JP2005330145A - フッ化物結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エキシマレーザに対する透過率が高く且つ高出力レーザに対する対する耐久性の優れたフッ化物結晶を作るための、生産性が高く製造コストを押さえた製造方法を提供する。また、結晶表面に生じる劣化層を極力抑えて、良品部分をできるだけ減らさずにフッ化物結晶をアニールする方法を提供する。
【解決手段】 フッ化物原料(結晶)を収容したルツボ内に、フッ化物原料の融点以下の温度においてCOガスを導入することにより、フッ化物の原料が融解する前に、スカベンジ反応によって生成した有害な物質(ZnO)をCOガスによって速やかに還元して、ルツボ外に除去しやすい物質に変える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、真空紫外域から遠赤外域までの広い波長範囲から選ばれた所定の波長の光のために用いられる各種光学素子、レンズ、窓材、プリズム等に好適であるフッ化物結晶を製造するための製造方法に係る。特に、エキシマレーザー用の光学部品(又は光学素子)として好適なフッ化物結晶を製造するための製造方法に関する。
エキシマレーザーは、紫外域で発振する唯一の高出力レーザーとして注目されており、電子産業や化学産業やエネルギー産業において応用が期待されている。具体的には金属、樹脂、ガラス、セラミックス、半導体等の加工や化学反応等に利用されている。エキシマレーザー光の中でもArFレーザーやFレーザーはそれぞれ波長が193nmの光、又は、157nmといった真空紫外域と呼ばれる波長域の光であり、光学系にはこうした波長域の光の透過率が高いものを用いなければならない。例えば、フッ化カルシウム(蛍石)、フッ化バリウム、フッ化マグネシウムなどの結晶が挙げられる。
ここで、従来のフッ化物結晶の製造方法をフッ化カルシウムを例にとって説明する。
赤外から可視域で使用される結晶の場合は、原料として天然に産する安価な蛍石原石を使用する。紫外あるいは真空紫外域で使用する結晶の場合は、天然の蛍石原料を用いると、不純物が多いために紫外あるいは真空紫外域で吸収が生じてしまう。このため、化学合成で作られた高純度の粉体原料を使用する。
この原料の嵩密度を上げ、原料中の不純物を除去するために、原料を溶融して精製する工程が必要となる。この精製工程においては、原料が水分等と反応して生成した酸化物や原料中の不純物を除去するために、金属のフッ化物であるスカベンジャーを原料に加えなければならない。例えば、フッ化物結晶がフッ化カルシウム、スカベンジャーが固体のZnFの場合、原料が水分と反応して生成したCaOはZnFと反応してCaFとなり、スカベンジャーはZnOとなって原料溶融時に蒸発する。
精製工程によって作られたフッ化物結晶のブロックを2次原料として最終的な結晶を製造した場合、透過特性等の光学性能の非常に優れたフッ化物の単結晶が得られることが期待される。それには精製工程によって作られたフッ化物結晶のブロックを溶融した後、0.1〜5mm/H程度の速度で成長用ルツボを引き下げることにより、ルツボの下部から徐々に結晶成長させてフッ化カルシウム単結晶を得る(単結晶成長工程)。
この単結晶成長工程の場合でも、精製工程で作られたフッ化物結晶の表面には水分が付着しており、結晶と反応してCaOを生成してしまう。このため、精製工程と同様にスカベンジャー(ZnFなど)を添加することが行なわれている。スカベンジャーの作用は精製工程と同様で、原料が水分と反応して生成したCaOはZnFと反応してCaFとなり、スカベンジャーはZnOとなって原料溶融時に蒸発する。
以上のスカベンジャーの作用を化学式を用いて説明すると、フッ化カルシウムは水分の存在により酸化されて酸化カルシウムが生成する(化学式1)。次に、酸化カルシウムはフッ化亜鉛スカベンジャーによって、再びフッ化カルシウムにフッ化される(化学式2)。生成した酸化亜鉛は、フッ化カルシウムの融解中に、ルツボのカーボンに接触することによって還元されて、COガス(もしくはCO)を発生する(化学式3)。こうして、フッ化カルシウムの酸化が防止される。以上が、スカベンジ反応(スカベンジャーによる不純物除去反応)として知られているものである。
