JP2014173063A - 電子・電気部品の製造方法および電子・電気部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱硬化性樹脂により封止・モールドされた電子・電気部品であって、外観が良好でボイドなどのない高品質で高信頼性の電子・電気部品を、生産性良く、かつ簡便に製造する。
【解決手段】電子・電気部品素子を成形型内に配置し、該成形型内に(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填剤および(D)プレゲル化剤を含む液状のエポキシ樹脂組成物を注入して半硬化させた後、前記成形型から取り出し、後硬化により前記エポキシ樹脂組成物を完全硬化させる。
【選択図】図1
【解決手段】電子・電気部品素子を成形型内に配置し、該成形型内に(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填剤および(D)プレゲル化剤を含む液状のエポキシ樹脂組成物を注入して半硬化させた後、前記成形型から取り出し、後硬化により前記エポキシ樹脂組成物を完全硬化させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、電子・電気部品の製造方法、およびそのような方法を用いて製造される電子・電気部品に関する。
近年、電気・電子機器、自動車機器、化学機器などの機器においては小型化・軽量化が進み、それに伴い、それらに搭載する電気・電子部品に使用する絶縁材料に対する要求も一段と厳しくなってきている。
従来、この種の用途の絶縁材料としては熱硬化性樹脂が広く用いられており、なかでもエポキシ樹脂は、耐熱性、耐薬品性が良好で、機械的特性に優れるうえ、硬化剤および各種添加剤との組合せにより、目的に応じた配合設計が実現できることから、多用されている。
このようなエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて電子・電気部品を封止・モールドする方法としては、部品を収容したケースまたは金型内に液状の熱硬化性樹脂を、常圧または真空下で注入滴下して硬化させる方法(注形法)が一般に用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
また、金型温度を比較的低温(50〜150℃)に保ち、金型のキャビティ内に比較的低い圧力(0.1〜10kg/cm2)で液状の熱硬化性樹脂を射出充填して成形する方法(射出成形法)も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、これらの従来の方法は、いずれも成形に時間がかかり生産性が低い上に、部品によっては、その容積や熱容量、熱硬化性樹脂が硬化する際の反応熱などを考慮して、多段で複雑な成形硬化条件を設定する必要があった。さらに、前者の方法では、樹脂の滴下面に相当する成形体の一面が覆われていないため、外観が不良で、また後者の方法では、樹脂の未充填部分やボイドが生じやすいという問題があった。
本発明は上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、熱硬化性樹脂により封止・モールドされた電子・電気部品であって、外観が良好でボイドなどのない高品質で高信頼性の電子・電気部品を、生産性良く、かつ簡便に製造することができる方法、およびそのような方法によって製造された電子・電気部品を提供することにある。
本発明の一態様に係る電子・電気部品の製造方法は、電子・電気部品素子を成形型内に配置し、該成形型内に下記成分(A)〜(D)を含む液状のエポキシ樹脂組成物を注入して半硬化させた後、前記成形型から取り出し、後硬化により前記エポキシ樹脂組成物を完全硬化させることを特徴としている。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)無機充填剤
(D)プレゲル化剤
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)無機充填剤
(D)プレゲル化剤
また、本発明の他の一態様に係る電子・電気部品は、本発明の一態様に係る電子・電気部品の製造方法で製造されたものである。
本発明によれば、熱硬化性樹脂により封止・モールドされた電子・電気部品であって、外観が良好でボイドなどのない高品質で高信頼性の電子・電気部品を、生産性良く、かつ簡便に製造することができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率などは実際のものとは異なることに留意されたい。
図1は、本発明の一実施形態による電子・電気部品の製造工程を示す図であり、また、図2は、本発明の一実施形態を適用して製造された電子・電気部品を概略的に示す断面図である。
