JP2013131381A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】捲回電極体等を構成するに好適な柔軟性と、大型電池等に求められる低反応抵抗性が兼ね備えられた正極を備える非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質層34を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、非水電解質とを備える二次電池である。正極活物質層34は、正極活物質36と、第1の結着剤37と、該第1の結着剤37よりもガラス転移点が高い第2の結着剤39とを含んでいる。正極活物質層34中の正極集電体32に近接する領域には第1の結着剤37が偏在し、正極活物質層34中の表面側の領域には第2の結着剤39が偏在している構成とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。詳しくは、正極シートと負極シートとをセパレータを介して捲回されてなる捲回電極体を備える構成の非水電解質二次電池に関する。
近年、リチウム二次電池(例えばリチウムイオン電池)、ニッケル水素電池等の二次電池は、車両搭載用電源、あるいはパソコンおよび携帯端末の電源として好ましく用いられている。特に、リチウム二次電池は、軽量で高エネルギー密度が得られることから、車両搭載用の高出力電源あるいは電力貯蔵システムの電源等としての重要性が高まっている。
この種の電池の一つとして、長尺の正極シートと負極シートとをセパレータを介して積層させて渦巻き状に捲回した捲回電極体を備える電池構造が知られている。電極体を渦巻き状とすることにより正極−負極間の反応面積を増大させることができ、これによってエネルギー密度を高めて、高出力を可能としている。
かかるリチウム二次電池の正極(電極)は、典型的には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出し得る材料(電極活物質)が導電性部材(電極集電体)に保持された構成を有している。そして、正極を製造するにあたり正極集電体に正極活物質を保持させる代表的な方法の一つとして、例えば、正極活物質(リチウム遷移金属複合酸化物等)粉末とバインダ(結着剤)とを適当な媒体に分散させた合剤ペースト(スラリー状、インク状に調製され得る。)を正極集電体(アルミニウム箔等)に塗布し、これを乾燥させることにより正極活物質を含む層(正極活物質層)を形成する方法が知られている。正極活物質層に含まれる結着剤は、粉末状の正極活物質同士を結着させるとともに、正極活物質と集電体とを結着させる機能を有している。
かかる活物質層に用いられる結着剤としては、単に「結着剤」としての性能を有するだけでは不十分であり、例えば、電極特性を向上させ得る品質等が求められてもいる。
このような活物質層に用いられる結着剤への要求を満たすべく、結着剤のガラス転移点(Tg)に着目した技術が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。例えば、特許文献1には、正極活物質層に用いる結着剤として、ガラス転移点が−30℃〜−40℃の溶剤系結着剤を採用することが開示されている。このような範囲のガラス転移点を有する結着剤を使用することで、電極の室温での柔軟性が向上し、電極のハンドリング性が向上する旨が記載されている。
また特許文献2には、相互に異なるガラス転移点を有する2種の結着剤成分を複合して用いることで、25℃付近におけるゴム状態にある結着剤の割合を適切な量にすることが開示されている。このような結着剤を用いることで、電極の膨張収縮に耐えうる柔軟性と、圧延や裁断に耐えうる過度を備える電極となることが記載されている。
特開2011−070994号公報 特開2011−204578号公報
しかしながら、ガラス転移点が低い(例えば、−30℃以下)結着剤を用いると、常温(例えば15〜25℃程度)において結着剤は軟化し、正極活物質を固着するだけでなく、その表面を被覆する傾向がある。これにより活物質の反応面積が減少して反応抵抗が高まり、特に低温での出力特性が低下してしまうという問題があった。
また、ガラス転移点が高い(例えば、25℃以上)結着剤を用いると、常温(例えば15〜25℃程度)において結着剤は硬化し、正極活物質の被覆は押さえられるものの、例えば捲回電極体を作製する場合の柔軟性に欠け、電極活物質層の割れ、剥離や、閉回路電圧(OCV)不良の原因となる等の問題があった。
すなわち、電極の柔軟性と、充放電特性(例えば、低温での出力特性)の向上は、相反する課題であり、これらを同時に満足することは困難であった。このような傾向は、溶剤系結着剤を用いた場合にのみ生じる問題ではなく、近年になって盛んに研究が行われている正極合剤ペースト用の水系結着剤についても顕著にみられる。
本発明は、かかる課題を鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、正極活物質層の柔軟性と低反応抵抗が両立された非水電解質二次電池を提供することである。
すなわち、本発明が提供する非水電解質二次電池は、正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、非水電解質とを備えている。そして上記正極活物質層は、正極活物質と、第1の結着剤と、該第1の結着剤よりもガラス転移点が高い第2の結着剤とを包含している。そしてこの非水電解質二次電池は、かかる正極活物質層中の正極集電体に近接する領域には上記第1の結着剤が偏在し、上記正極活物質層中の表面側の領域には上記第2の結着剤が偏在していることを特徴としている。
かかる構成によると、正極活物質層は表面側の領域とこれと相対する正極集電体に近接する領域とで含有する樹脂の割合が異なり、その物性も変化されている。すなわち、正極集電体に近接する領域にはガラス転移点がより低く、より柔軟性の高い第1の結着剤が多く含まれるため、より柔軟性に富む構成となっている。したがって、正極集電体の柔軟性もが確保され、例えば、捲回電極体の形成等により正極集電体を湾曲させる場合において電極のハンドリング性が向上される。さらに、正極活物質層の割れ、剥離等が抑制され、閉回路電圧(OCV)の不良の問題が解消され得る。一方の、正極活物質層の表面側の領域には、ガラス転移点がより高く、より硬度の高い第2の結着剤が多く含まれるため、結着剤による正極活物質の被覆がより抑制された構成となっている。したがって、ハイレート放電や低温放電時に必要な活物質の反応面積が確保でき、反応抵抗が下がって出力特性が向上される。
このように、かかる非水電解質二次電池においては、正極活物質層は正極集電体に近接する領域と表面側の領域とで物性(典型的には柔軟性)が制御されており、正極集電体の柔軟性の向上と、正極の低反応抵抗特性とが両立され得る。
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様において、上記第1の結着剤は、ガラス転移点Tg(1)が15℃以下であり、上記第2の結着剤は、ガラス転移点Tg(2)が25℃以上である。かかる構成によると、第1の結着剤は少なくとも15℃以上の温度範囲において柔軟性を示し、正極自体にも柔軟性を付与し得る。したがって、例えば、非水電解質二次電池の製造温度(典型的には、25℃)において正極は柔軟性を有し、捲回電極体の製造等において捲回加工等が容易となり、正極活物質層の割れ、箔離等を抑制することができる。また、第2の結着剤は、非水電解質二次電池の駆動温度(例えば、15℃〜25℃程度)において硬化しており、第2の結着剤が正極活物質を被覆する可能性を抑制し得る。したがって、正極の反応抵抗を低く保つことができ、特に低温での出力特性を高く維持することができる。