(化1) CaF+HO→CaO+2HF
(化2) CaO+ZnF→CaF+ZnO
(化3) ZnO+C→Zn+CO(もしくはCO
特開平9−315893号公報 特開2000−191322号公報
しかし、製造しようとする結晶が大口径になると、原料融液とルツボとの接触機会が減るために、スカベンジャーから生成したZnOが、ガス状のZnとCOに還元されるのに多大の時間を有してしまうという欠点があった。このため、原料溶融時間が足りないと、残留する亜鉛や酸化に基づく吸収が紫外あるいは真空紫外域に生じてしまうという問題があった。
更に、アニール工程においては、結晶を融解させるわけではないため、結晶表面にスカベンジャーから生成したZnOが付着すると、ZnOはアニール工程を通して結晶表面に付着したままになってしまう。このため、亜鉛や酸素成分が徐々にフッ化物結晶の内部に向かって拡散して表面に劣化層を生じてしまい、得られる結晶の良品部分が小さくなってしまうという問題があった。
本発明は、かかる上記従来の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、特に短波長で高出力の光を長期間繰り返し照射した場合であっても、透過率特性が劣化し難いフッ化物結晶を製造するための、フッ化物結晶の製造方法を提供することにある。
また、別の目的は、製造しようとするフッ化物結晶が大口径の結晶であっても、比較的短時間で製造することを可能にして、高い生産性を有するフッ化物結晶の製造方法を提供することにある。
また、別の目的は、フッ化物結晶をアニールしても結晶表面に生じる劣化層を極力抑えて、良品部分をできるだけ減らさずにアニールする方法を提供することにある。
本発明のフッ化物結晶の製造方法では、フッ化物の原料の融点以下の温度において、フッ化物原料(結晶)を収容したルツボ内にCOガスを導入することにより、フッ化物の原料が融解する前に、スカベンジ反応によって生成した有害な物質(ZnO)をCOガスによって速やかに還元して、ルツボ外に除去しやすい物質に変えることができることがわかった。このため、原料を長時間溶融しなくとも、原料が融解する前の段階でZnOを速やかに結晶から除去することができることになる。これは、次の化学式4に基づく反応と考えられる。
(化4) ZnO+CO→Zn+CO
上記目的を達成するための本発明のフッ化物結晶の製造方法としては、フッ化物の精製、フッ化物単結晶の成長、あるいはまたフッ化物結晶のアニールのいずれをも含めることができる。
また、本発明のフッ化物結晶の製造方法は、フッ化物の原料及びスカベンジャーを収容するルツボを加熱して前記フッ化物の原料を加熱する工程を有する。
また、本発明のフッ化物結晶の製造方法は、前記フッ化物の原料が融解する前に、COガスをルツボ内に導入する工程を有する。
以上、説明したように本発明の実施形態によれば、フッ化物結晶の製造工程(精製、単結晶成長、アニール)において、フッ化物原料の融点以下の温度においてCOガスをルツボ内に導入することによって、フッ化物原料が融解する前に、スカベンジ反応で生成したZnOを還元して取り除くことができる。この結果、大口径のフッ化物結晶であっても融解時間を短くすることができ、高い生産性を有するフッ化物結晶の製造方法を提供できるようになる。また、フッ化物結晶をアニールしても結晶表面に生じる劣化層を極力抑えることができ、結晶の良品部分を減らさずにアニールすることが可能になる。
図1に本発明の実施形態の一つについて、フッ化物結晶の製造方法(精製、単結晶成長、アニール)のフローチャートを示す。
精製、単結晶成長、アニールのいずれの工程においても、初めにスカベンジャーを添加して次に加熱昇温する。また、本発明のフッ化物結晶の製造方法では、フッ化物原料の融点以下の温度でCOガスをルツボ内に導入するので、COガス導入は、精製、単結晶成長、アニールのいずれにも共通する内容となる。以下に、実施の形態を詳しく説明する。
