JP2012082942A - 液封入式防振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンシェイクとこもり音に対する防振性能を満足しつつ、アイドル振動に対して2つのピークを持つ減衰特性を実現する。
【解決手段】防振基体16が室壁の一部をなす主液室42と、第1ダイヤフラム36が室壁の一部をなす第1副液室44と、第2ダイヤフラム46により第1副液室44から区画形成された第2副液室48と、第3ダイヤフラム50により第1副液室44から区画形成された第3副液室52と、主液室42と第1副液室44を連通させる第1オリフィス流路60と、それよりも高周波数域にチューニングされて第2副液室48と第3副液室52を連通させる第2オリフィス流路62と、それよりも高周波数域にチューニングされて主液室42と第2副液室48を連通させる第3オリフィス流路64と、第3オリフィス流路64の開閉を行う切替バルブ66と、を備えた液封入式防振装置である。
【選択図】図2

Description

本発明は、液封入式防振装置に関するものである。
自動車エンジン等の振動源の振動を車体側に伝達しないように支承するエンジンマウント等の防振装置として、振動源側に取り付けられる第1取付具と、支持側に取り付けられる第2取付具と、これら取付具の間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、防振基体が室壁の一部をなす主液室と、ダイヤフラムが室壁の一部をなす副液室と、これら液室間を連通させるオリフィス流路とを備えた液封入式防振装置が知られている。液封入式防振装置では、オリフィス流路での液流動による液柱共振作用や防振基体の制振効果により、振動減衰機能と振動絶縁機能を果たすように構成されている。
この種の液封入式防振装置として、下記特許文献1には、図9にその模式図を示すように、第1取付具と第2取付具を防振基体100で連結し、該防振基体100が室壁の一部をなす主液室101と、第1ダイヤフラム102が室壁の一部をなす第1副液室103と、第1ダイヤフラム102よりも拡張弾性の大きい第2ダイヤフラム104によって第1副液室103から隔成される第2副液室105を設け、主液室101と第1副液室103とを第1オリフィス流路106により、第2副液室105と第1副液室103とを第2オリフィス流路107によりそれぞれ連通させ、主液室101と第2副液室105とを、第1オリフィス流路106と第2オリフィス流路107の合成等価質量よりも等価質量の小さい第3オリフィス流路108で連通させるとともに、この第3オリフィス流路108に、所定振幅以上の振動の入力時にその内部の液体の流動を規制する流動規制バルブ109を設けたものが開示されている。
この液封入式防振装置であると、差圧によって動くバルブ(可動ゴム)を設置し、液体の流れを規制することにより、エンジンシェイク、アイドル振動、こもり音及び加速時騒音に対する特性を実現することができる。より詳細には、エンジンシェイクのような大振幅の振動に対しては、流動規制バルブ109が第3オリフィス流路108を閉塞することにより、第1オリフィス流路106を通じて流動する液体の共振作用により減衰効果を発揮させる。また、アイドル振動のような20〜40Hzの微振幅振動に対しては、流動規制バルブ109が第3オリフィス流路108を開放することにより、液体は第1オリフィス流路106に加えて、第3オリフィス流路108及び第2オリフィス流路107も流動し、これにより、入力振動は、第1オリフィス流路106と第2オリフィス流路107の合成等価質量と第1ダイヤフラム102の拡張弾性とによる共振によって、低減される。更に、こもり音や加速時騒音等の高周波数域の微振幅振動に対しては、第3オリフィス流路108を流動する液体の共振作用により低減効果が発揮される。
特開平10−122294号公報
上記従来技術では、アイドル振動に対して、第1オリフィス流路と第2オリフィス流路の2つのオリフィス流路による1共振系で対応しており、図7においてC’で示すように、微振幅低周波数域における減衰係数については、1つのピークを持つ特性しか得られない。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、エンジンシェイクのような大振幅振動とこもり音のような微振幅高周波数域の振動に対する防振性能を満足しつつ、アイドル振動のような微振幅低周波数域の振動の減衰について2つのピークを持つ特性を実現して、より高いレベルでのアイドル振動に対する防振要求を満足することができる液封入式防振装置を提供することを目的とする。
