JP2010285327A - フッ化物の熱処理方法、フッ化物単結晶の製造方法及びフッ化物単結晶 - Google Patents

フッ化物の熱処理方法、フッ化物単結晶の製造方法及びフッ化物単結晶 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外・真空紫外(UV/VUV)領域における透過率が十分高く且つ耐レーザー性や耐UV/VUV性に優れたフッ化物単結晶、それを実現可能とするフッ化物の熱処理方法及びフッ化物単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】被処理物であるフッ化物5を、脱酸素機能を有するスカベンジャーとともに、気密化可能な加熱炉100内に収容する収容ステップと、気密化した加熱炉100内から排気して当該加熱炉内100の圧力を1×10−1Pa以下にしてからスカベンジャーの昇温を開始する昇温開始ステップと、スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃低い温度になったときに加熱炉100内からの排気を停止する排気停止ステップと、スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃高い温度になったときに加熱炉100内からの排気を再開する排気再開ステップと、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、フッ化物の熱処理方法、フッ化物単結晶の製造方法及びフッ化物単結晶、並びに光学部材及び光学素子に関する。
紫外・真空紫外(UV/VUV)領域における技術の進歩は著しい。半導体の集積回路に応用される光リソグラフィ技術をはじめとして、KrF(248nm)やArF(193nm)エキシマレーザーを用いた周辺技術の開発、全固体化UV/VUVレーザーの開発などが活発になされている。
これらの分野では、UV/VUV領域で透過性の高い材料が要求される。フッ化カルシウムをはじめとするフッ化物単結晶は、レンズ・プリズム・ハーフミラー・窓材等の光学部品に用いられる高透過率の硝材として知られており、UV/VUV領域における全固体化レーザー用の波長変換素子の材料として検討されている。
フッ化物単結晶の製造方法としては、一般的にブリッジマン法が用いられるが、その際には熱処理を行う加熱炉内を高真空状態にしてフッ化物が酸素と反応するのを防止しながら結晶成長させる。また、複屈折などの単結晶の品質を向上させるために、適切な形状に切り出したフッ化物単結晶を更に熱処理する場合があるが、その際も加熱炉内を高真空状態とする。これらの結晶成長工程及び熱処理工程では、フッ化物原料又はフッ化物単結晶とともに、スカベンジャーと呼ばれるフッ素化材を加えることが行われている。スカベンジャーは、通常、結晶成長や熱処理に供されるフッ化物原料やフッ化物単結晶よりも低い融点を有しており、このようなスカベンジャーを融点以上に加熱することで、スカベンジャーによる脱酸素反応によりフッ化物原料又はフッ化物単結晶の酸化を防止するとともに不純物を除去することができる。
近年では、スカベンジャーを利用したフッ化物単結晶の製造方法において、結晶のUV/VUV領域における透過率を向上させる技術も数多く提案されている。例えば、下記特許文献1には、スカベンジャーの主要な成分である金属元素を被定量元素として定量分析し、当該金属元素のフッ化カルシウム原料やその前処理品における濃度を所定値以下に管理するフッ化カルシウム結晶製造方法が提案されている。また、下記特許文献2には、フッ化カルシウム原料にフッ化銅やフッ化銀などのスカベンジャーを添加し、スカベンジャーが結晶中に残存しないよう、フッ化カルシウムの融点以下且つスカベンジャーの沸点以上の温度で一定時間保持する工程を備えるフッ化カルシウム結晶の製造方法が提案されている。更に、下記特許文献3には、フッ化カルシウム単結晶の製造方法において、フッ化カルシウム粉体とフッ化鉛粉体との混合粉体をフッ化鉛の融点以上、沸点未満の温度範囲に保持することでフッ素化反応を促進する技術が提案されている。また、下記特許文献4には、スカベンジャーとして原料の融点より400℃以上低い融点を有するフッ化物を用いることにより、結晶中にスカベンジャーを残留させないようにして透過率の向上を図ったフッ化物結晶の製造方法が提案されている。
特開2000−119098号公報 特開2001−19586号公報 特開2002−154897号公報 特開平9−227293号公報
全固体化レーザー用波長変換素子などの用途に用いられるフッ化物単結晶は、用途に応じた波長における透過率が高いだけでなく、光源である短波長のレーザーを高出力で繰り返し照射されても透過率が低下しにくいことが要求される。しかし、上記特許文献に記載の方法で得られたフッ化物単結晶であっても、高水準の耐レーザー性や耐紫外・真空紫外(UV/VUV)性を有するものではなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、UV/VUV領域における透過率が十分高く且つ耐レーザー性や耐UV/VUV性に優れたフッ化物単結晶、それを実現可能とするフッ化物の熱処理方法及びフッ化物単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