≪スカベンジャー添加(精製・単結晶成長・アニールに共通)≫
フッ化物原料にスカベンジャーを添加して十分に混合する。スカベンジャーの添加量は、粉末原料の精製の場合は、原料の0.02mol%以上、2mol%以下とする。単結晶成長やアニールの場合も、精製して得られた2次原料や、成長した単結晶にそれぞれスカベンジャーを添加するが、スカベンジャーの添加量は、原料の0.002mol%以上、2mol%以下とする。添加量が精製工程のときより少なめにするのは、単結晶成長やアニールで使用する原料はブロック状の結晶であるため、精製工程で使用する粉末原料に比べて付着する水分量が少なめであることによる。
フッ化物の原料は、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム等を使用する。スカベンジャーとして用いられるフッ化物は、フッ化亜鉛、フッ化マンガン、フッ化鉛、フッ化ビスマス、フッ化ナトリウム、フッ化リチウムなどが望ましい。
≪加熱工程(精製・単結晶成長・アニールに共通)≫
スカベンジャーを添加・混合したフッ化物原料を、図2に示す結晶製造炉(以下、結晶炉と呼ぶ)のルツボの中に入れる。結晶炉は、精製、単結晶成長、アニールのいずれにも使用することができる。
図2において、1は結晶炉のチャンバーであり、真空排気系に接続されている。真空排気系は油拡散ポンプ(以下、拡散ポンプと称する)2と油回転ポンプ(以下、ロータリーポンプと称する)3との一般的な組み合わせで構成されている。4は断熱材、5はヒーター、6は原料を収容する室としてのルツボ、7はフッ化物原料である。図2では、ルツボは3段重ねの構成になっているが、重ねる段数に制限はない。各段のルツボには、ガスが出入りするためのガス穴(開口部)8が設けられている。熱処理の温度は、ルツボの最下部に測温点を設けた熱電対9により測温制御される。チャンバー1には、ガス導入管10が取り付けられていて、その先にCOガス供給用のガスボンベ11が設置されている。
真空排気系について言えば、ロータリーポンプ3の後ろ側には、有害ガスの除害装置12が設けられていて、排気ガスにCOガスが含有されていても、その除害ができるようになっている。また、必要に応じて、Nガスボンベ13からNガスを供給して、有害ガスを希釈してから除害できるようになっている。
まず真空排気を開始して、所定の真空度に達した後でヒーターに通電してルツボを加熱する。真空度は真空計14によりモニターされる。このときの真空排気は、通常の真空装置と同様に、初めにバルブ15を開いてロータリーポンプにより粗引きした後、真空度が1〜10Paになった時点で拡散ポンプによる本引きに切り替える。それには、バルブ15を閉じた後、拡散ポンプのフォアバルブ16を開いて、次にメインバルブ17を開く。ここではまだCOガスを導入しないので、希釈用のNガス供給用のバルブ18は閉じていて、真空排気ガスはそのまま除害装置を通って外部に排気される。
次に、フッ化物原料やルツボに吸着する水分はおよそ100〜300℃の間に脱水されるため、300℃かそれ以下の温度までは加熱の速度をゆるやかにするか、100〜300℃の間の適当な温度で長時間保持するようにする。
次に、フッ化物原料が融解するまでの加熱昇温の間に、チャンバー内にCOガスを導入する。それには、所定の温度に到達したらその温度に保持しておき、真空排気系に通じるバルブ17を閉じて、次に、バルブ19を開いてCOガスをチャンバーの中に導入した後、再びバルブ19を閉じる。COガス供給用ボンベ11は、本発明ではCOを10%含有するArガス(10%CO−Arガス)を使用した。この混合比であれば不燃性であるが、COガスの混合比が大きくなり過ぎると可燃性となり取扱いが大変になるので注意する。チャンバー内に導入したCOガスは、ルツボに設けたガス穴8を通してルツボの内部に拡散して導入されることになる。COガスによって、スカベンジ反応で原料表面に生成したZnOが還元されてZnガスとCOが生成する(化学式4)。
