JP2008059876A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 容量の低下を可及的に抑えつつ、高入出力特性と充放電サイクル特性を向上させたリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】 正極合剤層が少なくとも2層からなり、正極合剤層を構成する層のうち、集電体に接する層では、活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの、導電助剤の含有量(A)が10〜80質量%であり、正極合剤層を構成する層のうち、集電体に接する層以外の層では、いずれの層においても、活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの、導電助剤の含有量(B)が1〜15質量%であり、導電助剤の含有量(A)と導電助剤の含有量(B)との関係が、(A)>(B)である正極を有するリチウムイオン二次電池により、上記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、容量の低下を可及的に抑えつつ、高入出力特性と充放電サイクル特性を向上させたリチウムイオン二次電池に関するものである。
携帯電話やノートパソコンなどのモバイル端末の普及により、その電力源となる二次電池には小型・軽量でかつ高容量であり、充放電を繰り返しても、劣化し難い性能が求められる。このような要求に対して、近年では、リチウムイオン二次電池において、Si、Ge、Sn、In、Pbなどの金属粒子、合金粒子、金属酸化物粒子を表面に形成した負極を用いることが提案されている(特許文献1)。
一方、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動工具などの電源となる二次電池には、小型電池よりも高入出力特性が要求され、特に、電気自動車やハイブリッド自動車では高温サイクルおいても劣化し難い性能が求められている。更に、−20℃、−30℃という低温においても高入出力特性を維持できることも要求されている。
ところが、リチウムイオン二次電池はニッケル水素電池などの水溶性電池に比べて大電流放電特性が弱いため、このような要求に対しては、入出力特性および低温環境下での特性が良好な電気二重層キャパシタを併用することによって対処してきた。しかし、電気二重層キャパシタは、エネルギー密度が低いという問題があった。
また、高エネルギー密度、高出力密度、低温特性の改善を目的として、正極に電気二重層キャパシタの材料として用いられている活性炭を混合したリチウム二次電池も提案されている(特許文献2)。しかし、正極において、活物質などを含有する正極合剤層を形成するには、正極活物質などを含有する正極合剤含有塗料を調製し、この塗料を集電体上に塗布するなどすることが一般的であるが、活性炭の配合量を増加させると正極合剤含有塗料の流動特性が悪くなることがあり、また、正極合剤層中の活性炭量が多くなると、正極合剤層が集電体から剥れ易くなるという問題が生じる。そのため、正極に使用できる活性炭量には限界があり、十分な改善が見られていない。
また、上述したように、モバイル端末の電源用途としての従来の小型リチウムイオン二次電池では、車載用途のような高入出力特性よりも高容量化が要求されてきたため、活物質を含む合剤を電池内にいかに詰め込むかということが課題であった。しかし、より高入出力が要求される電気自動車やハイブリッド自動車では、小型電池と同様の電池構成では高入出力が取り出しにくいという問題があった。そこで、高入出力特性を向上させるために、車載用途の電池では正極合剤および負極合剤中の導電助剤の割合を増加させることで対処してきた。しかし、リチウムイオン二次電池で用いられる導電助剤は主にカーボン系であり、導電助剤の添加量を増加させると電極密度(正極合剤層密度および負極合剤層密度)を高くできないために容量が低下することから、導電助剤の添加量には限度があった。
この他、上記課題を解決する技術として、正極または負極の表面層(セパレータと接触する側)に、集電体側よりも導電助剤の割合を多くした合剤層を形成した複数層を有する電極を用いたリチウム二次電池が提案されている(特許文献3、4)。
更に、正極または負極の集電体と合剤層との間に、導電助剤のみからなる層を形成した電極を用いることで、高入出力特性を向上させたリチウム二次電池も提案されている(特許文献5)。
特開2003−249211号公報 特開2002−260634号公報 特開平9−129216号公報 特開平9−147858号公報 特開平9−97625号公報
しかし、炭素材料のような導電助剤は、かさ密度が高いために充填性が悪く、電極密度を高め難いことから、これを単純に増量すると、電池の容量が損なわれてしまう。
