JP2012116727A - フッ化カルシウム単結晶体育成用原料の精製方法 - Google Patents

フッ化カルシウム単結晶体育成用原料の精製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フッ化カルシウム単結晶体のレーザー耐性を向上させるために、その原料となるフッ化カルシウムのレーザー耐性を向上させる精製方法を提供する。
【解決手段】気密化可能な精製炉を用い、原料フッ化カルシウムを溶融させた後、降温することにより凝固させるフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法において、少なくとも降温開始時から凝固点以下、1200℃以上の所定の温度に到達するまでの間は、炉内を真空排気された状態とし、かつ該所定の温度に到達した後に精製炉内にフッ素系ガスを導入するとともに、少なくとも、1000℃から500℃までの間は、降温速度を50℃/hrよりも遅くする。前記の原料フッ化カルシウムの精製方法により、レーザー誘起吸収(LIA)は、200〜800nmの波長領域において、ピークトップが0.002以下に大幅に低減し、レーザー照射後のカラーセンターの発生が抑制される。
【選択図】図4

Description

本発明は、光学材料等に用いられるフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法に関する。
フッ化カルシウムやフッ化バリウム等のフッ化金属の単結晶体は、広範囲の波長帯域にわたって高い透過率を有し、低分散で化学的安定性にも優れることから、紫外波長または真空紫外波長のレーザーを用いた各種機器、カメラ、CVD装置等のレンズ、窓材等の光学材料として需要が広がってきている。とりわけ、フッ化カルシウム単結晶体は、ArFレーザー(193nm)やFレーザー(157nm)での光源の窓材、光源系レンズ、投影系レンズとして用いられている。
従来、こうしたフッ化カルシウムの単結晶体は、坩堝降下法(ブリッジマン法)や単結晶引上げ法(チョクラルスキー法)により製造するのが一般的である。ここで、坩堝降下法とは、坩堝中の単結晶製造原料の溶融液を、坩堝ごと徐々に下降させながら冷却することにより、坩堝中に単結晶を育成させる方法である。一方、単結晶引上げ法とは、坩堝中の単結晶製造原料の溶融液面に、目的とする単結晶からなる種結晶を接触させ、次いで、その種結晶を坩堝の加熱域から徐々に引上げて冷却することにより、該種結晶の下方に単結晶を育成させる方法である。
単結晶引き上げ法は、製造される単結晶体が坩堝壁に接触することなく育成できる(成長する)ため、多結晶化してしまう可能性が低く、また大型で歪の少ない単結晶体を効率よく製造することができる優れた方法である(例えば、特許文献1、2参照)。
このような融液凝固法によりフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体を製造する際、結晶成長過程で取り込まれる不純物やフッ素欠陥の影響で、真空紫外領域の光透過率が低下するのみならず、レーザー光の照射によりこの透過率そのものが徐々に低下していく(レーザー耐性に劣る)という問題がある。
そのため、通常はスカベンジャーと呼ばれる酸素除去剤を用いることが行われる。このスカベンジャーとしては、四フッ化炭素等のフッ素化炭化水素からなる気体スカベンジャー(常温で気体のスカベンジャー、スカベンジャーガスともいう)や、フッ化鉛、フッ化亜鉛等の固体スカベンジャー(常温で固体のスカベンジャー)が用いられている(例えば、特許文献1〜9参照)。
固体スカベンジャーを用いる場合には、原料フッ化カルシウムとよく混ぜ合わせて坩堝に収容し、スカベンジ反応が生じる温度(フッ化カルシウムの融点よりも低い)まで昇温して脱酸素を行い、その後さらに昇温して原料フッ化カルシウムを溶融、ついで単結晶化が行われる。
この場合、スカベンジ反応により生じた生成物を除去するために、昇温開始から単結晶化開始までは、断続的に系内を排気することが通常行われる。さらには、ブリッジマン法で単結晶を製造する場合には、結晶成長中も高真空排気下に行われる場合が多い。
