JP2012104658A - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及び圧電素子の製造方法 - Google Patents

液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及び圧電素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及び圧電素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】ノズル開口612に連通する圧力室622と、圧電体30と、圧電体30に設けられた第1電極19及び第2電極20を有する圧電素子100と、を備えた液体噴射ヘッド600であって、第1電極10及び第2電極20の少なくとも一方は、白金を含み、圧電体30は、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなり、ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及び圧電素子の製造方法に関する。
液体噴射ヘッドは、液体噴射装置の構成として、例えば、インクジェットプリンター等に用いられる。この場合、液体噴射ヘッドは、インクの小滴を吐出して飛翔させるために用いられ、これによりインクジェットプリンターは、当該インクを紙等の媒体に付着させて印刷を行うことができる(特許文献1参照)。
液体噴射ヘッドは、一般に、ノズルから液体を吐出するために液体に圧力を加える圧電素子を有している。このような圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電性セラミックス等からなる圧電体を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、2つの電極によって電圧が印加されることによって変形することができる。
このような用途に用いられる圧電材料としては、電気機械変換効率などの圧電特性が高いことが望ましく、該特性が他の材料に比較して優れていることから、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料の研究開発が行われてきた。しかし、近年、環境問題の観点から有害な鉛を含まない、又は含有量を抑えた非鉛系圧電材料の開発が求められるようになってきた。
理論上圧電特性が高いとされる圧電材料の中で、鉛を含まないものとしては、例えば、(K,Na)NbO(KNN;ニオブ酸カリウムナトリウム)が挙げられる。
しかしながら、KNNを薄膜として形成する場合には、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuOx:SRO)やストロンチウムとチタンの複合酸化物(SrTiOx:STO)等の酸化物電極上では所定の配向に優先されるように形成された配向膜を形成することができたが、圧電素子等に一般的に使用されるPt(白金)電極上では、配向膜を形成することが難しいという問題がある。
特開2009−283950公報
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及び圧電素子の製造方法を提供することができる。
(1)本発明に係る液体噴射ヘッドは、
ノズル開口に連通する圧力室と、
圧電体と、前記圧電体に設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子と、
を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方は、白金を含み、
前記圧電体は、
ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなり、
ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、
ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である。
本発明によれば、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体を有する液体噴射ヘッドを実現できる。
(2)本発明に係る液体噴射装置は、
この液体噴射ヘッドを備える。
本発明によれば、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体を有する液体噴射装置を実現できる。
(3)本発明に係る圧電素子は、
圧電体と、前記圧電体に設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子であって、
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方は、白金を含み、
前記圧電体は、
ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなり、
カリウムとナトリウムのモル数の和がニオブのモル数よりも大きい。
本発明によれば、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体を有する圧電素子を実現できる。
(4)本発明に係る圧電素子の製造方法は、
白金を含む第1電極を形成する工程と、
前駆体溶液を前記第1電極上に塗布し、前記第1電極上に塗布された前駆体溶液を結晶化させることにより、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む圧電体を形成する工程と、
前記圧電体上に第2電極を形成する工程と、
を有し、
前記前駆体溶液は、
ニオブ、カリウム、ナトリウム、鉄及びビスマスの有機金属化合物を含み、
カリウムとナトリウムのモル数の和がニオブのモル数よりも大きい。
本発明によれば、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体を有する圧電素子を製造することができる。
本実施形態に係る圧電素子100の断面の模式図。 本実施形態に係る液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図。 本実施形態に係る液体噴射ヘッド600の分解斜視図。 本実施形態に係る液体噴射装置700を模式的に示す斜視図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.圧電素子
図1は、本実施形態に係る圧電素子100の断面の模式図である。
