第1の実施の形態.
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置10の基本構成を示す図である。図1において、画像形成装置10は、その本体11の下部に、用紙101を積載した着脱可能な用紙トレイ100を有している。用紙トレイ100は、用紙101を積載する用紙積載板102と、この用紙積載板102を持ち上げるリフトアップレバー103と、用紙積載板102上の用紙101を一枚ずつ分離して繰り出すピックアップローラ202とを有している。
用紙積載板102は、図示しない支軸を中心として揺動可能に支持されている。リフトアップレバー103は、用紙トレイ100の繰り出し側(図1における右側)に配設されており、リフトアップモータ104により回転駆動される回転軸103aに取り付けられている。回転軸103aとリフトアップモータ104とは、駆動力の伝達を接続または解除できるように構成されている。また、用紙トレイ100には、用紙積載板102上の用紙が所定の高さ(すなわちピックアップローラ202に当接する高さ)に到達したことを検知する上昇検知部201、および用紙積載板102上の用紙101の残量を検知する用紙残量センサ205が設けられている。
用紙トレイ100が画像形成装置10の本体11に装着されると、リフトアップレバー103とリフトアップモータ104とが連結され、駆動力が伝達可能となる。画像形成装置10の制御部62(図17)がリフトアップモータ104を駆動することにより、リフトアップレバー103が回転して用紙積載板102を持ち上げ、用紙積載板102に積載された用紙101が上昇する。用紙101がある高さまで上昇してピックアップロ−ラ202に当接し、上昇検知部201に検知されると、制御部62は、上昇検知部201の検知信号に基づいてリフトアップモータ104を停止する。この状態でピックアップローラ202が回転することにより、用紙積載板102上に積載された用紙101が繰り出される。
ピックアップローラ202の繰り出し側(図中右側)には、フィードローラ203およびリタードローラ204が互いに当接するように配置されている。ピックアップローラ202、フィードローラ203およびリタードローラ203により、用紙繰り出し部200が構成されている。ピックアップローラ202およびフィードローラ203は、給紙モータ72(図17)により、それぞれ矢印方向に回転駆動される。ピックアップローラ202およびフィードローラ203は、それぞれワンウェイクラッチ機構を内蔵しており、モータによる回転駆動が停止した場合でも、矢印方向に空転できるよう構成されている。
ピックアップローラ202は、用紙積載板102上に積載された用紙101に当接し、回転することにより用紙101を繰り出す。リタードローラ204は、図示しないトルク発生手段によって矢印方向のトルクを発生しており、ピックアップローラ202が用紙101を複数枚同時に引き出した場合でも、フィードローラ203およびリタードローラ204により用紙101が一枚ずつ搬送経路に繰り出される。
用紙101の搬送方向において、用紙繰り出し部200の下流側には、用紙101の斜行を規制する搬送ローラ対302と、用紙繰り出し部200から搬送ローラ対302まで用紙101を案内するガイド部材312,313と、画像形成部400(後述)に用紙101を送り込む搬送ローラ対304とが配置されている。
さらに、用紙101の搬送方向に沿って、搬送ローラ対302の上流側には、用紙101の通過を検知する用紙センサ301が配置されている。また、搬送ローラ対304の上流側および下流側には、搬送ローラ対304の駆動タイミングを決定するための用紙センサ303と、画像形成部400での書き込み開始タイミングを決定するための書き込みセンサ305とが配設されている。
搬送ローラ対302および搬送ローラ対304は、それぞれ搬送モータ73および搬送モータ74(図17)から図示しないギア列等を介して伝達された駆動力によって回転駆動され、給紙搬送制御部67(図17)によって回転制御される。
画像形成装置10の一側面(図1における右側面)には、媒体供給装置(給紙装置)としてのマルチパーパストレイ(MPT)600が備えられている。MPT600は、媒体としての用紙606を積載する媒体積載部材としての用紙積載板604と、用紙積載板604に積載された用紙606を一枚ずつ繰り出す繰り出し機構としてのピックローラ602と、繰り出された用紙606を画像形成装置10の本体11に送り出す給紙ローラ(フィードローラ)601と、繰り出された用紙を1枚に分離するために給紙ローラ601に当接配置されたリタ一ドローラ603とを備える。このMPT600の詳細な構成については後述する。
画像形成装置10は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー(現像剤)を用いて各色の画像を形成する4つのプロセスユニット430K,430Y,430M,430Cを含む画像形成部400を備えている。プロセスユニット430K,430Y,430M,430Cは、用紙101の搬送経路の上流側(図1の右側)から順に配列され、画像形成装置10の本体11に対して着脱自在に取り付けられている。プロセスユニット430K,430Y,430M,430Cは、共通の内部構成を有しているため、「プロセスユニット430」と総称して、これらの内部構成を説明する。
プロセスユニット430は、静電潜像担持体としての感光体ドラム431を有している。感光体ドラム431は、回転可能に支持されており、図示しないモータにより矢印方向に回転する。感光体ドラム431の周囲には、その回転方向上流側から順に、感光体ドラム431の表面を一様に帯電させる帯電部材としての帯電ローラ432と、一様に帯電した感光体ドラム431の表面を選択的に露光して静電潜像を形成する露光装置433と、感光体ドラム431の表面の静電潜像をトナーにより現像する現像剤担持体としての現像ローラ434と、(感光体ドラム431上のトナー像を用紙に転写した際に残留した)残存トナーを除去するクリーニング部材としてのクリーニングブレード435とが配置されている。
また、現像ローラ434の上方には、現像ローラ432に供給するトナーを収納する現像剤収容部としてのトナーカートリッジ436が取り付けられている。これらの各ローラおよび感光体ドラム431は、図示しない駆動源からギア列などを経由して伝達された駆動力によってそれぞれ回転する。
プロセスユニット430K,430Y,430M,430Cの図中下側には、転写ベルトユニット460が配設されている。転写ベルトユニット460は、印刷用紙101を静電吸着して搬送する転写ベルト(搬送ベルト)461と、この転写ベルト461が張架されるドライブローラ462およびテンションローラ463とを有している。ドライブローラ462は、ベルト駆動モータ76(図17)から図示しないギア列等を介して伝達される駆動力により回転駆動され、後述するベルト駆動制御部69(図17)によって制御される。ドライブローラ462の回転により、転写ベルト461が移動する。また、転写ベルト461上に付着したトナーを掻き取るクリーニングブレード465と、クリーニングブレード465に掻き取られたトナーを収容するトナーボックス466とが配置されている。
プロセスユニット430K,430Y,430M,430Cの各感光体ドラム431には、表面に導電性のゴム等からなる弾性層を有する転写ローラ464が、転写ベルト461を介して圧接された状態で配置されている。転写ローラ464には、感光体ドラム431上のトナー像を用紙101に転写する際に、感光体ドラム431の表面電位との間に電位差を生じさせるための電位が印加されている。なお、画像形成部400の各部の回転や電圧印加等は、画像形成制御部66(図17)により制御される。
用紙101の搬送方向において、画像形成部400(プロセスユニッ430K,430Y,430M,430C)よりも下流側(図中左側)には、定着部500が配置されている。定着部500は、表面が弾性体で形成された一対のローラであるアッパローラ501とロワローラ502とを有している。アッパローラ501およびロワローラ502は、熱源となるハロゲンランプ503a,503bを内蔵している。定着部500は、画像形成部400から送り出された用紙101上のトナー像に熱と圧力を印加してトナー像を溶融し、用紙101に定着させる。なお、定着部500の各部の動作は、定着制御部70(図17)によって制御される。
用紙101の搬送方向において、定着部500の下流側(図中左側)には、用紙101を画像形成装置10の上部カバー12に設けられたスタッカ部505に排出する排出ローラ対504a,504b,504cが配置されている。これら排出ローラ対504a,504b,504cは、搬送モータ75から図示しないギア列等を介して伝達される駆動力によって回転駆動され、給紙搬送制御部67(図17)によって回転制御される。また、定着部500の下流側には、排出ローラ対504a,504b,504cの駆動タイミングを検知するための用紙センサ506が配置されている。
次に、MPT600の構成について説明する。