図1において、1は、本実施形態において成形型として使用する射出成型用の金型を示している。金型1は、下型11と上型12とから構成され、これらの下型11および上型12にはそれぞれ凹部11a、12aが形成されている。この凹部11a、12aがキャビティ13を構成する。上型12には、また、キャビティ13に連通する樹脂注入口となるスプルー14が設けられ、このスプルー14には、液状のエポキシ樹脂組成物3を注入するための射出ノズル15が接続されている。この射出ノズル15からスプルー14を介してキャビティ13内に液状のエポキシ樹脂組成物3を注入して射出成形を行い、電子・電気部品を製造する。
まず、所定の温度に制御した下型11の凹部11a内に電子・電気部品素子2を配置し、その上に射出ノズル15を接続した上型12を被嵌し、下型11との接合部を気密にシールするとともに、キャビティ13内を真空ポンプなど(図示を省略)により吸引し、例えば、10Torr(約1.33kPa)にまで減圧する。電子・電気部品素子2は、その本体の側面から延びる端子2aを有しており、これらの端子2aが下型11と上型12との接合部で挟持されるように配置される。図1において、16は、上型12と下型11との接合部を気密にシールするシール部材を示している。
次いで、射出ノズル15の先端部15aを開き、液状のエポキシ樹脂組成物3を、下型11と上型12との間のキャビティ13内に射出する。射出ノズル15は、ノズル本管15b内にプランジャ15cが同心的に配設され、このプランジャ15cを上下動させることによって、ノズル先端部15aが開閉し、液状のエポキシ樹脂組成物3をキャビティ13内に断続的に射出できるようになっている。プランジャ15cを上昇させ、先端部15aを開いて、液状のエポキシ樹脂組成物3を射出する。なお、本発明において用いられる液状のエポキシ樹脂組成物については後述する。
液状のエポキシ樹脂組成物3がキャビティ13内に十分に充填されたところで、下型11および上型12を加熱して液状のエポキシ樹脂組成物3を硬化させる。本実施形態では、このとき、液状のエポキシ樹脂組成物3を完全硬化させず、半硬化させる。ここで、「半硬化」とは、後で最終製品として使用されるために完全に硬化する前に反応を停止させた状態を意味し、通常「B−Stage」と称される状態をいう。
本発明においては、充填した液状のエポキシ樹脂組成物3の示差走査熱量測定(DSC)による硬化反応率が30〜55%の範囲になるような条件で加熱することが好ましい。硬化反応率が30%未満では、硬化が不十分なために、形状を保持したまま金型から硬化物を容易に取り出すことができないか、または困難となる。また、硬化反応率が55%を超えるような条件では、硬化に時間がかかり生産性を十分に向上させることができないおそれがある。また、生産性の低下を防止するため、短時間に硬化させた場合には、硬化収縮などにより内部応力が発生し、クラックなどの欠陥が発生しやすくなる。金型からの取り出しを容易にし、また、硬化物における欠陥の発生を防止し、かつ生産性を高めるためには、硬化反応率が40〜50%の範囲になるような条件で加熱することがより好ましい。
なお、上記エポキシ樹脂組成物のDSCによる硬化反応率は、未硬化のエポキシ樹脂組成物から採取した試料(未硬化試料)および硬化後のエポキシ樹脂組成物から採取した試料(測定試料)について、それぞれDSC測定を行って各試料の発熱量を求め、未硬化試料の発熱量をH0、測定試料の発熱量をH1としたとき、次式(1)により算出される値である。
硬化反応率(%)={(H0−H1)/H0}×100 …(1)
硬化反応率(%)={(H0−H1)/H0}×100 …(1)
この後、金型1を開放し、半硬化成形品である、半硬化状態のエポキシ樹脂組成物で封止・モールドされた電子・電気部品素子2を取出し、後硬化により半硬化状態のエポキシ樹脂組成物を完全硬化させる。後硬化工程は、金型1から取り出した複数の半硬化成型品を一括して加熱ステージ上に放置したり、加熱オーブン中に放置したりすることにより行うことができる。後硬化は、複数の半硬化成型品を一括して処理することができる。これにより、図2に示すような、電子・電気部品素子2がエポキシ樹脂組成物の完全硬化物4で覆われて保護された電子・電気部品5が得られる。なお、電子・電気部品5は、端子2aの端部が硬化物4の外に突出して、他の機器などと接続できるようになっている。
本実施形態の電子・電気部品の製造方法においては、30〜55%という低い硬化反応率で金型から取り出すことができるため、金型内での成形時間を短縮することができ、生産性を高めることができる。また、硬化の大半を後硬化で行うことができるので、成型段階での複雑な成形硬化条件を設定する必要もない。
本実施形態において、液状のエポキシ樹脂組成物を金型に注入する際には、液状のエポキシ樹脂組成物の射出温度を低温に設定した上で、高温の金型へ注入充填して硬化させることが好ましい。
具体的には、液状のエポキシ樹脂組成物の射出温度は50〜70℃が好ましい。50℃未満では流動性が悪くなるおそれがある。一方、70℃を超えると射出ノズル内で一部硬化乃至ゲル化反応が進行するおそれがある。また、液状のエポキシ樹脂組成物の射出速度は0.2〜5.0L/分が好ましい。0.2L/分未満では生産性が低下し、一方、5.0L/分を超えると、気泡の巻き込みにより硬化物内にボイドが発生するおそれがある。
