JP5700200B2 - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、および圧電セラミックス - Google Patents

液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、および圧電セラミックス Download PDF

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Description

本発明は、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、および圧電セラミックスに関する。
液体噴射ヘッドは、例えば、インクジェットプリンター等の液体噴射装置に用いられる。液体噴射ヘッドは、インクの小滴を吐出して飛翔させるために用いられ、これによりインクジェットプリンターは、当該インクを紙等の媒体に付着させて印刷を行うことができる。
液体噴射ヘッドは、一般に、ノズルから液体を吐出するために液体に圧力を加える圧電素子を有している。圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電セラミックスからなる圧電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものなどがある。このような圧電素子は、電極により電圧が印加されることによって変形することができ、例えば撓み振動で動作することができる。
このような用途に用いられる圧電材料としては、電気機械変換効率などの圧電特性が高いことが望ましく、該特性が他の材料に比較して優れていることから、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料の研究開発が行われてきた(特許文献1参照)。
しかしながら、近年、圧電材料の圧電特性をさらに向上する要求が強まるとともに、環境負荷のより小さい材料を用いることが求められるようになった。PZT系の材料では、これらの要求に応えることが困難となってきており、例えば、鉛の含有量を抑えたペロブスカイト型酸化物の圧電材料(圧電セラミックス)の開発が進められるようになった。
特開2008−211140号公報
鉛の含有量を抑えた圧電セラミックスは、一般的にPZTに比べて歪量が小さい。そのため、このような圧電セラミックスとしては、歪量が大きく、圧電特性が良好なものが求められている。
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有する圧電セラミックスおよび圧電素子を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記圧電素子を有する液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置を提供することにある。
本発明に係る圧電セラミックスは、
ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる圧電セラミックスであって、
前記複合酸化物は、
鉛を含まず、
Aサイトの元素として、ビスマス、ナトリウム、およびバリウムを含み、
Bサイトの元素として、銅、およびチタンを含み、
前記銅および前記チタンの総量に対する、前記銅の割合は、7mol%以上15mol%以下である。
本発明によれば、環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有する圧電セラミックスを提供することができる。
本発明において、
前記ビスマス、前記ナトリウム、および前記バリウムの総量に対する、前記バリウムの割合は、1mol%以上21mol%以下であってもよい。
本発明によれば、より良好な圧電特性を有することができる。
本発明に係る圧電素子は、
圧電体層と、
前記圧電体層に電圧を印加する電極と、
を含み、
前記圧電体層は、上記の圧電セラミックスからなる。
本発明によれば、環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有する圧電素子を提供すること
ができる。
本発明に係る液体噴射ヘッドは、
ノズル孔に連通する圧力発生室と、
上記の圧電素子と、
を含む。
本発明によれば、環境負荷が小さく、良好な圧電特性の圧電素子を有する液体噴射ヘッドを提供することができる。
本発明に係る液体噴射装置は、
本発明に係る記載の液体噴射ヘッドを有する。
本発明によれば、環境負荷が小さく、液体の吐出能力が高い液体噴射装置を提供することができる。
本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。 実施例1〜4および比較例1,2の歪量を示すグラフ。 実施例2,5〜13および比較例3の歪量を示すグラフ。 実施例1の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 実施例2の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 実施例3の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 実施例4の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 実施例9の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 実施例11の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 実施例12の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 比較例1の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。 本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。 本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。 本実施形態に係る液体噴射装置を模式的に示す斜視図。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
1. 圧電セラミックス
まず、本実施形態に係る圧電セラミックスについて説明する。本実施形態に係る圧電セラミックスは、ペロブスカイト型の結晶構造を有する複合酸化物からなる。本実施形態に係る複合酸化物は、一般式ABOで表され、Aサイトの元素の総モル数と、Bサイトの元素の総モル数と、酸素原子のモル数の比は、1:1:3が標準であるが、ペロブスカイト構造をとり得る範囲内で、1:1:3からずれていてもよい。
