JP2021172685A - コンパウンド、成形体、及びコンパウンドの硬化物 - Google Patents

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Abstract

【課題】室温(25℃)で長時間放置された後であっても優れた狭ギャップ充填性を維持することができるコンパウンドを提供すること。【解決手段】磁性粉と、樹脂組成物と、を備え、樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びウレア系硬化促進剤を含有する、コンパウンド。【選択図】なし

Description

本発明は、コンパウンド、成形体、及びコンパウンドの硬化物に関する。
金属粉末及び樹脂組成物を含むコンパウンドは、金属粉末の諸物性に応じて、多様な工業製品の原材料として利用される。例えば、コンパウンドは、インダクタ、封止材、電磁波シールド(EMIシールド)、又はボンド磁石等の原材料として利用される(下記特許文献1参照)。
特開2014−13803号公報
コンパウンドから工業製品を製造する場合、コンパウンドを型内へ供給及び充填したり、コイル等の部品を型内のコンパウンド中に埋め込んだりする。これらの工程ではコンパウンドの流動性が要求される。特に、コンパウンドには、型内への供給及び充填を行う際、並びに、コイル等の部品を型内で埋め込む際に、狭い隙間まで十分に充填することができる優れた狭部(狭ギャップ)充填性を有することが求められる。しかし、コンパウンドは、長時間保存(放置)された場合、及び、扱われる環境温度が高い場合に流動性が低下し易く、それに伴って狭ギャップ充填性が低下し易い。そのため、長時間保存されたコンパウンドを用いて工業製品を製造する場合、コンパウンドを狭い隙間まで十分に充填することが難しくなるという問題がある。
上記事情に鑑み、本発明は、室温(25℃)で長時間放置された後であっても優れた狭ギャップ充填性を維持することができるコンパウンド、それを用いた成形体、及びコンパウンドの硬化物を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係るコンパウンドは、磁性粉と、樹脂組成物と、を備え、上記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びウレア系硬化促進剤を含有する。
本発明の一側面に係る上記コンパウンドにおいて、上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含んでいてもよい。
本発明の一側面に係る上記コンパウンドにおいて、上記エポキシ樹脂は、ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
本発明の一側面に係る上記コンパウンドにおいて、上記磁性粉の含有量は、90質量%以上100質量%未満であってもよい。
本発明の一側面に係る上記コンパウンドは、上記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含み、上記ウレア系硬化促進剤の含有量が、上記エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であってもよい。
本発明の一側面に係る成形体は、上記コンパウンドを含む。
本発明の一側面に係る硬化物は、上記コンパウンドの硬化物である。
本発明によれば、室温(25℃)で長時間放置された後であっても優れた狭ギャップ充填性を維持することができるコンパウンド、それを用いた成形体、及びコンパウンドの硬化物を提供することができる。
図1中の(a)及び図1中の(b)は、コンパウンドの充填性を評価するための金型の模式的な断面図である。 図2は、図1中の(a)及び図1中の(b)に示される金型の上面の模式図である。 図3は、図1中の(a)、図1中の(b)及び図2に示される金型を用いて形成された成形体の上面の模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
<コンパウンドの概要>
本実施形態に係るコンパウンドは、磁性粉と、樹脂組成物と、を備える。磁性粉は、複数(多数)の磁性粒子から構成される。磁性粉は、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよい。樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂及びウレア系硬化促進剤を含有する。コンパウンドにおいて、磁性粉、熱硬化性樹脂及びウレア系硬化促進剤は混合されている。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びウレア系硬化促進剤に加えて、他の成分を含有してよい。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含有してよく、更にフェノール樹脂等の硬化剤を含有してよい。樹脂組成物は、更に離型剤を含有してよい。樹脂組成物は、更に添加剤を含有してよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、ウレア系硬化促進剤、離型剤及び添加剤を包含し得る成分であって、有機溶媒と磁性粉とを除く残りの成分(不揮発性成分)であってよい。樹脂組成物は、ウレア系硬化促進剤に加えて、別の硬化促進剤を含有してよい。添加剤とは、樹脂組成物のうち、樹脂、離型剤、硬化剤及び硬化促進剤を除く残部の成分である。添加剤は、例えば、カップリング剤、難燃剤、又は潤滑剤等である。コンパウンドは、粉末(コンパウンド粉)であってよい。
