。このため、図3に示す実施形態では、上記の部位へのみ塑性変形処理を行うこととしたが、これによっても疲労亀裂の発生が抑制され、従来よりも疲労寿命が大幅に向上するのは言うまでもない。
図1と同様に、図3の溶接継手1の端面4の斜線で示した少なくとも溶接止端部5を含む範囲に塑性変形処理を施すことで、溶接継手の端面における止端部起因の疲労亀裂の発生も抑制されて、溶接継手全体としての疲労寿命が向上する。
なお、さらに、端面の溶接止端部近傍や露出ルート部の両端部以外の端面における他の部分を広範囲に塑性変形処理を施すこと、すなわち、図1で説明したように、端面の角部や板部材の表面の止端部などに塑性変形処理を施すことなどは、疲労寿命をさらに向上させる点で好ましい。
ところで、図3の実施形態のように、露出ルート6の最大間隔Gが1mm位以上であっても、5mm以下であれば、この露出ルート6の周辺に摩擦撹拌接合処理を施すことにより、露出ルート部の開口部を閉じることが可能である。
図6は、後述する摩擦撹拌接合装置の一例を示す模式図であるが、溶接継手端面の露出ルートの周辺部に、摩擦撹拌接合処理装置24の回転工具25の先端を接触させ、加圧、回転させながら周辺を移動させることにより、周辺の材料を流動化させ、この流動化した材料により開口部を覆って、図4に示したと同じように、開口部7を閉空間10とすることができる。摩擦撹拌接合は、通常はアルミニウム同士や銅同士、又はアルミニウムと鉄との接合において使用される。鉄同士の接合においては、回転工具25の耐久性の問題から長尺ものの接合には未だ技術的に確立されていないものの、本発明のケースのような、ピンポイント的に僅かな範囲を処理する場合は、耐久性の問題は無く、適用可能である。
なお、露出ルート以外の箇所は、塑性変形処理方法によって処理することができる。すなわち、露出ルート部の最大間隔が1mm〜5mmの場合は、塑性変形処理と摩擦撹拌接合処理との併用して、疲労寿命を向上させることができる。
以上、溶接継手の端面の処理について説明した。本発明において、溶接継手の疲労寿命を改善するため溶接継手の端面に塑性変形を与える方法としては、所要部位に所要の塑性変形を与えることができるものであれば特に限定するものではない。しかしながら、その手段の一つとして挙げられる超音波ピーニング処理は、一回の打撃によって与える変形量は小さいが、打撃回数が極めて多く、効率的に塑性変形を与えることができる。
この超音波ピーニング装置14は、図5に示すように、トランスデューサー15と、このトランスデュサーの前面設けられたウエーブガイド16と、ウエーブガイドの先端に設けられ、自由振動体19を支持するホルダー18と、このホルダーを支持する支持体20とから基本的に構成されており、後端にハンドル21を有するケース22に収納されている。電源23から供給された電気エネルギーはトランスデューサー15により超音波領域の機械振動に変換され、生じた超音波振動はこれに接続されたウエーブガイド16を伝播する。ウエーブガイドの径が前方に向かって絞られていることによって超音波振動の伝播速度が変性され、振動が増幅される。超音波振動はウエーブガイド16の先端からホルダー18に支持されている自由振動体19に伝わり、これを超音波振動させる。この自由振動体19の振動により処理対象Tを打撃し、ピーニング処理するものである。通常、ピーニング処理は、振幅20〜60μm、周波数15kHz〜60kHz、出力0.2〜1KWで処理するのが一般的である。
なお、上記自由振動体19として、図5においては凸状の先端を持つピンの例を示したが、処理対象物の状況に応じて、先端部が凸又は凹状であるピン、或いは球状のショット(超音波ショットピーニング)等も選択できる。
この超音波ピーニング処理装置は、100〜200Vの通常電源23により作動でき、重量が5kg程度で可搬であり、反動も少ないので、作業者がハンドル21を利用してこれを保持し、処理対象物の処理箇所に近接して処理作業をすることが可能である。
また、上述の露出ルートの開口部の間隔が大きい場合に、この開口部を閉口させるための処理をする摩擦撹拌接合装置24は、図6に示すように、後端に回転装置27を有する回転軸26の先端に摩擦撹拌工具25を有し、これをフレーム27に支持させたものである。開口部を有する処理対象物Tの処理部位に摩擦撹拌工具を押しつけて、フレームにより反力を保持して、処理対象部位を加圧しつつ回転させることによって、処理対象部位の周囲の金属が流動化し、これによって開口部を接合ないし閉塞することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。