他方、チョクラルスキー法でフッ化カルシウム単結晶を製造する場合、高真空下で結晶成長を行わせようとすると様々な問題が生じる可能性が高くなるため、常圧もしくは0.5kPa程度までの減圧下で行われる(例えば、特許文献8参照)。しかしながら、0.5kPa〜常圧という圧力下では、高真空下で行うブリッジマン法と比較して、より不純物やスカベンジャーとの反応生成物が残存しやすく、よって、アズグロウン単結晶体において真空紫外領域の光透過率が低い、及びレーザー耐性に劣るものが生じやすくなる場合があった。
特開2004−182588号公報 特開2005−029455号公報 特開2003−221297号公報 特開平11−157982号公報 特開2004−315255号公報 特開2001−19586号公報 特開2006−199577号公報 特開2006−347792号公報 特開2007−106662号公報
従って本発明は、フッ化カルシウム単結晶体のレーザー耐性を向上させるために、その原料となるフッ化カルシウムの純度を向上させ、これにより該原料を用いて製造したフッ化カルシウム単結晶体レーザー耐性を向上させる新規な精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねてきた。その結果、原料フッ化カルシウムの精製方法において、冷却工程にて、フッ素系ガスからなるスカベンジャーガスを導入後、徐冷することで、該フッ化カルシウムのレーザー耐性を向上することを見出し、さらに検討を行うことで本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、気密化可能な精製炉を用い、原料フッ化カルシウムを溶融させた後、降温することにより凝固させるフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法において、
少なくとも降温開始時から凝固点以下、1200℃以上の所定の温度に到達するまでの間は、炉内を真空排気された状態とし、かつ該所定の温度に到達した後に精製炉内にフッ素系ガスを導入するとともに、少なくとも、1000℃から500℃までの間は、降温速度を50℃/hrよりも遅くすることを特徴とするフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法である。
また、上記精製方法で原料フッ化カルシウムが溶融した後、降温を開始するまでの間、少なくとも1回以上、精製炉内にフッ素系ガスを導入し、次いで真空排気する操作を行うフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法である。
さらに、昇温開始後、原料フッ化カルシウムが溶融する前に、少なくとも1回以上、精製炉内にフッ素系ガスを導入し、次いで真空排気する操作を行うフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法である。
本発明によれば、原料フッ化カルシウムのレーザー耐性を向上させることができる。
原料精製炉の模式図 本発明の方法(実施例1、2)で原料を精製した場合のVUVスペクトルと、従来の方法(比較例1)で原料を精製した場合のVUVスペクトルを比較するグラフ。 本発明の方法(実施例1、2)で原料を精製した場合のVUVスペクトルと、従来の方法(比較例1)で原料を精製した場合のVUVスペクトルを比較するグラフ。 本発明の方法(実施例3、4)で原料を精製した場合のLIAスペクトルと、従来の方法(比較例2)で原料を精製した場合のLIAスペクトルを比較するグラフ。 本発明の方法(実施例3、4)で原料を精製した場合のLIAスペクトルと、従来の方法(比較例2)で原料を精製した場合のLIAスペクトルを比較するグラフ。
本発明は、融液凝固法で育成可能なフッ化カルシウム単結晶に適用可能である。
フッ化カルシウム単結晶の製造をする際、水、酸素などの不純物やフッ素欠陥の影響で、得られた単結晶の真空紫外領域の光透過率やレーザー耐性が低下するなどの問題が生じる。このような問題を解決するため、前述したように固体スカベンジャーや気体スカベンジャーを用いて不純物を除去する方法が採用されている。しかしながら高真空下で結晶成長を行うことが困難なチョクラルスキー法では、より不純物やスカベンジャーとの反応生成物が残存しやすく、よって、アズグロウン単結晶体において真空紫外領域の光透過率が低い、及びレーザー耐性に劣るものが生じやすくなる場合があった。そのため本発明は、原料精製段階でできるだけ不純物を除去しようとするものである。
