JP2012131679A - 炭化珪素単結晶インゴットの製造装置 - Google Patents

炭化珪素単結晶インゴットの製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】改良型レーリー法により炭化珪素単結晶を作製する場合において、結晶成長中、特に結晶成長の初期の段階で発生する欠陥を低減することができ、欠陥密度の低い高品質の炭化珪素単結晶を製造することができる炭化珪素単結晶の製造装置を提供する。
【解決手段】対称軸を有する坩堝と対称軸を有する種結晶を用いて昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造する装置であり、種結晶の対称軸に対して非軸対称な温度分布を持つ加熱を行うと共に、その非軸対称な温度分布の中で種結晶の対称軸を中心にして、種結晶と成長している結晶を回転させながら結晶成長を行う炭化珪素単結晶インゴットの製造装置であり、結晶成長中の結晶欠陥の発生を抑制し、欠陥の少ない高品質の炭化珪素単結晶を製造する。
【選択図】図4

Description

この発明は、電子材料の基板に利用される炭化珪素単結晶基板を作製するのに好適な炭化珪素単結晶の製造装置に関する。
高熱伝導率を持ち、バンドギャップの大きい炭化珪素単結晶は、高温で用いられる電子材料や、高耐圧の求められる電子材料の基板として有用な材料である。
炭化珪素単結晶の作製法の一つに昇華再結晶法(レーリー法)がある。昇華再結晶法は、高温部において2000℃を超える高温で炭化珪素粉末を昇華させ、その昇華ガスを低温部において再結晶化させることにより、炭化珪素結晶を製造する方法である。また、炭化珪素単結晶からなる種結晶を用いて、昇華再結晶法により炭化珪素単結晶を製造する方法は、特に改良レーリー法と呼ばれ(非特許文献1)、バルク状の炭化珪素単結晶の製造に利用されている。この改良レーリー法では、種結晶を用いているために結晶の核形成過程を制御することができ、また、不活性ガスによる雰囲気圧力を10Pa〜15kPa程度に制御することにより、結晶の成長速度等を再現性良くコントロールすることができる。一般に、原料と結晶の温度差を適切に制御して、炭化珪素単結晶の成長が行われている。そして、得られた炭化珪素単結晶については、基板としての規格の形状にするために、研削、切断、研磨といった加工が施され、電子材料の基板として利用されている。
図1を用いて、改良レーリー法の原理を説明する。
原料2となる炭化珪素結晶粉末〔通常、アチソン(Acheson)法で作製された炭化珪素結晶粉末を洗浄・前処理したものが使用される。〕と種結晶3となる炭化珪素単結晶が、坩堝1の中に収納される。坩堝1内では、前記炭化珪素原料粉末の原料2は坩堝1の容器部内に収容され、また、前記炭化珪素単結晶の種結晶3は坩堝1の蓋部に支持(装着)される。アルゴン等の不活性ガス雰囲気中(10Pa〜15kPa)で原料2を昇華させるために、原料2は2400℃以上に加熱される。この際、坩堝1内には、原料2側に比べて種結晶3側がやや低温になるように、温度勾配が設定される。原料2は、加熱されて昇華した後、濃度勾配(温度勾配により形成される)により種結晶3方向へ拡散し、輸送される。単結晶成長は、種結晶3に到着した原料ガスがこの種結晶3上で再結晶化し、単結晶4となることにより実現される。
結晶成長面が成長方向に向かって緩やかな凸形状である場合に、結晶成長点が1ヶ所となり、結晶品質の良い結晶が得られ、逆に、結晶成長面が成長方向に向かって凹形状の場合には、結晶成長点が複数ヶ所になり、これら異なる成長点に由来して成長した結晶の間に結晶欠陥が発生し、結晶品質の悪い結晶になることが報告されている(非特許文献2)。
種結晶となる炭化珪素単結晶の成長面に存在する欠陥は、結晶成長時に成長した結晶の欠陥として伝播する。このため、種結晶の製造時に研磨等の機械的な機構で種結晶に発生した歪を除去して結晶成長面の欠陥を低減し、成長過程の結晶に伝播する欠陥を抑制するために、種結晶の表面を研磨した後にエッチングを行う方法が提案されている(特許文献1、2)。
しかしながら、上記のようにエッチングをして種結晶表面の欠陥を低減したとしても、結晶成長が始まる成長面の温度が低い段階では、エッチングによる種結晶表面の凹凸に起因して、種結晶の結晶性と異なる結晶核が形成される場合があり、その結果、この結晶核を基点として成長した部分はその結晶性が種結晶の結晶性を引き継いで成長した部分の結晶性と異なる結晶性になり、成長した単結晶内部での欠陥の起点になるという問題がある。
