JP2012166549A - 流延膜の乾燥装置、流延膜の乾燥方法及び溶液製膜方法 - Google Patents

流延膜の乾燥装置、流延膜の乾燥方法及び溶液製膜方法 Download PDF

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Abstract

【課題】位相差フィルムを効率よく製造する。
【解決手段】流延ダイ56は、エンドレスバンド39に向けてドープ12を流出する。ドープ12からなる流延膜21がエンドレスバンド39に形成される。第1乾燥ユニット61は、流延膜21の表面に第1乾燥風69をあてる。流延膜21の表面に、乾燥層が形成される。第2乾燥ユニット62は上方ユニット75と下方ユニット76とを有する。上方ユニット75は、流延膜21に第2上方乾燥風82をあてる。下方ユニット76は、流延膜21を支持するエンドレスバンド39に下方乾燥風88をあてる。こうして、第2乾燥ユニット62は、流延膜21の表面とエンドレスバンド39の裏面39bとの温度差が小さくなるようにして、流延膜21から溶剤を蒸発させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、流延膜の乾燥装置、流延膜の乾燥方法及び溶液製膜方法に関する。
光透過性を有するポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、軽量であり、成形が容易であるため、光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置の構成部材である光学フィルム(例えば、位相差フィルムや偏光板保護フィルム等)に用いられている。
フィルムの主な製造方法として溶液製膜方法が知られている。溶液製膜方法では、膜形成工程と流延膜自立化工程と剥取工程と湿潤フィルム乾燥工程とを順次行う。膜形成工程では、流延ダイを用いて、ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を流し、移動する支持体上に流延膜を形成する。流延膜自立化工程では、流延膜が自立して搬送可能になるまで所定の処理を行う。剥取工程では、流延膜自立化工程を経た流延膜を支持体から剥がして湿潤フィルムとする。湿潤フィルム乾燥工程では、湿潤フィルムの表面及び裏面の両側に乾燥風をあてて、湿潤フィルムから溶剤を蒸発させてフィルムとする。
流延膜自立化工程では、流延膜の表面に乾燥風をあてて、流延膜から溶剤を蒸発させる工程(以下、膜乾燥工程と称する)と、流延膜の冷却により流延膜をゲル化させる工程(以下、冷却ゲル化工程と称する)とのいずれかが行われる(例えば、特許文献1)。膜乾燥工程を行う乾燥方式と冷却ゲル化工程を行う冷却ゲル化方式とを比べると、後者の方が製造効率の点で著しく優位にある。したがって、光学フィルムを効率よく製造するためには、後者のほうが適していると考えられている。
特開2008−238697号公報
ところが、後者の方式により得られるフィルムは、面内レターデーションReや厚み方向のレターデーションRthが、前者の方式により得られるフィルムに比べて低い。そこで、前者の方式で得られたフィルムに対し、特許文献1に記載の延伸工程を行うことにより、面内レターデーションReや厚み方向のレターデーションRthを増大させることが可能になる。しかしながら、特許文献1に記載の延伸方法を行う場合、フィルムのヘイズが悪化しやすくなるため、厚み方向のレターデーションRthの絶対値の増大量には限界がある。こうした経緯から、VA(Vertical Alingnment)型液晶表示装置向け位相差フィルム等、面内レターデーションReや厚み方向のレターデーションRthが比較的高いフィルムをつくる場合には、前者、すなわち膜乾燥工程を行う溶液製膜方法が適している。
このように、膜乾燥工程を行う溶液製膜方法において、位相差フィルムの生産効率の向上を図るためには、流延膜や湿潤フィルムにおける溶剤の蒸発を効率よく行うことが必要となる。膜乾燥工程において乾燥効率の向上を図るため、乾燥風の温度を高くする、または、乾燥風の風速を増大させる方法が考えられる。しかしながら、このような乾燥方法の膜乾燥工程の後に、剥取工程及び湿潤フィルム乾燥工程を行うと、得られたフィルムの厚み方向のレターデーションRthは比較的小さいものとなってしまう。
一方、乾燥効率の向上が見込みにくい膜乾燥工程における乾燥負荷の一部を、乾燥効率の向上が見込める湿潤フィルム乾燥工程にまわすために、剥取工程の前倒しを行うという方法が考えられる。剥取工程の前倒しとは、剥ぎ取りのタイミングを早めることである。しかしこの方法の場合には、所望の面内レターデーションRe,厚み方向のレターデーションRthが得られない、または、光学軸の向きが幅方向や長手方向においてばらつく等、最終的に得られる位相差フィルムの光学特性に悪影響が出る。前者は、含有する溶剤量が大きい流延膜を支持体から剥ぎ取ると、ポリマー分子の配向性が変わりやすいことに起因する。また、後者は、湿潤フィルム乾燥工程において乾燥に起因する収縮量が大きくなることに起因する。このため、剥取工程の前倒しにより、位相差フィルムを効率よく製造することができない。
本発明はこのような課題を解決するものであり、位相差フィルムを効率よく製造することができる流延膜の乾燥装置、流延膜の乾燥方法及び溶液製膜方法を提供することを目的とする。
本発明の流延膜の乾燥装置は、互いに平行に配された第1ローラ及び第2ローラに掛け渡され、前記第1ローラから前記第2ローラへ移動する支持体と、前記第1ローラにより支持された前記支持体の表面にポリマーと溶剤とを含むドープが流延されることにより形成された流延膜の表面にプレ乾燥風をあて、前記溶剤の蒸発により生成し厚み方向における前記ポリマー分子の配向性が前記流延膜の内部よりも高い乾燥層を前記流延膜の表面側に形成するプレ乾燥手段と、前記乾燥層を有する前記流延膜が自立して搬送可能な状態となるまで前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる本乾燥手段とを備え、前記本乾燥手段は、前記第1ローラから離れ前記第2ローラへ向かう前記支持体に支持された前記流延膜の表面へ表面乾燥風をあてる膜表面乾燥手段と、前記第1ローラから離れ前記第2ローラへ向かう前記支持体に支持された前記流延膜の裏面を加熱する膜裏面加熱手段と、前記流延膜の表面と裏面との温度差が小さくなるように、前記膜表面乾燥手段及び前記膜裏面加熱手段を制御する制御部とを有することを特徴とする。
前記制御部は、前記プレ乾燥風の温度以下の前記表面乾燥風が前記流延膜の表面にあたるように、前記膜表面乾燥手段を制御することが好ましい。
前記膜裏面加熱手段は、前記第1ローラから離れ前記第2ローラへ向かう前記支持体の裏面を加熱することにより前記流延膜の裏面を加熱することが好ましく、前記膜裏面加熱手段は、前記ドープが流延される前記支持体の流延位置における表面の温度よりも高温になるまで、前記支持体の裏面を加熱することがより好ましい。前記本乾燥手段は、前記第1ローラから前記第2ローラに向かう前記支持体の移動路に沿って設けられることが好ましい。
本発明の流延膜の乾燥方法は、互いに平行に配された第1ローラ及び第2ローラに掛け渡され前記第1ローラから前記第2ローラへ移動する支持体であって、前記第1ローラに支持された前記支持体の表面に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出し、前記支持体の表面上に前記ドープからなる流延膜を形成する膜形成工程と、前記溶剤の蒸発により生成し厚み方向における前記ポリマー分子の配向性が前記流延膜の内部よりも高い乾燥層が前記流延膜の表面側に形成するまで前記流延膜の表面にプレ乾燥風をあてるプレ乾燥工程と、前記プレ乾燥工程後に行われ、前記流延膜が自立して搬送可能な状態となるまで、前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる本乾燥工程とを有し、前記本乾燥工程では、前記流延膜の表面へ表面乾燥風をあて、前記流延膜の裏面を加熱し、前記流延膜の表面と裏面との温度差が小さくなるように、前記表面乾燥風の温度及び前記流延膜の裏面の加熱による温度を調節することを特徴とする。