COガスを導入した後、一定時間経過したら再びチャンバーの真空排気を行なう。これにより、ルツボ内の雰囲気も再び真空排気される。COガス導入と真空排気とを適当な回数繰り返すことで、還元生成物(ZnガスとCO)をルツボ外に除去することが促進され、この結果、COガスによるZnOの還元が十分に進行することになる。
これは、ル・シャトリエの法則として知られている化学平衡の原理により説明することができる。ル・シャトリエの法則によれば、ある化学反応が平衡状態にあるとき、状態を変化させようとする外からの操作に対して、変化を緩和するように化学反応が進むことになる。実際の例で説明すると、初めに、COガスが導入されてチャンバーが閉じられると、この間に化学式4の還元反応によりZnガスとCOが生成して平衡になる。平衡に達するとそれ以上はZnOの還元が進まない。次に、真空排気して還元生成物を脱ガスすると、平衡時に比べて生成物が極端に少ない状態になってしまう。ここで、再びCOガスを導入すると、先ほどの平衡状態を再現するために生成物を補充しようとして、COガスによるZnOの還元が進むことになる。
COガス導入の温度範囲の大まかな目安であるが、およそ600℃〜原料融解温度の範囲で、効果が大きかったのは(例えば、COガス導入回数が少なくて済んだのは)800〜1300℃の範囲である。400℃以下ではほとんど効果が無かった。
≪融解工程(精製・単結晶成長)≫
精製と単結晶成長については、COガスを最後に真空排気した後、原料が完全に融解するまで加熱する。従来の製造方法では、フッ化カルシウムを長時間溶融状態に保持することで、化学式3に示すZnOの還元反応が促進されていた。すなわち、ZnOはルツボのカーボンと反応して、ガス状のZnとCO(もしくはCO)に還元される。これらは、いずれも原料溶融時に蒸発するため、融液外に除去しやすい物質である。しかし、本発明の製造方法では、加熱昇温中にCOガスによってZnOを還元除去しているので、溶融状態に保持する目的は、融液の温度を安定させるためと、融液中に取り込まれた泡を浮上して取り除くために絞られる。このため、融解時間が比較的短くて済む。
≪固化もしくは単結晶成長工程(精製・単結晶成長)≫
次に、精製の場合は、融解したフッ化物を冷却して固化させる。あるいは単結晶成長の場合は、ルツボを徐々に引き下げて結晶成長させる。ルツボの引き下げ速度(降下速度)は例えば0.1〜5mm/hの範囲で設定する。
≪温度保持と徐冷(アニール)≫
結晶成長したフッ化物単結晶を熱処理して複屈折を低減する。アニールに要する時間は1〜2ヶ月に及び、大部分の時間は高温の温度保持と徐冷に費やすことになる。また、アニールでは結晶を融解させることはないので、従来の製造方法では、加熱昇温中を始めとしてアニール中に結晶表面に生成したZnOが、そのまま残った状態でアニールされることになる。このため、亜鉛や酸素成分が徐々にフッ化物結晶の内部に向かって拡散して表面に劣化層を生じてしまい、得られる結晶の良品部分が小さくなってしまっていた。しかし、本発明の製造方法ではフッ化物結晶の融点以下の温度で、すなわち、アニール中に、前述の方法に従ってCOガスをルツボ内に導入することによってZnOを還元除去しているので、ZnO付着が原因の劣化層の生成を抑えることができる。
アニールを終えた結晶は、必要とされる光学部品(又は光学素子)の形状に切断、研磨等の方法で成形加工する。光学素子は、レンズ、回折格子、光学膜体及びそれらの複合体、例えば、レンズ、マルチレンズ、レンズアレイ、レンチキュラーレンズ、ハエの目レンズ、非球面レンズ、回折格子、バイナリーオプティックス素子及びそれらの複合体を含む。また、光学素子は、単体のレンズ等に加えて(例えば、フォーカス制御用の)光センサーなどを含む。必要に応じて、反射防止膜をフッ化物結晶の光学物品表面に設けるとよい。反射防止膜としては、フッ化マグネシウムや酸化アルミニウム、酸化タンタルが好適に用いられ、これらは抵抗加熱による蒸着や電子ビーム蒸着やスパッタリングなどで形成できる。必要とされる光学物品の形状(凸レンズ、凹レンズ、円盤状、板状等)に成形加工するための研磨加工においては、CaF結晶内の転位密度が小さいことにより部分的な面精度の低下は非常に小さく許容値以下で高精度の加工が可能である。
