JP5916433B2 - 画像形成装置用ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられるベルト(特に、中間転写ベルト)に関するものである。
画像形成装置によって得られる画像の高画質化を目的として、ゴム弾性樹脂等によって形成されるゴム弾性層を有する、2層又は3層構成の中間転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このようなゴム弾性層を有する中間転写ベルトは、柔軟性に優れることから、中間転写ベルトと接する感光体等との転写領域が安定的に形成できると共に、感光体等との間でトナーに加えられる応力が軽減される。従って、ゴム弾性層を有する中間転写ベルトを採用することによって、画像の中抜け防止、細線印字の鮮明度向上等を達成できる。
また、こういった高画質対応の中間転写ベルトは、ベルトの厚み方向にゴム弾性を付与する一方、転写ベルトに必要なトナー離型性も、重要な要素として要求される。すなわち、中間転写ベルト表面から紙等の媒体へトナーを移し替えるうえで、トナーに対する離型性が必要となる。従って、トナーに対して粘着性をもつゴム弾性層が、中間転写ベルトの表面に露出することは好ましくない。そのため、通常は、ゴム弾性層上に、摩擦係数が低く、トナー離型性に優れた樹脂製の表面層を設ける(例えば、図1を参照)。このような表面層は、高画質の画像を得るためにできるだけ薄くすることが有効であることが知られており、表面層が薄い中間転写ベルトが種々検討されている。
しかしながら、画像形成装置用の中間転写ベルトは、紙やクリーニングブレード、ロール等のベルト表面に接触する摺動部材等から外力を受けるため、表面層が薄膜である場合、摺擦による応力集中に耐えられず、表面層にクラックやピンホールが空いてしまい、画像ノイズを引き起こしてしまうという問題があった。
このように、表面層が薄膜である中間転写ベルトにおいて、高品質の画質を維持したまま、外部摩擦などに対する耐久性が優れるベルトとすることは非常に困難であった。
特開平11−024429号公報
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、高品質の画像を維持したまま、クリーニングブレード、紙等の外部摩擦等に対する優れた耐久特性を有する画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)を提供することを主な目的とする。
上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明者は、樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、該表面層(c)中に、平均粒子径30〜400nmのフィラーを、フィラー質量濃度1.0〜6.3%で含有する画像形成装置用ベルトが、上記の課題を解決できることを見出した。かかる知見に基づきさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の画像形成装置用ベルトを提供する。
項1.樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、該表面層(c)中に、平均粒子径30〜400nmのフィラーを、フィラー質量濃度1.0〜6.3%で含有する画像形成装置用ベルト。
項2.前記表面層(c)の厚みが2〜5μmである、項1に記載の画像形成装置用ベルト。
項3.前記表面層(c)がフッ素系樹脂を含む、項1又は2に記載の画像形成装置用ベルト。
項4.前記ゴム弾性層(b)がフィラーを含む、項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
本発明の画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)は、高品質の画像を維持したまま、クリーニングブレード、紙等の外部摩擦等に対し優れた耐久特性を有している。
中間転写ベルトの断面模式図である。 本発明において、製膜に用いた装置の模式図である。 アスペクト比測定の際の長径と短径を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.画像形成装置用ベルト
本発明の画像形成装置用ベルトは、樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、該表面層(c)中に、平均粒子径30〜400nmのフィラーを、フィラー質量濃度1.0〜6.3%で含有することを特徴とする。
以下、各層毎に説明する。
(a)基材層
本発明の画像形成装置用ベルトにおける基材層は、駆動時にかかる応力でベルトの変形を回避するために、機械物性に優れた樹脂で構成される。基材層は、マトリックスの樹脂に導電剤が分散された層であり、樹脂及び導電剤を含む基材層形成用組成物によって形成される。
前記樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、これらの混合物等が例示される。
前記ポリイミドは、通常、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)等の溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とし、さらに、後述する導電剤をポリアミック酸溶液中に分散させて基材層形成用組成物とすることができる。
この際に用いる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン系有機極性溶媒を挙げることができ、これら1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でもNMPが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、アゾベンゼン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の二無水物が挙げられる。
ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノビフェニル、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられる。
前記ジイソシアネートとしては、上記したジアミン成分におけるアミノ基がイソシアネート基に置換した化合物等が挙げられる。
また、ポリアミドイミドは、トリメリット酸とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。この場合、ジアミン又はジイソシアネートは、上記のポリイミドの原料と同じものを用いることができる。また、縮重合の際に用いられる溶媒としては、ポリイミドの場合と同様のものを挙げることができる。