図7(a)、(b)は十字溶接継手の試験体の概要を示す斜視図であるが、図7(a)に示すような寸法及び形状を有する小形の十字溶接継手の試験体を板厚25mmの鋼部材を用いて製作し、この十字溶接継手試験体の端面を各種の処理条件で処理を行った。その後、100Mpa、R=0.1で疲労試験を行って寿命時間を測定し、各処理の効果を確認した。なお、溶接継手端面に塑性変形を与える処理には超音波ピーニング処理を用いた。
なお、この形式の小型試験体を用いて疲労試験を行う場合は、拘束との関係で実際の構造とは異なり、残留応力が大きくなる試験体の幅方向中央部からしばしば亀裂が生じることがある。このため、図7(b)の斜線で示す溶接部の中央部の板幅方向50mmの範囲Yについては、各試験体に予め超音波ピーニング処理を施し、その部分から疲労亀裂が発生しないようにした。本発明の実施例及び比較例の十字継手端面の状況、処理条件および疲労試験の結果を表1に示す。
Figure 2006055899
比較例1では、端面に長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は0.5mmあったが、本発明を適用しない従来例の場合であり、亀裂が端面の溶接止端部から発生し、疲労寿命は79万回であった。比較例2では、比較例1と同様に、端面に長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は0.5mmであった。板の幅方向に板部材の端面から幅方向に1cmの範囲で、板部材の溶接止端部を表面から塑性変形処理を施したが、塑性変形の範囲は、端面の板厚部分には及んでおらず、疲労寿命は81万回と比較例1と殆ど変わらず、耐疲労性能を向上させることができなかった。
一方、実施例1では、比較例1や比較例2と同様に、端面には長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は0.5mmあった。これについて、端面の溶接止端部および露出ルート部の全面すなわち、両端部及びその周辺部に対して塑性変形処理を施した。この処理により、露出ルートの開口部は閉じられており、疲労寿命は500万回を超えても亀裂は生じなかった。
実施例2では、実施例1と同様、端面には長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は0.5mmあった。これについて、端面の溶接止端部のみに塑性変形処理を施し、露出ルートに関しては処理を施さなかった。露出ルートから亀裂が入り疲労寿命は260万回であった。
実施例3では、端面に露出ルートはなかったので、端面の溶接止端部のみに塑性変形処理を施した。疲労寿命が500万回を超えても 疲労亀裂は発生しなかった。
一方、比較例3は、露出ルートはないが、端面の溶接止端部には塑性変形処理を施されていなかったために、溶接止端部から亀裂が発生し疲労寿命は85万回に過ぎなかった。端面の溶接止端部に対する塑性変形処理が疲労寿命の向上に優れた効果を示すことが判る。
比較例4は、端面には長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は1.5mmとかなり大きなギャップがあった。露出ルートの疲労強度が低下し、露出ルートから亀裂が生じて疲労寿命は71万回に過ぎなかった。
実施例4では、比較例4と同様、端面には長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は1.5mmであった。ギャップが大きく、超音波ショットピーニングによる塑性変形処理ではこのギャップを閉じさせるのは無理と判断し、露出ルート部の全面(両端部とその周辺部)に塑性変形処理を行うことをせず、端面の溶接止端部および露出ルートの両端部のみに塑性変形処理を施した。その疲労寿命が400万回で露出ルート部から亀裂が発生した。
実施例5は、実施例4と同様、端面には長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は1.5mmであり、ギャップが大きく、超音波ショットピーニングによる塑性変形処理ではこのギャップを閉じさせるのは無理と判断し、端面の止端部および露出ルート部の両端部のみに塑性変形処理を施した。さらに、露出ルートに摩擦撹拌接合処理を施し、露出ルートの開口部を閉じた。その結果、疲労寿命が500万回を超えても亀裂は発生しなかった。
比較例5は、端面に長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は0.5mmであった。比較例2が、板の幅方向に板部材の端面から1cmの範囲で、板部材の溶接止端部を表面から塑性変形処理を施したのに対し、板の幅方向の溶接止端部全長にわたって、塑性変形処理を施した。疲労寿命は比較例2より向上したものの、端面の露出ルートから亀裂を生じ、95万回に留まった。
