JP2012143256A - 幹細胞の分離材および分離方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、密度Kが1.0×104≦K≦1.0×106であり、かつ、繊維径が3〜40μmであることを特徴とする幹細胞分離材;上記幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなる幹細胞分離フィルター;上記幹細胞分離材または幹細胞分離フィルターを用いた、幹細胞の分離・回収方法;多分化能を有する細胞画分の生産方法;幹細胞に関する。
【選択図】なし
Description
〔1〕
密度Kが1.0×104≦K≦1.0×106であり、かつ、繊維径が3〜40μmであることを特徴とする幹細胞分離材。
〔2〕
ポリエステル、レーヨン、ポリオレフィン、ビニロン、ポリスチレン、アクリル、ナイロンおよびポリウレタンから選ばれる少なくとも1種の合成高分子からなる〔1〕記載の幹細胞分離材。
〔3〕
ポリエステルおよびポリプロピレン;レーヨンおよびポリオレフィン;またはポリエステル、レーヨンおよびビニロンの合成高分子の組み合わせからなる〔1〕または〔2〕記載の幹細胞分離材。
〔4〕
目開きの短径が3μm以上かつ長径が120μm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔5〕
不織布の形態である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
幹細胞が、体液由来の付着性の幹細胞である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔7〕
体液が、骨髄液、末梢血および臍帯血から選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔8〕
赤血球、白血球が実質的に通過可能であることを特徴とする〔6〕または〔7〕に記載の幹細胞分離材。
〔9〕
幹細胞が、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚および血管からなる群より選択される1種以上の生体組織由来の幹細胞である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔10〕
密度Kが1.0×104≦K≦2.0×105であることを特徴とする請求項〔9〕記載の幹細胞分離材。
〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなることを特徴とする幹細胞分離フィルター。
〔12〕
液流入部あるいは、液流入部以外の液流入側に、幹細胞分離材内にとどまっている不要細胞および不要物を洗浄するための洗浄液流入部を備え、かつ、液流出部あるいは、液流出部以外の液流出部側に、幹細胞分離材に捕捉された細胞を回収するための細胞回収液流入部を備えてなる〔11〕に記載の幹細胞分離フィルター。
〔13〕
幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックを、液流入部または洗浄液流入部、あるいは、液流入部および洗浄液流入部以外の液流入側に備えてなる〔12〕記載の幹細胞分離フィルター。
〔14〕
幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックが、細胞培養可能なバックであることを特徴とする〔13〕記載の幹細胞分離フィルター。
〔15〕
〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の幹細胞分離材、または〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載の幹細胞分離フィルターを使用して、体液または生体組織の処理液中から、幹細胞を分離、回収する方法。
体液または生体組織の処理液を、〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載の幹細胞分離フィルターの液流入部より幹細胞分離フィルターに導入し、液流入側から洗浄液を流して洗浄し、次に液流出側から細胞回収液を流すことにより、幹細胞分離材に捕捉した幹細胞を回収することを特徴とする幹細胞回収方法。
〔17〕
体液が、骨髄液、末梢血および臍帯血から選ばれる少なくとも1種である〔16〕記載の幹細胞回収方法。
〔18〕
生体組織の処理液が、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚および血管からなる群より選択される1種以上の生体組織を分解して得られる処理液である〔16〕記載の幹細胞回収方法。
〔19〕
体液または生体組織が哺乳動物由来である〔16〕〜〔18〕のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
〔20〕
〔16〕〜〔19〕のいずれかに記載の幹細胞回収方法によって回収された幹細胞を、さらに増幅することを特徴とする、多分化能を有する細胞画分の生産方法。
〔21〕
〔16〕〜〔19〕のいずれかに記載の幹細胞回収方法により得られた幹細胞。
本発明の幹細胞分離材は、密度Kが1.0×104≦K≦1.0×106であり、かつ、繊維径が3〜40μmであることを特徴とするものである。
また、本発明における体液には、上記体液の稀釈液;フィコール、パーコール、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、バクティナーチューブ、リンフォプレップ等を使用し、比重密度遠心分離法により、上記体液に前処理を施して調製された細胞懸濁液等も含まれる。
ヒト間葉系幹細胞を用いても、上記と同様の効果が認められる。即ち、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞をマウス心筋に移植すると心筋に分化し、デスミン、beta−ミオシン重鎖、alpha−アクチニン、心筋トロポニンT、フォスフォランバン等の心筋特異的蛋白質を発現する(Toma C et al. Circulation. 2002 Jan 1;105(1):93−8)。ヒト間葉系幹細胞をブタ心筋梗塞病変に移植すると生着し、alpha−ミオシン重鎖やトロポニンI陽性の心筋が出現し、心機能の改善効果を生じる(Min JY Ann Thorac Surg. 2002 Nov;74(5):1568−75)。また、心筋ペースメーカー遺伝子mHCN2を強制発現させたヒト間葉系幹細胞をイヌ心筋に移植すると電気的シグナルを伝達する(Potapova I et al. Circ Res. 2004 Apr 16;94(7):952−9)。上記のように、間葉系幹細胞の移植により、心疾患における心機能の改善を生じることができる。
