以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサを示した斜視図である。又、図2は、該固体電解コンデンサの下面図である。図1及び図2に示す様に、該固体電解コンデンサは、コンデンサ本体(1)と、該コンデンサ本体(1)を搭載する座板(2)と、2つの陽極端子(3)(3)と、陰極端子(4)とを具えている。
図3は、図2に示されるA−A線に沿う断面図である。図3に示す様に、コンデンサ本体(1)は、円柱形状を有する巻回体(11)と、該巻回体(11)を収容する有底筒状の金属ケース(5)と、該金属ケース(5)の開口(5b)を封止する封口部材(52)とから構成されている。
図4は、巻回体(11)を示した斜視図である。図4に示す様に、巻回体(11)は、2枚の陽極箔(111)(111)を、各陽極箔(111)に、セパレータ(112)を重ね合わせて巻回することにより構成されている。本実施形態では、各陽極箔(111)の幅寸法W1が、セパレータ(112)の幅寸法W2と略同一の寸法に設定されている。ここで、各陽極箔(111)は、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作用金属から構成されている。又、各陽極箔(111)の表面には、誘電体被膜(図示せず)が形成されている。尚、巻回体(11)は、陽極箔(111)に限らない種々の陽極部材を用いて構成されていてもよい。
図4に示す様に、巻回体(11)の外周面には、巻回軸(110)に略直交する第1巻回端面(11a)と、巻回軸(110)に略直交していて第1巻回端面(11a)とは反対側の第2巻回端面(11b)とが含まれている。そして、巻回体(11)には、該巻回体(11)をその第1巻回端面(11a)から第2巻回端面(11b)まで巻回軸(110)に沿って貫通する貫通孔(114)が形成されている。図示していないが、該貫通孔(114)を形成している巻回体(11)の内周面は、セパレータ(112)によって形成されている。
巻回体(11)には固体電解質層(図示せず)が形成されている。ここで、固体電解質層は、巻回体(11)の内周面及び外周面上に形成されると共に、巻回体(11)の内部に存在する隙間(具体的には、2枚の陽極箔(111)(111)間に存在する隙間)に、該隙間を埋めた状態で形成されている。又、巻回体(11)の外周面上には、固体電解質層上に陰極層(15)が形成されており、陰極層(15)は、巻回体(11)の外周面の上方にて固体電解質層上に形成されたカーボン層(図示せず)と、該カーボン層上に形成された銀ペースト層(図示せず)とによって構成されている。そして、固体電解質層と陰極層(15)とは互いに電気的に接続されている。
金属ケース(5)は、アルミニウム等の導電材料から形成されている。又、封口部材(52)は、樹脂材やゴム材等の電気絶縁材料から形成されており、金属ケース(5)の開口(5b)を封止した状態で該金属ケース(5)に固定されている。具体的には、金属ケース(5)の開口縁部に横絞り加工及びカール処理を施すことにより、金属ケース(5)に封口部材(52)が固定されている。
上記2枚の陽極箔(111)(111)にはそれぞれ、2本の陽極リード(30)(30)が1つずつ電気的に接続されており、図3に示す如く、各陽極リード(30)は、巻回体(11)の第1巻回端面(11a)(図3において下端面)から引き出されている。
巻回体(11)の貫通孔(114)には、陰極リード(40)が貫挿されており、該陰極リード(40)は、その一部分が巻回体(11)の第1巻回端面(11a)から引き出される一方、残りの部分が巻回体(11)内に埋設されている。ここで、上述した様に、巻回体(11)の内周面上には固体電解質層が形成されている。従って、誘電体被膜の内、陽極箔(111)の最内周面を覆った領域と、陰極リード(40)との対向面間には、固体電解質層の一部が介在し、これによって、陰極リード(40)は、固体電解質層に電気的に接続されると共に、該固体電解質層によって巻回体(11)に固定されている。
図3に示す様に、陰極リード(40)の端部(図3において上端部)には、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に当接する当接部(43)が形成されている。具体的には、当接部(43)は、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に沿って円盤状に拡がっており、該当接部(43)には、その中心位置からずれた位置に陰極リード(40)が連結されている。ここで、当接部(43)は導電性を有しており、該当接部(43)は、これが陰極リード(40)に一体に形成されることにより、陰極リード(40)に電気的に接続されている。又、当接部(43)は、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)上にて固体電解質層に電気的に接続されている。