本実施形態に係る複合酸化物は、ペロブスカイト型構造のAサイトの元素として、ビスマス、ナトリウム、およびバリウムを含み、Bサイトの元素として、銅、およびチタンを含む。本実施形態に係る複合酸化物は、チタン酸ビスマスナトリウムと、チタン酸バリウムと、チタン酸銅酸ビスマスと、の固溶体であるといえる。
本実施形態に係る複合酸化物において、銅およびチタンの総量に対する、銅の割合は、7mol%以上15mol%以下である。これにより、本実施形態に係る圧電セラミックスの歪量を大きくすることができる(詳細は後述)。
本実施形態に係る複合酸化物において、ビスマス、ナトリウム、およびバリウムの割合は、複合酸化物がペロブスカイト型の結晶構造をとる限り特に限定されないが、例えば、ビスマス、ナトリウム、およびバリウムの総量に対する、バリウムの割合は、例えば、1mol%以上21mol%以下である。これにより、本実施形態に係る圧電セラミックスの歪量をより大きくすることができる(詳細は後述)。また、ビスマスとナトリウムとの割合についても特に限定されないが、例えば、1:1である。
なお、圧電セラミックスは、K、Li、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Ni,Zn、Al、Si、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu等種々の元素を添加して特性改善をすることが知られているが、本発明の効果を得られる範囲であれば、当然このような添加物をさらに含んでいてもよい。
本実施形態に係る圧電セラミックスによれば、環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有することができる。
2. 圧電素子
次に、本実施形態に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかる圧電素子100を模式的に示す断面図である。
圧電素子100は、図1に示すように、第1電極10と、圧電体層20と、第2電極30と、を含むことができる。圧電素子100は、例えば、基板1の上方に形成されている。
基板1は、例えば、導電体、半導体、絶縁体で形成された平板である。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。基板1は、可撓性を有し、圧電体層20の動作によって変形(屈曲)することのできる振動板を含んでいてもよい。振動板の材質としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、またはこれらの積層体が挙げられる。
第1電極10は、基板1上に形成されている。第1電極10の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極10の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下である。第1電極10の平面形状は、第2電極30が対向して配置されたときに両者の間に圧電体層20を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形である。
第1電極10の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO:LNO)が挙げられる。第1電極10は、上記に例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
第1電極10の機能の一つとしては、第2電極30と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層20の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。
なお、基板1が振動板を有さず、第1電極10が振動板としての機能を有していてもよい。すなわち、第1電極10は、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極としての機能と、圧電体層20の動作によって変形することのできる振動板としての機能と、を有していてもよい。
また、図示はしないが、第1電極10と基板1との間には、例えば、両者の密着性を付与する層や、強度や導電性を付与する層が形成されてもよい。このような層の例としては、例えば、チタン、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの酸化物の層が挙げられる。
圧電体層20は、第1電極10上に形成されている。圧電体層20の形状は、例えば、層状または薄膜状である。圧電体層20の厚みは、例えば、300nm以上3000nm以下である。圧電体層20は、圧電性を有することができ、第1電極10および第2電極30によって電界が印加されることで変形することができる(電気機械変換)。
圧電体層20は、上述の「1. 圧電セラミックス」の項で述べた圧電セラミックスからなる。そのため、圧電素子100は、環境負荷が小さく、かつ、良好な圧電特性を有することができる。
第2電極30は、圧電体層20上に形成されている。第2電極30の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第2電極30の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下である。第2電極30の平面形状は、特に限定されず、例えば、矩形、円形である。第2電極30としては、第1電極10の材質として列挙した上記材料を用いることができる。
第2電極30の機能の一つとしては、第1電極10と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための他方の電極(例えば、圧電体層20の上方に形成された上部電極)となることが挙げられる。
なお、図示の例では、第2電極30は、圧電体層20の上面に形成されているが、さらに、圧電体層20の側面、基板1の上面に形成されていてもよい。
以上のような圧電素子100は、例えば、圧力発生室内の液体を加圧する圧電アクチュエーターとして、液体噴射ヘッドや、該液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置(インクジェットプリンター)などに適用されてもよいし、圧電体層の変形を電気信号として検出する圧電センサー等その他の用途として用いてもよい。
3. 圧電素子の製造方法
次に、本実施形態に係る圧電素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、基板1上に、第1電極10を形成する。ここで、基板1は、例えば、シリコン基板上に、酸化シリコン層および酸化ジルコン層を、この順で積層することにより形成される。酸化シリコン層は、例えば、熱酸化法により形成される。酸化ジルコン層は、例えば、スパッタ法などにより形成される。
第1電極10は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により形成される。第1電極10は、必要に応じてパターニングされてもよい。