骨髄ストローマ細胞とは、骨髄細胞中、未熟および成熟血液細胞を除く全ての付着性細胞成分を指す。以上に挙げた付着性の幹細胞に共通する特徴的な細胞表面抗原として、CD13,29,44,49b,49d,49e,71,73,90,105,166,classIMHC,classIIMHC等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここでいう培養皿とは、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製の細胞培養シャーレやフラスコ等が挙げられ、また、該シャーレやフラスコに、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等の細胞外マトリックス成分のタンパク質や、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等の多糖類をコーティングしたものでもよい。
破砕処理液とは、水溶液中で超音波もしくは鋭利な刃等で生体組織を粉々に破砕することにより、生体組織を分解せしめた処理液を意味する。
擦過処理液とは、濾し器等を使用して生体組織を粉砕せしめた処理液を意味する。
振盪抽出処理液とは、生体組織を水溶液中で激しく振盪することにより、生体組織を含んだ処理液を調製することを意味する。
脂肪吸引処理液とは、超音波脂肪吸引、パワードリポサクション、シリンジ吸引等、一般的な美容形成で行なわれている方法で、脂肪等の生体組織を採取・分解処理した処理液を意味する。
さらに、適時これらの方法に遠心分離等の操作を加えても良い。例えば、酵素分解処理液を遠心分離し、含まれる細胞を沈降させた後、上澄みを除去し、沈降した細胞塊を緩衝液等で懸濁させた処理液(濃縮懸濁液)であってもよい。
また、ここでいう培養皿とは、上記と同様のものが挙げられる。
2種以上の合成高分子を組み合わせる場合は、その組み合わせに特に限定はないが、ポリエステルおよびポリプロピレン;レーヨンおよびポリオレフィン;またはポリエステル、レーヨンおよびビニロンからなる組み合わせ等が好ましく挙げられる。
また、測定の際には、圧力等を加えないよう、変形のない状態で測定する。例えば、CCDレーザー方位センサー(KEYENCE,LK−035)等を使用することで、非接触状態での厚みの測定が可能である。
もちろん、用いる材料のカタログ等に目付や厚みの記載がある場合には、それをそのまま使用して、それらを式(目付(g/m2)/厚み(m))に当てはめて計算することにより求めても構わない。
なお、幹細胞分離材が多孔質体等の場合、繊維径とは、多孔質体の断面部分において、樹脂部分(孔でない部分)の平均幅を意味し、上記と同様にして測定する。
つまり、本発明において繊維径とは、上記のように測定した繊維径の平均値を意味し、当該平均値が上記範囲内(3〜40μm)であることが必要である。
なお、長径とは、幹細胞分離材の形成する孔周囲の最も離れた2点間の距離を、短径とは、該長径を求めた2点間の中間点を通り、孔に接する最短の2点間の距離をいう。
なお、幹細胞分離材が多孔質体等の場合、目開きとは、多孔質体の孔径の長径部分と短径部分のそれぞれの平均値で規定され、上記と同様にして測定する。
ここで、赤血球、白血球が実質的に通過可能とは、該幹細胞分離材に対する赤血球の通過率が80%以上、白血球の通過率が30%以上を意味する。幹細胞分離材の性能面から、通過率は、より好ましくは、赤血球が85%以上、白血球が45%以上、さらに好ましくは、赤血球が90%以上、白血球が60%以上である。
疎水性ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アクリル、ウレタン、ビニロン、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。
非イオン性の界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル系とポリオキシエチレン系とに大別される。多価アルコール脂肪酸エステル系の界面活性剤としては、ステアリン酸グリセリンエステル系、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンアシルエステル等が挙げられる。ポリオキシエチレン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアシルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、 ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
これらは各々単独で、または組み合わせて用いることができる。
細胞付着性のタンパク質としては、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、コラーゲン等が挙げられる。
抗体としては、CD133,CD90,CD105,CD166,CD140a等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、固定化方法としては、例えば、一般的なタンパク質の固定化方法である、臭化シアン活性化法、酸アジド誘導体法、縮合試薬法、ジアゾ法、アルキル化法、架橋法等の方法を任意に用いることができる。
幹細胞分離材は、適切な大きさに切断した平板状で体液を処理してもよいし、またロール状に巻いた形状で体液の処理を行ってもよい。
本発明の幹細胞分離フィルターは、上記幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなるものである。
このとき、幹細胞分離材は、圧縮せず容器に充填してもよいし、圧縮して容器に充填してもよい。