前記本乾燥工程では、前記プレ乾燥風の温度以下の前記表面乾燥風を前記流延膜の表面にあてることが好ましい。
前記支持体の加熱により前記流延膜の裏面の加熱を行うことが好ましく、前記ドープが流延される前記支持体の流延位置における表面の温度よりも高温になるまで前記流延膜の裏面を加熱することがより好ましい。
含有溶剤量が150質量%以上250質量%以下の前記流延膜に対して前記本乾燥工程を行うことが好ましい。前記第1ローラから前記第2ローラに向かう前記支持体上の前記流延膜に対して、前記本乾燥工程を行うことが好ましい。
本発明の溶液製膜方法は、上記の流延膜の乾燥方法の後に行われ、前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥取工程と、前記湿潤フィルムから前記溶剤を蒸発させてフィルムとする湿潤フィルム乾燥工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
本発明は、流延膜から溶剤を蒸発する過程において、ポリマー分子の配向性が高い乾燥層を生成させる。更に、流延膜から溶剤を蒸発する過程において、この乾燥層が成長するように、流延膜の表面及び裏面の温度条件を調節する。本発明によれば、位相差フィルムを効率よく製造することができる。
溶液製膜方法の概要を示すフローチャートである。 溶液製膜設備の概要を示す説明図である。 流延装置の概要を示す説明図である。 第1乾燥ユニット及び第2乾燥ユニットの概要を示す側面図である。 第1乾燥ユニット及び第2乾燥ユニットの概要を示す斜視図である。 第1乾燥ユニットの断面図である。 形成直後の流延膜を模式的に示す断面図である。 乾燥層が表面側に生成した流延膜を模式的に示す断面図である。 表面側の乾燥層が成長したときの流延膜を模式的に示す断面図である。 流延膜の厚み方向全域に乾燥層が成長したときの流延膜を模式的に示す断面図である。
(溶液製膜方法)
図1に示すように、溶液製膜方法10は、ドープ12からフィルム13をつくるものであり、膜形成工程16と、プレ乾燥工程17と、本乾燥工程18と、剥取工程19と、湿潤フィルム乾燥工程20とが順次行われる。膜形成工程16では、フィルム13の原料となるポリマーが溶剤に溶解したドープ12を支持体に流出し、ドープ12からなる流延膜21を支持体上に形成する。プレ乾燥工程17では、溶剤の蒸発により生成する乾燥層を流延膜21の表面側に形成する。本乾燥工程18では、流延膜21が自立して搬送可能な状態となるまで、流延膜21から溶剤を蒸発させる。剥取工程19では、自立して搬送可能な状態となった流延膜21を支持体から剥ぎ取って、湿潤フィルム22とする。湿潤フィルム乾燥工程20では、湿潤フィルム22から溶剤を蒸発させて、フィルム13とする。
(溶液製膜設備)
図2に示すように、溶液製膜方法が行われる溶液製膜設備30は、ドープ12から湿潤フィルム22をつくる流延装置31と、湿潤フィルム乾燥工程20(図1参照)が行われる乾燥装置32と、フィルム13を巻き芯に巻き取る巻取装置33とを有する。
(流延装置)
図3に示すように、流延装置31は、ケーシング36と、ケーシング36内に収容され、同一水平面にて互いに平行な水平ローラ37、38とを有する。なお、水平ローラ37と水平ローラ38とは、互いに平行に配されていれば良い。水平ローラ37は、駆動軸37aと、駆動軸37aに固定されたローラ本体37bとからなる。水平ローラ38は、軸38aと、軸38aに固定されたローラ本体38bとからなる。水平ローラ37、38には環状のエンドレスバンド39が巻きかけられる。エンドレスバンド39は、シート材の両端を連結することにより得られる。こうして、エンドレスバンド39は、水平ローラ37、38により、裏面39b(図4参照)側から支持される。
駆動軸37aは、ローラ駆動用モータ42と接続する。制御部43は、ローラ駆動用モータ42を制御して、水平ローラ37を所定の速度で回転させる。水平ローラ37の回転に伴い所定の方向へ循環移動し、水平ローラ38は、エンドレスバンド39の移動に従って回転する。以下、エンドレスバンド39の移動方向をX方向と称し、エンドレスバンド39の幅方向をY方向と称し、垂直方向をZ方向と称する。
エンドレスバンド39の表面39aの移動速度V39aは200m/分以下であることが好ましい。移動速度V39aが200m/分を超えると、ビードを安定して形成することが困難となる。移動速度V39aの下限値は、目標とするフィルムの生産性を考慮すればよい。移動速度V39aの下限値は例えば10m/分、すなわち移動速度V39aは例えば10m/分以上である。
エンドレスバンド39は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するSUS316製であることがより好ましい。エンドレスバンド39の幅は、例えば、ドープ12の流延幅の1.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。エンドレスバンド39の長さは、例えば、20m以上200m以下であることが好ましく、エンドレスバンド39の厚みは、例えば、0.5mm以上〜2.5mm以下であることが好ましい。なお、エンドレスバンド39は、厚みムラが全体の厚みに対して0.5%以下のものが好ましい。表面39aは、研磨されていることが好ましく、表面39aの表面粗さは0.05μm以下であることが好ましい。
図4に示すように、水平ローラ37には、ローラ本体37bの温度を所定の範囲に調節する温度調節器47が取り付けられる。同様に、水平ローラ38には、ローラ本体38bの温度を所定の範囲に調節する温度調節器48が取り付けられる。温度調節器47は、制御部43の制御の下、所定の温度に調節された伝熱媒体を、ローラ本体37b内に設けられた流路へ流す。更に、温度調節器47は、流路を流れた伝熱媒体を回収し、回収した伝熱媒体の温度を所定の温度に調節する。このように、温度調節器47は、ローラ本体37bを通して、所定の温度の伝熱媒体を循環させることにより、ローラ本体37bの温度を所定のものに調節することができる。温度調節器48も、温度調節器47と同様の構造を有し、ローラ本体38bを通して、所定の温度の伝熱媒体を循環させることにより、ローラ本体38bの温度を所定の温度に調節することができる。
図3に示すように、ケーシング36内には、X方向上流側から下流側に向かって、第1〜第3シール部材51〜53が順次配される。第1〜第3シール部材51〜53により、ケーシング36内は、X方向上流側から下流側に向かって、流延室36a、乾燥室36b、及び剥取室36cに仕切られる。そして、流延室36aの気密性は、第1〜第2シール部材51〜52により維持される。また、乾燥室36bの気密性は、第2〜第3シール部材52〜53により維持される。
第1シール部材51は、ケーシング36に取り付けられた遮風板51aと、遮風板51aに取り付けられたラビリンスシール51bとからなる。遮風板51aは、ケーシング36内の気体の流れを遮る遮風面を有する。遮風板51aは、ケーシング36の内壁面から突出し、エンドレスバンド39の表面39aに向かって延設される。ラビリンスシール51bは、表面39aと近接するように、遮風板51aの先端に設けられる。第2シール部材52、第3シール部材53は、第1シール部材51と同様の構造を有する。第1シール部材51のラビリンスシール51bや第2シール部材52のラビリンスシールは、エンドレスバンド39のうちローラ本体37bに巻き掛けられた部分の表面39aと近接するように設けられることが好ましい。
(流延室)
