JP2012076001A - 嫌気性排水処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】排水原水が導入される酸生成槽において酸生成が十分であり、該酸生成槽を通過した水が導入されるメタン発酵槽において有機物分解性が高い、嫌気性排水処理装置および該装置を用いた方法を提供する。
【解決手段】メタン発酵槽だけでなく、これまで容易に進行するとされてきた酸生成槽における酸生成においても担体を添加することにより達成される。
【選択図】なし

Description

本発明は、効率が良く安定な嫌気性排水処理方法およびそれを用いた装置に関する。
近年、排水中の有機物や窒素を効率的に除去するための開発が積極的に行なわれている。従来、活性汚泥法などの好気処理が主体であったが、曝気動力の不要な嫌気処理も増えつつある。有機性排水を処理する嫌気性排水処理装置としては、排水原水が導入される酸生成槽と、該酸生成槽を通過した水が導入されるメタン発酵槽と、メタン発酵槽からの流出水の一部を酸生成槽に返送する手段とを備える二槽式嫌気性排水処理装置が一般的に用いられている。効率的に排水を処理する方法としては、上記メタン発酵槽において、上向流嫌気性汚泥床法(以下、UASB法(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)と記載することがある。)を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。UASB法とは、メタン菌を自己造粒させたグラニュール汚泥が存在する反応槽に、酸生成槽を通過した水を上向流で通水してメタン発酵させ、有機物を効率良く分解除去する方法である。また、メタン菌などの生体触媒を高分子素材に包括固定化した担体をメタン発酵槽に充填する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平8−141592号公報 特開2008−221033号公報
嫌気性排水処理装置には、メタン発酵槽における高い有機物分解性と共に、排水原水が導入される酸生成槽における十分な酸生成が要求される。本発明者らの検討によると、特許文献1の嫌気性処理法は、排水の種類によってはグラニュール汚泥が生成せず、有機物を効率良く分解除去できない場合がある。また、より効率を上げるために原水流量を増加させるとグラニュール汚泥が流出して活性を失うなど、処理の安定性に改善の余地があることが明らかになった。また、特許文献2のメタン発酵槽のみに担体を充填する排水処理方法においても、メタン発酵槽に有機酸が蓄積し排水処理の効率が急激に低下するなど、処理の安定性に改善の余地があることが明らかになった。
本発明の目的は、酸生成が十分に行われる酸生成槽と、高い有機物分解性を有するメタン発酵槽とを有する嫌気性排水処理装置を提供することにある。さらに、本発明のもう1つの目的は、前記排水処理装置を用いることにより、排水原水が導入される酸生成槽において酸生成が十分であり、該酸生成槽を通過した水が導入されるメタン発酵槽において有機物分解性が高い、嫌気性排水処理方法を提供することにある。
発明者らは鋭意検討した結果、メタン発酵槽だけでなく、これまで容易に進行するとされてきた酸生成槽における酸生成においても担体を添加することにより、より高い酸生成効率が達成され、効率が良く安定な嫌気性排水処理装置および処理方法を提供出来ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、排水原水が導入される酸生成槽と、該酸生成槽を通過した水が導入されるメタン発酵槽と、メタン発酵槽からの流出水の一部を酸生成槽に返送する手段とを備える二槽式嫌気性排水処理装置において、酸生成槽とメタン発酵槽の両方に担体が存在することを特徴とする排水処理装置である。
さらに本発明は酸生成槽とメタン発酵槽に存在する担体の少なくともいずれか一方が、好ましくはポリビニルアルコール系ゲル担体である、上記の排水処理装置である。
そして本発明は、上記排水処理装置を用いた排水処理方法である。
本発明によれば、効率良く安定に排水処理を行うことができる。
本発明に使用する担体としては、公知の各種の担体を使用することができるが、ゲル状担体、プラスチック担体および繊維状担体から選ばれた1種類の担体、あるいはこれらの担体の2種類以上を組み合せた担体を使用することが好ましい。中でも、処理性能の高さの点から、ゲル状担体がより好ましく、ポリビニルアルコール系ゲル状担体が最も好ましい。