原料フッ化カルシウムの精製は、該原料フッ化カルシウムを精製炉に装入し、炉内を昇温させ、一旦、原料フッ化カルシウムを溶融させた後に凝固させることによって行われる。
本発明の精製方法で用いる精製炉は、原料フッ化カルシウムの前処理(不純物や水分などを除去する)に使用される一般的な前処理炉を特に制限無く使用できるが、例えば特開平10−330192号広報等に提案されている多段坩堝を用いた前処理炉が好ましい。より具体的に、図1に精製炉の模式図を示す。
図1に示した精製炉では、チャンバー(4)内に置いて、支持棒(6)に支えられた受け台(5)上に、内部にフッ化カルシウム原料が収容される多段坩堝(1)が載置されており、該多段坩堝の周囲にはヒーター(3)が設けられ、さらに、ヒーター(3)を環囲して断熱材壁(2)が設けられており、多段坩堝(1)の上方には上断熱材(8)が設けられており、多段坩堝(1)の下方には底断熱材(9)が設けられている。
昇温は、通常、酸素分や金属などの不純物を除去するためにスカベンジャーの存在下に行われる。該スカベンジャーとしては公知のものが特に制限無く使用できるが、具体的にはフッ化亜鉛、フッ化鉛、ポリテトラフルオロエチレン等の固体スカベンジャーや、フッ素、フッ化水素、四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化エタン等の気体スカベンジャーが用いられる。
なかでも精製効率、再現性に優れるなどの点で気体スカベンジャーが好ましい。気体スカベンジャーとしては、四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化エタン等のフッ素系ガスがより好ましく、四フッ化炭素を用いるのが最も好ましい。また、固体スカベンジャーと気体スカベンジャーを併用することも可能である。
以下では、フッ素系ガスをスカベンジャーとして使用する場合の例を挙げて、精製工程を具体的に説明する。気体スカベンジャーを用いる場合、図1に示した精製炉では、スカベンジャーガスを供給するためのガス導入管(7)が設けられている。当該ガス導入管はチャンバー(4)の上面から上熱材壁(8)を貫通して設置されている。これは、一例であり、チャンバー及び/または断熱材壁の側面や下面から導入管を貫通させてもよく、精製炉の構造などに合わせて適宜設定すればよい。なお、ガス導入の際はホットゾーン(断熱材で環囲されたゾーン)の中まで導入管を敷設し、該ホットゾーン中に直接導入できるようにしておくことが最も好ましい。
導入管の材質は、融液の温度で変形、劣化しないものであることが必要であり、グラファイトカーボンなどカーボン系の素材や、白金、モリブデンなどの高融点金属を使用することが好ましい。相対的に安価な点でカーボン系の素材が特に好ましい。
導入管の口径は、スカベンジャーガスの供給量に合わせて適宜設定すればよいが、一般的には先端の断面積が0.5〜7cm程度である。また図示しないが、当該精製炉には、炉内を真空ポンプ等により排気できるガス排出口を設けることが好ましい。
<昇温工程>
上述の如き精製炉の坩堝内に、原料フッ化カルシウムを装入後、まず真空排気しつつ、200℃以上、用いるフッ素系ガスがスカベンジャーとしての作用を開始する温度未満の温度まで昇温することが好ましい。〔ここで「真空排気」するとは、炉内圧力が10−3Pa以下となるまで排気することをいう。〕なお、フッ素系ガスがスカベンジャーとしての作用を開始する温度は、例えば四フッ化炭素であれば900℃程度である。
該工程をより詳しく述べると、真空ポンプなどで1×10−3Pa以下になるまで排気した後、ヒーターによる加熱を開始すればよい。この工程での昇温は一度に行ってもよいが、より効率的に水分除去を行うためには段階的に昇温を行うことが好ましい。好ましい具体例を示せば、温度200〜300℃まで昇温した後、この温度で10〜24時間保持する。その後、温度500〜800℃まで昇温後、この温度で10〜24時間保持する。この工程により原料フッ化カルシウムや結晶成長炉内に吸着していた水分の大部分が除去される。