流延室36aには、流延ダイ56と減圧ユニット57とが設けられる。流延ダイ56は、ドープ12を流出するドープ流出口56aを有する。ドープ流出口56aは、エンドレスバンド39のうちローラ本体37bに巻き掛けられた部分と正対する。また、流延ダイ56には、温度調節機(図示しない)が取り付けられる。温度調節機は、流延ダイ56の温度を所定の範囲となるように調節する。更に、流延ダイ56には、ドープ12を貯留するストックタンク59が接続する。ストックタンク59は、ドープ12の温度を所定の範囲となるように調節する。
流延ダイ56は、ドープ流出口56aからエンドレスバンド39に向けてドープ12を流出する。ドープ流出口56aから流出し表面39aに到達するまでのドープ12は、ビードを形成する。表面39aに到達したドープ12は、X方向にて流れ延ばされる結果、帯状の流延膜21を形成する。図示しない温調装置により、流延ダイ56の温度が所定の範囲内となるように調節されている。なお、エンドレスバンド39のドープ12が到達する位置を、流延位置と称し、図3において符号PCを付す。
減圧ユニット57は、ビードのX方向の上流側を減圧するためのものであり、流延ダイ56のドープ流出口56aよりもX方向の上流側に配置される減圧チャンバ57aと、減圧チャンバ57a内の気体を吸引するための減圧ファン57bと、減圧ファン57b及び減圧チャンバ57aとを接続する吸引管57cとを有する。減圧ユニット57は、ビードのX方向上流側の圧力がビードのX方向下流側の圧力よりも低い状態をつくることができる。ビードのX方向上流側及びX方向下流側の圧力差ΔPは、10Pa以上2000Pa以下であることが好ましい。
(乾燥室)
乾燥室36bには、流延膜21に所定の乾燥風を供給する第1乾燥ユニット61〜第3乾燥ユニット63が、X方向上流側から下流側に向かって、順次設けられる。第1乾燥ユニット61及び第2乾燥ユニット62は、エンドレスバンド39の移動路のうち水平ローラ37から水平ローラ38へ向かう部分に沿って配される。第3乾燥ユニット63は、エンドレスバンド39の移動路のうち水平ローラ38から水平ローラ37へ向かう部分に沿って配される。
(第1乾燥ユニット)
図4及び図5に示すように、第1乾燥ユニット61は、エンドレスバンド39の表面39aに近接するように配され、第1給気ダクト66と、第1給気ノズル67と、カバー68とを有する。第1給気ダクト66とカバー68とは、X方向上流側から下流側に向けて順次設けられる。第1給気ノズル67は第1給気ダクト66に設けられる。
図4及び図5に示すように、第1給気ダクト66は、第1乾燥風69が流通するものであり、X方向においては第2シール部材52に近接し、Z方向においては流延膜21から離隔して配される。第1給気ノズル67は、第1給気ダクト66の下面66aに突出して設けられ、先端には、第1乾燥風69が送り出される第1給気口67aが形成されている。第1給気ノズル67は、表面39aに近づくに従ってX方向上流側から下流側へ延びる。第1給気口67aは、Y方向において流延膜21の一の端から他の端まで延びたスリットである。
カバー68は、第1給気口67aから送り出された第1乾燥風69をX方向下流側へ案内するものであり、Z方向においては流延膜21から離れた状態で、流延膜21を覆う。カバー68は、板状に形成され、X方向においては第1給気ノズル67から第2乾燥ユニット62近傍まで、Y方向においては流延膜21の一の端から他の端まで延設される。カバー68は、下方に、流延膜21の表面と略平行となるガイド面68aを有する。カバー68は、ガイド面68aが第1給気ノズル67の先端とほぼ同じ高さとなるように配されることが好ましい。
図4及び図6に示すように、第1乾燥ユニット61に1対のサイド遮風板70を設けても良い。1対のサイド遮風板70は、Y方向に並べられ、各サイド遮風板70は、第1給気ダクト66の上流端の下方側端部からカバー68のX方向下流側端部にかけて延びている。サイド遮風板70は、ガイド面68aから表面39aに向けて延びている。サイド遮風板70のY方向内側の面70aは、第1給気ノズル67の内面67bと面一であることが好ましい。第1給気口67aからカバー68のX方向下流側端部にかけて、ガイド面68aと表面39aと1対のサイド遮風板70とにより囲まれる部分には、図6に示すように、第1給気口67aから送り出された第1乾燥風69の第1乾燥風路71が形成される。Z方向における第1乾燥風路71の幅W71zは、例えば、20mm以上150mm以下であることが好ましい。Y方向における第1乾燥風路71の幅W71Yは、例えば、流延膜21のY方向の幅の0.8倍以上1倍以下であればよい。X方向における第1乾燥風路71の長さは、製造条件(エンドレスバンド39の表面39aの移動速度V39a等)に応じて決定すればよく、例えば、1000mm以上5000mm以下であることが好ましい。
なお、カバー68及びサイド遮風板70の下流に、後述の第2上方排気ダクト79と同様の排気ダクト(図示無し)を設けてもよい。
(第2乾燥ユニット)
図4及び図5に示すように、複数の第2乾燥ユニット62は、連なってX方向に並べられる。第2乾燥ユニット62は、エンドレスバンド39の上方、すなわち表面39a側に配される上方ユニット75と、エンドレスバンド39の下方、すなわち裏面39b側に配される下方ユニット76とを有する。
上方ユニット75は、第2上方給気ダクト78と、第2上方排気ダクト79と、第2上方給気ノズル80と、第2上方排気ノズル89と、検出器81とを有する。第2上方給気ダクト78は、第2上方乾燥風82が流通するものであり、第2上方乾燥風82を送り出す第2上方給気ノズル80を備える。第2上方給気ノズル80は、第2上方給気ダクト78の下面から、表面39aに向かって延びている。流延膜21に近接する第2上方給気ノズル80の先端には、第2上方乾燥風82が送り出される第2上方給気口80aが設けられる。第2上方給気口80aと流延膜21との間隔は、例えば、50mm以上300mm以下であることが好ましい。第2上方給気口80aは、Y方向において流延膜21の一の端から他の端まで延設される。
第2上方排気ダクト79は、第2上方乾燥風82を吸引する第2上方排気ノズル89を有し、第2上方給気ダクト78よりもX方向下流側に配される。第2上方排気ノズル89は、第2上方排気ダクト79の下面に突出して設けられ、先端には、第1乾燥風69が入る第2上方排気口89aが形成されている。第2上方排気ノズル89は、表面39aに近づくに従ってX方向下流側から上流側へ延びる。第2上方排気口89aは、Y方向において流延膜21の一の端から他の端まで延びたスリットである。第2上方排気ダクト79は、吸引した第2上方乾燥風82を排気する。
上方ユニット75は、第2上方給気ダクト78と、第2上方排気ダクト79とを、それぞれひとつづつ備えるが、この態様に限られない。例えば、上方ユニット75は、第2上方給気ダクト78と第2上方排気ダクト79とをX方向にて交互に配したものであってもよい。また、スリット状の第2上方排気口89aをもつ第2上方排気ノズル89に代えて、例えば管状のノズル(図示無し)を用いてもよい。この場合には管状のノズルの先端に形成された第2上方排気口(図示無し)を、流延膜21の側縁が通過する位置の上方に配することが好ましい。
検出器81は、表面温度センサ(図示無し)と膜厚センサ(図示無し)とを備え、表面21aに正対する姿勢で、第2上方排気ダクト79の下面に設けられる。表面温度センサは、流延膜21の表面21aの温度を検知する。膜厚センサは、流延膜21の厚みd0を測定(検出)する。図では、1つの検出器81を示しているが、検出器81をX方向に並べることが好ましい。
下方ユニット76は、下方給気ダクト83と、下方排気ダクト84と、下方給気ノズル85と、下方排気ノズル93と、裏面温度センサ86とを有する。下方給気ダクト83は、下方乾燥風88が流通するものであり、下方乾燥風88を送り出す下方給気ノズル85を備える。下方給気ノズル85は、下方給気ダクト83の上面から、裏面39bに向かって延びている。裏面39bに近接する下方給気ノズル85の先端には、下方乾燥風88が送り出される下方給気口85aが設けられる。下方給気口85aと裏面39bとの間隔は、例えば、50mm以上300mm以下であることが好ましい。下方給気口85aは、Y方向において流延膜21の一の端から他の端まで延設される。
