JP6046991B2 - 担体を利用した嫌気性排水処理方法 - Google Patents

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本発明は有機性排水の処理方法に関する。詳しくは、有機物を含有する排水を、担体を保持する反応槽に通水して該担体に増殖した嫌気性微生物により生物学的に処理する排水処理方法において、運転立ち上げに際して担体への微生物の増殖を促進させることにより、装置の立ち上げに要する時間を大幅に短縮すると共に、装置の立ち上げ後においても効率的な処理を行う有機性排水の処理方法に関する。
有機物を含有する排水(有機性排水)の処理方法として、メタンガスの回収および再利用が可能な嫌気処理法は、広く産業排水の処理方法として用いられている。なかでも沈降性良好なグラニュールを形成し、有機性排水を上向流で通水し、高負荷高速処理を行うUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket:上向流嫌気性スラッジブランケット)法は、特に中〜高濃度排水を処理する方法として発展してきた。また、このUASB法を発展させたものとして、高さの高い反応槽を用いてさらに高流速で通水し、高負荷で嫌気性処理を行うEGSB(Expanded Granule Sludge Blanket)法も実用化されている。
また、固定床担体や流動床担体を使用する方法も用いられている。固定床担体は生物膜を保持する支持床を反応槽内部に固定し、その表面に生育する微生物を利用するものであり、流動床担体は比重や大きさを調整した担体を反応槽内部で流動させて、担体に生物を増殖させて処理を行なうものである。
しかし、固定床担体、流動床担体を問わず、担体を用いる場合には、担体への微生物の増殖に時間がかかり、結果として装置の立ち上げに多大な時間を要するという大きな欠点があった。
このような課題に対し例えば特許文献1には、有機性排水の処理に関し、非生物担体とグラニュール(平均粒径0.5〜3.0mm)を存在させた状態で有機性廃水の通水を開始する反応槽の立ち上げ方法が提案されている。しかしながら、担体の表面に生物膜が形成されるまでには2ヶ月以上の期間が必要となり、十分な方法とは言い難かった。
特開2012−110821号公報
本発明は、有機物を含有する排水を、担体を保持する反応槽に通水して該担体に増殖した嫌気性微生物により生物学的に処理する方法において、運転立ち上げに際して担体への微生物の増殖を促進させることにより、装置の立ち上げに要する時間を大幅に短縮すると共に、装置の立ち上げ後においても効率的な処理を行うことができる有機性排水の処理方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、担体を保持する反応槽の立ち上げに際して、該反応槽に、種汚泥として平均粒径が10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物を担体に対して所定の割合で添加し、担体に効率よくメタン菌を付着増殖させる運転条件を採用することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
本発明について、以下具体的に説明する。
[1]有機物を含有する排水を、担体を保持する反応槽に通水して、該担体に増殖した嫌気性微生物により生物学的に処理する有機性排水の処理方法において、
該反応槽の立ち上げに際して、該反応槽にポリビニルアルコール系担体と平均粒径10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物とを存在させた状態で該有機性排水の通水を開始することを特徴とする有機性排水の処理方法であって、該メタン菌凝集物が担体1Lあたり1〜900gの範囲で存在することを特徴とする有機性排水の処理方法。
[2]平均粒径10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物が、メタン菌グラニュールを粉砕させたものである、請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
本発明によれば、有機物を含有する排水を、担体を保持する反応槽に通水して該担体に増殖した嫌気性微生物により生物学的に処理する方法において、運転立ち上げに際して担体への微生物の増殖を促進させることにより、装置の立ち上げに要する時間を大幅に短縮すると共に、装置の立ち上げ後においても効率的な処理を行うことができる。
反応槽の立ち上げに際して反応槽に投入された平均粒径が10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物は、粒子が小さいために担体との接触効率が良く、運転立ち上げ時期においては、有機性排水の分解に寄与すると同時に種汚泥として担体への微生物の増殖を促進する。