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様において、上記正極活物質層は、上記正極集電体上に第1層が形成され、該第1層の上に第2層が形成された二層構成である。そして上記第1層には上記第1の結着剤を含み、上記第2層には上記第2の結着剤を含むことを特徴としている。かかる構成によると、正極活物質層において第1の結着剤と第2の結着剤が混在することなく配設されるため、両結着剤のガラス転移点を異ならしめることの効果がより明確に得られ、正極集電体の柔軟性の向上および反応抵抗の低減をより効果的に実現することができる。
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様において、上記第1層の厚みをt1、上記第2層の厚みをt2としたとき、上記第1層と上記第2層の厚みの比は、t1:t2=x:(1−x)で表され、式中xは0.1≦x≦0.5を満たすことを特徴とする。かかる構成によると、第1層と第2層との厚みの割合を適切な範囲のものとすることができ、第1の結着剤による効果と第2の結着剤による効果とをバランスよく適切に発現させることができる。
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様において、上記第1の結着剤および上記第2の結着剤は、何れもアクリル樹脂をベースとするアクリル系ポリマーであることを特徴としている。アクリル樹脂は、溶剤系バインダおよび水系バインダとして用いることができる。
アクリル樹脂をベースとするアクリル系ポリマーは、溶剤系ポリマーおよび水系ポリマー(水系エマルションを含む。)として利用されており、ここに開示された発明においても、水または有機系溶剤の何れに溶解して用いることもできる。また、分子構造および分子量等を調製することで、ガラス転移点Tgを制御することもできる。そしてさらに、正極の酸化的雰囲気においても電気化学的に安定しており、正極における充放電特性を損ねることはない点で、正極活物質層用の結合剤として好ましい。
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様において、上記正極および上記負極はシート状であって、シート状のセパレータを介して互いに重ねられ、捲回された捲回電極体を構成している。上記のとおり、ここに開示される非水電解質二次電池は、電極の柔軟性に富んでおり、例えば、正極シート、セパレータシートおよび負極シートを重ねて捲回した場合においても、正極活物質層に発生する応力がその柔軟性により吸収されて、割れ、剥がれ等は発生し難い。したがって、かかる非水電解質二次電池は、例えば、捲回電極体を備える構成の二次電池として好適に用いることができる。
以上の非水電解質二次電池は、ガラス転移点の低い第1の結着剤の使用により正極活物質層に付与された柔軟性により、例えば捲回時の応力が正極集電体と正極活物質層との界面あるいは正極活物質層中に発生するのを抑制し得る。そのため、正極活物質層の割れ、剥がれ等の問題が低減され、例えば閉回路電圧不良といった問題が起こる可能性が減少し、本来正極が有する充放電特性をいかんなく発揮できる構成となっている。また、ガラス転移点の高い第2の結着剤の使用により、正極活物質の被覆が抑えられ、ハイレート放電や低温放電時に必要な活物質の反応面積が確保でき、反応抵抗が下がって出力特性が向上される。そのため、正極活物質層の割れ、剥がれ等の問題が低減され、例えば閉回路電圧不良といった問題が起こる可能性が減少し、本来正極が有する充放電特性をいかんなく発揮できる構成となっている。かかる構成は、例えば高エネルギー密度特性を備えるために捲回電極体を備える大型電池や、組電池等の形態の二次電池に対して好適に適用し得る。特に、例えば、ハイレートでの入出力特性が求められる動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)等として好適であり、本発明は、このような車両(例えば自動車)の動力源として利用し得る。
一実施形態に係る非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を示す斜視図である。 図1中のII−II線に沿う縦断面図である。 一実施形態に係る捲回電極体を示す模式図である。 一実施形態に係る正極シートの構造を模式的に示す横断面図である。 正極シートの柔軟性を評価する様子を説明する図である。
本明細書において「二次電池」とは、リチウム二次電池、ニッケル水素電池等の繰り返し充電可能な電池一般をいう。
また、本明細書において「リチウム二次電池」とは、リチウムイオンを電荷担体として繰り返し充電可能な電池一般をいい、典型的にはリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等を包含する。
さらに、本明細書において「活物質」は、二次電池において電荷担体となる化学種(例えば、リチウムイオン電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および離脱)可能な物質をいう。
以下、本発明の非水電解質二次電池を、好適な実施形態としてのリチウムイオン電池を例にし、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン電池10を模式的に示す斜視図である。図2は、図1中のII−II線に沿う縦断面図である。図3は、捲回電極体20の構成を説明するための図である。
本実施形態に係るリチウムイオン電池10は、図1〜図3に示すように、代表的には、長尺な正極集電体32上に正極活物質層34を備える正極シート(正極)30と、長尺な負極集電体52上に負極活物質層54を備える負極シート(負極)50と、非水電解質(図示せず)とを備える。本実施形態においては、さらに、上記正極シート30と上記負極シート50との間に介在する2枚のセパレータ70を備え、これら正極30、負極50およびセパレータ70を重ね合わせて捲回することで、捲回電極体20を構成している。
また、リチウムイオン電池10は、この電極体20と適切な非水系の電解質(典型的には電解液)とを収容する電池ケース80(典型的には扁平な直方体形状)を備える。
ここで、正極シート30は、所定の長尺の正極集電体32上に、正極活物質36および結着剤(バインダ)を含む正極活物質層34を備えている。正極集電体32の幅方向片側には、縁部に沿って未塗工部43が設定されている。この実施形態においては、正極活物質層34は、正極集電体32に設定された未塗工部43を除いて、正極集電体32の両面に形成されている。この正極活物質層34は、典型的には、正極活物質36、導電材、結着剤を含む正極合剤ペーストを正極集電体32上に供給することで形成される。
そしてここに開示される正極シート30は、結着剤として、第1の結着剤と、第1の結着剤37よりもガラス転移点が高い第2の結着剤39との2種類の結着剤を含んでいる。
正極集電体32は、従来のリチウムイオン電池10等の正極に用いられる電極集電体と同様、導電性の良好な金属からなる導電性部材を用いることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、鉄等を主成分とする金属またはその合金等を用いることができる。より好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。正極集電体の形状については特に制限はなく、所望の二次電池の形状等に応じて様々なものを考慮することができる。例えば、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態のものであり得る。典型的には、シート状のアルミニウム製の正極集電体32が用いられる。
正極活物質36としては、リチウムを吸蔵および放出可能な材料が用いられ、従来からリチウムイオン電池10等に用いられている各種の物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。このような正極活物質36としては、リチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)が好適に用いられ、典型的には、層状構造の酸化物あるいはスピネル構造の酸化物を適宜選択して使用することができる。例えば、リチウムニッケル系酸化物(代表的には、LiNiO)、リチウムコバルト系酸化物(代表的には、LiCoO)およびリチウムマンガン系酸化物(代表的には、LiMn)から選択される一種または二種以上のリチウム遷移金属酸化物の使用が好ましい。
