JP2012177889A - 画像形成装置用ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、高品質の画像を維持したまま、クリーニングブレード等の外部摩擦等に対する優れた耐久特性、摺動特性を有する画像形成装置用ベルトを提供する。
【解決手段】樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び樹脂製の表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、該ゴム弾性層中に繊維径1.0μm以下の針状のフィラーを含み、該フィラーが該ゴム弾性層中の該表面層側に偏在しており、該表面層のテーバー磨耗量が0.8mg以下であり、表面層側から測定したマルテンス硬さが、押込み深さ2μmの場合3.2〜6.0N/mmであって、押し込み深さ10μmの場合1.4N/mm以下であり、該表面層側から測定したIRHD硬度(JIS K6253)が82 IRHD以下である画像形成装置用ベルトに関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられるベルト(特に、中間転写ベルト)に関するものである。
画像形成装置によって得られる画像の高画質化を目的として、ゴム弾性樹脂等によって形成されるゴム弾性層を有する、2層又は3層構成の中間転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このようなゴム弾性層を有する中間転写ベルトは、柔軟性に優れることから、中間転写ベルトと接する感光体等との転写領域が安定的に形成できると共に、感光体等との間でトナーに加えられる応力が軽減される。従って、ゴム弾性層を有する中間転写ベルトを採用することによって、画像の中抜け防止、細線印字の鮮明度向上等を達成できる。
また、こういった高画質対応の中間転写ベルトは、ベルトの厚み方向にゴム弾性を付与する一方、転写ベルトに必要なトナー離型性も、重要な要素として要求される。すなわち、中間転写ベルト表面から紙等の媒体へトナーを移し替えるうえで、トナーに対する離型性が必要となる。従って、トナーに対して粘着性をもつゴム弾性層が、中間転写ベルトの表面に露出することは好ましくない。そのため、通常は、ゴム弾性層上に、摩擦係数が低く、トナー離型性に優れた樹脂製の表面層を設ける(例えば、図1を参照)。このような表面層は、高画質の画像を得るためにできるだけ薄くすることが有効であることが知られており、表面層が薄い中間転写ベルトが種々検討されている。
しかしながら、画像形成装置用の中間転写ベルトは、紙やクリーニングブレード、ロール等のベルト表面に接触する摺動部材等から外力を受けるため、表面層が薄膜である場合、摺擦による応力集中に耐えられず、表面層にクラックやピンホールが空いてしまい、画像ノイズを引き起こしてしまうという問題があった。また、このような問題点を解消するために、ゴム弾性層全体の硬度を上昇させた場合、画質低下を引き起こすだけでなく、表面層の磨耗が逆に増大してしまうという問題があった。
特許第3248455号公報
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、高品質の画像を維持したまま、クリーニングブレード等の外部摩擦等に対する優れた耐久特性、摺動特性(耐摩耗性、耐クラック性)を有する画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)を提供することを主な目的とする。
上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明者は、樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び樹脂製の表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、該ゴム弾性層中に繊維径1.0μm以下の針状のフィラーを含み、該フィラーが該ゴム弾性層中の該表面層側に偏在しており、該表面層のテーバー磨耗量(JIS K7204準拠、テーバー磨耗試験機、磨耗輪CS−17、荷重250gにて300回実施)が0.8mg以下であり、表面層側から測定したマルテンス硬さ(ISO14577−1)が、押込み深さ2μmの場合3.2〜6.0N/mmであって、押し込み深さ10μmの場合1.4N/mm以下であり、該表面層側から測定したIRHD硬度(JIS K6253)が82 IRHD以下である画像形成装置用ベルトが、上記の課題を解決できることを見出した。かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の画像形成装置用ベルトを提供する。
項1.樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び樹脂製の表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、該ゴム弾性層中に繊維径1.0μm以下の針状のフィラーを含み、該フィラーが該ゴム弾性層中の該表面層側に偏在しており、該表面層のテーバー磨耗量(JIS K7204準拠、テーバー磨耗試験機、磨耗輪CS−17、荷重250gにて300回実施)が0.8mg以下であり、表面層側から測定したマルテンス硬さ(ISO14577−1)が、押込み深さ2μmの場合3.2〜6.0N/mmであって、押し込み深さ10μmの場合1.4N/mm以下であり、該表面層側から測定したIRHD硬度(JIS K6253)が82 IRHD以下である画像形成装置用ベルト。
項2.前記フィラーの繊維長が4〜20μmである、項1に記載の画像形成装置用ベルト。
項3.前記ゴム弾性層中のフィラーの含有量が、体積分率で1.0〜2.9%である、項1または2に記載の画像形成装置用ベルト。
項4.前記ゴム弾性層の厚みが200〜450μmである、項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
項5.前記ゴム弾性層が遠心成型によって製膜されてなる項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト、
項6.遠心成型法における回転速度が、重力加速度の2倍以上の遠心加速度である項5記載の画像形成装置用ベルト。
本発明の画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)は、高品質の画像を維持したまま、クリーニングブレード等の外部摩擦等に対し優れた耐久特性、摺動特性(耐摩耗性、耐クラック性)を有している。
中間転写ベルトの断面模式図である。 本発明において、製膜に用いた装置の模式図である。 本発明の画像形成装置用ベルトの断面模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.画像形成装置用ベルト
本発明の画像形成装置用ベルトは、樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び樹脂製の表面層(c)を、この順に積層してなり、該ゴム弾性層中に繊維径1.0μm以下の針状のフィラーを含み、該フィラーが該ゴム弾性層中の該表面層側に偏在しており、該表面層のテーバー磨耗量(JIS K7204準拠、テーバー磨耗試験機、磨耗輪CS−17、荷重250gにて300回実施)が0.8mg以下であり、表面層側から測定したマルテンス硬さ(ISO14577−1)が、押込み深さ2μmの場合3.2〜6.0N/mmであって、押し込み深さ10μmの場合1.4N/mm以下であり、該表面層側から測定したIRHD硬度(JIS K6253)が82 IRHD以下であることを特徴とする。
以下、各層毎に説明する。
(a)基材層
本発明の画像形成装置用ベルトにおける基材層は、駆動時にかかる応力でベルトの変形を回避するために、機械物性に優れた樹脂で構成される。基材層は、マトリックスの樹脂に導電剤が分散された層であり、樹脂及び導電剤を含む基材層形成用組成物によって形成される。
前記樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、これらの混合物等が例示される。
前記ポリイミドは、通常、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)等の溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とし、さらに、後述する導電剤をポリアミック酸溶液中に分散させて基材層形成用組成物とすることができる。
この際に用いる溶媒としては、例えば、NMP、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン系有機極性溶媒を挙げることができ、これら1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でもNMPが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、アゾベンゼン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の二無水物
が挙げられる。
ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノビフェニル、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられる。
前記ジイソシアネートとしては、上記したジアミン成分におけるアミノ基がイソシアネート基に置換した化合物等が挙げられる。