以上、説明したように本実施形態によれば、フッ化物結晶の製造工程(精製、単結晶成長、アニール)において、フッ化物原料の融点以下の温度においてCOガスをルツボ内に導入することによって、フッ化物原料が融解する前に、スカベンジ反応で生成したZnOを還元して取り除くことができる。この結果、大口径のフッ化物結晶であっても融解時間を短くすることができ、生産性が高く製造コストを押さえたフッ化物結晶の製造方法を提供できるようになる。また、フッ化物結晶をアニールしても結晶表面に生じる劣化層を極力抑えることができ、結晶の良品部分を減らさずにアニールすることが可能になる。
以下に実施例をあげて本発明をより詳細に説明する。
実施例1では、フッ化物粉末原料の精製を実施した。
≪スカベンジャー添加≫
高純度合成CaF粉体原料10kgにスカベンジャーとしてフッ化亜鉛を0.08mol%(10.5g)添加して十分に混合した。これを3セット用意した。
≪加熱工程≫
スカベンジャーを添加・混合したフッ化物原料を図2に示す結晶炉の3段重ねのルツボ(カーボン製、内径φ340mm×深さ120mm)の中に入れた。各々のルツボの側面上部には、それぞれ内径φ3mmのガス穴が4個開けてあり(図中8)、側面の円周上に均等に配置されている。実施例1で使用したルツボは互いにねじ止めする構成になっているが、単純に重ね合わせただけの構成でも支障なく使うことができる。
次に、真空排気を開始して、真空度が1.33×10−3Pa以下に達した後でヒーターに通電してルツボの加熱を開始した。初めに、50℃/hの昇温速度で室温から200℃まで加熱した後、200℃で24時間保持して原料に付着している水分を脱水した。その後も50℃/hの昇温速度で、所定の温度まで加熱昇温した。所定の温度は、実施例1の精製実験の場合、300℃、400℃、600℃、800℃、1000℃、1200℃、1350℃の7種類である。
この時点で真空度はおよそ1×10−4Pa〜1×10−2Paの範囲にある。それぞれの温度に到達したら、真空排気系に通じるバルブ17を閉じてから、COガス供給用ボンベのバルブ19を開いて、一定時間COガスをチャンバー内に供給した。COガスの導入条件であるが、0.1MPaの圧力に調整されたCOガスを、毎分0.1L(0.1L/min)の流量で、1回の導入につき1分間導入するようにした。COガス流量は流量計22により調整した。COガスを導入したらガス供給用バルブ19は閉じて、40分間ほどチャンバーを閉じた状態でそのまま保持する。ヒーター温度も同じ温度のまま保持する。次に、再び真空排気を行い、チャンバー内の真空度がCOガス導入前とほぼ同じレベルに戻るようにする。COガスを排気する時は、初めの5分間だけ、希釈用のNガスボンベのバルブ18を開いて、0.4MPaのNガスを毎分1Lの流量で流した。Nガスの流量は流量計21を用いて設定した。Nガスで希釈された真空排気ガスは除害装置を通って外部に排気される。
COガス導入操作は、以上、説明したとおり、一度COガスを導入して、ヒーター温度一定のままチャンバーを閉じた状態で一定時間保持して、その後、再び元の真空度とほぼ同じ真空度になるまで真空排気することを1サイクルとして行った。1サイクル(ガス導入から真空排気完了まで)に要する時間はおよそ1時間である。
COガス導入の必要なサイクル数はガス導入温度によって異なることが考えられる。このため、融解時間を40時間に固定して、作製した精製品の真空紫外域の分光特性が良好になるのに必要なサイクル数を、それぞれのガス導入温度について求めるように実験を行った。
≪融解、固化工程≫
COガス導入操作が終わったら、再び、50℃/hの昇温速度で1450℃まで加熱昇温し、1450℃で40時間保持して原料を融解した。その後は、融解したフッ化物を冷却固化して精製品を得た。
