JP4024577B2 - フッ化物単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エキシマレーザステッパ用光学材料として用いられる高品質フッ化物単結晶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体の高集積化に伴い、用いられる配線幅は縮小の一途をたどっている。それとともに、配線回路描画用露光装置であるステッパーの光源の短波長化が行われてきた(例えば、i線:365nm→KrFエキシマレーザ:248nm)。
今後、0.13μm以下の配線ルールにおいては、ArF:193nmエキシマレーザが使用されるといわれている。さらに、0.1μm以下の配線ルールにおいては、F2:157nmエキシマレーザが使用されるといわれている。これらArFエキシマレーザ、F2エキシマレーザの光学系においては、その優れた紫外線透過特性から、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化バリウム(BaF2)などのフッ化物単結晶が、レンズ、ウインドウ、プリズム等として使用される。 例えばCaF2単結晶は、従来赤外〜可視〜紫外にわたる波長透過性により、広く使用されてきた。これらはおもに天然の蛍石(CaF2)又はこれを原料とする合成原料に、PbF2に代表されるスカベンジャーとよばれるフッ素化剤を混合し、加熱することにより酸素等の不純物を除去、精製したものを原料として、ブリッジマン法によって単結晶化したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来製法によるCaF2単結晶を、ArFエキシマレーザ光学系に用いた場合、紫外線波長領域における透過性が劣るばかりでなく、レーザ照射により結晶がダメージをうけ、その光透過性能の永久劣化が起こるいわゆる光損傷とよばれる現象が生じることが問題となっている。光損傷は、CaF2結晶中の不純物や、結晶欠陥によって引き起こされると考えられており、耐光損傷性(レーザ耐性)の高いCaF2結晶の作製のため、結晶の高純度化、低欠陥密度化が必要である。
【0004】
特に、CaF2中の酸素不純物は、真空紫外領域における光透過性能に対して有害であることが知られている。また、イットリウム(Y)等の希土類金属がレーザ耐性に有害であることも知られている。
更にまた、レンズ材として用いられるCaF2単結晶には、高度の光学的均質性が必要とされる。すなわち屈折率の均質性に優れること、及び複屈折の原因となるような残留歪みを内在しないことが重要である。特開平9−315893、特開平11−157982等に、現在の代表的な製造プロセスが開示されている。
【0005】
近年においては、PbF2等のスカベンジャーではなく、精製ガスを用いて結晶原料を精製する方法が行われつつあり、例えば特開平11−228292号公報、USP4190487号公報等に開示されている。
しかしながら、このようなプロセスをもってしても上記のような単結晶における光透過性能、レーザ耐性、屈折率均質性、低複屈折性等、ArFやF2エキシマレーザ光学系に必要十分な光学的特性を有するCaF2単結晶を製造することは容易でなく、さらなる改良が望まれている。特に、193nmでの光透過性能が確保されたとしても、F2レーザ光学系に要求される157nmでの十分な光透過性能を実現することは、よりいっそう困難な状況にある。
【0006】
なお本発明者らは、本発明に先立ち、ArFエキシマレーザ光学系用途を対象とした光学特性の改善されたCaF2単結晶の製造方法を発明した。ここで、この先発明の趣旨を述べる。
CaF2単結晶における光学的均質性、耐光損傷性を損なう一因となっているのが、現状のPbF2等の個体スカベンジャーを用いる原料の精製方法にあると考えた。すなわち、非処理原料であるCaF2粉末と、PbF2粉末の混合の機械的混合のみによっては、細部まで均質な混合は困難であり、原料処理の不均質性が起こりうる。このため、原料CaF2からの脱酸素が必ずしも完全に行われず、成長結晶中に取り込まれてしまい、光学特性を劣化させることがしばしば起こる。
