JP2012134023A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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隆幸 鈴木
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Abstract

【課題】二層分離の問題がなく、比表面積が大きい活物質を使用した電極の剥離強度を確保し、高出力型の電池を実現する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池の正極200は、正極集電体14と、正極集電体14の表面に設けた正極合剤層24とを含み、正極200に含まれる正極合剤層24は、バインダ樹脂22と、平均粒径が小さく、比表面積が大きい粒子群20、及び平均粒径が大きく、比表面積が小さい粒子群21を構成要素とする混合粒子群100とを含む。混合粒子群100は、粒度分布のピークを複数有し、混合粒子群100は、単一組成の化合物で構成されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
地球温暖化などの環境問題の顕在化により、自動車からの二酸化炭素排出量削減が求められている。このため、電気エネルギーを動力とする電気自動車や、自動車の減速時に生じるエネルギーを回生して動力の一部として使用するハイブリッド自動車の開発が急速に進められている。
電極におけるリチウムイオンの吸蔵放出反応を利用したリチウムイオン二次電池は、自動車向け電池として注目されている。車載用リチウムイオン二次電池の特性、特に車載用リチウムイオン二次電池において重要な入出力特性は、リチウムイオン二次電池の充放電時にリチウムイオンを吸蔵放出する電極に大きく依存する。また、高出力型リチウムイオン二次電池が要求されるハイブリッド自動車や電気自動車向けのリチウムイオン二次電池においては、比表面積が大きい活物質の使用や、電池の直流内部抵抗(DCR)の低減が求められている。
リチウムイオン二次電池の電極には、電極合剤中の成分(活物質や導電助材など)を結着するために、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やゴムバインダ樹脂などのバインダ樹脂が用いられている。電池の容量等の電池特性を発現するのは、正極材や負極材などの活物質であり、バインダ樹脂そのものは電池の直流内部抵抗の要因となり、電池の特性面に関しては、悪影響を与える。
DCRの大小を電極の構造面で決定する主な因子の1つとしてバインダ樹脂およびその含有量を考えることができる。バインダ樹脂は、活物質同士あるいは活物質合剤層と集電体を結着させ、電極構造を維持する重要な役目を担う。バインダ樹脂成分を少なくすると、活物質同士や電極合剤−集電体間の結着力が低下するため、合剤が剥離してしまうおそれがある。
しかし、バインダ樹脂成分は電極の電子抵抗(導電経路に対して夾雑物となるため)や反応抵抗(活物質表面を覆い、電解質との接触を阻害するため)となるため、DCRを低減した高出力型電池の実現のためにはバインダ樹脂成分を出来る限り少なくした方が有利である。そのため、電池の高出力化のためにはバインダ樹脂成分の低減が重要である。
バインダ樹脂成分を少なくした場合の合剤層と集電体の結着力不足の原因は、スラリーを塗工乾燥させる工程中に、電極合剤層中の樹脂成分が合剤層の表面部、すなわち集電体から離れた位置に偏在することが挙げられる。その結果、合剤層と集電体界面においてバインダ樹脂が希薄になり、それらの結着性が乏しくなる。このようなバインダ樹脂の偏在は、スラリー乾燥時の加熱により、他の材料と比較して相対的に浮上しやすいバインダ樹脂が容易に上層部に移動することによって生じると考えられる。特に、出力向上のため、比表面積の大きい活物質を使用した場合には、バインダ樹脂の偏在が生じやすい問題がある。そのため、電極合剤の結着力不足の問題が生じる可能性がある。
特許文献1には、バインダ樹脂の絶対量を増加させずに、比重が異なる複数の樹脂成分を混在させることによって電極の剥離強度を確保することが提案されている。
特許文献2には、組成の異なる2種類以上の正極活物質を含有する正極が開示されている。
特許文献3には、リチウムコバルト含有複合酸化物粒子とリチウムニッケルコバルト含有複合酸化物粒子とを重量比で5:5〜8:2の比率で含有する電極が開示されている。
特許文献4には、活物質であるスピネル型リチウムマンガン酸化物とリチウム銅酸化物とのBET比表面積の比率が0.5〜5.0であるリチウム二次電池用正極材料が開示されている。
特開2009−245925号公報 特開2007−165301号公報 特開2005−174847号公報 特開2001−167766号公報
