JP6371496B2 - 画像形成装置用中間転写ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、画像形成装置の中間転写ベルトに関する。より詳しくは、これらの画像形成装置において転写残トナーを静電クリーニングにより除去する方法が採用される装置の中間転写ベルトに関する。
複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置においては、感光体上に形成されたトナー画像を、紙等の記録媒体に転写する前に、一旦前記トナー像を中間転写ベルト上に転写して、その後、中間転写ベルト上のトナー像を記録媒体に転写する。これらの画像形成装置によって得られる画像の高画質化を目的として、中間転写ベルトの性能を向上させる方法が種々検討されている。
高画質化を実現する方法の一つに、中間転写ベルトに弾性層を設けて柔軟性を付与することによって、中間転写ベルトと接する感光体等との転写領域を安定的に形成できると共に、感光体等との間でトナーに加えられる応力を軽減する方法が挙げられる。このような中間転写ベルトを採用することにより、画像の中抜け防止、細線印字の鮮明度向上等を達成することができる。また、表面が荒い用紙(ラフ紙)を使用した場合でも紙への追従性が高いことから、画質の低下を回避できる。
一方、ゴム弾性層はトナーに対して粘着性を有することから、記録媒体と接するゴム弾性層の表面に表面層を形成することが必要となる。表面層には、転写ベルトから記録媒体へトナーを移し替えるため、トナーに対して優れた離型性が求められる。従って、摩擦係数の低い樹脂、例えばフッ素樹脂を主体とした表面層を有する中間転写ベルトが開発された。また、更に高画質の画像を得るために表面層を可能な限り薄くすることが有効とされている。
このような弾性層及び表面層を基材層上に備えた3層構成の中間転写ベルトは多数知られており、画像形成装置において多用されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。中間転写ベルトは、前述のようにトナー画像を転写するために使用されるが、記録媒体へのトナー画像転写後、中間転写ベルト上にトナーが残存して次の転写画像の画質の低下を招く虞がある。従って、画像形成装置には、通常クリーニング装置が備えられ、転写が終了する度に中間転写ベルトをクリーニングして残存トナーを除去する。一般的なクリーニング方法としては、ウレタンブレード等を用いて中間転写ベルト上の残存トナーを掻き取るブレードクリーニング手法が挙げられる。しかし、前述のように高画質を実現するために表面層はできるだけ薄く設計されることから、クリーニングブレードからベルトにかかる応力が表面層に集中すると表面層のワレや剥離が発生するという問題があった。従って、薄層の表面層を備えた中間転写ベルトに対してこのようなクリーニング手法を用いることは困難であった。
そこで、このような問題を回避するため静電的に残存トナーを回収、除去するクリーニング方法である静電クリーニング手法が開発された。静電クリーニング手法の一例として、回収しようとするトナーと反対極性の電圧を印加した導電性のファーブラシを、回転状態で中間転写ベルトに摺擦させるファーブラシ方式がある。ファーブラシ方式は、被クリーニング部材である中間転写ベルトの材料や形状に対して比較的自由度があり、表面が柔らかくて、ブレードクリーニングでは十分なトナー除去効果が得られない弾性層を備えた中間転写ベルトに対しても安定したクリーニング特性を発揮できる。しかしながら、前述のようなフッ素樹脂を主体とする表面層を備えた中間転写ベルトに対しては、静電クリーニングを適用しても残存トナーの除去を十分に行うことができないことが問題となっていた。そのため、フッ素樹脂を含む表面層を備えた中間転写ベルトであって、且つ静電クリーニングにも適した中間転写ベルトが求められていた。
特許第3248455号明細書 特開2011−64985号公報 特開2011−22271号公報
本発明は、トナー離型性に優れた画像形成装置用中間転写ベルトであって、特に静電クリーニングにより転写残トナーを除去する方法が採用される画像形成装置において優れた静電クリーニング特性を有する中間転写ベルトを提供することを主な課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、基材層、弾性層及び表面層の少なくとも3層を有する中間転写ベルトにおいて、フッ素樹脂を含む表面層に特定の粉体抵抗率を有する導電剤を添加することにより、優れた静電クリーニング特性を付与できることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて更に検討を重ねた結果完成されたものである。即ち、本発明は下記態様の画像形成装置用中間転写ベルトを提供する。
項1.下記(a)〜(c)の少なくとも3層を有する画像形成装置用中間転写ベルト:
(a)樹脂製の基材層
(b)ゴム弾性樹脂を含む弾性層、ならびに
(c)フッ素樹脂と、粉体抵抗率が2.5〜40000Ω・mの導電剤とを含む表面層。
項2.前記導電剤の粉体抵抗率が2.5〜20000Ω・mである、項1に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
項3.前記導電剤が、カーボンブラック又は導電性酸化亜鉛である、項1又は2に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
項4.表面層において、フッ素樹脂100重量部に対して前記導電剤を10〜60重量部含有する、項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
項5.静電クリーニング装置を備えた画像形成装置において使用される、項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
本発明の中間転写ベルトによれば、特定の粉体抵抗率を有する導電剤を表面層に添加して表面層の表面抵抗率を制御することにより残存トナーの離型性を向上させることができる。本発明の中間転写ベルトは、特に、静電クリーニング装置により残存トナーを除去するクリーニング手段を備えた画像形成装置の中間転写ベルトとして好適である。