また、導電助剤は集電体との密着性が悪いため、導電助剤のみからなる層を集電体上に配した電極を用いて電池を構成した場合、充放電が繰り返し行われると、導電助剤からなる層と集電体との剥離が生じてしまう。この対策としては、導電助剤からなる層のバインダー量を増やすことが考えられるが、バインダーを増加すると電池反応を阻害するため、却って高入出力特性が損なわれることがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容量の低下を可及的に抑えつつ、高入出力特性と充放電サイクル特性を向上させたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウム含有酸化物を活物質として含有し、炭素材料を導電助剤として含有する正極合剤層を集電体上に形成してなる正極、負極、セパレータおよび電解液を有するものであって、上記正極合剤層は、少なくとも2層からなり、上記正極合剤層を構成する層のうち、集電体に接する層では、活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの、導電助剤の含有量(A)が10〜80質量%であり、上記正極合剤層を構成する層のうち、集電体に接する層以外の層では、いずれの層においても、活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの、導電助剤の含有量(B)が1〜15質量%であり、上記導電助剤の含有量(A)と上記導電助剤の含有量(B)との関係が、(A)>(B)であることを特徴とするリチウムイオン二次電池である。
すなわち、本発明では正極に係る正極合剤層を、活物質と導電助剤との比率の異なる2層以上で構成し、そのうち、導電助剤の比率が高く導電性の高い層(以下、「下層」という場合がある)を集電体側に配することで、電池の高入出力特性を高めている。そして、集電体と接する層以外の層(以下、「下層以外の層」という場合がある)については、導電助剤の比率を下げ活物質の充填量を増やして、高入出力特性を向上させるための上記構成を採用したことによる電池の容量低下を可及的に抑制している。
また、本発明では、集電体と接する下層を、活物質と導電助剤が特定比率で存在する構成としている。このため、下層と集電体との密着性を高めることができ、充放電に伴う下層と集電体との剥離を防止して、充放電サイクル特性を向上させることができ、更に下層のバインダーの使用量も抑えて、電池の容量低下を抑制できる。更に、下層における上記構成の採用によって、電流を流れ易くすることが可能であり、これによっても電池の高入出力特性と充放電サイクル特性を向上させることができる。
なお、本発明において対象としている「高入出力特性」とは、具体的には、10C以上の高い電流値で充電または放電した場合の充電性能および放電性能を意味している。
本発明によれば、容量低下を可及的に抑制しつつ、高入出力特性と充放電サイクル特性を向上させたリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明のリチウムイオン二次電池に係る正極は、集電体上に、正極活物質であるリチウム含有酸化物、導電助剤である炭素材料、およびバインダーなどを含有し、かつ少なくとも2層からなる正極合剤層が、集電体上に形成されてなるものである。
正極活物質であるリチウム含有酸化物としては、従来公知のリチウムイオン二次電池に使用されているリチウム含有酸化物を用いることができる。具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMnNiCo1−y−z、LiMn、LiMn2−yなど(ただし、上記のリチウム含有酸化物において、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0≦z≦2.2である。)が好適であり、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極に係る導電助剤としては、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられ、形成する層の厚みに応じて使用することができる。薄層に使用するのであればアセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維などの微粒子のものが好ましい。これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
正極に係るバインダーとしては、特に制限はなく、従来公知のリチウムイオン二次電池で用いられている各種バインダー[例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂、ポリビニルピロリドンなど]が使用できる。
正極合剤層は、2層以上(例えば、2層、3層、4層など)で構成されており、集電体と接する下層における活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの導電助剤の含有量(A)と、下層以外の活物質量と導電助剤量との合計を100質量%としたときの導電助剤の含有量(B)との関係が、(A)>(B)である。なお、下層以外の層が2層以上の場合には、いずれの層においても、(A)>(B)の関係を満足する必要がある。正極合剤層を構成する複数の層のうち、集電体と接する下層における導電助剤の含有量(A)を、下層以外の層における導電助剤の含有量(B)よりも大きくすることで、下層の導電性を高めて電池の高入出力特性を向上させつつ、下層以外の層では活物質の充填量を高めて、高入出力特性の向上に伴う電池の容量低下を可及的に抑制することができる。
なお、本発明において、導電助剤の比率を高めた層(下層)を、集電体と接するように配置しているのは、このような構成とすることで、集電体から流れる電流が、それと接する下層を通じて正極内により均一に流れるため、高入出力特性をより高め得るからである。