本実施形態に係る圧電素子100は、圧電体20と、圧電体30に設けられた第1電極10及び第2電極20を有する圧電素子100であって、第1電極10及び第2電極20の少なくとも一方は、白金を含み、圧電体30は、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含み、カリウムとナトリウムのモル数の和がニオブのモル数よりも大きい。
1.1.第1電極
第1電極10は、例えば、基板1の上方に形成される。基板1は、例えば、導電体、半導体、絶縁体で形成された平板とすることができる。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。また、基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。また、例えば、後述する液体噴射ヘッドのように、基板1の下方に圧力室等が形成されているような場合においては、基板1より下方に形成される複数の構成をまとめて一つの基板1とみなしてもよい。
基板1は、可撓性を有し、圧電体30の動作によって変形(屈曲)することのできる弾性部材(振動板)であってもよい。ここで、基板1が可撓性を有するとは、基板1がたわむことができることを指す。基板1を弾性部材(振動板)とした場合、基板1のたわみは、圧電素子100を液体噴射ヘッドに使用する場合、吐出させる液体の体積と同程度に圧力室の容積を変化させうる程度であれば十分である。
基板1が弾性部材(振動板)である場合は、基板1の材質としては、例えば、酸化ジルコニウム、窒化シリコン、酸化シリコンなどの無機酸化物、ステンレス鋼などの合金を例示することができる。これらのうち、弾性部材(振動板)の材質としては、化学的安定性及び剛性の点で、酸化ジルコニウムが特に好適である。この場合においても基板1は、例示した物質の2種以上の積層構造であってもよい。
第1電極10の形状は、層状あるいは薄膜状であることが好ましい。その理由としては、第1の電極10の形状は、第2電極20と対向できる限り限定されないが、圧電体30が、薄膜状に形成されるためである。第1電極10の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とする。また、第1電極10の平面的な形状についても、第2電極20が対向して配置されたときに第1電極10と第2電極20との間に圧電体30を配置できる形状であれば、特に限定されない。本実施形態においては、第1電極10の平面的な形状を、例えば、矩形、円形とした。
第1電極10の機能の一つとしては、第2電極20と一対になって、圧電体30に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体30の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。第1電極10には、圧電体30を結晶化する際の結晶配向を制御する機能を持たせてもよい。
第1電極10の材料としては、白金を含む材料を用いることができる。第1電極10は、例えば、主として白金を含む材料で構成されていてもよいし、白金単体で構成されていてもよい。
1.2.第2電極
第2電極20は、第1電極10に対向して配置される。第2電極20は、全体が第1電極10と対向していてもよいし、一部が第1電極10に対向していてもよい。第2電極20の形状は、層状あるいは薄膜状であることが好ましい。その理由としては、第2電極20の形状は、第1電極10と対向できる限り限定されないが、本実施形態では、圧電体30が、薄膜状に形成されるためである。第2電極20の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とする。また、第2電極20の平面的な形状についても、第1電極10に対向して配置されたときに第1電極10と第2電極20との間に圧電体30を配置できる形状であれば、特に限定されない。本実施形態においては、例えば、矩形、円形とした。
第2電極20の機能の一つとしては、圧電体30に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体30の上に形成された上部電極)となることが挙げられる。第2電極20には、圧電体30を結晶化する際の結晶配向を制御する機能を持たせてもよい。
第2電極20の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuOx:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiOx:LNO)などを例示することができる。第2電極20は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
図1は、第1電極10が第2電極20よりも平面的に大きく形成された例を示しているが、第2電極20が第1電極10よりも平面的に大きく形成されてもよい。この場合は、第2電極20は、圧電体30の上面のみに形成されているのではなく、圧電体30の側面に形成されてもよい。このように第2電極20が圧電体30の側面を覆うことで、第2電極20に、電極としての機能に加えて、水分や水素等から圧電体30を保護する機能を兼ねさせることができる。
1.3.圧電体
圧電体30は、第1電極10及び第2電極20の間に配置される。圧電体30は、第1電極10及び第2電極20の少なくとも一方に接している。図1の例では、圧電体30は、第1電極20及び第2電極20に接して設けられている。換言すれば、第1電極10と第2電極20は、圧電体30に設けられている。
圧電体30は、液相法により薄膜として形成されてもよい。液相法としては、例えば、Metal−Organic Decomposition法(以下、MOD法と記載する)及びゾルゲル法のうちの少なくとも一種であってもよい。
圧電体30の厚さは、特に限定されず、例えば、100nm以上3000nm以下とすることができる。液相法によって、厚みの大きい圧電体30を形成する場合には、例えば、MOD法やゾルゲル法などのコーティング及び焼成を行う種の方法では、該方法を繰り返して積層することにより形成することができる。さらに、積層する場合には、各層毎に異なる液相法を用いて積層してもよい。
本実施形態の圧電体30は、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなっている。また、圧電体30は、ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である。
本実施形態によれば、KNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体を有する圧電素子を実現できる。
なお、本実施形態の圧電体30は、ナトリウムのモル数がカリウムのモル数よりも大きくてもよく、カリウムのモル数がナトリウムのモル数よりも大きくてもよい。