しかしながら、通常は該加熱処理のみでは水分を完全に除去できないため、続いてフッ素系ガスを結晶成長炉内に導入する(第一次ガス供給工程)ことで、該フッ素系ガスにスカベンジャーとしての作用を開始させる(スカベンジ反応を起こす)。その後、フッ素系ガスがスカベンジャーとしての作用を開始する(スカベンジ反応を起こす)温度以上、原料フッ化カルシウムの融点未満の温度まで昇温し、この温度で1〜24時間保持することが好ましい。昇温速度は適宜決定すればよいが一般的には50〜500℃/h程度である。
当該操作を行うことにより、前記した真空排気と加熱とによっても除去しきれなかった水分等(未除去水分)と気体スカベンジャー(フッ素系ガス)とが反応して反応生成物を生じる。該フッ素系ガスの導入量は、ガス圧が0.5〜70kPa、好ましくは40〜60kPa程度の量であればよい。なお該フッ素系ガスはアルゴンなどの不活性ガスにより希釈して精製炉内に導入してもよい。
当該フッ素系ガスの導入後、スカベンジ反応を確実に行わせるため、該温度で好ましくは1〜24時間、より好ましくは4〜12時間保持する。
該ガススカベンジャーを炉内に導入したまま更に昇温して、原料フッ化カルシウムを溶融させても良いが、本発明においては、上記の気体スカベンジャーと不純物との反応生成物を除去するために、原料フッ化カルシウムを溶融させる前に一旦真空排気を行うことが好ましい(第一次排出工程)。ここで溶融前に真空排気を行うのは、反応生成物が融液中に溶け込むことを抑止するためである。
該真空排気により精製炉内圧が10−3Pa以下の圧力となったならば直ぐに、次の溶融工程に進んでもよいが、真空排気された低圧状態でしばらく保持することも好ましい態様である。保持する場合、その時間は30分〜10時間程度である。
上述の第一次ガス供給工程と第一次排出工程は実施せずともよいが、実施した方がより効率よく、再現性よく精製を行うことができる。さらにガススカベンジャーの導入と真空排気を2回以上繰り返して行っても良い。
<溶融工程>
上記真空排気完了後、原料フッ化カルシウムが溶融する以上の温度まで昇温した後、1〜10時間保持することが好ましい(溶融工程)。このときの温度は、好ましくは融点より30〜130℃程度高い温度である1450〜1550℃まで昇温する。昇温速度は特に限定されないが一般的には50〜200℃/h程度である。
本発明においては、上記減圧下で溶融状態で保持した後、フッ素系ガスを精製炉内に導入する(第二次ガス供給工程)ことがより好ましい態様である。ここで、溶融後にフッ素系ガスを導入するのは、(固体状態の)原料フッ化カルシウム中に取り込まれていた不純物とフッ素系ガスを反応させるためである。
該フッ素系ガスの導入量は、ガス圧が0.5〜70kPa、好ましくは40〜60kPa程度の量であればよい。当該ガス圧下での溶融状態の保持時間は好ましくは0.5〜10時間であり、より好ましくは1〜5時間である。
当該ガス圧下で溶融状態で保持した後、再度、精製炉内を真空排気することも好ましい(第二次排出工程)。ここで、真空排気を行うのは、原料フッ化カルシウムに取り込まれていた不純物とフッ素系ガスとの反応で生じた反応生成物を取り除くためである。
該第二次排出工程においても、精製炉内圧が10−3Pa以下の圧力となったならば直ぐに次の工程に進んでも良いが、真空排気された低圧状態でしばらく保持することも好ましい態様である。保持する場合、その時間は30分〜10時間程度である。
本発明では、上記真空排気完了後、さらに第二次ガス供給工程と第二次排出工程を交互に繰り返して行うことが好ましい。このような工程を行うことにより、不純物やスカベンジャーとの反応生成物がより効率的に除去され、真空紫外領域の光透過率とレーザー耐性が良好な原料フッ化カルシウムが再現性良く精製できるようになるものと推測される。繰り返し回数の上限はないが、1〜2回程度で十分である。
また、ガスの導入速度は特に限定されるものではないが、0.5〜5L/min程度となるようにすることが好ましい。ガス導入速度があまりに速いと、精製炉内の局所的な冷却が生じたり、あるいは炉内の微少不純物成分を巻きあげたりする可能性がある。一方、遅すぎると時間当たりの生産性を低下させる要因となる。
<冷却工程>
本発明においては、上記の如くして所望の回数スカベンジャーガスの精製炉内への供給と排出を繰り返した後、真空排気下で降温し、原料フッ化カルシウムを凝固させる。この際、真空排気下を保つのは凝固点以下、1200℃以上の範囲にある所定の温度までである。該所定の温度まで真空排気下で降温した後には、再度、精製炉内にフッ素系ガスを導入する必要がある(第三次ガス供給工程)。