基材層中に分散される導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素系物質;アルミニウム、銅合金等の金属又は合金;更には酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられ、これらの微粉末を1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。基材層に配合される導電剤としては、導電性炭素系物質が好ましく、カーボンブラックがさらに好ましい。
導電剤の含有量は、通常、基材層中5〜30重量%程度(前記基材層形成用組成物の固形分のうち5〜30重量%程度)であればよい。これにより基材層に、画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)に適した導電性が付与される。
前記基材層形成用組成物の固形分濃度は、10〜40重量%であることが好ましい。
前記基材層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、カーボンブラック等の導電剤が均一に分散された溶液組成物とすることができる点から、材料配合後ボールミル等を用いて混合することが好ましい。
基材層の厚みは、駆動時にベルトにかかる応力と柔軟性を考慮して、通常、30〜120μmであり、50〜100μmが好ましい。
(b)ゴム弾性層
本発明の画像形成装置用ベルトにおけるゴム弾性層は、主に、紙の凹凸への追従性向上と転写時のトナーへの応力集中によるライン画像中抜けを回避する目的で設けられる。ゴム弾性層は、ゴム又はエラストマー(以下、ゴム材料ということがある)を含む弾性層形成用組成物によって形成される。ゴム弾性層は、単層又は2層以上を積層したものであってもよい。
ゴム弾性層を形成するゴム材料としては、具体的には、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム等が例示される。これらは1種単独で用いることも、又は2種以上を併用することもできる。これらの中でも好ましくは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
シリコーンゴムとしては、例えば、付加型液状シリコーンゴムが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製の、KE−106、KE1300等が例示される。
フッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)等が挙げられ、具体的には、ダイキン工業(株)製のフッ素ゴムコート材GLS−213F、GLS−223F等、太平化成工業(株)製のフッ素ゴムコート材FFX−401161等が例示される。
ブチルゴムとしては、イソブチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
アクリルゴムは、アクリル酸エステルの重合、又はそれを主体とする共重合により得られるゴム状弾性体である。
ウレタンゴムは、ポリオールとジイソシアネートの重付加反応により得ることができる。原料であるポリオールとジイソシアネートの混合比は、ポリオールの活性水素1当量に対しジイソシアネートのNCO基が1〜1.2当量程度となるように混合すればよい。また、ポリオールとジイソシアネートの重合を進めたプレポリマーを用いることもでき、この場合、さらに硬化剤としてジイソシアネート又はポリオール、ジアミンをプレポリマーに添加しても良い。またポットライフを長くするためジイソシアネートプレポリマーのNCO末端をブロック剤でブロックしたブロック型のものを用いても良い。ウレタンゴムとしては、例えば、主鎖がエステル結合のポリエステル系ウレタンゴム(AU)、主鎖がエーテル結合のポリエーテル系ウレタンゴム(EU)などが挙げられ、具体的には、DIC(株)製のウレハイパーRUP1627(ブロック型ポリウレタン用プレポリマー)等を挙げることができる。
ゴム弾性層に用いるゴム材料のタイプA硬度(JIS K6253)は、60°以下であることが好ましく、30〜60°がより好ましい。ここで、タイプA硬度とはゴムの柔らかさを示す値である。タイプA硬度が60°を超える場合は、弾性層が硬すぎて凹凸のある紙を用いた場合に追従性が劣り、1次転写時にトナーが濃く乗っているところに応力が集中して、画像の中抜け現象を起こしやすくなる。一方、タイプA硬度が30°未満の場合は、柔らかすぎてベルト駆動時に発生する応力が表面層へ集中しやすくなり、十分な耐久性が得られない傾向がある。
また、本発明の画像形成装置用ベルトにおけるゴム弾性層は、必要に応じてフィラーを含有することが好ましい。
当該ゴム弾性層に含有するフィラーとしては、体積平均粒子径(メジアン径 D50)0.4〜8μm程度、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは0.6〜4μmの、粒子状又は球状のフィラーが挙げられる。
さらに、平均アスペクト比(長径/短径)が、5以下のものが好ましく、3以下のものがより好ましい。本発明において「粒子状」とは、平均アスペクト比が1.2より大きく3.0以下のものをさし、「球状」とは、平均アスペクト比が1〜1.2のものをさす。
ここで、本発明において「平均アスペクト比」は、以下のように測定することができる。
電子顕微鏡((株)日立製作所製、SEM、S−4800)を用いて1,000倍〜10,000倍の倍率でフィラーを撮影し、得られた顕微鏡写真中の粒子から無作為に1つの粒子を選び、その粒子の長径と短径を、定規を用いて測定する。測定した長径と短径の比(長径/短径)の値をアスペクト比として算出する。同様の操作を他の無作為に選択した19個の粒子についても行い、合計20個のアスペクト比の平均値を平均アスペクト比とする。
ここで、短径とは、上記顕微鏡写真中のフィラー粒子について、その粒子の外側に接する二つの平行線の組合せを、フィラー粒子を挾むように選択し、これらの組合せのうち最短間隔になる二つの平行線(図3中の点線)の間の距離である。一方、長径とは、上記短径を決める平行線に直角方向となる二つの平行線であって、フィラー粒子の外側に接する二つの平行線の組合せのうち、最長間隔になる二つの平行線(図3中の破線)の距離である。これらの四つの線で形成される長方形は、フィラー粒子がちょうどその中に納まる大きさとなる。
当該フィラーの添加量は、ゴム弾性層に対する体積分率で0〜4.0%であり、0.4〜3.5%がさらに好ましい。