図2は、MPT600の全体を示す斜視図である。図3は、図2に示す線分III−IIIにおける断面図である。ここでは、鉛直方向をZ方向とし、Z方向に直交する面内(XY面内)において、MPT600に収容される用紙の幅方向をX方向とする。また、X方向およびZ方向に直交する方向を、Y方向とする。なお、Y方向は、MPT600からの用紙606の繰り出し方向に相当する。
MPT600は、画像形成装置10の本体11に固定された本体部としてのメインフレーム607と、このメインフレーム607に取り付けられた可動支持体としてのピックフレーム611とを備えている。ピックフレーム611は、上述した給紙ローラ601およびピックローラ602をそれぞれ回転可能に支持している。給紙ローラ601とピックローラ602とは、軸方向をX方向とし、Y方向に互いに隣接している。ピックフレーム611は、メインフレーム607に、X方向の軸O1(図3)を中心として揺動可能に取り付けられている。この軸O1は、給紙ローラ601の回転軸でもある。
メインフレーム607には、X方向の軸O3を中心として揺動可能なカバー部材としてのMPTカバー613が取り付けられている。MPTカバー613は、メインフレーム607の下端近傍に形成された支持孔613bに係合することで、上記の軸O3を中心として揺動可能に支持されている。また、メインフレーム607には、アーム部材としてのアーム609L,609Rが、X方向の軸O2(図3)を中心として揺動可能に取り付けられている。アーム609L,609Rは、MPTカバー613のX方向両側に形成されたカム溝613cに係合するカムピン609cを有しており、メインフレーム607に対してMPTカバー613を懸架支持している。
MPTカバー613は、メインフレーム607の内側のスペースに格納される起立位置と、図2に示すようにメインフレーム607から外部に突出する倒伏位置との間で、アーム609L,609Rと共に揺動する。また、MPTカバー613は、起立位置にあるときにメインフレーム607の図示しない係止部に係合するロックレバー613aを備えている。
MPTカバー613には、用紙606を積載する用紙積載部材としての用紙積載板604が取り付けられている。用紙積載板604は、そのX方向両端に形成された支持ピン604aを、MPTカバー613に形成された案内溝613dに係合させ、X方向の軸を中心として揺動可能に支持されている。また、この用紙積載板604には、上昇手段としての揺動シャフト605(図3)が下方から当接している。
揺動シャフト605は、駆動源としての給紙モータ71(図17)から駆動力伝達部(駆動力伝達手段)612を介して伝達された駆動力により、用紙積載板604をピックローラ602に向けて押し上げるものである。駆動力伝達部612の構成については、後述する。用紙積載板604の上面(用紙606が積載されている場合には、用紙606の上面)は、上述するピックローラ602に当接する。
用紙積載板604には、用紙606の幅方向両端を規制する一対のサイドガイド610L,610Rが、X方向に移動可能に取り付けられている。また、大きなサイズの用紙を支持するため、MPTカバー613に対して反転可能に設けられたサポートガイド608aと、このサポートガイド608aからさらに突出するように設けられたスライド可能なサポートガイド608bが設けられている。
MPT600において、用紙606の繰り出し方向の下流側(図中右側)には、給紙ローラ601とリタードローラ603が互いにZ方向に対向するように配置されている。リタードローラ603は、用紙606を分離するためにトルクリミッタ(図示せず)によりトルク(分離力)が与えられている。リタードローラ603は、メインフレーム607に揺動可能に取り付けられたリタードフレーム603aに支持されており、スプリング603bによって給紙ローラ601に押圧されている。
図4は、メインフレーム607と、これに取り付けられている構成部品を示す斜視図である。リタードローラ603は、上述したリタードフレーム603a(図3)に取り付けられているが、このリタードローラ603の近傍には、媒体検知手段としての用紙センサ614が配置されている。用紙センサ614は、用紙積載板604上の用紙606の有無を判断するものであり、例えば、図示しないレバー部材とフォトカプラとを備えて構成される。
図5(A)および図5(B)は、ピックフレーム611をそれぞれ下方および上方から見た斜視図である。ピックフレーム611は、給紙ローラ601のシャフト601aとピックローラ602のシャフト(図示せず)を、それぞれ回転可能に支持している。給紙ローラ601のシャフト601aの回転軸は、上述した軸O1である。
給紙ローラ601のシャフト601aの一端部には、選択伝達手段としての給紙駆動ギア611dが固定されている。給紙駆動ギア611dは、ワンウェイクラッチ機構を内蔵している。給紙駆動ギア611dが、図5(A)に示す矢印a方向に回転すると、ワンウェイクラッチ機構がロックし、シャフト601aが矢印a方向に回転する。すなわち、給紙ローラ601が矢印a方向に回転する。一方、給紙駆動ギア611dが、図5(A)に示す矢印a’方向に回転すると、ワンウェイクラッチ機構が空転し、回転はシャフト601aに伝達されない。すなわち、給紙ローラ601は回転しない。
ピックローラ602には、ピックフレーム611内に設けられたギア列(図示せず)を介して給紙ローラ601の回転が伝達され、給紙ローラ601と同一方向に回転する。従って、給紙駆動ギア611dが図5(A)に示す矢印a方向に回転すると、給紙ローラ601とピックローラ602が共に矢印a方向に回転する。一方、給紙駆動ギア611dが図5(A)に示す矢印a’方向に回転すると、給紙ローラ601とピックローラ602は回転しない。
図5(B)に示すように、ピックフレーム611の両端には、ピックローラ602が用紙606に当接する方向(矢印bで示す)に、ピックフレーム611を揺動させるよう付勢するトーションスプリング611e,611fが配置されている。トーションスプリング611e,611fは、各一端がメインフレーム607の所定箇所に当接することで、ピックフレーム611を付勢している。
図5(C)は、ピックフレーム611のX方向の一端部を拡大して示す斜視図である。ピックフレーム611の給紙駆動ギア611d側の端部には、第1の伝達切替手段としての爪部611gが形成されている。ピックフレーム611の爪部611gは、駆動力伝達部612の昇降ラチェット612f(後述)の外周に形成されたラチェット爪wに係合する。爪部611gは、また、用紙積載板604の上昇に伴ってピックフレーム611が上昇したときには、昇降ラチェット612fの外周のラチェット爪wから離間する。この点については後述する。
図6は、揺動シャフト605を示す斜視図である。図7および図8は、揺動シャフト605と、アーム609L,609Rと、駆動力伝達部612とを示す斜視図である。図6に示すように、揺動シャフト605は、用紙積載板604の底部に沿ってX方向に亘って延在するシャフト605aと、シャフト605aの両端に、互いに外歯部(歯)の位相を合わせて固定された遊星ギア部としての一対のギア605bとで構成されている。
図7および図8に示すように、アーム609L,609Rは、駆動力伝達部612のリフトアップギア612k(後述)と同心円状の円弧状ガイド孔609bをそれぞれ有している。アーム609L,609Rの円弧状ガイド孔609bには、シャフト605aの両端部がそれぞれ摺動可能に係合している。これにより、揺動シャフト605の揺動が案内される。
また、アーム609L,609Rは、同じく駆動力伝達部612のリフトアップギア612k(後述)と同心円状に形成された、内歯部としての内歯ラック609aをそれぞれ有している。アーム609L,609Rの内歯ラック609aには、シャフト605aのギア605bが係合する。ギア605bは、リフトアップギア612kおよび内歯ラック609aの両方に噛み合って自転および公転し、これに伴って揺動シャフト605がガイド孔609bに沿って略上下に揺動する。
図9(A)は、メインフレーム607とMPTカバー613とを示す斜視図である。図9(B)は、図9(A)において二点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す図である。MPTカバー613は、上述したようにメインフレーム607に対して揺動可能であり、使用しない場合には、図9(A)の矢印方向に揺動させて、メインフレーム607内に格納することができる。MPTカバー613の揺動に伴い、アーム609L,609Rも軸O2(図3)を中心としてMPTカバー613と同方向に揺動するが、アーム609L,609Rの揺動に伴って、図9(B)に示すように、アーム609L,609Rの円弧状ガイド孔609bに支持された揺動シャフト605は、駆動力伝達部612のリフトアップギア612kから離間する。
図10(A)は、駆動力伝達部612を示す斜視図である。駆動力伝達部612は、X方向の両端に、各ギアを回転可能に支持する複数のポストが形成されたブラケット612aと、反対側のブラケット(図10では省略)とを有している。ブラケット612aには、減速ギア612b、アイドルギア612c、ワンウェイギア612d、移動体としてのカムギア612m、および、検知手段としてのフォトカプラ612nが取り付けられている。これらの詳細な構成については、後述する。