コンパウンドは、磁性粉と、当該磁性粉を構成する個々の磁性粒子の表面に付着した樹脂組成物と、を備えてよい。樹脂組成物は、当該粒子の表面の全体を覆っていてもよく、当該粒子の表面の一部のみを覆っていてもよい。コンパウンドは、未硬化の樹脂組成物と、磁性粉と、を備えてよい。コンパウンドは、樹脂組成物の半硬化物(例えばBステージの樹脂組成物)と、磁性粉と、を備えてよい。コンパウンドは、未硬化の樹脂組成物、及び樹脂組成物の半硬化物の両方を備えてもよい。コンパウンドは、磁性粉と樹脂組成物とからなっていてよい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、130g/eq以上350g/eq以下、又は150g/eq以上300g/eq以下であってよい。エポキシ当量が小さい樹脂を用いると、成形体の機械的強度が高くなり易い。
コンパウンドにおける磁性粉の含有量は、コンパウンド全体の質量に対して、90質量%以上100質量%未満であることが好ましい。磁性粉の含有量が多くなると、成形体の離型性が担保し難く、作業性に劣る傾向がある。成形体の電気特性の観点から、磁性粉の含有量は、90質量%以上が好ましく、92質量%以上がより好ましく、94質量%以上がさらに好ましく、96質量%以上が特に好ましい。磁性粉の含有量は、99質量%以下であってよい。
コンパウンドの樹脂組成物の含有量は、コンパウンド全体の質量(例えば、磁性粉及び樹脂組成物の質量の合計)に対して、0.2質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以上8質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上7質量%以下、更に好ましくは2質量%以上6質量%以下であってよい。なお、樹脂組成物は、コンパウンドに含まれる充填材(磁性粉等)以外の成分を意味する。
磁性粉の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、1μm以上300μm以下であってよい。平均粒子径は、例えば粒度分布計によって測定されてよい。磁性粉を構成する個々の磁性粒子の形状は限定されないが、例えば、球状、扁平形状、角柱状又は針状であってよい。コンパウンドは、平均粒子径が異なる複数種の磁性粉を備えてよい。
コンパウンドに含まれる磁性粉の組成又は組合せに応じて、コンパウンドから形成される成形体の電磁気的特性等の諸特性を自在に制御し、当該成形体を様々な工業製品又はそれらの原材料に利用することができる。コンパウンドを用いて製造される工業製品は、例えば、自動車、医療機器、電子機器、電気機器、情報通信機器、家電製品、音響機器、及び一般産業機器であってよい。例えば、コンパウンドが磁性粉としてSm−Fe−N系合金又はNd−Fe−B系合金等の永久磁石を含む場合、コンパウンドは、ボンド磁石の原材料として利用されてよい。コンパウンドが磁性粉としてFe−Si−Cr系合金又はフェライト等の軟磁性粉を含む場合、コンパウンドは、インダクタ(例えばEMIフィルタ)又はトランスの原材料(例えば磁芯)として利用されてよい。コンパウンドが磁性粉として鉄と銅とを含む場合、コンパウンドから形成された成形体(例えばシート)は、電磁波シールドとして利用されてよい。
<コンパウンドの組成>
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、磁性粉を構成する磁性粒子の結合材(バインダ)としての機能を有し、コンパウンドから形成される成形体に機械的強度を付与する。例えば、コンパウンドに含まれる樹脂組成物は、金型を用いてコンパウンドが高圧で成形される際に、磁性粒子の間に充填され、当該粒子を互いに結着する。成形体中の樹脂組成物を硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物が磁性粒子同士をより強固に結着して、成形体の機械的強度が向上する。
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含有してよい。コンパウンドが、熱硬化性樹脂の中でも比較的に流動性に優れたエポキシ樹脂を含むことにより、コンパウンドの流動性、保存安定性、及び成形性が向上する。また、コンパウンドはエポキシ樹脂に加えて他の樹脂を含んでもよい。例えば、樹脂組成物は、熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂及びポリアミドイミド樹脂のうち少なくも一種を含んでもよい。樹脂組成物がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の両方を含む場合、フェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として機能してもよい。コンパウンドに含まれる樹脂は、熱硬化性樹脂のみであってよく、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂のみ、又はエポキシ樹脂及びフェノール樹脂のみであってもよい。樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の両方を含んでよい。樹脂組成物は、シリコーン樹脂を含んでもよい。
エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂の中でも流動性及び機械特性(機械強度、寸法安定性等)に優れているので、樹脂組成物はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であってよい。エポキシ樹脂の種類は特に制限されず、組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
エポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール骨格を含有するエポキシ樹脂、アルコール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、及びオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
