JP2012134110A - アルカリ二次電池用の負極及びこの負極を用いたアルカリ二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクル寿命特性及び低温放電特性の両立を図ることができるアルカリ二次電池を提供する。
【解決手段】正極24と、負極26と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ二次電池2において、負極26として、水素吸蔵合金を用いた負極を使用し、この負極26中に、水素吸蔵合金の表面に化学結合するリン酸エステル基と、撥水性を発現するフッ化炭素鎖とを有する化学構造を備えたリン酸エステルフッ素化合物を含有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルカリ二次電池用の負極及びこの負極を用いたアルカリ二次電池に関する。
アルカリ二次電池の一つとして、ニッケル水素二次電池が知られており、このニッケル水素二次電池は、ニッケルカドミウム二次電池に比べて高容量で、且つ環境安全性にも優れているという点から、各種のポータブル機器やハイブリッド電気自動車等、さまざまな用途に使用されるようになっている。このように、さまざまな用途が見出されたことによりニッケル水素二次電池に対しては、サイクル寿命特性等の種々の特性の向上が望まれている。
ここで、サイクル寿命特性を向上させたニッケル水素二次電池としては、例えば、特許文献1に示されたニッケル水素二次電池が知られている。このニッケル水素二次電池は、水素吸蔵合金を含む負極中に撥水性を有するフッ素オイルを含有させることにより、このフッ素オイルを水素吸蔵合金の表面に部分的に付着させ、水素吸蔵合金とアルカリ電解液との接触を適度に制限して、充放電を繰り返した場合に前記水素吸蔵合金がアルカリ電解液により酸化されて劣化することを防ぎ、これによりニッケル水素二次電池のサイクル寿命特性の向上を図っている。
前記フッ素オイルは、負極の製造工程中において、負極合剤スラリーを製造する際に、水素吸蔵合金粉末、導電剤等とともに添加され、このスラリーを混練する過程で水素吸蔵合金の表面に付着していく。
特開2009−206004号公報
ところで、前記フッ素オイルは、水素吸蔵合金の表面に物理的に付着するだけであるので、スラリーの混練の過程で水素吸蔵合金表面の比較的広い範囲に亘って流動的に延びやすい。そして、このフッ素オイルは、これを構成する分子全体が撥水性を有しているので、水素吸蔵合金表面には、比較的広い範囲に亘る撥水性の膜が形成される。このように、水素吸蔵合金の表面が比較的広い範囲に亘って前記膜により保護されれば、水素吸蔵合金の酸化は十分に抑制され、サイクル寿命特性に優れた電池が得られる。
しかしながら、水素吸蔵合金の表面が広範囲に亘ってフッ素オイルに被覆されると、水素吸蔵合金とアルカリ電解液との接触が必要以上に制限されてしまい、特に低温環境下での電池反応が促進されなくなる。この結果、電池の低温環境下での放電特性(以下、低温放電特性という)が顕著に低下するという問題が生じていた。そこで、低温放電特性を改善するために、フッ素オイルの添加量を少なくすることも考えられるが、こうした場合、電池のサイクル寿命は短くなってしまう。
このように、従来のニッケル水素二次電池では、サイクル寿命特性を向上させるには、低温放電特性をある程度犠牲にしなければならず、逆に、低温放電特性を向上させるには、サイクル寿命特性をある程度犠牲にしなければならなかった。つまり、電池のサイクル寿命特性と低温放電特性とは二律背反の関係にある。
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、電池のサイクル寿命特性及び低温放電特性の両立を図ることができるアルカリ二次電池用の負極及びこの負極を用いたアルカリ二次電池を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明によれば、水素吸蔵合金を用いたアルカリ二次電池用の負極において、前記負極中に前記水素吸蔵合金の酸化を抑制する酸化抑制剤が含有されており、前記酸化抑制剤は、前記水素吸蔵合金の表面に化学結合する化学結合形成端と、撥水性を発現する撥水端とを有する化学構造を備えた化合物であることを特徴とするアルカリ二次電池用の負極が提供される(請求項1)。
好ましくは、前記酸化抑制剤は、前記化学結合形成端にリン酸エステル基を含み、前記撥水端にフッ化炭素鎖を含むリン酸エステルフッ素化合物である構成とする(請求項2)。
より好ましくは、前記水素吸蔵合金は、一般式Ln1−xMgNiy−a−bAl(式中、Lnは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Y,Zr及びTiよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Mは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり0.05≦a≦0.30、0≦b≦0.50、0.05≦x≦0.30、2.8≦y≦3.9の条件を満たす。)で示される水素吸蔵合金である構成とする(請求項3)。