前記ゲル状担体としては、排水処理に通常用いられるゲル状担体であれば使用することができるが、その直径は、1mm以上10mm以下が好ましい。直径が小さすぎると槽から担体が流出し、大きすぎると担体の表面から内部まで距離があるため、バクテリアが内部に棲息できない、代謝物が担体外へ排出されにくいといった問題がある。また、担体を流動させて使用する場合、担体の直径が大きすぎると流動性が低くなるため、排水との接触効率が低下し、排水処理の効率が低下する場合がある。
前記ポリビニルアルコール系ゲル状担体は、表面から内部に連通する孔が網目状に存在し、その孔の大きさが菌のサイズに近いもので、担体内部も有効な菌の棲家となるため嫌気性菌を保持するのに適した担体である。
また、上記ポリビニルアルコール系ゲル状担体の表面から内部に連通する孔における孔径は、自由にコントロールできるが、バクテリアのみが担体内部に棲息できるものが好ましく、表面付近の孔径は0.1μm以上100μm以下のものが好ましく、0.5μm以上50μm以下がより好ましい。表面付近の孔径が小さすぎるとバクテリアが内部に進入できないなどの問題があり、大きすぎるとバクテリア以外の大きな生物が侵入し効率が低下する場合がある。担体中心付近の孔径については特に制限はない。
本発明において、酸生成槽およびメタン発酵槽へそれぞれ添加する担体の量は、特に制限はないが、必要とする効率に応じて添加すればよい。通常は槽容量に対して5容量%から70容量%が好ましく、10容量%から60容量%がより好ましく、20容量%から50容量%が最も好ましい。また、担体を添加した槽においては、担体と排水の接触効率を高めるために担体を流動させる方法をとってもよい。担体を流動させる方法としては、特に制限はないが、機械撹拌や酸素を含まないガスを散気する方法などが挙げられる。
本発明において使用する菌は、嫌気性排水処理に通常用いられる菌であれば使用することができる。菌の採取方法としては、目的とする排水処理をしている反応器から種汚泥として採取するのが望ましいが、下水汚泥や産業排水の汚泥、嫌気性消化汚泥などを種汚泥として用い、必要な菌が増殖するのを待つ方法でもよい。
また、菌を増殖させる槽内におけるMLSS濃度(Mixed liquor suspended solids=活性汚泥浮遊物濃度(mg/L))は、高いほど初期に担体に付着する菌の量が多く、嫌気性排水処理の能力発現が早くなるため好ましい。嫌気性消化汚泥を他の下水処理場等から移送する費用や手間がかかるため、100mg/L以上10000mg/L以下がより好ましい。
担体に菌を増殖させる方法としては、種汚泥と担体を実際に嫌気性排水処理する酸生成槽、メタン発酵槽に投入した後、実排水や人工排水などを少量ずつ導入し、処理状況に応じて排水の濃度や流量を上げる方法が挙げられる。また、実際に排水処理する酸生成槽やメタン発酵槽とは別に、菌を増殖させることのできる槽やタンクがある場合には、その槽で担体に菌を増殖させた後、実際に嫌気性排水処理する酸生成槽やメタン発酵槽に菌が増殖した担体を投入する方法を採用することもできる。
本発明において処理が可能な排水原水としては、特に制限はないが、化学排水、食品排水などの産業排水、下水、し尿などの有機性排水が挙げられる。
排水原水の種類や濃度によっては、濃度阻害、pH変動による阻害が起こる場合がある。その際には、被処理液の希釈効果を考えて、処理後の液を被処理液の流入部分に循環させることもできる。また、この循環させる液に酸やアルカリを添加して、pHコントロールを行ってもよい。
なお、メタン発酵槽におけるpHは特に制限はないが、一般的にはpH6.5〜8.2であることが好ましい。
本発明において原水の有機性汚濁の指標である、原水CODcr濃度(Chemical oxygen demand(クロム)=ニクロム酸カリウムによる化学的酸素要求量(ppmまたはmg/L))に特に制限はない。嫌気性排水処理における一般的な原水CODcr濃度である5000mg/L〜20000mg/Lなどの高濃度領域であっても、従来の嫌気性排水処理ではグラニュール汚泥が生成しにくく不得意とされる1000mg/L以下の低濃度領域であっても効率よく処理することができる。
本発明における水理学的滞留時間(Hydraulic Retention Time=HRT)に特に制限はない。水理学的滞留時間とは、下水や汚泥が反応槽等の処理装置に流入してから流出するまでの平均的な時間のことである。従来の嫌気性排水処理ではグラニュール汚泥の流出を防止するために少なくとも3時間以上のHRTが必要であったが、本発明における処理方法は担体を使用するためメタン菌の流出が起きにくく、HRT=30分での処理も可能である。
本発明におけるCODcr除去率に特に制限はない。嫌気性排水処理において一般的に良好なCODcr除去率である80%〜95%での実施も可能であるし、排水負荷を軽減させる場合には、嫌気性排水処理におけるCODcr除去率50%〜80%での実施も可能である。