【0007】
また残存鉛濃度の不均質性が屈折率の均質性を低下させるとともに、レーザ耐性を損ねることも考えられる。
更に鉛は有毒な物質であり、昨今の地球環境保全、公害防止の意味からもその使用量を削減しようという動きが産業界での趨勢となりつつある。
これに対して発明者等は、PbF2等の個体スカベンジャーを用いず、鉛を含まない反応性フッ素化合物ガスを使用することにより、スカベンジャーの偏析による組成的不均質がなく、またPbF2よりもフッ素化効果に優れるため、酸素不純物のより完全な除去が可能な方法を、本発明に先立って発明した(出願番号2000−53930号)。
【0008】
先発明(出願番号2000−53930号)は、ArFエキシマレーザ波長である193nmにおいては、99.9%程度の優れた内部透過率を示し、またレーザ耐性においても、従来材(固体スカベンジャーや、先述した精製ガスにより精製された原料によるもの)よりも優れた特性を有する。
一方、CaF2の本質的特性である基礎吸収端は122nmであるとされており、不純物や結晶欠陥などを含まない理想的なCaF2では、この波長近傍まで顕著な光吸収はないはずである。
【0009】
先発明の単結晶では、193nm近傍の真空紫外領域での光透過性においては概ね顕著な光吸収ピークはみられないものの、160nm以下の短波長側では、しばしば弱いブロードな光吸収が見られる場合がある。このようなCaF2材料はArFエキシマレーザを光源とする光学系においては、致命的なものではないが、しばしば光透過率の経時劣化との因果関係が見られる。また157nmの波長を持つF2エキシマレーザ光学系においては、当該性能を大きく低下させるため使用に耐えない。
【0010】
以上のように160nm以下の波長域においてもできる限りCaF2の光透過率を高くすることが要請されている。
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高純度で、十分なレーザ耐性を有し、かつ優れた透過性能、特にCaF2に関してはその基礎吸収端である122nm近傍まで顕著な光吸収ピークの存在しないような透過性能を有するフッ化物単結晶を製造することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては以下の手段を採用した。すなわち、本発明にかかるフッ化物単結晶の製造方法は、フッ化物単結晶原料をフッ素含有ガスに晒しながら加熱して前記原料に含まれる不純物を前記フッ素含有ガスと反応させて前記原料を精製した後に単結晶を成長させるものであって、前記精製における初期の第1温度域ではその温度域で分解する第1ガスを用いて前記反応を行い、その後前記第1温度域より高温の第2温度域では、前記第1温度域とは異なるガスであって前記第1ガスより高い温度で分解する第2ガスを用いて前記反応を行うことを特徴とする。
【0012】
フッ素含有ガスは、原料精製におけるそれぞれの反応温度域において、CaF2等のフッ化物単結晶原料及びるつぼ材等に含まれる酸素不純物と反応して系内からこれを除去する効果がある。つまり、系内の水分除去、酸化物、水酸化物及び固溶酸素の除去、結晶成長中の酸化防止等が、フッ素含有ガスの使用目的である。
ここで、フッ素含有ガスは、原料のフッ化効果を有しながらるつぼ等を構成するグラファイト部材には無害であることが求められる。グラファイト部材を保護し、かつフッ化効果を最大限に発揮させるためには、各温度域でフッ化物原料と接触して分解、反応するガスの選択がポイントになる。
【0013】
精製初期の第1温度域で分解して、活性なフッ素原子種(フッ素含有原子種も含む、以下単に活性Fガスという)を生成し炉内のフッ素原子種の濃度を高くするフッ素含有ガスは、その後のより高温の第2温度域においても当然、上述の脱酸素等の効果は得られる。しかし、かかるフッ素含有ガスは反応性(分解してフッ素原子種を生成し、不純物と反応する性質)が高すぎて、炉内のるつぼをはじめとするグラファイト部材と反応してこれらを著しく消耗させてしまう問題が生じる。
【0014】
