JP2012117017A - 射出成形用エポキシ樹脂組成物、およびコイル部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均エポキシ当量が400〜490のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分として含む固形エポキシ樹脂と、硬化剤全量に対してフェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上含有する固形フェノール樹脂硬化剤と、シリカと、ジメチルウレア系硬化促進剤と、を必須成分とし、樹脂組成物全量に対して、シリカを75〜90質量%含有することを特徴とする射出成形用エポキシ樹脂組成物およびこれを射出成形することによりコイルを封止して得られるコイル部品。
【選択図】なし
Description
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物は、以下の(A)成分〜(D)成分を必須成分として含有する。
(A)固形エポキシ樹脂(平均エポキシ当量が400〜490の範囲にあるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分とする。)
(B)固形フェノール樹脂硬化剤(硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上の割合で含有する。)
(C)シリカ(樹脂組成物全量に対する(C)シリカの含有割合は、75〜90質量%である。)
(D)ジメチルウレア系硬化促進剤
ここで、本明細書において、固形エポキシ樹脂、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、固形フェノール樹脂硬化剤等の「固形」とは、25℃において固体であることをいう。
(A)固形エポキシ樹脂
本発明に用いる固形エポキシ樹脂が主成分として含有するビスフェノールA型固形エポキシ樹脂は、平均エポキシ当量が400から490の範囲にあるものである。ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂における平均エポキシ当量が400未満である場合、得られる成形品の耐クラック性が劣ったものとなる。一方、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の平均エポキシ当量が490を越える場合、得られる成形品の充填性が劣ったものとなる。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、好ましくは420〜480である。
上記ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂は、全体としての平均エポキシ当量が上記範囲にあり25℃において固体である限りは、1種で構成されてもよく、またはその2種以上を組み合わせて構成されてもよい。
このような組合せに用いるビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が200〜1000で、かつ軟化点が60〜100℃のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂または半固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明に用いる(B)固形フェノール樹脂硬化剤は、硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂(以下、「多官能フェノール樹脂(b)」という)を70質量%以上の割合で含有する。(B)固形フェノール樹脂硬化剤が上記配合量で上記多官能フェノール樹脂(b)を含有することにより耐クラック性に有効な硬化物ができる。
本発明において硬化剤全量に対する上記多官能フェノール樹脂(b)の含有割合は上記の通り70質量%以上であるが、より好ましくは100質量%である。上記多官能フェノール樹脂(b)は必ずしも固形である必要はないが、(B)固形フェノール樹脂硬化剤が多官能フェノール樹脂(b)のみで構成されている場合は固形である。
上記多官能フェノール樹脂(b)としては、このようなフェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂であれば特に制限されない。
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物において(C)シリカは、樹脂組成物全量に対して75〜90質量%の割合で配合される。この配合量が下限値を下回ると熱伝導率が低下し、熱放散性が不十分となり、電気特性が悪化する。上限値を越えると流動性が低下し射出成形品の外観が不良となる。なお、樹脂組成物全量に対する(C)シリカの配合量は、好ましくは80〜90質量%である。
シリカ粉末の大きさについては、例えば、結晶シリカ粉末においては、最大粒径が150μm以下であり、平均粒径が15〜30μmであることが好ましい。最大粒径が上限値を越えるとコイル部品の未充填不良や外観不良が発生し、平均粒径が上記範囲を外れると流動性が低下し、コイル部品の外観が悪化する等の不良となるおそれがあるため好ましくない。また、結晶シリカ粉末以外の上記シリカ粉末においても、結晶シリカ粉末と同様の大きさの粉末とすることが好ましい。
本発明に用いられる(D)ジメチルウレア系硬化促進剤としては、通常、エポキシ樹脂組成物に硬化促進剤として配合されるジメチルウレア系化合物であれば特に制限なく用いられる。ジメチルウレア系硬化促進剤は、通常、150℃以上でエポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する作用を有するものである。そのため、通常の設定温度が
90〜100℃程度の射出成形時のシリンダー温度下では、エポキシ樹脂の硬化反応は進まず、金型充填後の150℃以上の加熱による硬化時にその反応促進作用を発揮することが可能となる。これにより、コイル部品の連続成形性を向上することができる。