図10(B)は、駆動力伝達部612の駆動力伝達経路を示す図である。説明の便宜上、図10(B)には、給紙ローラ601に駆動を伝達する給紙駆動ギア611dも併せて示す。画像形成装置10の給紙モータ71の回転は、図示しないギア列を介して減速ギア612bに伝達される。減速ギア612bは、アイドルギア612cと噛み合っており、このアイドルギア612cは、ワンウェイギア612dと噛み合っている。給紙モータ71の回転は、また、図示しないギア列を介して、給紙駆動ギア611dにも伝達される。
図10(B)に示す矢印h(実線)は、用紙606を繰り出す際の各ギアの回転方向を示す。給紙駆動ギア611dが矢印hの方向に回転すると、給紙駆動ギア611dが内蔵するワンウェイクラッチ機構がロックし(すなわちシャフト601aに駆動力を伝達し)、給紙ローラ601およびピックローラ602が回転する。また、ワンウェイギア612dも、ドリブンギア612e(後述)との間に設けられたワンウェイクラッチ機構がロックし、揺動シャフト605に駆動力を伝達する。
図10(B)に示す矢印h’(破線)は、上記矢印hで示した回転方向とは反転の方向である。給紙駆動ギア611dが矢印h’の方向に回転すると、内蔵するワンウェイクラッチ機構が空転し、給紙ローラ601およびピックローラ602は回転しない。また、ワンウェイギア612dも、ドリブンギア612eとの間に設けられたワンウェイクラッチ機構が空転し、揺動シャフト605には駆動力を伝達しない。
カムギア612mには、給紙モータ71の回転が、図示しないワンウェイクラッチ機構を備えたギア列を介して伝達される。但し、カムギア612mは、当該ワンウェイクラッチ機構の作用により、矢印h’の方向にのみ回転する。従って、用紙606の繰り出し動作中は、カムギア612mは回転しない。
図11(A)および(B)は、図10(B)の駆動力伝達部612のギア部を示す分解斜視図および断面図である。ワンウェイギア612dと同軸に、当該ワンウェイギア612d側から順に(X方向に)、ドリブンギア612e、昇降ラチェット612f、遊星ギア612g(および遊星ギアホルダ612h)、ロックギア612i、リセットラチェット612j、遊星ギア612p(および遊星ギアホルダ612q)およびリフトアップギア612kが組み合わせられている。なお、図11では図示を省略するが、これらのギアは、共通のシャフト619(図10(A)参照)に装着されている。
ドリブンギア612eは、ワンウェイギア612dに隣接して配置され、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転したときにだけ当該ワンウェイギア612dの回転に追従するよう、ワンウェイギア612dとの間にワンウェイクラッチ機構を備えている。ドリブンギア612eは、後述する遊星ギア612gに係合する外歯部を有している。ワンウェイギア612dおよびドリブンギア612eは、ワンウェイクラッチ機構を備えた太陽ギア(第3の太陽ギア)を構成する。
なお、ワンウェイクラッチ機構については、詳細説明は省略するが、例えば、コイルスプリングを使用した機構や、ニードルベアリングを使用した機構などを用いることができる。なお、コイルスプリングを使用する場合には、例えば、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転したときに、当該コイルスプリングがワンウェイギア612dとドリブンギア612eの軸部にきつく巻き付くことでドリブンギア612eに回転を伝達するように構成することができる。
昇降ラチェット612fは、リング形状を有し、その外周に、複数のラチェット爪w(被係合部)を有している。また、昇降ラチェット612fの内側には、ワンウェイギア612dの側から、ドリブンギア612eが挿入されている。昇降ラチェット612fの内側には、また、ドリブンギア612eの外側に位置するように、第3の遊星ギアとしての3個の遊星ギア612gが挿入されている。昇降ラチェット612fには、また、遊星ギア612gを回転可能に保持するリング状の遊星ギアホルダ612hが取り付けられている。また、遊星ギア612gは、昇降ラチェット612fの内側に挿入されたドリブンギア612eの外歯部と噛み合っている。昇降ラチェット612fと遊星ギアホルダ612hは、遊星ギア612gを、ドリブンギア612e(第3の太陽ギア)の外歯部に沿って揺動可能に保持する、第2のキャリアを構成している。
第2の太陽ギアとしてのロックギア612iは、大径と小径のリング状部材をX方向に組み合わせたものであり、大径部がワンウェイギア612d側に位置している。ロックギア612iの大径部の内周面には、遊星ギア612gと噛み合う内歯部bが形成され、ロックギア612iの小径部の外周面には、遊星ギア612pと噛み合う外歯部eが形成されている。また、ロックギア612iは、矢印g方向のみに回転可能なワンウェイクラッチ機構を介して、当該ロックギア612iの内側に挿入されるシャフト619(図10(A)参照)に固定されている。このシャフト619は、ブラケット612aに対して固定されていて回転しない。すなわち、ロックギア612iは、矢印g方向にのみ回転する。
リセットラチェット612jは、リング形状を有し、その外周に、複数のラチェット爪v(被係合部)を備えている。また、リセットラチェット612jの内側には、ロックギア612iの小径部が挿入される。
第2の遊星ギアとしての3個の遊星ギア612pは、遊星ギアホルダ612qに回転可能に支持されており、この遊星ギアホルダ612qは、リセットラチェット612jに固定されている。遊星ギア612pは、(リセットラチェット612jの内側に挿入される)ロックギア612iの小径部に形成された外歯部eと噛み合っている。リセットラチェット612jと遊星ギアホルダ612qは、ロックギア612i(第2の太陽ギア)の外歯部eに沿って揺動可能に保持する、第1のキャリアを構成している。
第1の太陽ギアとしてのリフトアップギア612kは、ワンウェイギア612d側の部分の内周面に、遊星ギア612pと噛み合う内歯部cを有している。また、リフトアップギア612kは、ワンウェイギア612d側とは反対側の部分の外周面に、上記の揺動シャフト605に設けられたギア605b(第1の遊星ギア)に噛み合う外歯部dを有している。
なお、ここでは、遊星ギア612gおよび遊星ギア612pを、それぞれ3個ずつ設けているが、駆動力を伝達することができれば、4個以上、もしくは1個または2個でも良い。
図12(A)および(B)は、リセットラチェット612jの回転をロックするための機構を示す正面図および斜視図である。上述したカムギア612mは、X方向を軸方向として配置され、リセットラチェット612jに隣接するカム部iを有している。また、カムギア612mは、図示しないギア列に係合する外歯部rを有しており、上述したように給紙モータ71の回転(図10(B)のh’方向)が伝達される。
このカムギア612mに隣接して、カムギア612mのカム部iに係合するカム部jを有する、第2の伝達切替手段としてのロックピース612oがX方向に移動可能に設けられている。ロックピース612oは、さらに、リセットラチェット612jの外周のラチェット爪vに係合する爪部m(係合部)を有している。カムギア612mの回転により、ロックピース612oがX方向に移動すると、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jのラチェット爪vに係合し、また係合が解除される。
ロックピース612oの移動位置(X方向位置)を検知するため、ロックピース612oに隣接して、フォトカプラ612nが設けられている。ロックピース612oは、窓部kを有する遮光板sを有している。ロックピース612oの遮光板sがフォトカプラ612nの光路を遮っているときには、フォトカプラ612nの出力はHIGHとなり、ロックピース612oの窓部kがフォトカプラ612nの光路中にあるときには、フォトカプラ612nの出力はLOWとなる。ロックピース612oは、スプリング612rにより、X方向に、カムギア612mに向けて付勢される。
図12(A)および(B)に示した状態では、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jのラチェット爪vに係合しており、これによりリセットラチェット612jの回転をロックしている。このとき、ロックピース612oの遮光板sがフォトカプラ612nの光路を遮っているため、フォトカプラ612nの出力はHIGHとなる。
この状態からカムギア612mが回転すると、スプリング612rを圧縮するようにロックピース612oが押し込まれ、図12(C)および(D)に示すように、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jのラチェット爪vから離間する。すなわち、リセットラチェット612jの回転ロックが解除され、回転が可能となる。このとき、ロックピース612oの窓部kがフォトカプラ612nの光路中にあるため、フォトカプラ612nの出力はLOWとなる。
図13に、カムギア612mの回転角度と、フォトカプラ612nの出力(HIGH/LOW)と、リセットラチェット612jの回転ロック状態とを示すタイミングチャートである。なお、このタイミングチャートは、あくまでも一例であり、本実施の形態が当該タイミングチャートに限定されないことは言うまでもない。