フッ素樹脂100重量部に対する導電剤の添加部数と表面抵抗率の関係を示すグラフである。図1において縦軸は、印加電圧100Vでの表面抵抗率を対数表示に変換した値を示す。
1.画像形成装置用中間転写ベルト
本発明の画像形成装置用中間転写ベルトは、下記(a)〜(c)の少なくとも3層を有することを特徴とする:
(a)樹脂製の基材層
(b)ゴム弾性樹脂を含む弾性層、ならびに
(c)フッ素樹脂と、粉体抵抗率が2.5〜40000Ω・mの導電剤とを含む表面層。
本明細書において、本発明の画像形成装置用中間転写ベルトを単に「本発明の中間転写ベルト」と略記することがある。以下、各層の構成について詳述する。
(a)基材層
本発明の中間転写ベルトにおいて基材層は、駆動時にかかる応力によるベルトの変形を回避するため、引張、圧縮等の外力に対する耐久性に優れた材料で構成される。基材層は、後述する樹脂を含む基材層形成用組成物によって形成される。
基材層を構成する樹脂としては、画像形成装置用の中間転写ベルトの基材層に求められる物性を充足し得る樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等を挙げることができ、これらの樹脂から1種を選択して単独で使用してもよく、2種以上の樹脂を含む混合物として使用してもよい。
前記ポリイミドは、通常、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)等の溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とし、さらに、後述する導電剤をポリアミック酸溶液中に分散させて基材層形成用組成物とすることができる。
この際に用いる溶媒としては、例えば、NMP、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン系有機極性溶媒を挙げることができ、これら1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でもNMPが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、アゾベンゼン−3,3',4,4'−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の酸二無水物が挙げられる。
ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4'−ジアミノビフェニル、ベンジジン、3,3'−ジメチルベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノアゾベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、上記したジアミン成分におけるアミノ基がイソシアネート基に置換した化合物等が挙げられる。
また、ポリアミドイミドは、トリメリット酸とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。この場合、ジアミン又はジイソシアネートは、上記のポリイミドの原料と同じものを用いることができる。また、縮重合の際に用いられる溶媒としては、ポリイミドの場合と同様のものを挙げることができる。
また、基材層中には導電剤が分散されている。導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素系物質;アルミニウム、銅合金等の金属又は合金;酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられる。これらの導電剤を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において基材層に配合される好適な導電剤としては、導電性炭素系物質が例示され、より具体的にはカーボンブラックが挙げられる。基材層中に分散される導電剤は、表面層で使用される導電剤と同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
導電剤の含有量は、通常、基材層中5〜30重量%(前記基材層形成用組成物の固形分のうち5〜30重量%)であればよい。これにより基材層に、中間転写ベルトに適した導電性が付与される。
前記基材層形成用組成物における固形分濃度は、10〜40重量%であることが好ましい。
前記基材層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂、溶媒、導電剤等の材料を配合した後ボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
基材層の厚さは、駆動時にベルトにかかる応力や外力に対する耐久性を考慮して適宜設定され得るが、例えば30〜120μm、好ましくは50〜100μmが挙げられる。
(b)弾性層
本発明の中間転写ベルトにおける弾性層は、主に、紙等の記録媒体に対する追従性向上の目的で設けられる。弾性層は、ゴム弾性樹脂(液状)を含む弾性層形成用組成物によって形成される。ここで、「ゴム弾性」とは、ゴム状態の高分子物質に観測される大きな弾性変形挙動を指す。
ゴム弾性樹脂としては、前述のゴム弾性をもつ樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム等が例示され、これらの中から1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組合せて使用してもよい。本発明においては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムが好ましいゴム弾性樹脂として例示される。
シリコーンゴムとしては、例えば、付加型液状シリコーンゴムが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製の、KE−106、KE1300等が例示される。
フッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)等が挙げられ、具体的には、ダイキン工業(株)製のフッ素ゴムコート材GLS−213F、GLS−223F等、太平化成工業(株)製のフッ素ゴムコート材FFX−401161等が例示される。
