JP4839205B2 - 蛍石の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば光学用レンズ、例えば半導体リソグラフィーなどに用いるレンズ材料として利用することができる蛍石(;CaF、フッ化カルシウム)の製造方法に関する。
蛍石の結晶(CaF2結晶)は、色分散が非常に小さく、一般的な光学ガラスに比べて屈折率及び分散率が低い上、特殊な部分分散特性(:異常部分分散、アッベ数:95)を備えているため、色消レンズ(アポクロマート)、赤外線分析装置やエキシマレーザー等の窓板、TVカメラレンズや顕微鏡レンズ、微細パターンをウェハー上に転写するための装置である半導体リソグラフィー(ステッパーやスキャナーなどを含む)装置のレンズなどに広く利用されている。
半導体リソグラフィー装置において微細化加工を担うステッパー(;縮小投影型露光装置)は、解像力を高めるために光源の短波長化が進められ、エキシマレーザ(波長:193nm)を光源に用いたステッパーが開発されたのに伴い、これに適したレンズ材料として蛍石が注目されている。
しかし、このような高精度ステッパーに用いるレンズ材料には、解像度を高めるために歪複屈折が少ないことが求められ、そのためには材料中に残存する歪(残留歪)が極めて少なくて均質な蛍石である必要があるが、そのような蛍石を製造することは容易なことではない。
蛍石は、ブリッジマン法等の単結晶育成法によってCaF2結晶を成長させた後、得られたCaF2結晶を熱処理(アニールとも言う)して製造するのが一般的である。結晶育成工程で得られたCaF2結晶を熱処理することにより、結晶育成時に導入された残留応力を除去することができ、CaF2結晶内の残留歪(歪複屈折)を低減することができる。したがって、上記の如き高度な光学特性を備えた蛍石を製造するためには熱処理工程は特に重要である。
そこで、熱処理工程に注目して蛍石の製造技術を検討してみると、従来の熱処理方法は、結晶育成工程で得たCaF2結晶を熱処理炉内に配置し、炉内温度を所定の熱処理温度まで上昇させ、当該熱処理温度に到達させた後、結晶内の温度分布(温度差)を極力低減・抑制するために、精密に温度を制御して当該熱処理温度を一定時間維持し、その後徐冷するという方法が一般的であった。例えば特許文献1には、蛍石単結晶を1020℃〜1150℃の範囲にある第1の温度(1080℃)に所定時間保持した後、第1の温度(1080℃)から第2の温度(700℃以下)まで1.0(℃/時間)以下の冷却速度で降温する方法が開示されており、特許文献2には、結晶成長したフッ化物単結晶をアニール炉に入れ、るつぼを900〜1000℃に加熱し、20時間以上加熱する方法が開示され、特許文献3には、熱処理炉内を真空雰囲気にし、1000℃で24時間保持して熱処理した後、冷却する方法が開示されている。
特開2001−335398号公報 特開2003−238293号公報、[0038]等 特開2004−99409号公報、[0055]等
本発明は、CaF2結晶の熱処理工程を工夫することにより、歪複屈折を有効に低減することができ、歪複屈折(歪み)が少なくて均質なCaF2結晶を得ることができる新たな蛍石の製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、結晶育成工程で得られたCaF2結晶の熱処理において、炉内温度を上昇させて1000〜1350℃の範囲内に到達させた後、900〜1350℃の温度領域にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施し、続いて冷却することを特徴とする蛍石の製造方法を提案する。
本発明では、蛍石の融点(約1420℃)より低温の温度領域において昇降サイクルを実施し、CaF2結晶内に積極的に温度勾配を導入すると共に、その温度勾配を周期的に反転させることにより、結晶内に存在する微視的欠陥である転位を低減することができ、巨視的にも結晶の均質性を高め、残留歪(歪複屈折)を有効に低減することができる。
