JP2012172686A - 自動二輪車の車輪用回転速度検出装置 - Google Patents

自動二輪車の車輪用回転速度検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】エンコーダ15を装着してハブ6と共に回転する外輪9が、このハブ6に対し相対回転(クリープ)するのを防止し、回転速度検出に関する信頼性向上を図れる構造を実現する。
【解決手段】前記9の外周面に全周に亙って形成した係止凹溝18に、自由状態での断面形状の直径がこの係止凹溝18の深さよりも大きいOリング19を装着する。前記外輪9を前記ハブ6に内嵌固定した状態でこのOリング19を、前記係止凹溝18の底面とこのハブ6の内周面との間で弾性的に押圧する。このOリング19の内外両周面と、前記9の外周面及び前記ハブ6の内周面との間に作用する摩擦力により、この外輪9がこのハブ6に対し回転する事を防止する。これにより、このハブ6の回転速度と前記エンコーダ15の回転速度とを一致させて、前記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

この発明は、自動二輪車(原動機付自転車を含む)の車輪の回転速度を求める為の、自動二輪車の車輪用回転速度検出装置の改良に関する。具体的には、回転速度検出の為のエンコーダと車輪との回転を完全に同期させる事で、この車輪の回転速度検出の信頼性の向上を図れる構造の実現を意図したものである。
自動車用の走行状態を安定させる為の装置として、アンチロックブレーキシステム(ABS)が広く使用されている。この様なABSは、従来は四輪自動車を中心に普及していたが、近年、自動二輪車にも採用され始めている。周知の様に、ABSの制御には、車輪の回転速度を求める必要がある為、車輪を懸架装置に回転自在に支持する為の車輪支持用玉軸受ユニットに回転速度検出装置を組み込む事が、従来から広く実施されている。又、自動二輪車用のABSを制御する為、この自動二輪車の回転速度を検出する為のエンコーダ付玉軸受として従来から、例えば特許文献1〜5に記載されたものが知られている。
このうちの特許文献4〜5の記載に基づき、自動二輪車の車輪支持部の構造、並びに、エンコーダ付玉軸受の構造に就いて、図5〜7を参照しつつ説明する。先ず、図5は、スクータの如き、比較的小型の自動二輪車の前輪を回転自在に支持する部分の構造を示している。この構造では、懸架装置を構成する左右1対のホーク1、1の下端部に1対の支持板2、2を、互いに平行な状態で固定している。そして、これら両支持板2、2同士の間に、特許請求の範囲に記載した中心軸部材である、支持軸3の両端部を支持固定している。又、この支持軸3の中間部2個所位置に、それぞれが単列深溝型である、1対の玉軸受4、4を設置している。具体的には、これら両玉軸受4、4を構成する内輪を前記支持軸3に外嵌すると共に、内輪間座5a、5b、5cにより、これら両内輪の軸方向位置を規制している。又、前記支持軸3の周囲に、特許請求の範囲に記載した外径側部材である円筒状のハブ6を、この支持軸3と同心に配置している。そして、前記両玉軸受4、4を構成する外輪を、前記ハブ6の内周面両端寄り部分に内嵌固定している。更に、前記ハブ6の外周面にホイール7を支持固定している。
上述の様な、自動二輪車用車輪の回転支持部にABS制御用の回転速度検出装置を組み込むには、図6に示す様なエンコーダ付玉軸受8を使用する。このエンコーダ付玉軸受8は、外輪9と、内輪10と、複数個の玉11と、エンコーダ付シールリング12とを備える。この様なエンコーダ付玉軸受8を上述の図5に示した構造に組み付けるには、前記外輪9をこのハブ6に内嵌固定し、前記内輪10を前記支持軸3に外嵌固定する。そして、この支持軸3の周囲に前記ハブ6を回転自在に支持する。尚、前記図5に示した1対の玉軸受4、4のうちの一方の玉軸受のみを、前記エンコーダ付玉軸受8とする。他方の玉軸受は、エンコーダを備えない、一般的な玉軸受とする。