特開2010−111540号公報 特開2010−76954号公報
Yu. M. Tairov and V. F. Tsvetkov, Journal of Crystal Growth, 52 (1981) pp.146 M.S. Ramm, E.N. Mokhov, S.E. Demina, M.G. Ramm, A.D. Roenkov, Yu.A. Vodakov, A.S. Segal, A.N. Vorob'ev, S.Yu. Karpov, A.V. Kulik, Yu.N. Makarov, Mat. Sci. and Eng. B 61-62(1999), pp. 107-112
上述のように、従来の方法では、結晶成長中、特に、結晶の成長が始まる結晶成長の初期において、種結晶と結晶性の異なる結晶核の核生成を完全に抑制することは難しく、欠陥密度の低い炭化珪素単結晶を得ることが困難であった。
本発明は、結晶成長中、特に結晶成長の初期の段階で、種結晶と結晶性の異なる結晶核の核生成を抑制することができ、これによって欠陥密度の低い炭化珪素単結晶インゴットの製造が可能な炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、種結晶と結晶性の異なる結晶核の発生に起因する欠陥の発生の問題を解決すべく鋭意検討した結果、結晶成長面の温度分布を適切に制御することで、欠陥密度の低い炭化珪素単結晶インゴットを製造できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の要旨は次の通りである。
〔1〕 対称軸を有する坩堝と対称軸を有する種結晶を用いて昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造する装置であって、種結晶の対称軸に対して非軸対称な温度分布を持つ加熱を行うと同時に、その非軸対称な温度分布の中で種結晶の対称軸を中心にして、種結晶と成長している結晶を回転させながら結晶成長を行うことを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
〔2〕 前記坩堝と種結晶とが同じ対称軸を共有しており、該坩堝を取り囲む断熱材を非軸対称に配置することを特徴とする前記〔1〕に記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
〔3〕 前記非軸対称な温度分布の中で種結晶の対称軸を中心に種結晶と成長している結晶を回転させる際の回転速度が、0.1回転/時間以上300回転/時間以下であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
〔4〕 前記非軸対称な温度分布の中で種結晶の対称軸を中心に種結晶と成長している結晶を回転させる際の回転速度が、成長した結晶の最高部の高さが10mm以下の場合に6回転/時間以下であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
以下、模式図を用いて、本発明の原理を説明する。
図2は、従来の結晶成長を説明するための説明図であって、種結晶4の対称軸4axに対して軸対称な温度分布を持つ場合であり、種結晶4と成長している結晶(図示外)近傍の等温線TLを示す模式図である。
図2において、坩堝1の内部上方には、坩堝1の対称軸(中心軸)1axと種結晶3の対称軸3axとが一致するように、種結晶3が取り付けられており、また、坩堝1の外側には、坩堝1の対称軸1axと断熱材5に形成された貫通孔(円形)6の中心軸6axとが一致するように、断熱材5が設けられており、前記貫通孔(円形)6の中心に対応して、成長している結晶の中心部の温度が低くなり、結晶成長方向に向かって凸形状の温度分布が形成されるようになっている。このように、結晶成長面内で低い温度の点と高い温度の点とがある場合には、温度の低い点でより速く結晶成長が進み、高い点では結晶成長が進み難くなる。このため、結晶成長面はほぼ等温面と同じになり、結晶は等温面に従って成長する。
図3は、本発明の結晶成長を説明するための説明図であって、成長している結晶に対して非軸対称な温度分布を持つ場合であり、種結晶3と成長している結晶(図示外)近傍の等温線を示す模式図である。ここでは、坩堝1の対称軸(中心軸)1axに対して非対称な温度分布を形成する一つの方法として、従来、坩堝1の中心軸1axを中心として坩堝1上部の断熱材5に形成していた貫通孔(円形)6の中心軸6axを坩堝1の中心軸1axからずらした場合を示している。