流動性の観点において、エポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、及びナフトールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
機械強度の観点において、エポキシ樹脂は、ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
エポキシ樹脂は、結晶性のエポキシ樹脂であってよい。結晶性のエポキシ樹脂の分子量は比較的低いにもかかわらず、結晶性のエポキシ樹脂は比較的高い融点を有し、且つ流動性に優れる。結晶性のエポキシ樹脂(結晶性の高いエポキシ樹脂)は、例えば、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、チオエーテル型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。結晶性のエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロン860、エピクロン1050、エピクロン1055、エピクロン2050、エピクロン3050、エピクロン4050、エピクロン7050、エピクロンHM−091、エピクロンHM−101、エピクロンN−730A、エピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775、エピクロンN−865、エピクロンHP−4032D、エピクロンHP−7200L、エピクロンHP−7200、エピクロンHP−7200H、エピクロンHP−7200HH、エピクロンHP−7200HHH、エピクロンHP−4700、エピクロンHP−4710、エピクロンHP−4770、エピクロンHP−5000、エピクロンHP−6000、N500P−2、及びN500P−10(以上、DIC株式会社製の商品名)、NC−3000、NC−3000−L、NC−3000−H、NC−3100、CER−3000−L、NC−2000−L、XD−1000、NC−7000−L、NC−7300−L、EPPN−501H、EPPN−501HY、EPPN−502H、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、CER−1020、EPPN−201、BREN−S、BREN−10S(以上、日本化薬株式会社製の商品名)、YX−4000、YX−4000H、YL4121H、及びYX−8800(以上、三菱ケミカル株式会社製の商品名)等が挙げられる。
樹脂組成物は、上記のうち一種のエポキシ樹脂を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種のエポキシ樹脂を含有してもよい。樹脂組成物は、上記のエポキシ樹脂の中でも、ビフェニル骨格を含むエポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、2個以上のエポキシ基を繰り返し単位内に含む多官能型エポキシ樹脂を含有してよい。
硬化剤は、低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤と、加熱に伴ってエポキシ樹脂を硬化させる加熱硬化型硬化剤と、に分類される。低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤は、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、及びポリメルカプタン等である。加熱硬化型硬化剤は、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、及びジシアンジアミド(DICY)等である。硬化剤の種類は特に制限されず、組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を用いた場合、エポキシ樹脂の硬化物のガラス転移点は低く、エポキシ樹脂の硬化物は軟らかい傾向がある。その結果、コンパウンドから形成された成形体も軟らかくなり易い。一方、成形体の耐熱性を向上させる観点から、硬化剤は、好ましくは加熱硬化型の硬化剤、より好ましくはフェノール樹脂、さらに好ましくはフェノールノボラック樹脂であってよい。特に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を用いることで、ガラス転移点が高いエポキシ樹脂の硬化物が得られ易い。その結果、成形体の耐熱性及び機械的強度が向上し易い。
フェノール樹脂は、例えば、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。フェノール樹脂は、上記のうちの2種以上から構成される共重合体であってもよい。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノル758、又は日立化成株式会社製のHP−850N等を用いてもよい。
フェノールノボラック樹脂は、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類と、アルデヒド類と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール及びアミノフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。フェノールノボラック樹脂を構成するナフトール類は、例えば、α−ナフトール、β−ナフトール及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。フェノールノボラック樹脂を構成するアルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