上記手段によれば、精製における初期の第1温度域ではその温度域で分解する第1ガスを用いて前記反応を行い、その後前記第1温度域より高温の第2温度域では、前記第1温度域とは異なるガスであって前記第1ガスより高い温度で分解する第2ガスを用いて前記反応を行うので、各温度域において異なるフッ素含有ガスを使用して不純物除去効果を最大にし、かつ副次的に起こるフッ素ガスと炉内部材との反応を防止することができる。
なお、本発明におけるフッ素含有ガスの「分解」とは、熱分解により活性フッ素原子、及びラジカルなどフッ素含有原子種及び分子種を生成することを意味する。
【0015】
また前記第1温度域は300〜700℃の範囲内にあり、前記第2温度域は前記第1温度域よりも高温でかつ500〜1200℃の範囲内にあれば、フッ素含有ガスと結晶原料中の不純物との精製反応が効率よく行われる温度域であるため好ましい。特に、第1温度域は300〜600℃、第2温度域は600〜1200℃であることが好ましい。
ここで、各温度域は必ずしも厳密なものでなく、±100℃程度の範囲内で相互にオーバーラップしてもかまわない。例えば、第1温度域は300〜500℃で、第2温度域は500〜1200℃となってもよい。使用するフッ素含有ガスの分解温度に応じて、適宜に設定することができる。
【0016】
また前記第1ガスとしてClF3、NF3、F2の中から選ばれた1又は2種以上のガスが用いられ、前記第2ガスとしてCHF3、CH2F2、C2F6、C3F8の中から選ばれた1または2種以上のガスが用いられることが好ましい。
ClF3、NF3、F2 等のガスは、比較的低温の300〜700℃の範囲内で容易に分解して、酸素不純物の除去等を効果的に行うことができる。しかも、かかる温度域においては反応性はさほど高まらず、グラファイト部材を損傷することもない。
【0017】
また、より高温域の500〜1200℃の範囲内にある第2温度域では、上述の第一ガスであるClF3、NF3、F2等のガスは反応性が高すぎてグラファイト部材を損傷させてしまうため使用できない。この第一ガスの代わりに用いられる第二ガスであるCHF3、CH2F2、C2F6、C3F8等のガスは、第1温度域ではさほど分解はせず、反応性が低いガス種といえる。しかしより高温の、好ましくは600℃〜1200℃の範囲内では効率よく分解し、酸素不純物の除去等を行う。しかも、かかる温度域では反応性はさほど高まらず、また第1温度域において使用したガス種も使用していないので、グラファイト部材を損傷することもない。
【0018】
このように、原料精製において異なる温度域を設定し、各温度域での分解温度や反応性の異なる別種のフッ素含有ガスを用いるので、各温度域において酸素不純物の除去を効率よく行うとともに、炉内のグラファイト部材を損傷することを防止できる。
また前記単結晶成長を前記第2温度域よりも高温の第3温度域で行い、前記第3温度域は1200℃以上であることを特徴とする。例えば、CaF2等の結晶原料の融点は1200℃以上であるので、上記のように第3温度域まで更に設定すれば、結晶成長を行うことができる。
【0019】
さらに、前記単結晶の成長においては、CF4、C2F6、C3F8の中から選ばれた1又は2種以上のガスが用いられることが好ましい。
結晶成長が行われる第3工程の温度域は、1200℃以上である。結晶成長もフッ素含有ガス雰囲気下で行えば、結晶成長中の酸化防止を行うことができる。上記の各種ガスは、1200℃以上の温度域においてよく分解し、優れた不純物除去効果を期待できる。なお、C2F6、C3F8の各ガスは、その性質上第2温度域及び第3温度域の双方で使用することができる。
【0020】
以上の手段によれば、原料の精製段階において分解温度の異なるフッ素含有ガスを温度域に応じて使用するので、炉内のグラファイト部材を損傷することなく結晶原料の不純物除去を効果的に行え、結果として高純度で十分なレーザ耐性を有し、かつ優れた透過性能を有するフッ化物単結晶を得ることができる。
また前記単結晶の成長が、ブリッジマンストックバーガー法又は垂直温度勾配法により行われることが好ましい。更に、前記フッ化物単結晶がCaF2、BaF2のいずれかであることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