また、ポリアミドイミドは、トリメリット酸とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。この場合、ジアミン又はジイソシアネートは、上記のポリイミドの原料と同じものを用いることができる。また、縮重合の際に用いられる溶媒としては、ポリイミドの場合と同様のものを挙げることができる。
基材層中に分散される導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素系物質;アルミニウム、銅合金等の金属又は合金;更には酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられ、これらの微粉末を1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。基材層に配合される導電剤としては、導電性炭素系物質が好ましく、カーボンブラックがさらに好ましい。
導電剤の含有量は、通常、基材層中5〜30重量%程度(前記基材層形成用組成物の固形分のうち5〜30重量%程度)であればよい。これにより基材層に、画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)に適した導電性が付与される。
前記基材層形成用組成物の固形分濃度は、10〜40重量%であることが好ましい。
前記基材層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、カーボンブラック等の導電剤が均一に分散された溶液組成物とすることができる点から、材料配合後ボールミル等を用いて混合することが好ましい。
基材層の厚さは、駆動時にベルトにかかる応力と柔軟性を考慮して、通常、30〜120μmであり、50〜100μmが好ましい。
(b)ゴム弾性層
本発明の画像形成装置用ベルトにおけるゴム弾性層は、主に、紙の凹凸への追従性向上と転写時のトナーへの応力集中によるライン画像中抜けを回避する目的で設けられる。ゴム弾性層は、ゴム又はエラストマー(以下、ゴム材料ということがある)を含む弾性層形成用組成物によって形成される。ゴム弾性層は、マトリクスであるゴム材料中に繊維径1.0μm以下の針状のフィラーを含有する層であり、該フィラーは該ゴム弾性層中の該表面層側(該表面層との界面付近に)に偏在している。ゴム弾性層は、単層又は2層以上を積層したものであってもよい。
ゴム弾性層を形成するゴム材料としては、具体的には、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム等が例示される。これらは1種単独で用いることも、又は2種以上を併用することもできる。これらの中でも好ましくは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
シリコーンゴムとしては、例えば、付加型液状シリコーンゴムが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製の、KE−106、KE1300等が例示される。
フッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)等が挙げられ、具体的には、ダイキン工業(株)製のフッ素ゴムコート材GLS−213F、GLS−223F等、太平化成工業(株)製のフッ素ゴムコート材FFX−401161等が例示される。
ブチルゴムとしては、イソブチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
アクリルゴムは、アクリル酸エステルの重合、又はそれを主体とする共重合により得られるゴム状弾性体である。
ウレタンゴムは、ポリオールとジイソシアネートの重付加反応により得ることができる。原料であるポリオールとジイソシアネートの混合比は、ポリオールの活性水素1当量に対しジイソシアネートのNCO基が1〜1.2当量程度となるように混合すればよい。また、ポリオールとジイソシアネートの重合を進めたプレポリマーを用いることもでき、この場合、さらに硬化剤としてジイソシアネート又はポリオール、ジアミンをプレポリマーに添加しても良い。またポットライフを長くするためジイソシアネートプレポリマーのNCO末端をブロック剤でブロックしたブロック型のものを用いても良い。ウレタンゴムとしては、例えば、主鎖がエステル結合のポリエステル系ウレタンゴム(AU)、主鎖がエーテル結合のポリエーテル系ウレタンゴム(EU)などが挙げられ、具体的には、DIC(株)製のウレハイパーRUP1627(ブロック型ポリウレタン用プレポリマー)等を挙げることができる。
ゴム弾性層に用いるゴム材料のタイプA硬度(JIS K6253)は、60°以下であることが好ましく、30〜60°がより好ましい。ここで、タイプA硬度とはゴムの柔らかさを示す値である。タイプA硬度が60°を超える場合は、弾性層が硬すぎて凹凸のある紙を用いた場合に追従性が劣り、1次転写時にトナーが濃く乗っているところに応力が集中して、画像の中抜け現象を起こしやすくなる。一方、タイプA硬度が30°未満の場合は、柔らかすぎてベルト駆動時に発生する応力が表面層へ集中しやすくなり、十分な耐久性が得られない傾向がある。
本発明の画像形成装置用ベルトのゴム弾性層は、繊維径1.0μm以下の針状のフィラーを含有し、当該フィラーは表面層側に偏在する。当該フィラーの繊維径は、0.3〜1.0μmが好ましく、0.4〜0.9μmがより好ましい。フィラーの繊維径が1.0μm以下であることで、フィラーと樹脂との界面に州などの空隙が発生しにくくなり、フィラーによる補強効果が比較的均一に発現される。そして、フィラーの補強効果が均一であることによって、クリーニングブレードや紙等との摺擦で発生するせん断応力を、ゴム弾性層内部まで分散させることが可能となり、表面層への応力集中を抑制できるため、薄膜である表面層へのクラックやピンホールの発生を抑制することができる他、表面層の磨耗量が小さくなるため、ベルトの寿命を伸ばすことができる。フィラーの繊維径が1.0μmより大きい場合、特に1.3μmを超える場合には、フィラーと樹脂との界面に州などの空隙が発生しやすくなる。州などの空隙がある場合、フィラーと樹脂が接着している部位はゴム硬度があがるが、空隙ができている部位は、逆にゴム硬度が低下する。そのためフィラーによる補強効果が均一でなく、クリーニングブレードや紙等との摺擦で発生するせん断応力を、均一にゴム層内部に分散させることができない。そのため、表面層の磨耗量が大きくなり、ベルトの寿命を短くしてしまう。
ここで、本発明において「繊維径」は、以下のように測定することができる。電子顕微鏡((株)日立製作所製、SEM、S−4800)を用いて1,000倍〜50,000倍の倍率でフィラーを撮影し、得られた顕微鏡写真中のフィラーから無作為に1つのフィラーを選び、そのフィラーの繊維径を、定規を用いて長軸方向に均等に3箇所測定する。同様の操作を他の無作為に選択した19個のフィラーについても行い、合計20個の繊維径の平均値を繊維径とする。
また、本発明で用いるフィラーの繊維長は、3μm以上であることが好ましく、特に好ましくは、4〜20μmである。5μm以上であると更に好ましい。
さらに、本発明において「繊維長」は、以下のように測定することができる。電子顕微鏡((株)日立製作所製、SEM、S−4800)を用いて1,000倍〜50,000倍の倍率でフィラーを撮影し、得られた顕微鏡写真中のフィラーから無作為に1つのフィラーを選び、そのフィラーの繊維長を、定規を用い測定する。同様の操作を他の無作為に選択した19個のフィラーについても行い、合計20の繊維長の平均値を繊維長とする。
本発明で用いるフィラーの平均アスペクト比は、5以上が好ましく、10以上のものがより好ましい。平均アスペクト比の小さい粒子状や球状のフィラーの場合、樹脂との接触面積が小さいことと、フィラーの配向による補強が殆どないことから、補強効果が小さい。そのため大量に添加する必要があり、表面層付近のみのゴム硬度を上げるには好ましくない。また、本発明において「針状」とは、平均アスペクト比が5より大きく60以下のものをさす。
ここで、本発明において「平均アスペクト比」は、上述の測定方法により求められた繊維長と繊維径の比率、すなわち、繊維長/繊維径で表すことができる。
ゴム弾性層におけるフィラーの含有量は、体積分率で1.0〜2.9%が好ましく、1.2〜2.5%がより好ましい。フィラーの添加量が少なすぎると補強の効果が小さく、多すぎるとゴム層全体のゴム硬度が上昇し、ライン画像中抜け等の欠陥を抑制できなくなる。
また、表面層付近のゴム硬度だけを上昇させるため、フィラーが表面層側に傾斜して存在していることが好ましい。換言すれば、ゴム弾性層における表面層側のフィラー濃度が、ゴム弾性層の厚み方向中央部のフィラー濃度よりも高くなることが好ましい。具体的には、表面との界面付近のフィラー濃度がゴム弾性層の厚み方向中央部の濃度の4倍以上であるのが良い。
該フィラーの偏在については、ゴム弾性層中の表面層側におけるフィラーの質量濃度と、それ以外の場所でのフィラーの質量濃度の比により表すことができる。具体的には以下のとおりである。
表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域(図3中のA)に含まれるフィラーの質量濃度M、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ60〜80μmの領域(図3中のB)に含まれるフィラーの質量濃度M、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ120〜140μmの領域(図3中のC)に含まれるフィラーの質量濃度Mとする。
表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの質量濃度Mと、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ120〜140μmの領域に含まれるフィラーの質量濃度Mの濃度の比(M/M)が、4以上が好ましく、6以上であることがより好ましい。