また、その他、一般式:
Li(LiMnCoNi)O
(前式中のa、x、y、zはa+x+y+z=1を満たす。)
で表わされるような、遷移金属元素を3種含むいわゆる三元系リチウム過剰遷移金属酸化物や、一般式:
xLi[Li1/3Mn2/3]O・(1−x)LiMeO
(前式中、Meは1種または2種以上の遷移金属であり、xは0<x≦1を満たす。)
で表わされるような、いわゆる固溶型のリチウム過剰遷移金属酸化物等であってもよい。
さらに、上記正極活物質として一般式がLiMAO(ここでMは、Fe,Co,NiおよびMnから成る群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、Aは、P,Si,SおよびVから成る群から選択される元素である。)で表記されるポリアニオン型化合物も挙げられる。
このような正極活物質36を構成する化合物は、例えば、公知の方法で調製して用意することができる。例えば、目的の正極活物質36の組成に応じて適宜選択されるいくつかの原料化合物を所定の割合で混合し、その混合物を適切な手段によって焼成する。これにより、正極活物質36を構成する化合物としての酸化物を調製することができる。なお、正極活物質(典型的には、リチウム遷移金属酸化物)の調製方法は、それ自体は何ら本発明を特徴づけるものではない。
また、正極活物質36の形状等について厳密な制限はないものの、上記のとおり調製された正極活物質36は、適切な手段で粉砕、造粒および分級することができる。例えば、平均粒径がおよそ1μm〜25μm(典型的にはおよそ2μm〜15μm)の範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を、ここに開示される技術における正極活物質36として好ましく採用することができる。これにより、所望する平均粒径および/または粒度分布を有する二次粒子によって実質的に構成される粒状の正極活物質粉末を得ることができる。
導電材としては、従来この種のリチウムイオン電池10等で用いられているものであればよく、特定の導電材に限定されない。典型的には、例えば、カーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料を用いることができる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等)、グラファイト粉末等のカーボン粉末を用いることができる。これらのうち一種又は二種以上を併用してもよい。
第1の結着剤37および第2の結着剤39としては、ガラス転移点が上記のとおりの関係である以外は特に制限はなく、各種の結着剤(ポリマー材料)を用いることができる。例えば、有機溶剤を含む溶媒を使用する溶剤系の結着剤であっても良いし、溶媒として水を使用する水系の結着剤、あるいはエマルジョン系の結着剤であっても良い。また、第1の結着剤37と第2の結着剤39とで同組成の結着剤を用いても良いし、異なる組成の結着剤を用いても良い。このような結着材37,39としては、一般的なリチウムイオン電池10の正極に使用し得る結着材等から適宜採用することができる。
例えば、具体的には、例えば、水に溶解する(水溶性の)ポリマー材料として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系ポリマー、ポリウレタン等のウレタン系ポリマー;等が例示される。また、水に分散する(水分散性の)ポリマー材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のビニル系重合体;ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のエチレン系ポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル共重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等のゴム類等が例示される。また、かかるポリマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのポリマーの中でも、アクリル樹脂をベースとするアクリル系ポリマーは、強結着力を有するとともに、溶剤系ポリマーおよび水系ポリマー(水系エマルションを含む。)として利用することができるために好ましい。また、ガラス転移点Tgを容易に制御できることも簡便である。そしてさらに、正極の酸化的雰囲気においても電気化学的に安定しており、正極における充放電特性を損ねることが少ない点で、正極活物質層用の結合剤として好ましく用いることができる。
このようなアクリル系ポリマーは、1種類のホモポリマー(例えば、ポリメタクリル酸メチル)からなるものであっても、2種以上のメタクリル酸やアクリル酸の共重合体(例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートコポリマー)、あるいはメタクリル酸やアクリル酸とその他のモノマーの共重合体(例えば、メチルアクリレート−エチレンコポリマー)からなるものであっても、複数種のホモポリマーやコポリマーの混合物からなるものであってもよい。
ガラス転移点(Tg)は、結着剤の分子鎖がある程度変形したり移動したりできる弾性状態と、分子鎖の部分的な運動性が失われるガラス状態との転移の境となる温度を意味する。したがって、結着剤は、ガラス転移点よりも低温で剛性および高粘性を示し、ガラス転移点以上の温度で急速に剛性と粘度が低下して柔軟性を示す。なお、通常用いられる高分子結着剤等においては、ガラス転移点を境に明瞭に硬度および柔軟性が大きく変化することは稀で、ガラス転移点を境にやや緩やかに硬度および柔軟性が変化し得る。なお、上記のポリマーのガラス転移点は、分子構造を変えること、重合比(共重合比)を変えること、添加剤を加えること、架橋剤を加えること等によって調整することができる。
また、ガラス転移温度Tgは、例えば、市販の示差走査熱量測定(Difference Scanning Calorimeter:DSC)装置等を用いて測定することができる。
なお、結着剤37,39とともに使用する溶媒については、結着剤37,39との組み合わせを考慮して適宜選択することができる。環境負荷の軽減、材料費の低減、設備の簡略化、廃棄物の減量、取扱性の向上等の種々の観点から、水系の溶媒の使用が好ましい。水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒が好ましく用いられる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒成分としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。なお、溶媒は水系溶媒に限定されず、溶剤系溶媒(結着剤の分散媒が主として有機溶媒)であってもよい。非水系溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン(NMP)等を用いることができる。
また、調製する合剤ペーストによっては、必要に応じて増粘材を含有することができる。かかる増粘材としては、水若しくは溶剤(有機溶媒)に溶解又は分散するポリマー材料を採用し得る。水に溶解する(水溶性の)ポリマー材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);等が挙げられる。第1組成物の混練(調製)の際の作業性および安定性等の観点からCMC等のセルロース誘導体が好ましく使用される。
増粘材の添加量(含有量)は、負極活物質の種類や量に応じて適宜選択すればよく、例えば、負極活物質層の固形分全量を100質量%としたときに凡そ0.3質量%〜2質量%(例えば凡そ0.5質量%〜1質量%)とすることができる。