本発明の製造方法によれば、歪みなどが入り易く且つ除去し難いと言われる<100>方位の平行平面を有する結晶基板(「<100>方位の結晶基板」という)において、光入射面を(100)面としたときの<100>方位の波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値の平均値が0.4nm/cm〜1.8nm/cmであり、且つ波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値の最大値と最小値の差(:PV:peak-to-valley)が4.0nm/cm以下である蛍石(図3(a)参照)、或いは、<111>方位の平行平面を有する結晶基板(「<111>方位の結晶基板」という)において、光入射面を(111)面としたときの、<111>方位の波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値の平均値が0.2nm/cm〜0.4nm/cmであり、且つ波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値の最大値と最小値の差(:PV)が3.2nm/cm以下である蛍石(図3(b)参照)を得ることができる。
このように、本発明の製造方法により得られる蛍石は、歪などが入りやすく且つ除去し難いと言われる<100>方位の結晶基板、或いは<111>方位の結晶基板において、巨視的に結晶の均質性が高く、且つ残留歪(歪複屈折)が極めて少ない蛍石であるため、例えばTVカメラレンズ、顕微鏡レンズ、赤外線分析用窓材、半導体リソグラフィー装置に用いられるレンズなどのレンズ材料、特に高度な光学特性が要求されるArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ露光装置やF(フッ素)エキシマレーザ露光装置など、紫外或いは真空紫外波長域のレーザを光源に用いた露光装置等のステッパー用レンズ材料として好適に用いることができる。
なお、本発明において、熱処理時の温度は、特にことわらない限り、炉内の雰囲気温度の意である。
また、本発明において、「<100>方位の平行平面を有する」とは、平行平面が(100)面或いは(100)面に平行な面であることを意味し、「<111>方位の平行平面を有する」も同様である。
また、本明細書において「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意を示し、同時に「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意も包含する。
発明を実施するための形態
以下に本発明の実施形態について詳細に述べるが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本実施形態では、結晶育成工程で得られたCaF2結晶を熱処理炉内に配置し、炉内温度を上昇させて昇温目標温度に到達させた後、所定の熱処理温度領域にて、降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施する熱処理工程と、熱処理工程に続いて冷却する冷却工程と、を経て蛍石を製造する(以下、この製造方法を「本製造方法」という)。
<原料>
本製造方法では、フッ化カルシウム(CaF)の原料を特に限定するものではなく、CaFの原料として知られている全ての原料を用いることができる。一例としては、粉末状のCaF原料と、スカベンジャー或いはフッ化剤、すなわち蛍石内の不純物(主に酸素)を除去する反応材料とを挙げることができる。
CaF原料としては、公知のCaF原料を用いることができる。紫外や真空紫外域で使用されるCaF2結晶を製造するには、人工的に合成された高純度なCaF粉末を原料として使用するのが好ましい。例えば炭酸カルシウムとフッ化水素とを反応させて合成して得られる粉末状のCaFを挙げることができる。但し、このような合成法に限定するものではない。
また、スカベンジャー或いはフッ化剤としては、フッ化亜鉛(ZnF2)、フッ化鉛(PbF2)、フッ化ビスマス(BiF3)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化リチウム(LiF)等を挙げることができる。
<結晶育成工程>
本製造方法は、CaF2結晶の結晶育成方法を特に限定するものではない。例えばBridgman−Stockbarger法(「BS法」ともいう)、Czochralski(「CZ法」ともいう)、ゾーンメルト法、これらの改良法、その他の融液成長法等を適宜採用することができる。