硬化剤は、例えば、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物であってもよい。1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及び置換又は非置換のビフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
樹脂組成物は、上記のうち一種のフェノール樹脂を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種のフェノール樹脂を備えてもよい。樹脂組成物は、上記のうち一種の硬化剤を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種の硬化剤を含有してもよい。
エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する硬化剤中の活性基(フェノール性OH基)の比率は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは0.5〜1.5当量、より好ましくは0.6〜1.4当量、さらに好ましくは0.8〜1.2当量であってよい。硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、得られる硬化物の充分な弾性率が得られ難い。一方、硬化剤中の活性基の比率が1.5当量を超える場合、コンパウンドから形成された成形体の硬化後の機械的強度が低下する傾向がある。ただし、硬化剤中の活性基の比率が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
ウレア系硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化を促進させる成分である。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、ウレア系硬化促進剤はエポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂の硬化を促進させる。ウレア系硬化促進剤を用いることで、磁性粉と樹脂組成物とを混合してなるコンパウンドの保存安定性を向上させることができ、コンパウンドの優れた狭ギャップ充填性を長時間にわたって維持することができる。ここで、硬化促進剤として、例えばイミダゾール系硬化促進剤を用いた場合、コンパウンドを調製した直後は優れた狭ギャップ充填性が得られるものの、時間経過とともにコンパウンドの粘度が高くなり、狭ギャップ充填性が低下することとなる。磁性粉を含むコンパウンドを狭い隙間まで十分に充填するためには、コンパウンドの高い流動性が求められるが、イミダゾール系硬化促進剤は室温で容易に反応するため、イミダゾール系硬化促進剤を用いたコンパウンドでは、保存中に反応が進行して粘度が上昇し、高い流動性を維持できないためであると考えられる。なお、潜在化能を持たせたイミダゾール系硬化促進剤も知られているが、それを用いたコンパウンドであっても、長時間保存後の狭ギャップ充填性を十分に維持することが困難である。これに対し、ウレア系硬化促進剤は、一定温度以上(例えば120℃前後)になると促進剤自体が開裂して硬化促進能を発現する性質を有しており、開裂する前までは硬化促進能は潜在化しているため、室温で長時間保存した場合でも樹脂の硬化反応の進行が十分に抑制される。そのため、ウレア系硬化促進剤を用いたコンパウンドは、長時間保存後であっても高い流動性を維持することができ、優れた狭ギャップ充填性を長時間にわたって維持することができる。また、ウレア系硬化促進剤は一定温度以上に加熱することで優れた硬化促進能が発現するため、それを用いたコンパウンドは優れた硬化性を得ることができる。また、ウレア系硬化促進剤を用いることで、コンパウンドの成形性及び離型性も向上し易い。
ウレア系硬化促進剤としては、ウレア基を有する硬化促進剤であれば特に限定されないが、保存安定性の向上の観点から、アルキルウレア基を有するアルキルウレア系硬化促進剤であることが好ましい。アルキルウレア基を有するアルキルウレア系硬化促進剤としては、芳香族アルキルウレア及び脂肪族アルキルウレアが挙げられ、市販品としてはU−CAT3512T(商品名、サンアプロ株式会社製、芳香族ジメチルウレア)及びU−CAT3513N(商品名、サンアプロ株式会社製、脂肪族ジメチルウレア)等が挙げられる。これらの中でも、開裂温度が適度に低く、コンパウンドを効率的に硬化させ易いことから、芳香族アルキルウレアが好ましい。ウレア系硬化促進剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
コンパウンドにおけるウレア系硬化促進剤の含有量は、硬化促進効果が得られる量であればよく、特に限定されない。ただし、コンパウンドの保存安定性、硬化性、流動性及び狭ギャップ充填性をバランス良く向上させる観点からは、ウレア系硬化促進剤の含有量は、100質量部のエポキシ樹脂に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、更に好ましくは1質量部以上10質量部以下である。ウレア系硬化促進剤の含有量が0.1質量部未満である場合、十分な硬化促進効果が得られ難い。ウレア系硬化促進剤の含有量が30質量部を超える場合、コンパウンドの保存安定性、流動性及び狭ギャップ充填性が低下し易い。ただし、ウレア系硬化促進剤の含有量が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
ウレア系硬化促進剤の融点は、120〜250℃であってもよく、140〜220℃であってもよく、150〜200℃であってもよい。融点が250℃を超えると、硬化不良を起こしやすい傾向があり、120℃未満であると、混練中に硬化反応が進みやすい傾向がある。硬化促進剤の融点が成形する温度よりも高い場合でも、用いる樹脂が硬化促進剤の相溶化剤となり、樹脂に溶融して硬化能を発現しているものと推察される。