また、特に限定するものではないが、正極活物質36を100質量部としたときの、導電材の使用量は、例えば1〜20質量部(好ましくは5〜15質量部)とすることができる。また、正極活物質36を100質量部としたときの、第1の結着剤37および第2の結着剤39の合計の使用量は、例えば0.5〜10質量部とすることができる。
そして正極シート30は、正極活物質層34中の正極集電体32に近接する領域には、第1の結着剤37が偏在し、また、正極活物質層中の表面側の領域には、第2の結着剤が偏在していることを特徴としている。ここで、「正極集電体32に近接する領域」とは、正極活物質層34において正極集電体32に接して略層状に広がる領域を意味し、その領域の広さについては明確な制限はない。とりわけ、正極活物質層34の総厚みを1としたとき、正極集電体32からのおおよその厚み(距離)が0.5以下の略層状に広がる領域、例えば、正極集電体32からのおおよその厚み0.5より小さい領域とするのが好ましい。そして「表面側の領域」とは、正極活物質層34から上記の「正極集電体32に近接する領域」を除いた残りの領域として理解することができる。すなわち、好ましくは、正極活物質層34の総厚みを1としたとき、正極活物質層34の表面からのおおよその厚み(距離)が0.5以上の略層状に広がる領域、例えば、正極集電体32からのおおよその厚み0.5より大きい領域とすることができる。これらの領域は、明瞭な境界を形成しても良いし、形成していなくても良い。
なお、偏在とは、該領域に含まれる全ての結着剤を100質量%としたとき、50質量%を超える割合で第1の結着剤37あるいは第2の結着剤39のいずれか一方の結着剤が存在していることを意味している。より好ましくは、70質量%以上、さらに限定的には80質量%以上、好ましくは95質量%以上が望ましい。例えば、いずれか一方の結着剤が100質量%で存在していても良い。
このことからもわかるように、第1の結着剤37と第2の結着剤39とは、「正極集電体32に近接する領域」および「表面側の領域」の各々において、いずれか一方のみが存在していても良いし、両方が混在していても良い。またさらに、「正極集電体32に近接する領域」および「表面側の領域」の各領域内においても、均一に(典型的には、均一な濃度で)存在していても良いし、均一に存在していなくても良い。例えば、正極活物質層34の厚み方向で第1の結着剤37と第2の結着剤39との濃度が徐々に増減するよう変化されていても良い。
かかる構成によると、正極活物質層34は、正極集電体32に近接する領域と表面側の領域とで含有する結着剤の特性が異なり、その物性が変化されている。すなわち、正極集電体32に近接する領域にはガラス転移点がより低く、より柔軟性の高い第1の結着剤が偏在しているため、より柔軟性に富む領域が形成されている。
したがって、正極集電体32の柔軟性が確保され、例えば、捲回電極体20の形成等により正極30を湾曲させる場合等におけるハンドリング性が向上される。そして、このように正極30を湾曲させた場合であっても、正極活物質層34の割れ、剥離等が抑制される。
また、正極活物質層34の表面側の領域には、ガラス転移点がより高く、より剛性の高い第2の結着剤39が偏在しているため、結着剤39により正極活物質36が被覆される可能性が抑制された構成となっている。したがって、表面側の領域においてはハイレート放電や低温放電時に必要な活物質の反応面積が確保でき、反応抵抗が下がり、正極30における出力特性が向上される。
このように、かかるリチウムイオン電池10においては、正極活物質層34は正極集電体32に近接する領域と表面側の領域とで物性が制御されており、例えば、正極集電体32の柔軟性の向上と、正極30の低反応抵抗特性とが両立されている。
そしてここに開示されるリチウムイオン電池10において、正極シート30は、代表的には、図4に示したような断面構造をとり得る。すなわち、正極シート30において、正極活物質層34は、正極集電体32上に第1層33が形成され、この第1層の上に第2層35が形成された二層構成とすることができる。ここで、第1層33には上記第1の結着剤37を含み、第2層35には上記第2の結着剤39を含む。したがって、第1層33が正極集電体32に近接する領域に相当し、第2層35が表面側の領域に相当する。かかる構成によると、正極活物質層34において第1の結着剤37と第2の結着剤39が混在することなく配設されるため、両結着剤37、39のガラス転移点を異ならしめることの効果をより明確に得ることができる。したがって、正極集電体32の柔軟性の向上および正極30の反応抵抗の低減をより効果的に実現することができる。
ここで、第1の結着剤37および第2の結着剤39のガラス転移点Tgについて、より詳細には、第1の結着剤37のTg(1)よりも第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)が高いことが必須の要件である。このようなガラス転移点の目安としては、例えば、25℃程度の温度を基準として、第1の結着剤37のTg(1)を25℃未満(例えば−40℃以上)、第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)を25℃以上(例えば40℃以下)とすることが、好適な例として示される。
より望ましくは、第1の結着剤37のガラス転移点Tg(1)が15℃以下で、第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)が25℃以上である。すなわち、第1の結着剤は、15℃以下の温度範囲に設定されたガラス転移点Tg(1)かそれ以上の温度で軟化した状態にあり、第2の結着剤は25℃以上に設定されたガラス転移点Tg(2)より低い温度で適度に硬化した状態にある。
したがって、かかる構成の正極30は、例えば15℃以上の温度範囲において柔軟性を有し、例えば、捲回電極体の製造等において捲回加工等が容易となる十分な柔軟性を備え得る。したがって、正極活物質層34の割れ、箔離等を抑制することができ、良好な正極30を実現し得る。
また、かかる構成の正極30は、例えば25℃以下の温度において適度に硬化している。したがって、第2の結着剤39が正極活物質を被覆する可能性が抑制され、正極30の反応抵抗を低く保つことができ、特に低温での出力特性を高く維持することができる。また、充放電時の正極活物質層34の体積変化が適切に抑えられ、正極30の耐久性が向上する。なお、ガラス転移点Tgが高すぎると、製造が難しくなってくることに加えて、ガラス転移点Tgの増大に伴う耐久性向上効果も鈍化するためメリットがあまりない。第2の結着剤39のガラス転移点Tgとしては、概ね40℃以下程度(例えば40℃未満)を目安とするのが適当である。
このような正極30の二層構成において、第1層33の厚みをt1、第2層35の厚みをt2すると、第1層33と第2層35の厚みの比t1:t2は、x:(1−x)で表すことができる。ここで、式中のxは、正極活物質層34の厚みを1としたときの第1層33の厚みの割合を示し、(1−x)は正極活物質層34の厚みを1としたときの第2層35の厚みの割合を示す。
上記のとおり、xには厳密な制限はないものの、第1層33の厚みt1は正極30に付与する柔軟性と相関があり、例えば電極を倦回するに好ましい柔軟性を正極30に付与する場合には、xが0.05以上であることが好ましい。xが0.1以上の場合に、より十分な柔軟性を備える正極30を得ることができる。
一方で、第2層35の厚みt2は正極30に付与する低抵抗特性と相関があり、例えば電池10の低温反応抵抗を満足できる正極30を実現するには、(1−x)が0.5以上、すなわち、xが0.5以下であることが好ましい。
これらのことから、正極30の柔軟性および充放電特性(例えば、反応抵抗、典型的には低温反応抵抗)を考慮すると、0.05≦x≦0.5であることが好ましく、更には0.1≦x≦0.5であることがより好ましい。xの値をこのような範囲のものとすることで、第1層と第2層との厚みの割合を適切に設定することができ、正極集電体の柔軟性の向上と反応抵抗の低減とをバランスよく実現することができる。