フッ素亜鉛などの脱酸素機能を有するスカベンジャーは、加熱により気化し、フッ化物原料やフッ化物単結晶が加熱炉内の水分や酸素と反応することを防止すると考えられている。しかし、従来の場合、加熱炉内は高真空状態を維持できるよう加熱の間も排気され続けているため、気化したスカベンジャーは直ちに加熱炉外へと排出されてしまい、スカベンジャーの効果が十分得られていないのではと本発明者らは考えた。そして、この考えに基づき本発明者らは、フッ化物とスカベンジャーとの混合原料を加熱する過程で、スカベンジャーの融点を指標として所定の排気停止期間を設けることにより、紫外・真空紫外(UV/VUV)領域に光に対する透過損失が少なく且つ短波長のレーザーを高出力で長時間照射しても透過率の低下が起こりにくいフッ化物単結晶が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のフッ化物の熱処理方法は、被処理物であるフッ化物を、脱酸素機能を有するスカベンジャーとともに、気密化可能な加熱炉内に収容する収容ステップと、気密化した加熱炉内から排気して当該加熱炉内の圧力を1×10−1Pa以下にしてからスカベンジャーの昇温を開始する昇温開始ステップと、スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃低い温度になったときに加熱炉内からの排気を停止する排気停止ステップと、スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃高い温度になったときに加熱炉内からの排気を再開する排気再開ステップと、を有することを特徴とする。
なお、上記「脱酸素機能」とは、フッ化物原料やフッ化物単結晶に含まれている酸化物や酸素と反応し、気化しやすい酸化物を生成する機能を意味する。
本発明のフッ化物の熱処理方法を、ブリッジマン法などのフッ化物単結晶の製造に供されるフッ化物原料に適用することにより、UV/VUV領域における透過率が十分高く且つ耐レーザー性や耐UV/VUV性に優れたフッ化物単結晶を得ることが可能となる。
本発明のフッ化物の熱処理方法において、上記排気停止ステップにおける排気の停止から上記排気再開ステップにおける排気の再開までの間、加熱炉内の圧力を10Pa以下に維持することが好ましい。
また、本発明のフッ化物の熱処理方法において、上記昇温開始ステップにおけるスカベンジャーの昇温を、加熱炉内の圧力を1×10−2Pa以下にしてから開始することが好ましい。
更に、本発明のフッ化物の熱処理方法において、上記排気停止ステップにおける排気の停止から上記排気再開ステップにおける排気の再開までの時間が、10分以上120分以下であることが好ましい。
本発明のフッ化物の熱処理方法は、上記フッ化物としてフッ化物単結晶を用いることができる。
本発明はまた、上記本発明の熱処理方法によって処理されたフッ化物が含まれるフッ化物原料を溶融し冷却固化してフッ化物単結晶を得るフッ化物単結晶の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記本発明のフッ化物単結晶の製造方法により得られたフッ化物単結晶を提供する。
本発明はまた、上記本発明のフッ化物単結晶からなる光学部材を提供する。
本発明はまた、上記本発明の光学部材を備える光学素子を提供する。
本発明によれば、UV/VUV領域における透過率が十分高く且つ耐レーザー性や耐UV/VUV性に優れたフッ化物単結晶、それを実現可能とするフッ化物の熱処理方法及びフッ化物単結晶の製造方法を提供することができる。
本発明に係るフッ化物単結晶の製造方法に好適に用いられる単結晶育成炉の概略構造を示す模式図である。 本発明に係るフッ化物の熱処理方法に好適に用いられる熱処理装置の概略構造を示す模式図である。 フッ化物単結晶の透過率及び透過率低下を測定する方法を説明するための斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。なお、以下の説明は本発明の例示に過ぎず、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
まず、本発明のフッ化物単結晶の製造方法に用いられる単結晶育成炉について説明する。図1は、本発明に係るフッ化物単結晶の製造方法に好適に用いられる単結晶育成炉の概略構造を示す模式図である。図1に示す単結晶育成炉100は、SUS製のチャンバー2により水冷二重構造となっており、このチャンバー2内に、単結晶を育成するための容器7と、容器7を支持するシャフト8と、容器7の周囲に設けられたヒーター4と、ヒーター4の周囲に設けられた断熱材3とを備え、加熱炉として機能する。チャンバー2の側壁には、チャンバー1内の気体を排出するための排気弁9が設けられており、油回転ポンプや油拡散ポンプなどから構成される真空システムを用いて単結晶育成炉100内の気体を排気することができる。これにより、炉内を真空にすることができる。
シャフト8は、熱による変形を防ぐために水冷されている。このシャフト8の水冷は、容器内で凝固した材料から潜熱を効率よく奪うことにも寄与する。また、単結晶育成炉100内で容器7はシャフト8によって上下に、すなわち図1に示される移動方向軸Xに沿って上下に移動可能である。容器7の外側にあるヒーター4を用いた加熱により、単結晶育成炉100内には移動方向軸Xに沿って下部より上部の方が高温になる温度勾配が生じる。容器7としては、例えば、カーボン製又は金属製のルツボが用いられる。フッ化物単結晶を製造する際、容器7内にはフッ化物単結晶の原料であるフッ化物が含まれる混合原料5及び種結晶6が配置される。
本発明に係るフッ化物単結晶は、上記構成を有する単結晶育成炉100を用いたいわゆる垂直ブリッジマン法により製造することができる。
以下、本発明のフッ化物単結晶の製造方法について、フッ化カルシウム単結晶の製造例を挙げてより具体的に説明する。
