JP2012117017A - 射出成形用エポキシ樹脂組成物、およびコイル部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形時には十分な流動性を有することで射出成形性に優れ、さらに硬化後は熱伝導性および耐クラック性に優れる射出成形用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いてコイルを封止成形してなる高信頼性のコイル部品を提供する。
【解決手段】平均エポキシ当量が400〜490のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分として含む固形エポキシ樹脂と、硬化剤全量に対してフェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上含有する固形フェノール樹脂硬化剤と、シリカと、ジメチルウレア系硬化促進剤と、を必須成分とし、樹脂組成物全量に対して、シリカを75〜90質量%含有することを特徴とする射出成形用エポキシ樹脂組成物およびこれを射出成形することによりコイルを封止して得られるコイル部品。
【選択図】なし

Description

本発明は、射出成形用エポキシ樹脂組成物、およびコイル部品に係り、特に、コイルの封止に最適な熱伝導性と耐クラック性に優れた射出成形用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いてコイルを封止成形して得られるコイル部品に関する。
近年、電機・電子機器、自動車機器、化学機器などを構成する部品材料には機器の小型化や軽量化を目的として機械的強度、耐熱性、耐薬品性等の要求が高まっている。さらに、電子部品製造装置・加工装置は、小型化、高速化しており、これらを駆動するサーボモータも小型化が進展している。
その他のモータにおいても上記と同様に、小形化、高出力化が急速に進み、これに伴い、コイル部品を封止する樹脂には、コイル部で発生した熱を速やかに放熱させる特性や、運転のON/OFFに伴うヒートサイクルに対応する強靭性が求められている。また、コイル部品を合成樹脂によって封止成形してハウジングを形成し、その内部に軸受けを介して回転子を内蔵する樹脂モールドモータが知られている。
ところで、エポキシ樹脂は、その良好な耐熱・耐薬品性に加え、機械的にも優れた特性を有し、さらには、エポキシ樹脂硬化剤および各種添加剤との組合せにより、目的に応じた配合設計が実現できることから、樹脂モールドモータを初めとする、電気部品の封止・モールドに広く用いられており、射出成形可能なエポキシ樹脂も広く用いられている。
例えば、エポキシ樹脂に、高熱伝導性の酸化マグネシウムや酸化亜鉛からなる無機充填材を配合し、さらにブタジエン系ゴムとガラス繊維を配合した、高位の靭性と熱伝導性を有し、かつ良好な射出成形性を有するエポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
また、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ノボラック系フェノール樹脂、ジメチルウレア系硬化促進剤、溶融シリカ、ガラス繊維を組合せることで、流動性や機械特性に優れた、射出成形可能なエポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献2、3参照)。さらに、多官能型エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレア系硬化促進剤の組合せにより機械的強度の高い成形品の樹脂組成物が開示されている(特許文献4参照)。
特開平8−157693号公報 特開2001−106771号公報 特開2001−278948号公報 特開2002−302531号公報
しかしながら、酸化マグネシウムや酸化亜鉛を配合する場合、硬化物の強度低下が避けられず、合成ゴムやガラス繊維を配合する必要があるが、これにより流動性の低下や、ガラス繊維の配合に応じて無機充填材の配合量が減少するため、充分な熱伝導性能が得られないおそれがあり、高い熱伝導性と耐クラック性との両立が困難といった問題がある。また、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂や多官能型エポキシ樹脂とノボラックフェノール樹脂の組合せにおいても、同様に流動性の低下や、高い熱伝導性と耐クラック性との両立が困難といった問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、成形時には十分な流動性を有することで射出成形性に優れ、さらに硬化後は熱伝導性および耐クラック性に優れる射出成形用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いてコイルを封止成形してなる高信頼性のコイル部品を提供することを目的とする。
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物は、(A)平均エポキシ当量が400〜490の範囲にあるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分として含む固形エポキシ樹脂と、(B)硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上の割合で含有する固形フェノール樹脂硬化剤と、(C)シリカと、(D)ジメチルウレア系硬化促進剤と、を必須成分とし、樹脂組成物全量に対して、前記(C)シリカを75〜90質量%の割合で含有してなることを特徴とする。
また、本発明は、前記本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物を射出成形することによりコイルを封止して得られるコイル部品を提供する。
本発明によれば、成形時には十分な流動性を有することで射出成形性に優れ、さらに硬化後は熱伝導性および耐クラック性に優れる射出成形用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いてコイルを封止成形してなる高信頼性のコイル部品を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
<射出成形用エポキシ樹脂組成物>
