JP2012081533A - 多孔質体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る多孔質体は、多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内で、ナノファイバーが絡み合って網目状構造体を形成した多孔質体であって、前記ナノファイバーが、セルロース系ナノファイバーであり、かつ、数平均繊維径が1〜100nmであることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本実施形態では、セルロース系ナノファイバーとは、セルロースナノファイバー又は化学処理(改質)したセルロースナノファイバーを包含する。セルロース系ナノファイバーは、セルロース分子が2本以上の束を形成している。セルロース分子が2本以上の束を形成しているとは、2本以上のセルロース分子が集合してミクロフィブリルと呼ばれる集合体を形成している状態をいう。本実施形態では、セルロース分子は、分子中のC6位水酸基の一部又は全部がアルデヒド基、カルボキシル基などに酸化されたもの、C6位以外の水酸基を含む水酸基の一部又は全部が硝酸エステル、酢酸エステルなどのようにエステル化されたもの、メチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、カルボキシメチルエーテルなどのようにエーテル化されたものなど他の官能基に置換されている形態を含む。
本実施形態では、支持体は多数の孔が連通した多孔質なものである。ここで、孔とは、規則的に形成された微細孔又は繊維が絡み合って形成した繊維間の空隙のいずれも包含する。孔が連通とは、空隙が一方の面から他方の面に直線的又は曲線的に連続してつながっている状態をいう。支持体は、多数の孔が連通した多孔質であれば、特に限定されず、例えば、不織布、紙、織物、編物などの繊維をシート状に加工した繊維シート、多孔フィルム、多孔セラミックス、スポンジなどの多数の空隙が連通したもの、それらの複合体である。繊維シートは、例えば、無機繊維シート、化学繊維シート、天然繊維シート、金属繊維シートである。無機繊維シートは、例えば、ガラス繊維シート、炭素繊維シートである。化学繊維シートは、例えば、レーヨン、キュプラ、テンセルなどのセルロースを原料とした再生繊維シート、アセテートなどの化学処理されたセルロースを原料とした半合成繊維シート、ポリアミド、ビニロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル、ポリオレフィン、アラミドなどの熱可塑性樹脂を原料とした合成繊維(有機繊維)シートである。天然繊維シートは、例えば、綿、麻、リンネルなどの植物繊維シート、羊毛、絹、カシミヤなどの動物繊維シートである。金属繊維シートは、例えば、ステンレス、鉄、金、銀、アルミニウムである。多孔フィルムは、例えば、メンブレンフィルターである。
本実施形態に係る多孔質体では、網目状構造体が、界面活性剤を含有し、界面活性剤の含有量が、ナノファイバーの乾燥質量に対して、固形分濃度で0.10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜50.0質量%である。特に好ましくは、1〜40質量%である。0.10質量%未満では、界面活性剤を添加する効果が得られない場合がある。100質量%を超えると、セルロース系ナノファイバーが繊維状態を維持するのが困難となる場合がある。
まず、セルロース系ナノファイバーが分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する。分散液の調製は、セルロース系ナノファイバー分散液を希釈することで所望の濃度の分散液を得るか、又はセルロース系ナノファイバーを所望の濃度になるように分散媒に添加して分散液を得てもよい。ここで、セルロース系ナノファイバー分散液は、例えば、前述した特許文献1に記載したセルロース系ナノファイバーの製造方法において、分散工程で得たセルロース系ナノファイバー分散液であり、製造するか、又は市販品を利用するかを問わない。セルロース系ナノファイバーは、例えば、前述した特許文献1に記載したセルロース系ナノファイバーの製造方法において、乾燥工程で得た分散媒から分離したセルロース系ナノファイバーであり、製造するか、又は市販品を利用するかを問わない。ナノファイバー分散液を希釈する方法が、ナノファイバーの凝集が少なく、均一な繊維径を有する点でより好ましい。本実施形態では、セルロース系ナノファイバー分散液を希釈する方法又はセルロース系ナノファイバーを分散媒に分散する方法に制限されないが、例えば、スクリュー型ミキサー、パドル型ミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサーなどの公知の分散機で分散液とすることができる。また、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダーなどの強力な叩解能力のある装置を用いることで、より微細化されたナノファイバーの分散液を得ることができる。
分散液を支持体に付着させる方法は、本実施形態では限定されず、例えば、含浸法、塗布法、噴霧法である。分散液の湿潤付着量は、支持体の厚さ、材質及び平均細孔径に応じて適宜調整するものであるが、支持体の単位面積あたり1〜1000g/m2とすることが好ましい。より好ましくは、10〜500g/m2である。1g/m2未満では、分散液が支持体全体に行き渡らない場合がある。1000g/m2を超えると、分散液が過剰となり、流体透気性に劣る多孔質体となる場合がある。
乾燥方法としては、熱、減圧などによる強制乾燥、大気中に放置することによる自然乾燥を選択することが好ましい。熱乾燥する場合の温度としては、支持体及びナノファイバーが分解、変形などを受けない温度でなければならない。乾燥温度は、支持体及びナノファイバーの種類によって異なるが、例えば、支持体としてポリカーボネートタイプのメンブレンフィルターを用い、ナノファイバーとして特許文献1に記載のナノファイバーを用いた場合には、20〜120℃とすることが好ましい。より好ましくは、50〜110℃である。20℃未満であると、乾燥に時間が掛かるため効率的でない。120℃を超えると、支持体の軟化点を越えて変形してしまうおそれがある。また、支持体としてガラス繊維を用い、ナノファイバーとして特許文献1に記載のナノファイバーを用いた場合には、20〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは、50〜120℃である。20℃未満であると、乾燥に時間が掛かるため効率的でない。200℃を超えると、セルロース系ナノファイバーが熱分解してしまうおそれがある。本実施形態では、多孔質の支持体を用いることで、分散液の乾燥時にナノファイバーに対して生じる凝集力を分散し、更には多数の微小薄膜を支持体の各孔内で形成してから乾燥することによって、微小薄膜中に分散していたナノファイバーは水が蒸発しても網目状構造を維持したまま残っているものと考えられる。