この図3の場合においても、坩堝1外側の断熱材5に形成した貫通孔(円形)6の中心軸6axに対応して、図2の場合と同様に、成長方向に向かって凸形状の温度分布が形成される。しかしながら、この図3の場合には、貫通孔6の中心軸6axと成長している結晶の中心とが一致していないので、図3(a)の温度分布を用いて結晶成長すれば、成長したインゴットはこの非軸対称な等温面に従って成長し、得られるインゴットは非軸対称な位置に凸部を持つインゴットになる。
この非軸対称な温度分布を、軸対称な構造を持つ種結晶3の対称軸3ax〔坩堝1の対称軸(中心軸)1ax〕に対して回転させた場合の模式図を図3(b)に示す。この図3(b)においては、成長している結晶と坩堝1を固定し、周囲に配置され、中心軸6axが坩堝1の中心軸1axからずれた非軸対称な位置に貫通孔6を有する断熱材5を180°回転させた。図3(a)で貫通孔6の中心軸6ax上に位置して結晶成長面内で最も温度の低い点Aは、図3(b)の配置となった場合には温度が高くなり、この図3(b)の配置の際に温度が最も低くなるのは、貫通孔6の中心軸6ax上に位置するB点となり、図3(a)から図3(b)に回転した際に、位置A点では最も低い温度から上昇し、反対に、位置B点では高い温度から最も低い温度に低下することになる。
この結果、図3(a)において結晶成長が最も速く進んでいたA点が、図3(b)の配置になることにより図3(a)の場合に比べて高温となる。このため、図3(a)の配置で結晶成長中に発生した結晶欠陥(即ち、結晶性の異なる結晶核の生成)があると、この結晶欠陥の部分は欠陥の無い部分に比べてエネルギー的に不安定であるため、図3(b)の配置になってA点の温度が高温になると、その欠陥の部分が他の部分よりも先に昇華する。このようにして、エネルギー的に不安定な結晶欠陥を除去しながら結晶成長を進めることで、エネルギー的に安定な種結晶3と同じ結晶性を持つ結晶のみを優先的に成長させることが可能となる。
図3(a)の配置から図3(b)の配置へと回転させることで、A、B点のみならず、結晶成長面内の各点の温度は高くなる、若しくは低くなるという変化が発生し、A、B点以外の結晶成長面内の点においても、上記の場合と同様に、結晶成長過程で生成する欠陥部分を昇華させながら結晶成長を行うことができる。
その結果、本発明の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置によれば、欠陥密度の低い良質の結晶を効率良く成長させることができ、結晶品質の良い結晶の歩留まりを顕著に向上させることが可能になり、また、このようにして得られた炭化珪素単結晶インゴットを加工して得られる炭化珪素単結晶基板を電子材料基板に用いれば、製品歩留まりの高い高品質な電子材料を製造することができる。
本発明によれば、結晶成長中、特に結晶成長が開始する結晶成長の初期の段階で、種結晶と結晶性の異なる結晶核の生成が生じた場合でも、種結晶の対称軸に対して非軸対称な温度分布を持つ加熱を行うと共に、その種結晶の対称軸を中心にして、非軸対称な温度分布と種結晶及び成長している結晶とを相対的に回転させながら結晶成長を行うことにより、結晶核が昇華し易い温度分布を形成してこの結晶核の昇華を誘起し、エネルギー的に安定な種結晶と同じ結晶性を持つ結晶のみを優先的に成長させることが可能となる。
図1は、改良レーリー法の原理を説明するための説明図である。
図2は、本発明の原理を説明するための従来の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置における種結晶周辺部分を示す説明図である。
図3は、本発明の原理を説明するための本発明に係る図2と同様の種結晶周辺部分を示す説明図である。
図4は、本発明の実施形態の一例に係る炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を説明するための説明図である。
図5は、図4の坩堝、断熱材、及びこの断熱材に形成された貫通孔の位置関係を説明するための説明図である。
図6は、本発明の実施形態の他の一例に係る炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を説明するための説明図である。
図7は、本発明の実施例に係る炭化珪素単結晶インゴットの製造装置の全体を説明するための説明図である。
以下、添付図面に示す実施形態に基づいて、本発明の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を説明する。