ちなみに、BS法は、るつぼの中に原料を入れて融解させ、るつぼを引下げながら、るつぼ底から単結晶を育成させていく方法である。結晶育成装置が比較的安価であり、大口径の単結晶を比較的に容易に育成可能である特徴を備えている。その反面、結晶成長方位の制御が困難であり、また、結晶育成時や冷却時に無理な応力がかかるため、応力分布が結晶内に残って歪複屈折が誘起され易いと言われている。本発明によれば、このような結晶内に残留する歪複屈折を軽減することができるから、逆に言うと、BS法は本発明の熱処理工程の効果をより一層享受できる結晶育成方法であるとも言うことができる。
CZ法は、るつぼ内に原料を入れて融解させ、シード(種結晶)を溶融液面に接触させて単結晶を回転引き上げながら育成(結晶化)していく方法である。CZ法は、結晶方位を特定し結晶化させることが可能であるため、目的とする結晶方位の育成が容易であると言われている。
なお、短波長レーザ用の光学素子として使用する場合、CaF2結晶中の金属不純物の濃度が極めて微量であることが求められる。例えば鉄(Fe)やニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の不純物量が各々10ppm以下、特に1ppm以下、中でも特に0.05ppm程度以下であるのが好ましいとされる。
このように原料中の金属不純物の濃度を低減させる精製処理方法の一例として、フッ酸や硝酸などの清浄な酸を用いて50℃程度以上の温度で溶液化した後、室温まで温度を徐々に低下させる方法を挙げることができる。
以上のようにして育成された結晶は、必要に応じて所定の大きさ、並びに、所定の方位の表面が出現するように切り出して熱処理工程に供するのが好ましい。本実施形態では、(100)面或いは(111)面に平行に結晶を出現させるように結晶を切り出し、所定の大きさ(必要な有効径)を有する平行平面多角形形状に加工し(これを「結晶基板」という)、これを熱処理工程に供している。
<熱処理工程>
熱処理工程では、上記のように結晶育成工程で育成され、加工されたCaF2結晶基板(「<100>方位の結晶基板」又は「<111>方位の結晶基板」、これらを代表して「CaF2結晶基板」という)を熱処理炉内に配置し、炉内温度を上昇させ、昇温目標温度に到達させた後、所定の熱処理温度領域にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施する。
なお、上記の炉内温度とは、特にことわらない限り、炉内の雰囲気温度の意である。
使用する熱処理炉の構成は限定されるものではなく、公知の構成の熱処理炉を使用することができる。一例としては、図1に示すような熱処理炉を使用することができる。この図において、1は気密炉、2は断熱材、3は支持台、4はカーボン製容器、5はCaF2結晶基板、6はヒータ、7は温度センサ、8は温度制御装置である。
熱処理炉は、内部を気密状態に保持し得る気密炉1を備え、気密炉1内の雰囲気を所定状態に調整できると共に、気密炉1内の温度を決められた温度プロファイルに従って高精度に制御できるものであれば特に構成を限定するものではない。
気密炉1内の雰囲気を所定状態に調整するには、例えば排気系統と気体導入系統とを気密炉1に付設し、該排気系統により気密炉1内の気体を排気しつつ該気体導入系統により所定の気体を適切量導入して調整するようにすればよい。
また、気密炉1内の温度を決められた温度プロファイルに従って高精度に制御するには、例えば断熱材2の内壁に沿って複数個のヒータ6を配置すると共に、気密炉1内に設置したカーボン製容器4の外壁付近の適宜高さ、例えば上層部、中層部及び下層部の各高さに温度センサ7を設置し、これら温度センサ7と前記ヒータ6とを温度制御装置8を介して接続することにより、温度制御装置8に入力された温度プロファイルに従って制御するようにすればよい。
熱処理炉内にCaF2結晶基板5を配置する際は、例えば図1に示すように、複数のカーボン製容器4を上下方向に積み重ねるようにして気密炉1内に配置し、それらカーボン製容器4のそれぞれ内にCaF2結晶基板5を収納するようにすればよい。
ここで、カーボン製容器4は、例えば、開口部を備えた枡状の容器本体と蓋体とからなり、容器本体は上下に積み重ねることができ、上に積み重ねた容器本体の底部が下側の容器本体の蓋として機能し、最上部の容器本体にのみ蓋体を被着すればよい構成のものを用いることができる。
このカーボン製容器4は、例えばカーボンの押出成型品やCIP成型品等の一般的なカーボン素材からなるものを用いることができる。