幹細胞分離フィルターの好ましい具体例としては、不織布状の幹細胞分離材を、充填した状態での厚み0.1cm〜5cm程度で、下記に示す幹細胞分離フィルター用容器に充填して得られたもの等が挙げられる。この場合、幹細胞分離材の厚み(充填した状態で)は、0.1cm〜5cmが好ましいが、細胞の回収率および脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の除去効率の点から、0.15cm〜4cmがより好ましく、さらに好ましくは0.2cm〜3cmである。幹細胞分離材の厚みが、前記厚みに満たない時は、幹細胞分離材を積層して条件を満たしてもよい。
容器の形態は、球、コンテナ、カセット、バッグ、チューブ、カラム等、任意の形態であってよい。好ましい具体例としては、例えば、容量約0.1〜400ml程度、直径約0.1〜15cm程度の透明または半透明の筒状容器;一片の長さ0.1cm〜20cm程度の正方形または長方形で、厚みが0.1cm〜5cm程度の四角柱状容器等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
非反応性ポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー等のアクリロニトリルポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー;ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリドアクリルコポリマー、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。容器の材料として有用な金属材料(生物親和性金属、合金)としては、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、およびそれらの合金、並びに金メッキ合金鉄、白金メッキ合金鉄、コバルトクロミウム合金、窒化チタン被覆ステンレス鋼等が挙げられる。
特に好ましくは耐滅菌性を有する素材であるが、具体的には、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
まず該幹細胞分離フィルターに、液入口側から、体液または生体組織の処理液を通液することにより、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板、分解に使用した酵素等の不要細胞および不要物は、実質的に捕捉されずに液出口側より流出し、幹細胞分離材内に目的細胞を捕捉することが可能である。次に、洗浄液を同方向から通液することにより、幹細胞分離材内に溜まっている脂肪滴、赤血球、白血球、血小板、分解に使用した酵素等の不要細胞および不要物の大多数を洗浄除去することが可能である。さらに、液出口側から、すなわち、体液または生体組織の処理液および洗浄液を流した方向とは逆方向から、細胞回収液を流すことにより、上記目的細胞を高い効率で分離回収することが可能である。
さらに、幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックが、細胞培養可能なバックであることが好ましい。
つまり、幹細胞分離フィルターは、回収された細胞を培養するための培養用バックを備えていてもよい。培養用バックは、幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を閉鎖系で回収できるように、液流入部または洗浄液流入部に、あるいは液流入側に独立して備えることができる。また、細胞懸濁液を回収した後は、バックを幹細胞分離フィルターから切り離して培養することができる。
また、該バックは、一般的に使用されている血液バックのような形状をしていてもよいが、平板状のカートリッジ方式等でもよい。
なお、体液または生体組織の処理液から、幹細胞を上記幹細胞分離材または幹細胞分離フィルターに捕捉することにより、幹細胞を分離することができる。
1)体液送液工程;
該幹細胞分離フィルターに、液流入側から体液を通液する際には、体液を入れた容器から送液回路を通じて自然落下で送液しても、ポンプにより通液しても良い。また体液を入れたシリンジを直接、該フィルターに接続し、手でシリンジを押して注入してもよい。ポンプにより通液する場合の流速は、0.1ml/min〜100ml/min程度が挙げられるが、これに限定されるものではない。
該幹細胞分離フィルターに、液流入側から洗浄液を通液する際には、洗浄液は、回路を通じて自然落下で送液しても、ポンプにより通液しても良い。ポンプにより通液する場合の流速は、0.1ml/min〜100ml/min程度が挙げられる。洗浄量は、幹細胞分離フィルター容量により異なるが、該フィルター容積の約1〜100倍程度の体積で洗浄することが好ましい。
細胞洗浄液としては、生理的食塩液、リンゲル液、細胞培養に使用する培地、リン酸緩衝液等の一般的な緩衝液等が挙げられるが、安全面から生理的食塩液が好ましい。
該幹細胞分離フィルターに、体液および洗浄液を流した方向とは逆方向(液流出側)から細胞回収液を入れ、幹細胞を回収する。
細胞回収液を幹細胞分離フィルターに注入し、目的細胞を回収する時は、細胞回収液をシリンジ等に予め入れておき、シリンジのプランジャーを手等で勢いよく押し出すこと等により実現できる。回収液量および流速は、フィルター容量により異なるが、フィルター容積の1〜100倍量程度の細胞回収液を、流速0.5ml/sec〜20ml/sec程度で注入することが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、幹細胞分離フィルターに捕捉された幹細胞の回収率を上げるため、細胞回収液の粘張度を上げてもよい。そのために上記細胞回収液に、アルブミン、フィブリノーゲン、グロブリン、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルセルロース、コラーゲン、ヒアルロン酸、ゼラチン等を添加することができるが、これらに限定されるものではない。
バック内に回収した幹細胞を増幅させる場合は、細胞回収液に培養液(例えば、DulbeccoMEM(日水),α−MEM(GIBCO BRL社製),MEM(日水),IMEM(日水),RPMI−1640(日水)培地等)を使用し、フィルター付属の培養用バックに直接回収する方法等が挙げられる。この培養液には、必要に応じて血清を5〜20%程度添加しても良い。
培養工程を経ずにそのまま、回収細胞を患部等に注入する場合は、生理食塩液等の点滴等に使用実績のある等張液等、安全性が保障されている細胞回収液を使用することが好ましい。