図4に、本発明の実施形態の一例に係る炭化珪素単結晶インゴットの製造装置が示されている。坩堝1の上部を覆う断熱材5に形成された貫通孔6は、坩堝1の対称軸(中心軸)1axから図面上左にずらして配置されており、同じ軸対称な構造を持つ種結晶3及び坩堝1に対して、非軸対称な温度分布を形成するようになっている。
図4の構成において、坩堝支持部材7を坩堝1の中心軸1axに対して回転させ、一方で断熱材支持部材8を固定しておくことにより、上記の坩堝1の中心軸1axに対して断熱材5の貫通孔6によって形成された非軸対称な温度分布を相対的に回転させることができ、結果として、結晶成長中に、非軸対称な温度分布の中で種結晶3とこの種結晶3の結晶成長面上で成長している結晶を回転させることができる。反対に、坩堝支持部材7を固定して断熱材支持部材8を回転させることでも同じ効果が得られる。
坩堝1の周囲に配置する断熱材5を用いて非軸対称な温度分布を形成するためには、上記の如く非軸対称な位置に貫通孔6を形成する以外にも、坩堝1の周囲に配置する断熱材5の厚さを坩堝1の中心軸1axに対して非軸対称とする等の方法を用いてもよい。更に、非軸対称な温度分布は、図示外のワークコイルの中心軸と軸対称な坩堝1の中心軸1axをずらすことによって形成することができ、また、非軸対称な発熱分布を持つ図示外の発熱体を用いることによっても形成できる。
本発明においては、このようにして形成された非軸対称な温度分布の中で、坩堝1の中心軸1ax(種結晶3の対称軸3ax)に対して坩堝1(種結晶3と成長している結晶)を相対的に回転させながら結晶成長を行うが、このとき、回転が速すぎると、坩堝1が有する熱容量のため、坩堝1や結晶部分における温度分布の変化が追随できない場合が起こる。この場合には、非軸対称な温度分布は、平均化されて軸対称な温度分布に近づくことになり、言い換えれば、回転速度を早くし過ぎると、従来の軸対称な温度分布に近似的に近づくことになる。また、反対に、回転が遅過ぎる場合には、結晶成長面内での十分な温度変化を得られなくなり、結晶成長と同時に種結晶3と異なる結晶性を持つ結晶核を昇華させるという効果が得られなくなる。
そこで、本発明においては、非軸対称な温度分布の中での種結晶の対称軸を中心とする種結晶と成長している結晶の相対的な回転速度を0.1回転/時間以上300回/時間以下、好ましくは0.5回転/時間以上60回/時間以下とするのがよい。この回転速度が300回/時間より速い場合には、非軸対称に形成した効果が平均化され、本発明の効果が得られない場合があり、本発明の効果をより確実にするためには回転速度は60回/時間以下であるのがよい。また、炭化珪素単結晶の成長速度が通常数十μm/時間〜数mm/時間であることから、回転速度が0.1回転/時間より遅くなると、本発明の効果が得られ難くなる。
ところで、結晶成長の初期には種結晶表面(平面)と等温面の形状とが異なるために、種結晶と異なる結晶性を持つ結晶核が発生し易く、欠陥が導入され易い。そこで、成長した結晶の高さが10mm以下の場合には、非軸対称な温度分布が平均化されないように、上記の回転速度を好ましくは6回転/時間以下に維持することが望ましい。
また、断熱材5に形成される貫通孔6の大きさと、坩堝1の内部上方に設けられる種結晶3の大きさとの関係については、図5において、坩堝1の中心軸1ax上の点をP、断熱材5の貫通孔6の中心をQ、貫通孔6の半径をr、及びPQ間の距離をsとしたとき、貫通孔6の半径rが種結晶3の半径に比べて小さ過ぎると、貫通孔6の効果が十分に得られず、良好な凸形状の温度分布が得られない。一方で、貫通孔6の半径rが種結晶3の半径に比べて大き過ぎる場合には結晶成長面全体に亘って温度が低下するため、良好な凸形状が得られない。これらのことから、貫通孔6の半径rについては、種結晶3の半径の通常20%以上60%以下、好ましくは30%以上50%以下であるのが望ましい。