表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの質量濃度Mと、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ60〜80μmの領域に含まれるフィラーの質量濃度Mの比(M/M)が、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
前記質量濃度比(M/M、M/M)が大きければ大きいほど、フィラーがゴム弾性層中の表面層側に偏在していることを示すものである。M/Mが4以上、M/Mが3以上であると、ゴム弾性層の表面層と接する領域だけのゴム硬度が高いため、表面層への応力集中を回避し、高品質の画像を維持したまま、優れた耐久性を有する中間転写ベルトとすることができるため好ましい。M>M>Mとなるのが好ましい。
フィラーの濃度の比が、前記範囲内にあることで、フィラーがゴム弾性層中の表面層側に偏在していることを示す。このようにフィラーを偏在させることで、ゴム層全体の硬度が高くならず、表面層との接触部位だけが硬度が上がり、表面層への応力集中が防止できるため好ましい。
ここで、フィラーの質量濃度は、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)(加速電圧:20kV、照射時間:5分間)により、フィラーを構成する主要な元素の質量濃度を測定することにより行うものである。例えば、フィラーが酸化チタンである場合はチタニウム濃度を、フィラーがチタン酸カリウムの場合はチタニウム濃度を測定する。また、EDXによる測定は、20μm×20μmの領域について測定をするため、各それぞれの領域について、任意の20μm×20μmの領域を3回測定(例えば、図3の太線で囲った部分を測定)し、平均値をその領域のフィラー濃度とした。
フィラーを偏在させる方法としては、特に限定はされないが、後述の遠心成型などにより強制的に表面層側に偏在させて製膜する方法等を挙げることができる。
フィラーをゴム弾性層の表面層側に集中的に傾斜させるためには、フィラーの比重がマトリクス樹脂の比重の3倍以上あることが好ましく、3〜8倍であることがより好ましい。フィラーの比重としては、通常2〜10g/cm、好ましくは3〜7g/cmである。
配合されるフィラーの種類としては、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩基性硫酸マグネシウム、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、珪酸カルシウム、ガラス繊維などが挙げられる。これらの中でも、繊維径が小さいタイプのチタン酸カリウム、酸化チタンが好ましい。当該フィラーは、1種でも又は2種以上を組み合わせてもよい。また、繊維径、形状、比重等の異なるフィラーを2種以上組み合わせてもよい。
更に、フィラーをシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤で適宜処理することにより、フィラーとマトリクス樹脂との接着を強化することで、表面層の耐磨耗性を更に向上させることもできる。
また、前記弾性層形成用組成物には、必要に応じて硬化剤を添加することができる。例えば、シリコーンゴムの場合、硬化剤としてハイドロジェンオルガノポリシロキサン等が挙げられ、ウレタンゴムの場合、硬化剤としてジイソシアネート又はポリオール、ジアミンを用いることができる。これらの硬化剤は、弾性層形成用組成物中に配合して用いればよい。
硬化剤を添加する場合、その添加量はゴム主剤と硬化剤の反応性官能基数を1:1とするため、同一当量を混合すればよいが、ジイソシアネートなど反応性の高い物質の場合、環境中の水分等と反応して不活性になることなどを考慮し、1〜1.2倍当量とすることが好ましい。
前記弾性層形成用組成物の固形分濃度は、製造方法によって適宜設定することができるが、通常、フィラーを含めて35〜70重量%程度が好ましい。
前記弾性層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、材料配合後ボールミル、ホモディスパー等を用いて混合することが好ましい。特に繊維径が小さいフィラーを添加する場合は、フィラーが折れないように、ビーズを使わないホモディスパー等で混合することが好ましい。
ゴム弾性層の厚みは、200〜450μmであり、200〜400μmであることが好ましく、220〜320μmであることがより好ましい。当該ゴム弾性層の厚みは、多層ベルトの総厚みから、基材層の厚みおよび表面層の厚みを差し引くことにより求めることができる。なお、当該多層ベルトの総厚み、基材層の厚みおよび表面層の厚みの測定方法については、実施例に記載したとおりである。ゴム弾性層の厚みが前記範囲内にあることで、感光体と転写ベルトとの接触圧を低く保つことができ、感光体上のトナーが凝集し、ライン状画像中央が転写しない「ライン画像中抜け」現象を防ぐことができると同時に、転写ベルトの膜厚が厚すぎる場合に発生しやすい、色ずれを防止できるため好ましい。
(c)表面層
本発明の画像形成装置用ベルトにおける表面層は、直接トナーを乗せ、トナーを紙へ転写、離型するための層であり、表面精度に優れていることが求められる。表面層は、樹脂が有機溶媒又は水中に溶解又は分散された表面層形成用組成物によって形成される。
表面層に用いる樹脂としては、フッ素系樹脂、例えば、ポリビニリデンフロライド、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)、ウレタン系樹脂、例えば、主鎖がエステル骨格のエステル系ウレタン樹脂、主鎖がエーテル骨格のエーテル系ウレタン樹脂、主鎖がカーボネート骨格のカーボネート系ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。これらは1種単独で用いることも、又は2種以上を併用することもできる。これらの中でも、摩擦係数、耐磨耗性の観点から特にフッ素系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。特に、電気特性の観点からは、ポリビニリデンフロライド、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、エーテル系ウレタン樹脂が好ましく、耐摩耗性の観点からは、エステル系ウレタン樹脂が好ましい。
また、表面層には層状粘土鉱物を添加してもよく、層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
また、これら層状粘土鉱物は、天然物でも合成品でもよい。例えば、合成モンモリロナイトとして、クニミネ工業(株)製のクニピアF等;合成ヘクトライトとして、ラポート社のラポナイトXLG、ラポナイトRD、コープケミカル(株)製のルーセンタイトSTN等;合成サポナイトとして、クニミネ工業(株)製のスメクトンSA等が挙げられ、これらは商業的に入手することが可能である。
上記層状粘土鉱物を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
層状粘土鉱物の配合割合は、表面層の総重量に対して、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%がより好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。このような割合で層状粘土鉱物を配合することによって、転写ベルトの表面層を薄膜化してもピンホールの発生が少なく優れた転写性能と耐久性を実現することができる。
ここで、優れたラフ紙転写性能とは、ボンド紙等の凹凸の激しい紙を用いてマゼンタ単色のベタ印刷を行って、最深部(凹部)のトナーの乗りを目視で判断した場合に、白抜け等がなく、ムラなく転写されていることを指す。
表面層の成形は、前記樹脂と任意で添加する層状粘土鉱物を有機溶媒中に溶解又は膨潤させて得られる表面層形成用組成物を、円筒状金型等の内面に塗布乾燥することによって行うことができる。
前記樹脂が溶解又は膨潤される有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、非プロトン性極性溶媒と他の有機溶媒との混合有機溶媒が使用される。
非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、これらの中から1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;或いはこれらの混合溶媒が挙げられる。
本発明においては、有機溶媒中に樹脂と層状粘土鉱物を溶解、膨潤させて得られた溶液を、48〜72時間程度静置した後、目視にて沈降が認められないものを表面層材料として用いることが望ましい。
本発明において表面層のテーバー摩耗量(JIS K7204準拠、テーバー磨耗試験機、磨耗輪CS−17、荷重250gにて300回実施)は、0.8mg以下である。テーバー摩耗量が0.8mg以下であることにより、ブレードクリーニング機構を適用した100万枚相当のプリント後でも、表面層が磨耗してゴム層が表面に露出することがなくなり、ブレードクリーニングが可能な耐久性(耐摩耗性)の高い、ゴム弾性層付きの中間転写ベルトを得ることができる。
表面層の表面粗さ(Rz)は、0.25〜1.5μmが好ましく、0.4〜1.3μmがより好ましく、0.5〜1.2μmがさらに好ましい。表面粗さが0.25μm未満の場合は、ロール等の摺動する部材と張り付いてしまいやすくなるため駆動時のトルクオーバーの原因となってしまい、1.5μmを超える場合は、トナーの固着(フィルミング)の原因やトナーすり抜けによるクリーニング不良となるため好ましくない。なお、本発明において、表面層の表面粗さは、基材層、弾性層、表面層からなる本発明の画像形成装置用ベルトの表面層において測定した表面粗さを示すものである。