図13に示すように、カムギア612mが所定の回転角度の範囲内(例えば0度から130度)にあるときには、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jのラチェット爪vに係合し、リセットラチェット612jの回転をロックする。また、カムギア612mが、他の回転角度の範囲内(例えば130度から360度)にあるときには、ロックピース612oの爪部mが、リセットラチェット612jのラチェット爪vから離間し、リセットラチェット612mの回転を可能にする。
図14および図15は、駆動力伝達部612の各部における駆動力の伝達状態を説明するための図である。図14(A)は、ロックピース612oがリセットラチェット612jに係合して回転をロックし、ピックフレーム611の爪部611gが昇降ラチェット612fのラチェット爪wに係合して回転をロックしている状態である。なお、図14等では、ロックピース612oとピックフレーム611の爪部611gは、形状を簡略化して示す。
図14(A)に示した状態で、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転すると、ワンウェイギア612dとドリブンギア612eとの間のワンウェイクラッチの作用により、ドリブンギア612eも矢印h方向に回転する。昇降ラチェット612fは、ピックフレーム611の爪部611gにより回転がロックされているため、昇降ラチェット612fに遊星ギアホルダ612hを介して取り付けられた遊星ギア612gは、公転せず、それぞれ矢印方向に自転する。これに伴い、遊星ギア612gに噛み合う内歯部bを有するロックギア612iは、矢印方向に回転する。
このとき、リセットラチェット612oは、ロックピース612oにより回転がロックされているため、ロックギア612iの外歯部eに噛み合っている遊星ギア612pは、公転せず、それぞれ矢印方向に自転する。これに伴い、遊星ギア612pに噛み合っている内歯部cを有するリフトアップギア612kは、矢印方向に回転する。揺動シャフト605のギア605bは、リフトアップギア612kの外歯部dと、上述したアーム609Rの内歯ラック609aに噛み合っているため、リフトアップギア612kの回転に伴って矢印方向に自転しながら、反対方向に公転する。その結果、揺動シャフト605が上昇し、用紙積載板604を押し上げる。
図14(B)は、ロックピース612oがリセットラチェット612jに係合して回転をロックしているが、ピックフレーム611の爪部611gが昇降ラチェット612fから離間して回転ロックを解除している状態を示す。
図14(B)に示した状態で、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転すると、ドリブンギア612eも矢印h方向に回転し、これによりドリブンギア612eに噛み合っている遊星ギア612gは矢印方向に自転する。一方、昇降ラチェット612fは回転ロックが解除されているため、昇降ラチェット612fに遊星ギアホルダ612hを介して取り付けられた遊星ギア612gは公転も可能である。また、遊星ギア612gに内周歯bが噛み合っているロックギア612iは、ワンウェイクラッチ機構により破線矢印方向には回転しない。そのため、遊星ギア612gは、自転方向と反対方向に公転し、昇降ラチェット612fも同方向に回転する。この場合には、ロックギア612iが回転しないため、遊星ギア612pおよびリフトアップギア612kも回転しない。すなわち、揺動シャフト605は動作しない。
図15は、ロックピース612oがリセットラチェット612jから離間して回転ロックを解除しているが、ピックフレーム611の爪部611gが昇降ラチェット612fに係合して回転をロックしている状態を示す。この状態で、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転すると、ドリブンギア612eも矢印h方向に回転する。昇降ラチェット612fは回転がロックされているため、昇降ラチェット612fに遊星ギアホルダ612hを介して取り付けられた遊星ギア612gは、公転せず、それぞれ矢印方向に自転する。遊星ギア612gの自転に伴い、遊星ギア612gに内周歯bで噛み合っているロックギア612iは、遊星ギア612gと同方向(矢印方向)に回転する。ロックギア612iの回転に伴い、ロックギア612iの外周歯eに係合する遊星ギア612pも矢印方向に自転する。しかしながら、リセットラチェット612jの回転ロックは解除されているため、遊星ギア612pの回転に要する負荷トルクは、揺動シャフト605が噛み合っているリフトアッブギア612kの負荷トルクよりも軽く、その結果、遊星ギア612pは矢印方向に自転しながら、反対方向に公転する。そのため、リフトアップギア612kは回転せず、揺動シャフト605は動作しない。
図16(A)および(B)は、揺動シャフト605が上昇した位置にあり(用紙積載板604に用紙が積載されている場合も含む)、ワンウェイギア612dが回転駆動されていない場合を示す。
図16(A)は、ロックピース612oがリセットラチェット612jに係合して回転をロックしているが、ピックフレーム611の爪部611gが昇降ラチェット612fから離間して回転ロックを解除している状態を示す。この状態では、揺動シャフト605と用紙積載板604(図16では省略)および積載した用紙の重量のため、揺動シャフト605には下向きの力が加わる。そのため、揺動シャフト605を下降させる方向のトルクが、ギア605b、リフトアップギア612k、遊星ギア612p、遊星ギアホルダ612q、リセットラチェット612j、ロックギア612iに、それぞれ破線矢印方向に加わる。ここで、リセットラチェット612jは、ロックピース612oにより回転がロックされ(従って遊星ギア612pの公転もロックされ)、また、ロックギア612iはワンウェイクラッチ機構により破線矢印方向には回転しないため、ロックギア612iの外周歯eに噛み合っている遊星ギア612pは自転も公転もせず、遊星ギア612pと内歯部cで噛み合っているリフトアップギア612kも回転しない。従って、揺動シャフト605は下降しない。これは、昇降ラチェット612fの回転がピックフレーム611の爪部611gによりロックされていても同様である。
図16(B)は、ロックピース612oがリセットラチェット612jから離間して回転ロックを解除し、さらに、ピックフレーム611の爪部611gも昇降ラチェット612fから離間して回転ロックを解除している状態を示す。この状態では、揺動シャフト605と用紙積載板604(図16では省略)および積載した用紙の重量のため、揺動シャフト605には下向きの力が加わる。そのため、揺動シャフト605を下降させる方向のトルクが、ギア605b、リフトアップギア612k、遊星ギア612p、遊星ギアホルダ612q、リセットラチェット612j、ロックギア612iに、それぞれ矢印方向に加わる。ここで、ロックギア612iはワンウェイクラッチ機構により破線矢印方向には回転しないが、リセットラチェット612jは回転可能であるため、ロックギア612iの外周歯eに噛み合っている遊星ギア612pは、自転しながら公転する。これにより、遊星ギア612pと内周歯cで噛み合っているリフトアップギア612kも、同方向に回転し、揺動シャフト605は下降する。これは、昇降ラチェット612fの回転がピックフレーム611の爪部611gによりロックされていても同様である。
図17は、本実施の形態における画像形成装置10の制御系の要部を示すブロック図である。以下、図1および図17を参照しながら、画像形成装置10の制御系について説明する。
図17において、画像形成装置10の制御部62は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等によって構成される。この制御部62は、図示しない上位装置から印刷データおよび制御コマンドを受信し、画像形成装置10の全体のシーケンスを制御して印刷動作を行う。
制御部62には、操作部63およびセンサ群64から各種信号が入力される。操作部63は、画像形成装置の状態を表示するための表示パネル63bおよび画像形成装置に操作者からの指示を与えるための操作キー63a等を備えている。センサ群64は、画像形成装置の動作状態を監視するための各種センサ、例えば、用紙の搬送経路における位置を検知する用紙センサ301,303,506、書込みセンサ305、温湿度センサ、濃度センサ、弛みセンサ、用紙残量センサ205、上昇検知部201、およびフォトカプラ612n等を含む。
制御部62は、画像形成制御部66、給紙搬送制御部67、ベルト駆動制御部69および定着制御部70をそれぞれ制御する。
画像形成制御部66は、制御部62の指示により、画像形成部400の各動作を制御する。例えば、プロセスユニット430K〜430Cの各感光体ドラム431の回転動作や露光装置433の露光動作等を制御する。