ウレア系硬化促進剤の開裂温度は、90〜200℃であってもよく、100〜180℃であってもよく、110〜170℃であってもよい。開裂温度が200℃を超えると、硬化不良を起こしやすい傾向があり、90℃未満であると、混練中に硬化反応が進みやすい傾向がある。
コンパウンドは、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、ウレア系硬化促進剤以外の他の硬化促進剤を含有してもよい。他の硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化を促進させる成分であれば限定されない。他の硬化促進剤としては、例えば、アルキル基置換イミダゾール及びベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、並びに、リン系硬化促進剤等が挙げられる。他の硬化促進剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤に占めるウレア系硬化促進剤の割合は、本発明の効果を十分に得る観点から、硬化促進剤全量を基準として、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることが更に好ましい。
樹脂組成物は、離型剤を含有してもよい。離型剤は、ワックスを含有してよい。ワックスは、コンパウンドの成形(例えばトランスファー成形)におけるコンパウンドの流動性を高めると共に、離型剤として機能する。ワックスは、高級脂肪酸等の脂肪酸、及び脂肪酸エステルのうち少なくともいずれか一つであってよい。
ワックスは、例えば、モンタン酸、ステアリン酸、12−オキシステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸類又はこれらのエステル;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアエン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等の脂肪酸アミド;ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの変性物からなるポリエーテル類;シリコーンオイル、シリコングリース等のポリシロキサン類;フッ素系オイル、フッ素系グリース、含フッ素樹脂粉末等のフッ素化合物;並びに、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類;からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
コンパウンドに含まれるワックスの含有量は、コンパウンド全量を基準として、0.01質量%以上1.0質量%以下、又は0.1質量%以上0.75質量%以下であってよい。ワックスの含有量が上記範囲の下限値以上であることで、コンパウンドの流動性及び離型性がより向上し易く、上限値以下であることで、コンパウンドを用いて製造された成形体の機械的強度の低下を抑制し易い。
樹脂組成物は、添加剤としてカップリング剤を含有してもよい。カップリング剤は、樹脂組成物と、磁性粉を構成する磁性粒子との密着性を向上させ、コンパウンドから形成される成形体の可撓性及び機械的強度を向上させる。カップリング剤は、例えば、シラン系化合物(シランカップリング剤)、チタン系化合物、アルミニウム化合物(アルミニウムキレート類)、及びアルミニウム/ジルコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、酸無水物系シラン及びビニルシランからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。機械強度の観点及びエポキシ樹脂との相溶性の観点から、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン等の極性基を有するシランカップリング剤が好ましい。樹脂組成物は、上記のうち一種のカップリング剤を含有してよく、上記のうち複数種のカップリング剤を含有してもよい。
コンパウンドの環境安全性、リサイクル性、成形加工性及び低コストのために、コンパウンドは添加剤として難燃剤を含んでよい。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、鱗茎難燃剤、水和金属化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、窒素含有化合物、ヒンダードアミン化合物、有機金属化合物及び芳香族エンプラからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。樹脂組成物は、上記のうち一種の難燃剤を含有してよく、上記のうち複数種の難燃剤を含有してもよい。
(磁性粉)
磁性粉は、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよい。磁性粉の比重(密度)は、例えば、5g/cm以上であってよい。磁性粉は、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種からなっていてよい。合金は、固溶体、共晶及び金属間化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。合金とは、例えば、ステンレス鋼(Fe−Cr系合金、Fe−Ni−Cr系合金等)であってよい。金属化合物とは、例えば、フェライト等の酸化物であってよい。磁性粉は、一種の金属元素又は複数種の金属元素を含んでよい。磁性粉に含まれる金属元素は、例えば、卑金属元素、貴金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素であってよい。コンパウンドは、一種の磁性粉を含んでよく、複数種の磁性粉を含んでもよい。
