JP2012116406A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】接地時の面内収縮力に起因したワイピング変形を抑制して摩耗性能を向上できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部1のカーカス層2の外周側にベルト層3が配設され、トレッド面Trに、タイヤ周方向に沿って延びる主溝6と、それらにより区画される陸部10とが設けられた空気入りタイヤにおいて、ベルト層3が、第1のベルトプライ7と、第1のベルトプライ7の外周側に配設された第2のベルトプライ8と、第2のベルトプライ8の外周側に配設された第3のベルトプライ9とを含んでおり、第3のベルトプライ9が、陸部10の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードの角度が45°未満となるサーカム補強部91と、主溝6の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードの角度が45°を超えるラテラル補強部92とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、トレッド部のカーカス層の外周側にベルト層が配設され、そのトレッド部の表面にタイヤ周方向に沿って延びる主溝とそれにより区画される陸部とが設けられた空気入りタイヤに関する。
通常、空気入りタイヤのトレッド部の表面には、タイヤ周方向に沿って延びる主溝が形成され、その主溝によって陸部が複数に区画される。本発明者が研究を重ねたところ、タイヤを接地させた状態では、接地面内に面内収縮力と呼ばれる力が作用し、それに起因した陸部の変形が摩耗性能に少なからず悪影響を与えることが分かってきた。本明細書では、このような陸部の変形をワイピング変形と呼ぶ。
一般走行時には、上述したワイピング変形と、タイヤ転動時の踏み込みに伴う局所的な変形とが相俟って、陸部の踏み込み側と蹴り出し側とで摩耗量が異なるヒールアンドトウ摩耗の発生が助長され、延いては摩耗ライフの短縮化が招来される。それとともに、ゴムが欠落している主溝の形成箇所では、溝底を基点としたタイヤ幅方向の面内収縮力が作用しやすく、センター摩耗やショルダー摩耗といった偏摩耗の発生が助長されるため、かかるワイピング変形を抑制することで摩耗性能を改善できる見込みがあることが判明した。
下記特許文献1には、陸部であるリブの内方域に補強層(キャップレイヤー)を配設した空気入りタイヤが記載されており、下記特許文献2には、主溝の内方域に補強層(追加保護層)を配設した空気入りタイヤが記載されている。しかし、これらのタイヤでは、補強層に含まれるコードがタイヤ周方向か或いはそれに近い角度で一様に延びるため、タイヤ幅方向に沿ったワイピング変形を抑制できず、上記の見地に関して摩耗性能を改善する効果には乏しいと考えられる。
実開平3−123702号公報 特開2008−285059号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接地時の面内収縮力に起因したワイピング変形を抑制して摩耗性能を向上できる空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部のカーカス層の外周側にベルト層が配設され、前記トレッド部の表面に、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝により区画される陸部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層が、第1のベルトプライと、前記第1のベルトプライの外周側に配設された第2のベルトプライと、前記第2のベルトプライの外周側に配設された第3のベルトプライとを含んでおり、前記第3のベルトプライが、前記陸部の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードの角度が45°未満となるサーカム補強部と、前記主溝の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードの角度が45°を超えるラテラル補強部とを備えるものである。
この空気入りタイヤは、ベルト層が上記の如き第3のベルトプライを含んでいて、コードがタイヤ周方向か或いはそれに近い角度で延びるサーカム補強部を陸部の内方域に有することにより、ヒールアンドトウ摩耗の要因となるタイヤ周方向に沿ったワイピング変形を抑制できる。また、コードがタイヤ幅方向か或いはそれに近い角度で延びるラテラル補強部を主溝の内方域に有することにより、主溝の溝底を基点としたタイヤ幅方向の面内収縮力によるワイピング変形を抑制できる。その結果、接地時の面内収縮力に起因したワイピング変形を抑制して、摩耗性能を向上することができる。
本発明では、前記サーカム補強部でのタイヤ周方向に対するコードの角度が0〜20°であり、前記ラテラル補強部でのタイヤ周方向に対するコードの角度が55〜90°であるものが好ましい。かかる構成によれば、サーカム補強部のコードの角度をタイヤ周方向に近付けて、タイヤ周方向に沿ったワイピング変形を抑制しやすくなるとともに、ラテラル補強部のコードの角度をタイヤ幅方向に近付けて、タイヤ幅方向の面内収縮力によるワイピング変形を抑制しやすくなるため、上述した摩耗性能の向上効果を高めることができる。
本発明では、前記第3のベルトプライを構成するコードがスチール製であるものが好ましい。かかる構成によれば、第3のベルトプライのコードを高強度にしてワイピング変形の抑制効果を高めることができる。