次に、第1電極10上に、本実施形態に係る圧電セラミックスからなる圧電体層20を形成する。圧電体層20は、例えば、スパッタ法、レーザーアブレーション法、MOCVD法、ゾルゲル法、MOD(Metal Organic Deposition)法などにより形成される。ゾルゲル法やMOD法などで圧電体層20を形成する場合は、ビスマス、ナトリウム、バリウム、銅、およびチタンの各々を含む金属化合物を、有機溶媒を用いて溶解・分散させて原料液を調整する。上記金属を含有する金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸金属塩、有機金属錯体が挙げられる。上記のような金属化合物を溶解させる有機溶媒としては、例えば、オクタン、キシレン、ブタノール、またはこれらを混合したものなどが挙げられる。なお、圧電体層20の結晶化温度は、例えば、500℃以上800℃以下である。
次に、圧電体層20上に、第2電極30を形成する。第2電極30は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、MOCVD法により形成される。そして、所望の形状に第2電極30および圧電体層20をパターニングする。なお、第2電極30および圧電体層20のパターニングは、同じ工程で行ってもよいし、別々の工程で行ってもよい。
以上の工程により、圧電素子100を製造することができる。
4. 実施例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
4.1. 試料の作製
4.1.1. 実施例1
まず、基板を以下の工程にて作製した。単結晶シリコン基板上に二酸化シリコン層を熱酸化にて作製した。この二酸化シリコン層上にRFマグネトロンスパッタ法により膜厚が40nmのチタン層を形成し、熱酸化することで酸化チタン層を形成した。さらに、この酸化チタン層上にRFマグネトロンスパッタ法により膜厚が100nmの白金層を成膜し、(111)面に配向した第1電極を作製した。
次に、第1電極上に圧電体層を液相法により形成した。その手法は、以下のとおりである。
まず、ビスマス、ナトリウム、バリウム、銅、およびチタンの各々を含む金属化合物が溶解したn−ブタノール溶液を所定の割合で混合して、圧電体層の原料液を調整した。そして、この原料液を、スピンコート法により、第1電極上に滴下し基板を回転させた(塗布工程)。基板は、500rpmで10秒間回転させた後、2500rpmで30秒間回転させた。
次に、150℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、3分間乾燥を行った後(乾燥工程)、400℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、10分間保持して脱脂した(脱脂工程)。この塗布工程、乾燥工程、および脱脂工程を7回繰り返し行った。次に、750℃で2分間、酸素雰囲気中でアニールを行って(結晶化工程)、厚み450nmの薄膜の圧電体層を形成した。これにより、下記一般式(1)で表され、x=0.07、y=0.07となる複合酸化物からなる圧電体層を得た。
[(Bi0.5,Na0.51−x,Ba](Cu,Ti1−y)O ・・・ (1)
次に、圧電体層上に、直径500μmの穴のあいた金属マスクを使用して、DCスパッタ法により膜厚100nmの白金層(第2電極)を形成した。
4.1.2. 実施例2〜12、比較例1〜10
実施例2〜12および比較例1〜10では、上記式(1)において、xおよびyが表1に示す値となるように圧電体層を形成すること以外は、実施例1と同じ方法で形成した。
Figure 0005700200
4.2. 歪量およびヒステリシス評価
アグザクト社製の歪量測定装置(DBLI)を使用し、測定温度25℃において、d33方向の歪量、およびヒステリシスを測定した。
表1に、実施例1〜12および比較例1〜10の歪量(25V印加時および30V印加時)を示す。表1において、(注1)は、測定時に試料が破壊したことを示しており、(注2)は、リーク電流が大きくて測定ができなかったことを示している。また、図2は、上記式(1)のxを0.07に固定し、yを変動させた場合の歪量(実施例1〜4および比較例1,2の歪量)を示したグラフである。図3は、上記式(1)のyを0.1に固定し、xを変動させた場合の歪量(実施例2,5〜12および比較例3の歪量)を示したグラフである。
表1および図2より、銅を含む実施例1〜4および比較例2は、銅を含まない比較例1に比べて、歪量が大きいことがわかった。さらに、表1より、実施例1〜4は、比較例2に比べて、耐圧が大きいことがわかった。すなわち、0.07≦y≦0.15の範囲で、歪量が大きくなり、耐圧が高くなった。つまり、銅およびチタンの総量に対する、銅の割合を、7mol%以上15mol%以下とすることで、圧電素子は、良好な圧電特性を有することがわかった。
また、表1および図3より、バリウムを含む実施例2,5〜12は、バリウムを含まない比較例3に比べて、歪量が大きいことがわかった。さらに、表1より、実施例2,5〜12は、比較例2,3に比べて、耐圧が大きいことがわかった。すなわち、0.01≦x≦0.21の範囲で、歪量が大きくなり、耐圧が高くなった。つまり、ビスマス、ナトリウム、およびバリウムの総量に対する、バリウムの割合を、1mol%以上21mol%以下とすることで、圧電素子は、良好な圧電特性を有することがわかった。
また、表1より、銅を含まない比較例1,4〜10は、銅を含む実施例1〜12に比べて、歪量が小さく、リーク電流が大きいことがわかった。
図4〜11は、それぞれ、実施例1〜4,9,11,12、比較例1の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフである。図4〜11より、銅を含む実施例1〜4,9,11,12は、銅を含まない比較例1に比べて、良好なヒステリシスを有することがわかった。
5. 液体噴射ヘッド
次に、本実施形態にかかる液体噴射ヘッドについて、図面を参照しながら説明する。図12は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図13は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
液体噴射ヘッド600は、本発明に係る圧電素子を有する。以下では、本発明に係る圧電素子として、圧電素子100を用いた例について説明する。
液体噴射ヘッド600は、図12および図13に示すように、例えば、振動板1aと、ノズル板610と、流路形成基板620と、圧電素子100と、筐体630と、を含む。なお、図13では、圧電素子100を簡略化して図示している。