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物は、以下の(A)成分〜(D)成分を必須成分として含有する。
(A)固形エポキシ樹脂(平均エポキシ当量が400〜490の範囲にあるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分とする。)
(B)固形フェノール樹脂硬化剤(硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上の割合で含有する。)
(C)シリカ(樹脂組成物全量に対する(C)シリカの含有割合は、75〜90質量%である。)
(D)ジメチルウレア系硬化促進剤
ここで、本明細書において、固形エポキシ樹脂、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、固形フェノール樹脂硬化剤等の「固形」とは、25℃において固体であることをいう。
以下、本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物に用いる各成分について説明する。
(A)固形エポキシ樹脂
本発明に用いる固形エポキシ樹脂が主成分として含有するビスフェノールA型固形エポキシ樹脂は、平均エポキシ当量が400から490の範囲にあるものである。ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂における平均エポキシ当量が400未満である場合、得られる成形品の耐クラック性が劣ったものとなる。一方、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の平均エポキシ当量が490を越える場合、得られる成形品の充填性が劣ったものとなる。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、好ましくは420〜480である。
また、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の平均エポキシ当量の範囲を上記範囲とすることで、射出成形用エポキシ樹脂組成物における(C)成分のシリカの配合量を大きくすることができるため、熱伝導性の良好な射出成形用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
上記ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂は、全体としての平均エポキシ当量が上記範囲にあり25℃において固体である限りは、1種で構成されてもよく、またはその2種以上を組み合わせて構成されてもよい。
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂が1種で構成されている場合は、単独で固形であり平均エポキシ当量が400から490の範囲にあるものを用いる。ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂が2種以上の組合せからなる場合には、組合せに用いる個々のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、必ずしも上記条件を満たす必要はなく、組合せて得られるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂が上記条件を満たせばよい。
このような組合せに用いるビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が200〜1000で、かつ軟化点が60〜100℃のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂または半固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形または半固形)としては、例えば、以下の市販品を用いることができる。市販品としては、YD−011(エポキシ当量:475)、YD−012(エポキシ当量:650)、YD−013(エポキシ当量:850)、YD−014(エポキシ当量:950)(以上、東都化成社製、製品名)、エピクロンシリーズの860(エポキシ当量:245)、1050(エポキシ当量:450)、1055(エポキシ当量:450)、2050(エポキシ当量:630)、2055(エポキシ当量:630)、3050(エポキシ当量:780)、3055(エポキシ当量:780)、4050(エポキシ当量:950)(以上、DIC社製、製品名)等が挙げられる。
上記の通り、これらのうちでも平均エポキシ当量が400〜490のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂は、単独で該ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物に配合できる。一方、これらのうちで、平均エポキシ当量が400〜490の範囲にないビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形または半固形)は、平均エポキシ当量が400〜490の範囲となるように、それ以外のビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形または半固形)と組合せて用いる。なお、平均エポキシ当量が400〜490のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂においても、これらを2種以上組合せて用いることも可能であり、またこれらと平均エポキシ当量が400〜490の範囲にないビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形または半固形)とを組合せて用いることも可能である。
なお、本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物における、(A)固形エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物全量に対して、10〜15質量%であることが好ましく、10〜12質量%であることがより好ましい。この含有量が10質量%未満では、流動性が低下して成形品の未充填が発生する場合があり、15質量%を超えると高流動化に伴う射出圧不足になり成形品内部ボイドが発生する傾向となる。
