以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の例について、図面を参照して説明する。
<第1の態様>
はじめに、図1乃至図3を参照して、第1の態様に係る作製方法について説明する。
まず、ベース基板100を用意する(図1(A)参照)。ベース基板100には、液晶表示装置などに使用されている透光性を有するガラス基板を用いることができる。ガラス基板としては、歪み点が600℃以上であるものを用いることが好ましい。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料を用いることができる。ベース基板100としてガラス基板を用いることにより、シリコン基板を用いる場合と比較して大面積化が可能であり低コスト化を図ることができる。
また、ベース基板100として、絶縁性セラミック基板、石英基板およびサファイア基板などの絶縁体でなる基板、半導体セラミック、シリコンなどの半導体基板、金属およびステンレスなどの導電体でなる基板などを用いることもできる。他にも、ベース基板100として、作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。以下の説明では、ベース基板100として、矩形状に加工されたガラス基板を用いる場合について示す。なお、特段の断りが無い限り、矩形には正方形が含まれることとする。
次に、ボンド基板として半導体基板110を用意する(図1(B−1)参照)。半導体基板110としては、多結晶半導体基板または単結晶半導体基板を用いることができる。多結晶半導体基板または単結晶半導体基板としては、例えば、多結晶または単結晶のシリコン基板やゲルマニウム基板、シリコンゲルマニウム基板、炭化シリコン基板などの第14族元素でなる半導体基板、またガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板が挙げられる。シリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、形状は円形に限られず矩形状等に加工したシリコン基板を用いることも可能である。以下の説明では、半導体基板110として、矩形状に加工されたシリコン基板を用いる場合について示す。
次に、半導体基板110に絶縁層114を形成する(図1(B−2)参照)。
絶縁層114には、例えば、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層等の単層、又はこれらを積層させた層を用いることができる。これらの層は、CVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、CVD法を用いて絶縁層114を形成する場合には、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC2H5)4)等の有機シランを用いて作製される酸化シリコン層を絶縁層114に用いることが生産性の点から好ましい。
なお、酸化窒化シリコン層とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)、および水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Foward Scattering)を用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が50〜70atomic%、窒素が0.5〜15atomic%、シリコンが25〜35atomic%、水素が0.1〜10atomic%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン層とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、RBSおよびHFSを用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が5〜30atomic%、窒素が20〜50atomic%、シリコンが25〜35atomic%、水素が15〜25atomic%の範囲で含まれるものをいう。但し、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100atomic%としたとき、窒素、酸素、シリコンおよび水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
また、絶縁層114は、半導体基板110に熱酸化処理を行うことにより形成してもよい。この場合、熱酸化処理は、ハロゲンを添加した酸化性雰囲気中で加熱処理を行うことが好ましい。このような熱酸化処理の一例としては、酸素に対し塩化水素(HCl)を0.5〜10volume%(好ましくは3volume%)の割合で含む雰囲気中で、900℃〜1150℃の温度(たとえば950℃)で熱酸化処理を行うと良い。処理時間は0.1〜6時間、好ましくは0.5〜1時間とすれば良い。形成される酸化層の厚さとしては、10nm〜1000nm(好ましくは50nm〜200nm)、例えば100nmの厚さとする。
本実施の形態では、半導体基板110に塩化水素(HCl)を含む雰囲気中で熱酸化処理を行うことにより、絶縁層114(ここでは、酸化シリコン層)を形成する。従って、絶縁層114は、塩素原子を含有した層となる。
なお、貼り合わせに際して特に問題がない場合など、絶縁層114を設ける必要がない場合には、絶縁層114を設けない構成としても良い。
次に、絶縁層114が形成された半導体基板110にイオンを照射することにより、半導体基板110中に脆化領域112を形成する(図1(B−3)参照)。例えば、電界で加速されたイオンを有するイオンビームを照射して、半導体基板110の表面から所定の深さの領域に脆化領域112を形成する。脆化領域112が形成される深さは、イオンビームの加速エネルギーやイオンビームの入射角によって制御される。つまり、脆化領域112は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。ここで、脆化領域112が形成される深さは、半導体基板110の全面において均一であることが好ましい。
また、上述の脆化領域112が形成される深さにより、半導体基板110から分離される半導体層の厚さが決定される。脆化領域112が形成される深さは、半導体基板110の表面から50nm以上1μm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。
イオンを半導体基板110に添加する際には、イオン注入装置またはイオンドーピング装置を用いることができる。イオン注入装置は、ソースガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離して、所定の質量を有するイオン種を被処理物に照射する。イオンドーピング装置は、プロセスガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離せずに被処理物に照射する。なお、質量分離装置を備えているイオンドーピング装置では、イオン注入装置と同様に、質量分離を伴うイオンの照射を行うこともできる。
イオンドーピング装置を用いる場合の脆化領域112の形成工程は、例えば、以下の条件で行うことができる。
・加速電圧 10kV以上100kV以下(好ましくは30kV以上80kV以下)
・ドーズ量 1×1016ions/cm2以上4×1016ions/cm2以下
・ビーム電流密度 2μA/cm2以上(好ましくは5μA/cm2以上、より好ましくは10μA/cm2以上)
イオンドーピング装置を用いる場合、ソースガスとして水素を含むガスを用いることができる。該ガスを用いることによりイオン種としてH+、H2 +、H3 +を生成することができる。水素ガスをソースガスとして用いる場合には、H3 +を多く照射することが好ましい。具体的には、イオンビームに、H+、H2 +、H3 +の総量に対してH3 +イオンが70%以上含まれるようにすることが好ましい。また、H3 +イオンの割合を80%以上とすることがより好ましい。このようにH3 +の割合を高めておくことで、脆化領域112に1×1020atoms/cm3以上の濃度で水素を含ませることが可能である。これにより、脆化領域112における分離が容易になる。また、H3 +イオンを多く照射することで、H+、H2 +を照射する場合より短時間で脆化領域112を形成することができる。また、H3 +を用いることで、イオンの平均侵入深さを浅くすることができるため、脆化領域112を浅い領域に形成することが可能になる。
イオン注入装置を用いる場合には、質量分離により、H3 +イオンが照射されるようにすることが好ましい。もちろん、H+やH2 +を照射してもよい。ただし、イオン注入装置を用いる場合には、イオン種を選択して照射するため、イオンドーピング装置を用いる場合と比較して、イオン照射の効率が低下する場合がある。
イオン照射工程のソースガスには水素を含むガスの他に、ヘリウムやアルゴンなどの希ガス、フッ素ガスや塩素ガスに代表されるハロゲンガス、フッ素化合物ガス(例えば、BF3)などのハロゲン化合物ガスから選ばれた一種または複数種類のガスを用いることができる。ソースガスにヘリウムを用いる場合は、質量分離を行わないことで、He+イオンの割合が高いイオンビームを作り出すことができる。このようなイオンビームを用いることで、脆化領域112を効率よく形成することができる。