又、前記エンコーダ付玉軸受8と組み合わされて、前記回転速度検出装置を構成する回転検出センサ13は、図7に示す様に、前記支持軸3に支持する。即ち、この回転検出センサ13を環状のホルダ部材14により、前記支持軸3に支持する。そして、この回転検出センサ13の検出部を、前記エンコーダ付玉軸受8に組み込んだエンコーダ15の被検出面(軸方向外側面)に対向する部分に支持する。このエンコーダ15は、ゴム磁石、プラスチック磁石等の永久磁石製で、軸方向に着磁されており、着磁方向を、円周方向に関して、交互に、且つ、等間隔に変化させている。従って、被検出部である、前記エンコーダ15の軸方向外側面には、S極とN極とが、円周方向に関して、交互に、且つ、等間隔に配置されている。この様なエンコーダ15は、シールリング16を構成する芯金17の軸方向外側面に、この芯金17と同心に添着固定して、前記エンコーダ付シールリング12を構成している。又、前記ホルダ部材14に支持された、前記回転検出センサ13の検出部は、前記エンコーダ15の被検出面に、適切な検出隙間を介して、軸方向に対向している。
自動二輪車の走行時、車輪を構成するホイール7が回転すると、前記ハブ6に内嵌固定した前記外輪9と共に、前記エンコーダ付シールリング12が回転する。すると、前記エンコーダ15の被検出面に存在するS極とN極とが、前記回転検出センサ13の検出部の直前部分を交互に通過し、この回転検出センサ13の出力信号が変化する。そして、この出力信号が変化する周期又は周波数により、前記車輪の回転速度が求められる。
上述した様に、自動二輪車の車輪用回転速度検出装置の場合、四輪車用の回転速度検出装置とは異なり、エンコーダ15をハブ6に対し直接固定せず、外輪9等の回転側軌道輪を介して支持している。この為、これらハブ6と外輪9等の回転側軌道輪との嵌合部が滑る、所謂クリープが発生すると、このハブ6の回転速度と前記エンコーダ15の回転速度とが一致しなくなり、車輪の回転速度検出の信頼性が損なわれる。転がり軸受の軌道輪が相手部材に対しクリープするのを防止する為、これら軌道輪と相手部材との間に回転防止の為の構造を設ける事が、特許文献6〜8に記載される等により従来から知られている。但し、これら各特許文献に記載された様なクリープ防止の為の構造を、二輪車用車輪の回転速度検出の信頼性向上の為に利用する事は、従来は考えられていなかった。
特開2006−105341号公報 特開2007−139075号公報 特開2007−211840号公報 特開2007−285514号公報 特開2009−229157号公報 特開平10−82428号公報 特開2001−27255号公報 特開2005−33999号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑み、エンコーダを装着した回転側軌道輪が、この回転側軌道輪を嵌合支持している相手部材に対し相対回転(クリープ)するのを防止して、自動二輪車の車輪の回転速度検出に関する信頼性の向上を図れる構造を実現すべく発明したものである。
本発明の自動二輪車の車輪用回転速度検出装置は、前述した従来構造と同様に、中心軸部材と、外径側部材と、転がり軸受と、エンコーダと、回転検出センサとを備える。
特に、本発明の自動二輪車の車輪用回転速度検出装置に於いては、前記転がり軸受を構成する回転側軌道輪の嵌合側周面に全周に亙って形成した係止凹溝に、自由状態での断面形状の直径がこの係止凹溝の深さよりも大きいOリングを装着している。そして、前記中心軸と前記外径側部材とのうち、車輪と共に回転する部材である回転側軌道輪を前記回転側部材に嵌合した状態でこのOリングを、前記係止凹溝の底面とこの回転側部材の周面との間で弾性的に押圧して、前記回転側軌道輪がこの回転側部材に対し回転する事を防止している。
上述の様に構成する本発明の自動二輪車の車輪用回転速度検出装置によれば、エンコーダを装着した回転側軌道輪が、この回転側軌道輪を嵌合支持している相手部材に対し相対回転(クリープ)するのを防止して、自動二輪車の車輪の回転速度検出に関する信頼性の向上を図れる。
本発明の実施の形態の第1例を示す要部断面図。 同第2例を示す要部断面図。 同第3例を示す要部断面図。 同第4例を示す要部断面図。 自動二輪車の車輪の回転支持部の1例を示す断面図。 従来から知られているエンコーダ付玉軸受の1例を示す部分断面図。 このエンコーダ付玉軸受と回転検出センサとを組み合わせて回転速度検出装置を構成した状態を示す要部断面図。
[実施の形態の第1例]