本発明の中間転写ベルトにおいては、ゴム弾性層中にフィラーを含む場合、ゴム弾性層中の表面層側に偏在していることが好ましい。
フィラーを偏在させる方法としては、特に限定はされないが、後述の遠心成型などにより強制的に表面層側に偏在させて製膜する方法等を挙げることができる。
本発明のゴム弾性層に配合されるフィラーとしては、具体的には、酸化ジルコニウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、珪酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、アルミナ、酸化チタン、タルク、(真)球状シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、PTFE、ガラスビーズなどが挙げられる。これらの中でも、粒子状の酸化ジルコニウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、球状のシリカ、アルミナ、ガラスビーズが好ましい。また、フィラーとゴム弾性層の組み合わせに応じてカップリング剤などでフィラーを適宜処理しても良い。
また、前記弾性層形成用組成物には、必要に応じて硬化剤を添加することができる。例えば、シリコーンゴムの場合、硬化剤としてハイドロジェンオルガノポリシロキサン等が挙げられ、ウレタンゴムの場合、硬化剤としてジイソシアネート又はポリオール、ジアミンを用いることができる。これらの硬化剤は、弾性層形成用組成物中に配合して用いればよい。
硬化剤を添加する場合、その添加量はゴム主剤と硬化剤の反応性官能基数を1:1とするため、同一当量を混合すればよいが、ジイソシアネートなど反応性の高い物質の場合、環境中の水分等と反応して不活性になることなどを考慮し、1〜1.2倍当量とすることが好ましい。
前記弾性層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、材料配合後ボールミル等を用いて混合することが好ましい。
ゴム弾性層の厚みは、200〜450μmであり、200〜400μmであることが好ましく、220〜320μmであることがより好ましい。当該ゴム弾性層の厚みは、多層ベルトの総厚みから、基材層の厚みおよび表面層の厚みを差し引くことにより求めることができる。なお、当該多層ベルトの総厚み、基材層の厚みおよび表面層の厚みの測定方法については、実施例に記載したとおりである。ゴム弾性層の厚みが前記範囲内にあることで、感光体と転写ベルトとの接触圧を低く保つことができ、感光体上のトナーが凝集し、ライン状画像中央が転写しない「ライン画像中抜け」現象を防ぐことができると同時に、転写ベルトの膜厚が厚すぎる場合に発生しやすい、色ずれを防止できるため好ましい。
(c)表面層
本発明の画像形成装置用ベルトにおける表面層は、直接トナーを乗せ、トナーを紙へ転写、離型するための層であり、表面精度に優れていることが求められる。表面層は、樹脂又はゴムが、有機溶媒又は水中に溶解又は分散された、表面層形成用組成物によって形成される。
表面層に用いる樹脂又はゴムとしては、特に限定されないが、フッ素系樹脂、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリビニリデンフロライド、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)などが挙げられる。これらは1種単独で用いることも、又は2種以上を併用することもできる。これらの中でも、摩擦係数、耐磨耗性、電気特性の観点から、特に、ポリビニリデンフロライド、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体が好ましい。
表面層に用いるフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、四フッ化エチレン-プロピレンゴム(FEPM)、四フッ化エチレン-パーフルオロメチルビニルエーテルゴム(FFKM)などのフッ素ゴム材料が挙げられる。これらは1種単独で用いることも、又は2種以上を併用することもできる。これらの中でも、摩擦係数、耐磨耗性、電気特性のバランスの観点から、四フッ化エチレン-プロピレンゴム(FEPM)が特に好ましい。
表面層に用いるウレタンゴムとしては、主鎖がエステル結合のポリエステル系ウレタンゴム(AU)、主鎖がエーテル結合のポリエーテル系ウレタンゴム(EU)などが挙げられる。
本発明の画像形成装置用ベルトの表面層は、平均粒子径30〜400nmのフィラーを、フィラー質量濃度1.0〜6.3%で含有する。当該フィラーの平均粒子径は、30〜400nmであり、好ましくは30〜350nm、さらに好ましくは30〜300nmである。上記範囲のナノサイズのフィラーを含有することにより、ベルト表面上に微細な凹凸をつくり、クリーニングブレード等の複写機内部にある摺動部材と、ベルト表面との接触面積を低下させることができる。このように接触面積を低下させることで、ベルト表面に加わる摺動部材からの応力を緩和させることができる。
フィラーの平均粒子径が30nmより小さいと、ベルト表面の摩擦係数低下が不十分な傾向にある。一方、フィラーの平均粒子径が400nmより大きいと、表面層の中で凝集し、フィラーの分散ムラが生じる恐れがある。当該平均粒子径は、実施例に記載の方法で測定された値を示す。
また、表面層中のフィラーの質量濃度は、1.0〜6.3%であり、好ましくは1.2〜6.3%、さらに好ましくは1.4〜6.2%である。フィラーの質量濃度が上記範囲内にあることで、ベルト表面の摩擦係数を低下させ、さらには、摩耗量を低減させることができる。
ここで、フィラーの質量濃度は、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)(加速電圧:20kV、照射時間:180秒)により、フィラーを構成する主要な元素の質量濃度を測定することにより行うものである。例えば、フィラーが酸化珪素である場合は珪素濃度を、フィラーが酸化亜鉛の場合は亜鉛濃度を測定する。
前記表層に含有するフィラーの種類としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化錫、酸化銅、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、ITO、酸化鉄、酸化マンガンなどが挙げられる。これらの中でも、酸化珪素、酸化亜鉛が好ましく、特に酸化珪素が好ましい。
当該フィラーは1種を用いても、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、平均粒子径の異なるフィラーを2種以上組み合わせてもよい。