乾燥重量で2.00g相当分のNBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)と、0.025gのTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐オキシラジカル)と、0.25gの臭化ナトリウムと、を水150mlに分散した後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、パルプ1.00gに対して、次亜塩素酸ナトリウムの量が5.00mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は、0.50mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保った。2時間反応した後、反応物をろ過し、十分水洗することで酸化セルローススラリーを得た。0.15質量%の酸化セルローススラリーをホモジナイザー(型式NS‐56、マイクロテック・ニチオン社製)を用いて、15000rpmで8分間解繊処理し、遠心分離によって粗大繊維の除去を行った後、更に超音波ホモジナイザー(型式US‐300T、日本精機製作所社製)で4分間解繊処理し、透明で粘性のあるセルロース系ナノファイバー分散液1を得た。このナノファイバー分散液1を、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は4nmであり、数平均繊維長は1.1μmであった。
原料にLBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)を用いた以外は、ナノファイバー分散液1と同様にして、セルロース系ナノファイバー水分散液2を得た。このナノファイバー分散液2を、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は4nmであり、数平均繊維長は、1.0μmであった。
[分散液調製工程]
ナノファイバー分散液1を、ナノファイバーの固形分濃度が、分散液の全質量に対して0.050%となるよう希釈してナノファイバーの分散液を得た。該分散液にカチオン性界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(和光純薬工業社製)を分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.010%となるように添加した。分散液の全固形分濃度は、0.060%となった。
多数の孔が連通した多孔質支持体として、平均細孔径が0.8μmのポリカーボネートタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC社製)を用い、この支持体の全体を前記分散液に浸漬した。浸漬後メンブレンフィルター表面に付着した余分な分散液を吸水紙で除いた。分散液に浸漬前後の支持体質量の差分を付着量として算出したところ、付着量は10g/m2であった。
分散液が付着した支持体を、乾燥温度105℃及び乾燥時間5分の乾燥条件で乾燥機を用いて乾燥して、多孔質体を得た。ここで、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。
ナノファイバー分散液2を用いた以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。
実施例1の乾燥工程において、乾燥条件を、乾燥温度30℃及び乾燥時間1時間とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。
実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバーの固形分濃度を、分散液の全質量に対して0.010%とし、かつ、界面活性剤を、分散液の全質量に対して固形分濃度で0.0020%とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。ここで、支持体への分散液の付着量は、10g/m2であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。
実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバー分散液1を濃縮して、ナノファイバーの固形分濃度を、分散液の全質量に対して0.60%とし、かつ、界面活性剤を、分散液の全質量に対して固形分濃度で0.12%とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。ここで、支持体への分散液の付着量は、10g/m2であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。
実施例1の付着工程において、支持体として、目付が64g/m2、平均細孔径が2.7μmのガラス繊維シートを用い、付着量を150g/m2とした以外は、実施例1と同様にして支持体に分散液を付着した。さらに、実施例1の乾燥工程において、乾燥条件を、乾燥温度105℃及び乾燥時間10分とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。ここで、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。
実施例1の付着工程において、支持体として、目付が40g/m2、平均細孔径が15μmのガラス繊維シートを用い、付着量150g/m2とした以外は、実施例1と同様にして支持体に分散液を付着した。さらに、実施例1の乾燥工程において、乾燥条件を、乾燥温度105℃及び乾燥時間10分とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。ここで、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。
実施例1の分散液調整工程において、界面活性剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。ここで、支持体への分散液の付着量は、10g/m2であった。
