JP2008068233A - 窒素除去方法及び窒素除去装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】湖、ダム湖、濠、内海等のようにBODを低濃度にしか含まず、しかも藍藻類が発生しやすい閉鎖性水域における窒素成分の除去を効率的に行い、毒素であるミクロシスチンを生成する藍藻類の増殖を抑制すると共に、処理による環境の二次汚染を防止する。
【解決手段】
BODを低濃度にしか含まない閉鎖性水域の原水に含まれる窒素成分を除去する窒素除去方法において、原水をメタン醗酵のグラニュール汚泥と接触させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、窒素除去方法及び窒素除去装置に関し、特に、湖沼、ダム、濠、内海等の閉鎖性水域に発生する藍藻類の増殖原因である窒素成分(NH−N、NO−N、NO−N及び有機態窒素等)を除去する窒素除去方法及び窒素除去装置に関する。
1922年に本格的な下水処理が東京都の三河島処理場で開始されて以来、活性汚泥法による下水処理が普及している。特に、大都市では下水処理に関する集中的な投資が行われ、下水道普及率が90%を超えるまでに至った。しかしながら、閉鎖性水域での環境基準の達成率はほとんど改善されていない。これは、流入する排水の外部要因が解消されつつあるのに対して、水域の内部要因、即ち藻類の異常繁殖によるものが大きいといわれている。湖沼やダム、濠、内海等の閉鎖性水域が下水等の流入によって富栄養化すると、水域中の藍藻類、例えばミクロシステス属の藍藻が大量に増殖し、所謂アオコが発生する。発生したアオコを構成する藍藻類には、アオコ毒と呼ばれるミクロシスチンを産出するものが多く存在するため、閉鎖性水域がミクロシスチンで汚染される。ミクロシスチンは、7種類のアミノ酸から成る環状ペプチドで構成され、人や家畜に対して肝臓の毒性や発がん性を有するものとして知られている。
閉鎖性水域から検出されるミクロシスチンの代表的なものであるミクロシスチンLR、ミクロシスチンRR及びミクロシスチンYRは、人や家畜が経口摂取すると中毒症状をもたらす。これらミクロシスチンによる中毒は、非特許文献1及び2に記載されているように、国内外や人畜を問わず各地で報告されているが、これらミクロシスチンによる肝臓疾患のメカニズムについては未だ解明されておらず、有効な治療方法がないのが現状である(下記非特許文献1、2参照)。
この毒素であるミクロシスチンの生成を抑制するためには、アオコの増殖を抑制する必要がある。このような方法として、1)アオコ増殖を抑えるための増殖阻害物質であるリジンの添加(例えば、特許文献1)、2)アオコを殺すための銅イオンの水圏への添加(例えば、特許文献2)、3)超音波アオコ細胞破壊機によるアオコ殺藻(例えば、特許文献3)、4)アオコ増殖必須基質である窒素成分の除去、等が試みられている。また、産生したミクロシスチンを分解する方法としては、オゾン酸化、塩素による酸化等が試みられている。
特開2003−261408号公報 特開2003−113012号公報 特開2001−73350号公報 渡辺真理代、「アオコ」東京大学出版会(1999) 原田健一、「有毒藍藻類をめぐる最近の研究動向」Journal of Health Science、45(3)150−165(1999)
しかしながら、上記特許文献1では、有機物であるリジンを水圏に投与するので、水圏中のBODを増大させ、有機物による二次汚染を引き起こす虞があった。また、上記特許文献2では、水圏中に銅イオンが含まれるため、飲料水としては好ましくなかった。また、上記特許文献3では、超音波の大量エネルギーが必要であり、分解された細胞を起因とする有機物の二次汚染が発生する虞があった。
また、上記4)の方法のように、水域を生物学的に窒素除去する際、大量の有機物(メタノール等)が必要となる。しかし、水圏の浄化にメタノールを添加するのはコストがかかるだけでなく、有機物による二次汚染の原因になるという問題があった。
さらに、ミクロシスチンを分解するのに用いられるオゾンや塩素は強力な酸化剤であるため、トリハロメタン等の毒性を有する副産物が生成し、これによる二次汚染の発生が問題であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、湖、ダム湖、濠、内海等のようにBODを低濃度にしか含まず、しかも藍藻類が発生しやすい閉鎖性水域における窒素成分の除去を効率的に行うことができ、毒素であるミクロシスチンを生成する藍藻類の増殖を抑制すると共に、処理による環境の二次汚染を防止できるメタン醗酵のグラニュール汚泥、該グラニュール汚泥を用いた包括固定化担体、窒素除去方法及び窒素除去装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、BODを低濃度にしか含まない閉鎖性水域の原水に含まれる窒素成分を除去する窒素除去方法において、前記原水をメタン醗酵のグラニュール汚泥と接触させることを特徴とする窒素除去方法を提供する。