バック内に回収された幹細胞をバックのまま培養する際の条件としては、特に限定されないが、例えば、培地としてGIBCO BRL社製のαMEM培地に15〜20%の牛胎児血清を添加したものを用い、37℃にてCO2インキュベーター内で7〜14日間、培養することが望ましい。
細胞数を増やすために、この後さらに経代を行ってもよい。この場合、幹細胞はキレート剤やディスパーゼ、コラゲナーゼ等の細胞剥離剤、好ましくはトリプシンを用いて、培養皿等から幹細胞を剥離、回収することができる。
培地交換は、培地を吸い取り、新しい培地を等量加えてもよいが、培地を抜き取らずに、新しい培地を適宜加えていってもよい。特にバック培養の場合は、新しい培地を加えていくことにより、幹細胞の分離から増幅までの一連の工程を閉鎖系で実施することが出来、コンタミネーションの防止や作業効率の大幅な向上につながる。
(a)上記幹細胞分離フィルターを使用して体液を処理する、
(b)該幹細胞分離フィルターにおいて捕捉された細胞画分を回収する、
(c)該回収した幹細胞を増幅する。
なお、増幅方法としては、特に限定されないが、例えば、細胞回収液に培養液(例えば、Dulbecco MEM(日水),α−MEM(GIBCO BRL社製),MEM(日水),IMEM(日水),RPMI−1640(日水)培地等)を使用し、フィルター付属の培養用バックに直接回収し、37℃、5%CO2インキュベーター内で増幅する方法等が挙げられる。この培養液には、必要に応じて血清を5〜20%程度添加しても良い。
さらに、当該治療用細胞を、さまざまな疾患や組織増大術に適用して、これらを治療することができる。具体的な治療対象としては、幹細胞疲弊疾患、骨疾患、軟骨疾患、虚血性疾患、血管系疾患、神経病、やけど、慢性炎症、心疾患、免疫不全、クーロン病等の疾患;豊胸、しわとり、美容成形、組織陥没症等の組織増大術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の幹細胞分離材を容器に充填してなる幹細胞分離フィルターを使用した分離方法で回収した幹細胞は、増幅させずにそのまま、あるいは閉鎖系で増幅させることが可能となり、心筋再生や血管再生等の再生医療や細胞医療に用いる治療用細胞を調製するためのフィルターとして提供することが可能となる。さらに、当該幹細胞分離フィルターを使用することにより、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の混在比率が少なく、再生医療用の細胞ソースとして極めて有効であり、副作用を生じさせにくい幹細胞の提供が可能となる。また、培養用バックを幹細胞分離フィルターと一体化することにより、目的細胞の採取から増幅まで、閉鎖系での調製が可能になり、安全性の高い治療用細胞の調製が可能となる。
なお、幹細胞分離材の密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))、繊維径、目開きは、前述のようにして求めた。
(1)細胞ソース
体重約30Kgの家畜ブタに筋肉注射にてケタラール、セラクタールを注入し、その後ネンブタールを静脈注射にて追加することにより麻酔を行った。10mlのシリンジに約20IU/mlになるように予めヘパリンを入れておき、腸骨より15Gの穿刺針を用いて骨髄液を採取した。次に採取した骨髄液プールに、ヘパリンを最終濃度で50IU/mlになるように添加して、十分に転倒混和を行った。
出入口を供えた内径1cmの円筒状のポリプロピレン製の筒に、幹細胞分離材としてポリエステルとポリプロピレンからなる分割繊維不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.3×105(73/(5.5×10−4))、繊維径=8±5μm(つまり平均値8μm、以下同様)、目開き=5〜50μm(短径〜長径、以下同様)]を12枚積層し、不織布の上下を外径1cm、内径7mm、高さ5mmのストッパーにて挟み込むことにより、幹細胞分離材を固定した幹細胞分離フィルターを作製した。
該幹細胞分離フィルター体積の約6倍量の生理食塩液にて不織布の洗浄を行った。次にシリンジポンプにて骨髄液2mlを流速0.5ml/minで通液し、フィルター出口側細胞数の測定を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)にて実施した。次に同方向から生理食塩液2mlを同流速にて流すことにより、赤血球や白血球、血小板の洗浄除去を行った。次に牛胎児血清15%を含む細胞培養液(α−MEM培地)2mlを、骨髄液を流した方向と逆方向から勢いよく流すことにより、目的とする細胞画分を回収し、回収溶液中の細胞数を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)にて求めた。細胞の通過率は、フィルター通過後の各種細胞数を、フィルター通過前の各種細胞数で割ることにより求めた。また細胞の回収率は、回収溶液中の各種細胞数を、フィルター通過前の各種細胞数で割ることにより求めた。その結果、赤血球、血小板の通過率は95%以上を示し、白血球の通過率は約75%であった。また回収率は、赤血球が 0.5%、血小板が約3%であり、白血球は約20%であった。このことから、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板はほとんど除去され、白血球は80%以上が除去されることが示された。
幹細胞分離材をレーヨンとポリオレフィンからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=2.0×105(110/(5.5×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球、血小板の通過率は、約95%を示し、白血球の通過率は約78%であった。また回収率は、赤血球が0.3%、血小板が約4%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約16%であり、8割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、48個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4700であった。