フッ化カルシウム単結晶の製造を行う場合、まず、原料となるフッ化カルシウムと、脱酸素機能を有するスカベンジャーとを準備し、これらを混合して混合原料5を得る。フッ化カルシウム原料としては、単結晶中の不純物量を少なくするため、純度99%以上の材料を選択することが好ましい。また、フッ化カルシウム原料は、粉末、圧縮して押し固めたもの、焼結させたもの、結晶化したもの等の形態で用いることが可能である。
脱酸素機能を有するスカベンジャーとしては、フッ化物中に含まれる微量の酸化物をフッ素化するために加える添加物質が挙げられる。このようなスカベンジャーは、フッ化物の酸化を防止する脱酸素剤としても働く。より具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、SnF、SbF、GaF、BiFTiF、PbF、ZnF、ZrF及びHfFが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
上記スカベンジャーの形態としては、粉末、焼結体等様々あるが、フッ化物原料と混合して用いる場合、粒径が数μm〜数mmの粉末であることが好ましい。
上記スカベンジャーをフッ化カルシウム原料と混合し、本発明に係る熱処理方法を施すことにより、フッ化カルシウム単結晶の着色や内部透過率悪化の要因となる酸化物を除去することができ、さらには耐レーザー性や耐UV/VUV性に優れたフッ化カルシウム単結晶を得ることができる。しかし、スカベンジャー自身がフッ化物単結晶中に残留すると、フッ化物単結晶の着色や内部透過率の悪化が生じる。このため、スカベンジャーは、原料であるフッ化物に対して0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましい。これによって、酸化物を十分に除去しつつフッ化物単結晶中のスカベンジャーの残留量を十分に低減することができる。
なお、スカベンジャーはフッ化物原料と混合して用いることが、原料中に含まれている酸化物等と効率よく反応することができる点で好ましいが、スカベンジャーが気化する温度に達する場所であれば単結晶育成炉内の任意の位置に配置しても構わない。
(収容ステップ〜昇温開始ステップ)
次に、混合原料5を、容器7に入れ、単結晶育成炉100内のシャフト8の上に配置する(収容ステップ)。その後、チャンバー2を閉じ、油回転ポンプや油拡散ポンプなどから構成される真空システムを用いて単結晶育成炉100内のガスを排気して真空にする。このとき、単結晶育成炉内の水分や酸素の残存を抑制するとともに、加熱されたスカベンジャーが十分気化しやすくするため、炉内圧力を1×10−1Pa以下になるまで減圧する。単結晶育成炉100内の水分や酸素の残存を抑制して単結晶の特性に与える影響をより小さくする観点から、炉内圧力を1×10−2Pa以下にすることが好ましく、1×10−3Pa以下にすることがより好ましい。炉内の排気は、本発明に係る所定の排気停止ステップを除き、以降の工程でも継続して行われる。
フッ化カルシウム原料及びスカベンジャーを含む混合原料5が入れられた容器7は、当初は単結晶育成炉100内の低い位置に配置させておき、抵抗加熱ヒーター4を用いて単結晶育成炉100内を昇温していく。単結晶育成炉100内の低い位置では低温に、高い位置では高温になるようにヒーターが設置されているため、単結晶育成炉100内には上下方向に温度勾配が生じる。この低い位置で単結晶育成炉100内が、所定の温度に到達したら、容器を移動方向軸Xに沿って徐々に上昇させて高温領域に移動させる(昇温開始ステップ)。
(排気停止ステップ〜排気再開ステップ)
スカベンジャーを容器7内に配置した場合、容器7を上昇させることでスカベンジャーの温度が上昇し、ある場所でスカベンジャーの融点と等しくなる。その場所よりも20〜50℃スカベンジャーの温度が低くなる位置、すなわち容器7が低い位置で、炉内の排気を停止する(排気停止ステップ)。排気を停止した後、更に容器7の上昇を継続する。そして、スカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点よりも20〜50℃高くなる位置に容器7が達したら炉内の排気を再開する(排気再開ステップ)。
排気の停止から排気の再開までの間、炉内圧力は排気停止と同時に上昇していくが、炉内圧力が10Pa以上とならないようにすることが好ましい。その大きな理由として3つが挙げられる。第一に、気密化された炉であっても、排気停止と同時にわずかに外部からの気体の流入が生じる可能性があり、それに起因するフッ化物単結晶の酸化を防止するためであり、第二に、スカベンジャーによって除去された不純物が多く発生してフッ化カルシウムへの再付着を防止するためであり、第三に、炉の構成部材の消耗を防止するためである。
排気停止から排気再開までの時間については、上記と同様の理由で、120分以内とすることが好ましい。ただし、炉の大きさとスカベンジャーの量、種類にもよるが、排気停止から排気再開までの時間が10分未満の場合はスカベンジャーによる反応が十分に行われない可能性があるため、10分以上は排気停止を継続することが好ましい。
なお、本実施形態においては、スカベンジャーを容器7内に配置した場合を例示したが、移動方向軸Xへの移動ができない炉内の位置にスカベンジャーを置いた場合でも、スカベンジャーを昇温して上記と同様にスカベンジャーの融点を基準として排気の停止及び排気の再開を行ってもよい。ただし、この場合は、ヒーターの温度を制御するなどの別の方法によってスカベンジャーの温度を管理し、排気の停止及び再開を行う必要がある。