ブチルゴムとしては、イソブチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
アクリルゴムは、アクリル酸エステルの重合、又はそれを主体とする共重合により得ることのできるゴム状弾性体である。
ウレタンゴムは、ポリオールとジイソシアネートの重付加反応により得ることができる。原料であるポリオールとジイソシアネートの混合比は、ポリオールの活性水素1当量に対しジイソシアネートのNCO基が1〜1.2当量程度となるように混合すればよい。また、ポリオールとジイソシアネートの重合を進めたプレポリマーを用いることもでき、この場合、さらに硬化剤としてジイソシアネート又はポリオールをプレポリマーに添加しても良い。またポットライフを長くするためジイソシアネートプレポリマーのNCO末端をブロック剤でブロックしたものを用いても良い。
ウレタンゴムとしては、例えば、主鎖がエステル結合のポリエステル系ウレタンゴム(AU)、主鎖がエーテル結合のポリエーテル系ウレタンゴム(EU)などが挙げられ、具体的には、大日本インキ(株)製のウレハイパーRUP1627(ポリウレタンエラストマー)等を挙げることができる。
ゴム弾性樹脂を溶媒に溶解させて液状とする場合、使用される溶媒としては、特に限定されず、公知の溶媒から適宜選択され得るが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;或いはこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらのうちの1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組合せて混合溶媒として使用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルが好ましい溶媒として挙げられる。
弾性層において、必要に応じて、上記(a)基材層において例示される導電剤が配合されてもよい。また、弾性層には、リチウムイオン塩、イミダゾリウム(イオン液体として添加)、4級アンモニウム塩等のイオン導電剤が含まれていてもよい。
弾性層における導電剤の添加量は、中間転写ベルトとして調製された場合に表面抵抗率が1×1010〜1×1013となるように調整することが好ましい。ゴム弾性樹脂としてウレタンゴムを使用する場合には、ウレタンゴムがイオン電導性を有することから導電剤を添加する必要はないが、例えば、フッ素ゴムを使用する場合には単体では抵抗が高いため導電剤を添加して表面抵抗率を前記範囲となるように調整することが望ましい。このとき添加される導電剤の量は、例えばイオン導電剤を使用する場合にはゴム弾性樹脂の重量に対して0.1〜3重量%が挙げられ、導電性炭素物質を使用する場合にはゴム弾性樹脂の重量に対して5〜40重量%が挙げられる。
また、前記弾性層形成用組成物には、必要に応じて硬化剤を添加することができる。例えば、ゴム弾性樹脂がシリコーンゴムの場合、ビニル基含有オルガノポリシロキサンを主剤とし、硬化剤としてハイドロジェンオルガノポリシロキサン等を用いることができる。これら主剤と硬化剤を、白金触媒下でヒドロシリル化反応により硬化させることによってシリコーンゴムを得ることができる。硬化(架橋)反応は通常2液型で行われ、一方に主剤と硬化剤、もう一方に主剤と触媒が配合されており、製膜直前に両液を混合して使用する。この場合の硬化剤の添加量は、例えば主剤100重量部に対して5〜20重量部が挙げられる。
また、ゴム弾性樹脂がウレタンゴムの場合、硬化剤としてジイソシアネート又はポリオールを用いることができる。
前記弾性層形成用組成物中の固形分濃度は、製造方法によって適宜設定することができるが、例えば、導電剤や硬化剤等を含めて20〜70重量%が挙げられる。
前記弾性層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、材料配合後ボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
弾性層の厚みは、感光体と中間転写ベルトとの接触圧を低く保つことができ、ライン中抜けや色ずれ等の転写不良を防止可能な厚みとなるように適宜設定され得るが、通常200〜400μm、好ましくは200〜350μm、更に好ましくは200〜300μmが挙げられる。
弾性層のタイプA硬度(JIS K6253)は、80°以下、好ましくは30〜80°、更に好ましくは30〜70°が挙げられる。ここで、タイプA硬度とはゴムの柔らかさを示す値である。タイプA硬度が80°を超える場合は弾性層が硬すぎて凹凸のある紙を用いた場合に追従性が劣り、1次転写時にトナーが濃く乗っているところに応力が集中して中抜け現象を起こしやすくなる傾向がある。一方、タイプA硬度が30°未満の場合は、柔らかすぎてベルト駆動時に発生する応力が表面層に集中しやすくなり十分な耐久性が得られない傾向がある。
(c)表面層
本発明の中間転写ベルトにおける表面層は、直接トナーを乗せ、トナーを紙へ転写、離型するための層である。本発明において表面層は、フッ素樹脂と粉体抵抗率が2.5〜40000Ω・mの導電剤とを含む表面層形成用組成物によって形成される。
表面層に用いるフッ素樹脂としては、ポリビニリデンフロライド(PVdF)、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)等が挙げられる。これらのフッ素樹脂から1種を選択して単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
これらの樹脂の中でも摩擦係数、耐磨耗性、電気特性、トナー離型性の観点から特にポリビニリデンフロライド(PVdF)、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体が好ましいものとして挙げられる。
フッ素樹脂の配合割合は、例えば、表面層の総重量に対して70〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、90〜100重量%がさらに好ましい。