給紙搬送制御部67は、給紙モータ72を駆動制御し、用紙繰り出し部200(ピックアップローラ202、フィードローラ203およびリタードローラ204)による用紙101の繰り出し動作を制御する。また、上位装置および操作部63よりMPT600からの給紙を指示された場合は、制御部62の指示により、給紙搬送制御部67は、給紙モータ71を駆動制御し、MPT600(給紙ローラ601、ピックローラ602およびリタードローラ603)による用紙606の繰り出し動作を制御する。給紙搬送制御部67は、また、搬送モータ73,74,75をそれぞれ駆動制御し、搬送ローラ対302、搬送ローラ対304および排出ローラ対504a,504b,504cによる用紙101(または用紙606)の搬送を制御する。なお、給紙モータ71は、画像形成装置10の本体11内に設けられているが、これに限定されるものではなく、MPT600に設けてもよい。
ベルト駆動制御部69は、制御部62の指示により、ベルト駆動モータ76を駆動制御し、転写ベルト461を駆動するドライブローラ462の回転を制御する。定着制御部70は、定着部500のアッパローラ501、ロワローラ502の回転駆動源、およびハロゲンランプ503a,503bの電源等を含み、制御部62の指示により、これらの動作を制御する。
ここでは、MPT600と、その媒体606を画像形成部400に向けて搬送するための各構成要素(給紙モータ71、給紙モータ72、搬送ローラ対304)とにより、媒体供給装置が構成されている。
次に、本実施の形態におけるMPT600の動作について説明する。図18(A)および(B)は、MPT600の用紙積載板604の動作を示す図である。図19は、本実施の形態におけるMPT600の動作を示すフローチャートである。
用紙積載板604に用紙606が積載されていないスタンバイ状態(ステップS101)では、ロックピース612oはリセットラチェット612jから離間している。また、用紙積載板604は上昇していないため、ピックフレーム611は下降位置にあり、爪部611gは昇降ラチェット612fに係合している(図15参照)。
制御部62は、上位装置から印刷データおよび制御コマンドを受信すると(ステップS102)、まず、用紙センサ614(図4)により用紙積載板604上の用紙606の有無を判断する(ステップS103a)。用紙センサ614により用紙606が検知されない場合には(ステップS103でNO)、表示パネル63bに用紙のセットを促すアラーム等を表示する(ステップS103b)。一方、用紙センサ614により用紙606が検知された場合には、給紙モータ71を反転させる(ステップS104a)。
なお、給紙モータ71の回転方向については、ワンウェイギア612dを、図10(B)に示した矢印h方向(図10(B))に回転させる方向を「正転」とし、ワンウェイギア612dを矢印h’方向に回転させる方向「反転」とする。
給紙モータ71の上記反転により、図12(A)、(B)に示すように、カムギア612mが回転してロックピース612oをX方向に移動させ、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jに係合し、リセットラチェット612jの回転をロックする。これにより、ワンウェイギア612dの正転(矢印h方向の回転)が揺動シャフト605に伝達可能な状態(図14(A))となる。また、制御部62は、フォトカプラ612nの出力がLOWからHIGHに変化したことを検知すると(ステップS104b)、給紙搬送制御部67に指示し、給紙モータ71を停止する(ステップS104c)。
次に、制御部62は、給紙搬送制御部67に指示し、給紙モータ71を正転させる(ステップS105a)。給紙モータ71の正転により、給紙駆動ギア611dを介してピックローラ602が回転すると共に、図14(A)を参照して説明したように、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転し、揺動シャフト605が上昇する。揺動シャフト605の上昇に伴って、用紙606を積載した用紙積載板604が上昇し、用紙積載板604に積載された一番上の用紙606が、回転しているピックローラ602に当接して、給紙ローラ601に向けて繰り出される。
用紙積載板604がさらに上昇すると、積載された用紙606がピックローラ602を押し上げることにより、ピックフレーム611が上方に揺動する。ピックフレーム611の上方への揺動に伴い、図18(B)に示すように、ピックフレーム611の爪部611gが昇降ラチェット612fから離間し、昇降ラチェット612fの回転ロックを解除する。これにより、図14(B)を参照して説明したように、昇降ラチェット612fが空転し、揺動シャフト605の上昇、すなわち用紙積載板604の上昇は停止する。
用紙積載板604から用紙606が繰り出されて積載枚数が減少すると、図18(A)に示すように、ピックローラ602が用紙606による押し上げを受けなくなるため、ピックフレーム611が下方へ揺動し、ピックフレーム611の爪部611gが昇降ラチェット612fに再び係合する。これにより、ワンウェイギア612dの回転が揺動シャフト605に伝達される状態となり(図14(A))、揺動シャフト605が再び上昇して用紙積載板604を押し上げる。
制御部62は、繰り出し中の用紙606の後端がピックローラ602を通過する前の所定のタイミングで、給紙モータ71の駆動を停止し、次の用紙の繰り出し動作に備える(ステップS105b)。当該用紙606の前端部分は、既に搬送ローラ対304に到達しているため、これ以降は、搬送ローラ対304、転写ベルト461等により、当該用紙606が搬送される。給紙モータ71を停止している間は、ワンウェイギア612dの回転も停止するため、用紙積載板604は上昇しない。但し、図16(A)に示したように、ロックピース612oがリセットラチェット612jに係合しているため、揺動シャフト605は停止した位置を保持する。すなわち、用紙積載板604が下降することはない。
そののち、制御部62は、繰り出した用紙606の後端が、MPT600の下流側に配置された用紙センサ303を通過するのを待ち(ステップS106)、次のページの印刷指示の有無を判断する(ステップS107)。
次のページの印刷指示があった場合には(ステップS107でYES)、用紙センサ614により、用紙積載板604上に用紙606があるかどうか判断し(ステップS108)、用紙センサ614により用紙606が検知された場合には(ステップS108でYES)、上記のステップS105aからの処理を繰り返す。
用紙センサ614により用紙606が検知されなかった場合には(ステップS108でNO)、給紙モータ71を反転させる(ステップS109a)。給紙モータ71の反転により、カムギア612mが回転してロックピース612oをX方向に移動させ、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jから離間して回転ロックを解除する。リセットラチェット612jの回転ロックの解除により、図16(B)を参照して説明したように、用紙積載板604および揺動シャフト605は、自重により下降する。また、フォトカプラ612nの出力は、HIGHからLOWに変化する。制御部62は、フォトカプラ612nの出力の変化を検知すると(ステップS109b)、給紙搬送制御部67に指示し、給紙モータ71を停止する(ステップS109c)。そののち、表示パネル63bに用紙のセットを促すアラーム等のメッセージを表示し(ステップS110)、上述したステップS103aに進む。
また、上記のステップS107において、次のページの印刷指示がなかった場合には(ステップS107でNO)、用紙センサ614により用紙積載板604上の用紙606の有無を判断し(ステップS111)、用紙センサ614により用紙606が検知された場合には(ステップS111でYES)、上述したステップS102に進む。また、用紙614により用紙606が検知されなかった場合には(ステップS111でNO)、上述したステップS109a〜109cと同様に用紙積載板604を下降させたのち(ステップS112a〜S112c)、上述したステップS102に進む。
なお、ピックローラ602により繰り出された用紙606は、給紙ローラ601によりさらに搬送されたのち、図1を参照して説明した搬送ローラ対304により、画像形成部400に向けて搬送される。画像形成部400では、転写ベルト461が用紙606を吸着保持し、プロセスユニット430K,430Y,430M,430Cに沿って搬送する。各プロセスユニット430K,430Y,430M,430Cでは、感光体ドラム431に形成されたトナー像が、転写ベルト461上の用紙606に順次転写される。各色のトナー像が転写された用紙606は、定着部500に搬送され、トナー像が用紙に定着される。トナー像が定着された用紙606は、排出ローラ対504a〜504cにより、スタッカ部505に排出される。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、ピックアップローラ602を駆動する給紙モータ71を用いて用紙積載板604を昇降させることができるため、用紙積載板604を昇降させるための専用のモータを設ける必要がない。また、用紙積載板604の昇降動作に必要なセンサの数も最小限で済む。従って、低コストで小型の、消費電力の少ない媒体供給装置および画像形成装置を実現することができる。
第2の実施の形態.