磁性粉は上記の組成物に限定されない。磁性粉に含まれる金属元素は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、銀(Ag)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びジスプロシウム(Dy)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。磁性粉は、金属元素以外の元素を含んでもよい。磁性粉は、例えば、酸素(О)、ベリリウム(Be)、リン(P)、ホウ素(B)、又はケイ素(Si)を含んでもよい。磁性粉は、軟磁性合金、又は強磁性合金であってよい。磁性粉は、例えば、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金(センダスト)、Fe−Ni系合金(パーマロイ)、Fe−Cu−Ni系合金(パーマロイ)、Fe−Co系合金(パーメンジュール)、Fe−Cr−Si系合金(電磁ステンレス鋼)、Nd−Fe−B系合金(希土類磁石)、Sm−Fe−N系合金(希土類磁石)、Al−Ni−Co系合金(アルニコ磁石)及びフェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる磁性粉であってよい。フェライトは、例えば、スピネルフェライト、六方晶フェライト、又はガーネットフェライトであってよい。磁性粉は、Cu−Sn系合金、Cu−Sn−P系合金、Cu−Ni系合金、又はCu−Be系合金等の銅合金であってもよい。磁性粉は、上記の元素及び組成物のうち一種を含んでよく、上記の元素及び組成物のうち複数種を含んでもよい。
磁性粉は、Fe単体であってもよい。磁性粉は、鉄を含む合金(Fe系合金)であってもよい。Fe系合金は、例えば、Fe−Si−Cr系合金、又はNd−Fe−B系合金であってよい。磁性粉は、アモルファス系鉄粉及びカルボニル鉄粉のうち少なくともいずれかであってもよい。磁性粉がFe単体及びFe系合金のうち少なくともいずれかを含む場合、高い占積率を有し、且つ磁気特性に優れる成形体をコンパウンドから作製し易い。磁性粉は、Feアモルファス合金であってもよい。Feアモルファス合金粉の市販品としては、例えば、AW2−08、KUAMET−6B2(以上、エプソンアトミックス株式会社製の商品名)、DAP MS3、DAP MS7、DAP MSA10、DAP PB、DAP PC、DAP MKV49、DAP 410L、DAP 430L、DAP HYBシリーズ(以上、大同特殊鋼株式会社製の商品名)、MH45D、MH28D、MH25D、及びMH20D(以上、神戸製鋼株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種が用いられてよい。
<コンパウンドの製造方法>
コンパウンドの製造では、磁性粉と樹脂組成物(樹脂組成物を構成する各成分)とを加熱しながら混合する。例えば、磁性粉と樹脂組成物とを加熱しながらニーダー、ロール、攪拌機等で混練してよい。磁性粉及び樹脂組成物の加熱及び混合により、樹脂組成物が磁性粉を構成する磁性粒子の表面の一部又は全体に付着して当該粒子を被覆し、樹脂組成物中のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の一部又は全部が半硬化物になる。その結果、コンパウンドが得られる。磁性粉及び樹脂組成物の加熱及び混合によって得られた粉末に、さらに離型剤を加えることによって、コンパウンドを得てもよい。予め樹脂組成物と離型剤とが混合されていてもよい。
混練では、磁性粉、熱硬化性樹脂、ウレア系硬化促進剤、及びカップリング剤等を槽内で混練してよい。磁性粉及びカップリング剤を槽内に投入して混合した後、熱硬化性樹脂、及びウレア系硬化促進剤等を槽内へ投入して、槽内の原料を混練してもよい。熱硬化性樹脂、及びカップリング剤等を槽内で混練した後、ウレア系硬化促進剤を槽内に入れて、更に槽内の原料を混練してもよい。予め熱硬化性樹脂、及びウレア系硬化促進剤等の混合粉(樹脂混合粉)を作製して、続いて、磁性粉とカップリング剤とを混練して金属混合粉を作製して、続いて、金属混合粉と上記の樹脂混合粉とを混練してもよい。
混練時間は、混練機械の種類、混練機械の容積、コンパウンドの製造量にもよるが、例えば、1分以上であることが好ましく、2分以上であることがより好ましく、3分以上であることがさらに好ましい。また混練時間は、20分以下であることが好ましく、15分以下であることがより好ましく、10分以下であることがさらに好ましい。混練時間が1分未満である場合、混練が不十分であり、コンパウンドの成形性が損なわれ、コンパウンドの硬化度にばらつきが生じる場合がある。混練時間が20分を超える場合、例えば、槽内で樹脂組成物(例えばエポキシ樹脂及びフェノール樹脂)の硬化が進み、コンパウンドの流動性及び成形性が損なわれ易い。槽内の原料を加熱しながらニーダーで混練する場合、加熱温度は、例えば、エポキシ樹脂等の半硬化物(Bステージのエポキシ樹脂)が生成し、且つエポキシ樹脂等の硬化物(Cステージのエポキシ樹脂)の生成が抑制される温度であればよい。加熱温度は、硬化促進剤の活性化温度よりも低い温度であってよい。加熱温度は、例えば、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。加熱温度は、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度が上記の範囲内である場合、槽内の樹脂組成物が軟化して磁性粉を構成する磁性粒子の表面を被覆し易く、エポキシ樹脂等の半硬化物が生成し易く、混練中のエポキシ樹脂等の完全な硬化が抑制され易い。
<成形体>
本実施形態に係る成形体は、上記のコンパウンドを備えてよい。本実施形態に係る成形体は、上記のコンパウンドの硬化物を備えてよい。成形体は、コンパウンドのみからなっていてよい。成形体は、未硬化の樹脂組成物、樹脂組成物の半硬化物(Bステージの樹脂組成物)、及び樹脂組成物の硬化物(Cステージの樹脂組成物)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