封口部材(52)には、各陽極リード(30)が貫挿される小さな第1貫通孔(521)が形成されており、該第1貫通孔(521)には、各陽極リード(30)の引出し部(31)が隙間なく貫挿されている。更に、封口部材(52)には、陰極リード(40)が貫挿される小さな第2貫通孔(522)が形成されており、該第2貫通孔(522)には、陰極リード(40)の内、巻回体(11)の第1巻回端面(11a)から引き出された引出し部(41)が隙間なく貫挿されている。これにより、各陽極リード(30)は封口部材(52)に支持され、これによって巻回体(11)が金属ケース(5)内で固定されている。
一方、座板(2)には、該座板(2)をその上面(2a)から下面(2b)に貫通する複数の貫通孔(20)〜(20)がそれぞれ、巻回体(11)からの陽極リード(30)の引き出し位置P1,P1(図3参照)と、巻回体(11)からの陰極リード(40)の引き出し位置P2(図3参照)とに対応して設けられている。又、座板(2)の下面(2b)は、図2に示す様に、4つ縁(21)〜(24)から形成された略四角形を呈している。
図3に示す様に(図2も参照)、2本の陽極リード(30)(30)の内、一方の陽極リード(30)(図3において右側の陽極リード)の引出し部(31)は、これに対応する座板(2)の貫通孔(20)を通過した後、該貫通孔(20)の出口近傍で屈曲し、その後、座板(2)の下面(2b)に沿って、該貫通孔(20)近傍に位置する第1縁(21)まで延びている。又、2本の陽極リード(30)(30)の内、他方の陽極リード(30)(図3において左側の陽極リード)の引出し部(31)は、これに対応する座板(2)の貫通孔(20)を通過した後、該貫通孔(20)の出口近傍で屈曲し、その後、座板(2)の下面(2b)に沿って、該貫通孔(20)近傍に位置していて第1縁(21)とは反対側の第3縁(23)まで延びている。各陽極リード(30)の内、座板(2)の下面(2b)に沿って延びた部分は平坦形状を有しており、該部分によって固体電解コンデンサの陽極端子(3)が構成されている。
図4に示す様に(図2も参照)、陰極リード(40)の引出し部(41)は、これに対応する座板(2)の貫通孔(20)を通過した後、該貫通孔(20)の出口近傍で屈曲し、その後、座板(2)の下面(2b)に沿って、第1縁(21)及び第3縁(23)の両縁とは異なる第2縁(22)まで延びている。陰極リード(40)の内、座板(2)の下面(2b)に沿って延びた部分は平坦形状を有しており、該部分によって固体電解コンデンサの陰極端子(4)が構成されている。
次に、上記固体電解コンデンサの製造方法について、具体的に説明する。該製造方法では、箔作製工程、巻回工程、再化成処理工程、リード挿入工程、電解質層形成工程、陰極層形成工程、組み立て工程、及び端子形成工程が順に実行される。
箔作製工程(図示せず)では先ず、陽極箔(111)となる金属箔を用意し、該金属箔の表面にエッチング加工を施して複数の微細な凹凸を形成し、これによって金属箔の表面積を増大させる。次に、金属箔の表面に対して化成処理を施すことにより、該表面に誘電体被膜を形成する。その後、金属箔に切断加工を施して該金属箔を長尺状の所定形状に裁断する。これにより、表面が誘電体被膜によって覆われた複数の陽極箔(111)〜(111)が作製される。尚、作製された陽極箔(111)においては、その切断面に陽極箔(111)の一部が露出することになる。
図5は、巻回工程の説明に用いられる図である。図5には図示していないが、巻回工程では先ず、2枚の陽極箔(111)(111)にそれぞれ陽極リード(30)を1つずつ取り付ける。その後、図5に示す様に、該2枚の陽極箔(111)(111)を、これらの間に、セパレータ(112)を介在させて重ね合わせると共に、一方の陽極箔(111)に対して、他方の陽極箔(111)とは反対側から別のセパレータ(112)を重ね合わせる。そして、2枚の陽極箔(111)(111)を、前記一方の陽極箔(111)を内側して(即ち、前記別のセパレータ(112)が最も内側となるように)巻き芯(601)に巻き付け、これにより、図6に示す如く巻回体(11)を作製する。
巻き付け完了後、巻回体(11)の型崩れを防止するべく、巻き止めテープ(113)によって陽極箔(111)の終端部(111a)を巻回体(11)の外周面に固定する。その後、巻回体(11)から巻き芯(601)を抜き取る。これにより、巻回体(11)には、図4に示す如く、巻き芯(601)が貫挿されていた領域に貫通孔(114)が形成されることになる。尚、巻回工程では、陽極箔(111)への陽極リード(30)の取付けや陽極箔(111)(111)の巻回によって誘電体被膜にストレスが生じ、これにより誘電体被膜が損傷する虞がある。