メタン醗酵のグラニュール汚泥(メタン生成菌を含むグラニュール汚泥ともいう)は、本来、有機体窒素を分解し、アンモニア性窒素を発生させるものとして知られている。また、低BOD濃度の廃水処理には、従属性の脱窒反応に必要な有機物が少ないため不向きであるといわれている。しかしながら、本発明者らは、メタン醗酵のグラニュール汚泥が低BOD濃度の水(例えば、閉鎖性水域)の窒素成分除去に適していることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、湖、ダム湖、濠、内海等のようにBODを低濃度にしか含まず、しかも藍藻類が発生しやすい閉鎖性水域における窒素成分の除去を効率的に行うことができ、毒素であるミクロシスチンを生成する藍藻類の増殖を抑制でき、更に処理による環境の二次汚染を防止できる。
請求項2は請求項1において、前記原水に含まれるBODが50mg/L以下であることを特徴とする。
このように、低BOD濃度の原水でも効率的に窒素除去することができる。また、原水のBODが20mg/L以下である場合でも、同様の効果を得ることができる。
請求項3は請求項1又は2において、前記原水に藍藻類が含まれることを特徴とする。
請求項3によれば、藍藻類により生成されるミクロシスチン自体が有機態窒素を含むので、ミクロシスチンの分解を行うことができる。
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記グラニュール汚泥を前記原水に直接散布することにより、前記原水に含まれる窒素成分を除去することを特徴とする。
請求項5は請求項1〜4の何れか1項において、前記グラニュール汚泥は、補酵素F420を200μmol/kg−VSS以上含有することを特徴とする。
請求項5は、閉鎖性水域中の窒素成分を高効率で除去できる、好ましいメタン醗酵活性の範囲を示したものである。補酵素F420の含有量は、M.S.Switzenbaum法の変法(第4図、神鋼パンテック技報、Vol.38.No.2、1994年8月出版)の記載に従って、測定することができる。
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、BODを低濃度にしか含まない閉鎖性水域の原水に含まれる窒素成分を除去する窒素除去装置において、前記原水を処理するための分解処理槽と、前記分解処理槽内に充填されたメタン醗酵のグラニュール汚泥又は該グラニュール汚泥を固定化した包括固定化担体と、前記分解処理槽内に充填された生分解性有機物と、を備えたことを特徴とする窒素除去装置を提供する。
請求項6によれば、生分解性有機物を従属性の脱窒反応に利用できるので、原水を効率良く脱窒することができる。
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、BODを低濃度にしか含まない閉鎖性水域の原水に含まれる窒素成分を除去する窒素除去装置において、内部に、メタン醗酵のグラニュール汚泥が充填されると共に、浮き部材によって前記藍藻類が発生した水域に浮遊可能な分解処理槽と、前記分解処理槽に形成され、前記原水を前記分解処理槽内に導入するための複数の導入口と、前記分解処理槽に形成され、前記分解処理槽内で処理された処理水を排出するための排出口と、前記分解処理槽に設置され、前記原水を前記分解処理槽内に導入し、前記分解処理槽内で処理された処理水を排出する循環水流を発生させるための循環手段と、前記分解処理槽内に設けられ、前記グラニュール汚泥を前記処理水から分離する分離手段と、を備えたことを特徴とする窒素除去装置を提供する。
請求項7によれば、分解処理槽を、浮き部材により閉鎖性水域の水面下に浮遊させることができるので、地表に設置スペースを確保する必要がなくなる上、閉鎖性水域を広範囲にわたって浄化することができる。
請求項8は請求項6又は7において、前記グラニュール汚泥は、補酵素F420が200μmol/kg−VSS以上含有されたことを特徴とする。
請求項9は請求項6〜8の何れか1項において、前記分解処理槽が、嫌気性又は微好気性に維持されることを特徴とする。
請求項9によれば、脱窒を高効率で行うことができる。ここで、微好気性とは、分解処理槽内の水中の溶存酸素DOが0.5〜3ppm程度をいう。
本発明によれば、湖、ダム湖、濠、内海等のようにBODを低濃度にしか含まず、しかも藍藻類が発生しやすい閉鎖性水域における窒素成分の除去を効率的に行うことができ、毒素であるミクロシスチンを生成する藍藻類の増殖を抑制すると共に、処理による環境の二次汚染を防止できる。