本発明において表面層の厚みは、0.5〜6μmであり、1〜6μmが好ましく、2〜6μmがより好ましい。表面層の厚みが前記範囲を超えると弾性層のゴム弾性を損なうことになるため好ましくない。また、表面層の厚みが前記範囲を下回ると、穴があきやすい等の耐久性に問題が生じる。
表面層のヤング率は150〜2,000MPaが好ましく、150〜1,200MPaがより好ましい。ヤング率が2,000MPa以下になることで、トナーへの応力集中によるライン画像中抜けを防止することができ、ヤング率が150MPa以上になることで、表面層の摩擦係数上昇を防ぎ、二次転写効率の悪化を防止できるため好ましい。
表面層の体積抵抗率は、通常1×1012Ω・cm以上が好ましく、1×1012〜1×1015Ω・cmがより好ましく、1×1012〜1×1014Ω・cmがさらに好ましい。なお、本発明において、表面層の体積抵抗率、ヤング率は、表面層形成用組成物を用いて、厚さ10μmの表面層単独膜を作製し、該膜について測定した体積抵抗率、ヤング率を示すものである。
画像形成装置用ベルトの諸物性値
本発明の画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)は、以下の諸物性値を有する。
本発明の画像形成装置用ベルトの、表面層側から測定したマルテンス硬さは、押込み深さ2μmの場合3.2〜6.0N/mmであって、押し込み深さ10μmの場合1.4N/mm以下である。これは、ゴム弾性層の表面層と接する部位(表面層側から20μmまでの部分)のゴム硬度が高いことを意味するものであり、このようなゴム硬度を有するゴム弾性層とすることで表面層への応力集中を回避し、高品質の画像を維持したまま、優れた耐久性を達成し得るものである。
マルテンス硬さは、ISO14577−1に準拠した方法で測定することができ、例えば、ダイナミック超微小硬度計(DUH−211/DUH−211S、(株)島津製作所製)等により測定することができる。また、マルテンス硬さは、同一サンプルの異なる部位を5箇所測定し、その平均を硬度の値とした。
一般的に、硬度測定においては、押込み深さの10倍の深さの部位までの硬度の影響を受けるものである。つまり、押込み深さ2μmの時には表層から約20μmの深さの硬度を測定していることになる。負荷速度0.1463mN/sec、押込み深さ2μmの測定値は、3.2〜6.0N/mmであり、3.4〜6.0N/mmが好ましく、3.4〜5.9N/mmがより好ましい。前記範囲内にあることで、30万枚厚紙通紙テストに耐えられる耐久性が得られる。
また、押込み深さ10μmの時には、表層から約100μmの深さの硬度を測定していることになる。負荷速度0.1463mN/sec、押し込み深さ10μmの測定値は、1.4N/mm以下であり、0.7〜1.4N/mmが好ましく、0.8〜1.4N/mmがより好ましい。前記範囲内にあることで、ライン画像中抜けを防ぎ、ラフ紙転写性等に優れる中間転写ベルトとすることができる。
画像形成装置用ベルトのIRHD硬度は、82 IRHD以下であることが好ましく、70〜82IRHDであることがより好ましい。前記範囲内にあることで、ライン画像中抜けを防止し、ラフ紙転写性に優れる画像形成装置用ベルトとすることができる。IRHD硬度の測定は、JIS K6253に準じて測定することができる。
本発明の画像形成装置用ベルトは表面精度が高く、表面層における表面粗さは十点平均粗さ(Rz:JIS B0601−1994)にて0.25〜1.5μm程度が好ましく、0.4〜1.3μm程度がより好ましく、0.5〜1.2μm程度がさらに好ましい。
本発明の画像形成装置用ベルトの表面の静摩擦係数は、0.1〜0.8が好ましく、0.1〜0.6程度がより好ましく、0.1〜0.4がさらに好ましい。また、本発明の画像形成装置用ベルトの表面抵抗率は1×1010〜1×1015Ω/□程度、体積抵抗率は1×10〜1×1014Ω・cm程度であることが好ましく、弾性層及び/又は基材層に添加する導電剤の添加量に応じてこの範囲で可変である。
本発明の画像形成装置用ベルトの平均総厚みは、通常、300〜550μm程度、好ましくは300〜450μm程度である。各層の厚さは、駆動時にベルトにかかる応力と柔軟性を考慮して適宜設定され得るが、各層の厚みの割合は、通常、基材層を1とした場合、弾性層2〜5程度、好ましくは2〜4程度;表面層0.005〜0.05程度である。後述するような3層化工程を採用することによって、ベルトの厚みのばらつきは小さくなり、均質なベルトが製造できる。
2.画像形成装置用ベルトの製造方法
以上のような構成を有する画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)の製造方法については、特に限定されないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。
本発明の画像形成装置用ベルトは、以下の工程を含む製造方法によって得ることができる。
(1)基材層形成用組成物を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)表面層形成用組成物を、円筒状金型を用いて遠心成型を行い、表面層を製膜する工程、
(3)上記(2)で得られた表面層の内面に、フィラーを含む弾性層形成用組成物を、遠心成型によってゴム弾性層に製膜し、2層膜とする工程、及び
(4)上記(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜のゴム弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する工程。
あるいは、上記(1)及び(2)により表面層及び基材層をそれぞれ製膜した後、(3’)表面層の内面に基材層の外面を重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物を注入し、加熱処理することによっても製造することができる。
以下、各工程について説明する。なお、本発明の製造方法において使用する原料やその含有量等は、前述のとおりである。
工程(1)(基材層の形成)
基材層は次のようにして製膜することができる。
まず、基材層の典型材料であるポリイミドを用いる場合について説明する。
前述のように、ポリイミドの原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとをNMP等の溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とし、基材層に所望の半導電性を付与するために、カーボンブラック等の導電剤を上記ポリアミック酸溶液に添加し、カーボンブラックが分散されたポリアミック酸(基材層形成用組成物)を調製する。
得られた基材層形成用組成物を用い、回転ドラム(円筒状金型)等による遠心成型を行う。加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し100〜190℃程度、好ましくは110〜130℃程度に到達せしめる(第1加熱段階)。昇温速度は、例えば、1〜2℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、およそ半分以上の溶剤を揮発させて自己支持性のある管状ベルトを成形する。
また、第1加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度であることが好ましい。一般に、重力加速度(g)は9.8(m/s)である。
遠心加速度(G)は下記式(I)から導かれる。
G(m/s)=r・ω=r・(2・π・n) (I)
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60秒間の回転数がrpm)を示す。前記式(I)より、円筒状金型の回転条件を適宜設定することができる。
次に、第2段階加熱として、温度280〜400℃程度、好ましくは300〜380℃程度で処理してイミド化を完結させる。この場合も、第1段階加熱温度から一挙にこの温度に到達するのではなく、徐々に昇温して、その温度に達するようにすることが望ましい。なお、第2段階加熱は、管状ベルトを回転ドラムの内面に付着したまま行っても良いし、第1加熱段階終了後に、回転ドラムから管状ベルトを剥離し、取り出して別途イミド化のための加熱手段に供して、280〜400℃になるように加熱してもよい。このイミド化の所用時間は、通常約20分〜3時間程度である。
基材層の材料としてポリアミドイミドを用いる場合も同様にして、ジアミン或いはジアミンから誘導されたジイソシアネートと、トリメリット酸とを溶媒中で反応させて直接ポリアミドイミドとし、これを遠心成型して、継目のない(シームレス)ポリアミドイミドの基材層を製膜できる。
また、基材層の材料としてポリカーボネート、PVdF、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等を用いる場合は、これらの樹脂を溶融して押出成型することによりシームレスの基材層を製膜できる。
このようにして、継目のない基材層を製膜できる。
工程(2)(表面層の形成)
表面層は、例えば、次のようにして製膜することができる。
前記表面層形成用組成物を、表面粗さ(Rz)0.25〜1.5μmを有する円筒状金型を用いて遠心成型を行う。この場合、得られる表面層の厚みが0.5〜6μm程度となるように調製する。
表面層の遠心成型は、例えば、重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度に回転した回転ドラム(円筒状金型)内面に最終厚さを得るに相当する量の表面層形成用組成物を注入した後、徐々に回転速度をあげ重力加速度の2〜20倍の遠心加速度に回転を上げて遠心力で内面全体に均一に流延する。