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物は、上述した(A)固形エポキシ樹脂(平均エポキシ当量が400〜490の範囲にあるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分とする。)、(B)固形フェノール樹脂硬化剤(硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上の割合で含有する。)、(C)シリカ(樹脂組成物全量に対する(C)シリカの含有割合は、75〜90質量%である。)および(D)ジメチルウレア系硬化促進剤を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、各種充填剤および天然ワックス類や合成ワックス類等の離型剤、三酸化アンチモン、ブロモ化エポキシ樹脂等の難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、ゴム系やシリコーン系ポリマー等の低応力付与剤、アミン変性およびエポキシ変性シリコーンオイル等のカップリング剤、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク等の無機充填材等を適宜添加配合することができる。
本発明のコイル部品は、上記で得られた本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物を射出成形することによりコイルを封止して得られるコイル部品である。
本発明のコイル部品の製造方法としては、用いるエポキシ樹脂組成物を本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物とすること以外は、通常、エポキシ樹脂組成物を用いて射出成形によりコイルを封止する方法が特に制限なく適用できる。
[エポキシ樹脂]
(A)固形エポキシ樹脂
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形または半固形))
エピクロン1055:DIC社製、商品名、エポキシ当量450、軟化点64〜74℃
エピクロン860:DIC社製、商品名、エポキシ当量245、半固形
エピクロン2055:DIC社製、商品名、エポキシ当量630、軟化点80〜90℃
エピクロン3055:DIC社製、商品名、エポキシ当量780、軟化点91〜100℃
(その他エポキシ樹脂)
EPPN−502H:多官能エポキシ樹脂、日本化薬社製、商品名、エポキシ当量170、軟化点60〜76℃
CNE−200EL:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(以下、必要に応じて「OCNエポキシ樹脂」と表記する。)、長春エポキシ社製、商品名、エポキシ当量200、軟化点70〜78℃
(B)固形フェノール樹脂硬化剤
(多官能フェノール(b))
MEH−7500:上記式(1)においてRが水素原子であるフェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、明和化成社製、商品名、水酸基当量100、軟化点107〜113℃
(その他固形フェノール樹脂硬化剤)
BRG−556:ノボラック型フェノール樹脂、昭和高分子社製、商品名、水酸基当量105、軟化点77〜82℃
((D)ジメチルウレア系硬化促進剤)
U−CAT3512T:ジメチルウレア系化合物、サンアプロ社製、商品名
(その他硬化促進剤)
CllZ:イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製、商品名
[その他]
(C)シリカ
シリカT:結晶シリカ、福島窯業社製、商品名、平均粒径:25〜30μm、最大粒径:150μm未満
S−210:溶融球状シリカ、マイクロン社製、商品名、平均粒径25〜30μm、最大粒径:75μm
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂としてエピクロン1055を11質量部、多官能フェノール(b)としてMEH−7500を3質量部、結晶シリカとしてシリカTを85質量部、ジメチルウレア系硬化促進剤としてU−CAT3512Tを0.3質量部、シランカップリング剤としてS−510(チッソ社製、商品名)を0.3質量部、離型剤としてLuvax−0321(日本精鑞社製、商品名)を0.2質量部準備し、溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、混錬は、温度100℃、40rpmで10分間実施した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂としてエピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン860の1.1質量部とエピクロン1055の9.9質量部(平均エポキシ当量:420)を用いた以外は、実施例1と同様に材料を溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン1055の10質量部とエピクロン2055の1質量部(平均エポキシ当量:480)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
結晶シリカとしてシリカTを85質量部用いる代わりに、結晶シリカとしてシリカTの75質量部と溶融球状シリカとしてS−210の11質量部(シリカにおける結晶シリカの割合:87.2質量%)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
固形フェノール樹脂硬化剤として多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、MEH−7500の2.1質量部とノボラック型フェノール樹脂BRG−556の0.9質量部(硬化剤におけるMEH−7500の割合:70質量%)を用いた以外は実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
結晶シリカの代わりに、溶融球状シリカとしてS−210を82質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