結晶成長後のインゴットは、上下面と外周面とをそれぞれ研削加工した後に、所定の厚さに切断され、炭化珪素単結晶基板が切り出される。このため、結晶成長後のインゴットは、基板の切り出し枚数を増やして歩留まりを向上させるために、軸対称形状に近い方が望ましい。また、前記のように、回転速度を早くすることにより、非軸対称性の効果が小さくなって平均化し、最も低い温度の点が成長する結晶の中心にくる。そこで、結晶成長過程の後期には、回転速度を速くして平均化された際に、最も低い温度の点が成長する結晶の中心に来て、軸対称形状に近いインゴットが形成されるように、好ましくは貫通孔6の半径rをPQ間の距離sよりも大きくするのが望ましい。このように貫通孔6の半径rをPQ間の距離sよりも大きくすることにより、結晶成長過程の初期、特に成長した結晶の高さが10mm以下のときには回転速度を遅く、好ましくは6回転/時間以下に維持して非軸対称性の効果を効率良く発現させ、また、成長した結晶の高さが10mmより大きい場合である結晶成長過程の後期には回転速度を速くして非軸対称性の効果を低下させ、これによって欠陥密度が低く、しかも、軸対称形状に近い炭化珪素単結晶インゴットを容易に製造することができる。
本発明に係る炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を用いて単結晶インゴットを作製することにより、単一ポリタイプからなる欠陥の少ない高品質のインゴットを再現性良く生産することが可能となる。また、このインゴットから研削、切断、研磨により作製される炭化珪素単結晶基板は、欠陥の少ない電子材料用基板として有用である。
以下に、本発明の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を用いて、単結晶インゴットを作製する場合の実施例について説明する。
先ず、図7に基づいて、以下の実施例で用いる炭化珪素単結晶インゴットの製造装置の全体を簡単に説明する。この製造装置は、黒鉛製の坩堝1と、この坩堝1を取り囲むように覆う断熱材5と、更にこれら坩堝1及び断熱材5を収容する二重石英管9と、更にこの二重石英管9の外側に前記坩堝1を発熱させる誘導加熱用のためのワークコイル13が設置されている。坩堝1に炭化珪素結晶粉末からなる原料2が収容されている。また、前記坩堝1の内部上方〔蓋部(坩堝蓋)〕には、炭化珪素単結晶からなる種結晶3が取り付けられている。前記ワークコイル13に高周波電流を流すことにより、坩堝1を加熱し、原料2及び種結晶3を所望の温度に加熱する。
この製造装置において、二重石英管9内部は、真空排気装置10により高真空排気(10-3Pa以下)することができ、かつArガス配管11とArガス用マスフローコントローラ12を用いて、内部雰囲気をArガスにより圧力制御することができるようになっている。そして、坩堝1の温度の計測は、坩堝1上下部を覆う黒鉛製の断熱材5の中央部に光路を設け、坩堝1の上部及び下部からの光を取り出して、二色温度計を用いて行い、坩堝下部の温度を原料温度とし、坩堝上部の温度から種結晶の温度を判断する。
結晶成長は、前記製造装置において、原料2を昇華させ、種結晶3として用いた炭化珪素単結晶上で再結晶化させることにより行われ、その手順は以下の通りである。
先ず、種結晶3が取り付けられ、また、原料2を収容した坩堝1が、二重石英管9の内部において、坩堝支持部材8の上に設置される。この坩堝1の周囲には、熱シールドのための断熱材5が設置され、その一部が断熱材支持部8の上に設置される。
次に、このようにして坩堝1及び断熱材5が配置された後に、二重石英管9の内部を真空排気し、ワークコイル13に電流を流し、原料温度を2000℃まで上昇させる。その後、雰囲気ガスとしてArガスを流入させ、二重石英管9内の圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させ、その後、30分かけて成長圧力である1.3kPaまで減圧する。減圧を始めると同時に、坩堝支持部材7を坩堝1の中心軸1axの周りを所定の速度で回転させる。その後、結晶成長に要する所定時間の間、原料温度を目標温度に保持すると同時に、坩堝支持部材7を所定の回転速度で回転させて、単結晶の成長を行う。結晶成長後、6時間かけてワークコイル13に流す電流の値を徐々に0までにし、単結晶インゴットの製造を終了する。
[実施例1]
実施例1においては、図4に示す製造装置において、坩堝1の容器部内にアチソン法により作製された炭化珪素結晶粉末からなる原料2を収容した。また、坩堝1の蓋部には、種結晶3として、口径105mmの(0001)面を有する4Hポリタイプの炭化珪素単結晶ウェハを配置した。また、坩堝1の上部を覆う断熱材5には、坩堝1の中心Pと貫通孔6の中心Qとの間の距離が10mmとなるように、直径40mmの貫通孔を形成した。