表面層形成用組成物は、前記フッ素樹脂を有機溶媒中に溶解させて得られるフッ素樹脂溶液中に導電剤を分散させて調製することができる。フッ素樹脂が溶解される有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、非プロトン性極性溶媒と他の有機溶媒との混合有機溶媒が使用される。
非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、これらの中から1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;或いはこれらの混合溶媒を挙げることができる。
表面層に含まれる導電剤は、粉体抵抗率が2.5〜40000Ω・mの導電剤が使用される。このような紛体抵抗率を有する導電剤を含むことにより、マイナス(−)に帯電しているトナーからマイナス電荷を奪うことがなく、後述する静電クリーニングにおいて特に優れたクリーニング特性を発揮することができる。本発明において表面層に使用される導電剤として、好ましくは粉体抵抗率が2.5〜25000Ω・m、より好ましくは2.5〜20000Ω・m、更に好ましくは2.5〜15000Ω・mのものが挙げられる。このような紛体抵抗率を有する導電剤を使用することにより、より一層前記本発明の効果が顕著に奏される。
本明細書において粉体抵抗率の測定は、デジタルマルチテスター(CDM−2000:株式会社カスタム製)を用い、試料10gをシリンダー(25mmφ、100mmH、鋼製(内面テフロン加工))内に入れ、油圧機により10MPaに加圧し、その時の電気抵抗値をテスターにて測定することにより実施される。
前述のような粉体抵抗値を有する導電剤としては、例えば、カーボンブラック等の導電性炭素系物質;酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられる。更に、導電性金属酸化物においては、ガリウム、アルミニウム等の元素周期表において第13族に属する元素がドープされた酸化亜鉛が好ましいものとして例示される。これらの導電剤から1種を選択して単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の表面層に含まれる導電剤として好ましくはカーボンブラック、酸化亜鉛等が挙げられる。
表面層に含まれる導電剤の比表面積としては、特に限定されないが、例えば、10〜500m2/g、好ましくは10〜200m2/g、が挙げられる。ここで、比表面積は、BELSORP286A(日本ベル製)により測定される。
表面層に含まれる導電剤の平均粒子径としては、特に限定されないが、例えば、0.01〜0.5μm、好ましくは0.01〜0.3μmが挙げられる。ここで平均粒子径は、日機装(株)製マイクロトラックMT300IIを用いて測定される累積が50%時の粒子径(メジアン径:d50)の値である。
表面層における導電剤の含有量は、前記表面層形成用組成物の固形分のうち8〜40重量%、好ましくは前記表面層形成用組成物の固形分のうち8〜30重量%が挙げられる。
またフッ素樹脂100重量部に対する導電剤の配合割合としては、10〜60重量部、好ましくは10〜50重量部、更に好ましくは10〜40重量部が挙げられる。
表面層には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記樹脂及び導電剤に加えて他の樹脂、フィラー、その他の添加剤等が任意成分として含まれていてもよい。
表面層形成用組成物中の固形分濃度としては、上記導電剤と任意成分の総量として、例えば0.5〜10重量%であることが好ましい。
表面層の厚みは、通常2〜6μm、好ましくは2〜5μm、更に好ましくは2〜4μmが挙げられる。表面層の厚みをこのような範囲とすることにより、高画質の画像を形成することができる。
表面層単層の表面抵抗率としては、最終的に中間転写ベルトとして成型された際に後述される表面抵抗率の範囲内となる限り特に限定されないが、例えば1×1010以上1×1013未満、好ましくは1×1010〜1×1012Ω/□、更に好ましくは1×1010〜1×1011Ω/□の範囲が挙げられる。ここで、表面抵抗率は、後述する実施例の試験例1において記載される方法により測定される値を指す。
本発明の中間転写ベルトは上記(a)〜(c)層以外に、本発明の効果を損なわないことを限度として、例えば、後述する製造方法において工程(3)’を採用する場合にはプライマー層を有していてもよい。
本発明の中間転写ベルトの好適な態様
本発明の画像形成装置用中間転写ベルトは、上記構成を採用することによって、表面層の導電性を制御し、静電クリーニング方式の画像形成装置に適した表面特性を付与することができる。また、本発明の中間転写ベルトは、表面層を構成する主な樹脂成分としてフッ素系の樹脂を使用しているため、フッ素樹脂の非粘着特性によりトナーの離型性に優れている。特に、本発明の中間転写ベルトは、静電クリーニング装置を備えた画像形成装置用として好適である。
静電クリーニング装置は、通常、回収しようとするトナーの帯電極性とは逆の電圧が印加されたファーブラシを回転状態で中間転写ベルトに当接させて、当該中間転写ベルト上に残存したトナーを電気的に捕集することによって残存トナーを除去する。従来、トナーに帯電したマイナス電荷がフッ素樹脂で構成される表面層に奪われ、十分にファーブラシにより残存トナーが回収されず、クリーニング不良が生じることが問題となっていた。本発明の中間転写ベルトでは、特定の粉体抵抗率を有する導電剤を表面層に配合することによって上記表面特性が付与され、トナーから電荷を奪うことなく、優れたトナー離型性を発揮することができる。
中間転写ベルトの表面抵抗率が高すぎるとベルトが帯電せずトナーがベルト上に固定されない現象(トナーの飛び散り)を生じる。また、表面抵抗率が低すぎる場合にも電流が流れやすくなるためにベルトが帯電しにくくなってトナーの飛び散りが起こる。トナーの飛び散りは画質の低下の原因となることから、このような問題を回避するために中間転写ベルトの表面抵抗率を所定の範囲内に調整することが望ましく、本発明において中間転写ベルトの表面抵抗率としては、例えば1×1010〜1×1013Ω/□、1×1010〜1×1012Ω/□、更に好ましくは1×1010〜1×1011Ω/□の範囲が挙げられる。ここで、表面抵抗率は、後述する実施例において記載される方法により測定される値を指す。