本発明に係る液封入式防振装置は、振動源側と支持側の一方に取り付けられる第1取付具と、振動源側と支持側の他方に取り付けられる第2取付具と、前記第1取付具と第2取付具との間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、前記防振基体が室壁の一部をなす液体が封入された主液室と、ゴム状弾性膜からなる第1ダイヤフラムが室壁の一部をなす液体が封入された第1副液室と、ゴム状弾性膜からなる第2ダイヤフラムにより前記第1副液室から区画形成され液体が封入された第2副液室と、ゴム状弾性膜からなる第3ダイヤフラムにより前記第1副液室から区画形成され液体が封入された第3副液室と、前記主液室と前記第1副液室を連通させる第1オリフィス流路と、前記第1オリフィス流路よりも高周波数域にチューニングされて前記第2副液室と前記第3副液室を連通させる第2オリフィス流路と、前記第2オリフィス流路よりも高周波数域にチューニングされて前記主液室と前記第2副液室を連通させる第3オリフィス流路と、前記第3オリフィス流路に設けられて当該第3オリフィス流路の開閉を行う切替バルブであって、前記第3オリフィス流路を開放させる開放状態と、前記開放状態よりも大振幅の振動入力時に前記第3オリフィス流路を閉塞させる閉塞状態とに切り替える切替バルブと、を備えたものである。
本発明の好ましい一態様として、該液封入式防振装置は、前記切替バルブによって前記第3オリフィス流路が閉塞されることにより前記第1、第2及び第3オリフィス流路のうち前記第1オリフィス流路のみで液体の流動が生じる第1の状態と、前記切替バルブによって前記第3オリフィス流路が開放されることにより前記第1、第2及び第3オリフィス流路で液体の流動が生じる第2の状態と、前記第2の状態よりも高周波数域の振動入力により前記第3オリフィス流路のみで液体の流動が生じる第3の状態を有してもよい。
本発明の好ましい他の態様としては、前記第2取付具が筒状をなし、前記第1ダイヤフラムが前記第2取付具に取り付けられて前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成し、前記液室が前記第2取付具の周壁部の内側に嵌着された仕切り部によって前記主液室と前記第1副液室とに仕切られており、前記仕切り部に、前記第2副液室、前記第3副液室、前記第1オリフィス流路、前記第2オリフィス流路、前記第3オリフィス流路及び前記切替バルブが設けられてもよい。
本発明の好ましい更に他の態様として、前記切替バルブは外周部が前記仕切り部に液密に保持されたゴム状弾性膜からなるバルブ本体を備え、前記バルブ本体の表裏両側に当該バルブ本体の撓み変形を規制する一対の規制板が設けられ、該規制板に前記第3オリフィス流路を構成する連通孔が設けられるとともに、前記バルブ本体には前記連通孔と重ならない位置に貫通孔が設けられ、前記バルブ本体の撓み変形により前記連通孔が閉塞されることで前記切替バルブが前記第3オリフィス流路を閉塞するよう構成されてもよい。
本発明に係る液封入式防振装置によれば、エンジンシェイクのような大振幅振動に対しては、切替バルブが第3オリフィス流路を閉塞することにより、第1オリフィス流路を通じて流動する液体の共振作用により減衰効果が発揮される。アイドル振動のような微振幅低周波数域の振動に対しては、切替バルブが第3オリフィス流路を開放させることにより、第1オリフィス流路と第1ダイヤフラムによる共振系と、第2オリフィス流路と第3ダイヤフラムによる共振系との2つの減衰ピークを持つ特性を実現することができる。また、こもり音や加速時騒音のような微振幅高周波数域の振動に対しては、第3オリフィス流路と第2ダイヤフラムの共振により低減することができる。よって、大振幅振動と微振幅高周波数域の振動に対する防振性能を満足しつつ、微振幅低周波数域の振動について2ピークの減衰を持つ特性を実現することができる。
本発明の一実施形態に係る液封入式防振装置の縦断面図 同液封入式防振装置の模式図 同液封入式防振装置の仕切り部の断面図 同仕切り部の斜め上方から見た分解斜視図 同仕切り部の斜め下方から見た分解斜視図 微振幅振動時における液封入式防振装置のばね特性を示すグラフ 微振幅振動時における液封入式防振装置の減衰特性を示すグラフ 大振幅振動時における液封入式防振装置の防振特性を示すグラフ 従来の液封入式防振装置の模式図