(B)固形フェノール樹脂硬化剤
本発明に用いる(B)固形フェノール樹脂硬化剤は、硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂(以下、「多官能フェノール樹脂(b)」という)を70質量%以上の割合で含有する。(B)固形フェノール樹脂硬化剤が上記配合量で上記多官能フェノール樹脂(b)を含有することにより耐クラック性に有効な硬化物ができる。
本発明において硬化剤全量に対する上記多官能フェノール樹脂(b)の含有割合は上記の通り70質量%以上であるが、より好ましくは100質量%である。上記多官能フェノール樹脂(b)は必ずしも固形である必要はないが、(B)固形フェノール樹脂硬化剤が多官能フェノール樹脂(b)のみで構成されている場合は固形である。
ここで、本明細書においてフェノール類の用語は、フェノールおよびベンゼン環に結合する水素が置換されたフェノールからなるフェノール類縁の化合物群の総称として用いられる。また、ベンズアルデヒド類、ヒドロキシベンズアルデヒド類についても同様である。
上記多官能フェノール樹脂(b)としては、このようなフェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂であれば特に制限されない。
多官能フェノール樹脂(b)は、具体的には、フェノール類とベンズアルデヒド類との重縮合単位のみ、またはフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位のみを有していてもよく、またその両者を有していてもよい。
ここで、本発明に用いる上記多官能フェノール樹脂(b)の水酸基当量については、90〜105の範囲にあることが好ましい。本発明において、このような多官能フェノール樹脂(b)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、上記多官能フェノール樹脂(b)のうちでも、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂として、具体的には、下記構造式(1)で示される多官能フェノール樹脂が挙げられる。
Figure 2012117017
(ただし、式(1)中、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10の置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
上記式(1)で示される多官能フェノール樹脂として、具体的には、Rが水素原子である、水酸基当量100、軟化点83℃のフェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂(明和化成社製、商品名:MEH−7500)が挙げられる。
本発明に用いる(B)固形フェノール樹脂硬化剤が、上記多官能フェノール樹脂(b)以外に含有可能なフェノール樹脂硬化剤としては、上記多官能フェノール樹脂(b)と組合せて用いた場合に固形の形態をとるものであれば特に限定されない。このようなフェノール樹脂硬化剤として、具体的には、フェノール、アルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等、およびこれらの変性樹脂、例えばエポキシ化もしくはブチル化したノボラック型フェノール樹脂等、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂等が挙げられる。さらに、フェノール類やナフトール類とパラキシレンジメチルエーテル等との縮合物、例えばフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等、あるいは、上記多官能フェノール樹脂(b)以外の多官能型フェノール樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物における、これら(B)固形フェノール樹脂硬化剤の配合量は、上記(A)固形エポキシ樹脂が有するエポキシ基数(x)と(B)固形フェノール樹脂硬化剤が有するフェノール性水酸基数(y)との比(x)/(y)が、0.8〜1.2の範囲となるような配合量が好ましい。(x)/(y)が0.8未満では、硬化物の耐湿信頼性が低下するおそれがあり、逆に1.2を超えると、硬化物の強度が低下する場合がある。
(C)シリカ
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物において(C)シリカは、樹脂組成物全量に対して75〜90質量%の割合で配合される。この配合量が下限値を下回ると熱伝導率が低下し、熱放散性が不十分となり、電気特性が悪化する。上限値を越えると流動性が低下し射出成形品の外観が不良となる。なお、樹脂組成物全量に対する(C)シリカの配合量は、好ましくは80〜90質量%である。
また、本発明に用いる(C)シリカとしては、結晶シリカ、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、2次凝集シリカ等が挙げられるが、結晶シリカを主体として構成されるシリカが好ましい。(C)シリカにおける結晶シリカの配合量としては、(C)シリカの全量に対して75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。(C)シリカの全量に対する結晶シリカの配合量が、75質量%未満では良好な熱伝導性が得られなくなるおそれがある。
さらに、上記(C)シリカの形状としては、配合されるエポキシ樹脂組成物中に均質に分散される形状であれば特に制限されず、具体的には、粉末、ビーズ等が挙げられるが、本発明においては粉末形状が好ましい。
シリカ粉末の大きさについては、例えば、結晶シリカ粉末においては、最大粒径が150μm以下であり、平均粒径が15〜30μmであることが好ましい。最大粒径が上限値を越えるとコイル部品の未充填不良や外観不良が発生し、平均粒径が上記範囲を外れると流動性が低下し、コイル部品の外観が悪化する等の不良となるおそれがあるため好ましくない。また、結晶シリカ粉末以外の上記シリカ粉末においても、結晶シリカ粉末と同様の大きさの粉末とすることが好ましい。