本発明の中間転写ベルトの総厚みは、通常300〜550μm、好ましくは300〜450μmが挙げられる。中間転写ベルトの厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた積層体の断面を観察することにより計測することができる。また、前記(a)〜(c)に記載される各層の厚みについても同様に断面を観察することにより計測することができる。
2.製造方法
以上の構成を有する画像形成装置用中間転写ベルトの製造方法は、上記(a)〜(c)層が順に積層された中間転写ベルトが得られる限り特に限定されないが、例えば下記工程を含む方法が挙げられる。
(1)基材層形成用組成物を遠心成型して基材層を製膜する工程、
(2)表面層形成用組成物を遠心成型して表面層を製膜する工程、
(3)上記(2)で得られた表面層の内面に、弾性層形成用組成物を遠心成型することによって弾性層を製膜して2層膜とする工程、及び
(4)上記(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜の弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する工程。
或いは上記(1)及び(2)により表面層及び基材層をそれぞれ製膜した後、(3’)表面層の内面に基材層の外面を重ね合わせて、両層の間に弾性層材料を注入し、加熱処理することによっても製造することができる。
以下、各工程について説明する。本発明の製造方法において使用する原料やその含有量等は、前述の通りである。
工程(1)(基材層の形成)
基材層は、基材層形成用組成物を遠心成型して製膜することにより得られる。遠心成型は、円筒状金型等を用いて行うことができる。このとき、得られる表面層の厚みを前記「(a)基材層」に記載される厚みの範囲となるように基材層形成用組成物の使用量を調整する。
基材層の遠心成型は、基材層形成用組成物を投入した円筒状金型を回転させながら加熱することにより行うことができる。加熱は、回転ドラム(円筒状金型)の内面を徐々に昇温し100〜190℃程度、好ましくは110〜130℃程度に到達せしめる(第1加熱段階)。昇温速度は、例えば、1〜2℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜2時間維持し、およそ半分以上の溶剤を揮発させて自己支持性のある管状ベルトを成形する。また、第1加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度であることが好ましい。一般に、重力加速度(g)は9.8(m/s2)である。
遠心加速度(G)は下記式(I)から導かれる。
G(m/s2)=r・ω2=r・(2・π・n)2 (I)
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60秒間の回転数がrpm)を示す。前記式(I)より、円筒状金型の回転条件を適宜設定することができる。
次に、第2段階加熱として、温度280〜400℃程度、好ましくは300〜380℃程度で処理してイミド化を完結させる。この場合も、第1段階加熱温度から一挙にこの温度に到達するのではなく、徐々に昇温して、その温度に達するようにすることが望ましい。なお、第2段階加熱は、管状ベルトを回転ドラムの内面に付着したまま行っても良いし、第1加熱段階終了後に、回転ドラムから管状ベルトを剥離し、取り出して別途イミド化のための加熱手段に供して、280〜400℃になるように加熱してもよい。このイミド化の所用時間は、通常20分〜3時間時間程度である。
工程(2)(表面層の形成)
表面層は、表面層形成用組成物を遠心成型して製膜することにより得られる。遠心成型は、円筒状金型等を用いて行うことができる。このとき、得られる表面層の厚みを前記「(c)表面層」に記載される厚みの範囲となるように表面層形成用組成物の使用量を調整する。
表面層の遠心成型は、例えば、重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度に回転した回転ドラム(円筒状金型)内面に最終厚さを得るに相当する量の表面層形成用組成物を注入した後、徐々に回転速度を上げ、重力加速度の2〜20倍の遠心加速度に回転を上げて遠心力で内面全体に均一に流延する。
回転ドラムは、その内面が所定の表面精度に研磨されており、この回転ドラムの表面状態が、本発明の中間転写ベルトの表面層外面にほぼ転写される。従って、回転ドラムの内面の表面粗さを制御することにより、表面層の表面粗さを所望の範囲に調節することができる。回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)を、0.25〜1.50μmの範囲で設定すると、ほぼそれに対応した表面粗さ(Rz)0.25〜1.50μmを有する表面層を形成できる。なお、使用する金型内面の粗度は、内面仕上げ時に使用する研磨紙の番手等により任意に制御できる。回転ドラムの大きさは、所望する中間転写ベルトの大きさに応じて適宜選択できる。
加熱は、該ドラムの周囲に、例えば遠赤外線ヒータ等の熱源が配置され外側からの間接加熱により行われる。加熱温度は樹脂の種類に応じて変化し得るが、通常、室温から樹脂の融点前後の温度、例えば、樹脂の融点Tmとした場合に、(Tm±40)℃程度、好ましくは(Tm−40)℃〜Tm℃程度まで徐々に昇温し、昇温後の温度で10〜60分程度加熱すればよい。これにより、ドラム内面に継目のない(シームレス)管状の表面層が製膜できる。
工程(3)(2層化)
上記工程(2)で得られた表面層の内面に、弾性層成形用組成物を遠心成型して得られる弾性層を製膜して2層膜とする。
前述の弾性層形成用組成物を、前記「(b)弾性層」に記載される厚みとなるように表面層が形成された回転ドラム(円筒状金型)の表面層の内面上に均一に塗布して遠心成型を行い、その後、回転ドラムを重力加速度の通常2倍以上、好ましくは4〜20倍の遠心加速度で回転させながら加熱処理を行う。
加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し90〜180℃程度、好ましくは90〜150℃程度に到達せしめる。昇温速度は、例えば、1〜3℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、ドラム内に表面層、その上に弾性層を有する2層膜を成形する。