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。回転側軌道輪である外輪9の外周面に係止凹溝18を、全周に亙って形成している。そして、この係止凹溝18に、Oリング19を装着している。このOリング19は、図1に示した自由状態での断面形状の直径が、前記係止凹溝18の深さよりも大きい。従って、前記外輪9をハブ6に内嵌する以前の状態で、前記Oリング19の外径側端部は、この外輪9の外周面よりも径方向外方に突出する。従って、このOリング19は、この外輪9を前記ハブ6に、締り嵌めで内嵌した状態で、前記係止凹溝18の底面とこのハブ6の内周面との間で弾性的に押圧される。この状態では、これら底面及び内周面と、前記Oリング19の内外両周面との間に大きな摩擦力が作用する。この結果、前記ハブ6と前記外輪9との嵌合部の締め代が低下乃至は消失しても、エンコーダ15を装着したこの外輪9が、車輪と共に回転する前記ハブ6に対し相対回転(クリープ)する事がなくなる。この結果、この車輪と前記エンコーダ15との回転速度を完全に一致させて、自動二輪車の車輪の回転速度検出に関する信頼性の向上を図れる。
更に、本例の場合には、内輪10の内周面にも係止凹溝18aを形成し、この係止凹溝18aにもOリング19aを係止している。そして、前記内輪10を支持軸3に締り嵌めにより外嵌固定した状態で、このOリング19aを、この支持軸3の外周面と前記係止凹溝18aの底面との間で弾性的に押圧している。
本例の構造の場合には、前記Oリング19により、前記ハブ6に対する前記外輪9(及びこの外輪9に支持固定した前記エンコーダ15)の相対回転を防止すると共に、前記両Oリング19、19aにより、前記ハブ6の内周面と前記外輪9の外周面との間、並びに、前記内輪10の内周面と前記支持軸3の外周面との間のシール性確保を図っている。
その他の部分の構成及び作用は、前述の図5〜7に記載した従来構造とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。
[実施の形態の第2例]
図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、外輪9の外周面に2本の係止凹溝18、18を、内輪10の内周面に2本の係止凹溝18a、18aを、それぞれ形成し、これら各係止凹溝18、18aに、それぞれOリング19、19aを装着している。この様な本例の構造によれば、上述した実施の形態の第1例に比べて、ハブ6に対する外輪9のクリープ防止効果を向上させられると共に、このハブ6の内周面と前記外輪9の外周面との間、並びに、前記内輪10の内周面と支持軸3の外周面との間のシール性を、より十分に確保できる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
[実施の形態の第3例]
図3は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、外輪9aと共に回転するエンコーダ15aを、組み合わせシールリング20を構成するスリンガ21の外側面に添着支持して、エンコーダ付玉軸受8aを構成している。又、支持軸3の中間部で、玉軸受4aを構成する内輪10aに隣接した部分にセンサホルダ22を外嵌固定し、このセンサホルダ22に保持した回転検出センサ13aの検出部を、前記エンコーダ15aの軸方向外側面に対向させている。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
[実施の形態の第4例]
図4は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、軸受ハウジング23の内径側に、特許請求の範囲に記載した中心軸部材である回転軸24を支持した、内輪回転型の構造に本発明を適用した場合に就いて示している。玉軸受4aの構成自体は、上述した実施の形態の第3例の場合と同様である。同様構成の玉軸受4aを使用して内輪回転型の構造を実現する為に本例の場合には、組み合わせシールリング20aを構成するスリンガ21aを内輪10aの端部外周面に、締り嵌めにより外嵌固定して、エンコーダ付玉軸受8bを構成している。又、シールリング16aを構成する芯金17aを外輪9aの端部内周面に、締り嵌めにより内嵌固定している。そして、エンコーダ15bを、前記スリンガ21aの外側面に、全周に亙って添着支持している。又、回転検出センサ13aは、前記軸受ハウジング23に設けた、保持フランジ25部分に支持している。更に、回り止め構造を、前記内輪10aの内周面と前記回転軸27の外周面との間に設けている。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