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物においては、上記(C)シリカとして、より好ましくは、最大粒径が150μm以下であり、平均粒径が15〜30μmである結晶シリカ粉末を(C)シリカの全量に対して75質量%以上の割合で配合したシリカが用いられる。
(D)ジメチルウレア系硬化促進剤
本発明に用いられる(D)ジメチルウレア系硬化促進剤としては、通常、エポキシ樹脂組成物に硬化促進剤として配合されるジメチルウレア系化合物であれば特に制限なく用いられる。ジメチルウレア系硬化促進剤は、通常、150℃以上でエポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する作用を有するものである。そのため、通常の設定温度が
90〜100℃程度の射出成形時のシリンダー温度下では、エポキシ樹脂の硬化反応は進まず、金型充填後の150℃以上の加熱による硬化時にその反応促進作用を発揮することが可能となる。これにより、コイル部品の連続成形性を向上することができる。
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物における上記(D)ジメチルウレア系硬化促進剤の配合量は、樹脂組成物が含有する上記(A)固形エポキシ樹脂と(B)固形フェノール樹脂硬化剤の合計量100質量部に対して、0.1〜3.0質量部となる配合量が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2.5質量部となる配合量である。0.1質量部未満では硬化促進の効果が充分に認められず、3.0質量部を超えると反応性が高くなりすぎ樹脂が完全充填する前に増粘するようになるため好ましくない。
(射出成形用エポキシ樹脂組成物)
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物は、上述した(A)固形エポキシ樹脂(平均エポキシ当量が400〜490の範囲にあるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分とする。)、(B)固形フェノール樹脂硬化剤(硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上の割合で含有する。)、(C)シリカ(樹脂組成物全量に対する(C)シリカの含有割合は、75〜90質量%である。)および(D)ジメチルウレア系硬化促進剤を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、各種充填剤および天然ワックス類や合成ワックス類等の離型剤、三酸化アンチモン、ブロモ化エポキシ樹脂等の難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、ゴム系やシリコーン系ポリマー等の低応力付与剤、アミン変性およびエポキシ変性シリコーンオイル等のカップリング剤、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク等の無機充填材等を適宜添加配合することができる。
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する方法としては、一般的な方法をとることが可能である。具体的には、上述した各必須成分の所定量および適宜選択されるその他の成分の適当量を配合し、これらをミキサー等によって十分均一に混合した後、さらに熱ロールによる溶融混合処理、またはニーダ等による加熱混合処理(加熱温度は概ね70〜100℃)を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。こうして得られた成形材料は、電子部品あるいは電気部品の封止、被覆、絶縁等に適用すれば、優れた特性と信頼性を付与させることができる。
<コイル部品>
本発明のコイル部品は、上記で得られた本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物を射出成形することによりコイルを封止して得られるコイル部品である。
本発明のコイル部品の製造方法としては、用いるエポキシ樹脂組成物を本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物とすること以外は、通常、エポキシ樹脂組成物を用いて射出成形によりコイルを封止する方法が特に制限なく適用できる。
具体的には、先ず巻線を収納した固定子鉄心(コイル)を、成形用金型のコアに挿入後、上型を閉じる。次いで、射出成形機を用いて、ゲートより上記射出成形用エポキシ樹脂組成物を注入し、さらにこの樹脂組成物を硬化させた後、該樹脂組成物の硬化物によってコイルが封止されて得られたコイル部品を成形用金型から取出すことで製造できる。
本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物を用いて射出成形を行う際の条件としては、特に制限されないが、具体的な条件として、シリンダー温度:常温〜90℃、ノズル温度:90〜110℃、射出圧力120〜200MPa程度が挙げられる。また、硬化の際の加熱温度は、170〜200℃とすることが好ましい。硬化にかかる時間は、用いる樹脂組成物の組成、硬化温度にもよるが、おおむね60〜180秒で硬化を完了させることができる。このようにして得られる本発明のコイル部品は、耐クラック性や熱伝導性に優れ、高信頼性を有するものである。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
下記実施例、比較例の製造に用いた材料化合物(商品名)について以下に説明する。
[エポキシ樹脂]
(A)固形エポキシ樹脂
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形または半固形))
エピクロン1055:DIC社製、商品名、エポキシ当量450、軟化点64〜74℃
エピクロン860:DIC社製、商品名、エポキシ当量245、半固形
エピクロン2055:DIC社製、商品名、エポキシ当量630、軟化点80〜90℃
エピクロン3055:DIC社製、商品名、エポキシ当量780、軟化点91〜100℃
(その他エポキシ樹脂)
EPPN−502H:多官能エポキシ樹脂、日本化薬社製、商品名、エポキシ当量170、軟化点60〜76℃