上記の工程を経て、混合原料5内のフッ化カルシウム原料は、本発明に係るフッ化物の熱処理方法が施される。続いて、この混合原料5をフッ化カルシウムの種結晶6が底部に収容された容器7内において高温領域で溶融させる溶融工程と、容器7を高温領域から低温領域へ徐々に移動することによって、溶融させたフッ化カルシウム原料を種結晶の先端から結晶成長させる結晶成長工程とが行われる。
溶融工程では、容器7を上昇させて容器7内の混合原料5が最上部から徐々に溶融し始めるようにし、さらに容器7を上昇させていき、容器7内の底部に予めセットされたフッ化カルシウムの種結晶6が固液界面となる位置に達したら、容器7の上昇を止めて容器内のフッ化カルシウム原料が均一となるまで数時間静置する。すなわち、容器7を単結晶育成炉100内の高温領域に数時間配置する。この時間は、2〜60時間が好ましい。また、上述の溶融工程では、容器7を種結晶6の最下部が溶融せず、かつ種結晶6の最上部が溶融するような位置に保持することが好ましい。これにより、溶融せずに残った種結晶6と同一の結晶軸方向で成長したフッ化物単結晶を得ることができる。また、このように、種結晶を容器の底部に設置してフッ化物を結晶成長させることで、所望の方位に結晶成長した単結晶を得ることができる。
なお、本実施形態おいては、フッ化カルシウム原料とスカベンジャーの反応後にフッ化カルシウム原料の溶融を開始しているが、フッ化カルシウム原料の溶融とスカベンジャーによる反応は同時に行っても構わない。
結晶成長工程では、容器7内でフッ化カルシウム原料が均一に溶融するまで静置した後に、容器7を移動方向軸Xに沿って徐々に降下させていき、単結晶育成炉100の下方の低温領域へ移動させる。この移動に伴って、容器7中の固液界面が上へと移動して、フッ化カルシウムの単結晶が成長していく。なお、単結晶を成長させる段階において、シャフト8を水冷することにより、容器内で凝固した単結晶から潜熱を効率よく奪うことができる。
そして、単結晶の成長が完了したら、炉内を徐々に降温する。炉内が室温に達したら、装置内に不活性ガスなどを導入して大気圧まで復圧し、容器を取り出して、フッ化カルシウム単結晶を得る。
本発明のフッ化物単結晶の製造方法は、上述したフッ化カルシウム以外にも、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化バリウムマグネシウムなどのフッ化物単結晶の製造に適用可能である。
本発明のフッ化物の熱処理方法においてスカベンジャーを複数用いる場合は、各々の融点を基準にして、排気停止ステップ及び排気再開ステップを複数回行うことができる。例えば、融点が600℃であるスカベンジャーAと、融点が800℃であるスカベンジャーBとを併用した場合、これらスカベンジャーの昇温開始後、下記(1)〜(4)のステップを経て、フッ化物の熱処理が行われる。
(1)スカベンジャーの温度が550〜580℃(スカベンジャーAの融点より20〜50℃低い温度)となったときに排気を停止する第1の排気停止ステップ。
(2)スカベンジャーの温度が620〜650℃(スカベンジャーAの融点より20〜50℃高い温度)で排気を再開する第1の排気再開ステップ。
(3)スカベンジャーの温度が750〜780℃(スカベンジャーBの融点より20〜50℃低い温度)となったときに排気を停止する第2の排気停止ステップ。
(4)スカベンジャーの温度が820〜850℃(スカベンジャーBの融点より20〜50℃高い温度)で排気を再開する第2の排気再開ステップ。
本発明のフッ化物の熱処理方法が実施される加熱炉は、気密化可能で排気機構を有している加熱炉であれば上述した単結晶育成炉に限定されず、例えば、図2のような温度勾配を有しない熱処理装置110でも構わない。図2に示す熱処理装置110は、SUS製のチャンバー2により水冷二重構造となっており、このチャンバー2内に、フッ化物とスカベンジャーとを反応させるための容器10と、容器10の周囲に設けられたヒーター4と、ヒーター4の周囲に設けられた断熱材3とを備える。
本発明のフッ化物の熱処理方法によれば、上記の熱処理装置を用いて、フッ化物単結晶の光学特性改善を行うことができる。この場合、容器10内に、フッ化物単結晶と上述したスカベンジャーとの混合原料11を収容し、気密化した熱処理装置内から排気して装置内の圧力を1×10−1Pa以下にしてからスカベンジャーの昇温を開始する昇温開始ステップと、スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃低い温度になったときに装置内からの排気を停止する排気停止ステップと、スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃高い温度になったときに装置内からの排気を再開する排気再開ステップとを行う。
本発明によれば、上述したフッ化物単結晶の製造方法又はフッ化物の熱処理方法により、UV/VUV領域における透過率が十分高く且つ耐レーザー性や耐UV/VUV性に優れたフッ化物単結晶を得ることができる。また、この本発明に係るフッ化物単結晶は、光学機器や光リソグラフィ用の光学系、波長変換素子等の光学部品、紫外・真空紫外領域での用途に好適である。
