JP2008156165A - 蛍石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結晶育成工程で得られたCaF2結晶の熱処理において、炉内温度を上昇させて1000〜1350℃の範囲内に到達させた後、900〜1350℃の温度領域にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施し、続いて冷却することを特徴とする蛍石の製造方法を提案する。
【選択図】図2
Description
しかし、このような高精度ステッパーに用いるレンズ材料には、解像度を高めるために歪複屈折が少ないことが求められ、そのためには材料中に残存する歪(残留歪)が極めて少なくて均質な蛍石である必要があるが、そのような蛍石を製造することは容易なことではない。
また、本発明において、「<100>方位の平行平面を有する」とは、平行平面が(100)面或いは(100)面に平行な面であることを意味し、「<111>方位の平行平面を有する」も同様である。
また、本明細書において「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意を示し、同時に「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意も包含する。
本製造方法では、フッ化カルシウム(CaF2)の原料を特に限定するものではなく、CaF2の原料として知られている全ての原料を用いることができる。一例としては、粉末状のCaF2原料と、スカベンジャー或いはフッ化剤、すなわち蛍石内の不純物(主に酸素)を除去する反応材料とを挙げることができる。
本製造方法は、CaF2結晶の結晶育成方法を特に限定するものではない。例えばBridgman−Stockbarger法(「BS法」ともいう)、Czochralski(「CZ法」ともいう)、ゾーンメルト法、これらの改良法、その他の融液成長法等を適宜採用することができる。
このように原料中の金属不純物の濃度を低減させる精製処理方法の一例として、フッ酸や硝酸などの清浄な酸を用いて50℃程度以上の温度で溶液化した後、室温まで温度を徐々に低下させる方法を挙げることができる。
熱処理工程では、上記のように結晶育成工程で育成され、加工されたCaF2結晶基板(「<100>方位の結晶基板」又は「<111>方位の結晶基板」、これらを代表して「CaF2結晶基板」という)を熱処理炉内に配置し、炉内温度を上昇させ、昇温目標温度に到達させた後、所定の熱処理温度領域にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施する。
なお、上記の炉内温度とは、特にことわらない限り、炉内の雰囲気温度の意である。
気密炉1内の雰囲気を所定状態に調整するには、例えば排気系統と気体導入系統とを気密炉1に付設し、該排気系統により気密炉1内の気体を排気しつつ該気体導入系統により所定の気体を適切量導入して調整するようにすればよい。
また、気密炉1内の温度を決められた温度プロファイルに従って高精度に制御するには、例えば断熱材2の内壁に沿って複数個のヒータ6を配置すると共に、気密炉1内に設置したカーボン製容器4の外壁付近の適宜高さ、例えば上層部、中層部及び下層部の各高さに温度センサ7を設置し、これら温度センサ7と前記ヒータ6とを温度制御装置8を介して接続することにより、温度制御装置8に入力された温度プロファイルに従って制御するようにすればよい。
このカーボン製容器4は、例えばカーボンの押出成型品やCIP成型品等の一般的なカーボン素材からなるものを用いることができる。
このフッ化剤は、CaF2結晶基板5の表面やカーボン製容器4の内部に残る酸素や水分がCaF2結晶基板5と反応することを防ぐために用いるものであるが、必ず用いる必要はない。
この際、昇温目標温度が1000℃より低いと、熱処理による歪緩和の効果が得られ難くなるから好ましくない。また、昇温目標温度が1350℃より高くなると、蛍石の融点(約1420℃)より低温であっても融け始める、或いは昇華する可能性があるから好ましくない。
このような観点から、昇温目標温度は1000〜1300℃の範囲内に設定するのがより好ましく、中でも1150〜1250℃の範囲内の温度に設定するのがさらに好ましい。
このように900〜1350℃の温度領域にて降温と昇温を交互に行なうことにより、CaF2結晶内に温度勾配を導入でき、且つこの温度勾配を周期的に反転させることができるから、これによって結晶内に存在する微視的欠陥である転位を低減することができ、巨視的にも結晶の均質性を高め、残留歪(歪複屈折)を有効に低減することができる。
さらに、昇降サイクルにおける降温から昇温へ或いは昇降から降温への切り替えを、直線的に折り返すような温度プロファイルで行なってもよいし、また、曲線的に折り返して、例えばsin曲線となるような波形状のプロファイルとなるように温度制御してもよい。
CaF2の超イオン伝導転移点である1150℃を跨いで降温と昇温を交互に行なうことにより、温度の上昇或いは下降とともに結晶内を移動する転位や結晶亜粒界組織の移動をさらに促進させることにより、消失させることができる。
なお、「CaF2の超イオン伝導転移点」とは、CaF2が顕著に超イオン導電性を示す温度の意味である。
昇降サイクルにおける降温速度は、1℃/h〜500℃/hとするのが好ましく、特に10℃/h〜100℃/h、中でも特に30℃/h〜80℃/hとするのが好ましい。