具体的には、液状のエポキシ樹脂組成物の射出温度は50〜70℃が好ましい。50℃未満では流動性が悪くなるおそれがある。一方、70℃を超えると射出ノズル内で一部硬化乃至ゲル化反応が進行するおそれがある。また、液状のエポキシ樹脂組成物の射出速度は0.2〜5.0L/分が好ましい。0.2L/分未満では生産性が低下し、一方、5.0L/分を超えると、気泡の巻き込みにより硬化物内にボイドが発生するおそれがある。
また、液状のエポキシ樹脂組成物の射出粘度は0.5〜2Pa・sが好ましい。0.5Pa・s未満では、成形品にバリが発生したり、金型に設けられている脱気用の孔に詰まりが生じるおそれがある。一方、2Pa・sを超えると流動性が低下し、場合により金型内に配置した電子・電気部品素子を損傷させるおそれがある。
エポキシ樹脂組成物を金型内で半硬化させる際の温度条件としては、90〜110℃が好ましく、時間は5〜25分程度が好ましい。温度が90℃未満では、硬化反応が十分に進行しないおそれがあり、110℃を超えると、硬化が急速に進んで、電子・電気部品素子の空隙にエポキシ樹脂組成物が均一に充填されないおそれがある。また、前述したような、硬化収縮などにより内部応力が発生し、クラックなどの欠陥が発生しやすくなるという問題が生じるおそれがある。一方、時間が5分未満では、硬化乃至ゲル化が不十分で、成型品の金型からの取り出しが困難になるおそれがあり、25分を超えると、成形時間が長いために、生産性を十分に向上させることができない。
また、その際の加圧条件としては、0.2〜10MPaが好ましい。0.2MPa未満では、樹脂の未充填部分やボイドが生じるおそれがある。一方、10MPaを超えると、電子・電気部品素子を損傷させるおそれがある。
半硬化成形品を金型から取り出した後の後硬化は、例えば、100℃で2時間加熱することにより行うことができる。
なお、射出ノズルなどには、エポキシ樹脂組成物を所望の温度まで加温できるヒータなどの加温手段を設けてもよい。また、金型は、ステンレス鋼などの耐熱性および耐食性を有する金属からなるものが好ましい。
本発明の方法が適用される電子・電気部品の素子としては、例えば、巻線を収納した固定子鉄心(コイル)部品の他、コネクター、スイッチ、リレー、コンデンサ、トランス、抵抗器、集積回路、発光ダイオード(LED)などが挙げられる。
次に、本発明の電子・電気部品の製造方法で使用する液状のエポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明で用いる液状のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填剤と、(D)プレゲル化剤とを必須成分として含有するものである。
(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のグリシジル基(エポキシ基)を有する常温(25℃)で液状のエポキシ樹脂が好ましく使用される。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。なお、2種以上を混合して使用する場合は、混合したときに液状であればよい。
(A)成分のエポキシ樹脂としては、なかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリグリシジルエーテルとの併用が好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリグリシジルエーテルの混合割合としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100質量部に対してポリグリシジルエーテル10〜40質量部が好ましく、15〜35質量部がより好ましい。10質量部未満では粘度が高くなり、含浸性が低下する。逆に、40質量部を超えると耐熱性が低下する。
(B)成分の硬化剤としては、多価フェノール類、酸無水物類、多価アミン類など、従来、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものであれば、特に制限されることなく使用することができる。具体的には、例えば、酸無水物類として、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。フェノール類としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール型樹脂などが挙げられる。アミン類としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド化合物、メラミンなどが挙げられる。
(B)成分の硬化剤としては、なかでも、酸無水物類が低粘度であり、かつ保存安定性も良好なことから好ましい。
(B)成分の硬化剤の配合量は、種類によって異なり、例えば、酸無水物類の場合には、上記(A)成分中のエポキシ基1当量当たり、0.7〜1.1当量となる範囲が好ましく、0.8〜1.0当量となる範囲がより好ましい。また、フェノール類の場合には、(A)成分中のエポキシ基1当量当たり、フェノール類中のフェノール性水酸基が0.8〜1.2当量となる範囲が好ましく、0.9〜1.1当量となる範囲がより好ましい。硬化剤の配合量が前記範囲を外れると、硬化物の耐熱性、機械的特性、耐湿性などの特性が低下するおそれがある。