再化成処理工程では、巻回体(11)を化成液に浸漬させ、この状態で、各陽極リード(30)を通じて各陽極箔(111)に電圧を印加する。これにより、巻回体(11)に対して再化成処理が施され、その結果、陽極箔(111)の露出面に酸化被膜(誘電体被膜)が形成され、又、誘電体被膜の損傷した部分が修復され、これによって、各陽極箔(111)の表面全体が誘電体被膜によって覆われる。
図7は、リード挿入工程の説明に用いられる斜視図である。図7に示す様に、リード挿入工程では先ず、陰極リード(40)を用意する。ここで、該陰極リード(40)は、その端部に当接部(43)が一体に形成されたものである。そして、巻回体(11)の貫通孔(114)に対して、陰極リード(40)を巻回体(11)の第2巻回端面(11b)側から挿入する。続けて、図8に示す様に、当接部(43)を巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に当接させる。ここで、陰極リード(40)は、当接部(43)が巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に当接したときに、該陰極リード(40)の一部(引出し部(41))が巻回体(11)の第1巻回端面(11a)から引き出されることとなる長さ寸法に設定されている。
電解質層形成工程では、固体電解質層を形成するための化学重合液、具体的には導電性高分子等の化学重合液を用意し、該化学重合液に巻回体(11)を浸漬させる。これにより、巻回体(11)の内部に存在する隙間(具体的には、2枚の陽極箔(111)(111)間に存在する隙間)に、該隙間を埋めた状態で化学重合膜が形成され、更には、セパレータ(112)(112)に化学重合液が含浸して重合することにより、各セパレータ(112)にも化学重合膜が形成され、これらの化学重合膜によって固体電解質層が構成される。このとき、陰極リード(40)の当接部(43)は、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)上にて固体電解質層に電気的に接続されることになる。尚、導電性高分子には、例えば、ポリチオフェン系、ポリピロール系、又はポリアニリン系の高分子を用いることが出来る。
陰極層形成工程では、巻回体(11)をカーボンペーストに浸漬させて、巻回体(11)の外周面の上方にて固体電解質層上にカーボン層を形成する。その後、巻回体(11)を銀ペーストに浸漬させて、カーボン層上に銀ペースト層を形成する。
図9は、組み立て工程の説明に用いられる斜視図である。図9に示す様に、組み立て工程では先ず、封口部材(52)の各第1貫通孔(521)に、これに対応する陽極リード(30)の引出し部(31)を挿入すると共に、封口部材(52)の第2貫通孔(522)に、陰極リード(40)の引出し部(41)を挿入する。これにより、各陽極リード(30)が封口部材(52)に支持され、これによって巻回体(11)が封口部材(52)に固定される。
次に、金属ケース(5)内に巻回体(11)を収容すると共に、封口部材(52)によって金属ケース(5)の開口(5b)を塞ぎ、その後、金属ケース(5)の開口端部に対して横絞り加工及びカール処理を施すことにより、金属ケース(5)に封口部材(52)を固定する。これにより、巻回体(11)が金属ケース(5)内で固定されて、コンデンサ本体(1)(図1参照)が完成する。
次に、座板(2)上にコンデンサ本体(1)を搭載する。このとき、各陽極リード(30)の引出し部(31)及び陰極リード(40)の引出し部(41)を、これらに対応する座板(2)の貫通孔(20)に挿入する。
その後、陽極リード(30)の引出し部(31)の内、座板(2)の下面(2b)から突出した部分に対してプレス加工を施し、これによって該部分を平坦形状に変形させる。そして、各陽極リード(30)の引出し部(31)を、座板(2)の貫通孔(20)の出口近傍にて折り曲げることにより、平坦部分を座板(2)の下面(2b)に沿わせる(図3参照)。これにより、固体電解コンデンサの陽極端子(3)が形成される。
又、陰極リード(40)の引出し部(41)の内、座板(2)の下面(2b)から突出した部分に対してプレス加工を施し、これによって該部分を平坦形状に変形させる。そして、陰極リード(40)の引出し部(41)を、座板(2)の貫通孔(20)の出口近傍にて折り曲げることにより、平坦部分を座板(2)の下面(2b)に沿わせる(図3参照)。これにより、固体電解コンデンサの陰極端子(4)が形成される。