フッ化物単結晶としてCaF2を例に本発明を詳細に説明する。
まずCaF2原料を精製して不純物を除去し、その後に結晶成長を行う。精製は、CaF2原料をフッ素含有ガスに晒しながら加熱して昇温させ、原料に含まれる不純物をフッ素含有ガスと反応させることにより行い、その後に単結晶を成長させる。
CaF2原料の精製は、初期の第1温度域と、第1温度域より高温の第2温度域を経て行われる。第1温度域は300〜600℃、第2温度域は600〜1200℃であり、これらの温度域の範囲で昇温される。各温度域ではそれぞれ異なるフッ素含有ガスが使用される。つまり精製は、別種のガスが使用される別工程を経て行われるのである。
【0022】
具体的には、第1工程となる第1温度域ではその温度域で分解する第1ガスを用いて、不純物とフッ素含有ガスとを反応させ、不純物除去を行う。その後の第2工程となる第2温度域では、第1温度域とは異なるガスであって第1ガスより高い温度で分解する第2ガスを用いて、不純物とフッ素含有ガスとを反応させ、不純物除去を行う。
CaF2原料の場合は、第一温度域である300から600℃に昇温される第1工程、第二温度域である600から1200℃に昇温される第2工程の他、更に第三温度域である1200℃以上に昇温される第3工程を経て、結晶が製造される。各工程は、それぞれ別種のフッ素含有ガス流中で行う。なお、第1工程及び第2工程はフッ素含有ガスと原料中の不純物とを反応させて原料を精製する精製工程、第3工程は精製された原料を更にフッ素含有ガスに晒しながら結晶成長させる成長工程である。
【0023】
第1工程においてはClF3、NF3、F2の中から選ばれた1種又は2種以上のフッ素含有ガスを含む雰囲気ガスを用い、かつ第2工程ではCHF3、CH2F2、C2F6、C3F8の中から選ばれた1種又は2種以上のフッ素含有ガスを含む雰囲気ガスを用い、第3工程では、CF4、C2F6、C3F8の中から選ばれた1種または2種以上のフッ素含有ガスを含む雰囲気ガスを用いる。
これらのF含有ガスは100%濃度で用いるかまたは不活性ガスで10%程度までに希釈して用いることができる。また、これらのガスは、炉内全体に流しても良いが、より好ましいのは、炉内で原料を充填したるつぼを収納するように隔離した空間を形成するためのケーシングを設け、原料を充填したるつぼ内およびこのケーシング内にのみ流す方法である。この場合炉内のケーシング以外の空間には窒素またはArガスのような不活性ガスを流す。
【0024】
第1工程においては、低温でも脱酸素効果(酸素不純物除去効果)が大きいClF3、NF3、F2の中から選ばれた1種または2種以上のガスを含む雰囲気ガスを選択してある。第1工程である300℃〜600℃の温度域においては、第2工程または結晶成長工程(第3工程)で使用するCHF3、CH2F2、C2F6、C3F8、CF4などのガスによる脱酸素効果はほとんど期待できない。これはこれらのガスがかかる低温域では反応性に乏しいからである。あるいは、これらのガスの分解が起こり難く、生成すべき活性なフッ素(含有)原子種の濃度が低いためとも言える。一方、ClF3、NF3、F2はこれら低温域においても十分な活性を有し、脱酸素反応や脱水反応に有効である。
【0025】
第2工程においては、CHF3、CH2F2、C2F6、C3F8等のガスが活性となり、脱酸素反応に寄与する。CF4のみはCaF2の融点近傍の1400℃程度の高温域において初めて活性となりうるため、この温度域における低温部での効果が不十分となるため適切でない。CF4は例えばCaF2の単結晶成長工程である1400℃以上の温度域においてのみ有効である。
一方、第1工程ガスであるClF3、NF3、F2を第2工程に用いた場合、フッ素化による脱酸素効果は当然得られると考えられるが、実際には同時に別の問題点が生じて適当でない。つまり、反応性が高すぎて、炉内のるつぼをはじめとするグラファイト部材と反応してこれらを著しく消耗させるからである。化学的には活性フッ素ガスがグラファイトを強く酸化してこれを燃やしてしまうと表現することも可能である。従って、第2工程および第3工程においてはグラファイトとの反応性が弱くフッ化物原料に対しては十分な脱水、脱酸素効果が得られるCF系ガスが好適である。