また、イオンの照射を複数回に分けて行うことで、脆化領域112を形成することもできる。この場合、ソースガスを異ならせてイオン照射を行っても良いし、同じソースガスを用いてもよい。例えば、ソースガスとして希ガスを用いてイオン照射を行った後、水素を含むガスをソースガスとして用いてイオン照射を行うことができる。また、始めにハロゲンガスまたはハロゲン化合物ガスを用いてイオン照射を行い、次に、水素を含むガスを用いてイオン照射を行うこともできる。
次に、半導体基板110上に形成された絶縁層114およびベース基板100の少なくとも一方に表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、半導体基板110とベース基板100の貼り合わせ界面での接合強度を向上させることができる。さらに、表面処理を行うことで、基板表面に存在するパーティクル(ゴミ、とも記す)等を低減することができるため、パーティクル等に起因する貼り合わせ不良を低減することができる。
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理およびドライ処理の組み合わせが挙げられる。また、異なるウェット処理を組み合わせる、または異なるドライ処理を組み合わせて行うことができる。
ウェット処理としては、オゾン水を用いたオゾン処理(オゾン水洗浄)、メガソニック洗浄、または2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹きつける方法)などが挙げられる。ドライ処理としては、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理、またはラジカル処理などが挙げられる。被処理体(半導体基板110、半導体基板110上に形成された絶縁層114、またはベース基板100)に対し、上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性を高めることができる。その結果、貼り合わせ界面の接合強度を向上させることができる。さらに、表面処理を行うことで、基板表面に存在するパーティクル等を低減することができるため、パーティクル等に起因する貼り合わせ不良を低減することができる。
ウェット処理は、被処理体表面に付着するマクロなゴミなどの除去に効果的である。ドライ処理は、被処理体表面に付着する有機物などミクロなゴミの除去または分解に効果的である。そのため、被処理体に対し、紫外線処理などのドライ処理を行った後、洗浄などのウェット処理を行うと、被処理体表面を清浄化および親水化し、さらに被処理体表面のウォーターマークの発生を抑制できるため好ましい。
ウェット処理の後には、被処理体を乾燥させることが好ましい。乾燥方法として、気体を吹きつける方法(エアナイフともいう)、IPAによる乾燥(水をイソプロピルアルコールの蒸気で置換する方法)、スピンによる乾燥などを用いることができる。
ドライ処理の例の一つとして、プラズマ処理について説明する。プラズマ処理は、真空状態のチャンバーに不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入し、被処理物の表面(例えば、ベース基板100)にバイアスを印加してプラズマ状態として行う。プラズマ中には電子とアルゴンの陽イオンが存在し、陰極方向(ベース基板100側)にアルゴンの陽イオンが加速される。加速されたアルゴンの陽イオンがベース基板100表面に衝突することによって、ベース基板100表面がスパッタエッチングされる。このとき、ベース基板100表面の凸部から優先的にスパッタエッチングされ、当該ベース基板100表面の平坦性を向上することができる。また、加速されたアルゴンの陽イオンによって、ベース基板100の有機物等の不純物を除去し、ベース基板を活性化することができる。また、真空状態のチャンバーに不活性ガスに加えて、反応性ガス(例えば、酸素ガス、窒素ガス)を導入し、被処理面にバイアス電圧を印加してプラズマ状態として行うこともできる。反応性ガスを導入する場合、ベース基板100表面がスパッタエッチングされることにより生じる欠損を、補修することができる。プラズマ処理により、被処理物の表面に未結合手を生成するため、表面が活性状態になり接合に適した状態になる。また、プラズマ処理により加速されたイオンが被処理物の表層に注入されることで、表層に歪みなどの欠陥を形成する。これにより、貼り合わせ界面の水分の拡散が容易となるため、水分の吸収を高めることが可能になる。
ドライ処理の他の例の一つとして、活性状態にある酸素を用いた表面処理と、それに紫外線を組み合わせた表面処理について説明する。
オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素により、被処理体表面に付着する有機物を効果的に除去または分解することができる。また、オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素に、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光による処理を組み合わせることで、被処理体表面に付着する有機物をさらに効果的に除去することができる。
例えば、酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することにより、被処理体の表面処理を行う。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光と200nm以上の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることができる。また、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることもできる。
酸素を含む雰囲気下で、200nm未満の波長を含む光および200nm以上の波長を含む光を照射することにより起きる反応例を示す。
O2+hν(λ1nm)→O(3P)+O(3P) ・・・ (1)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (2)
O3+hν(λ2nm)→O(1D)+O2 ・・・ (3)
上記反応式(1)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で200nm未満の波長(λ1nm)を含む光(hν)を照射することにより基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(2)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。そして、反応式(3)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で200nm以上の波長(λ2nm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素O(1D)が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともに、200nm以上の波長を含む光を照射することによりオゾンを分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下での低圧水銀ランプの照射(λ1=185nm、λ2=254nm)により行うことができる。
また、酸素を含む雰囲気下で、180nm未満の波長を含む紫外光を照射して起きる反応例を示す。
O2+hν(λ3nm)→O(1D)+O(3P) ・・・ (4)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (5)
O3+hν(λ3nm)→O(1D)+O2 ・・・ (6)
上記反応式(4)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光を照射することにより、励起状態の一重項酸素O(1D)と基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(5)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。反応式(6)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素と酸素が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともにオゾンまたは酸素を分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射により行うことができる。
上述のように、200nm未満の波長を含む光により、被処理体表面に付着する有機物などの化学結合を切断し、オゾンまたは一重項酸素により被処理体表面に付着する有機物や化学結合を切断した有機物などを酸化分解して除去することができる。そのため上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性をより高めることができ、半導体基板110と、ベース基板100とを貼り合わせる際に、貼り合わせ不良を低減することができる。