工程(4)(3層化)
上記工程(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜(表面層と弾性層)の弾性層の内面とを重ね合わせて加熱処理することにより3層化される。
具体的には、回転ドラム内に製膜した2層膜の弾性層内面に公知の接着用プライマー等を塗布、風乾した後、外面にドライラミ接着剤等を塗布した基材層を挿入し、重ね合わせる。重ね合わせた両層をベルト内面から圧着した後、円筒状金型内面を徐々に昇温し40〜120℃程度、好ましくは50〜90℃程度に到達せしめる。
昇温速度は、例えば、1〜10℃/分が挙げられる。上記の温度で2〜30分維持し、円筒状金型内に表面層、弾性層及び基材層を有する3層ベルトを成形する。
張り合わせた3層ベルトを円筒状金型から剥離し、両端部を所望の幅にカットして3層の中間転写ベルトを製造する。
また、上記製造方法において、上記工程(3)及び(4)に代えて、表面層の内面に基材層の外面を重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物を注入し、加熱処理することによって、弾性層の製膜と3層化を同時に行うことによっても製造することができる(工程(3'))。
工程(3')(弾性層の製膜と3層化)
上記工程(1)及び(2)に従って別々に製膜した表面層と基材層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物を注入する。このとき、弾性層の厚みが前記「(b)弾性層」の範囲となるように弾性層形成用組成物の注入量を調整すればよい。また、弾性層の均一化のため、基材層内面の片側端部からもう片側端部へしごきを行うことが好ましい。得られた積層体を加熱処理することにより、中間転写ベルトを得ることができる。なお、両層の重ね合わせ後は、両層の間が密閉状態となるようにすることが好ましい。
例えば、ゴム弾性樹脂としてシリコーンゴムを用いる場合、基材層、弾性層及び表面層が積層されてなる積層体を、110〜220℃に熱処理することにより、ゴム弾性樹脂が加硫(架橋・硬化)するとともに、表面層と基材層が同時に強固に接着される。また、ゴム弾性樹脂がウレタンゴムの場合、製膜直前に両液を混合して使用することが好ましい。
3層化した後の加熱処理は、110〜220℃まで徐々に加熱して(例えば、昇温速度1〜3℃/分程度)、その温度で0.5〜4時間処理する。これにより、ベルトの架橋・硬化が完了する。加熱終了後、ドラムを冷却し、3層化された管状ベルトをドラム内面から剥離して、本発明の中間転写ベルトを得ることができる。
以下に試験例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、後述する試験例において表面抵抗率及び体積抵抗率の測定は以下の方法に従って行った。
[表面抵抗率の測定方法]
表面抵抗率(Ω/□)は、三菱化学(株)製の抵抗測定器「ハイレスタIP・HRブロ−ブ」を用いて測定した。幅方向の長さ360mmにカットした表面層のみのシートをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に4カ所の合計12ヶ所について、印加電圧100V、10秒後に表面抵抗率を測定し、その平均値を算出した。結果を下表1に示す。表面抵抗率が1×1010以上1×1013未満であれば残存トナーの離型性に優れ、静電クリーニング装置によって残存トナーを除去するクリーニング手段を備えた画像形成装置に使用される中間転写ベルトの表面層として良好な静電クリーニング性能を有している。
[体積抵抗率の測定方法]
体積抵抗率(Ω・cm)は、三菱化学(株)製の抵抗測定器「ハイレスタIP・HRブロ−ブ」を用いて測定した。測定条件として印加電圧は100Vとし、サンプルに電圧を加えてから10秒後の抵抗率の値を読み取った。幅方向に長さ360mmにカットしたベルトの幅方向に等ピッチで3箇所、縦(周)方向に8箇所の合計24箇所についてそれぞれ測定を行い、得られた値の平均値を算出し体積抵抗率とした。
試験例1.表面層(単層)の表面抵抗率の測定
下表1に示される導電剤を含有する表面層(単層)を調製し、表面抵抗率を測定した。調製方法及び表面抵抗率の測定方法は以下の通りである。
[表面層の調製方法]
製造例1
ビニリデンフロライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるVdF−HFP共重合樹脂(カイナー#2801、アルケマ製:HFP11モル%)100gを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)900gに溶解させ、固形分濃度10重量%の溶液Aを調製した。導電剤として粉体抵抗率が2.5Ω・mのカーボンブラック(#5450:三菱化学(株)製)を添加し、カーボンブラックが10重量%分散されたDMAc溶液を溶液Bとした。
溶液A100gに対して溶液B15g添加し、ペイントシェーカーで混合し、フッ素樹脂濃度8.7重量%、該フッ素樹脂100重量部に対してカーボンブラック15重量部となる溶液を得た。この溶液をDMAc:酢酸ブチル=1:2の混合溶媒で希釈し、フッ素樹脂7.2重量%、該フッ素樹脂100重量部に対してカーボンブラック15重量部の表面層形成用組成物を調製した。この溶液112gを回転ドラムを用いて下記条件で製膜した。
回転ドラム:内径301mm、幅550mm、内面十点平均粗さ(Rz)=0.5μmの金属ドラムを2本の回転ローラー上に載置し、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した。この時の回転速度は重力加速度の5.0倍であった。
回転ドラムを回転した状態でドラム内面に表面層形成用組成物(112g)を均一に塗布し、加熱を開始した。加熱速度2℃/分で130℃まで昇温して、その温度で20分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面に表面層を形成した後ドラムを常温まで冷却した。得られた表面層の厚みは10.2μmであった。
製造例2