(C)成分の無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素、マグネシア、べ−マイト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルクなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。(C)成分の無機充填剤としては、なかでも、シリカ粉末が好ましく、特に、球状のシリカ粉末が好ましい。
(C)成分の無機充填剤の配合量は、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部当たり、500〜1500質量部の範囲が好ましい。500質量部未満では、硬化物収縮により電気・電子部品の歪みや破損などが発生しやすくなり、一方、1500質量部を超えると、射出時の流動性が低下し、未充填部分が発生するおそれがある。前記範囲内であれば、良好な耐熱衝撃性や機械的特性などが得られる。
(D)成分のプレゲル化剤は、一定温度以上に加熱することによって、ごく短時間で液状のエポキシ樹脂組成物のゲル化を達成可能にするものである。したがって、これを配合したエポキシ樹脂組成物は、成形型に射出する際にはその流動性を維持して、速やか、かつ良好に成形型内に射出充填することができる。そして、射出後、加熱することにより、エポキシ樹脂組成物は速やかにゲル化し、エポキシ樹脂組成物の硬化反応率が低くとも、成形型から十分に取り出すことができるだけの硬度にすることができる。このため、成形品を成形型から取り出す時間を短縮することができ、生産性を向上させることができるとともに、成形型で硬化させる際の複雑な条件を不要とし、成形工程の簡便化を図ることができる。また、成形型内で流動性が維持される時間が短縮されるため、バリの発生も抑制できる。
プレゲル化剤は、液状のエポキシ樹脂組成物調製時に分散しやすい形態、例えば粉体などであることが好ましく、平均粒径0.2〜50μm、好ましくは平均粒径0.5〜30μm、より好ましくは平均粒径1〜10μmの粉体であることがより好ましい。このプレゲル化剤の粉体の平均粒径は、走査型電子顕微鏡などの微細な構造を観測できる装置で撮像した写真から任意に選択した50〜100個の粒子について測定した直径(真円相当径)の平均値である。
また、プレゲル化剤は、(A)エポキシ樹脂などの他の成分に対し分散性の高いものであることが好ましい。そのような(A)エポキシ樹脂などの他の成分に分散性が高いものとしては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのなかでも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が特に好ましい。さらに、ゲル化効果の点から、数平均分子量が100,000〜5,000,000のものが好ましく、数平均分子量が200,000〜3,000,000のものがより好ましい。プレゲル化剤は、部分架橋物であってもよい。
プレゲル化剤の具体例としては、例えば、メタブレン(登録商標)JF−001、同JF−003、同KP−0929、同KP−930、同KP−0917(以上、三菱レイヨン(株)製 商品名)、ZEFIAC(登録商標)F−301、同F−351、同F−320、同F−340、同F−345(以上、アイカ工業(株)製 商品名)などの(メタ)アクリル樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、メタブレン(登録商標)JF−001(活性温度75〜85℃)、ZEFIAC(登録商標)F−20(活性温度100〜110℃)が、加熱時の増粘効果、ゲル化効果が高いことから好ましい。
上記プレゲル化剤は、概ね60℃未満では不活性であり、70〜120℃程度に加熱されると活性化し、液状のエポキシ樹脂組成物を急速に増粘させ、ゲル状態に至らしめるものである。プレゲル化剤としては、活性温度が75〜110℃、すなわち、75〜110℃程度に加熱されると活性化するものが好ましい。
(D)成分のプレゲル化剤の配合量は、ゲル化効果や保存安定性などの観点から、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して、10〜50質量部の範囲が好ましく、10〜40質量部の範囲がより好ましく、10〜35質量部の範囲がより一層好ましい。(D)成分のプレゲル化剤は、活性温度が異なる複数のプレゲル化剤を併用してもよい。
本発明に使用するエポキシ樹脂組成物は、上記成分を必須成分とするものであるが、硬化特性を改善するために、さらに(E)硬化促進剤を添加することができる。(E)硬化促進剤は、上記(A)成分と(B)成分との硬化を促進することができるものであれば、特に制限されることなく使用することができる。