本実施形態の圧電素子100は、広範な用途に用いることができる。圧電素子100の用途としては、例えば、液体噴射ヘッド、インクジェットプリンターなどの液体噴射装置、ジャイロセンサー、加速度センサーなどの各種のセンサー類、音叉型振動子などのタイミングデバイス類、超音波モーターなどの超音波デバイス類に好適に用いることができる。
2.圧電素子の製造方法
本実施形態に係る圧電素子100の製造方法は、白金を含む第1電極10を形成する工程と、前駆体溶液を第1電極10上に塗布し、第1電極10上に塗布された前駆体溶液を結晶化させることにより、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む圧電体30を形成する工程と、圧電体30上に第2電極20を形成する工程と、を有し、前駆体溶液は、ニオブ、カリウム、ナトリウム、鉄及びビスマスの有機金属化合物を含み、カリウムとナトリウムのモル数の和がニオブのモル数よりも大きい。本実施形態の圧電素子100は、例えば、以下のように製造することができる。
まず、基板1を準備し、基板1上に白金を含む第1電極10を形成する。第1電極10は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。第1電極10は、必要に応じてパターニングされることができる。
次に、前駆体溶液を第1電極10上に塗布し、第1電極10上に塗布された前駆体溶液を結晶化させることにより、圧電体30を形成する。圧電体30は、上述の通り、例えば、MOD法及びゾルゲル法のうちの一種の方法、あるいはこれら複数の方法の組合せにより形成されることができる。圧電体30の結晶化工程は、例えば、500℃以上800℃以下の熱処理工程である。ここでは、窒素雰囲気で上記熱処理工程を行ったが、窒素雰囲気には限られない。この窒素の他に採用しえる雰囲気としては、例えば、酸素、又は大気雰囲気がある。なお、結晶化は、圧電体30をパターニングした後に行ってもよい。そして、必要に応じて、上記操作を複数回繰り返して、所望の厚みの圧電体30を得ることができる。
圧電体30を形成する工程において、第1電極10上に塗布される前駆体溶液は、ニオブ、カリウム、ナトリウム、鉄及びビスマスの有機金属化合物を含む。具体的には、ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である。これにより、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体30を形成することができる。
圧電体30を形成する工程において、第1電極10上に塗布に塗布される前駆体溶液は、ナトリウムのモル数がカリウムのモル数よりも大きくてもよく、カリウムのモル数がナトリウムのモル数よりも大きくてもよい。
次に、圧電体30の上に第2電極20を形成する。第2電極20は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。そして、所望の形状に第2電極20及び圧電体30をパターニングして、圧電素子を形成する。なお第2電極20及び圧電体30は、必要に応じて同時にパターニングされることができる。以上例示した工程により、本実施形態の圧電素子100を製造することができる。
3.液体噴射ヘッド
次に、本実施形態に係る圧電素子100の用途の一例として、圧電素子100を備えた液体噴射ヘッド600について、図面を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図3は、本実施形態に係る液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。以下では、基板1(上部に振動板1aを含む構造体)の上に圧電素子100が形成されている液体噴射ヘッド600を例として説明する。
液体噴射ヘッド600は、ノズル開口612に連通する圧力室622と、圧電体30と、圧電体30に設けられた第1電極10及び第2電極20を有する圧電素子100と、を備えた液体噴射ヘッド600であって、第1電極10及び第2電極20の少なくとも一方は、白金を含み、圧電体30は、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなり、ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である。なお、本実施形態の圧電体30は、ナトリウムのモル数がカリウムのモル数よりも大きくてもよく、カリウムのモル数がナトリウムのモル数よりも大きくてもよい。
図2及び図3に示す例では、液体噴射ヘッド600は、ノズル開口612を有するノズル板610と、ノズル開口612と連通する圧力室622を形成するための圧力室基板620と、圧電素子100と、を備えている。さらに、図3に示すように、液体噴射ヘッド600は、筐体630を有することができる。なお、図3では、圧電素子100を簡略化して図示している。
ノズル板610は、図2及び図3に示すように、ノズル開口612を有する。ノズル開口612からは、インクが吐出されることができる。ノズル板610には、例えば、多数のノズル開口612が一列に設けられている。ノズル板620の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを挙げることができる。
圧力室基板620は、ノズル板610上(図3の例では下)に設けられている。圧力室基板620の材質としては、例えば、シリコンなどを例示することができる。圧力室基板620がノズル板610と振動板1aとの間の空間を区画することにより、図3に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力室622と、が設けられている。この例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力室622とを区別して説明するが、これらはいずれも液体の流路であって、このような流路はどのように設計されても構わない。また例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。リザーバー624、供給口626及び圧力室622は、ノズル板610と圧力室基板620と振動板1aとによって区画されている。リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板1aに設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力室622に供給されることができる。圧力室622は、振動板1aの変形により容積が変化する。圧力室622はノズル開口612と連通しており、圧力室622の容積が変化することによって、ノズル開口612からインク等が吐出される。