また、本発明によれば、電極群がアルカリ電解液とともに収容され、前記電極群が正極、負極及びセパレータからなるアルカリ二次電池において、前記負極は、請求項1〜3の何れかに記載の負極であることを特徴とするアルカリ二次電池が提供される。
本発明に係るアルカリ二次電池用の負極は、アルカリ電解液による水素吸蔵合金の酸化を抑制するための酸化抑制剤を含有している。この酸化抑制剤は、水素吸蔵合金の表面に化学結合する化学結合形成端と、撥水性を発現する撥水端とを有する化学構造を備えた化合物であるため、負極中の水素吸蔵合金の表面にその化学結合形成端を介して結合し、撥水端にて、アルカリ電解液と水素吸蔵合金との接触を制限する。この酸化抑制剤によれば、水素吸蔵合金表面において強固で安定的な化学結合を形成するので、この化学結合を形成した部分以外に酸化抑制剤が分布することはなく、水素吸蔵合金表面に物理的に付着されているだけのフッ素オイルの場合と比べ必要以上に水素吸蔵合金表面を覆うことはなくなる。このため、アルカリ電解液による水素吸蔵合金の酸化を適度に抑制しつつアルカリ電解液と水素吸蔵合金表面との電池反応に必要な接触面積を十分に確保することができる。よって、本発明に係るアルカリ二次電池用の負極及びこの負極を備えたアルカリ二次電池は、電池の低温放電特性を低下させることなく、サイクル寿命を延ばすことができ、その工業的価値は極めて高い。
本発明の一実施形態に係るニッケル水素二次電池を部分的に破断して示した斜視図である。
以下、本発明に係る負極を組み込んだニッケル水素二次電池(以下、単に電池と称する)を、図面を参照して説明する。
本発明が適用される電池としては特に限定されないが、例えば、図1に示すAAサイズの円筒型電池2に本発明を適用した場合を例に説明する。
図1に示すように、電池2は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10の底壁は導電性を有し、負極端子として機能する。外装缶10の開口内には、導電性を有する円板形状の蓋板14及びこの蓋板14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁に固定されている。即ち、蓋板14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
しかしながら、蓋板14は中央にガス抜き孔16を有し、そして、蓋板14の外面上にはガス抜き孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状の正極端子20が固定され、正極端子20は弁体18を蓋板14に向けて押圧している。従って、通常時、ガス抜き孔16は弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は内圧によって圧縮され、ガス抜き孔16を開き、この結果、外装缶10内からガス抜き孔16及び正極端子20を介してガスが放出される。つまり、ガス抜き孔16、弁体18及び正極端子20は電池のための安全弁を形成している。
外装缶10には、電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28からなり、これらは正極24と負極26の間にセパレータ28が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互いに重ね合わされている。電極群22の最外周は負極26の一部(最外周部)により形成され、外装缶10の内周壁と接触している。即ち、負極26と外装缶10とは互いに電気的に接続されている。
そして、外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に正極リード30が配置され、正極リード30の両端は正極24の内端及び蓋板14にそれぞれ接続されている。従って、蓋板14の正極端子20と正極24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の絶縁部材32が配置され、正極リード30は絶縁部材32に設けられたスリットを通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の絶縁部材34が配置されている。
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されており、このアルカリ電解液は正極24、負極26及びセパレータ28に含浸され、正極24と負極26との間での充放電反応を進行させる。なお、アルカリ電解液の種類としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等をあげることができ、またアルカリ電解液の濃度についても特には限定されず、例えば、8N(規定度)のものを用いることができる。