熱処理における雰囲気、上記熱処理炉で言えば、気密炉1及びカーボン製容器4内の雰囲気は、真空雰囲気、或いはアルゴン(Ar)等の不活性ガス雰囲気とすればよい。中でも、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、その中でも、アルゴンガスにフッ素系ガス(例えばCFガス)を混合・注入してなる雰囲気が好ましい。
また、CaF2結晶基板5をカーボン製容器4内に収納する際、CaF2結晶基板5と共にフッ化剤を一緒に収納するようにしてもよい。フッ化剤としては、例えば、テフロン(登録商標)、酸性フッ化アンモニウム(NH4F・HF)等、或いは、フッ化鉛、フッ化亜鉛等、或いは、昇温することによりフッ素成分を気化させることができる物質を用いることができる。
このフッ化剤は、CaF2結晶基板5の表面やカーボン製容器4の内部に残る酸素や水分がCaF2結晶基板5と反応することを防ぐために用いるものであるが、必ず用いる必要はない。
次に、熱処理工程における温度プロファイルについて説明する。
熱処理工程では、図2に示すように、先ず炉内温度を所定の昇温目標温度まで上昇させ(:昇温ステップ)、続いて、所定の熱処理温度領域にて、降温と昇温とを交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施し(昇降サイクルステップ)、その後、冷却工程に移るようにすることが重要である。
昇温ステップにおける昇温速度は特に限定するものではないが、カーボン製容器4内に収納されたCaF2結晶基板5が熱衝撃により割れ等の破損が生じないように炉内温度を上昇させる必要があるため、例えば10℃/h〜200℃/hとするのが好ましい。
昇温目標温度は、1000〜1350℃の範囲内の温度に設定することが重要である。
この際、昇温目標温度が1000℃より低いと、熱処理による歪緩和の効果が得られ難くなるから好ましくない。また、昇温目標温度が1350℃より高くなると、蛍石の融点(約1420℃)より低温であっても融け始める、或いは昇華する可能性があるから好ましくない。
このような観点から、昇温目標温度は1000〜1300℃の範囲内に設定するのがより好ましく、中でも1150〜1250℃の範囲内の温度に設定するのがさらに好ましい。
昇降サイクルにおける温度領域、すなわち熱処理温度領域は、900〜1350℃の温度領域にて、特に1000〜1300℃の温度領域にて、降温と昇温を交互に行なうことが好ましい。
このように900〜1350℃の温度領域にて降温と昇温を交互に行なうことにより、CaF2結晶内に温度勾配を導入でき、且つこの温度勾配を周期的に反転させることができるから、これによって結晶内に存在する微視的欠陥である転位を低減することができ、巨視的にも結晶の均質性を高め、残留歪(歪複屈折)を有効に低減することができる。
昇降サイクルにおける降温と昇温は、降温時の下限温度及び昇温時の上限温度が一定となるように繰り返してもよい。また、例えば降温時の下限温度がサイクルを繰り返す毎に上昇するように設定したり、或いは下降するように設定したり、或いは特定の規則性なくランダムに設定したりしてもよい。同様に、昇温時の上限温度がサイクルを繰り返す毎に上昇するように設定したり、或いは下降するように設定したり、或いは特定の規則性なくランダムに設定したりすることもできる。
さらに、昇降サイクルにおける降温から昇温へ或いは昇降から降温への切り替えを、直線的に折り返すような温度プロファイルで行なってもよいし、また、曲線的に折り返して、例えばsin曲線となるような波形状のプロファイルとなるように温度制御してもよい。
昇降サイクルにおける降温と昇温は、CaF2結晶の超イオン伝導転移点である1150℃より高い温度領域、例えば1150〜1350℃の領域で降温と昇温を交互に繰り返すようにしてもよいし、また、CaF2の超イオン伝導転移点である1150℃より低い温度領域、例えば900〜1150℃の領域で降温と昇温を交互に繰り返すようにしてもよいが、最も効果的であるのは、CaF2の超イオン伝導転移点である1150℃を跨いで降温と昇温を交互に行なう方法である。
CaF2の超イオン伝導転移点である1150℃を跨いで降温と昇温を交互に行なうことにより、温度の上昇或いは下降とともに結晶内を移動する転位や結晶亜粒界組織の移動をさらに促進させることにより、消失させることができる。
なお、「CaF2の超イオン伝導転移点」とは、CaF2が顕著に超イオン導電性を示す温度の意味である。