斯くして、本実施形態の固体電解コンデンサが完成することになる。
上記固体電解コンデンサにおいては、巻回体を構成する2枚の陽極箔(111)(111)にそれぞれ、陽極リード(30)が1本ずつ電気的に接続されている。従って、巻回体を構成する1枚の陽極箔に1本の陽極リードが電気的に接続されているに過ぎない従来の固体電解コンデンサに比べて、陽極リード(30)の本数が増加した分、各陽極リード(30)が担う陽極箔(111)の長さ寸法が小さい。よって、陽極箔(111)自体に生じる電気抵抗が小さく、その結果、固体電解コンデンサの低ESR化が実現されることになる。
又、上記固体電解コンデンサにおいて陽極端子(3)と陰極端子(4)との間に電圧が印加されたとき、巻回体(11)内の陰極側の電子は、固体電解質層を通じて陰極リード(40)まで移動する。ここで、上記固体電解コンデンサにおいては、陰極リード(40)が、巻回体(11)の巻回軸(110)に沿って設けられている。従って、巻回体(11)の外周面側に陰極リードが設けられている従来の固体電解コンデンサ(特許文献2、又は、図19及び図20に示す固体電解コンデンサ参照)に比べて、巻回体(11)内の陰極側の電子が固体電解質層を通じて陰極リード(40)まで移動する距離が短い。
又、上記固体電解コンデンサにおいては、当接部(43)が、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)上にて固体電解質層に電気的に接続されている。このため、巻回体(11)内の陰極側の電子は、当接部(43)を通って陰極リード(40)まで移動することが出来、従って、電子が固体電解質層中を移動する距離は短くて済む。
よって、上記固体電解コンデンサによれば、該固体電解コンデンサのESRが更に低減されることになる。
上記固体電解コンデンサの製造過程では、陰極リード(40)を巻回体(11)の貫通孔(114)に挿入するだけでよいので、従来の固体電解コンデンサに比べて、陰極リード(40)の取付けが容易である。
又、上記固体電解コンデンサにおいては、貫通孔(114)を構成する巻回体(11)の内周面が、セパレータ(112)によって形成されている。従って、上記固体電解コンデンサの製造過程において、貫通孔(114)に陰極リード(40)を挿入した場合でも、陰極リード(40)が陽極箔(111)上の誘電体被膜に接触することがなく、従って、誘電体被膜が損傷し難い。よって、上記固体電解コンデンサによれば、陰極リード(40)と陽極箔(111)とが電気的に短絡することが防止されることになる。
更に、上記固体電解コンデンサにおいては、これを作製する過程で陰極箔を巻回する必要がない。従って、陰極箔がない分を陽極箔(111)に置き換えて陽極箔(111)の巻回量を増やすことが出来る。よって、上記固体電解コンデンサよれば、該固体電解コンデンサの大容量化を実現することが可能である。
更に又、上記固体電解コンデンサによれば、陰極リード(40)に対して巻回体(11)の第2巻回端面(11b)から第1巻回端面(11a)へ向かう方向の外力が加わって、陰極リード(40)が巻回体(11)の第1巻回端面(11a)側へ移動しようとした場合、当接部(43)が巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に当接し、これによって、陰極リード(40)の移動が阻止されることになる。よって、陰極リード(40)は、巻回体(11)の第1巻回端面(11a)側へ抜け落ちることがない。
本願発明者は、ESR及び静電容量について、本実施形態の固体電解コンデンサと従来の固体電解コンデンサとを比較する実験を行っている。下掲の表1に、その実験の結果が示されている。
ここで、従来の固体電解コンデンサとして、図18に示される固体電解コンデンサ(従来例1;例えば、特許文献1参照)と、図19及び図20に示す如く陰極リード(40)が金属ケース(5)の外周面に取り付けられた固体電解コンデンサ(従来例2)とを採用した。具体的には、従来例1の固体電解コンデンサにおいては、1枚の陽極箔と1枚の陰極箔とが、これら間に紙製のセパレータを介在させて巻回されており、該陽極箔に1本の陽極リードが接続され、該陰極箔に1本の陰極リードが接続されている。従来例2の固体電解コンデンサにおいては、1枚の陽極箔が、これに紙製のセパレータを重ね合わせて巻回されており、該陽極箔に1本の陽極リードが接続されている。又、従来例2の固体電解コンデンサにおいては、図20に示す様に、金属ケース(5)の内周面と陰極層(15)の外周面との間に、金属ケース(5)と陰極層(15)とを互いに電気的に接続する導電性接着剤(51)が介在しており、これによって、陰極層(15)と陰極リード(40)とが、金属ケース(5)と導電性接着剤(51)とを介して互いに電気的に接続されている。