<成形体の製造方法>
本実施形態に係る成形体の製造方法は、コンパウンドを金型中で加圧する工程を備えてよい。成形体の製造方法は、コンパウンドを金型中で加圧する工程のみを備えてよく、当該工程に加えてその他の工程を備えてもよい。成形体の製造方法は、第一工程、第二工程及び第三工程を備えてもよい。以下では、各工程の詳細を説明する。
第一工程では、上記の方法でコンパウンドを作製する。
第二工程では、コンパウンドを金型中で加圧することにより、成形体(Bステージの成形体)を得る。ここで、樹脂組成物が、磁性粉を構成する個々の磁性粒子間に充填される。そして樹脂組成物は、結合材(バインダ)として機能し、磁性粒子同士を互いに結着する。
第三工程では、成形体を熱処理によって硬化させ、Cステージの成形体を得る。熱処理の温度は、成形体中の樹脂組成物が十分に硬化する温度であればよい。熱処理の温度は、好ましくは100℃以上300℃以下、より好ましくは150℃以上250℃以下であってよい。成形体中の磁性粉の酸化を抑制するために、熱処理を不活性雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理温度が300℃を超える場合、熱処理の雰囲気に不可避的に含まれる微量の酸素によって磁性粉が酸化されたり、樹脂硬化物が劣化したりする。磁性粉の酸化、及び樹脂硬化物の劣化を抑制しながら樹脂組成物を十分に硬化させるためには、熱処理温度の保持時間は、好ましくは数分以上10時間以下、より好ましくは5分以上8時間以下であってよい。
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(使用成分)
実施例及び比較例の樹脂組成物に使用した各成分の詳細を以下に示す。
[エポキシ樹脂]
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:N500P−10、DIC株式会社製、エポキシ当量:200g/eq)
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−501HY、日本化薬株式会社製、エポキシ当量:169g/eq)
[硬化剤]
ノボラック型フェノール樹脂(商品名:HP−850N、日立化成株式会社製、水酸基当量:106g/eq)
[硬化促進剤]
ウレア系硬化促進剤(下記式(I)で表される芳香族ジメチルウレア、商品名:U−CAT3512T、サンアプロ株式会社製、融点:約185℃)
Figure 2021172685

イミダゾール系硬化促進剤(商品名:2P4MZ、四国化成工業株式会社製)
イミダゾール系硬化促進剤(商品名:C17Z、四国化成工業株式会社製)
潜在性イミダゾール系硬化促進剤(商品名:2P4MHZ、四国化成工業株式会社製)
[カップリング剤]
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−803、信越化学工業株式会社製、分子量196)
[離型剤]
部分ケン化モンタン酸エステルワックス(商品名:Licowax−OP、クラリアントジャパン製、融点(滴点):96℃)
[磁性粉]
アモルファス系鉄粉(商品名:9A4−II 075C03、エプソンアトミックス株式会社製、平均粒径24μm)
アモルファス系鉄粉(Fe−Si−Cr合金粉末、商品名:FeSiCr−2μm、新東工業株式会社製、平均粒径2.1μm)
(実施例1)
[コンパウンドの調製]
表1に示すエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び離型剤を、同表に示す配合量(単位:g)でポリ容器に投入した。これらの材料をポリ容器内で10分間混合することにより、樹脂混合物を調製した。樹脂混合物とは、樹脂組成物のうちカップリング剤を除く他の全成分に相当する。
表1に示す2種類のアモルファス系鉄粉を、加圧式2軸ニーダー(日本スピンドル製造株式会社製、容量5L)で5分間均一に混合して、磁性粉を調製した。表1に示すカップリング剤を2軸ニーダー内の磁性粉へ添加した。続いて、2軸ニーダーの内容物を90℃になるまで加熱し、その温度を保持しながら、2軸ニーダーの内容物を10分間混合した。続いて、上記の樹脂混合物を2軸ニーダーの内容物へ添加して、内容物の温度を120℃に保持しながら、内容物を15分間溶融・混練した。以上の溶融・混練によって得られた混練物を室温まで冷却した後、混練物が目開き2mmの篩を通過できる大きさになるまで混練物をハンマーで粉砕した。なお、上記の「溶融」とは、2軸ニーダーの内容物のうち樹脂組成物の少なくとも一部の溶融を意味する。コンパウンド中の磁性粉は、コンパウンドの調製過程において溶融しない。
以上の方法により、実施例1のコンパウンドを調製した。コンパウンド中の磁性粉の含有量は96.5質量%であった。
(実施例2〜3及び比較例1〜6)
硬化促進剤の種類及び配合量を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜3及び比較例1〜6のコンパウンドを調製した。
[狭ギャップ充填性の評価]