幹細胞分離材をポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=5.0×105(250/(5.0×10−4))、繊維径=18±11μm、目開き=8〜43μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の通過率は約93%、血小板の通過率は約79%、白血球の通過率は約81%であった。また回収率は、赤血球が0.4%、血小板が約8%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約8%であり、9割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、33個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4320であった。
幹細胞分離材をポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=5.9×104(200/(3.4×10−3))、繊維径=14±8μm、目開き=7〜100μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の通過率は約96%、血小板の通過率は約78%、白血球の通過率は約86%であった。また回収率は、赤血球が1%、血小板が約10%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約9%であり、9割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、34個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には、軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4510であった。
幹細胞分離材をポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.2×105(85/(7.0×10−4))、繊維径=11±4μm、目開き=5〜52μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球、血小板の通過率は約95%であり、白血球の通過率は約90%であった。また回収率は、赤血球が約1%、血小板が約5%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約7%であり、9割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、31個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には、軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、3740であった。
培地に上記の軟骨分化誘導因子を添加しない以外は実施例1と同様の方法で、軟骨基質形成能を評価した。その結果、軟骨基質が紫色に染まる異染色性は観察されなかった。
培地に上記の骨組織形成因子を添加しない以外は実施例1と同様の方法で、骨組織形成能を評価した。その結果、カルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、250であった。
幹細胞分離材をポリプロピレン製不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.1×106(1100/(1.0×10−3))、繊維径=8±3μm、目開き=3〜20μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、およびコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の通過率は約80%、血小板の通過率は約1%、白血球の通過率は約1%であった。また回収率は、赤血球が約10%、血小板および白血球は回収できなかった。また出現したコロニー数は、0個/フラスコであった。
幹細胞分離材を綿製不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=8.3×103(25/(3.0×10−3))、繊維径=11±4μm、目開き=3〜25μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、およびコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の通過率は約99%、血小板の通過率は約99%、白血球の通過率は約96%であった。また回収率は、赤血球が0.3%、血小板が0.1%であり、白血球は約1%であった。また出現したコロニー数は、0個/フラスコであった。
実施例1と同様の方法で採取した骨髄液2mlをリン酸緩衝液PBS(−)2mlと混合(2倍希釈)した。次に、15ml遠沈管にFicoll paque plus(アマシャム)を3ml添加し、該溶液の上層に、先に調製した希釈骨髄液4mlを積層した。1400rpm、30min、室温にて遠心分離することにより、得られた単核球画分層を回収した。PBS(−)を約10ml入れ、1300rpm、5minで細胞の洗浄を行った。次に同様にPBS(−)を約10ml入れ、1200rpm、5minで細胞の再洗浄を行った。再洗浄液を2mlのPBS(−)に懸濁し、上記自動血球計測装置を用いて各種細胞数の測定を行い、細胞回収率を求めた。また実施例1と同様の方法でコロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の回収率は1%、血小板の回収率は11%、白血球の回収率は83%であった。また出現したコロニー数は、46個/シャーレであった。また細胞を増幅させた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4210であった。
実施例1と同様の方法で採取した骨髄液2mlにPBS(−)2mlを添加してよく混合した。この赤血球沈降用骨髄原液(4ml)に対して1/5量のHES(Nipro製、6%ヒドロキシエチルデンプン水溶液、分子量40万)を添加し、終濃度を1%にした。530rpm(50g)にて5min遠心分離し、2層(上層の比較的透明な層と下層の赤血球層)に分かれ、最上層(透明な層のみ)を回収した。これに、約10mlのPBS(−)を添加し、1300rpm、5minにて細胞の洗浄を行った。次に2mlのPBS(−)に細胞を再懸濁し、上記自動血球計測装置を用いて各種細胞数の測定を行い、細胞回収率を求めた。また実施例1と同様の方法でコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の回収率は6%、血小板の回収率は51%、白血球の回収率は74%であった。また出現したコロニー数は、29個/シャーレであった。