これに対して、実施例6では比較例5の条件に加えて、露出ルート部の全面すなわち、両端部及びその周辺部に対して塑性変形処理を施した。この処理により、露出ルートの開口部は閉じられ、ルートからの亀裂は抑えられたが、端面の止端部から亀裂を生じ、溶接疲労寿命は180万回となった。
実施例7では、端面には長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は1.5mmであった。板の幅方向の溶接止端部全長にわたって塑性変形処理を施したことに加えて、露出ルートの両端部に塑性変形処理を施した。ルートからの亀裂は抑えられたが、端面の止端部から亀裂を生じ、溶接疲労寿命は180万回となった。
実施例8では、実施例7と同様に、端面には長さ10mmの露出ルートがあり、その最大間隔は1.5mmであった。端面の止端部に塑性変形処理を施したことに加えて、露出ルートの両端部に塑性変形処理を施した。端面の止端部からの亀裂は抑えられたが、露出ルート部から亀裂を生じ、溶接疲労寿命は260万回となった。
本発明における溶接継手の端面に塑性変形処理を施す部位の一実施形態を示す断面模式図である。 本発明における溶接継手の端面に塑性変形処理を施す部位の他の実施形態を示す断面模式図である。 本発明における溶接継手の端面に塑性変形処理を施す部位の他の実施形態を示す断面模式図である。 本発明における溶接継手の端面に塑性変形処理又は摩擦撹拌接合処理による露出ルートの開口部を閉じさせる状況を示す断面模式図であり、(a)は処理前、(b)は処理後を示す。 本発明の溶接継手の端面の塑性変形処理に使用する装置の一例としての超音波ピーニング装置例を示す断面模式図である。 本発明の溶接継手の端面の摩擦撹拌接合処理に使用する摩擦撹拌接合処理装置の一例を示す模式図である。 本発明の実施例における十字溶接継手試験体の形状を示す図であり、(a)は全体構成、(b)は試験体の板幅方向中央部に予備の超音波ピーニング処理を施した状況を示す。 従来の突合せ継手の溶接状況を示す斜視図であり、(a)はエンドタブ切除前、(b)はエンドタブ切除後の状態を示す。 従来の十字溶接継手の端面の状況を示す模式図である。
符号の説明
1 溶接継手
2 第1板部材
3、3’ 第2板部材
4 溶接継手の端面
5 端面の溶接止端部
6 露出ルート
7 露出ルートの開口部
8 露出ルートの両端部
9 露出ルートの周辺部
10 閉空間
11 板部材の角部
12 板部材表面の止端部
13 エンドタブ
14 超音波ピーニング装置
15 トランスデューサー
16 ウエーブガイド
18 ホルダー
19 自由振動体(ピン)
20 支持体
21 ハンドル
22 ケース
23 電源
24 摩擦撹拌装置
25 摩擦撹拌工具
26 回転軸
27 回転装置
28 フレーム
G 露出ルートの間隔(ギャップ)
T 処理対象物
Y 予備超音波ピーニング処理範囲

Claims (6)

  1. 溶接継手の端面において、少なくとも溶接止端部に塑性変形を与えることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
  2. 溶接継手の端面において、少なくとも露出したルートの両端部に塑性変形を与えることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
  3. 溶接継手の端面において、少なくとも露出したルートの両端部及び周辺部に塑性変形を与え、塑性変形により流動化した金属により露出したルートを閉じることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
  4. 溶接継手の端面において、少なくとも溶接止端部および露出したルートの両端部に塑性変形を与えることを特徴とする溶接継手の疲労寿命改善方法。
  5. 前記塑性変形を与える手段が超音波ピーニング処理であること特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接継手の疲労寿命改善方法。
  6. 前記塑性変形により金属を流動化させ、露出ルートを閉じる手段が摩擦撹拌接合であることを特徴とする請求項3に記載の溶接継手の疲労寿命改善方法。
JP2004242445A 2004-08-23 2004-08-23 溶接継手の疲労寿命改善方法 Withdrawn JP2006055899A (ja)

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