このようにして作製された坩堝1、断熱材5を前述のように二重石英管9の内部に設置し、前記手順で炭化珪素単結晶の結晶成長を行った。原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた後に、二重石英管9内のArの圧力を成長圧力1.3kPaまで30分かけて減圧した。坩堝支持部材7の回転は、減圧を始めると同時に0.5回転/時間の速度で回転させ始め、減圧が1.3kPaに到達した後に更に30時間の間は0.5回転/時間の速度で回転を続け、更にその後、結晶成長が終了するまでの50時間の間は20回転/時間の速度で回転を継続した。結晶成長は減圧が終わってから合計で80時間行った。
成長速度は約0.5mm/時であって、結晶の口径が105mm程度で高さが40mm程度である単結晶インゴットが得られた。
得られた炭化珪素単結晶インゴットについて、X線回折及びラマン散乱により分析したところ、4Hの単一ポリタイプからなるインゴットであり、また、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少ない極めて高品質であることが確認された。さらに、得られたインゴットを(0001)<11‐20>4°オフ基板状に切断、研磨した後に、溶融KOHによるエッチングを行った。光学顕微鏡にてエッチピットの密度を計測したところ、エッチピットが6000個/cm2である、エッチピット密度の低い炭化珪素単結晶基板が得られた。
このインゴットから切り出された炭化珪素単結晶基板は、電子デバイスを作製するための基板として有用であった。
[実施例2]
実施例2においては、図4に示す製造装置において、坩堝1の容器部内にアチソン法により作製された炭化珪素結晶粉末からなる原料2を収容した。また、坩堝1の蓋部には、種結晶3として、口径105mmの(0001)面を有する4Hポリタイプの炭化珪素単結晶ウェハを配置した。また、坩堝1の上部を覆う断熱材5には、坩堝1の中心Pと貫通孔6の中心Qとの間の距離が15mmとなるように、直径50mmの貫通孔を形成した。
このようにして作製された坩堝1、断熱材5を前述のように二重石英管9の内部に設置し、前記手順で炭化珪素単結晶の結晶成長を行った。原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた後に、二重石英管9内のArの圧力を成長圧力1.3kPaまで30分かけて減圧した。坩堝支持部材7の回転は、減圧を始めると同時に5回転/時間の速度で回転させ始め、減圧が1.3kPaに到達した後に結晶成長を行う80時間の間中5回転/時間の速度で回転を継続した。
成長速度は約0.6mm/時であって、結晶の口径が105mm程度で高さが50mm程度である単結晶インゴットが得られた。
得られた炭化珪素単結晶インゴットについて、X線回折及びラマン散乱により分析したところ、4Hの単一ポリタイプからなるインゴットであり、また、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少ない極めて高品質であることが確認された。さらに、得られたインゴットを(0001)<11-20>4°オフ基板状に切断、研磨した後に、溶融KOHによるエッチングを行った。光学顕微鏡にてエッチピットの密度を計測したところ、エッチピットが7000個/cm2である、エッチピット密度の低い炭化珪素単結晶基板が得られた。
このインゴットから切り出された炭化珪素単結晶基板は、電子デバイスを作製するための基板として有用であった。
[実施例3]
実施例3においては、図4に示す製造装置において、坩堝1の容器部内にアチソン法により作製された炭化珪素結晶粉末からなる原料2を収容した。また、坩堝1の蓋部には、種結晶3として、口径105mmの(0001)面を有する4Hポリタイプの炭化珪素単結晶ウェハを配置した。また、坩堝1の上部を覆う断熱材5には、坩堝1の中心Pと貫通孔6の中心Qとの間の距離が20mmとなるように、直径60mmの貫通孔を形成した。
このようにして作製された坩堝1、断熱材5を前述のように二重石英管9の内部に設置し、前記手順で炭化珪素単結晶の結晶成長を行った。原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた後に、二重石英管9内のArの圧力を成長圧力1.3kPaまで30分かけて減圧した。坩堝支持部材7の回転は、減圧を始めると同時に10回転/時間の速度で回転させ始め、1.3kPaに減圧した後に結晶成長を行う80時間の間中10回転/時間の速度で回転を続けた。
成長速度は約0.5mm/時であって、結晶の口径が105mm程度で高さが40mm程度である単結晶インゴットが得られた。