なお、本発明のフッ化物の熱処理方法によって上記の効果が得られる理由を本発明者らは以下のとおり考えている。スカベンジャーを用いた従来のフッ化物の熱処理では、炉内からの排気が継続されているため、スカベンジャーが揮発する温度になるとスカベンジャーだけが炉内から排出されやすく、水分は炉壁に吸着したままで十分排出されていないと思われる。この排出されなかった水分が、その後の昇温で炉壁から離れてフッ化物を劣化させるために、高水準の耐レーザー性や耐UV/VUV性を達成できなかったものと本発明者らは考えている。これに対して、本発明のフッ化物の熱処理方法では、スカベンジャーの融点を基準に排気を停止することにより、スカベンジャーを炉内に留めて水分と十分に反応させることができる。また、その後、スカベンジャーの融点を基準に排気を再開することにより、スカベンジャーと水分との反応により発生した副生成物(例えば、スカベンジャーとしてZnFを用いた場合には、フッ化水素、一酸化炭素、亜鉛など)を炉外に排出することができ、副生成物のフッ化物への蓄積を十分防止することができる。これらの作用によりフッ化物の高純度化が可能となり、このフッ化物原料を結晶化することで高水準の耐レーザー性や耐UV/VUV性を有するフッ化物単結晶が得られたものと本発明者らは考える。
なお、フッ化物単結晶の透過率及び耐レーザー性については下記の方法により評価することができる。また、係る方法によりフッ化物単結晶の選別を行うこともできる。
図3の(A)、(B)及び(C)は、フッ化物単結晶の透過率及び透過率低下を測定する方法を説明するための斜視図である。
まず、フッ化物単結晶の測定用単結晶サンプルを作成する。測定用単結晶サンプルは、単結晶を厚さ5mmの板状又は円盤状に加工し、さらに表面を光学研磨して2つの光学研磨面が互いに平行になるよう加工して作成される。
次に、測定用単結晶サンプルの初期透過率を測定する。なお、透過率は、単結晶の用途に応じて、所定の波長における透過率が測定される。例えば、半導体リソグラフィ用のフッ化カルシウムの場合、193nmにおける透過率を測定することが好ましい。透過率の測定は、図3(A)に示すように、対向して配置された測定装置光源17と検出器18との間に測定用サンプル15を光学研磨面に対し垂直方向に透過率を測定できるよう配置して行われる。測定装置光源から照射された光は、測定用単結晶サンプル15の光学研磨面16の透過率測定領域Aを通過し、検出器18に到達する。ここで測定された測定用単結晶サンプルの初期透過率をT1とする。
次いで、測定用単結晶サンプルにレーザー照射を行う。レーザー照射は、図3(B)に示すように、測定用単結晶サンプル15の光学研磨面16に対し垂直方向にレーザーを照射できる位置に配置されたレーザー光源19によって行われる。ここで、レーザー光源としては、耐レーザー性の評価対象である波長のレーザーを照射できるものを適宜選択すればよい。例えば、半導体リソグラフィ用のフッ化カルシウムの場合、選別に適したレーザーはArFエキシマレーザーである。この場合、エキシマレーザーのエネルギー密度は5〜100(mJ/cm・パルス)の範囲とし、照射パルス数は10パルス以上とするのが好ましい。レーザー照射は、光学研磨面16に対し垂直方向に且つレーザー照射面20が透過率測定領域Aを全て含むように行われ、測定用単結晶サンプルを透過したレーザーは衝立21によって遮断される。
次に、図3(C)に示すように、レーザー照射後の測定用単結晶サンプルについて、図3(A)に示す初期透過率の測定と同様にして、透過率を測定する。ここで測定されたレーザー照射後の測定用単結晶サンプルの透過率をT2とする。
上記で得られた透過率T1及びT2を下記式(1)に代入して、所定の波長における透過率低下の割合(%)を算出することができる。この透過率低下の割合が小さいほど、耐レーザー性、耐UV/VUV性が良好であることを示す。
透過率低下の割合(%)=[(T1−T2)/T1]×100 …(1)
フッ化物単結晶は、式(1)により算出されたレーザーを照射したときの透過率低下が小さいほど好ましく、耐レーザー性、耐UV/VUV性が良好なものとなる。表1に、フッ化物単結晶の用途、透過率測定の波長、レーザー照射条件を例示する。
Figure 2010285327
本発明のフッ化物単結晶の製造方法により得られる、UV/VUVにおける透過率並びに耐レーザー性及び耐UV/VUV性に優れたフッ化物単結晶は、表1中に示すようなレンズや窓材、波長変換素子などの光学部材の材料として好適に使用できる。
本発明の光学部材について更に説明する。本発明の光学部材は、上述した本発明のフッ化物単結晶の製造方法により得られたフッ化物結晶からなるものである。
光学部材としては、例えば、半導体リソグラフィ用レンズ、レーザー用窓材、カメラ用レンズ等が挙げられる。本発明の光学部材は、UV/VUVにおける透過率並びに耐レーザー性及び耐UV/VUV性に優れた本発明に係るフッ化物単結晶からなるものであることにより、上記の用途として用いた場合に充分な光学特性を長期に亘って安定して得ることができる。
本発明の光学部材の形状は、上記した用途で用いられている従来の光学部材の形状を特に制限なく適用できる。例えば、一方の面が平面であり、他方の面が凸曲面又は凹曲面であるものや、両方の面が凸曲面又は凹曲面であるものなどが挙げられる。また、曲面は球面であっても非球面であってもよい。
本発明の光学部材は、本発明に係るフッ化物結晶を、従来公知の方法で所定の形状に加工し、研削、研磨等を行うことにより得ることができる。
また、本発明は、本発明の光学部材を備える光学素子を提供することができる。光学素子としては、例えば、UV/VUV(紫外/真空紫外)領域のレーザー装置におけるレンズ、プリズム、ハーフミラー、窓材等、UV/VUV領域における全固体化レーザー用の波長変換素子などが挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(単結晶A)