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。
正極24は、多孔質構造を有する導電性の正極基板と、正極基板の空孔内に保持された正極合剤とからなる。
このような正極基板としては、例えば、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体を用いることができる。
正極合剤は、正極活物質粒子、導電剤及び結着剤を含む。この結着剤は正極活物質粒子及び導電剤を互いに結着させると同時に正極合剤を正極基板に結着させる働きをなす。
正極活物質粒子は、水酸化ニッケル粒子又は高次水酸化ニッケル粒子である。なお、これら水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を含む固溶体の形態をなすものであってもよい。
導電剤としては、例えば、コバルト酸化物(CoO)やコバルト水酸化物(Co(OH))などのコバルト化合物及びコバルト(Co)から選択された1種又は2種以上を用いることができる。この導電剤は、必要に応じて正極合剤に添加されるものであり、添加される形態としては、粉末の形態のほか、正極活物質の表面を覆う被覆の形態で正極合剤に含まれていてもよい。
正極合剤の結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
正極24は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、水酸化ニッケル粒子からなる正極活物質粉末、水、導電剤及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。正極合剤スラリーは例えばスポンジ状のニッケル製金属体に充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填された金属体は、ロール圧延されてから裁断され、正極24が製造される。
負極26は、帯状をなす導電性の負極基板(芯体)を有し、この負極基板に負極合剤が保持されている。
負極基板は、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなり、例えば、パンチングメタルシートや、金属粉末を型成形して焼結した焼結基板を用いることができる。負極合剤は、負極基板の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極基板の両面上にも層状にして保持されている。
負極合剤は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子と、アルカリ電解液により水素吸蔵合金粒子が酸化されることを抑制する酸化抑制剤、導電剤、及び結着剤を含む。ここで、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等を用いることができ、導電剤としては、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラック等を用いることができる。
水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、特に限定されるものではないが、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金が用いられる。この希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金の組成は自由に選択できるが、例えば、一般式:
Ln1−xMgNiy−a−bAl・・・(1)
で表されるものを用いるのが好ましい。
ただし、一般式(1)中、Lnは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Y,Zr及びTiよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Mは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、添字a、b、x、yは、それぞれ0.05≦a≦0.30、0≦b≦0.50、0.05≦x≦0.30、2.8≦y≦3.9を満たす数を表す。
一般式(1)で示される水素吸蔵合金は、組成によりCaCu型、CeNi型、CeNi型の類似型等の結晶構造を有しているが、CeNi型構造の結晶構造が得られる組成とするのがより好ましい。この理由は、結晶構造が異なると、合金の微粉化の挙動が異なるためであり、CaCu型よりCeNi型の方が微粉化が起こりにくい。微粉化が起こると酸化抑制剤が存在しない新たな面が生じるため、酸化抑制剤の酸化抑制効果が薄れるが、微粉化が起こりにくいと酸化抑制剤の存在する面積の相対的な割合を維持することができ、水素吸蔵合金の酸化を長期間に亘り抑制することができるためである。