固形フェノール樹脂硬化剤として、多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、多官能フェノール(b)としてMEH−7500の1.8質量部とノボラック型フェノール樹脂としてBRG−556の1.2質量部(硬化剤におけるMEH−7500の割合:60質量%)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン1055の5.5質量部とエピクロン2055の5.5質量(平均エポキシ当量:540)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン2055を11質量部用いた以外は実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン860の3.1質量とエピクロン1055の7.9質量部(平均エポキシ当量:355)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の代わりに、多官能エポキシ樹脂EPPN−502Hを7質量部、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂CNE−200ELを3質量部用い、多官能フェノール(b)として用いたMEH−7500の配合量を3質量部から4質量部に変えた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の代わりに、多官能エポキシ樹脂EPPN−502Hを2質量部、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂CNE−200ELを4質量部用い、固形フェノール樹脂硬化剤として、多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、ノボラック型フェノール樹脂BRG−556を3質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
固形フェノール樹脂硬化剤として、多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、ノボラック型フェノール樹脂BRG−556を3質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ジメチルウレア系硬化促進剤の代わりにイミダゾール系硬化促進剤CllZを0.1質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン3055を11質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン860を11質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
次いで、上記各実施例および比較例で得られた射出成形用エポキシ樹脂組成物に対して、スパイラルフロー、高化式フロー粘度、ガラス転移温度、熱膨張率、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定することによって、その特性を評価した。さらに、上記各実施例および比較例で得られた射出成形用エポキシ樹脂組成物を用いて射出成形によりコイル部品を製造し、外観検査により未充填発生率およびクラック発生率を求め、成形性を評価した。
金型温度175℃、樹脂仕込み量25g、プランジャー圧力75kgf/cm2、硬化時間120秒なる条件で実施した。
(高化式フロー粘度[Pa・s])
ノズル長1.0mm、ノズル半径0.25mm、温度175℃、プランジャー圧力10kgf/cm2なる条件で実施した。
(ガラス転移温度[℃])
TMA法にて、温度は室温から200℃まで、5℃/分の硬度で昇温させて、ガラス転移温度を測定した。
TMA法にて、温度は室温から200℃まで、5℃/分の速度で昇温させて、熱膨張率を測定した。
(熱伝導率[W/m・K])
熱伝導率測定機QTM−500(京都電子工業株式会社製)を用いて、ホットワイヤ法(細線加熱法)により測定した。
(曲げ強さ[MPa])
25℃の曲げ強さをJIS K 6911に準拠して測定した。
(曲げ弾性率[GPa])
25℃の曲げ弾性率をJIS K 6911に準拠して測定した。
本体部の直径が60mm、長さが100mmのボビンに対して、直径0.5mmの銅線を巻回してなる構造体を、一片の長さが64mm、長さが104mm、厚さが2mmのSUSからなる金属フレームに収納して得た固定子鉄心(コイル)を、成形用金型のコアに挿入後、上型を閉じた。その後、シリンダー温度90℃、ノズル温度100℃、射出圧力150MPaに設定した射出成形機を用いて、上記実施例、比較例で作製した射出成形用エポキシ樹脂組成物を上記成形用金型に注入し、180℃、
120秒の条件で硬化させて、上記固定子鉄心がエポキシ樹脂で封止されたコイル部品を成形した。得られた成形品100個を、目視により外観検査を行い、未充填およびクラックの発生率を調べた。
また、硬化剤における多官能フェノール樹脂(b)の含有量が70質量%未満の比較例のエポキシ樹脂組成物では、機械的強度の低下と共に、耐クラック性に劣ることがわかる。さらに、シリカを全樹脂組成物中に75〜90質量%含み、結晶性のシリカを全シリカ中に75質量%以上含有すると良好な熱伝導性が得られることがわかる。
Claims (3)
- (A)平均エポキシ当量が400〜490の範囲にあるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分として含む固形エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上の割合で含有する固形フェノール樹脂硬化剤と、
(C)シリカと、
(D)ジメチルウレア系硬化促進剤と、
を必須成分とし、樹脂組成物全量に対して、前記(C)シリカを75〜90質量%の割合で含有してなることを特徴とする射出成形用エポキシ樹脂組成物。 - 前記(C)シリカが結晶シリカをシリカ全量に対して75質量%以上含んでなることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の射出成形用エポキシ樹脂組成物を射出成形することによりコイルを封止して得られるコイル部品。
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