回転ドラムは、その内面が所定の表面精度に研磨されており、この回転ドラムの表面状態が、本発明の画像形成装置用ベルトの表面層外面にほぼ転写される。従って、回転ドラムの内面の表面粗さを制御することにより、表面層の表面粗さを所望の範囲に調節することができる。回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)を、0.25〜1.5μmの範囲で設定すると、ほぼそれに対応した表面粗さ(Rz)0.25〜1.5μmを有する表面層を形成できる。但し、画像形成装置用ベルトの表面層の表面粗さは、ベルトの微妙なタワミやウネリを測定上拾ってしまうため、回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)に比してやや高めの値になる傾向がある。そのため、ベルト表面層の所望の表面粗さに対して、やや小さめの内面の平均表面粗さ(Rz)を有する回転ドラムを採用することもできる。なお、使用する金型内面の粗度は、内面仕上げ時に使用する研磨紙の番手等により任意に制御できる。
回転ドラムは回転ローラー上に載置し、該ローラーの回転により間接的に回転が行われる。また該ドラムの大きさは、所望する画像形成装置用ベルトの大きさに応じて適宜選択できる。
加熱は、該ドラムの周囲に、例えば遠赤外線ヒータ等の熱源が配置され外側からの間接加熱により行われる。加熱温度は樹脂の種類に応じて変化し得るが、通常、室温から樹脂の融点前後の温度、例えば、樹脂の融点Tmとした場合に、(Tm±40)℃程度、好ましくは(Tm−40)℃〜Tm℃程度まで徐々に昇温し、昇温後の温度で10〜60分程度加熱すればよい。これにより、ドラム内面に継目のない(シームレス)管状の表面層が製膜できる。
工程(3)(2層化)
上記工程(2)で得られた表面層の内面に、弾性層形成用組成物を遠心成型して、厚みが200〜450μmの弾性層を製膜し、2層膜とする。
前述の弾性層形成用組成物を、表面層が形成された回転ドラム(円筒状金型)の表面層の内面上に均一に塗布して遠心成型を行い、その後、回転ドラムを重力加速度の2倍以上(好ましくは4〜20倍)の遠心加速度で回転させながら加熱処理を行う。回転ドラムの回転速度を重力加速度の2倍以上の遠心加速度とすることで、原料溶液に対し常に重力加速度以上の遠心力がかかるため、樹脂より比重の重いフィラーが表面層側に偏析しやすくなるため好ましい。
加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し90〜180℃程度、好ましくは90〜150℃程度に到達せしめる。昇温速度は、例えば、1〜3℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、ドラム内に表面層、その上に弾性層を有する2層膜を成形する。
ゴム弾性層を2層以上にする場合は、先に製膜したゴム弾性層内面に、更に弾性層形成用組成物を遠心成型し、同様に加熱硬化させ、必要に応じこれを繰り返す。特に、強い遠心力がかけにくい径の大きなベルトの製膜や、遠心成型以外の方法を用いる成膜の場合は、表面層側にフィラー濃度の高いゴム弾性層を製膜し、その内面に更にフィラー濃度の低いゴム弾性層を製膜するのが好ましい。
工程(4)(3層化)
上記工程(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜(表面層と弾性層)の弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する。
具体的には、回転ドラム内に製膜した2層膜の弾性層内面に公知の接着用プライマー等を塗布、風乾した後、外面にドライラミ接着剤等を塗布した基材層を挿入し、重ね合わせる。重ね合わせた両層をベルト内面から圧着した後、円筒状金型内面を徐々に昇温し40〜120℃程度、好ましくは50〜90℃程度に到達せしめる。
昇温速度は、例えば、1〜10℃/分程度であればよい。上記の温度で2〜30分維持し、円筒状金型内に表面層、弾性層及び基材層を有する3層ベルトを成形する。
張り合わせた3層ベルトを円筒状金型から剥離し、両端部を所望の幅にカットして3層の画像形成装置用ベルトを製造する。
また、上記製造方法において、上記工程(3)及び(4)に代えて、表面層の内面に基材層の外面を重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物を注入し、加熱処理することによって、弾性層の製膜と3層化を同時に行うことによっても製造することができる(工程(3’))。
工程(3’)(弾性層の製膜と3層化)
上記工程(1)及び(2)に従って別々に製膜した表面層と基材層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物をインジェクションにて注入する。このとき、弾性層の均一化のため、基材層内面の片側端部からもう片側端部へしごきを行うことが好ましい。得られた積層体を加熱処理することにより、画像形成装置用ベルトを得ることができる。なお、両層の重ね合わせ後は、両層の間が密閉状態となるようにすることが好ましい。
例えば、ゴム弾性樹脂としてシリコーンゴムを用いる場合、インジェクションにて得られた積層体を、110〜220℃程度に熱処理することにより、弾性層形成用組成物が加硫(架橋・硬化)するとともに、表面層と基材層が同時に強固に接着される。
また、ゴム弾性樹脂がウレタンゴムの場合、製膜直前に両液を混合して使用することが好ましい。
上記3層化工程の具体例を挙げる。
ドラム内面に製膜された表面層の内面に、公知の接着用プライマー等を均一塗布して風乾する。製膜した基材層外面にもプライマーを塗布して、これを表面層内面に重ね合わせ、減圧状態でこの管状ベルト両端部に内側からOリングを押し当てて、重ね合わせた表面層及び基材層間を密閉状態とする。次に、この両層の隙間に、前述の弾性層形成用組成物をインジェクション法にて注入し、基材層内面側から金属ロールを用いて、弾性層形成用組成物を周方向に均一になるように流延する。
或いは、他の実施態様として以下のような方法も挙げられる。
ドラム内面に製膜された表面層の内面に、公知の接着用プライマーを均一塗布する。製膜した基材層外面にもプライマーを塗布した後、これを円柱状の芯体外面に被せる。この芯体を、内面に表面層が製膜されているドラム内面に挿入し、芯体とドラムを同心軸上に固定する。次に、ドラムの片側から、両層の隙間にペースト状の弾性層形成用組成物をインジェクション法にて注入する。なお、該ドラムは長手方向左右を一対の治具で挟まれて固定したものであり、一方の治具には弾性層形成用組成物の入口が設けられ、他方の治具にはその出口が設けられている。
3層化した後の加熱処理は、110〜220℃まで徐々に加熱して(例えば、昇温速度1〜3℃/分程度)、その温度で0.5〜4時間処理する。これにより、ベルトの架橋・硬化が完了する。加熱終了後、ドラムを冷却し、3層化された管状ベルトをドラム内面から剥離して、本発明の画像形成装置用ベルトを得ることができる。
なお、上記の接着用プライマーの使用は任意であるが、接着強度向上の点から使用するのが好ましい。接着用プライマーとしては、例えば、東レダウコーニング製プライマーDY39−067等が例示される。
以上のような方法により得られる本発明の画像形成装置用ベルトは、高品質の画像を維持したまま、耐久性にも優れることから、複写機(カラー複写機を含む)、プリンター、ファクシミリ等の電子写真方式を採用する画像形成装置の中間転写ベルトとして好適に使用され得る。また、本発明の画像形成装置用ベルトは、良好なハーフトーン画像を形成することができるものである。
以下、実施例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下の諸物性値についての測定方法を示す。
<固形分濃度>
各層を形成する樹脂を精秤し、この時の重量をCgとする。電子天秤上で当該樹脂を溶剤に溶かすために、攪拌しながら溶剤を徐々に加え、最終的な溶液重量をDgとしたときの固形分濃度は、次式(II)となる。
固形分濃度=C/D×100(%) (II)
<表面粗さ(Rz)>
表面粗さ(μm)は、JIS B0601−1994に準拠して測定した。測定機は、キーエンス製レーザー顕微鏡VK−9700を用い、観察条件は対物レンズ20倍×接眼レンズ50倍の1000倍で行った。観察で得られたベルト表面の画像を用い、線粗さを以下の測定条件で測定した。
傾き補正:面傾き補正(自動)
カットオフ:なし
測定長:0.25mm。
同一ベルト内で異なる表面部位を5箇所測定し、その十点平均粗さ(Rz)の平均値を表面粗さとした。
<表面層厚み>
表面層の厚み(μm)は大塚電子製 MCPD3000を用いて、ピークバレイ法、計算範囲550nm〜700nm、ノイズSH=0.01にて測定した。
幅方向の長さ360mmにカットしたベルトをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に4カ所の合計12ヶ所について、それぞれ測定し、その平均値で示した。
<基材層厚み>
基材層の厚み(μm)は、株式会社ケツト製 渦電流式膜厚計LH−200Jを用いて測定した。
幅方向の長さ400mmにカットしたベルトをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に8カ所の合計24ヶ所について、それぞれ測定し、その平均値で示した。
<総厚み>
多層ベルトの総厚みは、(株)ミツヨト製デジマチックインジケータの平面型測定子を用いて幅方向3点、周方向8点の合計24点測定し、その平均値として示した。
<静摩擦係数>