幹細胞分離材をレーヨンとポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.8×105(95/(5.2×10−4))、繊維径=15±10μm、目開き=5〜50μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の通過率は約96%、血小板の通過率は約73%、白血球の通過率は約84%であった。また回収率は、赤血球が0.2%、血小板が約5%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約15%であり、8割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、50個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4680であった。
幹細胞分離材をポリエステル製不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=2.0×105(60/(3.0×10−4))、繊維径=2.3μm、目開き=3〜20μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、およびコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の通過率は約75%、血小板の通過率は約15%、白血球の通過率は約10%であった。また回収率は、白血球が約75%、赤血球が約15%、血小板は約5%であった。また出現したコロニー数は、6個/シャーレであった。白血球の7割以上を捕捉し、コロニー出現率もあまり高くないことから、幹細胞を選択的に捕捉したとはいえない結果であった。
(1)皮下脂肪組織を酵素により分解せしめた処理液の調製
体重3.5kgのウサギ(日本白色種)をケタラール/セラクタールの過剰投与にて安楽死させ、背側の皮下脂肪50グラムを採取した(図2)。この白色脂肪を手術用ハサミで細かく刻み、0.075w/v%コラゲナーゼ/リン酸塩緩衝液(pH=7.4)100mLと共に、37℃で振盪した(一時間)。この操作により皮下脂肪は分解され、流動性を有する粘性液体となった。この酵素処理液を37℃に保持しながら静置することで溶液を2層に分離せしめ(図3;上層:脂肪層、下層:水溶液層)、下層の水溶液層(酵素処理液)を採液した。
出入口を供えた内径12mmの円筒状の筒に、幹細胞分離材としてポリエステルとポリプロピレンからなる分割繊維不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.1×105(73/(6.7×10−4))、繊維径=8±5μm、目開き=5〜50μm]を12枚積層し、不織布の上下を外形12mm、内径7mm、高さ5mmのストッパーにて挟み込むことにより、幹細胞分離材を固定した幹細胞分離フィルターを作製した。
該幹細胞分離フィルター体積の約6倍量の生理食塩液にて不織布の洗浄を行った。次に37℃のインキュベーター内において、シリンジポンプにて皮下脂肪組織を酵素にて分解せしめた処理液8mlを流速0.5ml/minで通液した。次に同方向から生理食塩液2.5mlを同流速で流すことにより、細胞フィルター内に存在する残存物;分解に使用した酵素、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物の洗浄除去を行った後、牛胎児血清15%を含む細胞培養液(α−MEM培地)4mlを、酵素処理液を流した方向と逆方向から勢いよく流すことにより、目的とする細胞画分を回収した。
細胞の回収率は、回収液の有核細胞数を、フィルター通過前の有核細胞数で割ることにより求めた。細胞の通過率は、フィルター通過後の有核細胞数を、フィルター通過前の有核細胞数で割ることにより求めた。なお、ここでいう有核細胞とは、核が細胞膜により取り囲まれる構造を有する細胞である。具体的には、幹細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、周細胞等であってよく、赤血球、血小板、成熟脂肪細胞は含まれない。また、有核細胞数の測定は、溶液に含まれる赤血球を塩化アンモニウムで溶血させた後に血球計算盤を用いて求めた。また、赤血球と血小板の除去率を求めるために、フィルター通液前液と回収液に含まれる赤血球、血小板数を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)を用いて測定した。その結果、有核細胞回収率は82%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下であった(表5、6、7)。
上記(3)の回収液に含まれる脂肪由来細胞を、増殖培地で数日間、5%CO2、37℃インキュベーター中で培養した。そこに脂肪への分化誘導を促す3種類の添加物(ハイドロコルチゾン:SIGMA、イソブチルメチルキサンチン:SIGMA、インドメタシン:SIGMA)をそれぞれ0.1μM、0.5mM、50μg/ml添加し、脂肪分化誘導を行った。同時にコントロールとしてそれらを加えなかったものを実施した(コントロール1)。その結果、図6上段に示すように、分化誘導を行った細胞には脂肪滴の蓄積が観察された。これにより、幹細胞分離フィルターで捕捉・回収した脂肪由来細胞は、脂肪への分化能を有していることが確認された。
上記(4)と同様に回収液中の脂肪由来細胞を培養後、骨への分化誘導を促す3種類の添加物(β−グリセロリン酸:CALBIOCHEM、アスコルビン酸リン酸エステル:WAKO、デキサメサゾン:SIGMA)をそれぞれ10mM、50FLg/ml、100nMを添加し、骨分化誘導を行った。同時にコントロールとしてそれらを加えなかったものを実施した(コントロール2)。培地交換は3日おきに行い、2週間後に骨分化の指標であるアリザリンレッド染色を実施した。その結果、図6下段に示すように、コントロールの細胞はアリザリンレッド染色に対し陰性であったが、骨分化誘導を行った細胞は陽性となった。これにより、幹細胞分離フィルターで捕捉・回収した脂肪由来細胞は、骨への分化能を有していることが確認された。