なお、下方給気口85aは、エンドレスバンド39を介して第2上方給気口80aと正対することが好ましい。
下方排気ダクト84は、下方乾燥風88を吸引する下方排気ノズル93を有し、下方給気ノズル85よりもX方向下流側に配される。下方排気ノズル93の先端には、第2上方排気口89aと同様なスリット状の下方排気口93aが形成されている。下方排気ダクト84は、吸引した下方乾燥風88を排気する。
下方ユニット76は、下方給気ダクト83と、下方排気ダクト84とを、それぞれひとつづつ備えるが、この態様に限られない。例えば、下方ユニット76は、下方給気ダクト83と下方排気ダクト84とをX方向にて交互に配したものであってもよい。また、スリット状の下方排気口93aをもつ下方排気ノズル93に代えて、例えば管状のノズル(図示無し)を用いてもよい。この場合には管状のノズルの先端に形成された下方排気口(図示無し)を、流延膜21の側縁が通過する位置の下方に配することが好ましい。
裏面温度センサ86は、エンドレスバンド39の裏面39bの温度を検知するものであり、裏面39bに正対する姿勢で、下方排気ダクト84の上面に設けられる。図では、1つの裏面温度センサ86を示しているが、裏面温度センサ86をX方向に並べることが好ましい。
(第3乾燥ユニット)
図3に示すように、第3乾燥ユニット63は、X方向上流側から下流側に向かって順次設けられる第3排気ダクト91と第3給気ダクト92とを有する。第3排気ダクト91及び第3給気ダクト92は、それぞれ流延膜21よりも下方に離隔して配される。第3排気ダクト91には、第3乾燥風94を排気する第3排気口91aが設けられる。X方向下流側に向かって開口する第3排気口91aは、Y方向において流延膜21の一の端から他の端まで延設される。第3給気ダクト92には、第3乾燥風94が送り出される第3給気口92aが設けられる。X方向上流側に向かって開口する第3給気口92aは、Y方向において流延膜21の一の端から他の端まで延設される。
図4に示すように、第1乾燥ユニット61には、第1乾燥風69の温度や風量を調節する第1調節装置96が接続する。第1調節装置96は、第1乾燥風69の温度を所定の範囲内に調節する温調機96aと、所定の風量で第1乾燥風69を第1給気ダクト67へ送る送風ファン96bとを有する。
上方ユニット75には、第2上方乾燥風82の温度や風量を調節する第2上方調節装置97が接続する。第2上方調節装置97は、第2上方乾燥風82の温度を所定の範囲内に調節する温調機97aと、所定の風量で第2上方乾燥風82を第2上方給気ダクト78へ送る送風ファン97bとを有する。同様に、下方ユニット76には、下方乾燥風88の温度や風量を調節する下方調節装置98が接続する。下方調節装置98は、下方乾燥風88の温度を所定の範囲内に調節する温調機98aと、所定の風量で下方乾燥風88を下方給気ダクト83へ送る送風ファン98bとを有する。
図3に示すように、第3乾燥ユニット63には、第3乾燥風94の温度や風量を調節する第3調節装置99が接続する。第3調節装置99は、第3乾燥風94の温度を所定の範囲内に調節する温調機99aと、所定の風量で第3乾燥風94を第3給気ダクト92へ送る送風ファン99bとを有する。
図3及び図4に示すように、制御部43は、検出器81と裏面温度センサ86と第1調節装置96と第2上方調節装置97と下方調節装置98と第3調節装置99と接続する。
(剥取室)
図3に示すように、剥取室36cには、剥取ローラ86が設けられる。剥取ローラ86は、自立して搬送可能な状態となった流延膜21をエンドレスバンド39から剥ぎ取って湿潤フィルム22とし、剥取室36cに設けられた出口23oから湿潤フィルム22を送り出す。
ケーシング36内の雰囲気に含まれる溶剤を凝縮する凝縮装置(図示無し)、凝縮した溶剤を回収する回収装置(図示無し)を、流延装置31に設けてもよい。これにより、ケーシング36内の雰囲気に含まれる溶剤の濃度を一定の範囲に保つことができる。
図2に戻って、湿潤フィルム乾燥装置32は、流延装置31から巻取装置33に向かって順次並べられる、クリップテンタ105と乾燥室106とを有する。
クリップテンタ105は、ケーシング105a内に配されたレールとクリップ105bとを有する。ケーシング105aには、湿潤フィルム22の搬送路が設けられる。レールは、湿潤フィルム22の搬送路の両側に設けられる。レールに沿って並ぶ複数のクリップ105bは、湿潤フィルム22の幅方向両側縁部を把持する把持状態と幅方向両側縁部の把持を解除する解除状態との間で遷移自在である。各クリップ105bは、レールに沿って移動自在に取り付けられる。この複数のクリップ105bは、図示しないチェーンにより環状に連結される。クリップ105bがレール上の把持開始位置を通過すると、クリップ105bが解除状態から把持状態へ変わる。こうして、クリップ105bは、湿潤フィルム22の幅方向両側縁部を把持する。また、クリップ105bがレール上の把持解除位置を通過すると、クリップ105bが把持状態から解除状態へ変わる。こうして、クリップ105bは、湿潤フィルム22の幅方向両側縁部の把持を解除する。
把持開始位置から把持解除位置に向かうに従い、レールの間隔は漸増する。把持開始位置における湿潤フィルム22の幅をW0とし、把持開始位置から把持解除位置までの間において湿潤フィルム22の最大幅をW1とするときに、W1/W0は、1.05以上1.5以下であることが好ましい。把持開始位置から把持解除位置までの間には、湿潤フィルム22に乾燥風をあてる乾燥風供給機105cが設けられる。乾燥風供給機105cは、湿潤フィルム22の搬送路の上方及び下方に設けられる。
乾燥室106は、ケーシング106a内において千鳥状に並べられたローラ106bと、ケーシング106a内の雰囲気の温度や湿度を調節する空調機106cとを有する。ローラ106bは、ケーシング106a内に、湿潤フィルム22の搬送路を形成する。
流延装置31とクリップテンタ105との間の渡り部には、湿潤フィルム22を支持する支持ローラ108が複数並べられている。支持ローラ108は、図示しないモータにより、軸を中心に回転する。支持ローラ108は、流延装置31から送り出された湿潤フィルム22を支持して、ケーシング105a内の湿潤フィルム22の搬送路へ案内する。なお、図2では、渡り部に2つの支持ローラ108を並べた場合を示しているが、本発明はこれに限られず、渡り部に1つ、または3つ以上の支持ローラ108を並べてもよい。また、支持ローラ108は、フリーローラでもよい。なお、流延装置31から案内されてきた湿潤フィルム22の両側縁部分には、反りが発生しやすく、この両側縁部分の反りの程度によってはクリップ105bで把持できない場合がある。そこで、耳切装置(図示しない)をクリップテンタ105の上流に配し、クリップ105bによる把持の前に湿潤フィルム22の両側縁部分を切り離してもよい。
クリップテンタ105と乾燥室106との間には耳切装置110が設けられている。耳切装置110に送り出された湿潤フィルム22の幅方向の両端部分は、クリップ105bによって形成された把持跡が形成されている。耳切装置110は、この把持跡を有する両端部分を切り離す。この切り離された部分は、送風によりカットブロワ(図示しない)及びクラッシャ(図示しない)へ順次に送られて、細かく切断され、ドープ等の原料として再利用される。
乾燥室106及び巻取装置33の間には、上流側から順に、冷却室112、除電バー(図示しない)、ナーリング付与ローラ113、及び耳切装置(図示しない)が設けられる。冷却室112は、フィルム13の温度が略室温となるまで、フィルム13を冷却する。除電バーは、冷却室112から送り出され、帯電したフィルム13から電気を除く除電処理を行う。ナーリング付与ローラ113は、フィルム13の幅方向両端に巻き取り用のナーリングを付与する。耳切装置は、切断後のフィルム13の幅方向両端にナーリングが残るように、フィルム13の幅方向両端を切断する。