ここで、水素吸蔵合金粒子は、例えば以下のようにして得られる。
まず、所定の組成となるよう金属原材料を秤量して混合し、この混合物を例えば誘導溶解炉で溶解してインゴットにする。得られたインゴットに、900〜1200℃の不活性ガス雰囲気下にて5〜24時間加熱する熱処理を施し均質化する。この後、インゴットを粉砕し、篩分けにより所望粒径に分級して、水素吸蔵合金粒子が得られる。なお、一般的に水素吸蔵合金の表面には、水酸化物の層が形成されている。
次に、酸化抑制剤は、水素吸蔵合金の表面に化学結合する化学結合形成端と、撥水性を発現する撥水端を有する化学構造を備えた化合物である。このような化合物としては、前記化学結合形成端にリン酸エステル基を含み、前記撥水端にフッ化炭素鎖を含むリン酸エステルフッ素化合物が挙げられる。このリン酸エステルフッ素化合物は、末端にリン酸エステル基が存在し、このリン酸エステル基とは反対側の末端にフッ化炭素鎖が存在する化学構造を備えている。ここで、リン酸エステルフッ素化合物の作用について以下に詳しく説明する。
このリン酸エステルフッ素化合物は、水素吸蔵合金粉末等に水を加えて負極合剤スラリーを調整する際に一緒に添加される。このとき、リン酸エステルフッ素化合物中のリン酸エステル基は加水分解し、水素吸蔵合金表面の水酸化物層の水酸基とリン酸の水酸基を脱水して水素吸蔵合金とリンが酸素を介して化学結合を形成する。これにより、リン酸エステル基の部分は水素吸蔵合金表面に結合する。そして、リン酸エステル基とは反対側の末端には、撥水性を発現するフッ化炭素鎖が存在するので、このフッ化炭素鎖の部分による撥水層がリン酸エステル基の部分を介して水素吸蔵合金表面に固定されることになる。この撥水層により、アルカリ電解液と水素吸蔵合金との接触は制限され、水素吸蔵合金の酸化が抑制され、電池のサイクル寿命特性の向上に寄与する。ここで、この撥水層は、リン酸エステル基による強固で安定的な化学結合によって水素吸蔵合金の表面に固定されているので、物理的に付着されているだけのフッ素オイルによる撥水性の膜とは異なり、水素吸蔵合金表面の広い範囲に流動的に広がることはない。よって、水素吸蔵合金の表面を撥水層で被覆する面積を所定のサイクル寿命特性を確保するのに必要な最小限に留めることができる。その結果、電池反応に必要なアルカリ電解液と水素吸蔵合金との接触面積を必要以上に減少させることはなく、低温環境下においても、所定の電池反応を進行させることができる。
ここで、負極26は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子からなる水素吸蔵合金粉末、酸化抑制剤、導電剤、結着剤及び水を混練して負極合剤スラリーを調製する。得られた負極合剤スラリーは負極基板に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等が付着した負極基板はロール圧延及び裁断され、これにより負極26が製造される。
1.電池の製造
実施例1
(1)正極の作製
2.5質量%の亜鉛と1.0質量%のコバルトを含有する水酸化ニッケル粉末を硫酸コバルト水溶液に投入した。ついで、この硫酸コバルト水溶液を攪拌しながら1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して反応させ、ここでの反応中、pHが11に維持されるようにしながら、沈殿物を生成させた。ついで、生成した沈殿物を濾別して、水洗したのち真空乾燥することにより、水酸化ニッケル粒子の表面が5質量%の水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル粉末を得た。
さらに水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル粉末に対して、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を1:10の質量比となるように加えて混合し、これを85℃の温度雰囲気中で8時間撹拌しながら加熱処理した。
その後、加熱処理した水酸化ニッケル粉末を水洗し、65℃で乾燥して、水酸化ニッケル粒子の表面が高次コバルト酸化物で被覆されたニッケル正極活物質粉末を得た。
得られたニッケル正極活物質粉末95質量%と酸化亜鉛3質量%と水酸化コバルト2質量%とからなる混合粉末に、結着剤としての0.2質量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を混合粉末の質量に対して50質量%となるように添加して、正極合剤スラリーを作製した。
ついで、正極合剤スラリーを面密度(目付)が約600g/m、多孔度が95%、厚みが約2mmのニッケル発泡体に充填し、これを乾燥させ、正極活物質密度が約2.9g/cm−voidとなるように調整して圧延した後、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル極からなる正極24を得た。