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。第2の実施の形態は、ピックフレーム611の爪部611g(615g)の構成において、第1の実施の形態と異なる。
図20(A)は、第2の実施の形態におけるピックフレーム611のX方向一端部を示す斜視図である。第2の実施の形態におけるピックフレーム611には、その揺動軸である軸O1と同軸上に、レバー部材としてのレバー615が備えられている。レバー615は、円筒状の部材に、第1の実施の形態で説明した爪部611g(図5(C))と同形状の爪部615aを有している。また、レバー615は、軸O1を中心とした円弧をなすように形成された孔部615bを有しており、ピックフレーム611の端面には、孔部615bの内側に位置するようにポスト部611hが立設されている。
レバー615の内側には、図示しないシャフトが貫通している。このシャフトにより、レバー615は、軸O1を中心として揺動可能に支持されている。すなわち、図20(B)に示すように、レバー615をピックフレーム611に取り付けた状態で、ピックフレーム611とレバー615とは、軸O1を中心として、それぞれ別々に揺動可能となる。また、レバー615の孔部615bの内側には、ポスト部611hが挿入され、軸O1を中心としたレバー615の揺動範囲が規制される。
図21(A)〜(C)は、ピックフレーム611、レバー615および昇降ラチェット612fの関係を示す図である。図21(A)は、用紙積載板604上の用紙606(図21では省略)によりピックローラ602が押し上げられて、ピックフレーム611が上方に揺動している状態を示す。これは、上述した第1の実施の形態の図18(B)の状態に対応している。この状態で、レバー615は、自重により、ピックフレーム611に対して軸O1を中心として下方に揺動している。また、ポスト部611hは、レバー615の孔部615bの上面に当接しており、レバー615がさらに下方に揺動することを規制している。
図21(B)は、用紙積載板604上の用紙606の積載枚数が減少し、ピックフレーム611が下方に揺動した状態を示す。これは、上述した第1の実施の形態の図18(A)の状態に対応している。ポスト部611hは、孔部615bの上面に当接しているが、ピックフレーム611の下方への揺動に伴ってポスト部611hも下降するため、レバー615が下方に揺動し、レバー615の爪部615aが昇降ラチェット612fに係合する。この状態で、ピックフレーム611に保持されたピックローラ602は、積載枚数が減少した用紙606の上面に当接する。
図21(C)に示すように、図21(B)に示した状態からピックフレーム611がさらに下方に揺動した状態を示す。本実施の形態では、ピックフレーム611とレバー615とが別々に揺動可能であるため、レバー615の爪部615aが昇降ラチェット612fに係合した状態(従ってレバー615は下降していない)でも、ピックフレーム611はさらに下方に揺動することができる。なお、ポスト部611hは、孔部615bの上面から離間している。
上述した第1の実施形態では、図18(A)に示したように、ピックフレーム611の爪部611gが昇降ラチェット612fに係合している状態で、用紙積載板604が上昇して用紙606がピックローラ602に当接する。そのため、ピックローラ602を用紙606に当接させる付勢力が、ピックフレーム611の爪部611gにも加わり、ピックローラ602と用紙606の当接力が低下し、あるいは当接状態が不均一なる可能性がある。
これに対し、本実施の形態では、爪部615aを有するレバー615と、ピックローラ602を保持するピックフレーム611とを別々に揺動可能としているため、ピックローラ602を用紙606に当接させる付勢力が爪部615aに加わらないようにしている。
本実施の形態における画像形成装置10の動作は、第1の実施の形態の動作と同様である。但し、図21(C)を参照して説明したように、レバー615の爪部615aが昇降ラチェット612fに係合していても、ピックフレーム611はさらに下方に揺動可能であり、ピックローラ602を用紙606に当接させる付勢力がレバー615の爪部615aに加わらない点が異なる。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態の効果に加えて、ピックローラ602と用紙606との当接状態をより均一にすることができるため、用紙606のスキューや重送をより確実に防止することができる。
第3の実施の形態.
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、上述した第1および第2の実施の形態と同一の構成要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。第3の実施の形態は、リフトアップギア612kの構成において、第1の実施の形態と異なる。
図22は、第3の実施の形態におけるリフトアップギアを示す図である。第3の実施の形態におけるリフトアップギア(第1の太陽ギア)は、第1および第2実施の形態で説明したリフトアップギア612kに代わるものであり、図22(A)に示す第1の部材としてのリフトギア616と、図22(B)に示す第2の部材としての内歯ギア617とを組み合わせて構成されている。リフトアップギア612kは、揺動シャフト605のギア605b(図11(A))に係合する外歯部dを有している。内歯ギア617は、遊星ギア(図11(A))に係合する内歯部c(図23参照)を有している。
リフトギア616および内歯ギア617は、いずれも略円盤状の部材であり、その回転軸の方向に互いに対向するように配置されている。リフトギア616は、内歯ギア617と対向する面に、複数の凸部616aおよび複数の凹部616bを有している。凸部616aおよび凹部616bは、リフトギア616の円周方向に、等間隔に交互に形成されている。また、内歯ギア617は、リフトギア616と対向する面に、複数の凹部617aおよび複数の凸部617bを有している。凹部617aおよび凸部617bは、内歯ギア617の円周方向に、等間隔に交互に形成されている。
図23(A)は、リフトギア616および内歯ギア617の支持構造を示す断面図である。駆動力伝達部612のブラケット612aには、リフトギア616および内歯ギア617を回転可能に支持するシャフト619が固定されている。シャフト619は、リフトギア616および内歯ギア617の中央部に形成された孔部に挿通されている。また、シャフト619には、内歯ギア617の軸方向位置を規制する止め輪619aが取り付けられている。ブラケット612aとリフトギア616との間には、付勢手段としてのスプリング618が設けられている。
リフトギア616は、スプリング618によって内歯ギア617側に付勢されている。図23(A)に示すように、リフトギア616の凸部616aおよび凹部616bが、内歯ギア617の凹部617aおよび凸部617bにそれぞれ係合した状態で、スプリング618は付勢力Pを生じる。一方、図23(B)に示すように、リフトギア616の凸部616aおよび凹部616bが、内歯ギア617の凸部617bおよび凹部617aにそれぞれ係合した状態、すなわち凸部同士、凹部同士が係合した状態で、スプリング618は付勢力P’(>P)を生じる。
用紙積載板604の通常の昇降動作では、リフトギア616および内歯ギア617の互いの凹凸が噛み合った状態(図23(A))で、リフトギア616と内歯ギア617が一体となって回転する。
図24(A)は、リフトギア616の凸部616aおよび凹部616bと、内歯ギア617の凹部617aおよび凸部617bとの当接状態を示す断面図である。図24(B)は、リフトギア616と内歯ギア617との当接部でスリップを生じた場合を示す断面図である。リフトギア616が用紙606を積載した用紙積載板604を上昇させるために必要な最大トルクをTとする。また、リフトギア616および内歯ギア617の間に、図24(B)に示すようなスリップが生じる際のトルクをMとする。このとき、スプリング618の上述した付勢力P’は、M>Tとなるように設定される。すなわち、用紙積載板604を上昇させるために必要な最大トルクTよりも大きなトルクMが加わった場合に、リフトギア616と内歯ギア617との間にスリップが生じる。すなわち、リフトギア616、内歯ギア617およびスプリング618は、トルククラッチ機構を構成している。
ここで、スプリング618の付勢力P’の算出方法を説明する。まず、リフトギア616および内歯ギア617の互いの凹凸が噛み合う環状領域の内半径をR1とし、外半径をR2とする(図22(B)参照)。また、リフトギア616および内歯ギア617の凹凸のテーパ角度をθとする。また、リフトギア616と内歯ギア617との静止摩擦係数をμとする。これらR1,R2,θおよびμを用いると、リフトギア616と内歯ギア617との間で摩擦を生じる円の等価半径Rは、
R=2/3・(R23−R13)/(R22−R12)
と表わされる。
また、リフトギア616と内歯ギア617との当接部で生じるせん断力Fは、
F=M/R
と表わされる。
また、リフトギア616と内歯ギア617との間にスリップが生じるトルクMは、
M=P’・R・(sinθ−μcosθ)/(cosθ−μsinθ)
と表わされる。
本実施の形態におけるMPT600の動作は、上述した第1の実施の形態と同様である。但し、本実施の形態では、設定トルクM以上のトルクがリフトギア616にかかった場合に、リフトギア616と内歯ギア617との間にスリップが生じ、リフトギア616は空転する。そのため、何らかの異常事態によりリフトギア616に大きなトルクが加わった場合、例えば、用紙積載板604が上昇している状態でオペレータが用紙積載板604を押し下げてしまった場合などにおいて、リフトギア616が空転することで、ギア等の構成部品の破損を防止することができる。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態の効果に加えて、設定以上のトルクが加わったときにリフトギア616が空転するよう構成したことにより、異常事態で大きなトルクが加わった場合の構成部品の破損を防止することができる。また、用紙積載板604が上昇した状態で、用紙積載板604を押し下げることができるため、例えば、用紙積載板604に間違った種類の用紙をセットした場合に、当該用紙を用紙積載板604から簡単に取り除くことができる。
なお、本実施の形態では、凹凸を有する略円盤状の部材(リフトギア616と内歯ギア617)同士を付勢させてトルクを発生させる例について説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、設定以上のトルクが加わったときにスリップを生じる構成であれば良い。例えばコイルスプリングを使用したトルクリミッタ機構や、摩擦板を使用したトルク発生機構を用いても良い。
第4の実施の形態.