本発明者らは、従来、窒素除去には不向きとされていたメタン醗酵のグラニュール汚泥が、低BOD濃度の閉鎖性水域(以下、原水という)の窒素除去には顕著な効果を発揮することを見出した。このメカニズムは未だ不明な部分もあるが、本発明者らによると、メタン醗酵のグラニュール汚泥に含まれるメタン生成菌の自己分解作用、及び原水に含まれる微量の有機物からメタン及び水素が生成されると共に、同グラニュール汚泥中又は原水中の脱窒細菌等により従属栄養性の脱窒反応が起こっているものと推測されている。一方、本発明者らによると、嫌気性アンモニア酸化反応が関与している可能性も示唆されている。
以下、本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥、該グラニュール汚泥を用いた包括固定化担体の好ましい実施の形態について説明する。
本発明におけるメタン醗酵のグラニュール汚泥は、メタン生成菌を含む細胞外ポリマーに覆われた汚泥粒子であり、微生物の自己造粒作用により粒状化したものである。メタン醗酵のグラニュール汚泥の活性は、メタン生成菌固有の物質である補酵素F420の含有量により判断することができる。補酵素F420の化学構造を以下に示す。
Figure 2008068233
メタン醗酵のグラニュール汚泥の補酵素F420の含有量が、100μmol/kg−VSS以上であることが好ましく、200μmol/kg−VSS以上であることがより好ましい。補酵素F420の含有量は、M.S.Switzenbaum法の変法(第4図、神鋼パンテック技報、Vol.38.No.2、1994年8月出版)の記載に従って、測定することができる。
メタン醗酵のグラニュール汚泥の平均粒径は0.5〜3mmであり、SVI(Sludge Volume Index)は10〜20ml/gであり、灰分含量は5〜60質量%であり、圧縮強度は1〜3kg−f/cmであることが好ましい。
UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket:上向流嫌気性スラッジブランケット)法もしくはEGSB(Expanded Granular Sludge Bed:膨張粒状汚泥床)法においては、一般的に、有機酸発酵とメタン発酵を別々の反応器で行い、有機酸発酵による酸生成液をグラニュール汚泥からなるスラッジブランケットを形成したUASB方式のメタン発酵槽に上向流で通水してメタン発酵を行わせる。このように、グラニュール汚泥は有機酸発酵とメタン発酵とを二段階に分離して行う二相式のメタン発酵で形成するのが好ましいが、有機酸発酵とメタン発酵を一個の反応器で行う一相式のメタン発酵で形成することもできる。
メタン醗酵のグラニュール汚泥は、特別な装置、操作、条件などを選択して粒状化したグラニュール汚泥である必要はなく、公知の方法で一般的にメタン発酵が行われている処理において発生するグラニュール汚泥をそのまま使用することができる。例えば、メタン醗酵は、高温メタン発酵、中温メタン発酵のいずれでもよい。
上記メタン醗酵のグラニュール汚泥は、そのまま分解処理槽に投入して使用することができるが、1)固定化材料にメタン醗酵のグラニュール汚泥等を付着固定した付着固定化担体を用いる方法や、2)固定化材料にメタン醗酵のグラニュール汚泥等を包括固定した包括固定化担体を用いる方法等、が挙げられる。
上記1)の付着固定化担体を用いる場合、固定化材料は、メタン醗酵のグラニュール汚泥等が付着し易い凹凸が多く形成されている材料を用いることが好ましく、例えば、球状や筒状等の担体、ひも状材料、ゲル状担体、不織布状材料等を好適に使用することができる。これにより、T−N除去率を向上できる。
上記2)の包括固定化担体を用いる場合、包括固定化担体は以下のように製造することができる。
図1は、本発明に係る包括固定化担体の製造方法の一例を示したフローチャートである。
図1に示されるように、先ず、固定化材料としてポリエチレングリコールプレポリマー(以下、PEGという)と、重合促進剤としてNNN'N’−テトラメチルエチレンジアミンとを混合した混合液を、pHを中性付近(6.5〜8.5)に調整したゲル原料液を調製する。次いで、このゲル原料液に、上記で製造したグラニュール汚泥を混合して攪拌し、懸濁液を調製する。次いで、上記懸濁液に重合開始剤として過硫酸カリウムを添加して攪拌した後、直ちにシート形状又はブロック形状にゲル化させる(重合させる)。このときの重合温度は15〜40℃、好ましくは20〜30℃で、重合時間は1〜60分、好ましくは10〜60分である。そして、ゲル化させたシート又はブロックを所定のサイズ(例えば、略3mm角の立方体状)に切断し、本発明に係る包括固定化担体を得ることができる。包括固定化担体の形状は、特に限定されることはなく、円筒状、球状に切断してもよい。また、包括固定化担体の製造方法は、上記した方法に限らず、チューブ成形法、滴下造粒法等を採用することもできる。