本実施の形態では、ベース基板100および半導体基板110に、表面処理としてドライ処理とウェット処理を組み合わせて行う。まずドライ処理として、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射を行う。次に、ウェット処理として、アルカリ系洗浄剤を用いた洗浄、ブラシ洗浄および2流体洗浄(純水を空気とともに吹きつける方法)を行う。その後、気体を吹きつける方法(エアナイフ)、またはIPAによる乾燥を用いてベース基板100および半導体基板110を乾燥させる。
次に、ベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせる。具体的には、ベース基板100と半導体基板110とを対向させて、ベース基板100と、半導体基板110に形成された絶縁層114とを貼り合わせる。ベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせる方法について、図2を用いて説明する。
本実施の形態においては、ベース基板100を上方に、治具130に載せた半導体基板110を下方に、わずかな間隔(数mm程度)をおいて接近させて配置する(図2(A)参照)。このとき、ベース基板100と、半導体基板110の脆化領域が形成された面と、を対向させる。また治具130を用いて、半導体基板110をベース基板100に対してわずかに(数度程度)傾けて配置することが好ましい。ベース基板100と半導体基板110の間を接近させ、かつ傾けて配置することで、ベース基板100と半導体基板110の貼り合わせ開始点となる最初の接触点を任意に設定することができ、安定した貼り合わせが可能となる。なお、ベース基板100と半導体基板110の間隔および角度については特に限定されず、貼り合わせに適切な条件を設定すればよい。
次に、ベース基板100の上方にホットプレート140を配置し、ホットプレート140を加熱することにより、ベース基板100を加熱する(図2(B)参照)。ベース基板100の加熱温度は、50℃以上100℃以下、好ましくは55℃以上95℃以下とする。加熱時間については特に限定されず、ベース基板100が所望の温度になるよう適切な条件を設定すればよい。例えば、180秒間加熱することができる。
なお、本実施の形態においてはベース基板100を加熱する場合について説明するが、本発明の一態様はこれに限定されない。半導体基板110を加熱してもよいし、ベース基板100と半導体基板110の双方を加熱してもよい。半導体基板110を加熱する場合は、ベース基板を加熱する場合と同様に、ホットプレートを用いて半導体基板110を加熱してもよい。また、治具130に加熱する機構を設けることにより、半導体基板110を加熱してもよい。
また、本実施の形態においてはホットプレート140を用いてベース基板を加熱するが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、ハロゲンランプのランプ光を照射することで加熱してもよい。また、ウェット処理後の乾燥工程において、ベース基板の加熱温度以上の温度の気体を吹きつけること(エアナイフともいう)により加熱してもよい。ベース基板の加熱温度以上の気体を吹きつけることにより加熱することで、ウェット処理後の乾燥工程と同時に、基板の加熱を行うことができる。これにより工程を簡略化できるため、より好ましい。吹きつける気体の温度および吹きつける時間は、ベース基板が50℃以上100℃以下、好ましくは55℃以上95℃以下となるよう、適切な条件を設定すればよい。
次に、所望の温度に加熱されたベース基板100を押圧することで、ベース基板100の端部と、半導体基板110の端部とを接触させる(図2(C)参照)。また、ピンなどを用いてベース基板100または半導体基板110の一点、たとえばベース基板100の中央を押圧することで、ベース基板100と半導体基板110とを接触させてもよい。接触させた部分からベース基板100と半導体基板110との貼り合わせが開始され、貼り合わせは、その開始地点から同心円を描くように進行する。例えば、ベース基板100と半導体基板110の角部の一から貼り合わせを開始させる場合、貼り合わせは、該角部の対角に位置する角部に向かって同心円状に進行し、全面におよぶ(図1(C)および図2(D)参照)。
ベース基板100と半導体基板110との貼り合わせの際に、ベース基板100および半導体基板110上の水分量、および貼り合わせの速度によっては、貼り合わせの界面に貼り合わせ不良が発生する場合がある。
ベース基板100と半導体基板110の貼り合わせには、水素結合やファン・デル・ワールス力が作用している。水素結合やファン・デル・ワールス力を作用させるためには、ヒドロキシル基および水が必要である。そのため、ベース基板100および半導体基板110上のヒドロキシル基および水が不足すると、ベース基板100と半導体基板110は自発的に接合せず、貼り合わせができない。
しかし、ベース基板100および半導体基板110上の水分が過多であると、貼り合わせが急速に進むため、貼り合わせ界面において、気体やパーティクルが閉じ込められてしまう。また、半導体基板110の外周部や貼り合わせの終了地点付近では、貼り合わせの速度がばらつきやすく、気体やパーティクルの閉じこめがより起こりやすい傾向にある。気体やパーティクルが閉じ込められるとベース基板100と半導体基板110の間に微細な空隙が生じ、後の工程でベース基板100と半導体基板110を分離したときに、貼り合わせ不良が生じる。本明細書等では、これらの気体やパーティクルが閉じこめられたことに起因する貼り合わせ不良を「ボイド」という。なお、半導体基板110の外周部とは、半導体基板110の縁から5mm程度までの領域を言う。
また、ベース基板100および半導体基板110上の水分が過多であると、両基板表面に貼り合わせに不必要な水分(以下、余剰水分という)がベース基板100と半導体基板110との貼り合わせ界面に残留する。貼り合わせ界面に余剰水分が残留すると、後の加熱処理工程やレーザー光照射工程等で余剰水分が加熱されて気化する。これにより余剰水分が存在した部分に空洞が形成され、またはその空洞が破裂して、シリコン層の隆起や、シリコン層や酸化シリコン膜の欠落といった貼り合わせ不良として顕在化する。このような余剰水分に起因する貼り合わせ不良は、基板全体に分布し、貼り合わせ不良の大きな要因の一である。
以上のことから、ベース基板100と半導体基板110の少なくとも一方を加熱することにより、ベース基板100と半導体基板110上の貼り合わせに必要な水分量を残存させた上で、余剰水分を低減できる。これにより、貼り合わせ界面に気体やパーティクルが閉じこめられることを抑制できる。そのため、貼り合わせ界面(特に、基板の縁から5mm程度の位置)に生じるボイドを低減できる。また、貼り合わせ界面に余剰水分が残留することを抑制できる。これにより、後の工程において、余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減できる。
また、表面処理としてプラズマ処理を行う場合、加速されたイオンがベース基板100および半導体基板110の表層に注入されることで、表層に歪みなどの欠陥を形成する。これにより、貼り合わせ界面の余剰水分の拡散が容易となるため、表層の歪みなどの欠陥に余剰水分を吸収させることが可能になる。そのため、貼り合わせ界面に余剰水分が残留することを抑制できる。これにより、後の工程において、余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減できる。
なお、ベース基板100の加熱温度について、ベース基板100と半導体基板110上の水分量が最適となるのは、ベース基板を貼り合わせる際の温度にして50℃以上100℃以下、好ましくは55℃以上95℃以下のときである。これは、発明者らの試行錯誤の結果明らかとなった。加熱温度が50℃未満では水分が過剰なため貼り合わせ不良を低減する効果が十分に得られず、また100℃以上では基板表面に付着した水分が不足し、自発的に接合が起こらないことが、実験の結果明らかとなったためである。
また、加熱されたベース基板100を所望の温度まで冷却してから、半導体基板110と接触させてもよい。この方法について図3を用いて説明する。
図2(A)と同様に、ベース基板100と半導体基板110の間にわずかな間隔を空け、またわずかに傾けて配置する。このとき、ベース基板100と、半導体基板110の脆化領域が形成された面を対向させる。次に、ベース基板100の上方にホットプレート140を配置し、ホットプレート140を加熱することにより、ベース基板100を加熱する(図3(A)参照)。ベース基板100の加熱温度は、50℃以上ベース基板100の歪み点未満の温度とする。加熱時間については特に限定されず、ベース基板100が所望の温度になるよう適切な条件を設定すればよい。例えば、180秒間加熱することができる。
なお、本実施の形態においてはベース基板100を加熱する場合について説明するが、本発明の一態様はこれに限定されない。半導体基板110を加熱してもよいし、ベース基板100と半導体基板110の双方を加熱してもよい。