特許文献1に記載された電極においては、バインダ樹脂成分全体で見た場合、偏在抑制に一定の効果が認められると推察される。しかしながら、構造及び比重が異なる複数の樹脂成分を混在させることから、均一にバインダ樹脂成分が混合されず分離してしまい、バインダ樹脂成分の比重が同じ各々の成分のみで層を形成し、合剤層が二層構造となる可能性がある。
特許文献2〜4に記載された電極等の場合、2種類以上の活物質を用いるため、高性能の活物質だけで電極を構成することが困難である。
本発明の目的は、二層分離の問題がなく、比表面積が大きい活物質を使用した電極の剥離強度を確保し、高出力型の電池を実現することにある。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、これらの間に挟み込んだセパレータとを捲回して形成した捲回電極群を備え、前記正極及び前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の表面に設けた電極合剤層とを含み、前記正極及び前記負極のうち少なくともいずれかに含まれる前記電極合剤層は、バインダ樹脂と、活物質とを含み、この活物質は、粒度分布のピークを複数有する活物質粒子群で構成されたものであり、前記活物質粒子群は、単一組成の化合物で構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、信頼性が高く、高出力の電池を提供することが可能である。
円筒形電池の構成を示す分解斜視図である。 比表面積の異なる2種類の正極活物質を混合する際の構成の変化を示す概念図である。 実施例の正極の構造を示す模式断面図である。 活物質の配合比と剥離強度との関係を示すグラフである。 活物質の配合比と電池の直流内部抵抗(DCR)との関係を示すグラフである。
比表面積が大きい活物質を含む合剤層と集電体との結着力不足を補うためには、バインダ樹脂の絶対量を増やすことは有用であるが、高い充放電容量を達成するためには、容量に関与しないバインダ樹脂成分を出来る限り低減する必要がある。
本発明者は、出力向上のために比表面積が大きい活物質を使用するとともに、バインダ樹脂の絶対量を増やさずとも高い結着強度を得る電池構成について検討した。その結果、同一組成(単一組成)で比表面積の異なる活物質を2種類以上混合することにより、剥離強度を低下させずに比表面積が大きい活物質を使用可能となることを見出した。特に、比表面積1.1〜1.4m/gの正極活物質と、0.8〜0.9m/gの正極活物質とを混合することが好ましい。ここで、2種類以上を混合した活物質を混合活物質と呼ぶことにする。
混合活物質を使用することにより、バインダ樹脂の添加量を抑制しても、活物質と集電体との密着性を向上させ、剥離強度の低下を抑制できる。また、このような電極を用いることにより、高性能であるとともに、サイクル特性に優れ、信頼性が高い二次電池を提供できる。このような二次電池は、車載用非水電解液二次電池として好適である。
以下、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明する。
前記リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、これらの間に挟み込んだセパレータとを捲回して形成した捲回電極群を備え、正極及び負極はそれぞれ、集電体と、集電体の表面に設けた電極合剤層とを含み、正極及び負極のうち少なくともいずれかに含まれる電極合剤層は、バインダ樹脂と、活物質とを含み、この活物質は、粒度分布のピークを複数有する活物質粒子群で構成されたものであり、活物質粒子群は、単一組成の化合物で構成されている。
前記リチウムイオン二次電池において、活物質粒子群は、平均粒径の異なる2種類以上の粒子群を混合したものである。
前記リチウムイオン二次電池において、2種類以上の粒子群は、それぞれ異なる比表面積を有する。
前記リチウムイオン二次電池においては、2種類以上の粒子群のうち、比表面積が最も大きい粒子群の比表面積は、他の粒子群の比表面積の1.4〜2倍である。
前記リチウムイオン二次電池においては、比表面積が最も大きい粒子群の比表面積が1.0〜2.0m/gであり、比表面積が最も小さい粒子群の比表面積が0.6〜1.0m/gである。
前記リチウムイオン二次電池においては、2種類以上の粒子群の全体のうち、比表面積が最も小さい粒子群の配合比が5〜50重量%である。
前記リチウムイオン二次電池においては、電池容量が3.5Ah以上である。
前記リチウムイオン二次電池において、上記の活物質は、正極に含まれる。
前記リチウムイオン二次電池において、上記の活物質は、リチウムと遷移金属とを構成元素とする複合酸化物である。