静摩擦係数は、新東科学(株)製のHeidon 94iを用いて、同一ベルト内で異なる表面部位を10箇所測定し、その平均値を静摩擦係数とした。
<表面抵抗率、体積抵抗率>
表面抵抗率(Ω/□)及び体積抵抗率(Ω・cm)は、三菱化学(株)製の抵抗測定器“ハイレスタIP・HRブロ−ブ”を用いて測定した。幅方向の長さ360mmにカットしたベルトをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に4カ所の合計12ヶ所について、印加電圧100V、10秒後に表面抵抗率及び体積抵抗率をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
<ヤング率>
ヤング率はJIS K7127に準拠し、(株)島津製作所製 オートグラフAG−Xを用いて測定した。
サンプル片25×250mmの短冊状
引張速度20mm/分
<テーバー磨耗量>
テーバー磨耗量は、JIS K-7204に従って評価した。テーバー磨耗試験機の磨耗輪はCS−17、荷重250gにて300回行った(サンプル数=各5)。
<マルテンス硬さ>
ダイナミック超微小硬度計(DUH−211S(株)島津製作所製)を用いて、押し込み深さ10μmの場合の硬度(ISO14577−1 マルテンス硬さ)を以下の条件にて測定した。この際、押込み深さ2μm丁度のマルテンス硬さデータを得るために、2μm押込み深さの前後2点間のプロットから最小ニ乗法により、直線の傾き、切片を計算し硬度を算出した。
なお、それぞれの押し込み深さの硬度については、同一ベルト内で異なる表面部位を5箇所測定し、その平均値をマルテンス硬さとした。
試験機:島津ダイナミック超微小硬度計DUH−211S
試験モード:負荷−除荷試験
負荷速度:0.1463mN/秒
最小試験力:0.02mN
負荷保持時間:2秒
除荷保持時間:0秒
設定押込み深さ:10μm
試験力レンジ:19.6133mN
Cf−Ap、As補正あり
圧子の種類:Triangular115(稜間角115°ダイアモンド三角すい圧子、バーコビッチ形)
<IRHDゴム硬度>
JIS K6253に従い、IRHDマイクロ硬度計(型番:H12型、ウォーレス社製)を用いて、ベルトの表面層側からゴム硬度を測定した。
<ゴム硬度(タイプA硬度)>
JIS K6253に従い、デュロメーターAを用いて、弾性層を構成する材料で厚み10mmのバルク(塊)を作成して評価した。
<電子顕微鏡断面観察>
ベルト断面をミクロトームでスライスし、蒸着厚みが5nmになるよう金蒸着を施して、観察用サンプルを作製した。観察用サンプルについて、電子顕微鏡(日立製作所製SEM: S−4800)による断面観察を行った。
<フィラー偏在確認>
ベルト断面をミクロトームでスライスし、蒸着厚みが5nmになるよう金蒸着を施して、観察用サンプルを作製した。観察用サンプルについて、電子顕微鏡(日立製作所製SEM: S−4800)による断面観察を行った。
また、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの質量濃度M、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ60〜80μmの領域に含まれるフィラーの質量濃度M、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ120〜140μmの領域に含まれるフィラーの質量濃度Mを、EDX(堀場製作所製エネルギー分散型X線分析装置 EMAX モデル7593H、加速電圧:20kV、照射時間:5分間)により測定し、それぞれの濃度比(M/M、M/M)を求めた。
<ライン画像中抜け>
ライン画像中抜けの評価は、23℃、55%の環境下にて、用紙走行方向に並行なライン画像のみの画像をA4サイズで10プリントし、ライン画像をルーペで観察し、ラインの中抜けの程度評価した。
ライン画像中抜けは次の基準で評価した。
「○」:中抜け発生が10枚全てのプリント画像で3箇所以下
「△」:中抜け発生が4〜10箇所のプリントが1枚以上発生
「×」:中抜け発生が11箇所以上のプリントが1枚以上発生
<厚口用紙通紙エッジ部クラック>
複写機の二次転写ロール外面に坪量250g/m2の厚口用紙を巻きつけ、擬似的に連続通紙した状態とし、A4用紙30万枚相当の駆動試験を行った後、黒のハーフトーン画像を印刷し、駆動試験の紙エッジ部と通紙部に相当する位置における画像への影響を確認した。
駆動速度:ベルト外周速度300mm/秒
通電:電源(Trek 610C)によりベルト厚み方向に50μAの定電流を供給
通紙クラック:二次転写ロール外面に15cm幅にカットした厚口用紙を巻きつけ、擬似的に連続通紙した状態を作製
クリーニング機構:ウレタンゴム製クリーニングブレード(ゴム硬度 タイプA 80°)
紙エッジ部クラックの評価は次の基準で評価した。
「○」:画像への影響は全くない
「△」:画像への影響が僅かに認められる
「×」:画像への影響が認められる
<耐久後ゴム層露出確認>
A4用紙30万枚相当の駆動試験後の厚口用紙通紙エッジ部クラックを確認した後、引き続き同一条件で、A4用紙100万枚相当になるまで駆動試験を継続し、ベルトの通紙部に相当する部位を顕微鏡で観察してゴム層の露出の有無を確認した。
ゴム層の露出は次の基準で評価した。
「○」:露出は全くない
「△」:画像への影響のないレベルの微小な露出あり
「×」:画像への影響のあるレベルの露出あり
実施例1
(1)基材層の製膜
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを除々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は19,000、粘度は43ポイズ、固形分濃度は18.1重量%であった。
次に、このポリアミック酸溶液450gに、酸性カーボンブラック(pH3.0)21gとN−メチル−2−ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてカーボンブラック(CB)の均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は、固形分濃度18.5重量%、該固形分中のCB濃度は20.4重量%であった。
そして該溶液から273gを採取し、回転ドラム内に注入し、次の条件で成形した。
回転ドラム:内径301.5mm、幅540mmの内面鏡面仕上げの金属ドラムが2本の回転ローラー上に載置され、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した(例えば、図2参照)。
加熱温度:該ドラムの外側面に遠赤外線ヒータを配置し、該ドラムの内面温度が120℃に制御されるようにした。
まず、回転ドラムを回転した状態で273gの該溶液をドラム内面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は1℃/分で120℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱した。
回転、加熱が終了した後、冷却せずそのまま回転ドラムを離脱して熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を開始した。この加熱も徐々に昇温しつつ320℃に達した。そして、この温度で30分間加熱した後常温に冷却して、該ドラム内面に形成された半導電性管状ポリイミドベルトを剥離し取り出した。なお、該ベルトは厚さ79.5μm、外周長944.2mm、表面抵抗率1×1011〜4×1011Ω/□、体積抵抗率1×10〜3×10Ω・cmであった。
(2)表面層の製膜
ビニリデンフロライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるVdF−HFP共重合樹脂(カイナー#2801、アルケマ製:HFP11モル%)100gを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)900gに溶解させ、固形分濃度10重量%の溶液Aを調製した。
有機変性モンモリロナイト(ルーセンタイトSEN、コープケミカル(株)製)100gを、ジメチルアセトアミド900gに加え、ボールミルにて均一分散を行って固形分濃度10重量%の溶液Bを調製した。
溶液Aと溶液BをA:B=99:1で調合しペイントシェイカーで混合し、固形分濃度10重量%、該固形分中の有機変性モンモリロナイト濃度1重量%の溶液を得た。これをDMAc:酢酸ブチル=1:2の混合溶媒で希釈し、固形分濃度2.0重量%、該固形分中有機変性モンモリロナイト濃度1重量%(表面層の総重量に対するモンモリロナイトの配合割合に相当する)の溶液(以下、表面層材料ということもある)を調製した。この溶液112gを次の条件で製膜した。
回転ドラム:内径301.0mm、幅540mm、内面十点平均粗さ(Rz)=0.5μmの金属ドラムが2本の回転ローラー上に載置され、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した(例えば、図2参照)。
回転ドラムを回転した状態でドラム内面に均一に塗布し加熱を開始した。加熱は2℃/分で130℃まで昇温して、その温度で20分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面に表面層を形成した後ドラムを常温まで冷却した。
なお、上述の表面層材料を用いて、同一製膜条件で別途10μmの表面層を作製した。その10μmの表面層の体積抵抗率は4×1012Ω・cm、ヤング率は610MPa、表面層の表面粗さ(Rz)は、0.6μmであった。
(3)ゴム弾性層の製膜