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部の一例を示すタイヤ子午線断面図 図1のタイヤが備えるベルト層の平面図 主溝の周辺を示す断面図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示したタイヤTは、小形トラック用空気入りラジアルタイヤであって、そのトレッド部1のカーカス層2の外周側にベルト層3が配設されている。カーカス層2は、タイヤ周方向に対して略直角に延びるコードを含んだトロイダル形状のカーカスプライにより構成され、図示しない一対のビード部からサイドウォール部4を経てトレッド部1に至り、タイヤの骨格を構成している。
ベルト層3は、カーカス層2の外周に積層され、たが効果によってカーカス層2を補強している。ベルト層3の外周側にはトレッドゴム5が設けられており、そのトレッドゴム5の外周面、即ちトレッド部1の表面がトレッド面Trとなる。トレッド面Trには、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の(本実施形態では四本の)主溝6と、それらにより区画される陸部10とが設けられている。本実施形態の陸部10は、不図示の横溝で分断された複数のブロックにより構成されている。
ベルト層3は、ベルトプライ7(第1のベルトプライ)と、ベルトプライ7の外周側に配設されたベルトプライ8(第2のベルトプライ)と、ベルトプライ8の外周側に配設されたベルトプライ9(第3のベルトプライ)とを含んでいる。本実施形態では、カーカス層2の外周にベルトプライ7が積層され、ベルトプライ7の外周にベルトプライ8が積層され、ベルトプライ8の外周にベルトプライ9が積層されている。各ベルトプライは、簾状に平行配列した複数本のコードを含んでおり、それらをゴム被覆して形成されてある。
図2は、ベルト層3の平面図であるが、図中のコードは概念的に記載されており、実際の配列ピッチはもっと密なものとなる。ベルトプライ7,8は、それぞれタイヤ周方向(図2における上下方向)に対してθ7,θ8の角度で傾斜して延びるコードC7,C8を含んでおり、そのコードC7,C8が互いに逆向きに交差するように配置されている。角度θ7,θ8は、例えば15〜35°に設定される。
ベルトプライ9は、陸部10の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードC9の角度θ9cが45°未満となるサーカム補強部91と、主溝6の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードC9の角度θ9lが45°を超えるラテラル補強部92とを備えている。本実施形態では、角度θ9cが0°である例を示す。ベルトプライ9は、ベルト層3を構成するベルトプライの中では最も陸部10に近く、ワイピング変形の抑制に対する寄与が大きい。
このように、ベルトプライ9は、ヒールアンドトウ摩耗の発生が懸念される陸部10に対応した箇所では、コードC9がタイヤ周方向か或いはそれに近い角度で延びるとともに、溝底を基点としたタイヤ幅方向の面内収縮力が作用しやすい主溝6に対応した箇所では、コードC9がタイヤ幅方向か或いはそれに近い角度で延びている。かかる構成により、接地時の面内収縮力に起因したワイピング変形を抑制して、摩耗性能を向上することができる。
ワイピング変形の抑制効果を高めるうえで、サーカム補強部91におけるコードC9の角度θ9cは0〜20°が好ましく、0〜15°が更に好ましい。また、ラテラル補強部92におけるコードC9の角度θ9lは55〜90°が好ましく、80〜90°が更に好ましい。サーカム補強部91のコードC9がタイヤ周方向に対して傾斜している場合(即ち、θ9c>0°となる場合)、サーカム補強部91とラテラル補強部92とで傾斜の向きを同じにすることが好ましく、それにより同一ブロック内での剛性変化を抑えられるため偏摩耗性能の点で有益である。
ベルトプライ9の幅W9は、好ましくは接地幅TWの70〜110%に設定される。これが70%未満であると、ベルトプライ9が幅狭となり、ワイピング変形の抑制による摩耗性能の向上効果が低下する傾向にある。また、110%を超えると、ベルトプライ9が幅広となり、接地面内でのワイピング変形の抑制に寄与しない無駄な部分が増えてしまう。尚、接地面内でのワイピング変形を的確に抑制する観点から、幅W9は、より好ましくは接地幅TWの90〜100%に設定される。
接地端TEは、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するタイヤ軸方向の最外位置を指し、その接地端TE間のタイヤ軸方向距離が接地幅TWとなる。正規荷重及び正規内圧は、JISD4202(自動車タイヤの諸元)等に規定された最大荷重(乗用車用タイヤの場合は設計常用荷重)及びこれに見合った空気圧であり、正規リムは、原則としてJISD4202等に定められた標準リムである。同じ条件にて幅W9も求められる。
サーカム補強部91によるワイピング変形の抑制効果を十分に確保してヒールアンドトウ摩耗の発生を防止する観点から、図3に示した主溝6の溝底高さBLにサーカム補強部91を投影した際に、そのサーカム補強部91が陸部10の幅W10の70%以上となる領域を占めることが好ましい。幅W10は、主溝6の溝壁の延長線ELを基準として溝底高さBLで測定される。溝底高さBLは、主溝6の最深端が位置する高さであり、トレッド面Trと同等の曲率で延びる。
また、主溝6の溝底を基点とした面内収縮力によるワイピング変形を十分に抑制する観点から、主溝6の溝底高さBLにラテラル補強部92を投影した際に、そのラテラル補強部92が主溝6の溝幅W6の160%以上となる領域を占めることが好ましい。このことは、他の主溝6においても同様である。溝幅W6は、主溝6の溝壁の延長線ELを基準として溝底高さBLで測定される。