前記リチウムイオン二次電池において、電極合剤層は、さらに導電材を含む。
前記リチウムイオン二次電池において、2種類以上の粒子群の比表面積は、平均粒径の増加に伴って減少する。
前記リチウムイオン二次電池においては、2種類以上の粒子群の全体のうち、比表面積が最も小さい粒子群の配合比が10〜30重量%である。
前記リチウムイオン二次電池において、電極合剤層に含まれるバインダ樹脂は、1種類である。
つぎに、図を用いてリチウムイオン二次電池の構造を説明する
(構造)
図1は、円筒形のリチウムイオン二次電池の構造を示す分解斜視図である。
本図において、リチウムイオン二次電池は、電極群8を電池容器1に収納して密封した構成を有する。
電極群8は、正極及び負極並びに正極と負極との間にセパレータ18を挟み込んだものを樹脂製の軸芯7の周りに捲回した構成である。
正極は、アルミニウム等の金属薄膜で形成した正極集電体14の両面に正極合剤16(正極合剤層)を塗工したものである。負極は、銅等の金属薄膜で形成した負極集電体15の両面に負極合剤17(負極合剤層)を塗工したものである。また、セパレータ18は、絶縁性を有する多孔質膜で形成されている。ここで、正極合剤層及び負極合剤層は、電極合剤層と総称してもよい。
図中上方の正極集電体14の長辺部には、正極タブ12が複数設けられている。また、図中下方の負極集電体15の長辺部には、負極タブ13が複数設けられている。
電極群8の最外周部に位置するセパレータ18は、セパレータテープ19で止めてあり、捲回した電極群8が広がらないようにしてある。電極群8の最内周部においては、軸芯7とセパレータ18とが接している。また、電極群8の最外周部においては、負極をセパレータ18が覆っている。
管状の軸芯7の両端部には、正極集電板5及び負極集電板6が嵌め合いにより固定されている。正極集電板5には、正極タブ12が、例えば、超音波溶接法により溶接されている。同様に、負極集電板6には、負極タブ13が、例えば、超音波溶接法により溶接されている。
電池容器1は、負極集電板6に電気的に接続してあり、負極の端子を兼ねている。
電池容器1の内部には、電解質が注入してある。また、電池容器1は、ガスケット2を介して上蓋3及び上蓋ケース4からなる上蓋部によって密封してある。すなわち、電池容器1の開口部は、ガスケット2によって封口してある。ガスケット2は、電池容器1と上蓋ケース4とを電気的に絶縁するようになっている。上蓋部は、導電性を有する。上蓋ケース4には、正極リード9の一部が溶接してあり、正極集電板5にも正極リード9が溶接してある。これにより、上蓋部と電極群8の正極とが電気的に接続される。
本図においては、円筒形の電池について説明したが、これに限定されるものではなく、角形電池などにも適用可能である。
(正極合剤)
正極合剤16は、正極活物質と、正極導電助材と、正極バインダ樹脂とを含む。正極活物質は、リチウム酸化物が好ましい。リチウム酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リチウム複合酸化物(コバルト、ニッケル及びマンガンからなる群から選ばれる2種類以上を含むリチウム酸化物)などが挙げられる。正極活物質には、粒度分布があり、比表面積は、ガス吸着法により測定が可能である。
正極導電助材は、正極合剤16におけるリチウムイオンの吸蔵放出反応で生じた電子を正極集電体14に伝達するのを補助する物質であれば特に制限はない。正極導電助材の例としては、黒鉛やアセチレンブラックなどが挙げられる。
正極バインダ樹脂は、正極活物質と正極導電助材とを結着するとともに、正極合剤16と正極集電体14とを結着することが可能であって、非水電解液との接触によって大幅に劣化しない物質であれば特に制限はない。正極バインダ樹脂の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。
正極合剤16の形成方法の例としては、正極合剤16の構成物質の分散溶液を正極集電体14の表面に塗工する方法が挙げられる。塗工方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法などが挙げられる。また、分散溶液の溶媒の例としては、N−メチルピロリドン(NMP)や水が挙げられる。
(負極合剤)
負極合剤17は、負極活物質と、負極導電材と、負極バインダ樹脂とを含む。負極活物質の例としては、炭素材などが挙げられる。
(電解液)
非水電解液は、リチウム塩をカーボネート系溶媒に溶解した溶液を用いる。リチウム塩の例として、フッ化リン酸リチウム(LiPF)、フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)などが挙げられる。また、カーボネート系溶媒の例として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、或いはこれらの溶媒の1種類以上から選ばれた溶媒を混合したものが挙げられる。