また、本実施の形態においてはホットプレート140を用いてベース基板を加熱するが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、ハロゲンランプのランプ光の照射により加熱してもよい。また、ウェット処理後の乾燥工程において、ベース基板の加熱温度以上の温度の気体を吹きつけることにより加熱してもよい。ベース基板の加熱温度以上の温度の気体を吹きつけて加熱することで、ウェット処理後の乾燥工程と同時に、基板の加熱を行うことができる。これにより工程を簡略化でき、より好ましい。吹きつける気体の温度は、ベース基板が50℃以上ベース基板100の歪み点未満の温度となるよう、適切な条件を設定すればよい。
次に、加熱されたベース基板100を所望の温度まで冷却する(図3(B)参照)。冷却の温度は100℃以下、好ましくは室温以上95℃以下とする。冷却の方法については特に限定されず、ベース基板100が所望の温度になるよう適切に行えばよい。本実施の形態においてはベース基板100を室温で放冷し、室温まで冷却する。
次に、所望の温度まで冷却されたベース基板100を押圧することで、ベース基板100の端部と、半導体基板110の端部とを接触させる(図3(C)参照)。また、ピンなどを用いてベース基板100または半導体基板110の一点、たとえばベース基板100の中央を押圧することで、ベース基板100と半導体基板110とを接触させてもよい。接触させた部分からベース基板100と半導体基板110との接合が始まり、その後は自発的に接合が生じて全面におよぶ(図3(C)および図3(D)参照)。
ベース基板100および半導体基板110の少なくとも一方を加熱した後、所望の温度まで冷却した場合であっても、貼り合わせ界面(特に、基板の縁から5mm程度の位置)に生じるボイドを低減できる。
また、ベース基板100と半導体基板110の少なくとも一方を加熱した後、所望の温度まで冷却した場合であっても、貼り合わせ不良を低減できる。
なお加熱されたベース基板100を所望の温度まで冷却してから、半導体基板110と接触させる場合の冷却温度について、ベース基板100と半導体基板110上の水分量が最適となるのは、ベース基板を冷却し貼り合わせる際の温度にして100℃以下、好ましくは室温以上95℃以下のときである。これは、発明者らの試行錯誤の結果明らかとなった。100℃以上では基板表面に付着した水分が不足し、自発的に接合が起こらないことが、実験の結果明らかとなったためである。
次に、半導体基板110とベース基板100とを貼り合わせた後に、貼り合わされたベース基板100および半導体基板110に対して第1の加熱処理を施して、貼り合わせを強固なものとすることが好ましい。この際の加熱温度は、脆化領域112における分離が進行しない温度とする必要がある。例えば、400℃未満、好ましくは300℃以下とする。加熱処理時間については特に限定されず、処理時間と貼り合わせ強度との関係から適切な条件を設定すればよい。加熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Annealing)装置などを用いることができる。また、マイクロ波などを照射して、該領域のみを局所的に加熱することもできる。貼り合わせ強度に問題がない場合には、上記加熱処理は省略すれば良い。本実施の形態においては200℃、2時間の加熱処理を施す。
次に、第2の加熱処理を行うことにより、半導体基板110を、脆化領域112において、半導体層116と半導体基板120とに分離する(図1(D)参照)。これにより、ベース基板100上に絶縁層114を介して半導体層116が設けられたSOI基板180が得られる。
第2の加熱処理を行うことで、温度上昇によって脆化領域112に形成されている微小な孔には、イオンドーピングで添加した原子が析出し、微小な孔の内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、脆化領域112の微小な孔に体積変化が起こり、脆化領域112において半導体基板110が分離する。絶縁層114はベース基板100に接合しているので、ベース基板100上には絶縁層114を介して半導体基板110から分離された半導体層116が形成される。また、ここでの加熱処理の温度は、ベース基板100の歪み点を越えない温度とする。例えば、ベース基板100としてガラス基板を用いる場合には、加熱処理の温度は400℃以上750℃以下とすることが好ましい。ただし、ガラス基板の耐熱性が十分であればこの限りではない。この加熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。本実施の形態においては600℃、2時間の加熱処理を施す。
なお、上述した第1の加熱処理を行わず、第2の加熱処理工程と、脆化領域112における分離の熱処理工程を同時に行ってもよい。
ベース基板100と半導体基板110との貼り合わせ界面に余剰水分が残留していた場合、上述の加熱処理工程において余剰水分が加熱され気化する。これにより、余剰水分が存在していた部分に空洞が形成される。または、該空洞が破裂することで半導体層118や絶縁層114が欠落する。このように、一部の貼り合わせ不良は、加熱処理工程において顕在化する。しかし、ベース基板100と半導体基板110との貼り合わせ前に、ベース基板100と半導体基板110との少なくとも一方を加熱することで、両基板の水分量を制御できるため、貼り合わせ界面に余剰水分が残留することを抑制できる。これにより、貼り合わせ界面に空洞が形成され、またはその空洞が破裂することを防止できるため、加熱処理工程において顕在化する、余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減することができる。同様に、ベース基板100と、半導体基板110との少なくとも一方を加熱した後、冷却した場合であっても、上述の効果が得られる。
次に、SOI基板180の半導体層116に平坦化処理を行うことが好ましい。半導体層116の表面に分離工程やイオン照射工程などに起因する凹凸や欠陥が生じた場合であっても、半導体層116に対して平坦化処理を行うことにより、半導体層116の表面を平坦化することができる。
平坦化処理は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)、エッチング処理、レーザー光の照射等により行うことができる。ここでは、半導体層116にレーザー光を照射することで、半導体層116の再結晶化と表面の平坦化を行う。
レーザー光を半導体層116の上面側から照射することで、半導体層116の上面を溶融させる。溶融した後、半導体層116が冷却、固化することで、その上面の平坦性が向上した半導体層118が得られる。レーザー光を用いることにより、ベース基板100が直接加熱されないため、当該ベース基板100の温度上昇を抑えることができる。このため、ガラス基板のような耐熱性の低い基板をベース基板100に用いることが可能である。
なお、レーザー光の照射による半導体層116の溶融は、部分溶融とすることが好ましい。完全溶融させた場合には、液相となった後の無秩序な核発生により微結晶化し、結晶性が低下する可能性が高いためである。一方で、部分溶融させることにより、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行する。これにより、半導体層116の欠陥を減少させることができる。ここで、完全溶融とは、半導体層116が下部界面付近まで溶融されて、液体状態になることをいう。他方、部分溶融とは、この場合、半導体層116の上部は溶融して液相となるが、下部は溶融せずに固相のままであることをいう。
上記レーザー光の照射には、パルス発振レーザーを用いることが好ましい。これは、瞬間的に高エネルギーのパルスレーザー光を発振することができ、溶融状態を作り出すことが容易となるためである。発振周波数は、1Hz以上10MHz以下程度とすることが好ましい。
ベース基板100と半導体基板110との貼り合わせ界面に余剰水分が残留していた場合、レーザー光の照射工程において余剰水分が加熱され気化する。これにより、余剰水分が存在していた部分に空洞が形成される。または形成された空洞が破裂することで半導体層118や絶縁層114が欠落する。このように、レーザー光の照射工程において貼り合わせ不良が顕在化する。また、上述の加熱処理工程またはレーザー光の照射工程において、貼り合わせ界面に空洞が形成された場合、レーザー光のエネルギー分布が不均一となる。このために半導体層118に隆起や、半導体層118や絶縁層114に欠落が生じるおそれがある。しかし、ベース基板100と半導体基板110との貼り合わせ前に、ベース基板100と半導体基板110との少なくとも一方を加熱することで、貼り合わせ界面に余剰水分が残留することを抑制できる。これにより、貼り合わせ界面に空洞が形成されること、および該空洞が破裂することを防止できるため、レーザー光照射工程において顕在化する、余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減することができる。また、レーザー光による平坦化処理工程を好適に行うことができる。同様に、ベース基板100と、半導体基板110との少なくとも一方を加熱した後、冷却した場合であっても、上述の効果が得られる。
上述のようにレーザー光を照射した後には、半導体層118の薄膜化工程を行っても良い。半導体層118の薄膜化には、エッチバック処理を適用すればよい。エッチバック処理としては、ドライエッチングまたはウエットエッチングの一方、または双方を組み合わせたエッチング処理を挙げることができる。例えば、半導体層118がシリコン材料からなる層である場合、ドライエッチングとしてSF6とO2をプロセスガスに用いて、半導体層118を薄くすることができる。