以上のように、ここに開示される正極30は柔軟性を備えているため、例えば、図3に示したような構成を有する捲回電極体20を構成した場合においても、正極活物質層34に発生する応力がその柔軟性により吸収されて、割れ、剥がれ等の発生が抑制されている。したがって、この正極30は、例えば、捲回電極体20を備える構成のリチウムイオン電池10等に好適に用いることができる。
また、負極シート50は、所定の長尺の負極集電体52上に、負極活物質および結着剤(バインダ)を含む負極活物質層54を備えており、特定の材料、構成等に限定されず、従来この種のリチウムイオン電池10等で採用されているものであってよい。負極集電体52の幅方向片側には、縁部に沿って未塗工部43が設定されている。負極活物質層54は、負極集電体52に設定された未塗工部43を除いて、負極集電体52の両面に形成されている。この負極活物質層54は、典型的には、負極活物質56および結着剤とともに、必要に応じて導電材を含む負極合剤ペーストを、負極集電体32上に供給することで形成される。
負極集電体52には、従来のリチウムイオン電池10等の負極に用いられる電極集電体と同様、負極に適する導電性の良好な金属からなる導電性部材を用いることができる。例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン電池10等に用いられる材料の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が挙げられる。より具体的には、負極活物質は、例えば、天然黒鉛、非晶質の炭素材料で表面の少なくとも一部をコートした天然黒鉛、黒鉛質(グラファイト)、難黒鉛化炭素質(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質(ソフトカーボン)、または、これらを組み合わせた炭素材料でもよい。また、例えば、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In、As、Sb、Bi等を構成金属元素とする金属化合物(好ましくは金属酸化物)などとしても良い。また、負極活物質粒子として、LTO(チタン酸リチウム)を用いることも可能である。導電性に乏しい負極活物質については、例えば、炭素被膜を設けて金属化合物の表面の少なくとも一部を被覆したり、負極活物質層に導電材料を含ませるなどして、導電性を備えるようにしてもよい。この場合、負極活物質層に導電材を含有させなくてもよいし、従来よりも導電材の含有率を低減させてもよい。このような負極活物質の付加的な態様や、粒径等の形態は、所望の特性に応じて適宜に選択することができる。
導電材は、必要に応じて、従来からリチウムイオン電池10等に用いられる導電材の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、具体的には、カーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料、ニッケル粉末等の導電性金属粉末が例示される。カーボン粉末としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックを好ましく採用することができる。このような導電材は、一種を単独で、または二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
また、結着剤についても、従来からリチウムイオン電池に用いられる結着剤の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。このような結着剤は、一種を単独で、または二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
溶媒としては、上記正極活物質層34の形成に用いるのと同様の水性溶媒および非水溶媒のいずれも使用可能である。非水溶媒の好適な例としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。また、上記正極活物質層54の結着剤として例示したポリマー材料は、結着剤としての機能の他に、負極合剤ペーストの増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
また、特に限定するものではないが、負極活物質層54に導電材を含む配合では、負極活物質56を100質量部としたときの導電材の使用量は、例えば、およそ1〜30質量部(好ましくは、およそ2〜20質量部、例えば5〜10質量部程度)とすることができる。また、負極活物質100質量部としたときの結着剤の使用量は、例えば0.5〜10質量部とすることができる。
セパレータ70としては、従来よりリチウムイオン電池10等に用いられるのと同様のセパレータを使用することができる。例えば、樹脂からなる多孔性シート(微多孔質樹脂シート)を好ましく用いることができる。かかる多孔性シートの構成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。特に、PEシート、PPシート、PE層とPP層とが積層された二層構造シート、二層のPP層の間に一層のPE層が挟まれた態様の三層構造シート等、の多孔質ポリオレフィンシートを好適に使用し得る。なお、電解質として固体電解質もしくはゲル状電解質を使用する場合には、セパレータが不要な場合(すなわちこの場合には電解質自体がセパレータとして機能し得る。)があり得る。
ここで用いられる電解質には、従来のリチウムイオン電池10等に用いられる非水電解質と同様の一種または二種以上のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解質は、典型的には、適当な非水溶媒に電解質(即ち、リチウム塩)を含有させた組成を有する。電解質濃度は特に制限されないが、電解質を凡そ0.1mol/L〜5mol/L(好ましくは、凡そ0.8mol/L〜1.5mol/L)程度の濃度で含有する非水電解液を好ましく用いることができる。また、かかる液状電解液にポリマーが添加された固体状(ゲル状)の電解液であってもよい。
該非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が例示される。また、該電解質としては、例えばLiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiCSO、LiC(SOCF、LiClO等が例示される。
なお、電解液には、過充電防止剤などの添加剤を加えることができる。
そして、本実施形態では、図3に示すように、上記のとおり作製した正極シート30および負極シート50を2枚のセパレータ70とともに積み重ね合わせて捲回している。負極集電体52と正極集電体32とは、集電性を高める目的で、互いの未塗工部43が捲回電極体20の幅方向で反対側に突出するように、配置される。
負極活物質層54の幅は正極活物質層34の幅よりも広く、負極活物質層54が正極活物質層34を幅方向に覆う状態であることが好ましい。また、セパレータ70は、負極活物質層54を幅方向に覆うことで、正極シート30と負極シート50の絶縁を確保する。すなわち、これらの幅方向の寸法関係は、正極活物質層34の幅a1よりも負極活物質層54の幅b1が少し広く、さらに負極活物質層54の幅b1よりもセパレータ70の幅c1、c2が少し広いものとなっている(c1、c2>b1>a1)。
かかる構成によると、負極活物質層54が正極活物質層34よりも幅広のため、正極から放出される電荷担体の負極での受け入れ性が高まり、負極の容量を確保することができる。そのため、例えば、負極でのリチウムの析出を抑制する効果を得ることができる。