(2)負極の作製
Nd、Sm、Mg、Ni、Alの各金属元素を所定のモル比となるように混合した後、誘導溶解炉に投入して溶解させ、これを冷却してインゴットを作製した。
ついで、このインゴットに対し、温度1000℃のアルゴン雰囲気下にて10時間加熱する熱処理を施して均質化した後、アルゴンガス雰囲気下で機械的に粉砕して、重量積分50%にあたる平均粒径が65μmである希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金粉末を得た。
この水素吸蔵合金粉末の組成を高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって分析したところ、組成は、Nd0.36Sm0.54Mg0.10Ni3.33Al0.17であった。また、この水素吸蔵合金粉末についてX線回折測定(XRD測定)を行ったところ、結晶構造は、CeNi型であった。
得られた水素吸蔵合金の粉末100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム0.2質量部、カルボキシメチルセルロース0.2質量部、スチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)のディスバージョン(固形分50質量%)0.5質量部(固形分換算)、ケッチェンブラック0.5質量部、水50質量部、リン酸エステルフッ素化合物(ダイフリーGW−250(ダイキン工業株式会社製))を固形分で0.1質量部を添加して常温下において混練し、負極合剤スラリーを調製した。
この負極合剤スラリーを負極基板としての鉄製の孔あき板の両面に均等、且つ、厚さが一定となるように塗布した。なお、この孔あき板は60μmの厚みを有し、その表面にはニッケルめっきが施されている。
スラリーの乾燥後、水素吸蔵合金の粉末が付着した孔あき板を更にロール圧延したのち裁断し、AAサイズ用の負極26を作成した。
(3)ニッケル水素二次電池の組み立て
得られた正極24及び負極26をこれらの間にセパレータ28を挟んだ状態で渦巻状に巻回し、電極群22を作製した。ここでの電極群22の作製に使用したセパレータ28はスルホン基を有するポリプロピレン繊維製不織布から成り、その厚みは0.1mm(目付量40g/m)であった。
有底円筒形状の外装缶10内に上記電極群22を収納するとともに、アルカリ電解液(重量混合比で、KOH:NaOH:LiOH=15:2:1、比重が1.30)を2.2gを注入した。この後、蓋板14等で外装缶10の開口を塞ぎ、公称容量が1500mAhのAAサイズの密閉型ニッケル水素二次電池2を組み立てた。このニッケル水素二次電池を電池Aと称す。
比較例1
リン酸エステルフッ素化合物の代わりに、フッ素オイルとしてクロロトリフルオロエチレン重合物(平均分子量が1000、動粘度(25℃)が900cStのもの)を0.1質量部の割合で添加し十分に分散するように負極合剤スラリーを混練したこと以外は実施例1の電池Aと同様なニッケル水素二次電池(電池B)を組み立てた。
比較例2
リン酸エステルフッ素化合物を添加しなかったこと以外は実施例1の電池Aと同様なニッケル水素二次電池(電池C)を組み立てた。
2.ニッケル水素二次電池の試験
(1)初期活性化処理
電池A〜電池Cに対し、温度25℃の下にて、150mAの充電電流で16時間の充電を行った後に、1500mAの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させる操作を1サイクルとする充放電サイクルを合計3サイクル行うことにより各電池に対し初期活性化処理を行った。
(2)サイクル寿命特性試験
初期活性化処理済みの電池A〜電池Cに対し、25℃の雰囲気下にて、1500mAの充電電流で電池電圧が最大値に達した後、10mV低下するまで充電し、その後、30分間放置した。
ついで、同一の雰囲気下にて1500mAの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電した後、30分間放置した。
上記充放電のサイクルを、各電池の放電容量が1500mAhから1000mAhに低下するまで繰り返し、放電容量が1000mAhに至ったときのサイクル数をサイクル寿命とした。ここで、比較例2の電池Cがサイクル寿命に至ったときのサイクル数を100として、各電池のサイクル寿命との比を求め、その結果をサイクル寿命特性比として表1に示した。
(3)低温放電特性試験1
初期活性化処理済みの電池A〜電池Cに対し、1500mAの充電電流で電池電圧が最大値に達した後、10mV低下するまで充電し、その後、−10℃の低温雰囲気下で3時間放置した。