(比表面積が異なる活物質の混合について)
図2は、異なる粒度分布を有し、かつ、比表面積が異なる複数の正極活物質(粒子群)を混合する工程を示す概念図である。
本図においては、平均粒径が小さく、比表面積が大きい粒子群20と、平均粒径が大きく、比表面積が小さい粒子群21とを混合する前後の状態を示している。粒子群20、21を混合することにより、これらの粒子群20、21が混在する混合粒子群100(活物質粒子群)を作製することができる。
なお、混合粒子群100は、異なる粒度分布を有するため、粒度分布のピークを複数有するものとなる。
図3は、正極集電体の表面に正極活物質の混合粒子群を塗工した正極の断面構造を示す模式図である。
本図において、正極は、正極集電体14と、正極集電体14の表面に塗工された正極合剤層24とを含む。正極合剤層24は、粒子群20、21を混合した混合粒子群100と、バインダ樹脂22と、導電助剤23とを含む。
比表面積が小さい活物質粒子(粒子群21)の比表面積は、0.7〜0.8m/g程度が最も好ましい。この場合の比表面積が大きい粒子(粒子群20)の比表面積は、1.1〜1.4m/g程度が最もよい。
通常使用されている正極活物質の比表面積は、0.8〜0.9m/g程度である。このような活物質は、比表面積が充分小さく、また、粒径が大きいため、合剤が集電体から剥離するような問題が生じにくい。一方、高効率な電池の提供のために比表面積が大きい活物質(1.2m/g以上)を使用した場合、バインダが染み出しやすく、剥離しやすいため、バインダの量を多く混合する必要があった。その結果、いずれにしても高効率な電池の提供が困難となる。
そこで、本発明者は、比表面積が小さい活物質を少なくとも5%混在させた状態において、比表面積の大きい活物質を使用することにより、バインダの量を大きく変化させる必要をなくし、結果として、電池の高効率化が達成可能であることを見出した。後述の実施例においては、上記のような活物質を車載用非水電解液電池の正極として適用した例を示して説明する。
車載用途に使用する場合には、電池容量は3.5Ah以上であることが好ましい。従来よりも高出力型電池を実現するためには、比表面積が大きい活物質を用いた電極の剥離強度の低下を抑制し、少ないバインダ樹脂量で且つ厚い合剤層膜においても結着力を確保する電極構造が必要である。この電極構造を実現すれば、信頼性に優れた車載用リチウムイオン二次電池を得ることができる。なお、本発明は、正極や車載用途に限るものではなく、負極にも適用でき、二次電池を必要とする他の用途にも適用することができる。
活物質粒子の比表面積の比(比表面積が大きい粒子群の比表面積/比表面積が小さい粒子群の比表面積)を増加させていくと、この比が1.3程度で密着性の向上効果が現れ始める。そして、比表面積の比が1.4を超えると比表面積が大きい粒子群を混合したことによる密着力低下が補填される。比表面積の比は、2程度が最も好ましい。一方、比表面積の比が大きすぎると、比表面積が大きい粒子によって電極の性能が左右されるため、3以下とすることが好ましい。
比表面積が小さい粒子の比表面積は、0.6〜1.0m/gの範囲とすることが好ましい。実用化が可能な電池性能を達成するため、活物質では少なくとも比表面積0.6m/g以上が必要となる。また、1.0m/gを越える比表面積の活物質粒子では、比表面積が大きい活物質粒子と混合しても密着力の改善効果が小さくなる。
比表面積が大きい粒子の比表面積は、1.0〜2.0m/gの範囲とすることが好ましい。比表面積1.0m/gを超える粒子で電池性能の向上効果が確認できる。また、2.0m/gを超える比表面積が大きい粒子は、性能は高いものの密着性が悪くなり、剥離などが生じやすくなる。
また、同一組成(単一組成)であって比表面積の異なる活物質を2種類以上混合することにより、剥離強度の改善を目指すことが好ましい。比表面積のみならず、組成までも異なる2種類以上の正極活物質を用いた場合にも、上述の本発明と同様の効果が得られる可能性がある。しかしながら、組成の異なる活物質は、異なる物性を有するため、集電体の表面に電極合剤を作製する際に使用されるスラリーに関して、制限が大きくなる可能性がある。したがって、同じ組成で異なる比表面積の活物質を使用することが好ましい。
以下、実施例及び比較例について説明する。
本実施例においては、正極を作製し、剥離強度を測定した。