本発明の酸生成槽における酸生成効率に特に制限はないが、高いほうが好ましい。本発明において、酸生成効率は<有機酸濃度(mg/L)/原水CODcr濃度(mg/L)>の式から算出することで求められる。
前記式より算出される酸生成槽における酸生成効率は、0.3以上であることが好ましく、メタン発酵槽でのメタン発酵を効率よく行うためには、0.4以上であることがより好ましい。
本発明のメタン発酵槽における最大CODcr容積負荷(kg/m・日)に特に制限はないが、10kg/m・日以上であることが好ましい。従来の嫌気性排水処理に比べて効率よく処理するという観点から、20kg/m・日以上であることがより好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図1に示すフローに従って、食品排水の嫌気性排水処理を行った。酸生成槽およびメタン発酵槽の仕様並びに処理条件は下記の通りとした。
酸生成層およびメタン発酵槽の仕様
酸生成槽:容量50L
メタン発酵槽:容量100L
槽内温度:35〜37℃
酸生成槽に充填する担体 :アセタール化ポリビニルアルコール系ゲル状担体(直径約4mm,比重1.025)
メタン発酵槽に充填する担体:アセタール化ポリビニルアルコール系ゲル状担体(直径約4mm,比重1.025)
酸生成槽担体充填量 :20容量%(槽容積に対する。)
メタン発酵槽担体充填量:40容量%(槽容積に対する。)
処理条件
初期原水流量:15L/日
初期原水CODcr濃度 :5000mg/L
初期投入嫌気性消化汚泥MLSS:5000mg/L
上記条件にて、嫌気性排水処理を行った。90日間継続して処理を行い、原水流量を15L/日から140L/日まで段階的に上昇させた。運転期間中はメタン発酵槽からの排出水を原水流量と同量分、酸生成槽へ返送した。
その結果、生物処理性は、CODcr除去率90%と非常に良好であり、酸生成効率も0.5と良好であった。また、メタン発酵槽における最大CODcr容積負荷が30kg/m・日まで安定した処理が可能であった。
その後、原水流量を最終原水流量である140L/日に固定し、原水CODcr濃度を22000mg/Lまで段階的に上昇させても、良好なCODcr除去率と酸生成効率を保ったままであった。
なお、実際に酸生成槽およびメタン発酵槽へ添加した担体を観察すると、酸生成槽の担体には酸生成菌が、メタン発酵槽の担体にはメタン菌がそれぞれ多く観察された。結果を表1に示す。
<実施例2>
酸生成槽へ充填する担体をポリエチレングリコール系プラスチック担体とした以外は、実施例1と同様に嫌気性排水処理を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
酸生成槽へ担体を充填しないこと、および原水CODcr濃度を5000mg/L固定とし、最終原水流量を100L/日とすること以外は、実施例1と同様に嫌気性排水処理を行った。結果を表1に示す。
Figure 2012076001
表1より、比較例1においては、原水CODcr濃度を5000mg/L固定とし、原水流量も100L/日までとしたにも関わらず、CODcr除去率は70%と低く、酸生成効率は0.2と低かった。その結果、メタン発酵槽において有機酸濃度が上昇し、pH低下を引き起こし、処理能力が不安定になった。これに対し、実施例1および2においてはCODcr除去率は90%と非常に良好であり、酸生成効率も実施例1においては0.5、実施例2においては0.4といずれも良好であった。これにより、メタン発酵槽だけでなく、酸生成槽にも担体を充填した場合には、流量増加による酸生成槽処理能力低下もなく、酸生成が十分に行われることがわかった。また、メタン発酵槽だけでなく、酸生成槽に担体を充填した場合には、原水CODcr濃度を上昇させても、排水処理能力に低下がみられなかったことから、酸生成が十分に行われた排水が導入されるメタン発酵槽において、有機物分解性が高いこともわかった。
本発明の排水処理装置の一例を示す模式図。
1・・・原水
3・・・酸生成槽
4・・・メタン発酵槽
5・・・反応ガス
6・・・処理水

Claims (3)

  1. 排水原水が導入される酸生成槽と、該酸生成槽を通過した水が導入されるメタン発酵槽と、メタン発酵槽からの流出水の一部を酸生成槽に返送する手段とを備える二槽式嫌気性排水処理装置において、酸生成槽とメタン発酵槽の両方に担体が存在することを特徴とする排水処理装置。
  2. 酸生成槽とメタン発酵槽に存在する担体の少なくともいずれか一方が、好ましくはポリビニルアルコール系ゲル担体である、請求項1に記載の排水処理装置。
  3. 請求項1または2記載の排水処理装置を用いることを特徴とする排水処理方法。
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