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に示す実施形態に係る液封入式防振装置10は、自動車のエンジンを支承するエンジンマウントであり、振動源であるエンジン側に取り付けられる上側の第1取付具12と、支持側の車体に取り付けられる筒状をなす下側の第2取付具14と、これら両取付具12,14の間に介設されて両者を連結するゴム弾性体からなる防振基体16とを備えてなる。
第1取付具12は、第2取付具14の軸心部上方に配されたボス金具であり、径方向外方に向けてフランジ状に突出するストッパ部18が形成されている。また、上端部にはボルト穴20が設けられ、不図示のボルトを介してエンジン側に取り付けられるよう構成されている。
第2取付具14は、防振基体16が加硫成形される円筒状の筒状胴部22とカップ状の底部材24とからなる本体金具であり、底部材24に取付ボルト26が下向きに突設され、このボルト26を介して車体側に取り付けられるように構成されている。筒状胴部22は、その下端部が底部材24の上端開口部に対し、かしめ部28によりかしめ固定されている。筒状胴部22の上端部にはストッパ金具30がかしめ固定され、第1取付具12のストッパ部18との間でストッパ作用を発揮する。
防振基体16は略傘状に形成され、その上端部が第1取付具12に、下端部が筒状胴部22の上端開口部にそれぞれ加硫接着されている。防振基体16の下端部には、筒状胴部22の内周面を覆うゴム膜状のシール壁部32が連なっている。
第2取付具14には、防振基体16の下面に対して軸方向Xに対向配置されて当該下面との間に液室34を形成する可撓性ゴム膜からなる第1ダイヤフラム36が取り付けられ、液室34に水やエチレングリコール、シリコーンオイル等の液体が封入されている。第1ダイヤフラム36は、外周部に環状の補強金具38を備え、該補強金具38を介して上記かしめ部28に固定されている。第1ダイヤフラム36は、外周部において一旦下向きに湾曲状に膨らんでから中央部が上方に湾曲状に膨らんだ断面波形状をなしている。
第2取付具14の内側に設けられた上記液室34は、第2取付具14の周壁部の内側に嵌着された円盤状の仕切り部40により、防振基体16側(即ち、上側)の主液室42と、第1ダイヤフラム36側(即ち、下側)の第1副液室44とに仕切られている。主液室42は、防振基体16が室壁の一部をなす液室であり、第1副液室44は、第1ダイヤフラム36が室壁の一部をなす液室である。仕切り部40には、可撓性ゴム膜からなる第2ダイヤフラム46により第1副液室44から区画形成された第2副液室48と、可撓性ゴム膜からなる第3ダイヤフラム50により第1副液室44から区画形成された第3副液室52とが設けられている。
仕切り部40には、主液室42と第1副液室44を連通させる第1オリフィス流路60と、第2副液室48と第3副液室52を連通させる第2オリフィス流路62と、主液室42と第2副液室48を連通させる第3オリフィス流路64とが設けられるとともに、入力振幅により第3オリフィス流路64の開閉を行う切替バルブ66が第3オリフィス流路64に設けられている。
第1オリフィス流路60は、車両走行時のエンジンシェイク振動を減衰するため、それに対応した周波数域(例えば、5〜20Hz程度)にチューニングされている。すなわち、第1オリフィス流路60を通じて流動する液体の共振作用に基づく減衰効果が上記周波数域の振動に対して有効に発揮されるように、流路の断面積及び長さを調整することによってチューニングされている。
第2オリフィス流路62は、第1オリフィス流路60よりも高周波数域でありかつ第3オリフィス流路64よりも低周波数域にチューニングされたオリフィス流路である。ここでは、アイドル振動のうち、エンジンの爆発1次成分のような周波数域の振動を低減するために、これに対応した周波数域(例えば、20〜40Hz程度)に対して車両へ出力するモーメント(Nm)の減衰効果が有効に発揮されるようにチューニングされている。すなわち、第2オリフィス流路62を通じて流動する液体の共振作用に基づく減衰効果が上記アイドル振動の入力時に有効に発揮されるように、流路の断面積及び長さを調整することによってチューニングされている。
第3オリフィス流路64は、第2オリフィス流路62よりも高周波数域にチューニングされたオリフィス流路である。ここでは、こもり音や加速時騒音のような高周波数域の振動・騒音を低減するために、当該高周波数域(例えば、80〜200Hz程度)にチューニングされている。すなわち、第3オリフィス流路64を通じて流動する液体の共振作用に基づく低動ばね効果が上記高周波数域の振動入力時に有効に発揮されるように、流路の断面積及び長さを調整することによってチューニングされている。