CNE−200EL:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(以下、必要に応じて「OCNエポキシ樹脂」と表記する。)、長春エポキシ社製、商品名、エポキシ当量200、軟化点70〜78℃
[硬化剤]
(B)固形フェノール樹脂硬化剤
(多官能フェノール(b))
MEH−7500:上記式(1)においてRが水素原子であるフェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、明和化成社製、商品名、水酸基当量100、軟化点107〜113℃
(その他固形フェノール樹脂硬化剤)
BRG−556:ノボラック型フェノール樹脂、昭和高分子社製、商品名、水酸基当量105、軟化点77〜82℃
[硬化促進剤]
((D)ジメチルウレア系硬化促進剤)
U−CAT3512T:ジメチルウレア系化合物、サンアプロ社製、商品名
(その他硬化促進剤)
CllZ:イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製、商品名
[その他]
(C)シリカ
シリカT:結晶シリカ、福島窯業社製、商品名、平均粒径:25〜30μm、最大粒径:150μm未満
S−210:溶融球状シリカ、マイクロン社製、商品名、平均粒径25〜30μm、最大粒径:75μm
[実施例1]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂としてエピクロン1055を11質量部、多官能フェノール(b)としてMEH−7500を3質量部、結晶シリカとしてシリカTを85質量部、ジメチルウレア系硬化促進剤としてU−CAT3512Tを0.3質量部、シランカップリング剤としてS−510(チッソ社製、商品名)を0.3質量部、離型剤としてLuvax−0321(日本精鑞社製、商品名)を0.2質量部準備し、溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、混錬は、温度100℃、40rpmで10分間実施した。
[実施例2]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂としてエピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン860の1.1質量部とエピクロン1055の9.9質量部(平均エポキシ当量:420)を用いた以外は、実施例1と同様に材料を溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[実施例3]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン1055の10質量部とエピクロン2055の1質量部(平均エポキシ当量:480)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[実施例4]
結晶シリカとしてシリカTを85質量部用いる代わりに、結晶シリカとしてシリカTの75質量部と溶融球状シリカとしてS−210の11質量部(シリカにおける結晶シリカの割合:87.2質量%)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[実施例5]
固形フェノール樹脂硬化剤として多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、MEH−7500の2.1質量部とノボラック型フェノール樹脂BRG−556の0.9質量部(硬化剤におけるMEH−7500の割合:70質量%)を用いた以外は実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[実施例6]
結晶シリカの代わりに、溶融球状シリカとしてS−210を82質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例1]
固形フェノール樹脂硬化剤として、多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、多官能フェノール(b)としてMEH−7500の1.8質量部とノボラック型フェノール樹脂としてBRG−556の1.2質量部(硬化剤におけるMEH−7500の割合:60質量%)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例2]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン1055の5.5質量部とエピクロン2055の5.5質量(平均エポキシ当量:540)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例3]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン2055を11質量部用いた以外は実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例4]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン860の3.1質量とエピクロン1055の7.9質量部(平均エポキシ当量:355)を用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例5]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の代わりに、多官能エポキシ樹脂EPPN−502Hを7質量部、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂CNE−200ELを3質量部用い、多官能フェノール(b)として用いたMEH−7500の配合量を3質量部から4質量部に変えた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例6]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の代わりに、多官能エポキシ樹脂EPPN−502Hを2質量部、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂CNE−200ELを4質量部用い、固形フェノール樹脂硬化剤として、多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、ノボラック型フェノール樹脂BRG−556を3質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例7]