実施例及び比較例で得られたコンパウンドの狭ギャップ充填性を、以下の方法で評価した。図1中の(a)及び図1中の(b)は、充填性の評価に用いた金型20の模式的な断面図である。図2は、金型20の模式的な上面図である。図1中の(a)及び図1中の(b)に示される断面は、鉛直方向に平行である。金型20は、下型19と、下型19上に設置されるフレーム21と、フレーム21に重なる上型17と、を備えている。フレーム21の表面は銀(Ag)でコートされている。金型20内にはキャビティー14(空間)が形成される。キャビティー14の全体の寸法は、約49.4mm×43.4mmである。フレーム21に面する上型17の表面には、168個の円柱状の凸部15が格子状に形成されている。上型17の各凸部15の端面がフレーム21の表面に接することにより、168個の円柱状の凸部15がキャビティー14内に格子状に配置される。キャビティー14の横方向には、14個の凸部15が等間隔で配置され、キャビティー14の縦方向には、12個の凸部15が等間隔で配置されている。横方向に並ぶ一対の凸部15の間隔は、3.2mmである。縦方向に並ぶ一対の凸部15の間隔も、3.2mmである。一対の凸部15の間隔とは、円柱状の凸部15其々の中心軸間の距離と言い換えられる。各凸部15の太さ(直径)は、2.4mmである。各凸部15の高さは、約300μmである。つまりキャビティー14の深さは、約300μmである。キャビティー14の深さは、金型20を用いてコンパウンド1から形成される成形体1aの厚みに相当する。フレーム21の厚みは、200μmである。キャビティー14は、横方向(水平方向)に沿って並ぶ複数のゲート12(流路)を介して、収容室11と連通している。コンパウンド1は、収容室11内に収容される。各ゲート12の高さの最小値は、200μmである。つまり鉛直方向における各ゲート12の幅の最小値は、200μmである。水平方向における各ゲート12の幅は、800μmである。ゲート12の反対側に位置する金型20の側面には、キャビティー14と連通する複数のベント13(溝)が形成されている。各ベント13の深さは、10μmである。
上記の金型20を用いてトランスファー成形を行った。トランスファー成形では、収容室11を含む金型20の全体を140℃で360秒加熱しながら、収容室11内のコンパウンド1を加圧した。コンパウンド1は、20MPaで加圧された。加熱及び加圧により、収容室11内のコンパウンド1は流動化した。流動化したコンパウンド1は、ゲート12内を流れた後、キャビティー14内へ充填された。以上のトランスファー成形により、成形体を得た。図3は、コンパウンド1から形成された成形体1aの模式的な上面図である。トランスファー成形では、コンパウンド1がキャビティー14内の複数の凸部15の間に充填されたので、複数の貫通穴16が成形体1aに形成されていた。貫通穴16の形状、配置及び個数は、キャビティー14内の凸部15の形状、配置及び個数に対応する。つまり、成形体1aに形成された貫通穴16の総数Nは、キャビティー14内の凸部15の総数N’に等しい。貫通穴16の内壁及び縁において欠損がない貫通穴16の数nを数えた。コンパウンド1の充填率は、n/N%と定義される。キャビティー14内のコンパウンド1と金型20との間の隙間が少ないほど、成形体1aの欠損が少なく、n/N%は高い。つまり、n/N%が高いほど、コンパウンドは充填性に優れている。上記充填率の測定は、コンパウンドを調製してから1時間以内(初期)、並びに、コンパウンドを25℃で24時間、72時間、120時間及び168時間放置後のものについて行った。結果を表1に示す。
[ゲルタイムの測定]
実施例及び比較例で得られたコンパウンドのゲルタイムを、以下の方法で測定した。調製してから1時間以内(初期)のコンパウンドについて、キュラストメータ(JSRトレーディング株式会社製)を用い、試料量1.5ml、140℃の条件でゲルタイムを測定した。溶融開始後にトルクが0.01N・mとなった時間をゲルタイムとした。ゲルタイムが短いほど硬化性が高いことを意味する。結果を表1に示す。
Figure 2021172685
イミダゾール系硬化促進剤を用いた比較例1〜6のコンパウンドでは、表1に示した通り、24時間保存後の時点で狭ギャップ充填性の低下が見られ、168時間保存後には初期の1割以下まで充填率が低下した。これに対し、ウレア系硬化促進剤を用いた実施例1〜3のコンパウンドでは、168時間保存後でも初期と変わらない優れた狭ギャップ充填性を維持できることが確認された。なお、コンパウンドの流動性及び狭ギャップ充填性は、コンパウンドの硬化性(ゲルタイム)にも依存する傾向があるが、表1に示した通り、実施例1〜3と比較例1〜6の初期のゲルタイムに大きな差は見られなかった。
本発明に係るコンパウンドは、室温(25℃)で長時間放置された後であっても優れた狭ギャップ充填性を維持することができるため、高い工業的な価値を有している。
1…コンパウンド、1a…成形体、11…収容室、12…ゲート(流路)、13…ベント、14…キャビティー、15…凸部、16…貫通穴、20…金型。

Claims (7)

  1. 磁性粉と、樹脂組成物と、を備え、
    前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びウレア系硬化促進剤を含有する、コンパウンド。
  2. 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む、請求項1に記載のコンパウンド。
  3. 前記エポキシ樹脂が、ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項2に記載のコンパウンド。
  4. 前記磁性粉の含有量が、90質量%以上100質量%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンパウンド。
  5. 前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含み、前記ウレア系硬化促進剤の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンパウンド。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンパウンドを含む、成形体。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンパウンドの硬化物。
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