表面層の表面粗さ(Rz)は、0.25〜1.5μmが好ましく、0.4〜1.3μmがより好ましく、0.5〜1.2μmがさらに好ましい。表面粗さが0.25μm未満の場合は、ロール等の摺動する部材と張り付きやすくなるため駆動時のトルクオーバーの原因となってしまい、1.5μmを超える場合は、トナーの固着(フィルミング)の原因やトナーすり抜けによるクリーニング不良となるため好ましくない。なお、本発明において、表面層の表面粗さは、基材層、弾性層、表面層からなる本発明の画像形成装置用ベルトの表面層において測定した表面粗さを示すものである。
本発明において表面層の厚みは、2〜5μmであり、2〜4.5μmが好ましく、2〜4μmがより好ましい。表面層の厚みが前記範囲を超えると弾性層のゴム弾性を損なうことになるため好ましくない。また、表面層の厚みが前記範囲を下回ると、穴があきやすい等、耐久性に問題が生じる。
画像形成装置用ベルトの諸物性値
本発明の画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)は、以下の諸物性値を有する。
本発明の画像形成装置用ベルトの表面の静摩擦係数は、0.1〜0.3程度であることが好ましく、0.1〜0.25がより好ましく、0.1〜0.2がさらに好ましい。また、動摩擦係数は、0.1〜0.3程度であることが好ましく、0.1〜0.25がより好ましく、0.1〜0.2がさらに好ましい。静摩擦係数が0.1〜0.3、動摩擦係数が0.1〜0.3であることで、ベルト表面の摩耗量を低減させることができる。
本発明の画像形成装置用ベルトの表面抵抗率は1×1010〜1×1015Ω/□程度、体積抵抗率は1×10〜1×1014Ω・cm程度であることが好ましく、弾性層及び/又は基材層に添加する導電剤の添加量に応じてこの範囲で可変である。
本発明の画像形成装置用ベルトの平均総厚みは、通常、300〜550μm程度、好ましくは300〜450μm程度である。各層の厚さは、駆動時にベルトにかかる応力と柔軟性を考慮して適宜設定され得るが、各層の厚みの割合は、通常、基材層を1とした場合、弾性層2〜5程度、好ましくは2〜4程度;表面層0.005〜0.05程度である。後述するような3層化工程を採用することによって、ベルトの厚みのばらつきは小さくなり、均質なベルトが製造できる。
2.画像形成装置用ベルトの製造方法
以上のような構成を有する画像形成装置用ベルト(特に、中間転写ベルト)の製造方法については、特に限定されないが、例えば、遠心成型やディップコーティング法を挙げることができる。
遠心成型による製法としては、本発明の画像形成装置用ベルトは、以下の工程を含む製造方法によって得ることができる。
(1)基材層形成用組成物を、遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)フィラーを含む表面層形成用組成物を、円筒状金型を用いて遠心成型を行い、表面層を製膜する工程、
(3)上記(2)で得られた表面層の内面に、弾性層形成用組成物を、遠心成型によってゴム弾性層に製膜し、2層膜とする工程、及び
(4)上記(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜のゴム弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する工程。
あるいは、上記(1)及び(2)により表面層及び基材層をそれぞれ製膜した後、(3’)表面層の内面に基材層の外面を重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物を注入し、加熱処理することによっても製造することができる。
以下、各工程について説明する。なお、本発明の製造方法において使用する原料やその含有量等は、前述のとおりである。
工程(1)(基材層の形成)
基材層は次のようにして製膜することができる。
まず、基材層の典型材料であるポリイミドを用いる場合について説明する。
前述のように、ポリイミドの原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとをNMP等の溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とし、基材層に所望の半導電性を付与するために、カーボンブラック等の導電剤を上記ポリアミック酸溶液に添加し、カーボンブラックが分散されたポリアミック酸(基材層形成用組成物)を調製する。
得られた基材層形成用組成物を用い、回転ドラム(円筒状金型)等による遠心成型を行う。加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し100〜190℃程度、好ましくは110〜130℃程度に到達せしめる(第1加熱段階)。昇温速度は、例えば、1〜2℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、およそ半分以上の溶剤を揮発させて自己支持性のある管状ベルトを成形する。
また、第1加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度であることが好ましい。一般に、重力加速度(g)は9.8(m/s)である。
遠心加速度(G)は下記式(I)から導かれる。
G(m/s)=r・ω=r・(2・π・n) (I)
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60秒間の回転数がrpm)を示す。前記式(I)より、円筒状金型の回転条件を適宜設定することができる。
次に、第2段階加熱として、温度280〜400℃程度、好ましくは300〜380℃程度で処理してイミド化を完結させる。この場合も、第1段階加熱温度から一挙にこの温度に到達するのではなく、徐々に昇温して、その温度に達するようにすることが望ましい。なお、第2段階加熱は、管状ベルトを回転ドラムの内面に付着したまま行っても良いし、第1加熱段階終了後に、回転ドラムから管状ベルトを剥離し、取り出して別途イミド化のための加熱手段に供して、280〜400℃になるように加熱してもよい。このイミド化の所用時間は、通常約20分〜3時間程度である。
基材層の材料としてポリアミドイミドを用いる場合も同様にして、ジアミン或いはジアミンから誘導されたジイソシアネートと、トリメリット酸とを溶媒中で反応させて直接ポリアミドイミドとし、これを遠心成型して、継目のない(シームレス)ポリアミドイミドの基材層を製膜できる。
また、基材層の材料としてポリカーボネート、PVdF、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等を用いる場合は、これらの樹脂を溶融して押出成型することによりシームレスの基材層を製膜できる。