添加する導電剤として導電性酸化亜鉛(ガリウムドープ酸化亜鉛 Pazet GK−40:ハクスイテック(株)製)を用い、当該導電剤をフッ素樹脂100重量部に対し20重量部添加した以外は、製造例1と同様に表面層を作製した。
製造例3
添加する導電剤として導電性酸化亜鉛(ガリウムドープ酸化亜鉛 GZO:CIKナノテック(株)製)を用い、当該導電剤をフッ素樹脂100重量部に対し30重量部添加した以外は、製造例1と同様に表面層を作製した。
製造例4
添加する導電剤として導電性酸化亜鉛(アルミニウムドープ酸化亜鉛Pazet CK:ハクスイテック(株)製)を用い、当該導電剤をフッ素樹脂100重量部に対して30重量部添加した以外は、実施例1と同様に表面層を作製した。
比較製造例1
添加する導電剤として粉体抵抗率が1.5Ω・mのカーボンブラック(SB4:デグサジャパン(株)製)を用い、当該導電剤をフッ素樹脂100重量部に対して12重量部添加した以外は、製造例1と同様に表面層を作製した。
比較製造例2
添加する導電剤として酸化インジウム錫(ITR:CIKナノテック(株)製)を用い、当該導電剤をフッ素樹脂100重量部に対して20重量部添加した以外は、製造例1と同様に表面層を製膜した。
比較製造例3
添加する導電剤として導電性酸化錫(リンドープ酸化錫 SNP:CIKナノテック(株)製)を用い、当該導電剤をフッ素樹脂100重量部に対して60重量部添加した以外は、製造例1と同様に表面層を作製した。
比較製造例4
添加する導電剤として導電性酸化亜鉛(アルミニウムドープ酸化亜鉛 AZO:CIKナノテック(株)製)を用い、当該導電剤をフッ素樹脂100重量部に対して60重量部添加した以外は、製造例1と同様に表面層を作製した。
表1に示されるように、粉体抵抗率が2.5〜20000Ω・mの導電剤を使用した製造例1〜4の表面層は、表面抵抗率が1.9×1010〜4.3×1010の範囲となり、静電クリーニング性能に優れた表面層であることが示された。一方、粉体抵抗率が2.5Ω・m未満の導電剤や40000Ω・mを超える導電剤を使用した場合(比較製造例1〜4)の表面層では、いずれも表面抵抗率が1×1013以上となり、十分な静電クリーニング性能が得られないものであった。
試験例2.導電剤の添加量と表面抵抗率の関係についての評価
導電剤の添加量と表面抵抗率の関係を評価するため、表面層に対して添加する導電剤の添加部数を変えて表面抵抗率を測定した。フッ素樹脂100重量部に対して、カーボンブラック(#5450、三菱化学(株)製;製造例1で使用したものと同じ)を0〜17重量部;導電性酸化亜鉛(ガリウムドープ)(GZO、CIKナノテック(株)製:製造例3で使用したものと同じ)を15、20、25〜60重量部;酸化インジウム錫(ITR、CIKナノテック(株)製:比較製造例2で使用したものと同じ)を15〜25重量部;導電性酸化錫(リンドープ)(SNP、CIKナノテック(株)製:比較製造例3で使用したものと同じ)を30又は60重量部添加して、試験例1と同様の方法により表面層の単層を調製した。得られた各表面層の表面抵抗率を、試験例1に記載される方法に従って測定した。結果を図1に示す。
図1に示されるように、粉体抵抗率が低いITOスラリーを導電剤として用いた場合は、一定の添加量を超えると表面抵抗率が大きく低下してしまい、表面抵抗率の制御が困難であることが示された。また、SnOスラリーでは粉体抵抗率が高いため添加量を多くしても抵抗率は低下しなかった。従って、これらの導電剤では、中間転写ベルトの表面抵抗率を適切な範囲で制御するのが困難であった。
一方、粉体抵抗率が2.5〜20000Ω・mの範囲にあるカーボンブラックや酸化亜鉛を導電剤として使用した場合には、表面抵抗率を1×1010〜1×1012Ω/□の範囲内に調整することが可能であった。また、カーボンブラックを使用した場合にはフッ素樹脂100重量部に対して14〜16重量部、酸化亜鉛を使用した場合には30重量部以上の添加量で表面抵抗率を前記範囲内とすることができた。
試験例3.中間転写ベルトのクリーニング性能の評価
導電剤を含有する表面層を有する中間転写ベルト(3層構造)に静電クリーニングを行い、クリーニング性能を評価した。中間転写ベルトの調製方法、静電クリーニング及び評価の方法については以下の通りである。なお、下記実施例1〜4の積層体において、表面層として前記試験例1で調製した製造例1〜4の組成の表面層をそれぞれ使用した。
実施例1
以下の方法に従って、3層構成の中間転写ベルトを調製した。
(1)基材層の製膜
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを除々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は19,000、粘度は43ポイズ、固形分濃度は18.1重量%であった。
次に、このポリアミック酸溶液450gに、酸性カーボンブラック(pH3.0)21gとN−メチル−2−ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてカーボンブラック(CB)の均一分散を行って、基材層形成用組成物を得た。基材層形成用組成物中の固形分濃度は18.5重量%、該固形分中のカーボンブラック濃度は20.4重量%であった。基材層形成用組成物273gを回転ドラム内に注入し、次の条件で製膜した。
回転ドラム:内径301.5mm、幅540mmの内面鏡面仕上げの金属ドラムが2本の回転ローラー上を載置し、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した。
加熱温度:該ドラムの外側面に遠赤外線ヒータを配置し、該ドラムの内面温度が120℃に制御されるようにした。
まず、回転ドラムを回転した状態で273gの基材層形成用組成物をドラム内面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は1℃/分で120℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱した。