担体への微生物の増殖が十分でない運転立ち上げ時においては、平均粒径が10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物の作用で有機性成分の分解が行われると共に、担体への微生物の増殖が促進され、平均粒径が10μm以上450μm以下の浮遊のメタン菌凝集物が反応槽から流出しても、担体に増殖したメタン菌により有機性成分の分解が行なわれる。
以上説明したとおり、本発明によれば、装置の立ち上げに要する時間を大幅に短縮すると共に、装置の立ち上げ後においては効率的な処理を行うことが可能となる。
実施例で用いた生物処理装置の構成を示す系統図である。 実施例1及び比較例1における処理能力の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の有機性排水の処理方法は、有機物を含有する排水を、担体を保持する反応槽に通水して該担体に増殖した嫌気性微生物により生物学的に処理する有機性排水の処理方法において、該反応槽の立ち上げに際して、該反応槽に担体と平均粒径10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物とを存在させた状態で該有機性排水の通水を開始し、その際、該メタン菌凝集物が担体1Lあたり1〜900gの範囲で存在することを特徴とする。
本発明では担体を保持した反応槽内に、種汚泥として平均粒径が10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物を投入し、反応槽の立ち上げを行なうことを特徴としている。投入された平均粒径が10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物は、運転立ち上げ時においては、有機性成分の分解を行ない、同時に種汚泥として担体への微生物の増殖を促進する効果を奏する。
本発明において、処理対象とする有機性排水は、嫌気性微生物により処理可能な有機物を含むものであればよく、そのCOD濃度・種類に規定はないが、具体的には、食品工場等の製造排水、化学工場等の有機性排水、一般下水等が挙げられる。しかし、何らこれらに限定されるものではない。
種汚泥として反応槽に投入する平均粒径10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物は、特に限定されるものではないが、粒子径が小さく多くのメタン菌を含んでいることが好ましい。特に、UASB法やEGSB法で使用されているグラニュール(平均粒径0.5〜3.0mm)は嫌気処理を行なっているためメタン菌を多く含んでおり、これらを平均粒径100μm以上400μm以下に粉砕させたものがより好ましい。
グラニュールを平均粒径が10μm以上450μm以下になるように粉砕させる方法は特に限定されるものではないが、ボールミル等で粉砕させる方法、ポンプを通過させて粉砕させる方法、撹拌により粉砕させる方法が挙げられる。
種汚泥として使用するメタン菌凝集物の平均粒径は10μm以上450μm以下であることが重要であり、通常のグラニュールのような大きな粒子だと、担体との接触効率が悪く、せっかく十分なメタン菌が存在するにもかかわらず、担体への増殖がなかなか起こらない場合がある。
本発明においては、メタン菌凝集物を、担体1Lあたり1〜900gの範囲で存在させることが好ましく、担体1Lあたり1〜500gの範囲で存在させることがより好ましく、担体1Lあたり1〜150gの範囲で存在させることがさらに好ましい。ここで、メタン菌凝集物の量は、揮発性浮遊性物質(Volatile Suspended Solid:VSS)の量のことである。VSSとは、有機性固形物の総量の目安となる指標をいう。担体1Lあたり1gよりもメタン菌凝集物の投入量が少ないと本発明の効果を十分に得ることができず、担体1Lあたり900gよりも多いと粘度が上昇し撹拌が困難となる可能性がある。また、反応槽内からのメタン菌凝集物の流出が多く、処理水の悪化が懸念されるため好ましくない。
本発明では、運転立ち上げに際して、反応槽に担体と平均粒径10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物を保持して反応槽に有機性排水を通水し、有機性排水をメタン菌及び担体と接触させて嫌気性処理を行う。その処理方式としては特に制限はないが、UASB法、EGSB法と同様に反応槽に原水を上向流で通水する方法や撹拌機等で槽内を撹拌して流動させる方法、窒素・メタンガス等酸素を含有しない気体で槽内を曝気流動させる方法などが挙げられる。