包括固定化する微生物としては、上記メタン醗酵のグラニュール汚泥だけでもよいが、更に硝化細菌又は硝化細菌群、脱窒細菌群、嫌気性アンモニア酸化細菌群等の複合微生物や、ダイオキシン類などの特定の有害化学物質を分解する能力をもった微生物(例えば、アオコ分解菌、PCB分解菌、ダイオキシン分解菌、環境ホルモン分解菌等の純粋微生物等)が含まれてもよい。これらの微生物は、培養等により濃縮分離された微生物の他に、下水処理場の活性汚泥、湖沼、河川や海の汚泥、浄水汚泥、土壌などの各種の微生物を含む微生物含有物も含まれる。これにより、脱窒反応をより確実に行うことができる。
メタン醗酵のグラニュール汚泥を含む上記微生物を、包括固定化担体に対して1〜3質量%固定化することが好ましい。
固定化材料としては、各種モノマー、プレポリマー、オリゴマー等が挙げられるが、特に限定されるものではない。モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルフォルマール等を使用することができる。プレポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタアクリレート、及びこれらの誘導体等を使用することができる。その他、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド等を使用することができる。
包括固定化担体の重合は、過硫酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過硫酸カリウムを用いた重合では、過硫酸カリウムの添加量を0.001〜0.25質量%とし、アミン系の重合促進剤の添加量を0.01〜0.5質量%とすることが好ましい。アミン系の重合促進剤としては、βジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン等を好ましく使用することができる。
なお、付着固定又は包括固定するメタン醗酵のグラニュール汚泥は、カッターポンプ、ミル、ホモジナイザなどの破砕装置により破砕したものを使用することが好ましい。破砕後のメタン醗酵のグラニュール汚泥の平均粒子径は、0.5〜1mmであることがより好ましい。
上記の如く製造した本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥、又は該グラニュール汚泥を固定化した包括固定化担体を用いて、水域等の原水に含まれる窒素成分を除去する方法、及び窒素除去装置の好ましい実施形態について以下に説明する。
[第1実施形態]
図2は、本実施形態の窒素除去装置10の構成を説明する説明図である。なお、本実施形態は、分解処理槽内に本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥を充填して水域の水と接触させることにより、水域の窒素成分を除去する例である。以下、窒素除去される前の水域の水を原水といい、窒素除去された後の水を処理水という。
図2に示されるように、窒素除去装置10は、主として、原水に含まれる窒素成分を除去する分解処理槽12と、下部から分解処理槽12内へ原水を導入する導入配管14と、分解処理槽12内で処理した後の処理水を分解処理槽12の上部から排出する排出配管16と、を備えている。
分解処理槽12内には、本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥18が充填され、攪拌混合可能になっている。メタン醗酵のグラニュール汚泥18の充填率は、20〜70%にすることが好ましい。滞留時間は、原水中の窒素除去に必要且つ十分な程度に設定される。分解処理槽12内は、嫌気性又は微好気性(微好気性とは、溶存酸素DO:0.5〜3ppm程度をいう)に維持されている。
次に、本実施形態の窒素除去装置10の作用について説明する。
まず、水域から取り込んだ原水は、導入配管14を介して分解処理槽12内に導入される。次いで、分解処理槽12内に充填されたメタン醗酵のグラニュール汚泥18と原水が接触する。このとき、メタン醗酵のグラニュール汚泥18に含まれるメタン生成菌と共存菌の作用により、原水中の窒素成分が除去される。その後、窒素成分が除去された処理水が排出配管16から排出され、水域に返送される。
これにより、湖、ダム湖、濠、内海等のようにBODを低濃度にしか含まず、しかも藍藻類が発生しやすい閉鎖性水域における窒素成分の除去を効率的に行うことができ、毒素であるミクロシスチンを生成する藍藻類の増殖を抑制すると共に、処理による環境の二次汚染を防止できる。
[第2実施形態]