圧電素子100は、圧力室基板620上(図3の例では下)に設けられている。圧電素子100は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板1aは、圧電体30の動作によって変形し、圧力室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
筐体630は、図3に示すように、ノズル板610、圧力室基板620及び圧電素子100を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
液体噴射ヘッド600は、上述した圧電素子100を備えている。したがって、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体を有する液体噴射ヘッドを実現できる。
なお、ここでは、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
4.液体噴射装置
次に、本実施形態に係る液体噴射装置700について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。液体噴射装置700は、上述の液体噴射ヘッド600を備えている。以下では、液体噴射装置700が上述の液体噴射ヘッド600を備えるインクジェットプリンターである場合について説明する。
液体噴射装置700は、図4に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。液体噴射装置700は、さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッド及びインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600及び記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600及び記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710及び給紙部750を制御することができる。
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752a及び駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。
ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760及び給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
液体噴射装置700は、上述した圧電素子100を備えている。したがって、KNN薄膜を優先的に(100)に配向させた圧電体を有する液体噴射装置を実現できる。
なお、上記例示した液体噴射装置700は、1つの液体噴射ヘッド600を有し、この液体噴射ヘッド600によって、記録媒体に印刷を行うことができるものであるが、複数の液体噴射ヘッドを有してもよい。液体噴射装置が複数の液体噴射ヘッドを有する場合には、複数の液体噴射ヘッドは、それぞれ独立して上述のように動作されてもよいし、複数の液体噴射ヘッドが互いに連結されて、1つの集合したヘッドとなっていてもよい。このような集合となったヘッドとしては、例えば、複数のヘッドのそれぞれのノズル開口が全体として均一な間隔を有するような、ライン型のヘッドを挙げることができる。
以上、本発明に係る液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンターとしての液体噴射装置700を説明したが、本発明にかかる液体噴射装置は、工業的にも利用することができる。この場合に吐出される液体(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したものなどを用いることができる。本発明の液体噴射装置は、例示したプリンター等の画像記録装置以外にも、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)、電気泳動ディスプレイ等の電極やカラーフィルターの形成に用いられる液体材料噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料噴射装置としても好適に用いられることができる。
5.実施例及び比較例
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
5.1.圧電素子の作製
実施例1ないし実施例9及び比較例1ないし比較例9の圧電素子は、以下のように作製した。
基板は以下の工程により作製した。まず、シリコン(Si)基板の表面に熱酸化により膜厚1170nmの酸化シリコン(SiO)膜を形成した。次に、SiO膜上にDCスパッタ法及び熱酸化により膜厚20nmの酸化チタン(TiO)膜を、さらに膜厚130nmの白金(Pt)下部電極層(第1電極20)を形成した。
各実施例及び各比較例の圧電体30は、いずれもMOD法によって作製した。第1電極10の上に、スピンコート法によって、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスの前駆体溶液を塗布した。この前駆体溶液は、実施例及び比較例ごとに異なる配合を有するものとした。また、スピンコートにおける回転速度は1500rpmとした。
次に、塗布された前駆体膜を大気中、150℃で2分間乾燥させ、溶媒を除去した。次いで、大気中、350℃で4分間熱処理して、前駆体膜中の有機成分を除去した(脱脂)。各実施例及び比較例につき、いずれも、前駆体溶液の塗布、乾燥、脱脂の組を4回繰り返して行った。次いで、焼成炉(Rapid Thermal Annealing(RTA))に導入し、0.5L/minの酸素フローを行いながら、700℃で5分間焼成した。
さらに各実施例及び各比較例につき、いずれも、前駆体溶液の塗布、乾燥、脱脂、焼成の組を2回繰り返した。これにより、500nmの厚みの圧電体30が得られた。
さらにその上に第2電極20としてDCスパッタ法にて膜厚100nmのPt膜を作製した。その後、RTA炉に導入し、炉内を0.5L/minの窒素フローを行いながら、700℃で5分間、第2電極20の焼付けを行い、各実施例及び比較例の圧電素子をそれぞれ作製した。
各実施例及び各比較例において、MOD法における前駆体溶液には、ニオブ、カリウム、ナトリウム、鉄及びビスマスの有機酸塩に、溶媒としてオクタン、キシレン及びn−ブタノールを用いた溶液を使用した。