このようにして、継目のない基材層を製膜できる。
工程(2)(表面層の形成)
表面層は、例えば、次のようにして製膜することができる。
前記表面層形成用組成物を、表面粗さ(Rz)0.25〜1.5μmを有する円筒状金型を用いて遠心成型を行う。この場合、得られる表面層の厚みが0.5〜6μm程度となるように調製する。
表面層の遠心成型は、例えば、重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度に回転した回転ドラム(円筒状金型)内面に最終厚さを得るに相当する量の表面層形成用組成物を注入した後、徐々に回転速度をあげ重力加速度の2〜20倍の遠心加速度に回転を上げて遠心力で内面全体に均一に流延する。
回転ドラムは、その内面が所定の表面精度に研磨されており、この回転ドラムの表面状態が、本発明の画像形成装置用ベルトの表面層外面にほぼ転写される。従って、回転ドラムの内面の表面粗さを制御することにより、表面層の表面粗さを所望の範囲に調節することができる。回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)を、0.25〜1.5μmの範囲で設定すると、ほぼそれに対応した表面粗さ(Rz)0.25〜1.5μmを有する表面層を形成できる。但し、画像形成装置用ベルトの表面層の表面粗さは、ベルトの微妙なタワミやウネリを測定上拾ってしまうため、回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)に比してやや高めの値になる傾向がある。そのため、ベルト表面層の所望の表面粗さに対して、やや小さめの内面の平均表面粗さ(Rz)を有する回転ドラムを採用することもできる。なお、使用する金型内面の粗度は、内面仕上げ時に使用する研磨紙の番手等により任意に制御できる。
回転ドラムは回転ローラー上に載置し、該ローラーの回転により間接的に回転が行われる。また該ドラムの大きさは、所望する画像形成装置用ベルトの大きさに応じて適宜選択できる。
加熱は、該ドラムの周囲に、例えば遠赤外線ヒータ等の熱源が配置され外側からの間接加熱により行われる。加熱温度は樹脂の種類に応じて変化し得るが、通常、室温から樹脂の融点前後の温度、例えば、樹脂の融点Tmとした場合に、(Tm±40)℃程度、好ましくは(Tm−40)℃〜Tm℃程度まで徐々に昇温し、昇温後の温度で10〜60分程度加熱すればよい。これにより、ドラム内面に継目のない(シームレス)管状の表面層が製膜できる。
工程(3)(2層化)
上記工程(2)で得られた表面層の内面に、弾性層形成用組成物を遠心成型して、厚みが200〜450μmのゴム弾性層を製膜し、2層膜とする。
前述の弾性層形成用組成物を、表面層が形成された回転ドラム(円筒状金型)の表面層の内面上に均一に塗布して遠心成型を行い、その後、回転ドラムを重力加速度の2倍以上(好ましくは4〜20倍)の遠心加速度で回転させながら加熱処理を行う。回転ドラムの回転速度を重力加速度の2倍以上の遠心加速度とすることで、原料溶液に対し常に重力加速度以上の遠心力がかかるため、樹脂より比重の重いフィラーが表面層側に偏析しやすくなるため好ましい。
加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し90〜180℃程度、好ましくは90〜150℃程度に到達せしめる。昇温速度は、例えば、1〜3℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、ドラム内に表面層、その上に弾性層を有する2層膜を成形する。
ゴム弾性層を2層以上にする場合は、先に製膜したゴム弾性層内面に、更に弾性層形成用組成物を遠心成型し、同様に加熱硬化させ、必要に応じこれを繰り返す。
工程(4)(3層化)
上記工程(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜(表面層とゴム弾性層)のゴム弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する。
具体的には、回転ドラム内に製膜した2層膜のゴム弾性層内面に公知の接着用プライマー等を塗布、風乾した後、外面にドライラミ接着剤等を塗布した基材層を挿入し、重ね合わせる。重ね合わせた両層をベルト内面から圧着した後、円筒状金型内面を徐々に昇温し40〜120℃程度、好ましくは50〜90℃程度に到達せしめる。
昇温速度は、例えば、1〜10℃/分程度であればよい。上記の温度で2〜30分維持し、円筒状金型内に表面層、ゴム弾性層及び基材層を有する3層ベルトを成形する。
張り合わせた3層ベルトを円筒状金型から剥離し、両端部を所望の幅にカットして3層の画像形成装置用ベルトを製造する。
また、上記製造方法において、上記工程(3)及び(4)に代えて、表面層の内面に基材層の外面を重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物を注入し、加熱処理することによって、ゴム弾性層の製膜と3層化を同時に行うことによっても製造することができる(工程(3’))。
工程(3’)(ゴム弾性層の製膜と3層化)
上記工程(1)及び(2)に従って別々に製膜した表面層と基材層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層形成用組成物をインジェクションにて注入する。このとき、ゴム弾性層の均一化のため、基材層内面の片側端部からもう片側端部へしごきを行うことが好ましい。得られた積層体を加熱処理することにより、画像形成装置用ベルトを得ることができる。なお、両層の重ね合わせ後は、両層の間が密閉状態となるようにすることが好ましい。
例えば、ゴム材料としてシリコーンゴムを用いる場合、インジェクションにて得られた積層体を、110〜220℃程度に熱処理することにより、弾性層形成用組成物が加硫(架橋・硬化)するとともに、表面層と基材層が同時に強固に接着される。
また、ゴム材料がウレタンゴムの場合、製膜直前に両液を混合して使用することが好ましい。
上記3層化工程の具体例を挙げる。
ドラム内面に製膜された表面層の内面に、公知の接着用プライマー等を均一塗布して風乾する。製膜した基材層外面にもプライマーを塗布して、これを表面層内面に重ね合わせ、減圧状態でこの管状ベルト両端部に内側からOリングを押し当てて、重ね合わせた表面層及び基材層間を密閉状態とする。次に、この両層の隙間に、前述の弾性層形成用組成物をインジェクション法にて注入し、基材層内面側から金属ロールを用いて、弾性層形成用組成物を周方向に均一になるように流延する。
或いは、他の実施態様として以下のような方法も挙げられる。