図3は、本実施形態の窒素除去装置20の構成を説明する説明図である。なお、本実施形態は、本発明に係る包括固定化担体と、生分解性プラスチック(生分解性有機物)を充填した分解処理槽内に原水を通水し、原水に含まれる窒素成分を除去する例である。
図3に示されるように、窒素除去装置20は、分解処理槽12内に更に生分解性プラスチック44を備えたこと以外は、図2と同様に構成されている。図3において、図2と同一の部材については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
分解処理槽12内の下方には本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥18が充填され、分解処理槽12内の上方には、生分解性プラスチック44が充填されている。メタン醗酵のグラニュール汚泥18の充填率は、10〜30%とすることが好ましい。滞留時間は、原水中の窒素除去に必要且つ十分な程度に設定される。分解処理槽12内は、嫌気性、又は微好気性(溶存酸素DO:0.5〜3ppm)に維持されている。
生分解性プラスチック44としては、例えば、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、高級脂肪酸等が使用できる。生分解性プラスチック44の粒径は、特に限定されないが、5mm以下であることが好ましい。生分解性プラスチック44の充填率は、充填するメタン醗酵のグラニュール汚泥量に対して2〜50質量%とすることが好ましい。
次に、本実施形態の窒素除去装置20の作用について説明する。
まず、水域から取り込んだ原水は、導入配管14を介して分解処理槽12内に導入される。次いで、分解処理槽12内に充填されたメタン醗酵のグラニュール汚泥18と原水が接触する。このとき、メタン醗酵のグラニュール汚泥18に含まれるメタン生成菌の作用により、原水中の窒素成分が除去される。その後、窒素成分が除去された処理水は排出配管16から排出され、水域に返送される。
これにより、湖、ダム湖、濠、内海等のようにBODを低濃度にしか含まず、しかも藍藻類が発生しやすい閉鎖性水域における窒素成分の除去を効率的に行うことができ、毒素であるミクロシスチンを生成する藍藻類の増殖を抑制すると共に、処理による環境の二次汚染を防止できる。また、生分解性プラスチックを従属性の脱窒反応に利用できるので、原水中の窒素成分を効率的に除去することができる。
[第3実施形態]
図4は、本実施形態の窒素除去装置30の構成を説明する説明図である。なお、本実施形態は、本発明に係る包括固定化担体を充填した分解処理槽を水域に浮かべて、原水に含まれる窒素成分を除去する例である。
図4に示されるように、窒素除去装置30は、主として、原水に含まれる窒素成分を除去する分解処理槽32と、分解処理槽32を水面下の所定位置に保持する複数の浮き部材34…と、を備えている。
分解処理槽32の下面には、原水を導入するための導入口36が形成されている。この導入口36は、吸水ポンプ38(循環手段)を介して導入配管40と接続されている。また、分解処理槽32内で処理した後の処理水を水域に返送するための返送管42(排出口)が、分解処理槽32の上部に延設されている。このように、原水を分解処理槽32内に取り込み、窒素除去した後の処理水を返送管42から水域に返送する循環水流が生じるようになっている。
吸水ポンプ38としては、水域から原水を分解処理槽32内に導入し、処理水を水域へ返送する循環水流を生じさせるものであれば公知公用のものが使用できる。
分解処理槽32内には、本発明に係る包括固定化担体44が充填されている。包括固定化担体44の充填率は、20〜70%とすることが好ましい。また、包括固定化担体44が分解処理槽32内から流出するのを防止するため、包括固定化担体44を網状のネット46(分離手段)で包むのが好ましい。また、ネット46の代わりに、包括固定化担体44が分解処理槽32内から流出するのを防止するためのスクリーン(不図示)を導入口36及び返送管42の開口部に設けることもできる。
分解処理槽32は、ロープ48を介して複数の浮き部材34…に連結され、水面下の所定位置に浮遊できるようになっている。
次に、本実施形態の窒素除去装置30の作用について説明する。
まず、水域から取り込んだ原水は、導入配管40を介して分解処理槽32内に導入される。次いで、導入された原水は、分解処理槽32内に充填されたメタン醗酵のグラニュール汚泥を含む包括固定化担体44と接触する。このとき、メタン醗酵のグラニュール汚泥18に含まれるメタン生成菌等の作用により、原水中の窒素成分が除去される。その後、窒素成分が除去された処理水が返送管42から排出され、水域に返送される。