幹細胞分離材を、レーヨンとポリオレフィンからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.5×105(110/(7.3×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]に変えた幹細胞分離材を用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は53%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は74%であった(表5、6、7)。
また、回収液に含まれる脂肪由来細胞を、それぞれ実施例7の(4)と(5)と同様に培養し、脂肪分化、骨分化誘導を行ったところ、脂肪滴の蓄積とアリザリンレッド染色陽性が確認された(図6)。
フローサイトメーターの解析では、実施例7と同様な結果が得られた。
幹細胞分離材を、ポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=5.9×104(200/(3.4×10−3))、繊維径=14±8μm、目開き=7〜100μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は59%、通過率は25%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は60%であった(表5、6、7)。また、培養して得られた細胞に骨分化誘導を行ったところ、アリザリンレッド染色は陽性であった。フローサイトメーターの解析では、実施例7と同様な結果が得られた。
幹細胞分離材を、ポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.6×105(85/(5.3×10−4))、繊維径=12±2μm、目開き=10〜26μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は30%、通過率は45%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は45%であった(表5、6、7)。また、培養して得られた細胞に骨分化誘導を行ったところ、アリザリンレッド染色は陽性であった。
幹細胞分離材を、ポリプロピレン製不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.1×106(1100/(1.0×10−4))、繊維径=8±3μm、目開き=3〜20μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は42%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は39%であった(表5、6、7)。
幹細胞分離材を、綿製不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=8.3×103(25/(3.0×10−3))、繊維径=11±4μm、目開き=3〜25μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は29%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は30%であった(表5、6、7)。
幹細胞分離材を、ポリプロピレン製不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=8.3×103(30/(3.6×10−3))、繊維径=11±4μm、目開き=3〜25μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は5%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は5%であった(表5、6、7)。
幹細胞分離材を、ポリエステル製不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=2.3×105(80/(3.5×10−4))、繊維径=2.3±0.5μm、目開き=2〜13μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で実験を行った。しかしながら、酵素で分解せしめた処理液を70%通液した時に目詰まりを起こし、評価出来なかった。
(1)皮下脂肪組織由来細胞の濃縮懸濁液の調製
上記実施例7〜10、比較例6〜9とは別に、体重3.5kgのウサギ(日本白色種)をケタラール/セラクタールの過剰投与にて安楽死させ、背側の皮下脂肪50グラムを採取した。この白色脂肪を手術用ハサミで細かく刻み、0.075w/v%コラゲナーゼ/リン酸塩緩衝液(pH=7.4)100mLと共に、37℃で振盪した(一時間)。この酵素処理液から脂肪3gに相当する液を取り、遠心分離(1200rpm、5min)することにより、含まれる細胞集団を沈降させた。上澄みを除去した後、αMEM培地1mlで細胞集団を懸濁し、細胞濃縮懸濁液を調製した。
出入口を供えた内径20mmの円筒状の筒に、幹細胞分離材としてレーヨンとポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混紡)からなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.6×105(95/(5.9×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]を24枚積層し、不織布の上下を外形12mm、内径7mm、高さ5mmのストッパーにて挟み込むことにより、幹細胞分離材を固定した幹細胞分離フィルターを作製した。
該幹細胞分離フィルター体積の約6倍量の生理食塩液にて不織布の洗浄を行った。次に室温下、シリンジポンプにて上記の濃縮懸濁液1mlを流速1ml/minで通液した。次に同方向からリン酸緩衝液4mlを同流速で流すことにより、幹細胞分離フィルター内に存在する残存物の洗浄除去を行った後、リン酸緩衝液24mlを、酵素処理液を流した方向と逆方向から勢いよく流すことにより、目的とする細胞画分を回収した。