巻取装置33は、プレスローラ33aと巻き芯33bを有する。巻取装置33に送られたフィルム13は、プレスローラ33aによって押し付けられながら巻き芯33bに巻き取られ、ロール状となる。
次に、本発明の作用を説明する。図3に示すように、第1〜第3シール部材51〜53により、ケーシング36内には、気密性を有する各室36a〜36bが形成される。エンドレスバンド39は、各室36a〜36cを順次通過する。
(膜形成工程)
流延室36aでは、エンドレスバンド39上にドープ12からなる流延膜21を形成する膜形成工程16(図1参照)が行われる。流延ダイ56は、温度が一定の範囲内に維持されたドープ12をドープ流出口56aから連続的に流出する。流出したドープ12は、流延ダイ56からエンドレスバンド39にかけてビードを形成し、エンドレスバンド39上にて流れ延ばされる。こうして、エンドレスバンド39上には、ドープ12からなる流延膜21(図7参照)が形成される。
流延ダイ56から流出するドープ12における溶剤の含有量は、300質量%以上450質量%以下であることが好ましい。流延ダイ56から流出するドープ12における溶剤の含有量が、300質量%未満であると、ドープ12の粘度が高くなり、安定した流延が行えなくなるためである。流延ダイ56から流出するドープ12における溶剤の含有量が、450質量%を超えると、乾燥室36bにおける乾燥負荷が大きくなる結果、生産効率が下がるため好ましくない。
流延ダイ56から流出するドープ12の温度は、20℃以上であって、溶剤の沸点以下であることが好ましい。流延ダイ56から流出するドープ12の温度が20℃未満である場合には、ドープ12の粘度が高くなり、安定した流延が行えなくなるためである。また、流延ダイ56から流出するドープ12の温度が、溶剤の沸点を超える場合には、ドープ12の発泡が起こるため好ましくない。
(膜乾燥工程)
乾燥室36bでは、所定の乾燥風を流延膜21にあてて、流延膜21から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程が行われる。膜乾燥工程では、プレ乾燥工程17(図1参照)、本乾燥工程18(図1参照)が順次行われる。プレ乾燥工程17及び本乾燥工程18の詳細は後述する。
(剥取工程)
剥取室36cでは、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜21をエンドレスバンド39から剥ぎ取る剥取工程19(図1参照)が行われる。剥取ローラ90は、剥ぎ取り可能な状態となった流延膜21をエンドレスバンド39から剥ぎ取って湿潤フィルム22とし、剥取室36cに設けられた出口23oから湿潤フィルム22を送り出す。幅方向や長手方向における光学軸の向きのばらつきを抑えるため、剥取工程は、溶剤の含有量が42質量%以下の流延膜21に対して行うことが好ましい。生産効率の観点から、剥取工程は、溶剤の含有量が30質量%以上の流延膜21に対して行うことが好ましい。
ここで、溶剤の含有量は、流延膜や各フィルム中に含まれる溶剤の量を乾量基準で示したものであり、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100と表される。
流延膜21が剥ぎ取られた後のエンドレスバンド39は、流延室36aへ戻る。ここで、膜乾燥工程により高温となったエンドレスバンド39に対し、そのままドープ12を流出すると、ドープ12の発泡が起こってしまう。このため、水平ローラ37との接触によりエンドレスバンド39が冷却されるように、水平ローラ37の温度が調節されている。水平ローラ37の温度は、溶剤の沸点以下であることが好ましい。この水平ローラ37により、膜形成工程16でのドープ12の発泡を防ぐことができる。水平ローラ37の温度は、例えば、5℃以上40℃以下であることが好ましく、10℃以上40℃以下であることがより好ましい。この水平ローラ37の温度が低いほど、ドープ12が流延される流延位置PCにおけるエンドレスバンド39の温度は低くなる。ドープ12の温度は、円滑な流延を図るために高めに設定し、エンドレスバンド39の流延位置PCにおける表面39aの温度は、流延膜21の発泡防止を図るために低めに設定することが多い。このため、水平ローラ37の温度は低めに設定され、エンドレスバンド39よりも高い温度のドープ12が流延されることになる。このようにしてエンドレスバンド39よりも高い温度のドープ12が流延される場合には、本発明は特に顕著な効果が得られる。
(湿潤フィルム乾燥工程)
クリップテンタ105や乾燥室106では、湿潤フィルム22から溶剤を蒸発させる湿潤フィルム乾燥工程が行われる。
クリップテンタ105に導入された湿潤フィルム22は、クリップ105bにより幅方向両端部を把持された状態で、搬送される。乾燥風供給機105cは、把持開始位置から把持解除位置までの間において、湿潤フィルム22の表面及び裏面のそれぞれに対し、所定の乾燥風をあてる。こうして、湿潤フィルム22から溶剤を蒸発させることができる。また、レールの間隔が把持開始位置から把持解除位置に向かうに従い漸増するため、クリップ105bによる搬送により、湿潤フィルム22に対し延伸処理を行うことができる。延伸処理により、面内レターデーションReや厚み方向レターデーションRthの調節が可能となる。
乾燥室106に導入された湿潤フィルム22は、複数のローラ106bに巻き掛けられながら搬送される。ケーシング106a内の雰囲気の温度や湿度の調節により、ケーシング106a内を搬送される湿潤フィルム22から溶剤が蒸発する。こうして、湿潤フィルム22は、フィルム13となる。
次に、プレ乾燥工程17及び本乾燥工程18について説明する。
(プレ乾燥工程)
プレ乾燥工程17では、流延膜21(図7参照)の表面21a側に乾燥した皮膜のような乾燥層21x(図8参照)が形成するまで、流延膜21から溶剤を蒸発させる。図4に示すように、プレ乾燥工程17では、第1乾燥ユニット61は、第1乾燥風69を第1吸気口67aから送り出す。第1吸気口67aから送り出された第1乾燥風69の方向とZ1方向とがなす各の角度θ1は、30°以上60°以下であることが好ましく、45°であることがより好ましい。カバー68により、第1吸気口67aから送り出された第1乾燥風69は、X方向上流側から下流側へ案内される。
流延膜21に近接するカバー68により、流延膜21の表面21a近傍では、第1乾燥風69の渦状流れが生じやすくなる。渦状流れが生成した箇所では、第1乾燥風69の熱エネルギーが流延膜21に伝わりやすいため、第1乾燥風69の渦状流れにより、流延膜21の表面21aでは、溶剤の蒸発が促進される。この第1乾燥工程により、流延膜21は、乾燥層21xと湿潤層21yとを有するものとなる(図8参照)。乾燥層21xは、流延膜21の表面側に生成され、乾燥層21xよりもエンドレスバンド39側に位置する湿潤層21yに比べて乾燥が進んだ部分である。したがって、乾燥層21xの溶剤の含有量は湿潤層21yに比べて低い。
また、乾燥層21xの表面は平滑に形成される。乾燥層21xを有するものとなった流延膜21について所定の乾燥工程を行った場合には、乾燥層21xの表面が、得られた流延膜21の表面となる。したがって、形成直後の流延膜21において乾燥層21xを形成することにより、表面が平滑な流延膜21を得ることができる。更に、乾燥層21xに含まれるポリマー分子は厚み方向において配向しており、その配向性は、湿潤層21yに含まれるポリマー分子に比べ高い。
乾燥層21xに含まれるポリマー分子が厚み方向において配向する条件は、以下の(1)〜(2)である。したがって、以下の(1)〜(2)を満たすことが好ましい。
(1)溶剤の蒸発に起因する流延膜21の膜厚の減少により、流延膜21内のポリマー分子が厚み方向において圧縮される。
(2)乾燥層21xにおいて、分子配向速度が分子配向緩和速度よりも速い。