詳細には、仕切り部40は、図3に示すように、内側に第2副液室48と第3副液室52を形成する仕切り部本体54と、仕切り部本体54の上面を覆蓋する上壁部56と、仕切り部本体54の下面を受ける受け板部58とからなる。仕切り部40は、受け板部58を上記補強金具38とともに、かしめ部28に固定することにより、シール壁部32に設けられた段部32Aと受け板部58との間で軸方向(即ち、上下方向)Xに挟まれた状態に保持されている。
図3〜5に示されるように、仕切り部本体54には、第2副液室48を形成する円弧状の空洞部68が設けられるとともに、第3副液室52を形成する円形の凹所70が下向きに開口して設けられている。受け板部58は、第2ダイヤフラム46と第3ダイヤフラム50が加硫接着された円板状金具からなり、第3ダイヤフラム50が設けられた部分で上記凹所70を覆うことにより、仕切り部本体54との間で第3副液室52が形成されている。また、受け板部58の第2ダイヤフラム46が設けられた部分で上記空洞部68を下面から覆うとともに、仕切り部本体54の上面を上壁部56で覆うことにより、上壁部56と仕切り部本体54と受け板部56との間で第2副液室48が形成されている。第3ダイヤフラム50は、上方に向かって湾曲状に膨らんだ形状をなしており、第1ダイヤフラム36よりも拡張弾性が大きく設定されている。第2ダイヤフラム46は、薄肉平板状をなしており、第1ダイヤフラム36及び第3ダイヤフラム50よりも拡張弾性が大きく設定されている。
仕切り部本体54の外周面には周方向に延びる第1凹溝72が設けられ、図1に示すようにこの第1凹溝72とシール壁部32との間で、周方向に延びる第1オリフィス流路60が形成されている。第1オリフィス流路60は、周方向の一端に主液室42側に開口する主液室側開口60A(図4参照)を有するとともに、周方向の他端に第1副液室44側に開口する第1副液室側開口60B(図5参照)を有し、これにより主液室42と第1副液室44との間を連通している。
第2オリフィス流路62は、仕切り部本体54の下面側において凹所70の周りに設けられた第2凹溝73と、上壁部56の下面側に設けられた第3凹溝74とにより、上下2段に形成されている(図3,5参照)。第2凹溝73と第3凹溝74は、仕切り部本体54に設けられた貫通穴75(図4参照)を介して連結されている。第2オリフィス流路62は、その一端62Aが第2副液室48に開口するとともに、他端62Bが第3副液室52に開口している(図5参照)。
第3オリフィス流路64は、所定振幅以上(例えば、±0.3mm以上)の振動の入力時にその内部の液体の流動が切替バルブ66により規制されるように、切替バルブ66を備えて、次のように構成されている。
図3〜5に示すように、切替バルブ66は、外周部76Aが仕切り部40に液密に保持された可撓性ゴム膜からなるバルブ本体76を備え、該バルブ本体76の表裏両側に当該バルブ本体76の撓み変形を規制する一対の規制板78,79が配設されている。両規制板78,79には、第3オリフィス流路64を構成する連通孔80が設けられるとともに、バルブ本体76には連通孔80と重ならない位置に貫通孔81が設けられ、バルブ本体76の撓み変形により連通孔80が閉塞されることで、切替バルブ66が第3オリフィス流路64を閉塞するよう構成されている。
この例では、上壁部56が、下側の規制板78を備えて仕切り部本体54の上面に固定される第1部材82と、上側の規制板79を備えて第1部材82の上面に固定される第2部材84と、第1部材82と第2部材84とにより外周部76Aが液密に挟持されるバルブ本体76とにより構成されている。上下の規制板78,79には、それぞれ円形の連通孔80が複数貫通させて設けられており、これら連通孔80は上下の規制板78,79の間で互いに重なり合うように大きさ及び位置が設定されている。上下の規制板78,79は、バルブ本体76の表裏の膜面に対してそれぞれ所定の間隙をおいて相対向するように配設されている。
バルブ本体76は、円板状をなして、上下の規制板78,79により挟持される外周部76Aが厚肉状に形成されている。バルブ本体76の表裏の膜面には、上記連通孔80を閉塞する部分(即ち、連通孔80に対向する部分)に補強用のリブ86が設けられている。リブ86は、各連通孔80の外周縁に沿う環状リブ86Aと、連通孔80の中心に位置する円形の凸部86Bと、これら環状リブ86Aと凸部86Bとの間を連結するように放射状に延びる放射状リブ86Cとにより構成されている。かかるリブ86を設けたことにより、大振幅振動時に連通孔80を閉塞したときに、連通孔80に吸い込まれて過剰変形することを防止して、バルブ本体76の破れを防止することができる。