昇降サイクルにおける昇温速度は、1℃/h〜500℃/hとするのが好ましく、特に10℃/h〜100℃/h、中でも特に30℃/h〜80℃/hとするのが好ましい。
昇降サイクルにおける降温速度は、1℃/h〜500℃/hとするのが好ましく、特に10℃/h〜100℃/h、中でも特に30℃/h〜80℃/hとするのが好ましい。
昇降サイクルステップのサイクル数は、少なくとも2回行なうことが重要であり、好ましくは2〜10回であり、中でも4〜6回が好ましい。
昇降サイクルステップのトータル時間は、2時間〜100時間とするのが好ましく、特に4時間〜80時間、中でも特に14時間〜50時間とするのが好ましい。
また、昇降サイクルの1サイクルの時間(サイクル周期)、すなわち降温開始から昇温過程を経て再び降温開始するまでの1サイクルの時間は、1時間〜10時間とするのが好ましく、特に4時間〜8時間とするのが好ましい。
<冷却工程>
熱処理後の冷却工程では、歪複屈折率等が増加してしまうため、ゆっくり時間をかけて冷却することが重要である。その反面、あまり時間をかけると、生産性を著しく損ねてしまう。このような観点から、熱処理後の冷却工程では、例えば0.1〜5℃/h、特に0.5〜1.5℃/hの冷却速度で室温付近まで冷却するのが好ましい。
<蛍石:CaF2結晶>
上記の製造方法によれば、次の光学特性を備えた蛍石を得ることができる。
<100>方位の結晶基板において、光入射面を(100)面としたときの、波長633nmにおける歪複屈折分布を測定した際、厚みあたりの歪複屈折値の平均値が0.4nm/cm〜1.8nm/cm、特に0.4nm/cm〜1.1nm/cm、中でも特に0.4〜0.9nm/cmのものを得ることができる。
また、厚み当りの波長633nmにおける歪複屈折値の最大値と最小値の差(:PV)は、4.0nm/cm以下、特に3.3nm/cm以下、中でも特に1.2以下のものを得ることができる。
また、<111>方位の結晶基板において、光入射面を(111)面としたときの、波長633nmにおける歪複屈折分布を測定した際、厚みあたりの歪複屈折値の平均値が0.2nm/cm〜0.4nm/cm、特に0.2nm/cm〜0.3nm/cm、中でも特に0.20nm/cm〜0.22nm/cmのものを得ることができる。
また、厚み当りの波長633nmにおける歪複屈折値の最大値と最小値の差(:PV)は3.2nm/cm以下、特に0.9nm/cm以下、中でも特に0.7nm/cm以下のものを得ることができる。
<用途>
上記のように本発明の製造方法により得られる蛍石は、歪などが入りやすく且つ除去し難いと言われる<100>方位の結晶基板、或いは<111>方位の結晶基板において、巨視的に結晶の均質性が高く、且つ残留歪(歪複屈折)が極めて少ないという特徴を有しており、必要に応じて加工し光学レンズをはじめとする各種光学部品として使用することができる。
こうして得られたレンズは、例えば色消レンズ(アポクロマート)、TVカメラレンズ、顕微鏡レンズ、赤外線分析用窓材、半導体リソグラフィー(ステッパー、スキャナー)装置に用いられるレンズ、その他の光学レンズとして用いることができる。特に巨視的に結晶の均質性が高く、且つ残留歪(歪複屈折)が極めて少ない蛍石を得ることができるから、高精度ステッパー、すなわちArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ等の紫外或いは真空紫外波長域のレーザを光源に用いた露光装置等のステッパー用レンズ材料として好適に用いることができる。
以下、本発明に関する実施例及び比較例について説明する。但し、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではない。
先ず、得られた蛍石の評価方法について説明する。
<波長633nmにおける歪複屈折値・分布の測定>
熱処理前後のCaF2結晶基板内の歪複屈折量の分布は、歪複屈折測定装置(ユニオプト社製「ABR−10A」)を用いて、<100>方位の結晶基板(表中の有効径を有し、且つ平面がCaF2の(100)面に平行)、及び、<111>方位の結晶基板(表中の有効径を有し、且つ平面がCaF2の(111)面に平行)のそれぞれについて、測定範囲(有効径)内を5mm間隔で測定し、<100>方位の結晶基板における歪複屈折値の平均値及びPV値と、<111>方位の結晶基板における歪複屈折値の平均値及びPV値とを求めた。この際、測定装置が設置されている部屋の温度(室温)に結晶基板を十分馴染ませてから測定を開始するようにした。