原料凝固後にフッ素系ガスを導入するのは、原料フッ化カルシウム中のフッ素欠陥へフッ素を補充させるためである。フッ素系ガスの導入開始温度が1200℃を下回ると該効果が十分に得られない。また、溶融状態でなく凝固状態でのガス導入の理由は、原料フッ化カルシウムから取り除いた不純物とフッ素系ガスとの反応で生じた反応生成物を再度原料フッ化カルシウムへ取り込ませないためである。
該フッ素系ガスの導入量は、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜30kPa程度まで導入すればよい。当該ガス圧下での凝固状態の保持時間は、短すぎるとフッ素欠陥へフッ素を十分補えない可能性があるが、時間に完全に比例して効果が良くなるものでもなく、ある程度以上のでは効果が頭打ちになるため、好ましくは0.5〜12時間であり、より好ましくは5〜10時間である。
上記保持完了後、該ガス圧下でさらに降温を開始する。降温速度は少なくとも1000℃から500℃までの間で、降温速度を50℃/hrよりも遅く、より好ましくは25℃/hrよりも遅くする。
該温度領域は、フッ素欠陥を補充可能な温度領域から補充できなくなる温度領域を含んでいる。この工程により、原料フッ化カルシウム中のフッ素欠陥へフッ素を補充した状態のまま降温をすることができ、フッ素欠陥の増加を抑制することができる。
上記以外の温度範囲では、降温速度は特に限定されるものではないが、0.5〜500℃/min程度である。
精製炉内の温度が500℃を下回った後には、該炉内の雰囲気は特に限定されないが、好ましくは真空排気した後、不活性ガスに置換して常圧にするとともに、炉内から取り出せる程度の温度まで降温する。当該不活性ガスへの置換は、好ましくは室温付近まで降下した後に真空排気を行い、その後炉内へアルゴンガス、窒素ガスなどを導入することにより行う。
上述のような操作を行い、精製してフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料として使用する。上述した精製方法では、原料フッ化カルシウムを溶融させた後、精製炉内へのスカベンジャーガスの供給と排出とを交互に行いながら実施することにより、原料中に取り込まれた不純物を効率的に除去することができる。その後の冷却工程では、精製炉内を真空排気された状態で1200℃まで冷却して一旦原料を凝固させ、次いで精製炉内にフッ素系ガスを導入するとともに、少なくとも1000℃から500℃までの間は降温速度を50℃/hrよりも遅く冷却することで、凝固した原料中に不純物を取り込ませること無く、原料中のフッ素欠陥へフッ素の補充を行うことができる。このような操作を行うことにより、不純物やスカベンジャーとの反応生成物が効率的に除去され、さらにフッ素欠陥へフッ素の補充することができ、真空紫外領域の光透過率とレーザー耐性が良好な原料フッ化カルシウムが再現性良く精製できるようになるものと推測される。
このようにして、本発明の精製方法により得られた原料は、フッ化カルシウム単結晶体の製造原料として用いることができる。なお通常、単結晶体の製造原料として用いる前に、後述するようなVUV透過率及びLIAの測定を行い、真に良好な精製が行われているか否かを確認することが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせ全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
真空紫外領域の光透過率(以下、単にVUV透過率と称す)、およびレーザー耐性の指標となるレーザー誘起吸収(以下、単にLIAと称す)の各評価方法は、以下の通りである。
(1)VUV透過率の測定
表面粗さがRMSで0.5nm以下になるまで表面研磨して、厚さ10mmの試料を作製した。これをアセトン中で2分間超音波洗浄し、乾燥させた後、低圧水銀ランプを光源とする紫外線オゾン洗浄装置(テクノビジョン杜製UV−208)を用いて、出力7mW/cmで15分間の紫外線洗浄を行った。続いて、洗浄した試料をVUV透過率測定装置(目本分光杜製 KV−201;酸素含有量0.2ppm以下の窒素雰囲気中で測定)を用い、その透過率を120〜210nmの範囲で測定した。