【0026】
ここで各工程温度領域は必ずしも厳密なものでなく、±100℃程度の範囲で相互にオーバラップする場合でもその効果に大きな差はない。例えば、第1工程が300〜500℃に昇温されるもので、第2工程が500〜1200℃に昇温されるものでもよいし、第1工程が300〜550℃に昇温されるもので、第2工程が550〜1200℃に昇温されるものでもよい。
なお、第2及び第3工程において使用されるガス種のうちには、いずれの工程においても使用可能なガスがある。例えばC2F6、C3F8等である。
【0027】
水分除去、酸化物、水酸化物および固溶酸素の除去、結晶成長中の酸化防止が3工程でのフッ素含有ガスフローの目的であり、グラファイト部材を保護し、且つフッ素化効果を最大限に発揮させるためには、各温度域でフッ化物原料と接触して分解、反応するガスの選択がポイントとなる。
このような構成により、フッ素含有ガスとるつぼ内の原料とをより効率的に反応させ、なおかつ炉内の高温のグラファイトヒータや他の断熱部材などとフッ素含有ガスが反応し、それらを消耗させることを防ぐ、ためである。
【0028】
また本発明では、原料とフッ素化物ガスとの反応による脱水、脱酸素などが目的であるので、通常、第1工程から原料融点までの工程は同一容器内で連続的に行い、精製されたバルク状の原料多結晶体を得ることが好ましい。
例えば第1工程のみでは原料は依然粉末状であり、もし処理後に大気中に取り出せば、ただちに水分の吸着や粉体表面からの酸化が進み、処理効果を失ってしまう。
これに対して、第1工程から第3工程の原料融解までを連続的に行うことによって、処理後冷却して取り出された原料はバルク状になっているため、その比表面積は著しく減少することとなり、たとえ大気中に取り出したとしても、その表面酸化は極めて限定的なものである。この程度の酸化ならば、結晶成長工程において再度第1〜第3工程を繰り返すまでもなく、第3工程のCF4ガスフローのみによっても、容易に酸素除去が可能であり、その光学特性を損なうことはない。
【0029】
第1工程、第2工程、第3工程と、原料精製から単結晶成長の全ての工程を連続的に行えば、酸化の余地はなく理想的である。ただし、原料融点までの第1〜第3工程は結晶成長炉を用いずとも可能なため、結晶成長炉の有効利用のためには、これらを別に行うことが良い場合もある。
なお、この方法は通常垂直ブリッジマン法、および垂直温度勾配法のようなるつぼ成長に用いられるが、その他、チョコラルスキー法による単結晶引き上げにも適用可能である。
【0030】
さらに本発明はCaF2、BaF2単結晶の成長に関するものであるが、これ以外にもLiF、SrF2、LaF3、MgF2などに代表されるアルカリ金属フッ化物、アルカリ土類フッ化物、希土類フッ化物などの結晶成長における脱酸素法としても広く適用できる。
すなわち、本発明においては、各温度に応じてガス種を使い分けることがその本質であり、例えばLiFは870℃に融点を持つが、このような材料では本発明における第2工程にその融点を持つことになり、当然結晶成長温度も第2工程温度内で行われるから、第3工程が省略されると考えれば良い。
【0031】
【実施例】
次に、本発明にかかる実施例について説明する。図1に示す結晶製造装置により、表1に示すような実施例1〜7を作製した。結晶原料の精製工程、結晶成長工程の詳細は表1に示す通りである。
【0032】
【表1】
【0033】
結晶製造の具体的手順を、実施例1により説明する。
直径150mmのグラファイト製のるつぼ6に、2kgの高純度CaF2原料粉末7を充填し、るつぼ台5にのせた。るつぼ6の下端部6Aには、フッ素含有雰囲気ガス導入管9が接続されている。次に隔壁ケーシング4を取り付けた後、炉壁本体1を炉下蓋フランジ10にかぶせて炉を閉めた。
バルブ17g、17jを開け、それ以外は全て閉として、ロータリーポンプおよび油拡散ポンプよりなる真空排気ユニット11により、5×10-6Torrより高い真空度になるまで炉内を排気した。
【0034】