正極集電体としては、厚さ15μmのアルミ箔を用いた。正極活物質として、比表面積が1.1m/g〜1.4m/gであり、平均粒径が7.9μmである正極活物質A(粒子群20、Li−Mn系複合酸化物(組成式:Li(Ni,Mn,Co)O))と、正極活物質Aと同じ組成であって比表面積が0.7m/g〜0.8m/gであり平均粒径が7.4μmである正極活物質B(粒子群21、Li−Mn系複合酸化物(組成式:Li(Ni,Mn,Co)O))とを用いた。活物質の重量比率は、A:B=90:10とした。
活物質とバインダ樹脂との混合物をN−メチルピロリドン(NMP)に分散してスラリーを作製した。スラリーは、固形分率が63重量%であり、粘度が8000mPa・sであった。このスラリーをロール塗工法により正極集電体の両面に塗工して、正極合剤層を形成した。
作製した正極の合剤層上に、幅18mmの粘着テープを貼付し、その一端を剥離させ、剥離強度を計測した。評価方法は、JIS C 0806−3 1999に準拠し、180°剥離にて測定した。剥離強度は106gf/cmであった。
(比較例1)
比較例として、比表面積が大きい正極活物質Aを用い、実施例1と同様にして正極の合剤層を作製した。
正極活物質Aは、比表面積は1.1〜1.4m/gであり、平均粒径が7.9μmであるLi−Mn系複合酸化物である。正極活物質Aをバインダ樹脂と混合し、固形分率63重量%でNMPに分散してスラリーを作製したところ、スラリーの粘度は8000mPa・sであった。このスラリーをロール塗工法により正極集電体の両面に塗工して、両面に正極合剤層を形成した。
実施例1と同様の方法で剥離強度を評価したところ、剥離強度は59gf/cmであった。この場合、剥離強度が極めて弱く、容易に正極合剤層がアルミ箔から剥がれてしまうため、電池の製造工程で問題となる。
本実施例は、比表面積が大きい活物質Aと、比表面積が小さい活物質Bとの混合の割合を変更した例である。活物質重量比率をA:B=70:30とし、実施例1と同様に正極合剤層を形成した。スラリーの粘度は8000mPa・sであった。実施例1と同様の方法で剥離強度を評価したところ、剥離強度は114gf/cmであった。
本実施例は、比表面積が大きい活物質Aと、比表面積が小さい活物質Bとの混合の割合を変更した例である。活物質の重量比率をA :B=50:50とし、実施例1と同様にして正極合剤層を形成した。スラリーは、固形分率が63重量%であり、粘度が8000mPa・sであった。実施例1と同様の方法で剥離強度を評価したところ、剥離強度は124gf/cmであった。
(比較例2)
本比較例は、比表面積が小さい正極活物質Bのみを用い、実施例1と同様にして正極の合剤層を作製した例である。
正極活物質Bをバインダ樹脂と混合し、NMPに分散して実施例1と同様にして正極合剤層を作製した。スラリーは、固形分率が66重量%であり、粘度が8000mPa・sであった。実施例1と同様の方法で剥離強度を評価したところ、剥離強度は125gf/cmであった。
(結果の分析)
表1は、実施例1〜3並びに比較例1及び2の活物質の配合比、剥離強度及び相対DCRを示したものである。
Figure 2012134023
本表から、比表面積が大きい活物質Aのみを使用した比較例1に比して、実施例1〜3の剥離強度が大幅に改善されていることがわかる。したがって、実施例1〜3の正極においては、比表面積が小さい活物質Bを混合した場合、集電体側にバインダ樹脂を比較的多く存在させることができ、合剤層と集電体との密着強度を向上させることができたものと考えられる。
また、図4は、それぞれの活物質Bの含有比率と剥離強度との関係を示したものである。
本図において、剥離強度は、比表面積が小さい活物質Bを少量混合することにより大幅に改善される一方、50重量%以上の添加ではほぼ一定であり、大量に混合した場合には改善が見られなかった。このことから明らかなように、比表面積が小さい活物質粒子を5重量%程度混合することにより剥離強度は充分に改善し、10重量%以上の混合で高い密着性を示す。更に多く入れるほど剥離強度は強くなるが、50重量%を超える量を混合しても強度の向上効果が少ない。
したがって、比表面積が小さい活物質Bの混合量は、5重量%以上かつ50重量%以下(5〜50重量%)が好ましく、10重量%以上かつ50重量%以下(10〜50重量%)とすることが特に好ましい。
次に、実施例1及び2並びに比較例1及び2の正極を用い、それぞれ電池セルを作製した。そして、作製した電池を用いて直流内部抵抗(DCR)を測定した。
図5は、それぞれの活物質の含有比率とDCRとの関係を示したものである。
DCRは、活物質Aのみ(比較例1)の場合を100とし、各電池の相対値で示した。
本図から、活物質Bの比率が増加するに従ってDCRが上昇するものの、活物質Bの配合量が少ない領域においては、DCRの増加量が少ないことがわかる。すなわち、DCRは、30重量%程度まではほとんど変化しないが、30重量%を超える量を混合すると増加率が大きくなる。