これにより、湖、ダム湖、濠、内海等のようにBODを低濃度にしか含まず、しかも藍藻類が発生しやすい閉鎖性水域における窒素成分の除去を効率的に行うことができ、毒素であるミクロシスチンを生成する藍藻類の増殖を抑制すると共に、処理による環境の二次汚染を防止できる。また、分解処理槽を閉鎖性水域の水面下に浮遊させることができるので、地表に設置スペースを確保する必要がなくなる上、閉鎖性水域を広範囲にわたって浄化することができる。
なお、分解処理槽32における導入口36や返送管42の設置位置及び設置形態は、上記実施形態に限定されない。例えば、導入口36を分解処理槽32の側面に形成することもでき、又は導入口36と返送管42とを兼用して形成することもできる。また、分解処理槽32も図4の形状に限定されることはない。
以上、本発明に係る窒素除去方法及び窒素除去装置の各種実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.模擬湖沼水の窒素除去試験
本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥を実験用水槽内に貯留した模擬湖沼水に直接散布して、模擬湖沼水の窒素除去性能を評価した。
[実施例1]
(試験1)
補酵素F420の含有量が250μmol/kg−VSSのメタン醗酵のグラニュール汚泥を、模擬湖沼水を3m満たした実験用水槽(水面面積4m、容積4m)に100g−VSS散布した。初期の模擬湖沼水の水質は、T−N:4mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:2mg/L)、ミクロシスチン濃度:8μg/L、BOD:8mg/Lであった。時間経過に伴い、模擬湖沼水中のT−N及びミクロシスチン濃度が低下し、4週間後にはT−N:1mg/L以下、ミクロシスチン濃度:1μg/Lまで低下した。
(試験2)
補酵素F420の含有量が250μmol/kg−VSSのメタン醗酵のグラニュール汚泥を、毎日1回、実験用水槽(容積4m)に10g−VSS散布した。初期の模擬湖沼水の水質は、T−N:5mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:3mg/L)、ミクロシスチン濃度:8μg/L、BOD:6mg/Lであった。時間経過に伴い、模擬湖沼水中のT−N及びミクロシスチン濃度が低下し、試験開始から2週間後にはT−N:1mg/L以下、ミクロシスチン濃度:1μg/Lまで低下した。
これらの結果から、模擬湖沼水中の窒素成分をすることができ、アオコの増殖及びこれによるミクロシスチンの生成を確実に抑制できることがわかった。
(試験3)
補酵素F420の含有量が250μmol/kg−VSSのグラニュール汚泥を、模擬湖沼水を3.5m満たした実験水槽(容積4m)に100g−VSS散布した。初期の模擬湖沼水はアオコが発生していないもので、水質はT−N:4mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:2mg/L)、BOD:2.6mg/Lであった。時間経過に伴って模擬湖沼水中のT−Nが低下し、4週間後にはT−N:1mg/L以下まで低下し、ミクロシスチン濃度は試験開始時とほぼ変わらずゼロであった。
これにより、模擬湖沼水中の窒素成分を除去することができ、アオコの発生及びこれによるミクロシスチンの生成を確実に抑制できることがわかった。
[実施例2]
本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥を充填した図2の分解処理槽を用いて、模擬湖沼水の窒素除去性能を評価した。
(試験1)
図2の窒素除去装置10を用いて、模擬湖沼水の窒素除去試験を行った。
補酵素F420の含有量が250μmol/kg−VSSのメタン醗酵のグラニュール汚泥を、分解処理槽12に充填率40%で充填した。そして、導入配管14から分解処理槽12内に模擬湖沼水(T−N:4mg/L(NO−N:4mg/L)、ミクロシスチン濃度:8μg/L、BOD:8mg/L)を供給し、分解処理槽12内のグラニュール汚泥と所定時間接触させた。この結果、T−N除去率は試験開始から2週間後には安定し、その後約1年間は滞留時間30分でT−N除去率50〜60%の安定した処理が可能となった。
(試験2)
図2の窒素除去装置10を用いて、模擬湖沼水の窒素除去試験を行った。
補酵素F420の含有量が250μmol/kg−VSSのメタン醗酵のグラニュール汚泥を、分解処理槽12に充填率40%で充填した。そして、導入配管14から分解処理槽12内に模擬湖沼水(T−N:4mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:2mg/L)、ミクロシスチン濃度:8μg/L、BOD:50mg/L)を供給し、分解処理槽12内のグラニュール汚泥と所定時間接触させた。T−N除去率は、処理開始から2週間後には安定し、その後約1年間は滞留時間30分でT−N除去率50〜60%の安定した処理が可能となった。