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、その説明を省略する。第4の実施の形態は、ピックローラ602にクラッチ620を介して駆動力を伝達する点で、第1の実施の形態と異なる。
図25(A)は、第4の実施の形態におけるMPT600のピックフレーム611、駆動力伝達部612およびクラッチ620を示す斜視図である。図25(B)は、第4実施の形態における給紙モータ71からの動力伝達系統を示す図である。本実施の形態では、第1〜第3の実施の形態で用いていた給紙駆動ギア611dの代わりに、選択伝達手段としてのクラッチ620を用いている。
クラッチ620は、給紙ローラ601のシャフト601aの端部に取り付けられている。このクラッチ620は、例えば電磁クラッチであり、給紙モータ71から給紙ローラ601のシャフト601aへの駆動力の伝達を接続し、また解除するものである。駆動力伝達部612の各ギアの回転方向は、図25(B)に示すとおり、給紙ローラ601を回転させる際には矢印h方向であり、リセットラチェット612jの回転をロックし、または回転ロックを解除する際(すなわちカムギア612mを移動させる際)には矢印h’方向である。
図26は、本実施の形態における画像形成装置10の制御系を示すブロック図である。本実施の形態における画像形成装置10の制御系は、上述した第1の実施の形態(図17)とほぼ同様であるが、給紙搬送制御部67が、制御部62の指示に基づき、クラッチ620の動作を制御する点が異なる。
次に、本実施の形態における給紙装置の動作について説明する。図27は、本実施の形態における給紙装置の動作を示すフローチャートである。
用紙積載板604に用紙606が積載されていないスタンバイ状態(ステップS201)では、ロックピース612oはリセットラチェット612jから離間している。また、用紙積載板604は上昇していないため、ピックフレーム611は下降位置にあり、ピックフレーム611の爪部611gは昇降ラチェット612fに係合している(図15参照)。
制御部62は、上位装置から印刷データおよび制御コマンドを受信すると(ステップS202)、用紙センサ614により用紙積載板604上の用紙の有無を判断する(ステップS203a)。用紙センサ604により用紙606が検知されない場合には(ステップS203aでNO)、表示パネル63bに用紙のセットを促すアラーム等を表示する(ステップS203b)。一方、用紙センサ604により用紙606が検知された場合には、給紙モータ71を反転させる(ステップS204a)。
給紙モータ71の上記反転により、カムギア612mが回転してロックピース612oをX方向に移動させ、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jに係合し、リセットラチェット612jの回転をロックする。これにより、ワンウェイギア612dの正転(矢印h方向の回転)が揺動シャフト605に伝達可能な状態(図14(A))となる。また、制御部62は、フォトカプラ612nの出力がLOWからHIGHに変化したことを検知すると(ステップS204b)、給紙搬送制御部67に指示し、給紙モータ71を停止する(ステップS204c)。
次に、制御部62は、給紙搬送制御部67に指示し、給紙モータ71を正転させる(ステップS205)。この給紙モータ71の正転は、用紙積載板604が上昇して用紙606がピックローラ602に当接し、ピックフレーム611の爪部611g(あるいは、第2の実施の形態で説明したレバー615)による昇降ラチェット612fの回転ロックが解除されるまでの充分な期間行う。
給紙モータ71の正転により、図25(B)に示すように、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転し、揺動シャフト605が上昇する。揺動シャフト605の上昇に伴って、用紙606を積載した用紙積載板604が上昇し、用紙積載板604に積載された一番上の用紙606がピックローラ602に当接する。一方、クラッチ620にも矢印h方向の回転が伝達されるが、この時点では、クラッチ620は、駆動力を伝達しない状態にある。
給紙モータ71が正転を開始してから、用紙積載板604が上昇して用紙がピックローラ602に当接し、昇降ラチェット612fの回転ロックが解除されるまでの一定時間経過した後、制御部62は、給紙搬送制御部67に指示し、クラッチ620を接続する、すなわち、駆動力を伝達可能な状態とする(ステップS206a)。クラッチ620を接続することで、給紙ローラ71の回転(正転)が、給紙ローラ601とピックローラ602に伝達され、用紙606が繰り出される。
制御部62は、用紙606の後端がピックローラ602を通過する前の所定のタイミングで、給紙搬送制御部67に指示してクラッチ620を解除、すなわち駆動力を伝達しない状態とし(ステップS206b)、次の用紙の繰り出しに備える。
そののち、制御部62は、繰り出した用紙606の後端が、MPT600の下流側に配置された用紙センサ303を通過するのを待ち(ステップS207)、次のページの印刷指示の有無を判断する(ステップS208)。次のページの印刷指示があった場合には(ステップS208でYES)、用紙センサ614により、用紙積載板604上に用紙606があるかどうか判断し(ステップS209)、用紙センサ614により用紙606が検知された場合には(ステップS209でYES)、上記のステップS206aからの処理を繰り返す。
この場合、給紙モータ71は正転を続けているため、ワンウェイギア612dは矢印h方向に回転し続けている。従って、用紙積載板604上の用紙606の積載枚数が減少した場合には、第1の実施の形態で説明したように、用紙積載板604は積載枚数の減少に応じて上昇する。
一方、ステップS209において用紙センサ614により用紙606が検知されなかった場合には(ステップS209でNO)、給紙モータ71を停止させた後(ステップS210)、反転させる(ステップS211a)。給紙モータ71の反転により、カムギア612mが回転してロックピース612oをX方向に移動させ、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jから離間して回転ロックを解除する。リセットラチェット612jの回転ロックの解除により、揺動シャフト605および用紙積載板604は自重により下降する。また、フォトカプラ612nの出力は、HIGHからLOWに変化する。制御部62は、フォトカプラ612nの出力の変化を検知すると(ステップS211b)、給紙搬送制御部67に指示し、給紙モータ71を停止する(ステップS211c)。そののち、表示パネル63bに用紙セットを促すアラーム等を表示し(ステップS212)、上述したステップS203aに進む。
また、上記のステップS208において、次のページの印刷指示がなかった場合には(ステップS208でNO)、給紙モータ71を停止し(ステップS213)、用紙センサ614により用紙積載板604上の用紙606の有無を判断する(ステップS214)。用紙センサ614により用紙606が検知された場合には(ステップS214でYES)、上述したステップS202に進む。また、用紙センサ614により用紙606が検知されなかった場合には(ステップS214でNO)、上述したステップS211a〜211cと同様に用紙積載板604を下降させたのち(ステップS215a〜S215c)、上述したステップS202に進む。
上述した第1乃至第3の実施の形態では、ピックローラ602による用紙606の繰り出し動作中に、用紙積載板604の上昇動作が行われるため、ピックローラ602が用紙606を繰り出している最中に用紙積載板604が上昇する可能性がある。これに対し、この第4の実施の形態では、用紙606の繰り出しは、クラッチ620の接続時(ステップS206a)に行われ、それ以外は、用紙積載板604の上昇動作のみが行われる。用紙積載板604上の用紙残量が減少するのは、用紙606がピックローラ602を通過した時点であるため、用紙積載板604の上昇も、用紙がピックローラ602を通過した時点(ステップS207)で行われることになる。
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した効果に加えて、用紙606の繰り出し動作と、用紙積載板604の上昇のタイミングとを分けることにより、用紙の重送やジャムの発生を確実に防止することができる。
なお、本実施の形態では、クラッチ620を使用した例について説明したが、これに限ったものではなく、ピックローラ602等の繰り出し機構への駆動力の伝達状態を切り替えるものであれば良く、例えばプランジャソレノイドを使用しても良い。
第5の実施の形態.