使用可能な硬化促進剤の例としては、例えば、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンなどのウレア類、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、トリエチルアミンなどの第3級アミン系化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン塩などの有機ホスフィン塩化合物などが挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも、耐湿信頼性の点からイミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
この(E)成分の硬化促進剤の配合量は、硬化促進性および硬化物物性のバランスなどの点から、上記(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.4〜5質量部の範囲がより好ましい。0.1質量部未満では、硬化不良により電気特性、膜厚均一性などが低下するおそれがあり、また、10質量部を超えると、保存安定性などが低下するおそれがある。
本発明に使用するエポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて、例えば、カップリング剤、離型剤、着色剤、低応力付与剤、消泡剤などの各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。カップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。離型剤としては、例えば、合成ワックス、天然ワックス、直鎖脂肪族の金属塩、酸アミド、エステル類などが挙げられる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、コバルトブルーなどが挙げられる。低応力付与剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどが挙げられる。
上記のような配合からなる本発明に使用されるエポキシ樹脂組成物は、100℃で10分間加熱後のDSCによる硬化反応率、すなわち前述した式(1)で得られる硬化反応率が30〜55%であることが好ましい。DSCによる硬化反応率が30%未満では、硬度不足や表面のベタツキなどにより脱型が困難になる。また、DSCによる硬化反応率が55%を超える場合には、重合反応による硬化が急速に進行するため、硬化収縮などにより内部応力が発生し、クラックが発生しやすくなる。
本発明に使用するエポキシ樹脂組成物の調製は、上述したような(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填剤、および(D)プレゲル化剤と、必要に応じて配合される各種成分とを十分に混合することにより行われる。混合後、50〜70℃に予熱し、減圧下で脱泡した後、成形型に射出注入することが好ましい。
以上、実施形態を示して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の説明が含まれており、開示される複数の構成要件を適宜組み合わせることにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決できている場合には、このいくつかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
次に、本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において使用した材料は表1に示した通りである。
実施例1〜4および比較例1〜4
表1に示すビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤、消泡剤、シランカップリング剤、球状溶融シリカ、プレゲル化剤IおよびII、微細シリカ、ベントナイト、硬化促進剤を用い、表2に示す配合割合で各原料を均一に撹拌混合して、液状のエポキシ樹脂組成物を調製した。
表1に示すビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤、消泡剤、シランカップリング剤、球状溶融シリカ、プレゲル化剤IおよびII、微細シリカ、ベントナイト、硬化促進剤を用い、表2に示す配合割合で各原料を均一に撹拌混合して、液状のエポキシ樹脂組成物を調製した。
次いで、図1に示す金型1を用いて、調製された上記各エポキシ樹脂組成物により電気・電子部品素子の封止を行った。すなわち、まず、金型1の下型11の凹部11aに封止すべき電気・電子部品素子を収容し、上型12を被嵌し、金型1を組み立てた。次いで、上記エポキシ樹脂組成物を、射出ノズル15のノズル本管15b内に導入し、下型11と上型12との間のキャビティ13内を真空ポンプにて10Torrまで真空引きした。プランジャ15cを作動させ、キャビティ13内に充填速度0.5L/min、射出温度60℃で、エポキシ樹脂組成物を射出充填した後、0.5MPaの加圧下、下型11および上型12を加熱し、100℃で10分間の条件でエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた。その後、金型1を開放し、硬化物を金型1から取り出した後、100℃、2時間の条件で後硬化を行い、樹脂で封止された電気・電子部品を製造した。