なお、平坦化処理はSOI基板180に限らず分離後の半導体基板120に対して行ってもよい。分離後の半導体基板120の表面を平坦にすることによって、当該半導体基板120をSOI基板の作製工程において再度利用することが可能となる。
以上の工程により、ベース基板100上に、絶縁層114を介して半導体層118が設けられたSOI基板190を作製することができる(図1(E)参照)。
なお、本実施の形態では、半導体層116に平坦化工程の後に、薄膜化工程を行う場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されず、平坦化工程の前に薄膜化工程を行ってもよいし、平坦化工程の前後に薄膜化工程を行ってもよい。
なお、本実施の形態においては、レーザー光を用いて欠陥の低減、および、平坦性の向上を実現しているが、本発明の一態様はこれに限定されない。加熱処理など、他の方法を用いて欠陥の低減、平坦性の向上を実現しても良い。加熱処理により、欠陥の低減、平坦性を向上させる場合であっても、貼り合わせ前にベース基板100と半導体基板110との少なくとも一方に加熱処理を行うことにより、余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減することは有効である。また、欠陥低減処理が不要であれば、エッチング処理などの薄膜化処理のみを適用しても良い。
<第2の態様>
次に、図4を参照して、第2の態様に係る作製方法について説明する。第2の態様と第1の態様の相違は、ベース基板100に絶縁層101を形成する点にある。よって、以下ではこの点について主に説明する。
まず、ベース基板100を用意(図4(A−1)参照)し、該ベース基板上に絶縁層101を形成する(図4(A−2)参照)。ベース基板100については、第1の様態の図1(A)を参酌すればよい。
絶縁層101の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いることができる。絶縁層101は、貼り合わせに係る表面を有する層であるから、その表面が、高い平坦性を有するように形成されることが好ましい。絶縁層101は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどから選ばれた一または複数の材料を用いて形成することができる。例えば、酸化シリコンを用いて絶縁層101を形成する場合には、有機シランガスを用いて化学気相成長法により形成することで極めて平坦性に優れた絶縁層101を得ることができる。なお、本実施の形態においては絶縁層101を単層構造としているが、積層構造としても良い。
次に、ボンド基板として半導体基板110を用意し、半導体基板110の表面に絶縁層114を形成し、半導体基板110に対してイオンを照射することにより脆化領域112を形成する(図4(B−1)〜図4(B−3)参照)。図4(B−1)〜図4(B−3)は、第1の様態の図1(B−1)〜図1(B−3)と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
次に、ベース基板100、またはベース基板100上に形成された絶縁層101、半導体基板110と半導体基板110上に形成された絶縁層114の表面処理を行うことが好ましい。この工程は第1の様態と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
次に、ベース基板100と半導体基板110を貼り合わせる(図4(C)参照)。具体的には、ベース基板100と半導体基板110とを対向させて、ベース基板100に形成された絶縁層101と、半導体基板110に形成された絶縁層114とを貼り合わせる。このとき、ベース基板100と半導体基板110の少なくとも一方を所望の温度まで加熱した後、ベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせることが好ましい。または、ベース基板100と半導体基板110の少なくとも一方を所望の温度まで加熱して、所望の温度まで冷却した後、ベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせることが好ましい。ベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせる方法に関しては、第1の様態の図2および図3の記載を参酌することができる。
次に、半導体基板110を、脆化領域112において、半導体層116と半導体基板120とに分離する(図4(D)参照)。これにより、ベース基板100上に絶縁層101および絶縁層114を介して半導体層116が設けられたSOI基板181が得られる。さらに、SOI基板181の半導体層116に平坦化工程等を施すことにより、ベース基板100上に絶縁層101および絶縁層114を介して半導体層118が設けられたSOI基板191が得られる(図4(E)参照)。なお、図4(D)、(E)の工程については、第1の態様の図1(D)、(E)の記載を参酌することができる。
ベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせる際に、ベース基板100と半導体基板110の少なくとも一方を加熱することにより、貼り合わせが急速に進むことを抑制できる。これにより、貼り合わせ界面において、気体やパーティクルが閉じこめられることを抑制できるため、貼り合わせ界面に生じるボイドを低減することができる。また、ベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせる際に、ベース基板100と半導体基板110の少なくとも一方を加熱することにより、貼り合わせ界面に余剰水分が残留することを抑制できる。これにより、加熱処理工程や平坦化工程などの工程において顕在化する、半導体層118の隆起や欠落といった余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減できる。同様に、ベース基板100と半導体基板110との少なくとも一方を加熱した後、冷却した場合であっても、上述の効果が得られる。
開示する発明の一態様により、貼り合わせ不良を十分に低減したSOI基板を作製することができる。また、このようなSOI基板を用いた半導体装置の特性を向上させることができる。
(実施の形態2)
本実施形態では、実施の形態1と異なるSOI基板、およびその作製方法について説明する。
図5は、SOI基板290の構成例を示す斜視図である。SOI基板290は、1枚のベース基板200に複数の半導体層216が設けられている。各半導体層216は絶縁層214を介してベース基板200上に設けられている。
図5および図6を参照して、実施の形態2に係る作製方法について説明する。実施の形態2と実施の形態1の相違は、1枚のベース基板200に複数の半導体層216が設けられている点にある。よって、以下ではこの点について主に説明する。
まず、ベース基板200を用意する。ベース基板200として、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板を用いることが好ましい。マザーガラス基板としては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のサイズの基板が知られている。大面積のマザーガラス基板をベース基板200に用いてSOI基板290を製造することで、SOI基板の大面積化が実現できる。
大面積のマザーガラス基板をベース基板200として用いることで、SOI基板290の大面積化が実現できる。SOI基板290の大面積化が実現すれば、1枚のSOI基板290から多数の液晶パネル等のパネル、またはIC、LSI等のチップを製造することができ、1枚の基板から製造されるパネル数またはチップ数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
なお、上記ベース基板200上に絶縁層を形成してもよい。ベース基板200上に形成する絶縁層については、実施の形態1の図4(A−2)に示す絶縁層101と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
次に、ボンド基板として半導体基板210を複数用意する。本実施の形態において、半導体基板210は所望の大きさ、形状に加工されている。矩形状のベース基板200に貼り合わせること、および縮小投影型露光装置等の露光装置の露光領域が矩形であること等を考慮すると、半導体基板210の形状は矩形であることが好ましい。例えば、矩形状の半導体基板210の長辺の長さは、縮小投影型露光装置の1ショットの露光領域の一辺のn倍(nは任意の正の整数で、n≧1(nは1以上))を満たすように加工することが好ましい。
矩形の半導体基板210は、円形状のバルク半導体基板を切断することで形成することができる。半導体基板210の切断には、ダイサー或いはワイヤソー等の切断装置、レーザー切断、プラズマ切断、電子ビーム切断、その他任意の切断手段を用いることができる。また、半導体基板210として薄片化する前の半導体基板製造用のインゴットを、その断面が矩形になるように直方体状に加工し、この直方体状のインゴットを薄片化することでも、矩形状の半導体基板210を製造することができる。