本実施形態では、トレッド部1を容易に成形できるように、ベルトプライ9をベルトプライ8の外周に積層している。但し、これに限られず、ベルトプライ9をトレッド面Tr側にオフセットして、ワイピング変形の抑制作用を高めるようにしてもよい。その場合、ベルトプライ9は溝底高さBL付近に埋設されていれば十分である。キャップ・ベース構造を有する一般的なトレッドゴムであれば、キャップゴムとベースゴムとの界面が溝底高さBLと同等の高さに形成されることから、該界面にベルトプライ9を介在させてもよい。
ベルトプライ7,8に含まれるコードC7,C8は、カーカス層2に対する補強効果を高めるうえで、スチール製であることが好ましい。また、ベルトプライ9に含まれるコードC9においても、ワイピング変形の抑制効果を高める観点から、スチール製であることが好ましく、スチール相当の強度を持つ他の材料であっても構わない。
本実施形態では、サーカム補強部91の端部にラテラル補強部92の端部を連結した例を示すが、これらを分離させても構わない。本実施形態のように両補強部を連結する場合には、別々に作製したサーカム補強部91とラテラル補強部92の端部同士を突き合わせてジッパージョイント等により圧着してもよく、或いは、コード同士が重ならないように端部同士をオーバーラップさせて接合してもよい。
本発明の空気入りタイヤは、ベルト層が上記の如き第3のベルトプライを備えること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。
本発明の構成と効果を具体的に示すため、下記のような摩耗性能の評価を行ったので説明する。
(1)耐摩耗性能(摩耗ライフ)
実車にタイヤを装着して一般路を50000km走行した後、トレッド幅方向の中央側と両端側とで摩耗量(主溝深さの減少量)を測定し、その摩耗量の最大値の逆数を算出した。評価は、比較例1を100としたときの指数で示し、数値が大きいほど性能が優れていることを示す。
(2)偏摩耗性能(センター摩耗、ショルダー摩耗)
上記した走行後のタイヤにおいて、トレッド幅方向の中央側における摩耗量(センター摩耗量)と両端側における摩耗量(ショルダー摩耗量)との比(センター摩耗量/ショルダー摩耗量)を測定した。この比が1.0に近いほど均一摩耗の傾向にあり、性能が優れていることを示す。
(3)ヒールアンドトウ摩耗性能
上記した走行後のタイヤにおいて、トレッド幅方向の中央側に設けた陸部であるブロックの踏み込み側と蹴り出し側の高さを測定し、その高低差の逆数を算出した。評価は、比較例1を100としたときの指数で示し、数値が大きいほど性能が優れていることを示す。
図1に示した構造のタイヤ(サイズLT265/70R17)において、第3のベルトプライが、タイヤ周方向と平行に且つ一様に延びるコード(ナイロン製)を含むものを比較例1、タイヤ周方向に対して45°で且つ一様に延びるコード(スチール製)を含むものを比較例2、図2のようなサーカム補強部とラテラル補強部を備え、それらが含むコード(スチール製)の角度θ9c,θ9lをそれぞれ0°,80°としたものを実施例1とした。評価結果を表1に示す。
Figure 2012116406
比較例1では、タイヤ幅方向に沿ったワイピング変形の抑制が十分でないために偏摩耗性能が比較的低く、それに関連して耐摩耗性能も劣っている。比較例2では、タイヤ周方向に沿ったワイピング変形とタイヤ幅方向に沿ったワイピング変形の双方を抑制できていないため、偏摩耗性能やヒールアンドトウ摩耗性能が劣っている。これらに対し、実施例1では、偏摩耗性能やヒールアンドトウ摩耗性能に比較的優れているとともに、耐摩耗性能も向上できている。
1 トレッド部
2 カーカス層
3 ベルト層
6 主溝
7 第1のベルトプライ
8 第2のベルトプライ
9 第3のベルトプライ
10 陸部
91 サーカム補強部
92 ラテラル補強部
C9 第3のベルトプライを構成するコード
Tr トレッド部の表面

Claims (3)

  1. トレッド部のカーカス層の外周側にベルト層が配設され、前記トレッド部の表面に、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝により区画される陸部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルト層が、第1のベルトプライと、前記第1のベルトプライの外周側に配設された第2のベルトプライと、前記第2のベルトプライの外周側に配設された第3のベルトプライとを含んでおり、
    前記第3のベルトプライが、前記陸部の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードの角度が45°未満となるサーカム補強部と、前記主溝の内方域に位置して且つタイヤ周方向に対するコードの角度が45°を超えるラテラル補強部とを備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記サーカム補強部でのタイヤ周方向に対するコードの角度が0〜20°であり、前記ラテラル補強部でのタイヤ周方向に対するコードの角度が55〜90°である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記第3のベルトプライを構成するコードがスチール製である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
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