ドラム内面に製膜された表面層の内面に、公知の接着用プライマーを均一塗布する。製膜した基材層外面にもプライマーを塗布した後、これを円柱状の芯体外面に被せる。この芯体を、内面に表面層が製膜されているドラム内面に挿入し、芯体とドラムを同心軸上に固定する。次に、ドラムの片側から、両層の隙間にペースト状の弾性層形成用組成物をインジェクション法にて注入する。なお、該ドラムは長手方向左右を一対の治具で挟まれて固定したものであり、一方の治具には弾性層形成用組成物の入口が設けられ、他方の治具にはその出口が設けられている。
3層化した後の加熱処理は、110〜220℃まで徐々に加熱して(例えば、昇温速度1〜3℃/分程度)、その温度で0.5〜4時間処理する。これにより、ベルトの架橋・硬化が完了する。加熱終了後、ドラムを冷却し、3層化された管状ベルトをドラム内面から剥離して、本発明の画像形成装置用ベルトを得ることができる。
なお、上記の接着用プライマーの使用は任意であるが、接着強度向上の点から使用するのが好ましい。接着用プライマーとしては、例えば、東レダウコーニング製プライマーDY39−067等が例示される。
以上のような方法により得られる本発明の画像形成装置用ベルトは、高品質の画像を維持したまま、耐久性にも優れることから、複写機(カラー複写機を含む)、プリンター、ファクシミリ等の電子写真方式を採用する画像形成装置の中間転写ベルトとして好適に使用され得る。
以下、実施例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下の諸物性値についての測定方法を示す。
<固形分濃度>
各層を形成する樹脂を精秤し、この時の重量をCgとする。電子天秤上で当該樹脂を溶剤に溶かすために、攪拌しながら溶剤を徐々に加え、最終的な溶液重量をDgとしたときの固形分濃度は、次式(II)となる。
固形分濃度=C/D×100(%) (II)
<表面層厚み>
表面層の厚み(μm)は大塚電子製 MCPD3000を用いて、ピークバレイ法、計算範囲550nm〜700nm、ノイズSH=0.01にて測定した。
幅方向の長さ360mmにカットしたベルトをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に4ヶ所の合計12ヶ所について、それぞれ測定し、その平均値で示した。
<基材層厚み>
基材層の厚み(μm)は、株式会社ケツト製 渦電流式膜厚計LH−200Jを用いて測定した。
幅方向の長さ400mmにカットしたベルトをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に8ヶ所の合計24ヶ所について、それぞれ測定し、その平均値で示した。
<総厚み>
多層ベルトの総厚みは、(株)ミツヨト製デジマチックインジケータの平面型測定子を用いて幅方向3点、周方向8点の合計24点測定し、その平均値として示した。
<静摩擦係数、動摩擦係数>
静摩擦係数(μs)及び動摩擦係数(μd)は、新東科学(株)製の表面性測定器TYPE:14FW を用いて測定を行った。サンプルを63.5mm×63.5mmにカットし、測定面をアルコールで拭いた。荷重200g、移動速度150mm/min、移動距離30mmの条件下で、サンプルをSUS板上で摩擦させることにより、μs、μdの値を求めた。なお、μs、μdの値は10回の平均値より求めた。1回の測定につき10回サンプルを往復させ、1つのサンプルにつきn=3で測定を実施した。
<表面抵抗率、体積抵抗率>
表面抵抗率(Ω/□)及び体積抵抗率(Ω・cm)は、三菱化学(株)製の抵抗測定器“ハイレスタIP・HRブロ−ブ”を用いて測定した。幅方向の長さ360mmにカットしたベルトをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に4ヶ所の合計12ヶ所について、印加電圧100V、10秒後に表面抵抗率及び体積抵抗率をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
<表面粗さ>
表面粗さ(μm)は、JIS B0601−1982に準拠して測定した。測定器は、東京精密(株)製のサーフコム575Aを用いた。測定条件はCUTOFF0.25,測定長2.5mm、T−SPEED 0.06mm/sで行った。同一ベルト内で異なる表面部位を5ヶ所測定し、その十点平均粗さ(Rz)の平均値を表面粗さとした。
<平均粒子径>
フィラーの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定を行った。測定器は日機装(株)製のマイクロトラック MT3000IIを用いた。平均粒子径は累積が50%の時の粒子径の値(メジアン径:d50)を用いた。
<フィラー質量濃度>
ベルト中央において、2cm角の範囲をサンプリングし、EDX(堀場製作所製エネルギー分散型X線分析装置 EMAX モデル7593H、加速電圧:20kV、照射時間:180秒)により、金蒸着厚み5nm、プロセスタイム5、倍率500倍の条件で測定した。なお、上記2cm角のサンプルについて3ヶ所測定を行い、その平均値をフィラー質量濃度とした。
<テーバー磨耗量>
テーバー磨耗量は、JIS K−7204に従って評価した。テーバー磨耗試験機の磨耗輪はCS−17、荷重250gにて1000回行った(サンプル数=各5)。
<フィラー分散ムラ>
回転ドラム内面に表層を製膜した後、目視で分散ムラの確認を行った。
○:表層外観に問題なし
△:表層の所々に、すじ、凝集した後を確認
×:表層全体に、すじ、凝集塊等の跡を確認
<ブレード鳴き>
5000枚毎通紙を実施し、ブレード鳴きや破損を観察した。試験は3万枚の通紙まで行った。
◎:3万枚の通紙までブレード鳴きなし
○:2〜3万枚未満の通紙でブレード鳴きなし
△:1〜2万枚未満の通紙でブレード鳴きなし
×:1万枚未満の通紙でブレード鳴き発生、ブレード破損
実施例1
(1)基材層の製膜
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを除々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は19,000、粘度は43ポイズ、固形分濃度は18.1重量%であった。
次に、このポリアミック酸溶液450gに、酸性カーボンブラック(pH3.0)21gとN−メチル−2−ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてカーボンブラック(CB)の均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は、固形分濃度18.5重量%、該固形分中のCB濃度は20.4重量%であった。