固形フェノール樹脂硬化剤として、多官能フェノール(b)のMEH−7500を3質量部用いる代わりに、ノボラック型フェノール樹脂BRG−556を3質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例8]
ジメチルウレア系硬化促進剤の代わりにイミダゾール系硬化促進剤CllZを0.1質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例9]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン3055を11質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
[比較例10]
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂として、エピクロン1055を11質量部用いる代わりに、エピクロン860を11質量部用いた以外は、実施例1と同様に溶融混錬して、射出成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
(評価方法)
次いで、上記各実施例および比較例で得られた射出成形用エポキシ樹脂組成物に対して、スパイラルフロー、高化式フロー粘度、ガラス転移温度、熱膨張率、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定することによって、その特性を評価した。さらに、上記各実施例および比較例で得られた射出成形用エポキシ樹脂組成物を用いて射出成形によりコイル部品を製造し、外観検査により未充填発生率およびクラック発生率を求め、成形性を評価した。
(スパイラルフロー[cm])
金型温度175℃、樹脂仕込み量25g、プランジャー圧力75kgf/cm、硬化時間120秒なる条件で実施した。
(高化式フロー粘度[Pa・s])
ノズル長1.0mm、ノズル半径0.25mm、温度175℃、プランジャー圧力10kgf/cmなる条件で実施した。
(ガラス転移温度[℃])
TMA法にて、温度は室温から200℃まで、5℃/分の硬度で昇温させて、ガラス転移温度を測定した。
(熱膨張率[×10−5/℃])
TMA法にて、温度は室温から200℃まで、5℃/分の速度で昇温させて、熱膨張率を測定した。
(熱伝導率[W/m・K])
熱伝導率測定機QTM−500(京都電子工業株式会社製)を用いて、ホットワイヤ法(細線加熱法)により測定した。
(曲げ強さ[MPa])
25℃の曲げ強さをJIS K 6911に準拠して測定した。
(曲げ弾性率[GPa])
25℃の曲げ弾性率をJIS K 6911に準拠して測定した。
(成形性)
本体部の直径が60mm、長さが100mmのボビンに対して、直径0.5mmの銅線を巻回してなる構造体を、一片の長さが64mm、長さが104mm、厚さが2mmのSUSからなる金属フレームに収納して得た固定子鉄心(コイル)を、成形用金型のコアに挿入後、上型を閉じた。その後、シリンダー温度90℃、ノズル温度100℃、射出圧力150MPaに設定した射出成形機を用いて、上記実施例、比較例で作製した射出成形用エポキシ樹脂組成物を上記成形用金型に注入し、180℃、
120秒の条件で硬化させて、上記固定子鉄心がエポキシ樹脂で封止されたコイル部品を成形した。得られた成形品100個を、目視により外観検査を行い、未充填およびクラックの発生率を調べた。
上記各実施例、比較例で作製した射出成形用エポキシ樹脂組成物の組成および評価結果を実施例については表1に、比較例については表2に示す。
Figure 2012117017
Figure 2012117017
表1および表2から明らかなように、平均エポキシ当量が400未満の多官能エポキシ樹脂やオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を使用した比較例のエポキシ樹脂組成物では機械的強度は問題ないが耐クラック性に劣り、同様にビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を用いた比較例のエポキシ樹脂組成物においても平均エポキシ当量が400未満では耐クラック性に劣ることがわかる。
また、硬化剤における多官能フェノール樹脂(b)の含有量が70質量%未満の比較例のエポキシ樹脂組成物では、機械的強度の低下と共に、耐クラック性に劣ることがわかる。さらに、シリカを全樹脂組成物中に75〜90質量%含み、結晶性のシリカを全シリカ中に75質量%以上含有すると良好な熱伝導性が得られることがわかる。
このような比較例に比べて、本発明の射出成形用エポキシ樹脂組成物の要件を満たす実施例のエポキシ樹脂組成物では、十分な流動性を有することで射出成形性に優れ、さらに、その硬化物は熱伝導性および耐クラック性に優れることがわかる。

Claims (3)

  1. (A)平均エポキシ当量が400〜490の範囲にあるビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を主成分として含む固形エポキシ樹脂と、
    (B)硬化剤全量に対して、フェノール類とベンズアルデヒド類および/またはヒドロキシベンズアルデヒド類との重縮合単位を有する多官能フェノール樹脂を70質量%以上の割合で含有する固形フェノール樹脂硬化剤と、
    (C)シリカと、
    (D)ジメチルウレア系硬化促進剤と、
    を必須成分とし、樹脂組成物全量に対して、前記(C)シリカを75〜90質量%の割合で含有してなることを特徴とする射出成形用エポキシ樹脂組成物。
  2. 前記(C)シリカが結晶シリカをシリカ全量に対して75質量%以上含んでなることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用エポキシ樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の射出成形用エポキシ樹脂組成物を射出成形することによりコイルを封止して得られるコイル部品。
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