ついで、同一の低温雰囲気下にて1500mAの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電した後、30分間放置した。このとき各電池の放電容量を測定した。そして、比較例2の電池Cの放電容量を100として、各電池の放電容量との比を求め、その結果を低温放電特性比1として表1に示した。
(4)低温放電特性試験2
充電後の放置時の雰囲気の温度及び放電時の雰囲気の温度を−20℃としたこと以外は、低温放電特性試験1と同様にして試験を行い、各電池につき放電容量を測定した。そして、比較例2の電池Cの放電容量を100として、各電池の放電容量との比を求め、その結果を低温放電特性比2として表1に示した。
Figure 2012134110
3.試験結果
表1から次のことが明らかである。
(1)リン酸エステルフッ素化合物あるいはフッ素オイルといった撥水性の添加剤を負極に添加した、実施例1及び比較例1の電池A、電池Bは、撥水性の添加剤を添加していない比較例2の電池Cに比べ、サイクル寿命特性比が高いことが分かる。
これは、撥水性の添加剤が水素吸蔵合金の表面を覆い、水素吸蔵合金とアルカリ電解液との接触を制限し、水素吸蔵合金の酸化を抑制するからであると考える。
(2)一方、低温放電特性比については、リン酸エステルフッ素化合物を添加した実施例1の電池Aは、フッ素オイルを添加した比較例1の電池Bに比べ、低温放電特性比が高いことが分かる。特に、−20℃の低温雰囲気下では、実施例1の電池Aは、低温放電特性をある程度高い状態に維持しているが、比較例1の電池Bは、低温放電特性が顕著に低下していることがわかる。
これは、比較例1に係るフッ素オイルは、水素吸蔵合金の表面に物理的に付着されているだけなので、水素吸蔵合金の表面においては、比較的広範囲に亘って分布しやすく、このため、比較例1に係る水素吸蔵合金の表面は、撥水性のフッ素オイルで被覆される面積は比較的大きくなっていると考えられる。その結果、アルカリ電解液と水素吸蔵合金との接触が必要以上に制限され、低温雰囲気下での電池反応が促進しなくなったためと考えられる。
これに対し、実施例1に係るリン酸エステルフッ素化合物は、リン酸エステル基の部分が水素吸蔵合金と強固に且つ安定的に化学結合するので、水素吸蔵合金の表面において、広範囲に流動的に延びていくことはない。このため、リン酸エステル基の反対側にある撥水性のフッ化炭素鎖は、水素吸蔵合金表面にて所定箇所に固定されることになる。その結果、水素吸蔵合金の表面が撥水層により覆われる面積は、水素吸蔵合金の酸化抑制に必要な最小限に抑えられていると考えられる。従って、アルカリ電解液と水素吸蔵合金との電池反応に必要な接触面積は十分確保されているので、低温雰囲気下であっても電池反応が促進されたためと考えられる。
(3)以上より、水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池の負極にリン酸エステルフッ素化合物を含有させると、得られるニッケル水素二次電池は、低温放電特性の低下を抑えつつサイクル寿命特性を向上させることができるといえる。
2 ニッケル水素二次電池
10 外装缶
12 絶縁パッキン
14 蓋板
20 正極端子
22 電極群
24 正極
26 負極
28 セパレータ

Claims (4)

  1. 水素吸蔵合金を用いたアルカリ二次電池用の負極において、
    前記負極中に前記水素吸蔵合金の酸化を抑制する酸化抑制剤が含有されており、
    前記酸化抑制剤は、
    前記水素吸蔵合金の表面に化学結合する化学結合形成端と、撥水性を発現する撥水端とを有する化学構造を備えた化合物であることを特徴とするアルカリ二次電池用の負極。
  2. 前記酸化抑制剤は、前記化学結合形成端にリン酸エステル基を含み、前記撥水端にフッ化炭素鎖を含むリン酸エステルフッ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ二次電池用の負極。
  3. 前記水素吸蔵合金は、一般式Ln1−xMgNiy−a−bAl(式中、Lnは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Y,Zr及びTiよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Mは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり0.05≦a≦0.30、0≦b≦0.50、0.05≦x≦0.30、2.8≦y≦3.9の条件を満たす。)で示される水素吸蔵合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ二次電池用の負極。
  4. 電極群がアルカリ電解液とともに収容され、前記電極群が正極、負極及びセパレータからなるアルカリ二次電池において、
    前記負極は、請求項1〜3の何れかに記載の負極であることを特徴とするアルカリ二次電池。
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