フッ化カルシウム単結晶を得るための原料として、フッ化カルシウム粉末(Grade1S、ステラケミファ製)を500g秤量した。これに、スカベンジャーとしてZnF粉末(GradeB、ステラケミファ製、融点872℃)を1g(フッ化カルシウム粉末の重量に対して0.2質量%)添加したものを、プラスチック製の容器に入れ、ロールミルを用いて回転数120rpmで2時間以上混合して混合粉末を得た。
次いで、上記の混合粉末をカーボン容器に入れ、このカーボン容器を図1に示すものと同様の単結晶育成炉内の下方に配置した。油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1550℃まで加熱し、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させた。
カーボン容器中のスカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点(872℃)よりも25℃温度が低い温度(847℃)となる位置にカーボン容器が達した時点で排気を停止した。その後、カーボン容器を50mm/時の速度で高温域へと上昇させ、スカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点よりも25℃高い温度(897℃)となる位置にカーボン容器が達した時点で排気を再開した。このときの炉内の圧力は1Paであった。排気再開後、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させて、混合粉末を融解した。なお、スカベンジャーの温度とカーボン容器の位置との関係を事前に計測し、この相関データに基づいて上記の操作を行った。
混合粉末の融解から10時間後、カーボン容器の降下を開始した。低温域までカーボン容器を2mm/時の速度で降下することで単結晶を成長させた。単結晶育成終了後、ヒーターを−30℃/時で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、フッ化カルシウム単結晶Aを得た。
(単結晶B)
単結晶Aの作製と同様にして、フッ化カルシウム粉末及びZnF粉末の混合粉末を調製し、この混合粉末を入れたカーボン容器を単結晶育成炉内の下方に配置した。
次に、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1550℃まで加熱し、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させて混合粉末を融解した。
混合粉末の融解から10時間後、カーボン容器の降下を開始した。低温域までカーボン容器を2mm/時の速度で降下することで単結晶を成長させた。単結晶育成終了後、ヒーターを−30℃/時で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、フッ化カルシウム単結晶Bを得た。
(単結晶C)
単結晶Aの作製と同様にして、フッ化カルシウム粉末及びZnF粉末の混合粉末を調製し、この混合粉末を入れたカーボン容器を単結晶育成炉内の下方に配置した。
次に、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1550℃まで加熱し、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させた。
カーボン容器中のスカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点(872℃)よりも25℃温度が低い温度(847℃)となる位置にカーボン容器が達した時点で排気を停止した。その後、排気を停止したまま、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させて、混合粉末を融解した。なお、スカベンジャーの温度とカーボン容器の位置との関係を事前に計測し、この相関データに基づいて上記の操作を行った。
混合粉末の融解から10時間後、排気を再開してからカーボン容器の降下を開始した。低温域までカーボン容器を2mm/時の速度で降下することで単結晶を成長させた。単結晶育成終了後、ヒーターを−30℃/時で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、フッ化カルシウム単結晶Cを得た。
(単結晶D)
熱処理用のフッ化カルシウム単結晶として上述の単結晶Aを用意した。この単結晶Aと、スカベンジャーとしてZnF粉末(GradeB、ステラケミファ製)とを、単結晶A100質量部に対してZnF粉末0.2質量部の割合でカーボン容器に入れ、この容器を図2に示すものと同様の単結晶熱処理炉内に配置した。
次に、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で加熱し、スカベンジャーの配置場所の温度がスカベンジャーの融点(872℃)よりも20℃低い温度(852℃)に達した時点で排気を停止した。
その後もヒーターを60℃/時で加熱し、スカベンジャーの配置場所の温度がスカベンジャーの融点(872℃)よりも20℃高い温度(892℃)に達した時点で排気を再開した。このときの炉内の圧力は1Paであった。なお、スカベンジャーの温度とカーボン容器の位置との関係を事前に計測し、この相関データに基づいて上記の操作を行った。
その後、ヒーター温度を1050℃まで加熱した後、この温度を24時間保持した。その後、ヒーターを−5℃/時の速度で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、フッ化カルシウム単結晶Dを得た。
(単結晶E)