ノズル板610は、図12および図13に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクが吐出される。ノズル板610には、例えば、複数のノズル孔612が設けられている。図13に示す例では、複数のノズル孔612は、一列に並んで形成されている。ノズル板610の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
流路形成基板620は、ノズル板610上(図13の例では下)に設けられている。流路形成基板620の材質としては、例えば、シリコンなどを例示することができる。流路形成基板620がノズル板610と振動板1aとの間の空間を区画することにより、図13に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力発生室622と、が設けられている。この例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力発生室622と、を区別して説明するが、これらはいずれも液体の流路(例えば、マニホールドということもできる)であって、このような流路はどのように設計されても構わない。また例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。
リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板1aに設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力発生室622に供給されることができる。圧力発生室622は、振動板1aの変形により容積が変化する。圧力発生室622はノズル孔612と連通しており、圧力発生室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
なお、リザーバー624および供給口626は、圧力発生室622と連通していれば、流路形成基板620とは別の部材(図示せず)に設けられていてもよい。
圧電素子100は、流路形成基板620上(図13の例では下)に設けられている。圧電素子100は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板1aは、圧電体層20の動作によって変形し、圧力発生室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
筐体630は、図13に示すように、ノズル板610、流路形成基板620、振動板1a、および圧電素子100を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
液体噴射ヘッド600によれば、環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有する圧電素子100を有することができる。したがって、液体噴射ヘッド600は、環境負荷が小さく、高い吐出能力を有することができる。
なお、上記の例では、圧電体層20を2つの電極10,30で挟む圧電素子100を用いて、撓み振動によって圧力発生室622の容積を変化させる液体噴射ヘッド600について説明した。しなしながら、本発明に係る液体噴射ヘッドは、上記の形態に限定されず、例えば、圧電体層と電極とを交互に積層させてなる圧電素子を固定基板に固定し、縦振動によって圧力発生室の容積を変化させる形態であってもよい。また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、圧電素子の伸張や収縮変形ではなく剪断変形によって圧力発生室の容積を変化させる、いわゆるシェアモード型の圧電素子を用いた形態であってもよい。
また、上記の例では、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
6. 液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。図14は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。
液体噴射装置700は、本発明に係る液体噴射ヘッドを有する。以下では、本発明に係る液体噴射ヘッドとして、液体噴射ヘッド600を用いた例について説明する。
液体噴射装置700は、図14に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。液体噴射装置700は、さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。 ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
液体噴射装置700によれば、環境負荷が小さく、液体の吐出能力が高い液体噴射ヘッド600を有することができる。したがって、液体噴射装置700は、環境負荷が小さく、高い吐出能力を有することができる。
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
1 基体、1a 振動板、10 第1電極、20 圧電体層、30 第2電極、
100 圧電素子、600 液体噴射ヘッド、610 ノズル板、612 ノズル孔、
620 流路形成基板、622 圧力発生室、624 リザーバー、626 供給口、
628 貫通孔、630 筐体、700 液体噴射装置、710 駆動部、
720 装置本体、721 トレイ、722 排出口、730 ヘッドユニット、
731 インクカートリッジ、732 キャリッジ、741 キャリッジモーター、
742 往復動機構、743 タイミングベルト、744 キャリッジガイド軸、
750 給紙部、751 給紙モーター、752 給紙ローラー、
752a 従動ローラー、752b 駆動ローラー、760 制御部、
770 操作パネル

Claims (5)

  1. ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる圧電セラミックスであって、
    前記複合酸化物は、
    鉛を含まず、
    Aサイトの元素として、ビスマス、ナトリウム、およびバリウムを含み、
    Bサイトの元素として、銅、およびチタンを含み、
    前記銅および前記チタンの総量に対する、前記銅の割合は、7mol%以上15mol%以下である、圧電セラミックス。
  2. 請求項1において、
    前記ビスマス、前記ナトリウム、および前記バリウムの総量に対する、前記バリウムの割合は、1mol%以上21mol%以下である、圧電セラミックス
  3. 圧電体層と、
    前記圧電体層に電圧を印加する電極と、
    を含み、
    前記圧電体層は、請求項1または2に記載の圧電セラミックスからなる、圧電素子。
  4. ノズル孔に連通する圧力発生室と、
    請求項3に記載の圧電素子と、
    を含、液体噴射ヘッド。
  5. 請求項に記載の液体噴射ヘッドを有する、液体噴射装置。
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