次に、複数の半導体基板210それぞれに絶縁層214を形成する。その後、複数の半導体基板210それぞれに対してイオンを照射することにより、半導体基板210中に脆化領域を形成する。これらの工程は、実施の形態1の図1(B−1)〜図1(B−3)と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
次に、ベース基板200と複数の半導体基板210の少なくとも一方に、表面処理を行うことが好ましい。表面処理工程は、実施の形態1と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
次に、ベース基板200と複数の半導体基板210を貼り合わせる。具体的には、ベース基板200と半導体基板210とを対向させて、ベース基板200と、半導体基板210に形成された絶縁層214とを貼り合わせる。ベース基板200と複数の半導体基板210とを貼り合わせる方法について、図6を用いて説明する。
まず、ベース基板200を上方に、治具230に載せた半導体基板210を下方に、わずかな間隔(数mm程度)をおいて接近させて配置する。このとき、ベース基板200と、半導体基板210の脆化領域が形成された面を対向させる。また治具230を用いて、半導体基板210をベース基板200に対してわずかに(数度程度)傾けて配置することが好ましい。ベース基板200と半導体基板210の間を接近させ、かつ傾けて配置することで、ベース基板200と半導体基板210の貼り合わせ開始点となる最初の接触点を任意に設定することができ、安定した貼り合わせが可能となる。なお、ベース基板200と半導体基板210の間隔および角度については特に限定されず、貼り合わせに適切な条件を設定すればよい。
次に、ベース基板200の上方にホットプレート240を配置し、ホットプレート240を加熱することにより、ベース基板200を加熱する(図6(A)参照)。ベース基板200の加熱温度は、50℃以上100℃以下、好ましくは、55℃以上95℃以下とする。加熱時間については特に限定されず、ベース基板200が所望の温度になるよう適切な条件を設定すればよい。例えば、180秒間加熱することができる。
なおベース基板200を所望の温度に加熱する場合の、ベース基板200と半導体基板210上の最適な水分量は、ベース基板を貼り合わせる際の温度にして50℃以上100℃以下、好ましくは55℃以上95℃以下である。これは、発明者らの試行錯誤の結果明らかとなった。加熱温度が50℃未満では基板表面に付着した水分が過剰であるため貼り合わせ不良を低減する効果が十分に得られず、また100℃以上では基板表面に付着した水分が不足し、自発的に接合が起こらないためである。
なお、本実施の形態においてはベース基板200を加熱する場合について説明するが、本発明の一態様はこれに限定されない。半導体基板210を加熱してもよいし、ベース基板200と半導体基板210の双方を加熱してもよい。
また、本実施の形態においてはホットプレート240を用いてベース基板を加熱するが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、ハロゲンランプの輻射により加熱してもよい。また、ウェット処理後の乾燥工程において、ベース基板の加熱温度以上の温度の気体を吹きつけることにより加熱を行っても良い。ベース基板の加熱温度以上の温度の気体を吹きつけることにより加熱することで、ウェット処理後の乾燥工程と同時に、基板の加熱を行うことができる。これにより工程を簡略化でき、より好ましい。吹きつける気体の温度は、ベース基板が50℃以上100℃以下、好ましくは55℃以上95℃以下となるよう、適切な条件を設定すればよい。また本実施の形態においてはベース基板200の全面を加熱する場合について説明するが、本発明の一態様はこれに限定されない。ベース基板200のうち、貼り合わせに必要な一部分を加熱してもよい。
次に、所望の温度まで加熱されたベース基板200を押圧することで、ベース基板200の端部と、半導体基板210の端部とを接触させる(図6(B)参照)。また、ピンなどを用いてベース基板200または半導体基板210の一点、たとえばベース基板200の中央を押圧することで、ベース基板200と半導体基板210とを接触させてもよい。接触させた部分からベース基板200と半導体基板210との接合が始まり、その後は自発的に接合が生じて全面におよぶ(図6(C)参照)。
また、加熱されたベース基板200を所望の温度まで冷却してから、半導体基板210と接触させてもよい。この方法については、実施の形態1の図3の記載を参照することができる。ベース基板200の加熱温度は、50℃以上ベース基板200の歪み点未満の温度とする。冷却の温度は100℃以下、好ましくは室温以上95℃以下とする。冷却の方法については特に特定されず、ベース基板200が所望の温度になるよう適切に設定すればよい。本実施例においては、ベース基板を室温で放冷し、室温まで冷却する。
なお熱されたベース基板200を所望の温度まで冷却してから、半導体基板210と接触させる場合の、ベース基板200と半導体基板210上の最適な水分量は、ベース基板を冷却し貼り合わせる際の温度にして100℃以下、好ましくは室温以上95℃以下である。これは、発明者らの試行錯誤の結果明らかとなった。100℃以上では基板表面に付着した水分が不足し、自発的に接合が起こらないことが実験により明らかとなったためである。
本実施の形態では、2つの治具を用いて、2枚の半導体基板210を貼り合わせる様子を示したが、本発明の一態様はこれに限定されない。1つの治具を用いて複数の半導体基板210を順次貼り合わせてもよいし、複数の治具を用いて複数の半導体基板を順次貼り合わせてもよい。3つ以上の治具を用いて複数の半導体基板210を貼り合わせる場合には、一度に3つ以上の半導体基板210を貼り合わせることもできる。
次に、加熱処理を行うことにより、半導体基板210を、脆化領域において、半導体層216と半導体基板210とに分離する。これにより、ベース基板200上に複数の半導体層216が設けられたSOI基板290が得られる。この工程は実施の形態1と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
その後、複数の半導体層216に欠陥低減処理や、平坦性処理、薄膜化工程等を施すことができる。この工程は実施の形態1と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
一枚のベース基板200と複数の半導体基板210とを貼り合わせる場合、複数の半導体基板210のそれぞれの外周部にボイドが発生することや、余剰水分に起因する貼り合わせ不良が生じることは、生産性の面で大きな問題となる。しかし、ベース基板200と半導体基板210とを貼り合わせる際に、ベース基板200と半導体基板210の少なくとも一方を加熱することにより、貼り合わせが急速に進むことを抑制できる。これにより、貼り合わせ界面において、気体やパーティクルが閉じこめられることを抑制できる。このため、貼り合わせ界面に生じるボイドを低減できる。また、ベース基板200と半導体基板210とを貼り合わせる際に、ベース基板200と半導体基板210の少なくとも一方を加熱することにより、貼り合わせ界面に余剰水分が残留することを抑制できる。これにより、加熱処理工程や平坦化工程などの工程において、半導体層216の隆起や欠落といった余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減できる。以上により、貼り合わせ不良を低減させることにより、一枚のベース基板200と複数の半導体基板210とを貼り合わせる場合において、生産性を向上させることができる。
開示する発明の一態様により、貼り合わせ不良を十分に低減したSOI基板を作製することができる。また、このようなSOI基板を用いた半導体装置の特性を向上させることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、図7乃至図9を参照して、上記実施の形態における半導体装置の作製方法の詳細について説明する。ここでは、半導体装置の一例として複数のトランジスタからなる半導体装置の作製方法について説明する。以下において示すトランジスタを組み合わせて用いることで、様々な半導体装置を形成することができる。
図7(A)は、実施の形態1および2に示す方法で作製したSOI基板の一部を示す断面図である(例えば、図1(E)等参照)。
半導体層700(図1(E)における半導体層118に対応)には、TFTのしきい値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物や、リン、砒素などのn型不純物を添加しても良い。不純物を添加する領域、および添加する不純物の種類は、適宜変更することができる。例えば、nチャネル型TFTの形成領域にp型不純物を添加し、pチャネル型TFTの形成領域にn型不純物を添加する。上述の不純物を添加する際には、ドーズ量が1×1015ions/cm2以上1×1017ions/cm2以下程度となるように行えばよい。
その後、半導体層700を島状に分離して、半導体層702、および半導体層704を形成する(図7(B)参照)。