本発明を実施する場合に、エンコーダの材質は特に問わないが、プラスチック磁石製とする事が好ましい。この理由に就いて、以下に説明する。
一般的に永久磁石製のエンコーダを構成する為に、強磁性粉末であるストロンチウムフェライトを、バインダーであるニトリルゴム中に混入した磁性材料を使用する。又、この磁性材料を1対のロール間でシート状に成形する際に、前記強磁性粉末を配向した状態とする、所謂機械配向法を採用する。前記フェライト系の強磁性粉末の形状は、前記ロール同士の間で成形する際に配向され易い様に、面積に対して厚さ寸法を小さくしている。前記フェライト系の強磁性粉末は、この様な板状の形状とする為に、含有するバリウムの量が多く、残留磁束密度(Br)が磁場配向用ストロンチウムフェライト系の強磁性粉末に比べて低い反面、保磁力(bHc)及び固有保磁力(iHc)は、この磁場配向用ストロンチウムフェライト系の強磁性粉末に比べて高い。
一方、本発明の対象となる、自動二輪車の車輪用回転速度検出装置は、小型の転がり軸受(玉軸受4、4a)にエンコーダ(15、15a、15b)を組み込む必要があり、使用可能なエンコーダの大きさが限られる。従って、上述の様な、機械配向法により強磁性粉末を配向させるフェライト含有ゴム磁石から成るエンコーダでは、被検出面から出入りする磁束の密度を十分に確保する事が難しい。この為、回転検出センサ(13、13a)の検出部に達する磁束の量を確保し、回転速度検出の信頼性を確保する為には、この回転検出センサの検出部と、前記エンコーダの被検出面との間の隙間(エアギャップ)を小さくするか、このエンコーダの円周方向の極数を少なくして、各極の面積を広くする必要があった。前記エアギャップを小さくする事は、走行時に加わるモーメント等により前記転がり軸受の構成部材等が弾性変形した場合に、前記回転検出センサの検出部と前記エンコーダの被検出面とが擦れ合う可能性が高くなる為、好ましくない。又、前記極数を少なくする事は、車輪が1回転する間に行える、前記回転速度検出の回数が少なくなり、ABS制御の迅速性確保の面から不利になる。
これに対して、前記エンコーダを、強磁性粉末をバインダーである合成樹脂中に混入したプラスチック磁石製とすれば、ゴム磁石に比べて磁気特性の向上を図る事ができる。具体的には、エンコーダの被検出面から出入りする磁束の密度を高くして、このエンコーダの被検出面と回転検出センサの検出部との間の隙間大きくしたり、このエンコーダの円周方向の極数を多くしたりしても、この検出部に達する磁束の量を多くできる。そして、回転検出センサの検出部とエンコーダの被検出面とが擦れ合う事を防止し、しかも、ABS制御の迅速性確保を図れる。尚、プラスチック磁石製のエンコーダを添着支持する芯金(17、17a)或いはスリンガ(21、21a)の材質は、このエンコーダの磁気特性を低下させず、且つ、必要とする耐食性を有する磁性金属板を使用する。この様な条件を満たす磁性金属板としては、フェライト系ステンレス鋼(SUS430等)、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410等)等が挙げられる。
この様な芯金或いはスリンガに、プラスチック磁石製のエンコーダを添着固定するには、先ず、予め接着剤を塗布した芯金或いはスリンガをコアにして、磁性材料(強磁性粉末を混入した溶融合成樹脂)をインサート成形する。このインサート成形は、ディスクゲート方式の射出成形機により行なう事が好ましい。この理由は、溶融した磁性材料がディスク状に拡がってから、金型内に存在する、前記エンコーダを成形する為のキャビティ内に流入する際に、前記溶融した磁性材料中に含有する鱗片状の強磁性粉末が、得られるエンコーダの被検出面に対して平行に配向する為である。又、得られるエンコーダの周方向の一部に、異なる部分から送られて来る溶融樹脂同士がぶつかる事で生じるウェルドが発生する事を防止できて、優れた強度を有するエンコーダを得られる。
尚、上述の様にして行う、このエンコーダの射出成形時に、前記金型に、前記キャビティ(内で成形されるエンコーダ)の厚さ方向に磁場を加えれば(磁場成形すれば)、得られるエンコーダ中の強磁性粉末の異方性をより完全に近くできて、着磁後のエンコーダの被検出面から出入りする磁束の量を、より多くできる。