以上の工程で得られたフッ化物は、不純物を除去して嵩密度を大きくすることが目的であるから、粒界が存在する結晶であってもよいため精密な温度管理は必要としない。こうして得られた精製品(フッ化カルシウム結晶)を切断、研磨して10mm厚の円盤とし、真空紫外域の透過スペクトルを測定した。前述したように、COガス導入温度によって、真空紫外域の分光特性が良好になるガス導入サイクル数が違っていたので、表1にこの結果をまとめた。
表1によれば、COガス導入温度300℃では、ガス導入を10サイクル繰り返してみたが、ガス導入しないときに比べて分光特性はほとんど改善しなかった。また、400℃では、ガス導入を10サイクル繰り返した時点で、Fエキシマレーザーの波長157nmの透過率(表面2面分の反射を含む結果であり純粋な内部透過率とは異なる。89.9%以上の場合を良好としている。)が25%から28%にしか向上せず、効果が得られないと判断した。以上の結果から、300〜400℃ではCOガス導入による真空紫外域の透過スペクトルの改善は期待できないと考えられる。
一方、ガス導入を600℃以上で実施すると、温度によって効果の大きさは異なるものの、ガス導入により分光特性の良好な精製品が得られることがわかった。真空紫外域の分光特性を改善するのに必要なCOガス導入サイクル数は、ガス導入温度が高いほど少なくて済み、1000℃では4サイクル、1200℃と1350℃では3サイクルだった。このことから、COガス導入効果は1000℃〜融解温度未満(1370〜1420℃未満)で最も大きくなると考えられる。
Figure 2005330145
以上の実施例に対して、COガスを導入しない従来の方法に基づいて精製実験を行った。それには、COガスを導入しない点を除けば、CaF粉体原料とフッ化亜鉛スカベンジャーの投入量を実施例と同じ量に設定して、結晶炉やルツボも同一の物を使用した。精製の温度条件についても、200℃で24時間脱水を行い、原料が融解するまで50℃/hで加熱昇温して、1450℃で融解することは同じである。従来の精製方法では、融解時間を長めにしないと真空紫外域の分光特性が良くならなかった。例えば、融解時間を120〜180時間に長くする必要があり、融解時間が40時間では真空紫外域に吸収が残ってしまっていた。
これに対して、本発明の実施例によれば、昇温中に原料が融解する前にCOガスを適当なサイクル数だけ導入すると、融解時間が40時間と比較的短めであっても、真空紫外域に吸収のない精製品が得られることがわかる。COガスを導入すると1サイクル当たり約1時間必要になるが、ガス導入を10サイクル行なっても10時間の所要時間にしかならず、従来の精製時間(加熱昇温開始してから融解固化が完了するまで)よりも短い時間で済むことは明らかである。
実施例2では、フッ化物の単結晶成長を実施した。
≪スカベンジャー添加≫
精製品のフッ化物結晶を適当に破砕した結晶50kgとフッ化亜鉛0.008mol%(5.25g)とを図3に示すルツボ31に投入した。ルツボはカーボン製で、内径φ340mm×深さ700mmである。ルツボの蓋32には、内径3mmのガス穴33が1個開いている。
≪加熱工程≫
真空排気を開始して、真空度が1.33×10−3Pa以下に達した後でヒーターに通電してルツボの加熱を開始した。初めに、30℃/hの昇温速度で室温から200℃まで加熱した後、200℃で24時間保持して原料に付着している水分を脱水した。その後も30℃/hの昇温速度で、所定の温度まで加熱昇温した。所定の温度は、実施例1の精製実験と同様に、300℃、400℃、600℃、800℃、1000℃、1200℃、1350℃の7種類である。COガス導入操作も、実施例1の精製実験と同じなので詳しい説明は省略する。
COガス導入の必要なサイクル数は、精製同様にガス導入温度によって異なることが考えられる。このため、融解時間を60時間に固定して、作製した精製品の真空紫外域の分光特性が良好になるのに必要なサイクル数を、それぞれのガス導入温度について求めるように実験を行った。融解時間が精製の時(実施例1)より長めなのは、原料の投入量が精製より多く、ルツボ内の温度を均一にするためである。