得られた炭化珪素単結晶インゴットについて、X線回折及びラマン散乱により分析したところ、4Hの単一ポリタイプからなるインゴットであり、また、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少ない極めて高品質であることが確認された。さらに、得られたインゴットを(0001)<11-20>4°オフ基板状に切断、研磨した後に、溶融KOHによるエッチングを行った。光学顕微鏡にてエッチピットの密度を計測したところ、エッチピットが8000個/cm2である、エッチピット密度の低い炭化珪素単結晶基板が得られた。
このインゴットから切り出された炭化珪素単結晶基板は、電子デバイスを作製するための基板として有用であった。
[実施例4]
実施例4においては、図4に示す製造装置において、坩堝1の容器部内にアチソン法により作製された炭化珪素結晶粉末からなる原料2を収容した。また、坩堝1の蓋部には、種結晶3として、口径105mmの(0001)面を有する4Hポリタイプの炭化珪素単結晶ウェハを配置した。また、坩堝1の上部を覆う断熱材5には、坩堝1の中心Pと貫通孔6の中心Qとの間の距離が15mmとなるように、直径50mmの貫通孔を形成した。
このようにして作製された坩堝1、断熱材5を前述のように二重石英管9の内部に設置し、前記手順で炭化珪素単結晶の結晶成長を行った。原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた後に、二重石英管9内のArの圧力を成長圧力1.3kPaまで30分かけて減圧した。坩堝支持部材の回転は、減圧を始めると同時に150回転/時間の速度で回転させ始め、1.3kPaに減圧した後に結晶成長を行う80時間の間中150回転/時間の速度で回転を続けた。
成長速度は約0.6mm/時であって、結晶の口径が105mm程度で高さが50mm程度である単結晶インゴットが得られた。
得られた炭化珪素単結晶インゴットについて、X線回折及びラマン散乱により分析したところ、4Hの単一ポリタイプからなるインゴットであることが確認された。さらに、得られたインゴットを(0001)<11-20>4°オフ基板状に切断、研磨した後に、溶融KOHによるエッチングを行った。光学顕微鏡にてエッチピットの密度を計測したところ、エッチピットが10000個/cm2であった。
このインゴットから切り出された炭化珪素単結晶基板は、電子デバイスを作製するための基板として有用であった。
[実施例5]
実施例5においては、図6に示す製造装置を用いた。図6に示す装置は、坩堝1の側面を覆う断熱材5の一部を取り除き、その部分に誘導加熱により発熱する黒鉛製の発熱体14を配置した。この発熱体14は、坩堝1の外周部の周方向に1/4周の部分のみに形成し、残りの3/4周の部分には図4の装置と同様に断熱材5を配置した。坩堝1の容器部内にアチソン法により作製された炭化珪素結晶粉末からなる原料2を収容した。また、坩堝1の蓋部には、種結晶3として、口径105mmの(0001)面を有する4Hポリタイプの炭化珪素単結晶ウェハを配置した。また、坩堝1の上部を覆う断熱材5には、直径50mmの貫通孔6をその中心軸6axが坩堝1の中心軸1ax(種結晶3の対称軸3ax)と一致するように、すなわち、坩堝1の中心Pと貫通孔6の中心Qとが重なってこれらPQ間の距離が0となるように形成した。
このようにして作製された坩堝1、断熱材5を前述のように二重石英管9の内部に設置し、前記手順で炭化珪素単結晶の結晶成長を行った。原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させた後に、二重石英管9内のArの圧力を成長圧力1.3kPaまで30分かけて減圧した。坩堝支持部材7の回転は、減圧を始めると同時に0.5回転/時間の速度で回転させ始め、減圧が1.3kPaに到達した後に30時間の間は0.5回転/時間の速度で回転を続け、更にその後、結晶成長が終了するまでの50時間は20回転/時間の速度で回転を継続した。結晶成長は減圧が終わってから80時間行った。
成長速度は約0.6mm/時であって、結晶の口径が105mm程度で高さが50mm程度である単結晶インゴットが得られた。
得られた炭化珪素単結晶インゴットについて、X線回折及びラマン散乱により分析したところ、4Hの単一ポリタイプからなるインゴットであることが確認された。さらに、得られたインゴットを(0001)<11-20>4°オフ基板状に切断、研磨した後に、溶融KOHによるエッチングを行った。光学顕微鏡にてエッチピットの密度を計測したところ、エッチピットが10000個/cm2であった。