キシレン219.58gに真比重1.1g/cmのブロック型ウレタン用プレポリマー(ウレハイパーRUP1627、DIC(株)製)169.6gを溶解させた溶液に、フィラーとして針状の酸化チタン(FTL-400、真比重4.2g/cm、繊維径D=0.71μm、繊維長L=10.7μm、石原産業(株)製)14.2gを加え、ボールミルにて均一分散を行った。更に、この分散液に脂肪族ジアミン系の硬化剤CLH−5を13.28g(DIC(株)製)添加し撹拌を行った。
このようにして得られた溶液の固形分濃度は47重量%、該固形分中の針状酸化チタンは、7.2重量%、体積分率で2.0%であった。この分散液を、先に製膜した表面層内面に回転した状態で均一に塗布し加熱を開始した。加熱は1℃/分で150℃まで昇温して、その温度で30分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面にゴム弾性層を形成した。
この加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の5.0倍の遠心加速度であった。一般に、重力加速度(g)は9.8(m/s)である。
遠心加速度(G)は前述の下記式(I)から導かれる。
G(m/s)=r・ω=r・(2・π・n) (I)
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60秒間の回転数がrpm)を示す。前記式(I)より、円筒状金型の回転条件を適宜設定することができる。
上記、弾性層用ウレタン原料溶液に、フィラーを加えなかった以外は同様にして製膜したゴム弾性層単膜を10mm厚になるよう重ね合わせ、タイプA硬度を測定したところ40°であった。
(4)ゴム弾性層内面とポリイミド外面の張り合わせ
上記(3)で製膜したゴム弾性層内面にプライマーDY39−067(東レダウコーニング製)を塗布、風乾した後に、ドライラミ接着剤を薄く外面に塗布した(1)のポリイミドベルトを挿入し重ね合わせた。基材層内面から圧着し、加熱(80〜100℃)を行い、張り合わせを完了させた。張り合わせた多層ベルトを金型から剥離し両端部をカットし幅360mmの多層ベルトと電子顕微鏡観察用サンプル片を採取した。
該多層ベルトは、厚さ380.6μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.24、表面抵抗率2×1011〜4×1011Ω/□、体積抵抗率3×1010〜6×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は0.9μm、表面層のみの厚さは2.48μm、IRHD硬度78.5 IRHD、テーバー摩耗量0.13mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=3.49、M/M=10.94であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
実施例2
ゴム弾性層に配合する針状酸化チタンの量を8.9重量%、体積分率2.5%とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ381.1μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.25、表面抵抗率1×1011〜3×1011Ω/□、体積抵抗率3×1010〜6×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は0.9μm、表面層のみの厚さは2.53μm、IRHD硬度80.1 IRHD、テーバー摩耗量0.10mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=4.6、M/M=14.4であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
実施例3
ゴム弾性層に配合する針状酸化チタンの量を5.5重量%、体積分率1.5%とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ380.0μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.24、表面抵抗率1×1011〜3×1011Ω/□、体積抵抗率3×1010〜7×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.0μm、表面層のみの厚さは2.54μm、IRHD硬度78.8 IRHD、テーバー摩耗量0.14mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=3.09、M/M=9.75であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
実施例4
ゴム弾性層に配合するフィラーを、針状の酸化チタン(FTL-300、真比重4.2g/cm、繊維径D=0.59μm、繊維長L=5.5μm、石原産業(株)製)とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ379.4μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.25、表面抵抗率1×1011〜3×1011Ω/□、体積抵抗率2×1010〜5×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.0μm、表面層のみの厚さは2.51μm、IRHD硬度78.5 IRHD、テーバー摩耗量0.48mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=5.69、M/M=5.94であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
実施例5
ゴム弾性層に配合するフィラーを、針状のチタン酸カリウム(ティスモD、真比重3.5g/cm、繊維径D=0.53μm、繊維長L=13.2μm、大塚化学(株)製)とし、その量を5.9重量%、体積分率2.0%とし、ホモディスパーで分散させた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ379.8μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.27、表面抵抗率1×1011〜3×1011Ω/□、体積抵抗率3×1010〜7×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は0.9μm、表面層のみの厚さは2.51μm、IRHD硬度79.5 IRHD、テーバー摩耗量0.34mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=3.05、M/M=4.13であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
実施例6
表面層材料として、エーテル系ウレタン樹脂をバインダーとした水系ウレタン塗料(Emralon345、ヘンケルジャバン株式会社製)と、硬化剤(WH−1、ヘンケルジャパン株式会社製)を主剤:硬化剤:蒸留水=19:1:100(質量比)の割合で調整した溶液120gを用い、使用する回転ドラムを内面十点平均粗さ(Rz)=0.9μmの金属ドラムとした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ380.4μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.60、表面抵抗率1×1011〜3×1011Ω/□、体積抵抗率2×1010〜6×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.3μm、表面層のみの厚さは4.25μm、IRHD硬度78.6RHD、テーバー摩耗量0.63mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=4.59、M/M=11.33であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
なお、上述の表面層形成用組成物を用いて、同一製膜条件で別途10μmの表面層を作製した。その10μmの表面層の体積抵抗率は2×1012Ω・cm、ヤング率は380MPa、表面層の表面粗さ(Rz)は、1.2μmであった。
実施例7
ゴム弾性層の硬化剤として、CLH−5を7.97g(DIC(株)製)、4,4−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)を3.93g(DIC(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ382.7μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.23、表面抵抗率2×1011〜5×1011Ω/□、体積抵抗率3×1010〜8×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.0μm、表面層のみの厚さは2.62μm、IRHD硬度81.1RHD、テーバー摩耗量0.26mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=4.12、M/M=9.94であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
上記、弾性層用ウレタン原料溶液に、フィラーを加えなかった以外は同様にして製膜したゴム弾性層単膜を10mm厚になるよう重ね合わせ、タイプA硬度を測定したところ55°であった。
実施例8