昇降サイクルステップのトータル時間は、2時間〜100時間とするのが好ましく、特に4時間〜80時間、中でも特に14時間〜50時間とするのが好ましい。
また、昇降サイクルの1サイクルの時間(サイクル周期)、すなわち降温開始から昇温過程を経て再び降温開始するまでの1サイクルの時間は、1時間〜10時間とするのが好ましく、特に4時間〜8時間とするのが好ましい。
熱処理後の冷却工程では、歪複屈折率等が増加してしまうため、ゆっくり時間をかけて冷却することが重要である。その反面、あまり時間をかけると、生産性を著しく損ねてしまう。このような観点から、熱処理後の冷却工程では、例えば0.1〜5℃/h、特に0.5〜1.5℃/hの冷却速度で室温付近まで冷却するのが好ましい。
上記の製造方法によれば、次の光学特性を備えた蛍石を得ることができる。
また、厚み当りの波長633nmにおける歪複屈折値の最大値と最小値の差(:PV)は、4.0nm/cm以下、特に3.3nm/cm以下、中でも特に1.2以下のものを得ることができる。
また、<111>方位の結晶基板において、光入射面を(111)面としたときの、波長633nmにおける歪複屈折分布を測定した際、厚みあたりの歪複屈折値の平均値が0.2nm/cm〜0.4nm/cm、特に0.2nm/cm〜0.3nm/cm、中でも特に0.20nm/cm〜0.22nm/cmのものを得ることができる。
また、厚み当りの波長633nmにおける歪複屈折値の最大値と最小値の差(:PV)は3.2nm/cm以下、特に0.9nm/cm以下、中でも特に0.7nm/cm以下のものを得ることができる。
上記のように本発明の製造方法により得られる蛍石は、歪などが入りやすく且つ除去し難いと言われる<100>方位の結晶基板、或いは<111>方位の結晶基板において、巨視的に結晶の均質性が高く、且つ残留歪(歪複屈折)が極めて少ないという特徴を有しており、必要に応じて加工し光学レンズをはじめとする各種光学部品として使用することができる。
先ず、得られた蛍石の評価方法について説明する。
熱処理前後のCaF2結晶基板内の歪複屈折量の分布は、歪複屈折測定装置(ユニオプト社製「ABR−10A」)を用いて、<100>方位の結晶基板(表中の有効径を有し、且つ平面がCaF2の(100)面に平行)、及び、<111>方位の結晶基板(表中の有効径を有し、且つ平面がCaF2の(111)面に平行)のそれぞれについて、測定範囲(有効径)内を5mm間隔で測定し、<100>方位の結晶基板における歪複屈折値の平均値及びPV値と、<111>方位の結晶基板における歪複屈折値の平均値及びPV値とを求めた。この際、測定装置が設置されている部屋の温度(室温)に結晶基板を十分馴染ませてから測定を開始するようにした。
なお、結晶内に存在する歪の大きさは、結晶内の歪複屈折量の分布で示すことができ、結晶内に残留する歪によって生ずる単位長さあたりの光路差が「歪複屈折」である。
本実施例では、図1に示される構成の熱処理炉を用いて熱処理及びその後の冷却を行なった。以後の比較例も同様である。
その後、炉内温度を35℃/hの速度で上昇させ、表1及び表2に示した昇温目標温度に到達させた後、表1及び表2に示した温度領域(昇降サイクルの下限〜上限)にて、昇温と降温を交互に行なう昇降サイクルを、表1及び表2に示したサイクル回数だけ実施した。なお、昇降サイクルにおける昇温時間・速度と降温時間・速度とを等しくした。
続いて、室温まで冷却速度3℃/hにて冷却した。
上記実施例と同様に<100>方位の結晶基板と<111>方位の結晶基板を作製し、これら両方の結晶基板を、フッ化剤としてのPbF2と共に、カーボン製容器4内に収納した。
その後、炉内温度を35℃/hの速度で上昇させ、表1及び表2に示した昇温目標温度に到達させた後、その温度を、表1及び表2に示した保持時間保持した後、室温まで冷却速度3℃/hにて冷却した。
表1及び表2の結果において、実施例及び比較例の結果を比較検討すると、CaF2結晶基板の熱処理では、所定の温度領域(900〜1350℃の温度領域)にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを繰り返すことにより、巨視的に結晶の均質性が高く、且つ残留歪(歪複屈折)が極めて少ない蛍石を得られることが分った。
その際、昇降サイクルでは、CaF2の超イオン伝導転移点を跨いで降温と昇温を交互に行なうことが好ましいことが分った。
また、昇温目標温度は1000〜1350℃の範囲であればよく、特に1100〜1300℃の範囲内に設定するのが好ましいことが分った。
また、昇降サイクルにおける温度領域、すなわち熱処理温度領域は900〜1350℃の温度領域であればよく、特に1000〜1300℃の温度領域であるのが好ましいことが分った。
2 断熱材
3 支持台
4 カーボン製容器
5 CaF2結晶基板
6 ヒータ
7 温度センサ
8 温度制御装置
Claims (2)
- 結晶育成工程で得られたCaF2結晶の熱処理において、炉内温度を上昇させて1000〜1350℃の範囲内に到達させた後、900〜1350℃の温度領域にて降温と昇温を交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施し、続いて冷却することを特徴とする蛍石の製造方法。
- 昇降サイクルでは、CaF2の超イオン伝導転移点である1150℃を跨いで降温と昇温を交互に行なうことを特徴とする請求項1に記載の蛍石の製造方法。
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