次に、半導体層702と半導体層704を覆うように、ゲート絶縁膜706を形成する(図7(C)参照)。ここでは、プラズマCVD法を用いて、酸化シリコン膜を単層で形成することとする。酸化シリコン以外にも、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ガリウム等を含む膜を、単層構造または積層構造で形成することによりゲート絶縁膜706としても良い。
プラズマCVD法以外の作製方法としては、スパッタリング法や、高密度プラズマ処理による酸化または窒化による方法が挙げられる。高密度プラズマ処理は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などガスの混合ガスを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体層の表面を酸化または窒化することにより、1nm以上20nm以下、望ましくは2nm以上10nm以下の絶縁膜を半導体層に接するように形成する。
上述した高密度プラズマ処理による半導体層の酸化または窒化は固相反応であるため、ゲート絶縁膜706と半導体層702、半導体層704との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また、高密度プラズマ処理により半導体層を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また、半導体層が単結晶であるため、高密度プラズマ処理を用いて半導体層の表面を固相反応で酸化させる場合であっても、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。このように、高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜をトランジスタのゲート絶縁膜の一部または全部に用いることで、特性のばらつきを抑制することができる。
または、半導体層702と半導体層704を熱酸化させることで、ゲート絶縁膜706を形成するようにしても良い。このように、熱酸化を用いる場合には、ある程度の耐熱性を有するガラス基板を用いることが必要である。
なお、水素を含むゲート絶縁膜706を形成し、その後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行うことで、ゲート絶縁膜706中に含まれる水素を半導体層702および半導体層704中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁膜706として、プラズマCVD法を用いた窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを用いるとことができる。なお、プロセス温度は350℃以下とすると良い。このように、半導体層702および半導体層704に水素を供給することで、半導体層702中、半導体層704中、ゲート絶縁膜706と半導体層702の界面、およびゲート絶縁膜706と半導体層704の界面における欠陥を効果的に低減することができる。
次に、ゲート絶縁膜706上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、半導体層702の上方に電極708を、半導体層704の上方に電極710を形成する(図7(D)参照)。導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることができる。導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等の材料を用いて形成することができる。また、上記金属を主成分とする合金材料を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体に導電性を付与する不純物元素をドーピングした多結晶シリコンなど、半導体材料を用いて形成しても良い。
本実施の形態では電極708および電極710を単層の導電膜で形成しているが、開示する発明の一態様に係る半導体装置は該構成に限定されない。電極708および電極710は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。2層構造とする場合には、例えば、モリブデン膜、チタン膜、窒化チタン膜等を下層に用い、上層にはアルミニウム膜などを用いればよい。3層構造の場合には、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造や、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜の積層構造などを採用するとよい。
なお、電極708および電極710を形成する際に用いるマスクは、酸化シリコンや窒化酸化シリコン等の材料を用いて形成してもよい。この場合、酸化シリコン膜や窒化酸化シリコン膜等をパターニングしてマスクを形成する工程が加わるが、これらの材料を用いたマスクでは、レジスト材料を用いたマスクと比較してエッチング時における膜減りが少ないため、より正確な形状の電極708および電極710を形成することができる。また、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極708および電極710を形成しても良い。ここで、液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を吐出または吹出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
また、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節し、所望のテーパー形状を有するように電極708および電極710を形成することもできる。また、テーパー形状は、マスクの形状によって制御することもできる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素、四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄、弗化窒素などのフッ素系ガス、または酸素などを適宜用いることができる。
次に、電極708および電極710をマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を半導体層702、半導体層704に添加する(図8(A)参照)。本実施の形態では、半導体層702にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を、半導体層704にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する。なお、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。または、半導体層702および半導体層704に、p型を付与する不純物元素またはn型を付与する不純物元素の一方を添加した後、一方の半導体層のみに、より高い濃度でp型を付与する不純物元素またはn型を付与する不純物元素の他方を添加するようにしても良い。上記不純物の添加により、半導体層702に不純物領域712、半導体層704に不純物領域714が形成される。
次に、電極708の側面にサイドウォール716を、電極710の側面にサイドウォール718を形成する(図8(B)参照)。サイドウォール716およびサイドウォール718は、例えば、ゲート絶縁膜706、電極708および電極710を覆うように新たに絶縁膜を形成し、異方性エッチングにより該絶縁膜を部分的にエッチングすることで形成することができる。なお、上記の異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜706を部分的にエッチングしても良い。サイドウォール716およびサイドウォール718を形成するための絶縁膜としては、プラズマCVD法やスパッタリング法等を用いて、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、有機材料などを含む膜を、単層構造または積層構造で形成すれば良い。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化シリコン膜をプラズマCVD法によって形成する。また、エッチングガスとしては、CHF3とヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール716およびサイドウォール718を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次に、ゲート絶縁膜706、電極708および電極710、サイドウォール716およびサイドウォール718をマスクとして、半導体層702、半導体層704に一導電型を付与する不純物元素を添加する(図8(C)参照)。なお、半導体層702、半導体層704には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。ここで、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。
上記不純物元素の添加により、半導体層702に、一対の高濃度不純物領域720と、一対の低濃度不純物領域722と、チャネル形成領域724とが形成される。また、上記不純物元素の添加により、半導体層704に、一対の高濃度不純物領域726と、一対の低濃度不純物領域728と、チャネル形成領域730とが形成される。高濃度不純物領域720、高濃度不純物領域726はソースまたはドレインとして機能し、低濃度不純物領域722、低濃度不純物領域728はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