使用する担体としては、特に制限は無いが微生物棲息性に優れた高分子ゲル状担体、特にポリビニルアルコール系ゲル担体が好ましい。担体の平均粒径は1〜10mm、特に2〜6mmであることが好ましい。
担体の表面から内部に連通する孔における孔径は、自由にコントロールできるが、バクテリアのみが担体内部に棲息できるものが好ましく、表面付近の孔径は0.1μm以上100μm以下のものが好ましく、0.5μm以上50μm以下がさらに好ましい。表面付近の孔径が0.1μmよりも小さいとバクテリアが内部に進入できないなどの問題があり、100μmよりも大きいとバクテリア以外の大きな生物が侵入し効率が低下する場合がある。担体中心付近の孔径については特に制限はない。
担体の形状は、限定されるものではなく、立方体、直方体、円柱状、球状、マカロニ状など任意の形状をとることができる。メタン菌との接触効率を考えると球状が好ましい。
原水の有機物濃度は特に限定されるものではなく、CODCr500〜50000mg/Lなど幅広く適用できる。反応槽に流入する際の原液のpHは6.5〜7.5程度であることが好ましく、従って、原水は必要に応じてpH調整を行ってから反応槽に通水することが好ましい。
反応槽の負荷も特に限定はないが、5〜50kg−CODCr/m・日と高負荷をかけることも可能である。また、反応槽内の温度は通常のメタン発酵の条件と同様で25〜40℃、特に30〜38℃とすることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示すフローに従って、食品会社Fの実排水による嫌気性排水処理を実施した。反応槽の仕様並びに処理条件は下記の通りとした。
・反応槽の仕様
反応槽:容量8L
槽内温度:35〜37℃
反応槽に充填する担体:アセタール化ポリビニルアルコール系ゲル状担体(直径約4mm,比重1.025)
反応槽担体充填量:40容量%(槽容積に対する。)
・処理条件
原水CODCr濃度:5000mg/L
初期投入汚泥量:6g−VSS/L槽
初期投入汚泥としては、グラニュールを粉砕化させたメタン菌凝集物を使用した。なお、粉砕の方法としては、水中ポンプを通し、破壊することにより、平均粒径として300μmとなっていることを確認した。この粉砕したメタン菌凝集物を6g−VSS/L槽となるように投入した。排水流量は2.2L/日から運転開始し、その後、流量を段階的に上げ、約2週間程度で除去量(処理能力)20kg−CODCr/m・日に到達した。なお、CODCr除去率は、常に90%以上を推移し、非常に良好であった。
[比較例1]
図1に示すフローに従い、反応槽の仕様槽容量および処理条件を実施例1と同じとし、運転開始時の初期投入汚泥として、グラニュールを使用した系における処理試験を実施した。この際に使用したグラニュールは、1〜3mm程度の粒径であった。排水流量は2.2L/日から運転開始し、その後、流量を実施例1と同じように上昇させようとしたが、嫌気反応槽内有機酸濃度が管理値である500mg/L以上となり、その際にはCODCr除去率も90%を達成できなかったため、流量向上を図ることができなかった。よって、負荷向上のタイミングが実施例1と比較し遅れたため、結果として、除去量(処理能力)20kg−CODCr/m・日に到達するのに約1ヶ月程度の期間を要した。
図2に示す実施例1及び比較例1の結果より、嫌気性流動床処理において、初期投入汚泥として、メタン菌グラニュールを平均粒径10μm以上〜450μm以下に粉砕したメタン菌凝集物を使用した本発明では、その粒子が小さいために担体との接触効率が良く、運転立ち上げ時期において、有機性排水の分解に寄与すると同時に種汚泥として担体への微生物の増殖を促進することが確認された。
1・・・原水
2・・・嫌気反応槽
3・・・反応ガス
4・・・処理水

Claims (2)

  1. 有機物を含有する排水を、担体を保持する反応槽に通水して、該担体に増殖した嫌気性微生物により生物学的に処理する有機性排水の処理方法において、
    該反応槽の立ち上げに際して、該反応槽にポリビニルアルコール系担体と平均粒径10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物とを存在させた状態で該有機性排水の通水を開始することを特徴とする有機性排水の処理方法であって、該メタン菌凝集物が担体1Lあたり1〜900gの範囲で存在することを特徴とする有機性排水の処理方法。
  2. 平均粒径10μm以上450μm以下のメタン菌凝集物が、メタン菌グラニュールを粉砕させたものである、請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
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