なお、結晶内に存在する歪の大きさは、結晶内の歪複屈折量の分布で示すことができ、結晶内に残留する歪によって生ずる単位長さあたりの光路差が「歪複屈折」である。
(実施例)
本実施例では、図1に示される構成の熱処理炉を用いて熱処理及びその後の冷却を行なった。以後の比較例も同様である。
ブリッジマン・ストックバーガー法(BS法)により育成されたCaF2結晶を<100>方位又は<111>方位に切り出し、表1及び表2に示した有効径の円を採取可能な多角形状の基板に加工して、<100>方位の結晶基板と<111>方位の結晶基板を作製した。これら両方の結晶基板を、フッ化剤としてのPbF2と共にカーボン製容器4内に収納した。
先ず、熱処理炉内を減圧して真空雰囲気とすると共に炉内温度を40℃/hの速度で400℃まで上昇させ、炉内の酸素ガス及び水分等を除去した後、Arガスを炉内に導入して熱処理炉内を常圧、Arガス雰囲気とした。
その後、炉内温度を35℃/hの速度で上昇させ、表1及び表2に示した昇温目標温度に到達させた後、表1及び表2に示した温度領域(昇降サイクルの下限〜上限)にて、昇温と降温を交互に行なう昇降サイクルを、表1及び表2に示したサイクル回数だけ実施した。なお、昇降サイクルにおける昇温時間・速度と降温時間・速度とを等しくした。
続いて、室温まで冷却速度3℃/hにて冷却した。
(比較例)
上記実施例と同様に<100>方位の結晶基板と<111>方位の結晶基板を作製し、これら両方の結晶基板を、フッ化剤としてのPbF2と共に、カーボン製容器4内に収納した。
先ず、熱処理炉内を減圧して真空雰囲気とすると共に炉内温度を40℃/hの速度で400℃まで上昇させ、炉内の酸素ガス及び水分等を除去した後、Arガスを炉内に導入して熱処理炉内を常圧、Arガス雰囲気とした。
その後、炉内温度を35℃/hの速度で上昇させ、表1及び表2に示した昇温目標温度に到達させた後、その温度を、表1及び表2に示した保持時間保持した後、室温まで冷却速度3℃/hにて冷却した。
Figure 0004839205
Figure 0004839205
(考察)
表1及び表2の結果において、実施例及び比較例の結果を比較検討すると、CaF2結晶基板の熱処理では、所定の温度領域(900〜1350℃の温度領域)にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを繰り返すことにより、巨視的に結晶の均質性が高く、且つ残留歪(歪複屈折)が極めて少ない蛍石を得られることが分った。
その際、昇降サイクルでは、CaF2の超イオン伝導転移点を跨いで降温と昇温を交互に行なうことが好ましいことが分った。
また、昇温目標温度は1000〜1350℃の範囲であればよく、特に1100〜1300℃の範囲内に設定するのが好ましいことが分った。
また、昇降サイクルにおける温度領域、すなわち熱処理温度領域は900〜1350℃の温度領域であればよく、特に1000〜1300℃の温度領域であるのが好ましいことが分った。
熱処理炉の一例を示した断面図である。 熱処理工程における温度プロファイルの一例を示した図である。 CaF2結晶基板を横から見た図であり、(a)は<100>方位の結晶基板を説明する図であり、(b)は<111>方位の結晶基板を説明する図である。
符号の説明
1 気密炉
2 断熱材
3 支持台
4 カーボン製容器
5 CaF2結晶基板
6 ヒータ
7 温度センサ
8 温度制御装置

Claims (2)

  1. 単結晶育成工程で得られたCaF2結晶の熱処理において、炉内温度を上昇させて1000〜1350℃の範囲内に到達させた後、900〜1350℃の温度領域にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを、サイクル周期すなわち降温開始から昇温過程を経て再び降温開始するまでの1サイクルの時間を4時間〜10時間とすると共に、少なくとも2回実施し、続いて冷却することを特徴とする蛍石の製造方法。
  2. 昇降サイクルでは、CaF2の超イオン伝導転移点である1150℃を跨いで降温と昇温を交互に行なうことを特徴とする請求項1に記載の蛍石の製造方法。
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