以上から、模擬湖沼水中の窒素成分を除去することができ、アオコの増殖及びこれによるミクロシスチンの生成を確実に抑制できることがわかった。
[実施例3]
本発明に係るメタン醗酵のグラニュール汚泥を包括固定した包括固定化担体を図2の分解処理槽12に充填し、模擬湖沼水の窒素除去性能を評価した。
<包括固定化担体18の組成>
・グラニュール汚泥(補酵素F420の含有量250μmol/kg−VSS)
・ 汚泥濃度 :2質量%(包括固定化担体あたり)
・ 固定化材料:アクリルアミド 15質量%
・ メチレンビスアクリルアミド 1質量%
・ 重合促進剤:NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン 0.5質量%
・ 重合開始剤:過硫酸カリウム 0.25質量%
上記のように、グラニュール汚泥を固定化材料(アクリルアミド/メチレンビスアクリルアミド液)に添加及び混合して懸濁液を調製した。次いで、懸濁液に過硫酸カリウム、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミンを添加して、重合温度10℃、重合時間5分でゲル化(重合)させた。そして、ゲル化させた担体を約3mm径の球状に成形してペレット化し、これにより本例の包括固定化担体を製造した。
上記の如く得られた包括固定化担体を、図2における分解処理槽12に充填率38%で充填した。そして、模擬湖沼水(T−N:4mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:2mg/L)、ミクロシスチン濃度:8μg/L、BOD:8mg/L、溶存酸素:2〜3mg/L)を導入配管14から分解処理槽12内へ供給し、分解処理槽12内の包括固定化担体と所定時間接触させた。処理開始から3週間経過後にはT−N除去率が安定し、その後約1年間は滞留時間1時間でT−N除去率60〜70%の安定した処理が可能となった。アンモニア性窒素は、流入溶存酸素の供給を受け、硝化されてから脱窒されるか、或いは嫌気性アンモニア酸化反応により脱窒されているものと考えられる。
以上から、模擬湖沼水中の窒素成分を除去することができ、アオコの増殖及びこれによるミクロシスチンの生成を確実に抑制できることがわかった。
[実施例4]
メタン醗酵のグラニュール汚泥を包括固定した包括固定化担体と、生分解性プラスチックを充填した図3の分解処理槽を用いて、水域の窒素除去試験を実施した。
実施例3と同様の包括固定化担体を、図3における分解処理槽12に充填率38%で充填した。さらに、ポリカプロラクタムの生分解性プラスチック粒子を充填率10%で充填した。そして、模擬湖沼水(T−N:4mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:2mg/L)、ミクロシスチン濃度:8μg/L、BOD:14mg/L、溶存酸素:2〜3mg/L)を導入配管14から分解処理槽12内へ供給し、分解処理槽12内の包括固定化担体と所定時間接触させた。処理開始から3週間経過後にはT−N除去率が安定し、その後約1年間は滞留時間1時間でT−N除去率80〜95%の安定した処理が可能となった。
これは、生分解性プラスチック粒子のポリカプロラクタムが水素供与体となり、脱窒反応が進行したためであると考えられる。
以上から、本発明に係るグラニュール汚泥を用いることで、低BOD濃度の水域に含まれる窒素成分を除去することができ、アオコの発生を抑制できることが確認できた。
2.グラニュール汚泥のメタン醗酵活性
まず、グラニュール汚泥のメタン醗酵活性を補酵素F420の含有量で評価した。また、補酵素F420の含有量とT−N除去率(T−N除去活性)との関係を検討した。図2の分解処理槽12内に、メタン醗酵活性の異なるグラニュール汚泥を充填率40%で充填し、模擬湖沼水のT−N除去特性を評価した。なお、模擬湖沼水は、T−N:5mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:3mg/L)を用い、滞留時間は1時間とした。この結果を図5に示す。
図5に示されるように、グラニュール汚泥中の補酵素F420の含有量が100μmol/kg−VSS以上、好ましくは200μmol/kg−VSS以上であれば、模擬湖沼水のT−N除去率が高くなる傾向が得られた。
さらに、T−N除去負荷とメタン醗酵のグラニュール汚泥の減容量との関係について評価した。この結果を表1に示す。
Figure 2008068233
表1に示されるように、T−N除去負荷の増加に伴い、メタン醗酵のグラニュール汚泥の減容量も増加する。実際的なT−N除去負荷の範囲では、メタン醗酵のグラニュール汚泥の補充量は5〜15%程度であることがわかった。