これに対して、サイドゲート方式の射出成形機を使用した場合には、前記ウェルドの発生が避けられない。このウェルド部分では、或る程度温度が低下して粘性が高くなった溶融樹脂同士がぶつかり合うので、機械的強度が低下するだけでなく、溶融樹脂中に混入した強磁性粉末の向きが変わる事に対する抵抗が大きくなる。この為、仮に磁場成形を行ったとしても、前記ウェルド部及びその近傍部分で、前記強磁性粉末の配向状態を十分に異方化する事は難しくなる。この結果、このウェルド部及びその近傍部分の磁場特性が低下し、得られるエンコーダにより構成した回転速度検出装置による、車輪の回転速度検出に関する信頼性確保の面から不利になる。
前記エンコーダを、前記ディスクゲート方式の射出成形機により、磁場成形を併用しつつ射出成形する場合には、前記金型のキャビティ内に、前記強磁性粉末を混入した溶融樹脂を充填して前記エンコーダを成形した後、この金型から取り出す以前に、この金型内で冷却する過程で脱磁を行う。この脱磁は、この金型に、前記射出成形時と逆方向の磁界を加える事により行う。この脱磁を行いつつ、前記エンコーダを冷却させた後、ゲート部の外径側端部を切除して、このエンコーダを前記金型から取り出す。そして、接着剤を或る程度硬化させてから、前記エンコーダを更に脱磁する。この更なる脱磁は、オイルコンデンサ式等の脱磁機を用いて行い、このエンコーダの残留磁束密度を、2mT以下、より好ましくは1mT以下にまで低下させる。次いで、前記ゲート部に繋がっている余肉部を除去(トリミング)すると共に、恒温槽等で一定温度、一定時間加熱して、接着剤を完全に硬化させる。尚、この接着剤を硬化させる事は、前記芯金或いはスリンガを、高周波加熱等により短時間だけ加熱する事でも行える。そして、最後に、前記エンコーダを着磁ヨークと重ね合わせて、このエンコーダを軸方向に、且つ、着磁方向を円周方向に関して交互に且つ等間隔で反転させた状態で着磁し、前記エンコーダの被検出面である軸方向側面に、S極とN極とを、交互に、且つ、等間隔で配置する。
尚、前記エンコーダを構成する磁性材料中の強磁性粉末としては、磁気特性や耐候性を考慮して、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト等のフェライト系強磁性粉末、サマリウム−鉄−窒素、サマリウム−コバルト、ネオジウム−鉄−ボロン等の希土類強磁性粉末が、好ましく使用できる。これらの強磁性粉末は、それぞれ単独で、或いは複数種類組み合わせて使用する。尚、高い磁気特性(BHmaxで2.0MGOe超)が必要な場合には希土類強磁性粉末を使用し、低い磁気特性(BHmaxで1.6〜2.0MGOe)で良い場合には、コストを考慮して、フェライト系強磁性粉末を主成分とする配合が好ましい。又、磁性材料中の強磁性粉末の含有量は、強磁性粉末の種類により異なるが、70〜92質量%の範囲であれば実用上問題はない。
バインダーである合成樹脂は、ポリアミド樹脂に耐衝撃性向上剤を添加したものが、好ましく使用できる。ポリアミド樹脂は、耐疲労性及び耐熱性に優れる合成樹脂であり、得られるエンコーダの耐熱衝撃性を向上させる効果がある。
又、前記耐衝撃性向上剤は、振動や衝撃を緩和する作用を有する弾性材料であり、以下に述べる合成樹脂やゴム材料が、好ましく使用できる。このうち、前記耐衝撃性向上剤として使用する合成樹脂は、変性ポリアミド樹脂が好ましい。
この変性ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂から成るハードセグメントと、ポリエステル成分及びポリエーテル成分のうちの少なくとも一方から成るソフトセグメントとを有するブロック共重合体であり、市販品としてはポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等をハードセグメントとする変性ポリアミド樹脂が知られている。
又、前記耐衝撃性向上剤として使用するゴム材料としては、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル変性アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、水素添加ニトリルゴム、カルボシキル変性水素添加ニトリルゴム、カルボキシル変性スチレンブタジエンゴムから成る粒子が好ましく、それぞれ単独で、または複数種類を組み合わせて使用する。