このインゴットから切り出された炭化珪素単結晶基板は、電子デバイスを作製するための基板として有用であった。
[比較例1]
実施例1と比較するために、減圧開始後から結晶成長中にかけて坩堝支持部材7の回転を行わない以外は、前記実施例1と同様にして、炭化珪素単結晶インゴットの製造を行った。
成長速度は約0.5mm/時であって、結晶の口径が105mm程度で高さが40mm程度である単結晶インゴットが得られた。インゴットは貫通孔6の部分の高さが高い非軸対称な形状であった。
得られた炭化珪素単結晶インゴットについて、X線回折及びラマン散乱により分析したところ、4Hの単一ポリタイプからなるインゴットであり、また、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少ないことが確認された。さらに、得られたインゴットを(0001)<11-20>4°オフ基板状に切断、研磨した後に、溶融KOHによるエッチングを行った。光学顕微鏡にてエッチピットの密度を計測したところ、エッチピットが12000個/cm2であった。
このインゴットから切り出された炭化珪素単結晶基板は、電子デバイスを作製するための基板としては欠陥密度が高いために、電子デバイスの製造歩留まりが低くなるという問題があった。
[比較例2]
実施例1と比較するために、坩堝1の上部を覆う断熱材5に、直径40mmの貫通孔6をその中心軸6axが坩堝1の中心軸1ax(種結晶3の対称軸3ax)に一致するように、すなわち、坩堝1の中心Pと貫通孔6の中心Qとが重なってこれらPQ間の距離が0mmとなるように形成した。つまり、軸対称な温度分布を形成すること以外は、前記実施例1と同様にして、炭化珪素単結晶インゴットの製造を行った。
成長速度は約0.5mm/時であって、結晶の口径が105mm程度で高さが40mm程度である単結晶インゴットが得られた。インゴットは軸対称位置にある貫通孔の部分の高さが高い、軸対称な形状であった。
得られた炭化珪素単結晶インゴットについて、X線回折及びラマン散乱により分析したところ、4Hの単一ポリタイプからなるインゴットであり、また、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少ないことが確認された。さらに、得られたインゴットを(0001)<11-20>4°オフ基板状に切断、研磨した後に、溶融KOHによるエッチングを行った。光学顕微鏡にてエッチピットの密度を計測したところ、エッチピットが12000個/cm2であった。
このインゴットから切り出された炭化珪素単結晶基板は、電子デバイスを作製するための基板としては欠陥密度が高いために、電子デバイスの製造歩留まりが低くなるという問題がある。
1…坩堝、2…原料、3…種結晶、4…単結晶、5…断熱材、6…貫通孔、7…坩堝支持部材、7a…坩堝支持部材回転機構、8…断熱材支持部材、9…二重石英管、10…真空排気装置、11…Arガス配管、12…Arガス用マスフローコントローラ、13…ワークコイル、14…発熱体。

Claims (4)

  1. 対称軸を有する坩堝と対称軸を有する種結晶を用いて昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造する装置であって、種結晶の対称軸に対して非軸対称な温度分布を持つ加熱を行うと同時に、その非軸対称な温度分布の中で種結晶の対称軸を中心にして、種結晶と成長している結晶を回転させながら結晶成長を行うことを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
  2. 前記坩堝と種結晶とが同じ対称軸を共有しており、該坩堝を取り囲む断熱材を非軸対称に配置することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
  3. 前記非軸対称な温度分布の中で種結晶の対称軸を中心に種結晶と成長している結晶を回転させる際の回転速度が、0.1回転/時間以上300回転/時間以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
  4. 前記非軸対称な温度分布の中で種結晶の対称軸を中心に種結晶と成長している結晶を回転させる際の回転速度が、成長した結晶の最高部の高さが10mm以下の場合に6回転/時間以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造装置。
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