バルブ本体76には、上記リブ86が設けられていない部分に、複数の貫通孔81が設けられており、これにより主液室42と第2副液室48との間で液体が行き来することができるように連通している。この例では、複数の貫通孔81の総断面積が、各規制板78,79に設けられた連通孔80の総断面積と同じ値に設定されており、貫通孔81も第3オリフィス流路64を構成している。すなわち、第3オリフィス流路64は、上側の規制板79の連通孔80にて主液室42に開口するとともに、該連通孔80からバルブ本体76の貫通孔81を通って下側の規制板78の連通孔80より第2副液室52に開口して形成されている。
このようにして構成されることにより、切替バルブ66は、微振幅振動時において第3オリフィス流路64を開放させる開放状態と、該開口状態よりも大振幅の振動入力時に、バルブ本体76が撓み変形して連通孔80を塞ぐことにより第3オリフィス流路64を閉塞させる閉塞状態とに切り替える。
以上よりなる液封入式防振装置10であると、エンジンシェイク等の低周波数域で大振幅の振動に対しては、切替バルブ66によって第3オリフィス流路64が閉塞される。そのため、第1〜第3オリフィス流路のうち、主液室42と第1副液室44を連通する第1オリフィス流路60のみで液体の流動が生じる(第1の状態)。従って、第1オリフィス流路60と第1ダイヤフラム36のばね定数によって決まる共振作用によって減衰効果が発揮され、入力振動が低減される。
アイドル振動のような微振幅低周波数域の振動に対しては、切替バルブ66によって第3オリフィス流路64が開放されることにより、第1オリフィス流路60とともに、第2オリフィス流路62及び第3オリフィス流路64でも液体の流動が生じる(第2の状態)。第3オリフィス流路64はチューニング周波数が高く設定されているので、入力振動に対しては、第1オリフィス流路60及び第2オリフィス流路62の共振と、第2ダイヤフラム46のばね定数で特性が決まる。このとき、第1オリフィス流路60は第1ダイヤフラム36のばね定数とにより共振周波数が決まり、第2オリフィス流路62は第3ダイヤフラム50のばね定数とにより共振周波数が決まるので、2ピークの減衰を持つ特性を実現することができる。
こもり音や加速時騒音のような微振幅高周波数域の振動に対しては、切替バルブ66によって第3オリフィス流路64が開放されている。このとき、チューニング周波数が低い第1オリフィス流路60と第2オリフィス流路62では、目詰まりの状態となっているので、第3オリフィス流路64のみで液体の流動が生じる(第3の状態)。そのため、第3オリフィス流路64と第2ダイヤフラム46の共振により入力振動を低減することができる。すなわち、第2ダイヤフラム46が有効となり低動ばね化が実現することができる。
以上より、本実施形態によれば、エンジンシェイクのような大振幅振動と、こもり音のような微振幅高周波数域の振動に対する防振性能を満足しつつ、アイドル振動のような微振幅低周波数域の振動について2ピークの減衰を持つ特性を実現することができ、より高いレベルでアイドル振動に対する要求を満足することができる。
図6〜8は、上記実施形態の液封入式防振装置10の防振特性を、図9に示す構成を持つ比較例に係る液封入式防振装置とともに示すグラフである。図中、Kは実施形態に係る防振装置の貯蔵(動的)ばね定数を示し、K’は比較例に係る防振装置の貯蔵(動的)ばね定数を示す。また、Cは実施形態に係る防振装置の減衰係数を示し、C’は比較例に係る防振装置の減衰係数を示す。
図8に示すように、エンジンシェイクに相当する大振幅の振動入力時(±0.50mm)においては、実施形態と比較例とは、貯蔵ばね定数及び減衰係数ともに同じ特性であり、低周波数域での優れた減衰性能が得られた。
図6,7に示すように、アイドル振動に相当する微振幅の振動入力(±0.05mm)に対しては、比較例のものでは、減衰係数(C’)に関し、50Hz以下の低周波数域での減衰のピークが1つのみであったのに対し、実施形態のものの減衰係数(C)では、5〜20Hz程度に第1オリフィス流路60の共振による第1のピークと、25〜40Hz程度に第2オリフィス流路62の共振による第2のピークが実現できた。また、貯蔵ばね定数についても、実施形態のもの(K)では、50Hz前後の貯蔵ばね定数が低減していた。また、こもり音や加速時騒音に相当する100〜140Hz程度の高周波数域において、第2ダイヤフラム46の作用により貯蔵ばね定数が低く低ばね化が図られていた。