3.固定化材料の種類(付着固定化用、包括固定化用)
次に、付着固定化用、包括固定化用の固定化材料の種類と模擬湖沼水のT−N除去率との関係について評価した。
まず、各種固定化材料に2質量%のメタン醗酵のグラニュール汚泥を付着固定又は包括固定し、各種付着固定化担体及び包括固定化担体を作製した。作製した包括固定化担体の組成を以下に示す。
Figure 2008068233
上記付着固定化担体及び包括固定化担体を、図2の分解処理槽12内に充填率40%となるように充填した。そして、分解処理槽12内に模擬湖沼水を通水し、それぞれのT−N除去率を測定した。なお、模擬湖沼水は、T−N:5mg/L(NH−N:2mg/L、NO−N:3mg/L)のものを使用した。この結果を表3に示す。
Figure 2008068233
表3に示されるように、いずれの付着固定化担体、包括固定化担体もT−N除去速度は良好であった。中でも、包括固定化担体の方が、メタン醗酵のグラニュール汚泥の固定量が同量であっても、T−N除去速度が高いことがわかった。これは、包括固定化担体の方が、付着固定化担体よりもメタン醗酵のグラニュール汚泥が脱離しにくく、水との接触効率も良好であるためと考えられる。
本実施形態における包括固定化担体の製造方法の一例を示したフローチャート図である。 第1実施形態の窒素除去装置の構成を説明する説明図である。 第2実施形態の窒素除去装置の構成を説明する説明図である。 第3実施形態の窒素除去装置の構成を説明する説明図である。 本実施例のグラフ図である。
符号の説明
10、20…窒素除去装置、12、32…分解処理槽、14、40…導入配管、16…排出配管、18…グラニュール汚泥、22…生分解性プラスチック、36…導入口、38…吸水ポンプ、42…返送管、44…包括固定化担体

Claims (9)

  1. BODを低濃度にしか含まない閉鎖性水域の原水に含まれる窒素成分を除去する窒素除去方法において、
    前記原水をメタン醗酵のグラニュール汚泥と接触させることを特徴とする窒素除去方法。
  2. 前記原水に含まれるBODが50mg/L以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒素除去方法。
  3. 前記原水に藍藻類が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒素除去方法。
  4. 前記グラニュール汚泥を前記原水に直接散布することにより、前記原水に含まれる窒素成分を除去することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の窒素除去方法。
  5. 前記グラニュール汚泥は、補酵素F420を200μmol/kg−VSS以上含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の窒素除去方法。
  6. BODを低濃度にしか含まない閉鎖性水域の原水に含まれる窒素成分を除去する窒素除去装置において、
    前記原水を処理するための分解処理槽と、
    前記分解処理槽内に充填されたメタン醗酵のグラニュール汚泥又は該グラニュール汚泥を固定化した包括固定化担体と、
    前記分解処理槽内に充填された生分解性有機物と、
    を備えたことを特徴とする窒素除去装置。
  7. BODを低濃度にしか含まない閉鎖性水域の原水に含まれる窒素成分を除去する窒素除去装置において、
    内部に、メタン醗酵のグラニュール汚泥が充填されると共に、浮き部材によって前記藍藻類が発生した水域に浮遊可能な分解処理槽と、
    前記分解処理槽に形成され、前記原水を前記分解処理槽内に導入するための複数の導入口と、
    前記分解処理槽に形成され、前記分解処理槽内で処理された処理水を排出するための排出口と、
    前記分解処理槽に設置され、前記原水を前記分解処理槽内に導入し、前記分解処理槽内で処理された処理水を排出する循環水流を発生させるための循環手段と、
    前記分解処理槽内に設けられ、前記グラニュール汚泥を前記処理水から分離する分離手段と、
    を備えたことを特徴とする窒素除去装置。
  8. 前記グラニュール汚泥は、補酵素F420が200μmol/kg−VSS以上含有されたことを特徴とする請求項6又は7に記載の窒素除去装置。
  9. 前記分解処理槽が、嫌気性又は微好気性に維持されることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の窒素除去装置。
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