ここで、分子配向速度は、圧縮歪みと圧縮応力とでより決まる。そして、分子配向速度は、圧縮歪みが大きくなるに従い大きくなる。分子配向速度は、圧縮応力が大きくなるに従い大きくなる。また、分子配向緩和速度は、分子の熱運動エネルギーにより決まるものであり、乾燥層21xが高温になるに従い大きくなる。
プレ乾燥工程17は、溶剤の含有量が250質量%以上400質量%以下の流延膜21に対して行うことが好ましく、溶剤の含有量が300質量%以上350質量%以下の流延膜21に対して行うことがより好ましい。第1乾燥風69の温度は、乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向が緩和しない程度のものであればよく、例えば、30℃以上80℃以下の範囲であることが好ましい。また、第1乾燥風69の風速は5m/秒以上25m/秒以下の範囲であることが好ましい。
(本乾燥工程)
本乾燥工程18(図1参照)では、図4に示すように、流延膜21が自立して搬送可能な状態となるまで、流延膜21から溶剤を蒸発させる。本乾燥工程18では、配向性増大工程18a(図1参照)と自立化工程18b(図1参照)とが行われる。
(配向性増大工程)
配向性増大工程18aでは、図4に示すように、エンドレスバンド39を介して正対する上方ユニット75及び下方ユニット76を組にして行う。
配向性増大工程18aでは、第2上方乾燥風82を用いて流延膜21から溶剤を蒸発させる。第2上方給気ノズル80は、第2上方乾燥風82を流延膜21にあてる。第2上方乾燥風82が流延膜21の表面21aにあたると、第2上方乾燥風82の熱エネルギーが流延膜21の表面21aに伝わる。この結果、流延膜21のうち、乾燥層21xや乾燥層21xの近傍にある溶剤が表面21a側へ拡散し、拡散した溶剤が流延膜21の表面から蒸発する。なお、第2上方乾燥風82は、流延膜21の表面21aに対して垂直にあててもよい。
また、配向性増大工程18aでは、加熱された温風である下方乾燥風88を用いて、エンドレスバンド39の裏面39bを加熱する。下方給気ノズル85は、下方乾燥風88を裏面39bに対しあてる。下方乾燥風88が裏面39bにあたると、下方乾燥風88の熱エネルギーがエンドレスバンド39を介して、流延膜21の裏面21bに伝わりやすい。この結果、湿潤層21yに含まれる溶剤が表面21a側へ拡散し、拡散した溶剤が流延膜21の表面から蒸発する。なお、下方乾燥風88は、裏面39bに対して垂直にあててもよい。
更に、配向性増大工程18aでは、制御部43は、第2上方排気ダクト79に設けられた検出器81の表面温度センサから、第2上方排気ダクト79に正対する流延膜21の表面21aの温度T21aを読み取る。また、検出器81の膜厚センサから、流延膜21の厚みd0を読み取る。制御部43は、下方排気ダクト84に設けられた裏面温度センサ86から、下方排気ダクト84に正対するエンドレスバンド39の裏面39bの温度T39bを読み取る。
加えて、制御部43は、流延膜21の厚みd0から、流延膜21における溶剤の含有量ZYを算出する。溶剤の含有量ZYは、フィルム13の厚みをdとしたときに、次式のように表される。
ZY=100×(d0−d)/d
なお、エンドレスバンド39はステンレス等の金属から構成される場合には熱伝導率が極めて高い。このため、エンドレスバンド39の表面39aは裏面39bと同じ温度とみなしてよい。また、エンドレスバンド39の表面39aと流延膜21の裏面21bとは接しているので、流延膜21の裏面21bはエンドレスバンド39の表面39aと同じ温度とみなしてよい。ここで、膜形成工程16では、エンドレスバンド39の表面39aに向けて流出する。前述のように、エンドレスバンド39の表面39aの温度の方が、ドープ12の温度よりも低い場合が多い。このような場合には、エンドレスバンド39の表面39aよりも高温のドープ21から、流延膜21を形成する。したがって、このように膜形成工程16において形成した流延膜21は、表面21aに近づくに従い高温となり、裏面21bに近づくに従い低くなる。また、プレ乾燥工程17では、表面21aに第1乾燥風69があたるため、厚み方向における温度分布の傾向は、膜形成工程16のときと同様である。このため、本乾燥工程18における流延膜21の乾燥効率を向上させるために、第2上方乾燥風82や下方乾燥風88の温度を上げると、乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向が緩和してしまう。
そこで、制御部43は、配向性増大工程18aにて、流延膜21の表面21aとエンドレスバンド39の裏面39bとの温度差が小さくなるように温調機97a及び温調機98aを制御する。これにより、流延膜21の表面の温度から流延膜21の裏面の温度を減じた温度差が小さくなる。この結果、乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向状態を維持したまま、流延膜21の乾燥を効率よく行うことができる。このようにして、湿潤層21yに比べてポリマー分子の配向性が高い乾燥層21xを厚くすることができる(図9参照)。なお、流延膜21の表面21aとエンドレスバンド30の裏面39bとの温度差とは、流延膜21の表面21aの温度T21aからエンドレスバンド39の裏面39bの温度T39bを減じたものであり、(T21a−T39b)で求める値である。
(T21a−T39b)は、0℃以上7℃以下であることが好ましく、0℃以上5℃以下であることがより好ましい。
(T21a−T39b)の値が小さくなるように温調機97a及び温調機98aを制御することにより、乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向状態を維持したまま、流延膜21を乾燥させることができる理由は次のように推測される。乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向状態を維持するための条件としては、「T21aがポリマー分子の配向緩和温度Txを超えないこと」が必要となる。ポリマー分子の配向緩和温度Txは、流延膜21全体の溶剤の含有量が低くなるに従って、高くなるものと考えられる。また、ポリマー分子の配向緩和温度Txとして、ポリマーのガラス転移温度Tgを用いても良い。なお、ポリマーのガラス転移温度Tgは、試料を封入するセルが密閉されているクローズドセル方式の示差走査熱量測定(DSC)にて測定することができる。
また、任意の温度Tyの第1乾燥風69との接触により生成した乾燥層21xにおいて、少なくとも温度Tyでは配向しにくいと考えられる。なぜならば、乾燥層21xが生成した後も、溶剤は流延膜21から蒸発していることから、ポリマー分子の配向緩和温度Txが上昇する、すなわち乾燥層21xに含まれたポリマー分子の配向が安定化するためである。このため、流延膜21の表面に比べ流延膜21の裏面を優先的に加熱することにより、乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向状態を維持したまま、流延膜21の乾燥を効率よく行うことができる。
配向性増大工程18aは、溶剤の含有量が150質量%以上250質量%以下の流延膜に対して行うことが好ましい。また、配向性増大工程18aでは、エンドレスバンド39の裏面39bが、膜形成工程16におけるエンドレスバンド39の表面39aの温度、すなわち、流延ダイ56から流出したドープ12が到達した部分である流延位置の表面39aの温度よりも高温になるまで、エンドレスバンド39の裏面39bを加熱することが好ましい。なお、配向性増大工程18a、特に序盤では、第2上方乾燥風82を、第1乾燥風69の温度と等しい温度または第1乾燥風69の温度よりも低い温度にすることが好ましい。
第2上方乾燥風82の温度は、乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向が緩和しない程度の温度であればよく例えば、溶剤の含有量が150質量%以上250質量%以下の流延膜に対して、25℃以上50℃以下であることが好ましい。また、第2上方乾燥風82の風速は5m/秒以上25m/秒以下であることが好ましい。