なお、上記実施形態では、第1取付具12が振動源側、第2取付具14が支持側に取り付けられるものについて説明したが、これとは逆に、第1取付具12が支持側に取り付け、第2取付具14が振動源側に取り付けられるものであってもよい。また、第3オリフィス流路64に設けられる切替バルブ66についても、上記実施形態のものはあくまで例示であって、それに限定されるものではない。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
本発明は、エンジンマウントの他、例えば、モータなど他のパワーユニットを支承するマウント、ボディマウント、デフマウントなど、種々の防振装置に利用することができる。
10…液封入式防振装置 12…第1取付具 14…第2取付具
16…防振基体 34…液室 36…第1ダイヤフラム
40…仕切り部 42…主液室 44…第1副液室
46…第2ダイヤフラム 48…第2副液室 50…第3ダイヤフラム
52…第3副液室 60…第1オリフィス流路 62…第2オリフィス流路
64…第3オリフィス流路 66…切替バルブ 76…バルブ本体
76A…バルブ本体の外周部 78,79…規制板 80…連通孔
81…貫通孔 X…軸方向

Claims (4)

  1. 振動源側と支持側の一方に取り付けられる第1取付具と、
    振動源側と支持側の他方に取り付けられる第2取付具と、
    前記第1取付具と第2取付具との間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、
    前記防振基体が室壁の一部をなす液体が封入された主液室と、
    ゴム状弾性膜からなる第1ダイヤフラムが室壁の一部をなす液体が封入された第1副液室と、
    ゴム状弾性膜からなる第2ダイヤフラムにより前記第1副液室から区画形成され液体が封入された第2副液室と、
    ゴム状弾性膜からなる第3ダイヤフラムにより前記第1副液室から区画形成され液体が封入された第3副液室と、
    前記主液室と前記第1副液室を連通させる第1オリフィス流路と、
    前記第1オリフィス流路よりも高周波数域にチューニングされて前記第2副液室と前記第3副液室を連通させる第2オリフィス流路と、
    前記第2オリフィス流路よりも高周波数域にチューニングされて前記主液室と前記第2副液室を連通させる第3オリフィス流路と、
    前記第3オリフィス流路に設けられて当該第3オリフィス流路の開閉を行う切替バルブであって、前記第3オリフィス流路を開放させる開放状態と、前記開放状態よりも大振幅の振動入力時に前記第3オリフィス流路を閉塞させる閉塞状態とに切り替える切替バルブと、
    を備えた液封入式防振装置。
  2. 前記切替バルブによって前記第3オリフィス流路が閉塞されることにより前記第1、第2及び第3オリフィス流路のうち前記第1オリフィス流路のみで液体の流動が生じる第1の状態と、前記切替バルブによって前記第3オリフィス流路が開放されることにより前記第1、第2及び第3オリフィス流路で液体の流動が生じる第2の状態と、前記第2の状態よりも高周波数域の振動入力により前記第3オリフィス流路のみで液体の流動が生じる第3の状態を有することを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
  3. 前記第2取付具が筒状をなし、前記第1ダイヤフラムが前記第2取付具に取り付けられて前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成し、前記液室が前記第2取付具の周壁部の内側に嵌着された仕切り部によって前記主液室と前記第1副液室とに仕切られており、前記仕切り部に、前記第2副液室、前記第3副液室、前記第1オリフィス流路、前記第2オリフィス流路、前記第3オリフィス流路及び前記切替バルブが設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の液封入式防振装置。
  4. 前記切替バルブは外周部が前記仕切り部に液密に保持されたゴム状弾性膜からなるバルブ本体を備え、前記バルブ本体の表裏両側に当該バルブ本体の撓み変形を規制する一対の規制板が設けられ、該規制板に前記第3オリフィス流路を構成する連通孔が設けられるとともに、前記バルブ本体には前記連通孔と重ならない位置に貫通孔が設けられ、前記バルブ本体の撓み変形により前記連通孔が閉塞されることで前記切替バルブが前記第3オリフィス流路を閉塞するよう構成されたことを特徴とする請求項3記載の液封入式防振装置。
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