≪融解、単結晶成長工程≫
COガス導入操作が終わったら、再び、30℃/hの昇温速度で1450℃まで加熱昇温し、1450℃で60時間保持して原料を融解した。その後は、1mm/hの降下速度でルツボを650mm引き下げて単結晶を成長させた。
こうして得られたフッ化カルシウム単結晶を切断、研磨して10mm厚の円盤とし、真空紫外域の透過スペクトルを測定した。前述したように、COガス導入温度によって、真空紫外域の分光特性が良好になるガス導入サイクル数が違っていたので、表2にこの結果をまとめた。
Figure 2005330145
COガス導入を10サイクル繰り返した結果であるが、精製の時と同様にガス導入温度300℃では分光特性の改善は見られず、また、400℃でガス導入しても、波長157nmにおける透過率(表面2面分の反射を含む結果)が35%から41%にしか向上しなかったので、300〜400℃ではCOガス導入による真空紫外域の透過スペクトルの改善は期待できなかった。
ガス導入温度が600℃以上であれば、温度が高いほうが、比較的少ないガス導入サイクル数で真空紫外域の分光特性が改善されることがわかった。これは精製の場合と同様である。必要なサイクル数は、1000℃〜融解温度未満(1370〜1420℃未満)で最も少ない結果となっていて、具体的には、1000℃、1200℃、1350℃ではそれぞれ3サイクル、2サイクル、3サイクルだった。
以上の実施例に対して、COガスを導入しない従来の方法に基づいて単結晶成長実験を行ったが、融解時間を長めにしないと真空紫外域の分光特性が良くならなかった。例えば、融解時間を250〜300時間に長くする必要があり、融解時間が60時間では真空紫外域に吸収が残ってしまっていた。
従って、本発明の実施例のごとく、昇温中に原料が融解する前にCOガスを適当なサイクル数だけ導入することにより、従来の単結晶成長時間(加熱昇温開始してから引き下げ成長が完了するまで)よりも短い時間で済むことは明らかである。
実施例3では、フッ化物単結晶のアニールを実施した。
≪スカベンジャー添加≫
外径φ300mm×高さ100mmのフッ化物単結晶(約22kg)とフッ化亜鉛スカベンジャー0.01mol%(2.9g)とを図4に示すルツボ41の一つに投入した。ルツボはカーボン製で、内径φ400mm×深さ140mmである。ルツボの側面には内径3mmのガス穴42がルツボ1段につき4個づつ、側面の円周上に均等に開いている。結晶を投入したルツボを3セット準備してこれを3段重ねにした。
≪加熱工程≫
真空排気を開始して、真空度が1.33×10−3Pa以下に達した後でヒーターに通電してルツボの加熱を開始した。アニールでは結晶が熱衝撃で破損しないように少し遅めの速度で加熱する。初めに、20℃/hの昇温速度で室温から150℃まで加熱した後、150℃で24時間保持して原料に付着している水分を脱水した。その後も20℃/hの昇温速度で、COガスを導入する所定の温度まで加熱昇温した。所定の温度は300℃、400℃、600℃、800℃、1000℃、1070℃の6種類である。最後の温度が1070℃なのは、アニールの最高温度を1070℃にしたことによる。COガス導入の必要なサイクル数は、精製や単結晶成長と同様にガス導入温度によって異なることが考えられるが、実施例3のアニールでは実施例2の結果を参考にして、300〜800℃は10サイクル、そして800〜1070℃は3サイクルにした。800℃だけは3サイクルと10サイクルの2つの条件を実験したことになる。
≪温度保持と徐冷≫
COガス導入操作が終わったら20℃/hの昇温速度で1070℃まで加熱昇温し、そこで100時間保持した(1070℃でCOガス導入した場合は、その温度で更に100時間保持した)。その後は、1時間当たり0.5℃の降温速度で23日間かけて800℃まで徐々に降温し、その後は室温まで2日かけて降温した。