更に、本実験においては、定格電圧を6V、静電容量の測定周波数を120Hz、ESRの測定周波数を100kHzとした。又、本実施形態の固体電解コンデンサ(実施例1)の巻回体(11)の外形寸法、及び従来例1及び2の固体電解コンデンサの巻回体の外形寸法を何れも、直径6.3mm、高さ寸法6.0mmとした。尚、表1には、後述する変形例3の固体電解コンデンサ(実施例2)に対して同様の実験を行った結果も示されている。
実験の結果(表1参照)、従来例2のESRが従来例1のESRに比べて大きくなっている。これは、従来例1の固体電解コンデンサ(図18参照)では、巻回体(11)内に陰極箔(802)が存在しているため、巻回体(11)内の陰極側の電子が陰極リード(82)まで移動し易いのに対し、従来例2の固体電解コンデンサでは、巻回体(11)内の陰極側の電子が陰極リード(40)に到達するまでに、該電子は固体電解質層を通じて長い距離を移動する必要があるからである。一方、実施例1のESRは、従来例2のESRに比べて著しく低下して、従来例1のESRと同程度の値まで小さくなっている。これは、実施例1の固体電解コンデンサにおいて、陽極リード(30)の本数が増加した分、各陽極リード(30)が担う陽極箔(111)の長さ寸法が小さくなり、又、陰極リード(40)が、巻回体(11)の巻回軸(110)に沿って設けられることにより、巻回体(11)内の陰極側の電子が固体電解質層を通じて陰極リード(40)まで移動する距離が短くなったからである。
又、実験の結果、実施例1及び従来例2の静電容量が従来例1の静電容量に比べて著しく大きくなっている。これは、陽極箔(111)の巻回量が増えた分、固体電解コンデンサの静電容量が増大したからである。
図10は、上記固体電解コンデンサの第1変形例について、該固体電解コンデンサが具える巻回体(11)を示した斜視図である。図10に示す様に、上記固体電解コンデンサにおいて、セパレータ(112)の幅寸法W2が、陽極箔(111)の幅寸法W1より大きく設定されていてもよい。この構成によれば、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)が、巻回されて渦巻状に延びたセパレータ(112)の縁(即ち、陽極箔(111)から突出したセパレータ(112)の縁)によって構成されることになる。
本変形例に係る固体電解コンデンサにおいては、導電性を有する当接部(43)を巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に当接させた場合、当接部(43)と各陽極箔(111)との間にセパレータ(112)が介在することになる。従って、当接部(43)と陽極箔(111)との電気的な短絡が、セパレータ(112)によって防止されることになる。
図11(a)及び図11(b)は、上記固体電解コンデンサの第2変形例について、当接部(43)の各種形状を示した斜視図である。図11(a)に示す様に、当接部(43)が円盤状に拡がっていて、該当接部(43)の中心位置に陰極リード(40)の端部が連結されていてもよい。又、図11(b)に示す様に、当接部(43)が、陰極リード(40)の延在方向に対して略垂直な方向へ棒状に延びていて、該当接部(43)の中心位置に陰極リード(40)の端部が連結されていてもよい。尚、当接部(43)の形状は、これらに限られるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、当接部(43)は、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に沿って長く延び、或いは大きく拡がることにより、該第2巻回端面(11b)の外周縁又はその近傍位置にまで達していてもよい。
図12は、上記固体電解コンデンサの第3変形例について、該固体電解コンデンサが具える巻回体(11)を示した斜視図である。図12に示す様に、上記固体電解コンデンサにおいて、陰極リード(40)には、その引出し部(41)の根元に、巻回体(11)の第1巻回端面(11a)に当接するストッパ(44)が設けられていてもよい。一例として、該ストッパ(44)は、図8に示す如く巻回体(11)の貫通孔(114)に陰極リード(40)を挿入した後、陰極リード(40)の引出し部(41)に、例えばゴム材からなるリング部材を嵌め込むことによって構成することが出来る。
本変形例に係る固体電解コンデンサによれば、陰極リード(40)に対して巻回体(11)の第1巻回端面(11a)から第2巻回端面(11b)へ向かう方向の外力が加わって、陰極リード(40)が巻回体(11)の第2巻回端面(11b)側へ移動しようとした場合、ストッパ(44)が巻回体(11)の第1巻回端面(11a)に当接し、これによって、陰極リード(40)の移動が阻止されることになる。よって、陰極リード(40)は、巻回体(11)の第2巻回端面(11b)側へ抜け落ちることがない。