電池ケース80は、上記扁平な直方体形状における幅狭面の一つが開口部(図1および図2では角型形状の上面)となっている箱型のケース本体84と、その開口部に取り付けられて(例えば溶接されて)該開口部を塞ぐ蓋体82とを備えている。電池ケース80を構成する材質としては、一般的なリチウムイオン電池等で使用されるものと同様のものを適宜使用することができ、特に制限はない。例えば、金属(例えばアルミニウム、スチール等)製の容器、合成樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂等、ポリアミド系樹脂等の高融点樹脂等)製の容器等を好ましく用いることができる。本実施形態に掛かる電池ケース80は例えばアルミニウム製である。蓋体82は、ケース本体84の開口部の形状に適合する長方形状に形成されている。さらに、蓋体82には、外部接続用の正極端子40と負極端子60とがそれぞれ設けられており、これらの端子40、60の一部は蓋体82から電池ケース80の外方に向けて突出するように形成されている。
捲回電極体20は、通常、所定の電池ケース80の形状に合わせて成形され得る。例えば、円筒形の電池ケース80には捲回断面形状が円形の捲回電極体20が用意され、角形の電池ケース80には捲回断面形状が小判型の捲回電極体20が用意される。
以上のようにして得られた捲回電極体20は、正極集電体32の未塗工部43に正極端子40が接合され、捲回電極体20の正極シート30と電池ケース80の蓋体82とが電気的に接続される。同様に、負極集電体52の未塗工部43に負極端子60が接合され、負極シート50と電池ケース80の蓋体82とが電気的に接続されている。なお、正・負極端子40、60と正・負極集電体32、52の未塗工部43とは、例えば、超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合され得る。
そして捲回電極体20は、その捲回軸WL(図3参照)が横倒しとなるようにして、ケース本体84内に収容される。その後、ケース本体84の開口部に蓋体82を装着し封止し、蓋体82に設けられた注液孔86から電池ケース80内に電解液が注入される。ここで用いられる電解液には、適切な支持塩(例えばLiPF等のリチウム塩)を所定量(例えば濃度1M)含むECとDMCとの混合溶媒(例えば質量比1:1)等を用いることができる。ケース本体84の開口部の封止は、例えば、ケース本体84に蓋体82を溶接するとよい。この場合、溶接は、例えばレーザ溶接で行なうとよい。これにより、本実施形態のリチウムイオン電池10を構築することができる。また、従来のリチウム二次電池のケースと同様に、蓋体82には、電池異常の際に電池ケース80内部で発生したガスを電池ケース80の外部に排出するための安全弁88が設けられている。安全弁88は、電池ケース80内部の圧力が所定レベルを超えて上昇したときに、開弁して電池ケース80の外部にガスを排出する機構を備えていれば特に制限無く使用することができる。
以上、二次電池の一形態としてリチウムイオン電池10を例にして説明を行ってきたが、本発明がかかる実施形態に限定されることはない。即ち、正極(正極シート)30として、ここに開示される第1の結着剤37とこれよりもガラス転移点が高い第2の結着剤39とを含み、第1の結着剤および第2の結着剤が上記のとおり偏在しているものを用いる限りにおいて、その他に使用される構成材料および構成部材の組成や形態、構築される二次電池の構成、形状(外形やサイズ)等には特に制限されない。例えば、二次電池としては、水系電解質を有する二次電池あるいは非水系電解質を備える二次電池のいずれであっても良い。また、例えば、電解質についても、有機溶媒、高分子固体電解質、溶融塩電解質あるいは無機固体電解質等のいずれのものであっても良い。電池外装ケースは角型形状、円筒形状等の形状でもよく、あるいは小型のボタン形状であってもよい。また、外装がラミネートフィルム等で構成される薄型シートタイプであってもよい。
なお、ここに開示される非水電解質二次電池は、ガラス転移点の低い第1の結着剤の使用により正極活物質層34に付与された柔軟性によって、例えば捲回時の応力が正極集電体32と正極活物質層34との界面あるいは正極活物質層34中に発生するのを抑制し得る。そのため、正極活物質層34の割れ、剥がれ等が低減されて、例えば閉回路電圧不良といった問題が起こる可能性が減少する。また、よりガラス転移点の高い第2の結着剤の使用により、正極活物質の被覆が抑えられ、ハイレート放電や低温放電時に必要な活物質の反応面積が確保でき、反応抵抗が下がって出力特性が向上される。そしてかかる第1の結着剤および第2の結着剤は、このような効果が最大限に発揮されるよう、正極中に偏在して配合されている。これにより、正極30は本来有する充放電特性をいかんなく発揮できる構成となっている。
かかる構成は、例えば高エネルギー密度特性を備えるために捲回電極体20を備える大型電池や、組電池等の形態の二次電池に対して好適に適用し得る。特に、例えば、ハイレートでの入出力特性が求められる動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)等として好適であり、本発明は、このような車両(例えば自動車)の動力源として利用し得る。
以下に実施例を示し、本発明についてさらに説明する。ただし、本発明がこれらの例に限定されることがないことは言うまでもない。
<サンプル1>
以下の手順で、評価用セルとしての、捲回電極体を備えるリチウムイオン電池(サンプル1)を作製した。
[正極シートの作製]
第1層:正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3粉末と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、第1の結着剤としてガラス転移点Tg(1)が15℃のアクリル系バインダとを用意し、これらの材料の質量比が正極活物質:導電材:増粘剤:結着剤として93:4:1:2となるように混合し、溶媒としての水に分散させてスラリー状の正極合剤第1層用ペーストを調製した。
第2層:上記正極合剤第1層用ペーストにおける第1の結着剤に替えて、第2の結着剤としてTg(2)が−40℃のアクリル系バインダを用い、その他の材料および配合は変えずに正極活物質:導電材:増粘剤:結着剤としての質量比が93:4:1:2となるように混合し、溶媒としての水に分散させてスラリー状の正極合剤第2層用ペーストを調製した。
この正極合剤第1層用ペーストを、正極集電体としての厚さ15μmの長尺シート状のアルミニウム箔の両面に、グラビアコーターにて第1層の厚みt1が10μmとなるように塗布した。次いで、正極合剤第2層用ペーストを、上記第1層の上に、コンマコーターで第2層の厚みt2が90μmとなるように塗布した。これにより、二層構造の正極活物質層を形成した。なお、これらの正極合剤ペーストは、幅方向の両端に未塗工部が設けられるよう中心寄りに所定の幅で塗布した。
この塗布物が乾燥した後、ロールプレス機にて、正極活物質の厚みが110μmで均一となるようにプレスすることによりシート状に成形した。そして、集電体の幅方向中心において押出カッターにより長手方向にスリットし、長さ5000mmの二枚の正極シートを得た。
[負極シートの作製]
負極活物質として黒鉛粉末を用い、これを結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)との質量比が、負極活物質:結着剤:増粘剤として98:1:1となるように、溶媒としての水と混合して、負極合剤用ペーストを調製した。
この負極合剤用ペーストを、負極集電体としての厚み120μmの長尺状の銅箔の両面に、コンマコーターにより塗布した。そして形成された塗布物を乾燥させた後、ロールプレス機にて負極活物質層の厚みが10μmで均一となるようにプレスすることにより、シート状の負極を成形した。その後、集電体の幅方向中心において長手方向に押出カッターによりスリットし、長さ5600mmの二枚の負極シートを得た。
[セパレータ]
セパレータとしては、PP/PE/PPの三層構造を有する三層セパレータ(厚み:25μm)を用いた。
[評価用セルの構築]