下方乾燥風88の温度は、乾燥層21xに含まれるポリマー分子の配向が緩和しない程度の温度であればよい。また、下方乾燥風88の温度は、第2上方乾燥風82の温度よりも高いことが好ましい。下方乾燥風88の温度は、例えば、溶剤の含有量が150質量%以上250質量%以下の流延膜に対して、50℃以上100℃以下であることが好ましい。また、下方乾燥風88の風速は5m/秒以上25m/秒以下であることが好ましい。
なお、本実施形態では、エンドレスバンド39の裏面39bを、下方ユニット75により加熱しているが、この態様に限られない。例えば、下方ユニット75に代えて、赤外線を射出する赤外線ヒータや、加熱された温水をエンドレスバンド39の裏面39bに供給して裏面39bを加熱する温水供給式ヒータを用いてもよい。
(自立化工程)
自立化工程18bは、第3乾燥風94を用いて、自立して搬送可能な状態となるまで流延膜21から溶剤を蒸発させる(図2参照)。第3乾燥ユニット63は、流延膜21の表面に沿って、X方向下流側から上流側に向かって第3乾燥風94を流す。このように、第3乾燥風94をX方向と逆向きに流すことにより、X方向に流す場合に比べて溶剤の蒸発が促進される。このようにして、ポリマー分子の配向性が高い乾燥層21xが成長する結果、流延膜21全体が乾燥層21xとなり、ポリマー分子の配向性が高い流延膜21を得ることができる(図10参照)。第3乾燥風94の温度は40℃以上80℃以下の範囲であることが好ましい。また、第3乾燥風94の風速は5m/秒以上25m/秒以下の範囲であることが好ましい。
上記実施形態では、配向性増大工程18aにて、エンドレスバンド39の裏面39bに下方乾燥風88をあてている。しかし、流延膜21の裏面21bの加熱方法としては、エンドレスバンド39の裏面39bに温水や蒸気を接触させる方法や、エンドレスバンド39の裏面39bに赤外線を照射する方法であってもよい。
上記実施形態では、水平ローラ37から水平ローラ38に向かうエンドレスバンド39に支持された流延膜21に対し、配向性増大工程18aを行っている。しかし、配向性増大工程18aは、水平ローラ38に巻き掛けられた状態のエンドレスバンド39に支持された流延膜21や、水平ローラ38から水平ローラ37に向かうエンドレスバンド39に支持された流延膜21に対して行っても良い。前者の場合には、水平ローラ38に巻き掛けられた状態のエンドレスバンド39に支持された流延膜21に乾燥風をあてる乾燥装置を設け、乾燥風の温度及び水平ローラ38の温度を調節すればよい。水平ローラ38の温度は、例えば、25℃以上50℃以下であることが好ましい。後者の場合には、水平ローラ38から水平ローラ37に向かうエンドレスバンド39の裏面39b側に、エンドレスバンド39を加熱する加熱手段を設け、この加熱温度及び第3乾燥風94の温度を調節すればよい。
本実施形態では流延ダイ56の設置位置を水平ローラ37の上方としているが、本発明はこれに限られない。例えば、エンドレスバンド39に巻きかけられた2つのローラの間にサポートローラを設け、第1,第2シール部材51,52をサポートローラに支持されたエンドレスバンド39の部分と近接するように設ける場合がある。このような場合には、流延ダイ56の設置位置をサポートローラの上方としても良い。この場合には、サポートローラが上記実施形態における水平ローラ37であり、2つのローラのうちいずれか一方が上記実施形態における水平ローラ38となる。
本発明により得られるフィルム13は、特に、位相差フィルムや偏光板保護フィルムに用いることができる。
フィルム13の幅は、600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下の範囲であることがより好ましい。また、本発明は、フィルム13の幅が2500mmより大きい場合にも効果がある。またフィルム13の膜厚は、30μm以上120μm以下であることが好ましい。
また、フィルム13の面内レターデーションReは、45nm以上60nm以下であることが好ましく、フィルム13の厚み方向レターデーションRthは、115nm以上150nm以下であることが好ましい。フィルム13の配向角のばらつきΔφは、0°以上1.3°以下の範囲であることが望ましい。
(ポリマー)
上記実施形態では、ポリマーフィルムの原料となるポリマーは、特に限定されず、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等がある。
(セルロースアシレート)
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、トリアセチルセルロース(TAC)の90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
アシル基の全置換度A+Bは、2.20以上2.90以下であることがより好ましく、2.40以上2.88以下であることが特に好ましい。また、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度Bは、0.30以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。ポリマーの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶剤及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
上記実施形態では、本発明を用いて流延膜を形成したが、本発明はこれに限られず、支持体に塗布液を塗布し、支持体上に塗布膜を形成する場合にも適用可能である。すなわち、本発明によれば、表面が平滑な塗布膜を効率よく形成することが可能となる。
次に、本発明の効果の有無を確認するために、実験1〜6を行った。詳細な説明は実験1で行い、実験2〜6については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
(実験1)
セルローストリアセテート(置換度2.8)を混合溶剤に溶解して、セルローストリアセテートの濃度が22質量%のドープ12を調製した。混合溶剤の成分及び処方は、ジクロロメタン90質量%、メタノール10質量%である。
図2に示す溶液製膜設備30にてドープ12からフィルム13を製造した。ドープ12の温度を34℃で略一定となるように調整するために、流延ダイ56にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の温度を調節した。水平ローラ37の駆動により、水平ローラ37、38を掛け渡されたエンドレスバンド39を循環移動させた。表面39aの移動速度V39aは40m/分以下であった。
温度調節器47により、水平ローラ37の温度を18℃に調節した。温度調節器48により、水平ローラ38の温度を39℃に調節した。流延ダイ56は、表面の温度が24℃のエンドレスバンド39に向けて、温度が34℃のドープ12を流出した。エンドレスバンド39の表面39aには、ドープ12からなる流延膜21が形成した。
第1乾燥ユニット61は、流延膜21の表面21aに向けて、吹き出し風速10m/秒の第1乾燥風69を送り出した。第1乾燥風69の温度は50℃であった。
X方向に並べられた3つの第2乾燥ユニット62を用いて、本乾燥工程18を行った。上方ユニット75は、流延膜21の表面21aに向けて、温度Ta82の第2上方乾燥風82を吹き出し風速V82で送り出した。下方ユニット76は、エンドレスバンド39の裏面39bに向けて、温度Ta88の下方乾燥風88を吹き出し風速V88で送り出した。
制御部43は、各第2乾燥ユニット62の上流端において、流延膜21の表面の温度Tf11〜13、エンドレスバンド39の裏面39bの温度Tb11〜13、流延膜21の厚みを測定した。また、制御部43は、流延膜21の厚みの測定値から、流延膜21における溶剤の含有量ZY11〜13を測定した。