実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバー分散液1に代えて、ナノファイバーとしてスラリー状のMFC(セリッシュKY‐100G、ダイセル化学工業社製)を用いた。ここで、MFCは家庭用ミキサーで離解した後、遠心分離によって粗大繊維を除いた。電子顕微鏡を用いて倍率10000倍で観察した観察画像から解析した結果、ナノファイバーの数平均繊維径は、64nmであり、数平均繊維長は、6.2μmであった。ナノファイバー分散液の固形分濃度が、分散液の全質量に対して0.150%となるように調製し、ナノファイバーの分散液を得た。該分散液にカチオン性界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(和光純薬工業社製)を分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.030%となるように添加した分散液として用いた以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。分散液の全固形分濃度は、0.180%となった。また、支持体への分散液の付着量は、10g/m2であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。
実施例1の分散液調製工程で得た分散液をガラス製のシャーレに目付が2g/m2となるよう注ぎ、乾燥温度105℃及び乾燥時間6時間で乾燥して透明なシートを得た。
実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバー分散液1に代えて、ナノファイバーとしてスラリー状のMFC(セリッシュKY‐100G、ダイセル化学工業社製)を用いた。ここで、MFCは家庭用ミキサーで離解した後、遠心分離によって微細繊維を除いた沈殿物を用いた以外は、実施例9と同様にして多孔質体を得た。電子顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察した観察画像から解析した結果、ナノファイバーの数平均繊維径は、430nmであった。ナノファイバーの数平均繊維長は、20μmを超えるのが確認できたが、観察画像からは全長は確認できなかった。また、支持体への分散液の付着量は、10g/m2であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。
支持体、得られた実施例の多孔質体及び比較例のシート及び多孔質体について、JIS P 8117 :2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に従い、王研式平滑度透気度試験器(型式KY‐5、旭精工社製)を用いて測定した。支持体だけの透気抵抗度(A)と支持体にナノファイバーを付着した多孔質体の透気抵抗度(B)とをそれぞれ求め、AとBとの差分を透気抵抗度上昇値として算出した。ここで、本発明で用いた支持体のブランクでの透気抵抗度はすべて4s以下であった。
ナノファイバーが形成した網目状構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、次に示す基準で目視評価を行った。図1に実施例1の多孔質体のSEM画像を、図2に実施例6の多孔質体のSEM画像を、そして図3に実施例8の多孔質体のSEM画像を示す。
◎:網目形成率が80%以上であり、かつ、開孔率が50%以上90%以下であり、ナノファイバーの凝集及び/又は積層が少なく、支持体のすべての孔内に均一な網目構造体を形成している(実用レベル)。
○:網目形成率が10%以上80%未満であり、かつ、開孔率が50%以上90%以下であり、ナノファイバーの凝集及び/又は積層が少なく、支持体の一部の孔内に網目構造体が未形成である(実用レベル)。
△:網目形成率が10%以上であり、かつ、開孔率が10%以上50%未満であり、ナノファイバーの凝集及び/又は積層が部分的にある(実用下限レベル)。
×:網目形成率が10%未満であるか、又は、網目形成率が10%以上であり、かつ、開孔率が10%未満であり、ナノファイバーは凝集及び/又は積層しており、網目を形成していない(実用に適さないレベル)。
Claims (9)
- 多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内で、ナノファイバーが絡み合って網目状構造体を形成した多孔質体であって、
前記ナノファイバーが、セルロース系ナノファイバーであり、かつ、数平均繊維径が1〜100nmであることを特徴とする多孔質体。 - 前記支持体は、多孔フィルム又は繊維シートのいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質体。
- 前記支持体の平均細孔径が、0.01〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質体。
- 前記網目状構造体が、界面活性剤を含有し、
該界面活性剤の含有量が、前記ナノファイバーの乾燥質量に対して、固形分濃度で0.10〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の多孔質体。 - 前記界面活性剤が、カチオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項4に記載の多孔質体。
- 数平均繊維径が1〜100nmのセルロース系ナノファイバーを分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する分散液調製工程と、
該分散液を多数の孔が連通した多孔質の支持体に付着する付着工程と、
該分散液が付着した支持体を乾燥して、前記分散媒を除去する乾燥工程と、
を有することを特徴とする多孔質体の製造方法。 - 前記分散媒が、水であることを特徴とする請求項6に記載の多孔質体の製造方法。
- 前記分散液が、前記ナノファイバーを前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.001〜0.500質量%含有することを特徴とする請求項6又は7に記載の多孔質体の製造方法。
- 前記分散液が、更に界面活性剤を含有し、該界面活性剤を前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.0001〜1.0000質量%含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の多孔質体の製造方法。
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