比較例5
液状のエポキシ樹脂組成物に代えて、汎用のトランスファモールド成型用エポキシ樹脂封止材(京セラケミカル(株)製 商品名 KE−300AH;汎用封止材と表記)を
液状のエポキシ樹脂組成物に代えて、汎用のトランスファモールド成型用エポキシ樹脂封止材(京セラケミカル(株)製 商品名 KE−300AH;汎用封止材と表記)を
上記各実施例および各比較例で得られたエポキシ樹脂組成物、および成形品について、下記に示す方法で各種特性を評価し、その結果を表2に併せ示した。
<樹脂組成物>
(1)ゲルタイム
JIS C 2105の試験管法に準拠して、エポキシ樹脂組成物を試験管中に10g量り取り、100℃のオイルバス中にて樹脂組成物がゲルになるまでの時間を測定した。比較例5の汎用封止材については、JIS C 2161の7.5.1に規定されるゲル化時間A法に準じて、約1gのエポキシ樹脂封止材を熱盤上において100℃でかき混ぜ棒にてかき混ぜ、ゲル状になりかき混ぜられなくなるまでの時間を測定した。
(2)ガラス転移点(Tg)
エポキシ樹脂組成物を100℃、2時間の条件で硬化させて作製した試料について、熱分析装置TMA/SS150(セイコーインスツルメンツ社製 型名)により、室温から200℃まで昇温して(昇温速度10℃/分)熱膨張曲線を測定し、変位点の中点から求めた。
(3)初期粘度
JIS C 2105の粘度測定法に準拠して、BROOKFIELD粘度計(品番:DV−II)により、ローターNo.34spindleを用い、温度60℃、回転数10rpmの条件で測定した。
(4)硬化反応率(脱型時)
成形前の未硬化状態のエポキシ樹脂組成物と脱型直後の成形品から採取した樹脂片について、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製)によりDSC測定を行った。具体的には、測定サンプル約10mgを昇温速度10℃/分で昇温させたときのDSC曲線を測定し、成形前の樹脂組成物の発熱量(H0)および金型から取り出し直後の樹脂片の発熱量(H1)から、次式により算出した。
硬化反応率(%)={(H0−H1)/H0}×100
(5)成形性・ハンドリング性
成形品を脱型する際の作業の容易性などから、下記の基準で評価した。
○:適度な硬さがあり、かつ表面のベタツキもなく容易に脱型できるとともに、目視による観察で脱型後の成形品に形状の変化が認められない
×:硬さ不足や表面のベタツキなどにより脱型が困難または不可
(1)ゲルタイム
JIS C 2105の試験管法に準拠して、エポキシ樹脂組成物を試験管中に10g量り取り、100℃のオイルバス中にて樹脂組成物がゲルになるまでの時間を測定した。比較例5の汎用封止材については、JIS C 2161の7.5.1に規定されるゲル化時間A法に準じて、約1gのエポキシ樹脂封止材を熱盤上において100℃でかき混ぜ棒にてかき混ぜ、ゲル状になりかき混ぜられなくなるまでの時間を測定した。
(2)ガラス転移点(Tg)
エポキシ樹脂組成物を100℃、2時間の条件で硬化させて作製した試料について、熱分析装置TMA/SS150(セイコーインスツルメンツ社製 型名)により、室温から200℃まで昇温して(昇温速度10℃/分)熱膨張曲線を測定し、変位点の中点から求めた。
(3)初期粘度
JIS C 2105の粘度測定法に準拠して、BROOKFIELD粘度計(品番:DV−II)により、ローターNo.34spindleを用い、温度60℃、回転数10rpmの条件で測定した。
(4)硬化反応率(脱型時)
成形前の未硬化状態のエポキシ樹脂組成物と脱型直後の成形品から採取した樹脂片について、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製)によりDSC測定を行った。具体的には、測定サンプル約10mgを昇温速度10℃/分で昇温させたときのDSC曲線を測定し、成形前の樹脂組成物の発熱量(H0)および金型から取り出し直後の樹脂片の発熱量(H1)から、次式により算出した。
硬化反応率(%)={(H0−H1)/H0}×100
(5)成形性・ハンドリング性
成形品を脱型する際の作業の容易性などから、下記の基準で評価した。
○:適度な硬さがあり、かつ表面のベタツキもなく容易に脱型できるとともに、目視による観察で脱型後の成形品に形状の変化が認められない
×:硬さ不足や表面のベタツキなどにより脱型が困難または不可
<成形品>
(1)バリ長
金型を開放し、下型と上型の接合面(界面)に入り込んで硬化したエポキシ樹脂組成物のキャビティからの距離を測定した。
(2)ボイド
成形後の電気・電子部品を任意の切断面で切断し、その切断面における樹脂硬化物中のボイドの有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:ボイドなし
×:ボイド有り
(3)冷熱サイクル試験
成形後の電気・電子部品に対し、気相で、−40℃で5分間および115℃で5分間の冷熱サイクルを1000サイクル行う冷熱サイクル試験を行い、クラックの発生の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:クラックなし