そして該溶液から273gを採取し、回転ドラム内に注入し、次の条件で成形した。
回転ドラム:内径301.5mm、幅540mmの内面鏡面仕上げの金属ドラムが2本の回転ローラー上に載置され、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した(例えば、図2参照)。
加熱温度:該ドラムの外側面に遠赤外線ヒータを配置し、該ドラムの内面温度が120℃に制御されるようにした。
まず、回転ドラムを回転した状態で273gの該溶液をドラム内面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は1℃/分で120℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱した。
回転、加熱が終了した後、冷却せずそのまま回転ドラムを離脱して熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を開始した。この加熱も徐々に昇温しつつ320℃に達した。そして、この温度で30分間加熱した後常温に冷却して、該ドラム内面に形成された半導電性管状ポリイミドベルトを剥離し取り出した。なお、該ベルトは厚さ79.5μm、外周長944.2mm、表面抵抗率1×1011〜4×1011Ω/□、体積抵抗率1×10〜3×10Ω・cmであった。
(2)表面層の製膜
ビニリデンフロライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるVdF−HFP共重合樹脂(カイナー#2801、アルケマ製:HFP11モル%)100gを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)900gに溶解させ、固形分濃度10重量%の溶液Aを調製した。
平均粒子径300nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)を溶液Bとした。前記溶液A100gに対して、当該溶液Bを2g添加し、ペイントシェーカーで混合して、フッ素系樹脂の固形分濃度10重量%、該固形分中の酸化珪素濃度2.9重量%、体積分率2.3%となる溶液を得た。これをDMAc:酢酸ブチル=1:2の混合溶媒で希釈し、フッ素系樹脂の固形分濃度2.5重量%、該固形分中の酸化珪素濃度2.9重量%(表面層の総重量に対する酸化珪素の配合割合に相当する)の溶液(以下、表面層形成用組成物ということもある)を調整した。この溶液112gを次の条件で製膜した。
回転ドラム:内径301.0mm、幅540mm、内面十点平均粗さ(Rz)=0.5μmの金属ドラムが2本の回転ローラー上に載置され、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した(例えば、図2参照)。
回転ドラムを回転した状態でドラム内面に均一に塗布し加熱を開始した。加熱は2℃/分で130℃まで昇温して、その温度で20分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面に表面層を形成した後ドラムを常温まで冷却した。
(3)ゴム弾性層の製膜
キシレン188.7gに真比重1.1g/cmのブロック型ウレタン用プレポリマー(ウレハイパーRUP1627、DIC(株)製)136.65gを溶解させた溶液に、フィラーとして、アスペクト比1.8の無定形粒子状の酸化ジルコニウム(SPZ酸化ジルコニウム、平均粒子径D50=3.3μm、第一稀元素化学工業(株)製)を加え、ボールミルにて均一攪拌を行った。更に、この分散液に脂肪族ジアミン系の硬化剤CLH−5を11.73g(DIC(株)製)添加し、撹拌を行った。
このようにして得られた溶液の固形分濃度は44重量%、該固形分中の酸化ジルコニウムは10重量%、体積分率で1.86%であった。
この分散液を、先に製膜した表面層内面に回転した状態で均一に塗布し加熱を開始した。加熱は1℃/分で150℃まで昇温して、その温度で30分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面にゴム弾性層を形成した。
この加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の5.0倍の遠心加速度であった。一般に、重力加速度(g)は9.8(m/s)である。
遠心加速度(G)は前述の下記式(I)から導かれる。
G(m/s)=r・ω=r・(2・π・n) (I)
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60秒間の回転数がrpm)を示す。前記式(I)より、円筒状金型の回転条件を適宜設定することができる。
上記、弾性層用ウレタン原料溶液に、フィラーを加えなかった以外は同様にして製膜したゴム弾性層単膜を10mm厚になるよう重ね合わせ、タイプA硬度を測定したところ40°であった。
(4)ゴム弾性層内面とポリイミド外面の張り合わせ
上記(3)で製膜したゴム弾性層内面にプライマーDY39−067(東レダウコーニング製)を塗布、風乾した後に、ドライラミ接着剤を薄く外面に塗布した(1)のポリイミドベルトを挿入し重ね合わせた。基材層内面から圧着し、加熱(80〜100℃)を行い、張り合わせを完了させた。張り合わせた多層ベルトを金型から剥離し両端部をカットし幅360mmの多層ベルトと電子顕微鏡観察用サンプル片を採取した。
該多層ベルトは、厚さ351μm、外周長945.0mm、静摩擦係数0.27、動摩擦係数0.29、表面抵抗率4.2×1011Ω/□、体積抵抗率1.9×1011Ω・cm、表面粗さ(Rz)は0.83μm、表面層のみの厚さは3μmであった。EDXによる珪素の質量濃度を測定したところ、1.43%であった。
実施例2
表面層製膜において、平均粒子径300nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)の替わりに、平均粒子径100nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.31、動摩擦係数0.31、EDXによる珪素の質量濃度は1.98%であった。
実施例3
表面層に配合する酸化珪素として、実施例2と同じものを用い、フッ素系樹脂固形分中の酸化珪素濃度が4.8重量%の表面層形成用組成物とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.31、動摩擦係数0.30、EDXによる珪素の質量濃度は2.05%であった。
実施例4