また、比表面積が小さい活物質粒子は、多く入れるほど出力が低下するため、比表面積が小さい活物質Bの混合割合は、30重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることが特に好ましい。
図4及び5の結果を総合すると、比表面積が小さい活物質Bの混合割合(活物質B配合比)は、5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%が更に好ましく、10〜30重量%が更に好ましく、10〜15重量%が特に好ましいことがわかる。
本発明によれば、大容量の車載用リチウムイオン二次電池が提供できる。また、バインダ樹脂の量を少なくし、且つ合剤層膜を厚くしたとしても、合剤層及び集電体において高い結着力を確保し、強度のある電極を形成することができる。
本発明は、リチウムイオン二次電池、特に車載用のリチウムイオン二次電池に適用可能である。
1:電池容器、2:ガスケット、3:上蓋、4:上蓋ケース、5:正極集電板、6:負極集電板、7:軸芯、8:電極群、9:正極リード、12:正極タブ、13:負極タブ、14:正極集電体、15:負極集電体、16:正極合剤、17:負極合剤、18:セパレータ、19:セパレータテープ、20、21:粒子群、22:バインダ樹脂、23:導電助剤、24:正極合剤層、100:混合粒子群、200:正極。

Claims (13)

  1. 正極と、負極と、これらの間に挟み込んだセパレータとを捲回して形成した捲回電極群を備えたリチウムイオン二次電池であって、前記正極及び前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の表面に設けた電極合剤層とを含み、前記正極及び前記負極のうち少なくともいずれかに含まれる前記電極合剤層は、バインダ樹脂と、活物質とを含み、この活物質は、粒度分布のピークを複数有する活物質粒子群で構成されたものであり、前記活物質粒子群は、単一組成の化合物で構成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 前記活物質粒子群は、平均粒径の異なる2種類以上の粒子群を混合したものであることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記2種類以上の粒子群は、それぞれ異なる比表面積を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記2種類以上の粒子群のうち、比表面積が最も大きい粒子群の比表面積は、他の粒子群の比表面積の1.4〜2倍であることを特徴とする請求項3記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記比表面積が最も大きい粒子群の比表面積が1.0〜2.0m/gであり、比表面積が最も小さい粒子群の比表面積が0.6〜1.0m/gであることを特徴とする請求項4記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記2種類以上の粒子群の全体のうち、比表面積が最も小さい粒子群の配合比が5〜50重量%であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 電池容量が3.5Ah以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記活物質は、前記正極に含まれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記活物質は、リチウムと遷移金属とを構成元素とする複合酸化物であることを特徴とする請求項8記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記電極合剤層は、さらに導電材を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  11. 前記2種類以上の粒子群の比表面積は、前記平均粒径の増加に伴って減少することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  12. 前記2種類以上の粒子群の全体のうち、比表面積が最も小さい粒子群の配合比が10〜30重量%であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  13. 前記電極合剤層に含まれる前記バインダ樹脂は、1種類であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
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