熱処理用のフッ化カルシウム単結晶として上述の単結晶Aを用意した。この単結晶Aと、スカベンジャーとしてZnF粉末(GradeB、ステラケミファ製)とを、単結晶A100質量部に対してZnF粉末0.2質量部の割合でカーボン容器に入れ、この容器を図2に示すものと同様の単結晶熱処理炉内に配置した。
次に、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1050℃まで加熱した後、この温度を24時間保持した。その後、ヒーターを−5℃/時の速度で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、フッ化カルシウム単結晶Eを得た。
(単結晶F)
MgF単結晶を得るための原料として、MgF粉末(Grade1、ステラケミファ製)を500g秤量した。これに、スカベンジャーとしてBiF粉末(アルドリッチ製、純度99.99%、融点649℃)を1g(MgF粉末の重量に対して0.2質量%)添加したものを、プラスチック製の容器に入れ、ロールミルを用いて回転数120rpmで2時間以上混合して混合粉末を得た。
次いで、上記の混合粉末をカーボン容器に入れ、このカーボン容器を図1に示すものと同様の単結晶育成炉内の下方に配置した。油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1400℃まで加熱し、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させた。
カーボン容器中のスカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点(649℃)よりも25℃温度が低い温度(624℃)となる位置にカーボン容器が達した時点で排気を停止した。その後、カーボン容器を50mm/時の速度で高温域へと上昇させ、スカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点よりも25℃高い温度(674℃)となる位置にカーボン容器が達した時点で排気を再開した。このときの炉内の圧力は1Paであった。排気再開後、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させて、混合粉末を融解した。なお、スカベンジャーの温度とカーボン容器の位置との関係を事前に計測し、この相関データに基づいて上記の操作を行った。
混合粉末の融解から10時間後、カーボン容器の降下を開始した。低温域までカーボン容器を2mm/時の速度で降下することで単結晶を成長させた。単結晶育成終了後、ヒーターを−30℃/時で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、MgF単結晶Fを得た。
(単結晶G)
単結晶Fの作製と同様にして、MgF粉末及びBiF粉末の混合粉末を調製し、この混合粉末を入れたカーボン容器を単結晶育成炉内の下方に配置した。
次に、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1400℃まで加熱し、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させて混合粉末を融解した。
混合粉末の融解から10時間後、カーボン容器の降下を開始した。低温域までカーボン容器を2mm/時の速度で降下することで単結晶を成長させた。単結晶育成終了後、ヒーターを−30℃/時で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、MgF単結晶Gを得た。
(単結晶H)
BaF単結晶を得るための原料として、BaF粉末(Grade1、ステラケミファ製)を500g秤量した。これに、スカベンジャーとしてBiF粉末(アルドリッチ製、純度99.99%、融点649℃)を1g(BaF粉末の重量に対して0.2質量%)添加したものを、プラスチック製の容器に入れ、ロールミルを用いて回転数120rpmで2時間以上混合して混合粉末を得た。
次いで、上記の混合粉末をカーボン容器に入れ、このカーボン容器を図1に示すものと同様の単結晶育成炉内の下方に配置した。油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1480℃まで加熱し、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させた。
カーボン容器中のスカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点(649℃)よりも30℃温度が低い温度(619℃)となる位置にカーボン容器が達した時点で排気を停止した。その後、カーボン容器を50mm/時の速度で高温域へと上昇させ、スカベンジャーの温度がスカベンジャーの融点よりも30℃高い温度(679℃)となる位置にカーボン容器が達した時点で排気を再開した。このときの炉内の圧力は1Paであった。排気再開後、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させて、混合粉末を融解した。なお、スカベンジャーの温度とカーボン容器の位置との関係を事前に計測し、この相関データに基づいて上記の操作を行った。
混合粉末の融解から10時間後、カーボン容器の降下を開始した。低温域までカーボン容器を2mm/時の速度で降下することで単結晶を成長させた。単結晶育成終了後、ヒーターを−30℃/時で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、BaF単結晶Hを得た。
(単結晶I)