同様にして、制御部43は、X方向最下流の第2乾燥ユニット62の下流端において、流延膜21の表面の温度Tf14、エンドレスバンド39の裏面39bの温度Tb14、流延膜21の厚みを測定した。また、制御部43は、流延膜21の厚みの測定値から、流延膜21における溶剤の含有量ZY14を測定した。
本乾燥工程18における各条件を表1に示す。
Figure 2012166549
第3乾燥ユニット63は、温度70℃の第3乾燥風94を、300m/分の風量で流した。
剥取ローラ90は、エンドレスバンド39から流延膜21を剥ぎ取って、湿潤フィルム22とした。エンドレスバンド39から剥ぎ取られる際、流延膜21における溶剤の含有量ZYhは、表2に示すとおりである。溶剤の含有量ZYhは、流延膜21の厚みd0とフィルム13の厚みdとを用いて算出した。
Figure 2012166549
クリップテンタ105にて、湿潤フィルム22の幅方向へ30%延伸した後、乾燥室106を経てフィルム13を得た。得られたフィルム13の厚みdは60μmであった。
(実験2〜6)
表1に示すこと以外は、実験1と同様にしてフィルム13をつくった。なお、実験4〜6では、エンドレスバンド39の裏面39bへの下方乾燥風88の吹き出しを行っていない。
(評価)
実験1〜6で得られたフィルム13について、以下の項目を測定した。実験1〜6における各項目の測定結果を表2に示す。
1.面内レターデーションRe
フィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21ADH 王子計測(株))にて589.3nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値の外挿値より次式に従い算出した。
Re=|nX−nY|×d
nXは、遅相軸方向における屈折率,nYは進相軸方向の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す。
2.厚み方向レターデーションRth
フィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21ADH 王子計測(株))にて589.3nmにおける垂直方向から測定した値と、フィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出した。
Rth={(nX+nY)/2−nZ}×d
nZは厚み方向の屈折率を表す。
3.配向角のばらつき
位相差測定装置(王子計測機器(株)KOBRA 21ADHまたはWR)を用いて、帯状のフィルム13において、140箇所の測定点を設定し、各測定点における配向角を測定した。そして、測定した配向角の最大値から最小値を減じた値を、配向角のばらつきΔφとした。
測定点は、設定方法は、次の通りである。長手方向に10m間隔で20本の測定線を設定する。次に、それぞれの測定線上において幅方向に250mm間隔で7箇所の測定点を設定する。
10 溶液製膜方法
12 ドープ
13 フィルム
16 膜形成工程
17 プレ乾燥工程
18 本乾燥工程
19 剥取工程
20 湿潤フィルム乾燥工程

Claims (12)

  1. 互いに平行に配された第1ローラ及び第2ローラに掛け渡され、前記第1ローラから前記第2ローラへ移動する支持体と、
    前記第1ローラにより支持された前記支持体の表面にポリマーと溶剤とを含むドープが流延されることにより形成された流延膜の表面にプレ乾燥風をあて、前記溶剤の蒸発により生成し厚み方向における前記ポリマー分子の配向性が前記流延膜の内部よりも高い乾燥層を前記流延膜の表面側に形成するプレ乾燥手段と、
    前記乾燥層を有する前記流延膜が自立して搬送可能な状態となるまで前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる本乾燥手段とを備え、
    前記本乾燥手段は、
    前記第1ローラから離れ前記第2ローラへ向かう前記支持体に支持された前記流延膜の表面へ表面乾燥風をあてる膜表面乾燥手段と、
    前記第1ローラから離れ前記第2ローラへ向かう前記支持体に支持された前記流延膜の裏面を加熱する膜裏面加熱手段と、
    前記流延膜の表面と裏面との温度差が小さくなるように、前記膜表面乾燥手段及び前記膜裏面加熱手段を制御する制御部とを有することを特徴とする流延膜の乾燥装置。
  2. 前記制御部は、前記プレ乾燥風の温度以下の前記表面乾燥風が前記流延膜の表面にあたるように、前記膜表面乾燥手段を制御することを特徴とする請求項1記載の流延膜の乾燥装置。
  3. 前記膜裏面加熱手段は、前記第1ローラから離れ前記第2ローラへ向かう前記支持体の裏面を加熱することにより前記流延膜の裏面を加熱することを特徴とする請求項1または2記載の流延膜の乾燥装置。
  4. 前記膜裏面加熱手段は、前記ドープが流延される前記支持体の流延位置における表面の温度よりも高温になるまで、前記支持体の裏面を加熱することを特徴とする請求項3記載の流延膜の乾燥装置。
  5. 前記本乾燥手段は、前記第1ローラから前記第2ローラに向かう前記支持体の移動路に沿って設けられることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の流延膜の乾燥装置。
  6. 互いに平行に配された第1ローラ及び第2ローラに掛け渡され前記第1ローラから前記第2ローラへ移動する支持体であって、前記第1ローラに支持された前記支持体の表面に向けて、ポリマー及び溶剤を含むドープを流出し、前記支持体の表面上に前記ドープからなる流延膜を形成する膜形成工程と、
    前記溶剤の蒸発により生成し厚み方向における前記ポリマー分子の配向性が前記流延膜の内部よりも高い乾燥層が前記流延膜の表面側に形成するまで前記流延膜の表面にプレ乾燥風をあてるプレ乾燥工程と、
    前記プレ乾燥工程後に行われ、前記流延膜が自立して搬送可能な状態となるまで、前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる本乾燥工程とを有し、
    前記本乾燥工程では、
    前記流延膜の表面へ表面乾燥風をあて、
    前記流延膜の裏面を加熱し、
    前記流延膜の表面と裏面との温度差が小さくなるように、前記表面乾燥風の温度及び前記流延膜の裏面の加熱による温度を調節することを特徴とする流延膜の乾燥方法。
  7. 前記本乾燥工程では、前記プレ乾燥風の温度以下の前記表面乾燥風を前記流延膜の表面にあてることを特徴とする請求項6記載の流延膜の乾燥方法。
  8. 前記支持体の加熱により前記流延膜の裏面の加熱を行うことを特徴とする請求項6または7記載の流延膜の乾燥方法。
  9. 前記ドープが流延される前記支持体の流延位置における表面の温度よりも高温になるまで前記流延膜の裏面を加熱することを特徴とする請求項8記載の流延膜の乾燥方法。
  10. 含有溶剤量が150質量%以上250質量%以下の前記流延膜に対して前記本乾燥工程を行うことを特徴とする請求項6ないし9のうちいずれか1項記載の流延膜の乾燥方法。
  11. 前記第1ローラから前記第2ローラに向かう前記支持体上の前記流延膜に対して、前記本乾燥工程を行うことを特徴とする請求項6ないし10のうちいずれか1記載の流延膜の乾燥方法。
  12. 請求項6ないし11のうちのうちいずれか1記載の流延膜の乾燥方法の後に行われ、前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥取工程と、
    前記湿潤フィルムから前記溶剤を蒸発させてフィルムとする湿潤フィルム乾燥工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
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