上記正極シートと上記負極シートとを未塗工部が互いに反対方向となるように、かつ、2枚のセパレータが両シート間にそれぞれ介在するように重ね、これらを捲回して捲回電極体を作製した。この捲回電極体を非水電解質とともに角型の電池ケースに挿入して封口し、評価用セルとしてのリチウムイオン電池(サンプル1)を構築した。なお、非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびジエチルカーボネート(DEC)が3:4:3の体積比で混合された混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを約1mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。
[定格容量の測定]
次に、上記のように構築した試験用リチウムイオン電池について、温度25℃、3.0Vから4.1Vの電圧範囲で、次の手順1〜3によって定格容量を測定した。
手順1:1Cの定電流で3.0Vまで放電し、続いて2時間、定電圧で放電し、10秒間休止する。
手順2:1Cの定電流で4.1Vまで充電し、続いて2.5時間、定電圧で充電し、10秒間休止する。
手順3:0.5Cの定電流で3.0Vまで放電し、続いて2時間、定電圧で放電し、10秒間停止する。
そして、手順3における定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を定格容量とした。この試験用リチウムイオン電池の定格容量は、およそ1Ahであった。
<サンプル2〜10>
正極活物質層の第1層に用いる第1の結着剤のガラス転移点Tg(1)および第2層に用いる第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)を、表1に示すものに変化させ、その他はサンプル1と同様にして、評価用セルとしてのリチウムイオン電池(サンプル2〜10)を構築した。
すなわち、サンプル2〜5は、第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)は25℃のまま、第1の結着剤のガラス転移点Tg(1)をそれぞれ、10℃、1℃、−15℃、−40℃に変化させて、他はサンプル1と同様にした。
また、サンプル6〜10は、第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)を35℃とし、第1の結着剤のガラス転移点Tg(1)はそれぞれ、20℃、10℃、1℃、−15℃、−40℃に変化させて、その他はサンプル1と同様にした。
<サンプル11〜16>
正極活物質層の第1層に用いる第1の結着剤のガラス転移点Tg(1)および第2層に用いる第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)を、表1に示すものに変化させ、その他はサンプル1と同様にして、評価用セルとしてのリチウムイオン電池(サンプル11〜16)を構築した。
すなわち、サンプル11〜13は、第1の結着剤のガラス転移点Tg(1)をそれぞれ、15℃、1℃、−15℃とし、第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)を−40℃として、他はサンプル1と同様にした。
また、サンプル14〜16は、第1の結着剤のガラス転移点Tg(1)をそれぞれ、10℃、−15℃、−40℃とし、第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)を−1℃として、他はサンプル1と同様にした。
なお、このサンプル11〜14においては、Tg(1)>Tg(2)とした。
<サンプル17〜20>
正極活物質層を一層構造とし、上記サンプル1の正極合剤第1層用ペーストにおける第1の結着剤に替えて、ガラス転移点Tgが表1に示されたアクリル系バインダを用い、その他の材料および配合は変えずに正極活物質:導電材:増粘剤:結着剤としての質量比が93:4:1:2となるように混合し、溶媒としての水に分散させてスラリー状の正極合剤ペーストを調製した。これを正極集電体としての厚さ15μmの長尺シート状のアルミニウム箔の両面に、グラビアコーターにて第1層の厚みが100μmとなるように塗布し、後はサンプル1と同様にして、評価用セルとしてのリチウムイオン電池(サンプル17〜20)を構築した。
すなわち、サンプル17〜20は、ガラス転移点Tgがそれぞれ、−40℃、1℃、25℃、35℃の結着剤を用いた。
[電極柔軟性の評価]
上記のようにして得られた評価用セルとしてのリチウムイオン電池(サンプル1〜20)について、以下の手法により、正極の柔軟性を評価した。図5は、電極柔軟性の評価を行う様子を説明する図である。
すなわち、電池を構築する前の正極シートから、幅1cm×長さ10cmの矩形に試験片を切り出した。この試験片を机上に置き、図5に示すように、ステンレス製の丸棒を試験片の短手方向に向けて、該試験片の長手方向の中央に配置した。その後、試験片の長手方向両端部を上方に曲げ上げて、試験片の正極活物質層の湾曲部分にひび割れや剥がれ等が発生していないかを観察した。ステンレス製の丸棒は、直径が10mm〜1mmまで1mm刻みで10本を用意し、より直径の大きい丸棒から順次用いて試験を行い、ひび割れや剥がれ等が発生しなかった丸棒の最大直径を限界直径とした。この限界直径は、小さいほど正極の柔軟性が高いと判断できる。この限界直径を調べた結果を、表1に示した。
[低温反応抵抗の評価]
リチウムイオン電池は、特に低温環境での抵抗増加が問題になりやすい。また、車載される車両駆動用電池への適用を考慮すると、およそ−30℃程度の低温の温度環境においても適切に駆動することが要求される。そのため、ここでは−30℃程度の低温環境での評価用セルの反応抵抗を、以下の手法により評価した。
すなわち、反応抵抗の測定では、上記のように構築した評価用セルに適当なコンディショニング処理を行った後、所定の温度環境において、SOC60%(定格容量の60%の充電状態)として、測定周波数範囲0.001〜10000Hz、振幅5mVの条件で交流インピーダンス測定を行う。そして、かかる交流インピーダンス測定によって得られるナイキストプロットにおける半円の直径の大きさを反応抵抗の値とする。ここでは、−30℃程度の低温環境での評価用セルの反応抵抗を評価するべく、評価用セルを−30℃の温度環境に一定時間(例えば、10時間)放置した状態で、−30℃の温度環境において、反応抵抗を測定した。得られた結果を、低温IV抵抗として表1に示した。
Figure 2013131381
表1より、サンプル1〜5については、限界直径および低温IV抵抗の何れもバランスが取れて良好な結果が得られた。サンプル1〜5は、第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)が同じであることから、低温放電時のIV抵抗に大きな差異は見られないが、第1の結着剤のガラス転移点Tg(1)が低くなるにつれて限界直径が小さくなり、正極活物質層の第1層の柔軟性が増すことがわかった。限界直径については、4mmを超過すると正極活物質の剥離、崩落等の可能性が生じるおそれがあるため、第1の結着材のTg(1)は15℃以下として限界直径を4mm以下にするのがより好ましいこともわかった。
サンプル6〜10は、サンプル1〜5と同様の傾向がみられる。そしてサンプル6〜10は、サンプル1〜5よりも第2の結着剤のガラス転移点Tg(2)が高く設定されているため、サンプル1〜5と比較して低温放電時のIV抵抗が全体に低減されて良化していることがわかる。このことから、Tg(2)を高くすることにより、第2の結着剤による正極活物質の被覆が抑えられ、低温反応抵抗が減少できることが確認できた。
サンプル11〜13は、第2の結着材のガラス転移点Tg(2)が第1の結着材のガラス転移点Tg(1)よりも低く設定されている。限界直径については、Tg(1)が適切な範囲にあるため、4mm以下と好適な範囲にあるものの、Tg(2)が−40℃と低く、正極活物質が第2の結着剤により被覆されて低温放電時のIV抵抗が133〜134mΩと著しく増大してしまい、好ましくない。