正極合剤層の構成層のうち、集電体と接する下層においては、活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの導電助剤の含有量(A)が、10質量%以上、好ましくは20質量%以上である。下層における導電助剤の含有量を上記のようにすることで、下層の導電性を高めて、電池の高入出力特性を高めることができる。
また、下層における導電助剤の含有量(A)は、80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。下層における導電助剤の含有量をこのように制限し活物質を共存させることで、下層において、電池反応の阻害要因となるバインダー量を増加させることなく下層と集電体との密着性を高め得るため、電池の充放電サイクル特性や高入出力特性を向上させることができ、また、容量低下を抑制することができ、更に導電助剤によって活物質の反応が阻害されるのを防止することもできる。
正極合剤層を構成する下層以外の層においては、(2層以上ある場合には、いずれの層においても)活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの導電助剤の含有量(B)が、15質量%以下、好ましくは12質量%以下である。下層以外の層における導電助剤の含有量をこのように制限して活物質を充填することで、電池の容量を高めることができる。また、導電性を確保する観点から、下層以外の層における導電助剤の含有量(B)は、1質量%以上、好ましくは3質量%以上である。
なお、下層以外の層が2層以上ある場合には、各層における活物質と導電助剤との比率は同じでもよく、異なっていてもよい。
下層の厚みは、1μm以上であることが好ましい。下層の厚みを上記のようにすることで、下層を設けることによる作用をより有効に発揮させることができる。他方、下層が厚すぎると、正極合剤層における導電助剤量が多くなりすぎ、活物質量が低下して、容量低下の抑制効果が小さくなったり、放電反応が阻害されるようになることがあるため、下層の厚みは、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
また、正極合剤層の重量と、その厚みには相関性があり、電池容量、すなわち正極合剤層の重量(特に活物質重量)とのバランスを考慮すると、正極合剤層における下層と、下層以外の層との厚みの比率としては、下層の厚みを1としたとき、下層以外の層の総厚みが、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であって、70以下、より好ましくは60以下であることが望ましい。
正極合剤層を構成する各層においては、正極活物質や導電助剤、バインダーの種類については、全ての層で同じであってもよく、層毎に異なっていてもよい。
正極合剤層全体における導電助剤の含有量は、1〜15質量%であることが好ましい。導電助剤の含有量が少なすぎると、高入出力特性の向上効果が小さくなったり、その他の電池特性が低下することがあり、導電助剤の含有量が多すぎると、活物質含有量の低下を招いて、電池容量の向上効果が小さくなることがある。
また、正極合剤層全体におけるバインダーの含有量は、0.5〜5質量%であることが好ましい。正極合剤層では、例えば、導電助剤とバインダーを除く残部を正極活物質としてもよい。
正極の集電体としては、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用いることができる。正極の集電体の厚みは、例えば金属箔の場合、10〜40μmであることが好ましい。
正極を作製するにあたっては、正極活物質、導電助剤およびバインダーなどの正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散(バインダーは溶剤に溶解していてもよい)させてなる正極合剤含有塗料を、層毎に調製し、これらの正極合剤含有塗料を集電体上に塗布、乾燥し、その後プレス処理をして正極合剤層の厚みや密度を調整する方法が採用できる。なお、正極合剤含有塗料の塗布に際しては、集電体上に下層形成用の塗料を塗布し、該塗料が乾燥する前に、下層以外の層形成用の塗料を塗布する所謂同時重層塗布方式を採用してもよく、集電体上に下層形成用の塗料を塗布し、該塗料を乾燥させた後、下層以外の層形成用の塗料を塗布する所謂逐次重層塗布方式を採用しても構わない。また、上記以外の方法で正極を作製しても構わない。
本発明のリチウムイオン二次電池では、上記の正極を有していればよく、その他の構成要素や構造については特に制限はなく、従来公知のリチウムイオン二次電池において採用されている各種構成要素、構造を適用することができる。
リチウムイオン二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
負極としては、従来公知のリチウムイオン二次電池に用いられている負極、すなわち、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si,Sn、Ge,Bi,Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、若しくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダーなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたものや、上記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、若しくは集電体上に形成したものなどの負極剤層を有するものが用いられる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。負極の集電体の厚みは、例えば金属箔の場合、8〜30μmであることが好ましい。