回転、加熱が終了した後、冷却せずそのまま回転ドラムを離脱して熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を開始した。この加熱も徐々に昇温しつつ320℃に達した。そして、この温度で30分間加熱した後常温に冷却して、該ドラム内面に形成された基材層を剥離し取り出した。得られた基材層の厚さ79.5μm、外周長944.2mm、表面抵抗率1×1011〜4×1011Ω/□、体積抵抗率1×109〜3×109Ω・cmであった。
(2)表面層の製膜
前記製造例1に記載される方法に従って、溶液A及び溶液Bを混合し、フッ素樹脂濃度8.7重量%、該フッ素樹脂100重量部に対してカーボンブラック15重量部となる溶液を得た。この溶液をDMAc:酢酸ブチル=1:2の混合溶媒で希釈し、フッ素樹脂2.2重量%、該フッ素樹脂100重量部に対してカーボンブラック15重量部の溶液を調製し、表面層形成用組成物を得た。この溶液112gを回転ドラムを用いて下記条件で製膜した。
回転ドラム:内径301mm、幅540mm、内面十点平均粗さ(Rz)=0.5μmの金属ドラムを2本の回転ローラー上に載置し、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した。この時の回転速度は重力加速度の5.0倍であった。
回転ドラムを回転した状態でドラム内面に表面層形成用組成物(112g)を均一に塗布し、加熱を開始した。加熱速度2℃/分で130℃まで昇温して、その温度で20分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面に表面層を形成した後ドラムを常温まで冷却した。得られた表面層の厚みは3.0μmであった。
(3)ゴム弾性層の製膜
キシレン219.58gに真比重1.1g/cm3のブロック型ウレタン用プレポリマー(ウレハイパーRUP1627、DIC(株)製)169.6gを溶解させた。この溶液に脂肪族ジアミン系の硬化剤CLH−5を13.28g(DIC(株)製)添加し撹拌を行い、弾性層形成用組成物を得た。
このようにして得られた溶液状の弾性層形成用組成物のうち固形分濃度は45.4重量%であった。この弾性層形成用組成物を、先に製膜した表面層内面に回転した状態で均一に塗布し加熱を開始した。加熱は1℃/分で150℃まで昇温して、その温度で30分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面にゴム弾性層を形成し、表面層とゴム弾性層が張り合わされた2層膜を得た。この加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の5.0倍の遠心加速度であった。
また、弾性層形成用組成物を製膜したゴム弾性層単膜の厚みが10mmになるよう重ね合わせ、タイプA硬度(JIS K6253)を測定したところ40°であった。
(4)ゴム弾性層内面と基材層外面の張り合わせ
上記(3)で得られた表面層とゴム弾性層が張り合わされた2層膜においてゴム弾性層の内面にプライマーDY39−067(東レダウコーニング製)を塗布、風乾した後に、ドライラミ接着剤を薄く外面に塗布した基材層を挿入し重ね合わせた。基材層内面から圧着し、加熱(80〜100℃)を行い、張り合わせを完了させた。張り合わせた多層ベルトを金型から剥離して両端部をカットし幅360mmの中間転写ベルト得た。
得られた中間転写ベルトの厚さは352μm、外周長は945.0mmであり、表面抵抗率2.4×1011Ω/□、体積抵抗率2.1×1011Ω・cmを有していた。
実施例2
製造例2と同じ組成の表面層を用い、実施例1と同様に中間転写ベルトを調製した。
実施例3
製造例3と同じ組成の表面層を用い、実施例1と同様に中間転写ベルトを調製した。
実施例4
製造例4と同じ組成の表面層を用い、実施例1と同様に中間転写ベルトを調製した。
比較例1
比較製造例1と同じ組成の表面層を用い、実施例1と同様に中間転写ベルトを調製した。
比較例2
比較製造例2と同じ組成の表面層を用い、実施例1と同様に中間転写ベルトを調製した。
比較例3
比較製造例3と同じ組成の表面層を用い、実施例1と同様に中間転写ベルトを調製した。
比較例4
比較製造例4と同じ組成の表面層を用い、実施例1と同様に中間転写ベルトを調製した。
比較例5
表面層に導電剤を添加せずに実施例1と同様にベルトを作製した。
[静電クリーニング]
実施例1〜4及び比較例1〜5のベルトの各表面層について、静電クリーニングシステム搭載の画像形成用装置を使用して静電クリーニング特性を評価した。評価用ベルトを装置にセットし、シアンのベタ画像を普通紙に10000枚連続印刷した後、ベルト表面に残存したトナーを下記評価基準に基づいて目視により確認した。結果を下表2に示す。
○:ほとんどトナーが確認できないレベル。
×:ベルト表面全体にトナーを確認。
表2に示されるように、粉体抵抗率が2.5〜20000Ω・mの導電剤を含む中間転写ベルトでは、静電クリーニング後はほとんどトナーが付着しておらず、実用上問題のない静電クリーニング性を有していることが示された(実施例1〜4)。一方、粉体抵抗率が2.5Ω・m未満の導電剤や40000Ω・mを超える導電剤を含む表面層を備えた中間転写ベルトでは、静電クリーニングの後もベルト表面全体にトナーが付着しており、十分な静電クリーニング性能が得られないことが示された。

Claims (4)

  1. 下記(a)〜(c)の少なくとも3層を有し、静電クリーニング装置を備えた画像形成装置において使用される画像形成装置用中間転写ベルト:
    (a)樹脂製の基材層
    (b)ゴム弾性樹脂を含む弾性層、ならびに
    (c)フッ素樹脂と、粉体抵抗率が2.5〜0000Ω・mの導電剤とを含む表面層。
  2. 前記導電剤の粉体抵抗率が2.5〜15000Ω・mである、請求項1に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
  3. 前記導電剤が、カーボンブラック又は導電性酸化亜鉛である、請求項1又は2に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
  4. 表面層において、フッ素樹脂100重量部に対して前記導電剤を10〜60重量部含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
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