このような方法で作成された圧電体30は、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物(以下これを「KNN−BFO」と略記することがある)、例えば、以下に示す式(I)として表記することができる。
[(K,Na)NbO]+x[BiFeO]・・・(I)
このKNN−BFOは、一般式としては、ABOで示される複合酸化物であり、いわゆるペロブスカイト型酸化物に分類され、結晶化により、ペロブスカイト型の結晶構造をとることができる。KNN−BFOは、結晶化されて、ペロブスカイト型の結晶構造をとることにより、圧電性を呈することができる。
MOD法における前駆体溶液の組成は、各実施例及び各比較例について、原料溶液に含まれる元素の濃度として、表1に原料における各元素の配合比(仕込み量(mol%)の比)を記載した。また、各実施例及び各比較例について、表1に上記式(I)の型式で表記した場合の係数x、y、zを用いて表した係数比を記載した。
Figure 2012104658
5.2.圧電素子の評価
X線回折(XRD)パターンは、各実験例及び比較例ともに、各試料の圧電体をパターニングすることなく、Bruker AXS社製の型番D8 Discoverに導入し、X線源としてCu−Kα線を使用して、室温で測定した。各実験例及び比較例について測定したX線回折(XRD)パターンから、(100)に配向している度合いを表す配向度合を評価した。
5.3.評価結果
各実施例及び比較例について、(100)に配向している度合いを表す配向度合を表1に記載した。表1における配向度合は、以下に示される式(II)で定義される。
Figure 2012104658
式(II)において、「(100)」は各実施例及び比較例における「ペロブスカイト型の結晶構造の(100)面に由来するピークのピーク強度」、「(110)」は各実施例及び比較例における「ペロブスカイト型の結晶構造の(110)面に由来するピークのピーク強度」、「(100)ランダム」はKNN(一般的にランダム配向)における「ペロブスカイト型の結晶構造の(100)面に由来するピークのピーク強度」、「(110)ランダム」はKNNにおける「ペロブスカイト型の結晶構造の(110)面に由来するピークのピーク強度」を表す。すなわち、サンプルが仮にKNNである場合には、配向度合は0.5となる。
表1によれば、各実施例の圧電体の配向度合は0.8以上となっており、極めて良好な(100)優先配向の構造を有していることが判明した。これに対して、各比較例の圧電体は、結晶がランダム配向に近い構造となっていることが判明した。
これらの結果から、少なくとも、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなり、カリウムとナトリウムのモル数の和がニオブのモル数よりも大きい圧電体であって、ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である場合には、圧電体は(100)優先配向しやすいということが分かった。
以上に述べた実施形態及び変形実施形態は、任意の複数の形態を適宜組み合わせることが可能である。これにより、組み合わされた実施形態は、それぞれの実施形態が有する効果又は相乗的な効果を奏することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1 基板、1a 振動板、10 第1電極、20 第2電極、30 圧電体、100 圧電素子、600 液体噴射ヘッド、610 ノズル板、612 ノズル開口、620 圧力室基板、622 圧力室、624 リザーバー、626 供給口、630 筐体、700 液体噴射装置、710 駆動部、720 装置本体、721 トレイ、722 排出口、730 ヘッドユニット、731 インクカートリッジ、732 キャリッジ、741 キャリッジモーター、742 往復動機構、743 タイミングベルト、744 キャリッジガイド軸、750 給紙部、751 給紙モーター、752 給紙ローラー、752a 従動ローラー、752b 駆動ローラー、760 制御部、770 操作パネル

Claims (4)

  1. ノズル開口に連通する圧力室と、
    圧電体と、前記圧電体に設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子と、
    を備えた液体噴射ヘッドであって、
    前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方は、白金を含み、
    前記圧電体は、
    ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなり、
    ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、
    ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である、液体噴射ヘッド。
  2. 請求項1に記載の液体噴射ヘッドを備えた、液体噴射装置。
  3. 圧電体と、前記圧電体に設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子であって、
    前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方は、白金を含み、
    前記圧電体は、
    ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む複合酸化物からなり、
    ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、
    ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である、圧電素子。
  4. 白金を含む第1電極を形成する工程と、
    前駆体溶液を前記第1電極上に塗布し、前記第1電極上に塗布された前記前駆体溶液を結晶化させることにより、ニオブ酸カリウムナトリウム及び鉄酸ビスマスを含む圧電体を形成する工程と、
    前記圧電体上に第2電極を形成する工程と、
    を有し、
    前記前駆体溶液は、
    ニオブ、カリウム、ナトリウム、鉄及びビスマスの有機金属化合物を含み、
    ニオブ酸カリウムナトリウムと鉄酸ビスマスのモル数の和に対する鉄酸ビスマスのモル数の比が、3%以上10%以下であり、かつ、
    ニオブのモル数に対するカリウムとナトリウムのモル数の和の比が、103%以上115%以下である、圧電素子の製造方法。
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