単結晶Hの作製と同様にして、BaF粉末及びBiF粉末の混合粉末を調製し、この混合粉末を入れたカーボン容器を単結晶育成炉内の下方に配置した。
次に、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空システムにより炉内を10−4Pa以下の圧力まで減圧した後、ヒーターを60℃/時で1480℃まで加熱し、カーボン容器を10mm/時の速度で高温域へ上昇させて混合粉末を融解した。
混合粉末の融解から10時間後、カーボン容器の降下を開始した。低温域までカーボン容器を2mm/時の速度で降下することで単結晶を成長させた。単結晶育成終了後、ヒーターを−30℃/時で冷却し、炉内を徐冷した。冷却終了後、炉内にNガスを導入して、BaF単結晶Iを得た。
<透過率及び透過率低下の測定>
異なる結晶種、育成・熱処理条件で作製された上記フッ化物単結晶A〜Iについて、図3に示す方法と同様にして、透過率及び透過率低下を測定した。
(測定用単結晶サンプルの作成)
まず、平行となる2面の距離(図3(A)におけるT)が5mmとなる円板状に加工し、その2面を光学研磨することで、単結晶A〜Iからそれぞれ測定用単結晶サンプルA〜Iを作成した。
得られた測定用単結晶サンプルA〜Iについて、まず、分光光度計(V−570、Jasco社製)を用いて波長800nm〜190nmにおける初期透過率T1をそれぞれ測定した。
次に、測定用単結晶サンプルA〜Gに対して、レーザー装置(LPX−220、ラムダフィジックス社製)を用い、上記の初期透過率の測定面が全てレーザー照射域に含まれるように、波長193nmのArFレーザーを、50mJ/cmの強さで100000パルス照射した。また、測定用単結晶サンプルH及びIに対しては、ArFレーザーの強度を30mJ/cmへ変更した以外は上記と同様にしてレーザー照射を行った。
レーザー照射終了後10分経過した時点で、初期透過率の測定と同様にして、レーザー照射後の透過率T2をそれぞれ測定した。
上記の測定によって得られた透過率T1及びT2から下記式(1)により所定の波長における透過率低下の割合(%)を求めた。
[(T1−T2)/T1]×100 …(1)
ArFエキシマレーザーの波長である193nm、及び、レーザー照射により透過率低下が生じやすい375nmにおける透過率及び透過率低下の割合(%)を表2に示す。
Figure 2010285327

表2に示されるように、単結晶A、D、F及びHは、波長375nmにおける透過率低下の割合が0.1〜0.3%であり、透過率低下の割合が1.4〜1.9%である単結晶B、C、E、G及びHに比べて耐レーザー性に優れていることが確認された。
以上のとおり、本発明のフッ化物単結晶の製造方法によれば、UV/VUV領域における透過率が十分高く且つ耐レーザー性や耐UV/VUV性に優れたフッ化物単結晶を得ることができる。
2…チャンバー、3…断熱材、4…ヒーター、5…混合原料、6…種結晶、7…容器、8…シャフト、9…排気弁、10…容器、11…混合原料、15…測定用単結晶サンプル、16…光学研磨面、17…測定装置光源、18…検出器、19…レーザー光源、20…レーザー照射面、21…衝立、100…結晶育成炉、110…熱処理装置。

Claims (9)

  1. フッ化物の熱処理方法であって、
    被処理物であるフッ化物を、脱酸素機能を有するスカベンジャーとともに、気密化可能な加熱炉内に収容する収容ステップと、
    気密化した前記加熱炉内から排気して当該加熱炉内の圧力を1×10−1Pa以下にしてから前記スカベンジャーの昇温を開始する昇温開始ステップと、
    前記スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃低い温度になったときに前記加熱炉内からの排気を停止する排気停止ステップと、
    前記スカベンジャーの温度が当該スカベンジャーの融点よりも20℃〜50℃高い温度になったときに前記加熱炉内からの排気を再開する排気再開ステップと、
    を有する、フッ化物の熱処理方法。
  2. 前記排気停止ステップにおける排気の停止から前記排気再開ステップにおける排気の再開までの間、前記加熱炉内の圧力を10Pa以下に維持する、請求項1に記載のフッ化物の熱処理方法。
  3. 前記昇温開始ステップにおける前記スカベンジャーの昇温を、前記加熱炉内の圧力を1×10−2Pa以下にしてから開始する、請求項1又は2に記載のフッ化物の熱処理方法。
  4. 前記排気停止ステップにおける排気の停止から前記排気再開ステップにおける排気の再開までの時間が、10分以上120分以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ化物の熱処理方法。
  5. 前記フッ化物がフッ化物単結晶である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフッ化物の熱処理方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱処理方法によって処理された前記フッ化物が含まれるフッ化物原料を溶融し冷却固化してフッ化物単結晶を得る、フッ化物単結晶の製造方法。
  7. 請求項6に記載の製造方法により得られた、フッ化物単結晶。
  8. 請求項7に記載のフッ化物単結晶からなる、光学部材。
  9. 請求項8に記載の光学部材を備える、光学素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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