本変形例に係る固体電解コンデンサにおいて、ストッパ(44)は、陰極リード(40)に一体に形成されていてもよい。この構成を有する固体電解コンデンサを製造する場合、リード挿入工程において先ず、図13に示す如く陰極リード(40)を用意する。即ち、陰極リード(40)は、その端部に当接部(43)が設けられておらず、引出し部(41)の根元となる位置にストッパ(44)が一体に形成されたものである。そして、巻回体(11)の貫通孔(114)に対して、陰極リード(40)を巻回体(11)の第1巻回端面(11a)側から挿入する。続けて、図14に示す様に、ストッパ(44)を巻回体(11)の第1巻回端面(11a)に当接させる。ここで、陰極リード(40)は、ストッパ(44)が巻回体(11)の第1巻回端面(11a)に当接したときに、該陰極リード(40)の端部(401)が巻回体(11)の第2巻回端面(11b)から突出することとなる長さ寸法に設定されている。従って、陰極リード(40)の両端部がそれぞれ、巻回体(11)の第1巻回端面(11a)及び第2巻回端面(11b)から突出することになる。
次に、当接部形成工程において、図15に示す様に、陰極リード(40)の端部(401)にプレス加工を施すことにより、該端部(401)を平板状に塑性変形させて、当接部(43)となる平板部(402)を形成する。その後、図16に示す様に、該平板部(402)を押し倒してその平坦面(402a)(図15参照)を巻回体(11)の第2巻回端面(11b)に当接させる。これにより、平板部(402)から当接部(43)が形成される。この製造方法によれば、当接部(43)を容易に作製することが出来る。尚、この様に作製した固体電解コンデンサは、上記実施形態に係る固体電解コンデンサ(図3及び図7参照)と同様、大容量であってESRが小さい(表1参照)。
図17は、上記固体電解コンデンサの第4変形例を示した下面図である。図17に示す様に、上記固体電解コンデンサにおいて、2つの陽極端子(3)(3)となる陽極リード(30)(30)の引出し部(31)(31)はそれぞれ、これらに対応する座板(2)の貫通孔(20)から、該座板(2)の下面(2b)に沿って、第2縁(22)とは反対側の第4縁(24)まで互いに略平行に延びていてもよい。
上記固体電解コンデンサの第5変形例として、各セパレータ(112)に、導電性を有するものを採用してもよい。具体的には、該セパレータ(112)には、金属製のメッシュ、又は金属製若しくは非金属製のメッシュの表面に金属層が形成されたものを用いることが出来る。ここで、メッシュを構成する金属として、金や白金等の貴金属を採用することにより、セパレータ(112)の耐食性を向上させることが出来る。又、セパレータ(112)として、銅や鉄等の金属からなるメッシュの表面に、メッキによって金やパラジウム等の金属からなる金属層が形成されたものを用いることにより、セパレータ(112)の耐食性を向上させることが出来る。
本変形例に係る固体電解コンデンサにおいては、陽極端子(3)と陰極端子(4)との間に電圧が印加されたとき、巻回体(11)内の陰極側の電子が、導電性を有するセパレータ(112)を通じて陰極リード(40)まで移動することになる。従って、巻回体(11)内の陰極側の電子は陰極端子(4)まで移動し易い。よって、本変形例に係る固体電解コンデンサによれば、該固体電解コンデンサのESRが更に低減されることになる。
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記固体電解コンデンサにおいて、巻回体(11)は、1枚の陽極箔(111)を巻回して構成されたものであってもよいし、2枚に限らない複数の陽極箔(111)〜(111)を巻回して構成されたものであってもよい。又、上記固体電解コンデンサにおいて、巻回体(11)からは、2本に限らない複数の陽極リード(30)〜(30)が引き出されていてもよい。更には、これらの構成に限らず、上記固体電解コンデンサについて、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
上記固体電解コンデンサは、当接部(43)に導電性がない構成、或いは当接部(43)自体がない構成を有していてもよい。又、上記固体電解コンデンサは、座板(2)のない構成を有していてもよい。
又、上記固体電解コンデンサにおいて、巻き止めテープ(113)に、導電性を有するものを採用してもよい。これにより、巻き止めテープ(113)を設けたことによるESRの増加を抑制することが出来る。