従来の製造方法に基づいて、COガスを導入しないでアニールしたフッ化カルシウム単結晶を調べると、結晶表面(特に側面や上面)には深さ約5〜10mmに及ぶ劣化層(亜鉛を多く含有する)が生じていて、この劣化した表面部分を除去しないと光学部品の素材として使用できなかった。従って、アニール後の結晶は、ルツボに投入した物より直径が10〜20mm小さくなってしまい、少しでも大口径の結晶が必要な場合に障害となっていた。
しかし、本発明の実施例に従って、フッ化物結晶の融点以下の温度においてCOガスを導入すると、適当な条件ならばアニール後の結晶表面の劣化層が少なくなることがわかった。この結果を表3に示す。
Figure 2005330145
表3によれば、COガス導入温度が300〜400℃ではガス導入による劣化層の抑制効果は期待できないが、温度が高くなると、特に800℃以上では効果が期待できることがわかる。つまり、300〜400℃では、COガスを10サイクル導入しても劣化層の厚さはほとんど改善されなかった。これに対して、800℃ではCOガスを10サイクル導入すれば、劣化層の厚さは1.0〜1.5mmに減少した。更に、1000℃と1070℃では、3回のCOガス導入で劣化層は0.5〜1.5mmに減少していた。
本発明の実施例に基づいたフッ化物結晶の製造工程を示す概念図である。 本発明の実施例で用いられる結晶製造炉の断面を示す模式図である。 本発明の別の実施例(単結晶成長)で用いられるルツボの断面を示す模式図である。 本発明の別の実施例(アニール)で用いられるルツボの断面を示す模式図である。
符号の説明
1 チャンバー
2 油拡散ポンプ(拡散ポンプ)
3 油回転ポンプ(ロータリーポンプ)
4 断熱材
5 ヒーター
6 ルツボ
7 フッ化物原料
8 ガス穴(開口部)
9 熱電対
10 COガス導入管
11 COガス供給用ボンベ
12 ガス除害装置
13 Nガス供給用ボンベ
14 真空計
15〜20 バルブ
21〜22 流量計
31 ルツボ
32 ルツボの蓋
33 ガス穴(開口部)
34 フッ化物原料(精製品を破砕した結晶)
41 ルツボ
42 ガス穴(開口部)
43 フッ化物単結晶
44 フッ化亜鉛スカベンジャー

Claims (6)

  1. フッ化物原料あるいはスカベンジャーが添加されたフッ化物原料をルツボにて加熱してフッ化物結晶を製造する際に、前記フッ化物原料の融点以下の温度において、前記フッ化物原料が融解する前にCOガスをルツボ内に導入することを特徴とするフッ化物結晶の製造方法。
  2. フッ化物原料あるいはスカベンジャーが添加されたフッ化物原料をルツボにて融解固化してフッ化物を精製する際に、前記フッ化物原料が融解する前に加熱昇温中にCOガスをルツボ内に導入することを特徴とするフッ化物結晶の精製方法。
  3. フッ化物原料あるいはスカベンジャーが添加されたフッ化物原料をルツボにて融解固化してフッ化物単結晶を製造する際に、前記フッ化物原料が融解する前に加熱昇温中にCOガスをルツボ内に導入することを特徴とするフッ化物単結晶の製造方法。
  4. フッ化物結晶あるいはスカベンジャーが添加されたフッ化物結晶をアニールする際に、アニール中にCOガスをルツボ内に導入することを特徴とするフッ化物結晶のアニール方法。
  5. 請求項1から4に記載のフッ化物結晶の製造方法であって、COガスをルツボ内に導入して一定時間経過後に再びルツボ内の雰囲気を真空排気することを1回あるいは複数回行うことを特徴とするフッ化物結晶の製造方法。
  6. 請求項1から5に記載のフッ化物結晶の製造方法であって、COガスをルツボ内に導入するときのルツボあるいはヒーターの温度は、600℃以上で、製造しようとするフッ化物の融点以下であることを特徴とするフッ化物結晶の製造方法。
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JP2009040630A (ja) * 2007-08-08 2009-02-26 Tokuyama Corp フッ化金属単結晶体引上げ用装置を用いたフッ化金属単結晶体の製造方法

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