×:クラック有り
(4)耐衝撃試験
成形後の電気・電子部品に対し、最大100G×3回(3方向)の圧力を加え、クラック、割れ、欠けなどの欠陥の発生の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:クラック、割れおよび欠けの発生なし
△:一部にクラックが発生
×:全体にクラックが発生、または割れもしくは欠けが発生
(1)バリ長
金型を開放し、下型と上型の接合面(界面)に入り込んで硬化したエポキシ樹脂組成物のキャビティからの距離を測定した。
(2)ボイド
成形後の電気・電子部品を任意の切断面で切断し、その切断面における樹脂硬化物中のボイドの有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:ボイドなし
×:ボイド有り
(3)冷熱サイクル試験
成形後の電気・電子部品に対し、気相で、−40℃で5分間および115℃で5分間の冷熱サイクルを1000サイクル行う冷熱サイクル試験を行い、クラックの発生の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:クラックなし
×:クラック有り
(4)耐衝撃試験
成形後の電気・電子部品に対し、最大100G×3回(3方向)の圧力を加え、クラック、割れ、欠けなどの欠陥の発生の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:クラック、割れおよび欠けの発生なし
△:一部にクラックが発生
×:全体にクラックが発生、または割れもしくは欠けが発生
表2から明らかなように、実施例および比較例は同じ加熱硬化条件であるにもかかわらず、実施例では、バリおよびボイドがなく、信頼性や耐衝撃性にも優れる電子・電気部品が得られたのに対し、比較例では、例えば、バリ、ボイド、信頼性および耐衝撃性のいずれかで良好な結果が得られなかった。すなわち、プレゲル化剤を未配合としたエポキシ樹脂組成物を用いた以外は実施例と同様に製造した比較例1のバリの発生が認められ、プレゲル化剤に代えて微細シリカまたはベントナイトを配合したエポキシ樹脂組成物を用いた以外は実施例と同様に製造した比較例2、3では、ボイドの発生が認められた(ベントナイトを配合した比較例では、冷熱サイクル試験および耐衝撃性試験の結果も不良であった)。また、プレゲル化剤に代えて硬化促進剤の配合量を増大させたエポキシ樹脂組成物を用いた以外は実施例と同様に製造した比較例4では、バリ、ボイドがともに発生し、冷熱サイクル試験および耐衝撃性試験の結果も不良であった。さらに、汎用のトランスファモールド成型用エポキシ樹脂封止材を使用した比較例5では、ボイドが発生した。
1…金型、2…電子・電気部品素子、3…液状のエポキシ樹脂組成物、4…エポキシ樹脂組成物の(完全)硬化物、5…電子・電気部品、11…下型、12…上型、13…キャビティ、15…射出ノズル。
Claims (7)
- 電子・電気部品素子を成形型内に配置し、該成形型内に下記成分(A)〜(D)を含む液状のエポキシ樹脂組成物を注入して半硬化させた後、前記成形型から取り出し、後硬化により前記エポキシ樹脂組成物を完全硬化させることを特徴とする電子・電気部品の製造方法。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)無機充填剤
(D)プレゲル化剤 - 前記成形型から取り出し直後の前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の示差走査熱量測定(DSC)による硬化反応率が30〜55%であることを特徴とする請求項1記載の電子・電気部品の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物は、成分(A)100質量部当たり、成分(C)を500〜1500質量部、成分(D)を10〜50質量部含有することを特徴とする請求項1または2記載の電子・電気部品の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物は、100℃で10分間加熱後の示差走査熱量測定(DSC)による硬化反応率が30〜55%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の電子・電気部品の製造方法。
- 前記成形型内で前記エポキシ樹脂組成物を90〜110℃で5〜25分間加熱して半硬化させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電子・電気部品の製造方法。
- 成分(D)は、活性温度が75〜110℃のプレゲル化剤であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子・電気部品の製造方法。
- 請求項1乃至6のいずれか1項記載の電子・電気部品の製造方法で製造されて成ることを特徴とする電子・電気部品。
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