次に炉内の排気を行いながら200K/hで300℃まで昇温し、この温度においてさらに1時間排気を続け、炉内真空度が2×10-6Torrになることを確認して、バルブ17jを閉じた。窒素導入バルブ17fを開けるとともにマスフローメータ16fを調整して、10l(リットル)/min程度の流量で炉内に窒素を導入した。炉内圧力が大気圧より5%程度高くなった時点でバルブ17hを開き、同時にマスフローメータ16fを調整して窒素導入量を2l/minに減少させた。
【0035】
次に第1工程ガス導入を行った。バルブ17a、17e、17iをそれぞれ開き、バルブ17gを閉としてマスフローメータ16aを調整して20ml/minの流量で、第1工程ガス12としてのNF3をフッ素含有ガス導入管9よりCaF2原料を充填したるつぼ下端部6Aからるつぼ6内に導入した。導入されたフッ素含有ガスは、るつぼ6内のCaF2表面に残留する水分や酸化物と反応し、これらを除去しながら、隔壁ケーシング4内に出て、フッ素含有ガス排出管19により炉外に導かれる。炉内から排出されたガスは最終的にフッ素ガス除害装置21により無害化された後、大気放出される。るつぼ6へのNF3および炉内への窒素導入を行いながら、炉内温度を300℃〜600℃まで400K/hで昇温し、第1工程を終了した。
【0036】
炉内温度が600℃に達した時点でバルブ17aを閉とし、バルブ17dを開としてフッ素含有ガス導入管9内、および隔壁ケーシング4内に残留するNF3ガスをパージした。その後、バルブ17dを閉じ、バルブ17bを開けて第2工程ガスであるC2F6に切り替えた。この時、マスフローメータ16bを調整して20ml/minの流量でC2F6ガスをるつぼ下端部6Aより導入した。
その後、炉内温度を600℃からさらに400K/hで1430℃まで昇温し、るつぼ6内のCaF2原料粉末を融解させた。この時の炉内温度は種結晶上端温度に等しく、種結晶は上端から約10mm融解し、いわゆる種付け工程が完了する。炉内上下方向には、約10K/cmの温度勾配が付けてある。
【0037】
なお、フッ素含有ガスの大部分はるつぼ内に導入されるが、一部はるつぼ6外の隔壁ケーシング4内にも供給されるようになっている。
フッ素含有ガスとCaF2原料との反応は、CaF2が固体の状態の時に大部分が完了するが、融解後の融液中にフッ素含有ガスを導入し、反応を完結させることも有効である。なお、隔壁ケーシング内に供給されたフッ素含有ガスは雰囲気ガスとしてるつぼ6周りにフローさせてCaF2の再酸化防止の役割を果たす。
結晶成長工程(第3工程)ガスとしてCF4ガスを流すため、バルブ17bを閉じ、バルブ17cを開けて、マスフローメータ16cを調整して20ml/minの流量でCF4を導入した。最終的にるつぼ温度を1450℃まで昇温し、CF4
ガスを、CaF2融液中に1時間吹き込んだ。さらにるつぼ温度を1430℃で1時間保持した後、そのままるつぼ移動軸8を1mm/hの速度で下降させ、単結晶成長を完了した。
【0038】
得られたCaF2単結晶から一辺50mm角×20mm厚みの試験片を切り出して両面を鏡面研磨した後、真空紫外域での光透過性を評価した。分光透過率測定結果を図2に示す。図2より、193nmおよび157nmでの内部透過率(試料表面での反射を除した正味の光透過率)はそれぞれ99.9%、99.6%であり、優れた光学特性を有することが判明した。
また、この結晶に対して1パルス当たり70mJ/cm2のエネルギーの ArFおよびF2エキシマレーザ光を105パルス照射した後の内部透過率は、193nmおよび157nm1でそれぞれ99.8%、99.5%であり、照射による劣化が極めて少なく、優れたレーザ耐性を有することが判明した。
【0039】
実施例2についても実施例1と同様にCaF2単結晶の製造、及び評価を行った。実施例3〜7については結晶成長工程(第3工程)での、CaF2融液中への精製ガスの吹き込みは行わなかったが、他は実施例1と同様にCaF2単結晶の製造、及び評価を行った。結果は表1に示す通りである。いずれも優れた光学特性及びレーザ耐性を有することがわかる。
【0040】
【比較例】
次に、本発明の比較例について説明する。表2に示すような比較例1〜4を作製した。