更に、前記耐衝撃性向上剤として、エチレンプロピレン非共役ジエンゴム(EPDM)、無水マレイン酸変性エチレンプロピレン非共役ジエンゴム(EPDM)、エチレン/アクリレート共重合体、アイオノマー等も使用可能である。
これら耐衝撃性向上剤の添加量は、ポリアミド樹脂との合計量に対し、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。添加量が5質量%未満では、少な過ぎて耐衝撃性の改善効果が不十分となる。これに対して添加量が50質量%を超えると、耐衝撃性は向上するものの、相対的にバインダとしての主体となる、通常のポリアミド樹脂の量が少なくなり、引張強度等が低下して、前記エンコーダとしての強度確保が難しくなる。
又、このエンコーダと、前記芯金或いはスリンガとを接着する為の接着剤としては、溶剤での稀釈が可能で、2段階に近い硬化反応が進む、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等が好ましい。これらの接着剤は、耐熱性、耐薬品性、ハンドリング性等にも優れるという利点を有する。
尚、前記エンコーダと前記芯金或いはスリンガとを接着固定する作業は、必ずしも、前述の様に、このエンコーダを前記金型内で射出成形するのと同時に行う必要はない。単独で円輪状に射出成形したエンコーダを、金型から取り出してから、前記芯金或いはスリンガと接着固定した後、このエンコーダの被検出面を多極に着磁しても良い。
1 ホーク
2 支持板
3 支持軸
4、4a 玉軸受
5a、5b、5c 内輪間座
6 ハブ
7 ホイール
8、8a、8b エンコーダ付玉軸受
9、9a 外輪
10、10a 内輪
11 玉
12 エンコーダ付シールリング
13、13a 回転検出センサ
14 ホルダ部材
15、15a、15b エンコーダ
16、16a シールリング
17、17a 芯金
18、18a 係止凹溝
19、19a Oリング
20、20a 組み合わせシールリング
21、21a スリンガ
22 センサホルダ
23 軸受ハウジング
24 回転軸
25 保持フランジ

Claims (1)

  1. 中心軸部材と、外径側部材と、転がり軸受と、エンコーダと、回転検出センサとを備え、
    このうちの中心軸部材は車輪と同心に設けられており、
    前記外径側部材は、この中心軸部材の周囲に、この中心軸部材と同心に設けられており、
    前記転がり軸受は、前記外径側部材の内周面と前記中心軸部材の外周面との間に設けられており、
    前記エンコーダは、被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させたものであり、
    前記回転検出センサは、前記エンコーダの回転に伴って変化する信号を出力するものであり、
    前記転がり軸受は、外周面に内輪軌道を有し、前記中心軸部材に外嵌固定された内輪と、内周面に外輪軌道を有し、前記外径側部材に内嵌固定された外輪と、この外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
    前記エンコーダは、前記内輪と前記外輪とのうちの一方で前記車輪と共に回転する軌道輪である回転側軌道輪の内外両周面のうち、前記中心軸と前記外径側部材とのうちの一方で前記車輪と共に回転する部材である、回転側部材と嵌合する嵌合側周面に対し逆側に存在する非嵌合側周面の端部に、この回転側軌道輪と同心に支持固定されており、
    前記回転検出センサは、検出部を前記エンコーダの被検出面に対向させた状態で、前記中心軸部材と前記外径側部材とのうちの他方で回転しない部材である静止側部材の一部に支持固定している
    自動二輪車の車輪用回転速度検出装置に於いて、
    前記回転側軌道輪の嵌合側周面に全周に亙って形成した係止凹溝に、自由状態での断面形状の直径がこの係止凹溝の深さよりも大きいOリングを装着し、前記回転側軌道輪を前記回転側部材に嵌合した状態でこのOリングを、前記係止凹溝の底面とこの回転側部材の周面との間で弾性的に押圧して、前記回転側軌道輪がこの回転側部材に対し回転する事を防止した事を特徴とする自動二輪車の車輪用回転速度検出装置。
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