セパレータとしては、強度が十分で且つ電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、厚さが10〜50μmで開口率が30〜70%の、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレン−プロピレン共重合体を含む微多孔フィルムや不織布などが好ましい。
リチウムイオン二次電池は、上記正極と、上記負極とを、上記セパレータを介して重ね合わせて積層電極体としたり、更にこの積層電極体を巻回した巻回電極体とし、これら電極体を、電解液などと共に電池の外装体内に封入して構成することが好ましい。
電解液(非水電解液)としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイト、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの1種のみからなる有機溶媒、あるいは2種以上の混合溶媒に、例えば、LiClO、LiPF 、LiBF 、LiAsF 、LiSbF 、LiCFSO 、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などのリチウム塩から選ばれる少なくとも1種を溶解させることによって調製した電解液が使用できる。このリチウム塩の電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、高入出力特性と充放電サイクル特性に優れており、かつ比較的容量も高いことから、携帯電話やノートパソコンなどのモバイル端末、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動工具などの電源用途など、上記の特性が要求される用途の他、従来公知のリチウムイオン二次電池が用いられている各種用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
<正極の作製>
下層の組成が、マンガンニッケルコバルト酸リチウム:55.5質量%、アセチレンブラック:23.9質量%、およびポリビニルピロリドン:20.6質量%となるように、これらの材料とNMPとを混合して下層形成用塗料を調製した。
また、下層以外の層(以下、「上層」という)の組成が、マンガンニッケルコバルト酸リチウム:88.01質量%、黒鉛:9.79質量%、アセチレンブラック:0.37質量%、およびPVDF:1.83質量%となるように、これらの材料とNMPとを混合して上層形成用塗料を調製した。
上記の下層形成用塗料を、厚みが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥させた。乾燥後の塗膜(下層)上に、上層形成用塗料を塗布し、再度乾燥させた。その後プレス機により圧延して、下層の厚みが3μm、上層の厚みが32μmで、正極合剤層の総厚みが35μmの正極を得た。
<負極の作製>
負極合剤層の組成が、黒鉛:88質量%、アセチレンブラック:6質量%、およびPVDF:6質量%となるように、これらの材料とNMPとを混合して、負極合剤層形成用塗料を調製した。この塗料を、厚みが8μmの銅箔に塗布し、乾燥した後、プレス機により、負極合剤層の厚みが40μmとなるように圧延して、負極を得た。
<電池の組み立て>
以上のようにして作製した正極および負極を、厚みが25μmのポリエチレン製セパレータを介して積層し、アルミニウムラミネートフィルム外装材に収容し、更に、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとの混合液(体積比で1:2)にLiPFを1.2mol/lの濃度で添加した電解液を注液した後封止して、リチウムイオンラミネート二次電池を作製した。
実施例2
下層の組成が、マンガンニッケルコバルト酸リチウム:19.2質量%、アセチレンブラック:43.4質量%、およびポリビニルピロリドン:37.4質量%となるように、これらの材料とNMPとを混合して下層形成用塗料を調製した。
また、上層の組成が、マンガンニッケルコバルト酸リチウム:88.35質量%、黒鉛:9.51質量%、アセチレンブラック:0.36質量%、およびPVDF:1.78質量%となるように、これらの材料とNMPとを混合して上層形成用塗料を調製した。
上記の下層形成用塗料を、厚みが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥させた。乾燥後の塗膜(下層)上に、上層形成用塗料を塗布し、再度乾燥させた。その後プレス機により圧延して、下層の厚みが3μm、上層の厚みが32μmで、正極合剤層の総厚みが35μmの正極を得た。
上記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオンラミネート二次電池を作製した。
比較例1
正極合剤層の組成が、マンガンニッケルコバルト酸リチウム:86.0質量%、黒鉛:9.2質量%、アセチレンブラック:1.8質量%、およびPVDF:3.0質量%となるように、これらの材料とNMPとを混合して正極合剤層形成用塗料を調製した。この塗料を、厚みが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥した後、プレス機により圧延して、正極合剤層の厚みが36μmの正極を得た。