【0041】
【表2】
【0042】
比較例1については、第1工程におけるNF3ガスに変えてC2F6ガスを用いる他は、実施例3〜7と同様の手順に従い、CaF2単結晶を成長させた。図2に示すように、得られた単結晶の光透過スペクトルは、150nm近傍から大きな光吸収を示した。その結果193nmでの内部透過率は99.8%と良好であったが、157nmでの内部透過率は85%と低く、F2エキシマレーザ用光学材料として使用に耐えないものであった。
比較例2〜4は、各工程で使用されるフッ素含有ガスを表2で示すように変更し、実施例3〜7と同様の手順に従ってCaF2単結晶を作製した。結果は表2に示す通り、比較例2は内部透過率が著しく低く、F2エキシマレーザ用光学材料として使用に耐えないものであった。また比較例3、4については、使用ガスによるるつぼ消耗が著しく、結晶成長が不可能であった。
【0043】
なお、本発明における単結晶のフッ化物原料としては、CaF2のほか、BaF2、MgF2等が挙げられる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、十分なレーザ耐性と優れた透過性能を有する高純度なフッ化物単結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるフッ化物単結晶の製造装置を示した概略図である。
【図2】実施例1及び比較例1の透過率を示したグラフである。
【符号の説明】
1 炉壁本体
2 断熱材
3 ヒータ
4 隔壁ケーシング
5 るつぼ台
6 るつぼ
6A るつぼ下端部
7 結晶原料
8 るつぼ移動軸
9 フッ素含有ガス導入管
10 炉下蓋フランジ
11 真空排気ユニット
12 第1工程ガス
13 第2工程ガス
14 CF4ガス
15 N2ガス
16 マスフローメータ
17 バルブ
19 フッ素含有ガス排出管
21 フッ素ガス除外装置
22 種結晶
Claims (7)
- フッ化物単結晶原料をフッ素含有ガスに晒しながら加熱して前記原料に含まれる不純物を前記フッ素含有ガスと反応させて前記原料を精製した後に単結晶を成長させるフッ化物単結晶の製造方法において、
前記精製における初期の第1温度域ではその温度域で分解する第1ガスを用いて前記反応を行い、その後前記第1温度域より高温の第2温度域では、前記第1温度域とは異なるガスであって前記第1ガスより高い温度で分解する第2ガスを用いて前記反応を行うことを特徴とするフッ化物単結晶の製造方法。 - 前記第1温度域は300〜700℃の範囲内にあり、前記第2温度域は前記第1温度域よりも高温であってかつ500〜1200℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のフッ化物単結晶の製造方法。
- 前記第1ガスとしてClF3、NF3、F2の中から選ばれた1又は2種以上のガスが用いられ、前記第2ガスとしてCHF3、CH2F2、C2F6、C3F8の中から選ばれた1または2種以上のガスが用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ化物単結晶の製造方法。
- 前記単結晶成長を前記第2温度域よりも高温の第3温度域で行い、前記第3温度域は1200℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ化物単結晶の製造方法。
- 前記単結晶の成長においては、CF4、C2F6、C3F8の中から選ばれた1又は2種以上のガスが用いられることを特徴とする請求項3又は4に記載のフッ化物単結晶の製造方法。
- 前記単結晶の成長が、ブリッジマンストックバーガー法又は垂直温度勾配法により行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフッ化物単結晶の製造方法。
- 前記フッ化物単結晶がCaF2、BaF2のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフッ化物単結晶の製造方法。
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