(2)LIAの測定
上記VUV透過率測定を実施した同じ試料について、再度、上記の紫外線オゾン洗浄処理を行った後、紫外可視分光光度計(島津製作所杜製 UV−1800)を用い、レーザー照射前の透過率を200〜800nmの範囲で測定した。続いて、ArFエキシマーレーザーの光源装置(コヒレント杜製:LPX Pro 220)を用いて、エネルギー密度30mJ/cmのレーザーを、パルス繰返し周波数100Hzで10万パルス照射し、レーザー照射後の200〜800nmの範囲の透過率を、前記装置を用いて測定した。レーザー照射前後の透過率差を吸光度に変換したものが、LIAスペクトルとなる。LIAスペクトルの小さなものほど、レーザー照射前後の透過率の変化が少ないことを示し、レーザー耐性に優れたものとなる。
<装置構造>
原料フッ化カルシウムの精製を行った装置の模式図を図1に示す。この精製炉において、チャンバー内に設置された高純度グラファイト製の多段坩堝は、14段の多段坩堝であり、その1段が内直径48cm(外直径51cm)であり、高さ7cmのものであった。なお、図示していないが、多段坩堝の各段の側壁に、上から12.5mmの高さの位置の円周上にガス抜きのための穴が設けてあり、直径8mmのものを均等間隔で8個設けたものであった。断熱材壁は、ピッチ系グラファイト成型断熱材であり、厚み方向の放熱能力は9W/m・Kのものであった。
実施例1
<初期昇温工程>
上記多段坩堝内に、フッ化カルシウム粉原料を1段につき10kg、14段で計140kg投入した。そして、チャンバー内を油回転ポンプと油拡散ポンプで1×10−3Pa以下になるまで排気した後、加熱を開始した。温度300℃まで昇温した後、この温度で10時間保持した。その後、温度800℃まで昇温後、この温度で10時間保持した。その後、温度1200℃まで昇温した後、この温度で5時間保持した。
<第一次ガス供給工程>
続いて、四フッ化炭素を5L/minで60kPa供給した。
<第一次排出工程>
該温度で4時間保持した後、油回転ポンプと油拡散ポンプで1×10−3Pa以下になるまで排気し、5時間保持した。
<溶融工程>
該真空排気終了後、1450℃まで昇温し、原料フッ化カルシウムを溶融し、溶融状態で4時間保持した。
<第二次ガス供給工程>
その後、四フッ化炭素を5L/minで60kPa供給した後、この温度で4時間保持した。
<第二次排出工程>
その後、油回転ポンプと油拡散ポンプで1×10−3Pa以下になるまで排気し、4時間保持した。
<第二次ガス供給工程:2回目>
その後、四フッ化炭素を5L/minで60kPa供給した後、この温度で4時間保持した。
<第二次排気工程:2回目>
その後、油回転ポンプと油拡散ポンプで1×10−3Pa以下になるまで排気し、10時間保持した。
<冷却工程>
その後、1450℃から1200℃まで降温速度250℃/minで降温し、結晶を固化させた。該結晶固化後、四フッ化炭素を0.5L/minで30kPa供給した後、この温度で10時間保持した。
その後、1200℃から1000℃まで降温速度200℃/min、1000℃から500℃の範囲は21℃/hr、500℃から0℃までは42℃/hrで降温した。
以上により、1段につき直径約48cm、厚み約19mm、9.8kgであるフッ化カルシウム原料(多結晶体)を、14段で計137.4kg得た。この結晶を表面粗さがRMSで0.5mm以下になるまで表面研磨して、厚さ10mmの試料を作製し、VUV透過率とLIAの測定を行った。結果を表1と図2、図4に示す。
実施例2
実施例1と同様の方法で原料フッ化カルシウムの精製を行った。
得られたフッ化カルシウム原料は、1段につき直径約48cm、厚み約19mm、9.8kgであり、14段で計136.4kgだった。この結晶を表面粗さがRMSで0.5mm以下になるまで表面研磨して、厚さ10mmの試料を作製し、VUV透過率とLIAの測定を行った。結果を表1と図2、図4に示す。
実施例3
冷却工程にて、500℃から0℃までを降温速度500℃/minで降温した以外は、実施例1と同様の方法で原料フッ化カルシウムの精製を行った。得られたフッ化カルシウム原料は、1段につき直径約48cm、厚み約19mm、9.7kgであり、14段で計136.1kgだった。この結晶を表面粗さがRMSで0.5mm以下になるまで表面研磨して、厚さ10mmの試料を作製し、VUV透過率とLIAの測定を行った。結果を表1と図3、図5に示す。