上記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオンラミネート二次電池を作製した。
比較例2
下層の組成が、アセチレンブラック:60質量%、およびポリビニルピロリドン:40質量%となるように、これらの材料とNMPとを混合して下層形成用塗料を調製した。また、比較例1で調製した正極合剤層形成用塗料と同じものを、上層形成用塗料として用意した。
上記の下層形成用塗料を、厚みが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥させた。乾燥後の塗膜(下層)上に、上層形成用塗料を塗布し、再度乾燥させた。その後プレス機により圧延して、下層の厚みが3μm、上層の厚みが34μmで、正極合剤層の総厚みが37μmの正極を得た。
上記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオンラミネート二次電池を作製した。
実施例1、2および比較例1、2の電池について、0.2C、4.1Vの条件での定電流定電圧充電(総充電時間15時間)と、0.2Cの条件で2.7Vを終止電圧とする放電とを1サイクルとする充放電を5サイクル行った後、下記の各試験に供した。結果を表1に示す。
<1C放電容量測定>
上記の各電池について、20℃で、1C、4.1Vの条件で定電流定電圧充電(総充電時間1.5時間)を行い、その後1Cで2.7Vまで放電したときの放電容量を測定した。なお、表1には、比較例1の電池の1C放電容量を100としたときの相対値で示す。
<20C放電容量測定>
上記の各電池について、20℃で、1C、4.1Vの条件で定電流定電圧充電(総充電時間1.5時間)を行い、その後20Cで2.5Vまで放電したときの放電容量を測定し、1C放電容量に対する割合を計算した。なお、表1には、比較例1の電池の、20C放電容量(対1C放電容量)を100としたときの相対値で示す。
<充放電サイクル試験後の抵抗上昇>
上記の各電池について、20℃で、1Cの条件で容量の50%まで充電し、1C、5C、10Cの各条件で放電を行って、それぞれの5秒後の電圧降下から抵抗を測定した。その後、上記の各電池について、50℃の環境下で、10Cで10秒の充電と10Cで10秒の放電とを1サイクルとする充放電試験を10万サイクル行った。10万サイクルの充放電を行った電池について、上記と同様にして抵抗を測定し、充放電サイクル試験前の抵抗に対する上昇率を計算した。なお、表1には、比較例1の電池の抵抗上昇率を100としたときの相対値で示す。
Figure 2008059876
表1に示すように、正極合剤層に係る下層および上層において、導電助剤の含有量(A)、(B)が適正であり、かつ(A)と(B)の関係も適正な実施例1および実施例2の電池では、比較例1の電池に比べて、1C放電容量に対する20C放電容量が高く、大電流放電特性(すなわち、高入出力特性)が優れている。また、充放電サイクル時における抵抗上昇が抑制されており、充放電サイクル特性も優れている。なお、比較例1の電池は、通常の電池のように、正極活物質と導電助剤を含有する単一層の正極合剤層を有する正極を用いており、充電容量(放電容量)の低下は生じていない。正極活物質を含有せず、導電助剤とバインダーのみからなる下層を有する正極を用いた比較例2の電池では、1C放電容量により評価される初期の充放電特性は良好であるが、充放電サイクル時における抵抗上昇が大きく、充放電サイクル特性が劣っている。

Claims (4)

  1. リチウム含有酸化物を活物質として含有し、炭素材料を導電助剤として含有する正極合剤層を集電体上に形成してなる正極、負極、セパレータおよび電解液を有するリチウムイオン二次電池であって、
    上記正極合剤層は、少なくとも2層からなり、
    上記正極合剤層を構成する層のうち、集電体に接する層では、活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの、導電助剤の含有量(A)が10〜80質量%であり、
    上記正極合剤層を構成する層のうち、集電体に接する層以外の層では、いずれの層においても、活物質と導電助剤との合計を100質量%としたときの、導電助剤の含有量(B)が1〜15質量%であり、
    上記導電助剤の含有量(A)と上記導電助剤の含有量(B)との関係が、(A)>(B)であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 正極合剤層全体における導電助剤の含有量が、1〜15質量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 正極合剤層を構成する層のうち、集電体に接する層の厚みが、1〜5μmである請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 正極合剤層を構成する層は、集電体に接する層の厚みを1としたとき、集電体に接する層以外の層の総厚みが、3〜70である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
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