ゴム弾性層の硬化剤としてCLH−5を6.64g(DIC(株)製)、4,4−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)を4.91g(DIC(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ383.3μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.23、表面抵抗率2×1011〜5×1011Ω/□、体積抵抗率4×1010〜9×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.0μm、表面層のみの厚さは2.53μm、IRHD硬度81.9RHD、テーバー摩耗量0.29mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=4.85、M/M=9.35であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
上記、弾性層用ウレタン原料溶液に、フィラーを加えなかった以外は同様にして製膜したゴム弾性層単膜を10mm厚になるよう重ね合わせ、タイプA硬度を測定したところ59°であった。
比較例1
ゴム弾性層に配合するフィラーを、針状のウォラストナイト(ウォラストナイトKAP150、真比重2.9g/cm、繊維径D=1.54μm、繊維長L=19.8μm、関西マテック(株)製)とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ379.3μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.24、表面抵抗率1×1011〜4×1011Ω/□、体積抵抗率3×1010〜7×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.2μm、表面層のみの厚さは2.49μm、IRHD硬度79.0 IRHD、テーバー摩耗量1.35mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるシリカの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=20.3、M/M=29.4であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出が通紙部で認められた。
比較例2
ゴム弾性層に配合するフィラーを、針状のホウ酸アルミニウム(アルボレックス、真比重3.0g/cm、繊維径D=1.12μm、繊維長L=23.1μm、四国化成(株)製)とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ379.7μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.25、表面抵抗率1×1011〜5×1011Ω/□、体積抵抗率4×1010〜7×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.2μm、表面層のみの厚さは2.55μm、IRHD硬度79.2 IRHD、テーバー摩耗量1.21mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるアルミニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=17.7、M/M=25.9であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出が通紙部で認められた。
比較例3
ゴム弾性層に配合する針状酸化チタンの量を3.0重量%、体積分率0.8%にした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ378.4μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.23、表面抵抗率1×1011〜3×1011Ω/□、体積抵抗率2×1010〜5×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.1μm、表面層のみの厚さは2.53μm、IRHD硬度77.9 IRHD、テーバー摩耗量0.20mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=2.85、M/M=5.37であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜け発生が3箇所以下であり、良好であった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部に表面層のクラックの影響と思われるノイズが僅かに確認された。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
比較例4
ゴム弾性層に配合する針状酸化チタンの量を10.6重量%、体積分率3.0%にした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ381.6μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.27、表面抵抗率2×1011〜6×1011Ω/□、体積抵抗率2×1010〜7×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は0.9μm、表面層のみの厚さは2.48μm、IRHD硬度82.8 IRHD、テーバー摩耗量0.17mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=4.4、M/M=15.9であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜けが11箇所以上発生し、実用上問題あるレベルであった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
比較例5
ゴム弾性層の硬化剤として、CLH−5を5.31g(DIC(株)製)、4,4−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)を5.89g(DIC(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、厚さ382.7μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.23、表面抵抗率2×1011〜7×1011Ω/□、体積抵抗率4×1010〜9×1010Ω・cm、表面粗さ(Rz)は1.0μm、表面層のみの厚さは2.48μm、IRHD硬度83.1RHD、テーバー摩耗量0.36mgであった。電子顕微鏡(SEM)による断面観察とEDXによるチタニウムの質量濃度比(M/M、M/M)を測定したところ、M/M=3.68、M/M=10.73であった。これより、表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域に含まれるフィラーの濃度が、ゴム層中央部よりも高濃度になっていることが確認された。
初期画像のライン画像中抜けについては、10枚全てのプリント画像で、中抜けが11箇所以上発生し、実用上問題あるレベルであった。
また、30万枚相当の厚口用紙通紙耐久テスト後のハーフトーン画像を確認したところ、通紙耐久テスト紙エッジ部、通紙部ともに画像への影響は全く認められなかった。さらに100万枚相当の駆動テスト後の表面観察を行ったところ、磨耗によるゴム弾性層の露出は認められなかった。
上記、弾性層用ウレタン原料溶液に、フィラーを加えなかった以外は同様にして製膜したゴム弾性層単膜を10mm厚になるよう重ね合わせ、タイプA硬度を測定したところ62°であった。
実施例1〜8、比較例1〜5により得られた多層ベルトの物性を、表1に示した。
Figure 2012177889
A:表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ20μmまでの領域(図3)
B:表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ60〜80μmの領域(図3)
C:表面層とゴム弾性層の界面から基材層側に向かって深さ120〜140μmの領域(図3)

Claims (4)

  1. 樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び樹脂製の表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、該ゴム弾性層中に繊維径1.0μm以下の針状のフィラーを含み、該フィラーが該ゴム弾性層中の該表面層側に偏在しており、該表面層のテーバー磨耗量(JIS K7204準拠、テーバー磨耗試験機、磨耗輪CS−17、荷重250gにて300回実施)が0.8mg以下であり、表面層側から測定したマルテンス硬さ(ISO14577−1)が、押込み深さ2μmの場合3.2〜6.0N/mmであって、押し込み深さ10μmの場合1.4N/mm以下であり、該表面層側から測定したIRHD硬度(JIS K6253)が82 IRHD以下である画像形成装置用ベルト。
  2. 前記フィラーの繊維長が4〜20μmである、請求項1に記載の画像形成装置用ベルト。
  3. 前記ゴム弾性層中のフィラーの含有量が、体積分率で1.0〜2.9%である、請求項1または2に記載の画像形成装置用ベルト。
  4. 前記ゴム弾性層の厚みが200〜450μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
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