サンプル14は、第2の結着材のガラス転移点Tg(2)が第1の結着材のガラス転移点Tg(1)よりも低く設定されているため、概ねサンプル11〜13と同様の傾向がみられる。しかし、第2の結着材のガラス転移点Tg(2)を高めているため、低温放電時のIV抵抗に改善がみられる。これに対し、サンプル15および16は、第2の結着材のガラス転移点Tg(2)よりも第1の結着材のガラス転移点Tg(1)を低く設定したため、臨界直径がそれぞれ2mmおよび1mmと、第1層の柔軟性が良好に改善された。
サンプル17〜20は、正極を単層構造とし、結着材を1種類のみ用いるようにした従来の一般的な正極構造である。このような構成において、結着材のガラス転移点Tgを変化させると、サンプル17および18では正極に柔軟性はあるものの低温IV抵抗が非常に高くなってしまい、サンプル19および20では低温IV抵抗は低いものの柔軟性が著しく低いと、いずれも正極として好ましい特性であるとはいえない。
以上のことから、正極用いる結着材はガラス転移点Tgの異なる2種のものを用い、よりTgが低い結着材を集電体に近い領域に用いることで正極の柔軟性を高められるとともに、よりTgが高い結着材を表面に近い領域に用いることで低温IV特性を低下させられることがわかった。
[第1層と第2層の厚みの比の評価]
<サンプル21〜25>
サンプル8と同じ配合の正極合剤第1層用ペーストおよび正極合剤第2層用ペーストを用い、第1層と第2層の厚みを表2に示した通りに変化させて、その他はサンプル8と同様にし、評価用セルとしてのリチウムイオン電池(サンプル21〜25)を構築した。
すなわち、サンプル21は、第1層の厚みt1と第2層の厚みt2の比を、0.95:0.05として二層構成の正極シートを作製した。
サンプル22は、第1層の厚みt1と第2層の厚みt2の比を、0.8:0.2として2相構成の正極シートを作製した。なお、このサンプル22については、第1層および第2層ともコンマコーターで正極合剤ペーストの塗布を行った。
サンプル23は、第1層の厚みt1と第2層の厚みt2の比を、0.7:0.3として2相構成の正極シートを作製した。
サンプル24は、第1層の厚みt1と第2層の厚みt2の比を、0.6:0.4として2相構成の正極シートを作製した。
サンプル25は、第1層の厚みt1と第2層の厚みt2の比を、0.5:0.5として2相構成の正極シートを作製した。
得られた評価用セル(サンプル21〜25)に対して、上記と同様の手法で電極柔軟性の評価と低温反応抵抗の評価を行った。その結果を、表2に示した。なお表中の※印は、サンプル22の第1層の塗工方法が異なることを示している。
Figure 2013131381
表2より、サンプル21〜25のいずれも、限界直径および低温IV抵抗の何れもバランスが取れて、正極の柔軟性および低温反応抵抗特性に優れていることが確認された。さらに詳細に検討すると、第2の結着剤のTg(2)が35℃と高いため低温放電時のIV特性は低く、第1層と第2層の厚みの比を変化させたサンプル21〜25の間で特に違いは見られない。すなわち、第2層の厚みt2が総厚みの0.5以上の割合であれば、優れた低温反応抵抗特性が得られることがわかる。しかしながら、限界直径については、第1層の厚みが薄くなるほど柔軟性が悪化しており、第1層の厚みt1が総厚みの0.05の割合の場合に限界直径が4mmとなり、これ以上第1層の厚みを薄くしないことが望ましいことがわかった。
なお、第1層の塗工方法を変更したサンプル22については、塗工の違いによる影響は見られなかった。
[第1の結着剤と第2の結着剤のTgの評価]
<サンプル26〜27>
サンプル26およびサンプル27は、比較的優れた柔軟性および低温反応抵抗特性を示すサンプル10およびサンプル25において用いた第1の結着剤と第2の結着剤を逆に用いて正極合剤第1層用ペーストおよび正極合剤第2層用ペーストを調製し、その他はサンプル10およびサンプル25と同様にして、評価用セルとしてのリチウムイオン電池(サンプル26〜27)を構築したものである。
すなわち、サンプル26およびサンプル27は、第1の結着剤のTg(1)を35℃とし、第2の結着剤のTg(2)を−40℃とした。
また、サンプル26は、第1層の厚みt1と第2層の厚みt2の比を、0.9:0.1として2相構成の正極シートを作製した。
サンプル27は、第1層の厚みt1と第2層の厚みt2の比を、0.5:0.5として2相構成の正極シートを作製した。
得られた評価用セル(サンプル26〜27)に対して、上記と同様の手法で電極柔軟性の評価と低温反応抵抗の評価を行った。その結果を、表3に示した。
Figure 2013131381
表3より、サンプル26およびサンプル27のいずれも、限界直径が大きく、また低温IV抵抗も高く、正極の柔軟性および低温反応抵抗特性に欠けていることが確認された。すなわち、正極合剤ペーストに用いる結着剤はそのガラス転移点を考慮し、適切なガラス転移点を有する結着剤を、適切な部位に用いることが重要であることが示された。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
本発明の構成によれば、正極活物質層の柔軟性と低反応抵抗が両立された非水電解質二次電池を提供することができる。特に、捲回電極体を有する電池において好適な柔軟性と、大型電池等に求められる低反応抵抗性が兼ね備えられた正極を備える非水電解質二次電池が提供される。
10 リチウムイオン電池
20 捲回電極体
30 正極シート(正極)
32 正極集電体
33 第1層
34 正極活物質層
35 第2層
36 正極活物質
37 第1の結着剤
39 第2の結着剤
40 正極端子
43 未塗工部
50 負極シート(負極)
52 負極集電体
54 負極活物質層
60 負極端子
70 セパレータ
80 電池ケース
82 蓋体
84 容器本体
86 注液口
88 安全弁
100 組電池
WL 捲回軸

Claims (6)

  1. 正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、非水電解質とを備える二次電池であって、
    前記正極活物質層は、正極活物質と、第1の結着剤と、該第1の結着剤よりもガラス転移点が高い第2の結着剤とを含み、
    前記正極活物質層中の正極集電体に近接する領域には前記第1の結着剤が偏在し、
    前記正極活物質層中の表面側の領域には前記第2の結着剤が偏在している、非水電解質二次電池。
  2. 前記第1の結着剤は、ガラス転移点Tg(1)が15℃以下であり、
    前記第2の結着剤は、ガラス転移点Tg(2)が25℃以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記正極活物質層は、前記正極集電体上に第1層が形成され、該第1層の上に第2層が形成された二層構成であって、
    前記第1層には前記第1の結着剤を含み、
    前記第2層には前記第2の結着剤を含む、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記第1層の厚みをt1、前記第2層の厚みをt2としたとき、前記第1層と前記第2層の厚みの比は、t1:t2=x:(1−x)で表され、式中xは0.1≦x≦0.5を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記第1の結着剤および前記第2の結着剤は、何れもアクリル樹脂をベースとするアクリル系ポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記正極および前記負極はシート状であって、シート状のセパレータを介して互いに重ねられ、捲回された捲回電極体を構成している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
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