表面層に配合する酸化珪素として、実施例2と同じものを用い、フッ素系樹脂固形分中の酸化珪素濃度が6.5重量%の表面層形成用組成物とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは静摩擦係数0.28、動摩擦係数0.27、EDXによる珪素の質量濃度は2.60%であった。
実施例5
表面層製膜において、平均粒子径300nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)の替わりに、平均粒子径30nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは静摩擦係数0.27、動摩擦係数0.26、EDXによる珪素の質量濃度は3.22%であった。
実施例6
表面層に配合する酸化珪素として、実施例2と同じものを用い、フッ素系樹脂固形分中の酸化珪素濃度が9.1重量%の表面層形成用組成物とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.21、動摩擦係数0.18、EDXによる珪素の質量濃度は3.94%であった。
実施例7
表面層に配合する酸化珪素として、実施例1と同じものを用い、フッ素系樹脂固形分中の酸化珪素濃度が9.1重量%の表面層形成用組成物とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.22、動摩擦係数0.21、EDXによる珪素の質量濃度は4.30%であった。
実施例8
表面層に配合する酸化珪素として、実施例2と同じものを用い、フッ素系樹脂固形分中の酸化珪素濃度が10.7重量%の表面層形成用組成物とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは静摩擦係数0.26、動摩擦係数0.25、EDXによる珪素の質量濃度は6.23%であった。
実施例9
表面層製膜において、平均粒子径300nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)の替わりに、平均粒子径100nmの酸化亜鉛15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製))を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.25、動摩擦係数0.24、EDXによる亜鉛の質量濃度を測定したところ、5.70%であった。
比較例1
表面層にフィラーを配合しなかった以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは静摩擦係数0.38、動摩擦係数0.37、EDXによる珪素の質量濃度は0%であった。
比較例2
表面層製膜において、平均粒子径300nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)の替わりに、平均粒子径500nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.16、動摩擦係数0.16、EDXによる珪素の質量濃度を測定したところ、4.80%であった。
比較例3
表面層製膜において、平均粒子径300nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)の替わりに、平均粒子径650nmの酸化珪素15重量%が分散したDMAcの溶液(シーアイ化成(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.16、動摩擦係数0.15、EDXによる珪素の質量濃度は3.93%であった。
比較例4
表面層に配合する酸化珪素として、実施例2と同じものを用い、フッ素系樹脂固形分中の酸化珪素濃度が13.4重量%の表面層形成用組成物とした以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作製した。
得られた多層ベルトは、静摩擦係数0.23、動摩擦係数0.22、EDXによる珪素の質量濃度は6.46%であった。
実施例1〜9、比較例1〜4により得られた多層ベルトの物性を、表1に示した。
Figure 0005916433
実施例1〜9の結果から、表面層中に平均粒子径30〜400nmのフィラーを、フィラー質量濃度1.0〜6.3%で含有するベルトは、フィラーの分散ムラもなく、ベルト表面の摩擦係数を低減し、ブレード鳴きを抑制することがわかる。
一方、フィラーを含有しないベルトは、ベルト表面の摩擦係数を低減することができず、ブレード鳴きを抑制することができない(比較例1)。
また、フィラーの平均粒子径が500nmや650nmと大きい場合、フィラーが凝集し、分散ムラが生じてしまう(比較例2、3)。
さらに、フィラーの平均粒子径は30〜400nmの範囲にあっても、その質量濃度が6.3を超える場合には、表面層の硬度が上がり過ぎてしまい、摩擦係数を低減することはできても、摩耗量が増大してしまう(比較例4)。

Claims (7)

  1. 樹脂製の基材層(a)の外周面に、少なくとも1層からなるゴム弾性層(b)、及び表面層(c)を、この順に積層してなる画像形成装置用ベルトであって、
    該表面層(c)中に、酸化珪素及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種のフィラーであって、平均粒子径30〜400nmのフィラーを、フィラー質量濃度1.0〜6.3%で含有する、
    画像形成装置用ベルト。
  2. 前記表面層(c)の厚みが2〜5μmである、請求項1に記載の画像形成装置用ベルト。
  3. 前記表面層(c)がフッ素系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の画像形成装置用ベルト。
  4. 前記表面層(c)の表面粗さ(Rz)が0.25〜1.5μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
  5. 前記ゴム弾性層(b)がフィラーを含む、請求項1〜のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
  6. 前記ゴム弾性層(b)に含まれるフィラーの体積平均粒子径が0.4〜8μmである、請求項5に記載の画像形成装置用ベルト。
  7. 前記ゴム弾性層(b)に含まれるフィラーが、粒子状の酸化ジルコニウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、球状のシリカ、アルミナ及びガラスビーズから選ばれるフィラーである、請求項5又は6に記載の画像形成装置用ベルト。
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