実施例4
冷却工程にて、1000℃から500℃までを降温速度42℃/minで降温した以外は、実施例1と同様の方法で原料フッ化カルシウムの精製を行った。得られたフッ化カルシウム原料は、1段につき直径約48cm、厚み約19mm、9.8kgであり、14段で計136.0kgだった。この結晶を表面粗さがRMSで0.5mm以下になるまで表面研磨して、厚さ10mmの試料を作製し、VUV透過率とLIAの測定を行った。結果を表1と図3、図5に示す。
比較例1
冷却工程にて、四フッ化炭素を供給することなく、真空排気を保持した状態で1450℃から0℃まで降温速度24℃/minで降温した以外は、実施例1と同様の方法で原料フッ化カルシウムの精製を行った。得られたフッ化カルシウム原料は、1段につき直径約48cm、厚み約19mm、9.7kgであり、14段で計133.9kgだった。この結晶を表面粗さがRMSで0.5mm以下になるまで表面研磨して、厚さ10mmの試料を作製し、VUV透過率とLIAの測定を行った。結果を表1と図2、図4に示す。
比較例2
比較例1と同様の方法で原料フッ化カルシウムの精製を行った。得られたフッ化カルシウム原料は、1段につき直径約48cm、厚み約19mm、9.7kgであり、14段で計134.1kgだった。この結晶を表面粗さがRMSで0.5mm以下になるまで表面研磨して、厚さ10mmの試料を作製し、VUV透過率とLIAの測定を行った。結果を表1と図3、図5に示す。
Figure 2012116727
実施例1〜4、比較例1〜2で得られた193nmにおける透過率及びLIAスペクトルを比較することにより、以下のことが確認でき、本発明の精製方法が、原料フッ化カルシウムの精製方法に好適であることが判る。
透過率:
VUV透過率に関しては、193nmの透過率は同等であるが、本発明の精製を行なうことで、さらに130nm以下の短波長の透過率を大きく増加させることができた。この透過率の増加は、透過率悪化の原因となる不純物やフッ素欠陥を除去できたことを示す。本発明により、不純物を除去し、フッ素欠陥へフッ素を補充することができたものと推察される。
LIA:
LIAは、200〜800nmの波長領域において、フッ素欠陥由来のカラーセンターが発生しており、そのピークトップが0.005程度であったものが、本発明の精製を行うことで、ピークトップが0.002以下と大幅に低減することができた。この値の低減は、レーザー照射後のカラーセンターの発生を抑制できたことを示す。本発明により、カラーセンターの発生原因となる不純物を除去し、またフッ素欠陥へフッ素を補充することができたものと推察される。
1.多段坩堝
2.断熱材壁
3.ヒーター
4.チャンバー
5.受け台
6.支持軸
7.スカベンジャーガスを供給するためのガス導入管
8.上断熱材
9.底断熱材

Claims (3)

  1. 気密化可能な精製炉を用い、原料フッ化カルシウムを溶融させた後、降温することにより凝固させるフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法において、
    少なくとも降温開始時から凝固点以下、1200℃以上の所定の温度に到達するまでの間は、炉内を真空排気された状態とし、かつ該所定の温度に到達した後に精製炉内にフッ素系ガスを導入するとともに、少なくとも、1000℃から500℃までの間は、降温速度を50℃/hrよりも遅くすることを特徴とするフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法。
  2. 原料フッ化カルシウムが溶融した後、降温を開始するまでの間、少なくとも1回以上、精製炉内にフッ素系ガスを導入し、次いで真空排気する操作を行う請求項1に記載のフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法。
  3. 昇温開始後、原料フッ化カルシウムが溶融する前に、少なくとも1回以上、精製炉内にフッ素系ガスを導入し、次いで真空排気する操作を行う請求項1又は2に記載のフッ化カルシウム単結晶体育成用の原料フッ化カルシウムの精製方法。
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