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第1〜第4の実施の形態と同一の構成要素には、同一の符号を付与し、その説明を省略する。第5の実施の形態は、ワンウェイギア612dを搬送モータ74の駆動力によって駆動する点において、第1の実施の形態と異なる。
図28は、第5の実施の形態における駆動力の伝達経路を示す図である。この第5の実施の形態では、用紙積載板604の昇降は、画像形成装置10の本体11に配設された搬送ローラ対304等を駆動する搬送モータ74(図17参照)の駆動力を用いて行われる。
搬送ローラ対304には、図示しないワンウェイクラッチ機構が内蔵されており、搬送モータ74が正転した場合には、ワンウェイクラッチ機構が作動し、搬送ローラ対304が矢印h方向(実線)に回転して用紙を搬送する。一方、搬送モータ74が反転した場合には、ワンウェイクラッチ機構が空転し、搬送ローラ対304は回転しない。
また、第1〜第3の実施の形態で説明したように、給紙ローラ601のシャフト601aには、ワンウェイクラッチ機構を内蔵した給紙駆動ギア611dが取り付けられており、この給紙駆動ギア611dに、給紙モータ71からの駆動力が伝達される。給紙駆動ギア611dの構成および作用は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
また、第1の実施の形態で説明したように、ワンウェイギア612dは、矢印h方向(実線)に回転した場合には、ドライブギア612e(図14(A))に回転を伝達し、矢印h’方向に回転した場合には、ドライブギア612eに回転を伝達しない。また、カムギア612nは、図示しないワンウェイクラッチ機構により、矢印h’方向(破線)にのみ回転する。
次に、この第5の実施の形態におけるMPT600の動作について説明する。図29は、第5の実施の形態におけるMPT600の動作を示すフローチャートである。用紙積載板604に用紙606が積載されていないスタンバイ状態(ステップS301)では、ロックピース612oはリセットラチェット612jから離間している。また、用紙積載板604は上昇していないため、ピックフレーム611は下降位置にあり、爪部611gは昇降ラチェット612fに係合している(図15参照)。
制御部62は、上位装置から印刷データおよび制御コマンドを受信すると(ステップS302)、まず、用紙センサ614により用紙積載板604上の用紙の有無を判断する(ステップS303a)。用紙センサ614により用紙606が検知されない場合には(ステップS303aでNO)、表示パネル63bに用紙のセットを促すアラーム等のメッセージを表示する(ステップS303b)。一方、用紙センサ614により用紙606が検知された場合には、搬送モータ74を反転させる(ステップS304a)。
搬送モータ74の上記反転により、カムギア612mが回転してロックピース612oをX方向に移動させ、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jに係合し、リセットラチェット612jの回転をロックする。これにより、ワンウェイギア612dの正転(矢印h方向の回転)が揺動シャフト605に伝達可能な状態(図14(A))となる。また、制御部62は、フォトカプラ612nの出力がLOWからHIGHに変化したことを検知すると(ステップS304b)、給紙搬送制御部67に指示し、搬送モータ74を停止する(ステップS304c)。
次に、制御部62は、給紙搬送制御部67に指示し、搬送モータ74を正転させる(ステップS304d)。搬送モータ74の正転により、ワンウェイギア612dが矢印h方向に回転し、揺動シャフト605が上昇する。揺動シャフト605の上昇に伴って、用紙606を積載した用紙積載板604が上昇する。搬送モータ74を、用紙積載板604上の用紙がピックローラ602に当接して昇降ラチェット612fの回転ロックが解除されるまで正転させたのち、制御部62は、搬送モータ74を停止する(ステップS304e)。
次に、制御部62は、給紙搬送制御部67に指示し、給紙モータ71を正転させる(ステップS305a)。給紙モータ71の正転により、給紙駆動ギア611dを介してピックローラ602と給紙ローラ601が回転し、用紙積載板604上の用紙606が繰り出される。繰り出された用紙606が用紙センサ303に検知されると(ステップS305b)、用紙606の先端は搬送ローラ対304に到達していることになるが、給紙モータ71が正転を続けているため、用紙606は、回転していない搬送ローラ対304の間に押し込まれる。この動作により、用紙606にスキュー(斜行)が生じていても、用紙606の先端が搬送ローラ対304と平行になり、用紙606のスキューが矯正される。
次に、制御部62は、給紙搬送制御部67に指示し、搬送モータ74を正転させる(ステップS305c)。これにより、一対の搬送ローラ対304は、用紙606を挟み込んだ状態で搬送する。制御部62は、用紙606がピックローラ602を通過する前の所定のタイミングで、給紙モータ71の正転を停止して、次の印刷指示に備える(ステップS305d)。
なお、当該ステップS305eにおいて給紙モータ71を停止した時点で、搬送モータ74は正転を続けているため、第1の実施の形態で説明したように、用紙積載板604は、積載枚数の減少に伴って上昇する。
制御部62は、繰り出した用紙が、MPT600の下流側に配置された用紙センサ303を通過するのを待ち(ステップS305e)、用紙606の後端が用紙センサ303を通過して搬送ローラ対304を完全に通過した時点で、搬送モータ74を停止する(ステップS305f)。
制御部62は、次のページの印刷指示の有無を判断し(ステップS306)、次のページの印刷指示があった場合には(ステップS306でYES)、用紙センサ614により、用紙積載板604上に用紙があるかどうか判断し(ステップS307)、用紙センサ614により用紙が検知された場合には(ステップS307でYES)、上記のステップS305aからの処理を繰り返す。
用紙センサ614により用紙606が検知されなかった場合には(ステップS307でNO)、搬送モータ74を反転させる(ステップS308a)。搬送モータ74の反転により、カムギア612mが回転してロックピース612oをX方向に移動させ、ロックピース612oの爪部mがリセットラチェット612jから離間して回転ロックを解除する。リセットラチェット612jの回転ロックの解除により、揺動シャフト605および用紙積載板604は自重により下降する。また、フォトカプラ612nの出力は、HIGHからLOWに変化する。制御部62は、フォトカプラ612nの出力の変化を検知すると(ステップS308b)、給紙搬送制御部67に指示し、搬送モータ74を停止する(ステップS308c)。そののち、表示パネル63bに用紙のセットを促すアラーム等を表示し(ステップS309)、上述したステップS303aに進む。
また、上記のステップS306において、次のページの印刷指示がなかった場合には(ステップS306でNO)、用紙センサ614により用紙積載板604上の用紙の有無を判断し(ステップS310)、用紙センサ614により用紙606が検知された場合には(ステップS310でYES)、上述したステップS302に進む。また、用紙センサ614により用紙606が検知されなかった場合には(ステップS310でNO)、上述したステップS308a〜308cと同様に用紙積載板604を下降させたのち(ステップS311a〜S311c)、上述したステップS302に進む。
上述した第4の実施の形態では、ピックローラ602等による用紙606の繰り出しのタイミングと、用紙積載板604の上昇のタイミングとを分けるためにクラッチ620を用いていた。これに対し、この第5の実施の形態では、搬送ローラ対304を駆動する搬送モータ74の駆動力を用いて用紙積載板604を昇降している。そのため、クラッチ620(図25)よりも安価なワンウェイクラッチギヤ(給紙駆動ギア611d)を用いて、用紙606の重送やジャムの発生を防止するという効果を達成することができる。
なお、この第5の実施の形態では、搬送ローラ対304を駆動する搬送モータ74の駆動源を利用して用紙積載板604を昇降させているが、用紙606の繰り出しや搬送中に駆動されるモータであれば、他のモータを用いても良い。例えば、図30に一例を示すように、転写ベルトユニット460の転写ベルト461を駆動するドライブローラ462を回転駆動するベルト駆動モータ76の駆動力を利用しても良い。
なお、上述した第1〜第5の実施の形態は、適宜、組み合わせることができることは言うまでもない。
また、上述した第1〜第5の実施の形態では、4つのプロセスユニットを用い、印刷媒体に直接トナー像を転写する画像形成装置について説明したが、このような画像形成装置に限定されるものではなく、搬送される媒体に画像を形成する装置、例えば中間転写ベルトを用いたカラー画像形成装置、単一のプロセスユニットを用いた単色画像形成装置、並びに、これらを用いた複写機、自動原稿読み取り装置などにも適用可能である。また、用紙の代わりに、他の媒体を用いてもよい。
また、上述した第1〜第5の実施の形態では、MPT600における用紙積載板604の昇降について説明したが、例えば、画像形成装置10の用紙トレイ100の用紙積載板102の昇降に応用することもできる。