細胞の回収率は、回収液の有核細胞数を、フィルター通過前の有核細胞数で割ることにより求めた。なお、有核細胞数の測定は、溶液に含まれる赤血球を塩化アンモニウムで溶血させた後に血球計算盤を用いて求めた。また、赤血球と血小板の除去率を求めるために、フィルター通液前液と回収液に含まれる赤血球、血小板数を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)を用いて測定した。その結果、有核細胞回収率は66%、赤血球・血小板の除去率は88%、86%であった。また実施例7と同じく、通液前液と比較した場合の出現コロニー形成率は70%であった。
幹細胞分離材を、レーヨンとポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混紡)からなる不織布[密度K(目付け(g/m2)/厚み(m))=1.5×105(110/(5.63×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]に変えた幹細胞分離材を用いた以外は、実施例11と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は69%、赤血球・血小板の除去率は93%、75%、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は75%であった。
また、図2に、実施例で使用したウサギの皮下脂肪組織(処理前)を;図3に、実施例で使用したウサギの皮下脂肪組織の処理液を;図4に、実施例・比較例で使用した通液前液と、実施例7〜8、比較例6〜8の回収液それぞれに含まれる細胞のコロニー形成能試験結果を;図5に、実施例7の通液前液(A)、回収液(B)、洗浄液を含む通過後液(C)のフローサイトメーターによる解析結果(P1:脂肪由来幹細胞を含む細胞集団、P2:主に白血球からなる細胞集団、P3:脂肪滴等の組織由来夾雑物)を;図6に、実施例7および8の回収液中の組織由来細胞の脂肪細胞への分化(上段、左:実施例7のコントロール1、中央:実施例7の分化誘導処理細胞、右:実施例8の分化誘導処理細胞)と骨分化(下段、左:実施例7のコントロール2、中央:実施例7の分化誘導処理細胞、右:実施例8の分化誘導処理細胞)を示した。
Claims (15)
- 体液または生体組織の処理液を、密度Kが1.0×104≦K≦1.0×106であり、かつ、繊維径が3〜40μmである幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなる幹細胞分離フィルターの液流入部より導入し、次に液流出側から細胞回収液を流すことにより、幹細胞分離材に捕捉した付着性の幹細胞を回収することを特徴とする幹細胞回収方法。
- 体液または生体組織の処理液を、密度Kが1.0×104≦K≦1.0×106であり、かつ、繊維径が3〜40μmである幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなる幹細胞分離フィルターの液流入部より幹細胞分離フィルターに導入し、液流入側から洗浄液を流して洗浄し、次に液流出側から細胞回収液を流すことにより、幹細胞分離材に捕捉した付着性の幹細胞を回収することを特徴とする幹細胞回収方法。
- 体液が、骨髄液、末梢血および臍帯血から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の幹細胞回収方法。
- 生体組織の処理液が、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚および血管からなる群より選択される1種以上の生体組織を分離して得られる処理液である、請求項1または2に記載の幹細胞回収方法。
- 体液または生体組織が哺乳動物由来である、請求項1〜4のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 付着細胞が、間葉系幹細胞、多能性成体幹細胞および骨髄ストローマ細胞から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離材の目開きの短径が3μm以上かつ長径が120μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離材が不織布の形態である請求項1〜7のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離材が、ポリエステル、レーヨン、ポリオレフィン、ビニロン、ポリスチレン、アクリル、ナイロンおよびポリウレタンから選ばれる少なくとも1種の合成高分子からなる請求項1〜8のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離材が、ポリエステルおよびポリプロピレン;レーヨンおよびポリオレフィン;またはポリエステル、レーヨンおよびビニロンの合成高分子の組み合わせからなる請求項1〜8のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離材が、赤血球、白血球が実質的に通過可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離フィルターが、液流入部あるいは、液流入部以外の液流入側に、幹細胞分離材内にとどまっている不要細胞および不要物を洗浄するための洗浄液流入部を備え、かつ、液流出部あるいは、液流出部以外の液流出部側に、幹細胞分離材に捕捉された細胞を回収するための細胞回収液流入部を備えてなる、請求項1〜11のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離フィルターが、幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックを、液流入部または洗浄液流入部、あるいは、液流入部および洗浄液流入部以外の液流入側に備えてなる、請求項1〜12のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
- 幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックが、細胞培養可能なバックであることを特徴とする、請求項13に記載の幹細胞回収方法。
- 請求項1〜14のいずれかに記載の幹細胞回収方法によって回収された幹細胞を、さらに増幅することを特徴とする、多分化能を有する細胞画分の生産方法。
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