なお、半導体層702上に形成されたサイドウォール716と、半導体層704上に形成されたサイドウォール718は、キャリアが移動する方向(いわゆるチャネル長に平行な方向)の長さが同じになるように形成しても良いが、異なるように形成しても良い。例えば、pチャネル型トランジスタとなる半導体層704上のサイドウォール718は、nチャネル型トランジスタとなる半導体層702上のサイドウォール716よりも、キャリアが移動する方向の長さが長くなるように形成すると良い。pチャネル型トランジスタにおいて、サイドウォール718の長さをより長くすることで、ボロンの拡散による短チャネル効果を抑制することができるため、ソースおよびドレインに高濃度のボロンを添加することが可能となる。これにより、ソースおよびドレインを十分に低抵抗化することができる。
ソースおよびドレインをさらに低抵抗化するために、半導体層702および半導体層704の一部をシリサイド化したシリサイド領域を形成しても良い。シリサイド化は、半導体層に金属を接触させ、加熱処理(例えば、GRTA法、LRTA法等)により、半導体層中の珪素と金属とを反応させて行う。シリサイド領域としては、コバルトシリサイドまたはニッケルシリサイドを形成すれば良い。半導体層702や半導体層704が薄い場合には、半導体層702、半導体層704の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いることができる金属材料としては、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等が挙げられる。また、レーザー光の照射などによってもシリサイド領域を形成することができる。
上述の工程により、nチャネル型トランジスタ732およびpチャネル型トランジスタ734が形成される。なお、図8(C)に示す段階では、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜は形成されていないが、これらのソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜を含めてトランジスタと呼ぶこともある。
次に、nチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734を覆うように絶縁膜736を形成する(図8(D)参照)。絶縁膜736は必ずしも設ける必要はないが、絶縁膜736を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がnチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734に侵入することを防止できる。具体的には、絶縁膜736を、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどの材料を用いて形成するのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の窒化酸化シリコン膜を、絶縁膜736として用いる。この場合、上述の水素化の工程は、該窒化酸化シリコン膜形成後に行っても良い。なお、本実施の形態においては、絶縁膜736を単層構造としているが、積層構造としても良いことはいうまでもない。例えば、2層構造とする場合には、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜との積層構造とすることができる。
次に、nチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734を覆うように、絶縁膜736上に絶縁膜738を形成する。絶縁膜738は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いて形成するとよい。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることもできる。ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、芳香族炭化水素から選ばれる一を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜738を形成しても良い。
絶縁膜738の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
次に、半導体層702と半導体層704の一部が露出するように絶縁膜736および絶縁膜738にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して半導体層702に接する導電膜740および導電膜742と、半導体層704に接する導電膜744および導電膜746を形成する(図9(A)参照)。導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、トランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する。なお、本実施の形態においては、コンタクトホール開口時のエッチングに用いるガスとしてCHF3とヘリウムの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることができる。また、上記材料を主成分とする合金を用いても良いし、上記材料を含む化合物を用いても良い。また、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
アルミニウムを主成分とする合金の例としては、アルミニウムを主成分として、ニッケルを含むものを挙げることができる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方を含むものを挙げることができる。アルミニウムやアルミニウムシリコン(Al−Si)は抵抗値が低く、安価であるため、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746を形成する材料として適している。特に、アルミニウムシリコンは、パターニングの際のレジストベークによるヒロックの発生を抑制することができるため好ましい。また、珪素の代わりに、アルミニウムに0.5%程度の銅(Cu)を混入させた材料を用いても良い。
導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746を積層構造とする場合には、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造などを採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物などを用いて形成された膜である。バリア膜の間にアルミニウムシリコン膜を挟むように導電膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより一層防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、半導体層702と半導体層704上に薄い酸化膜が形成されていたとしても、バリア膜に含まれるチタンが該酸化膜を還元し、導電膜740および導電膜742と半導体層702とのコンタクト、導電膜744および導電膜746と半導体層704とのコンタクトを良好なものとすることができる。また、バリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電膜740乃至導電膜746を、下層からチタン、窒化チタン、アルミニウムシリコン、チタン、窒化チタンのように、5層構造またはそれ以上の積層構造とすることもできる。
また、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746として、六フッ化タングステンガスとシランガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いても良い。また、六フッ化タングステンを水素還元して形成したタングステンを、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746として用いても良い。
なお、導電膜740および導電膜742はnチャネル型トランジスタ732の高濃度不純物領域720に接続されている。導電膜744および導電膜746はpチャネル型トランジスタ734の高濃度不純物領域726に接続されている。
上述のシリサイド領域の形成工程、ゲート絶縁膜706形成工程等のSOI基板190が高温になる工程では、貼り合わせ界面に余剰水分が存在すると、半導体層118または半導体層216の隆起や欠落といった貼り合わせ不良が生じるおそれがある。半導体層118または半導体層216が隆起した部分にnチャネル型トランジスタ732またはpチャネル型トランジスタ734を形成した場合、その特性および信頼性は平坦である場合に比べて低下してしまう。しかし、ベース基板200と半導体基板210とを貼り合わせる際に、ベース基板200と半導体基板210の少なくとも一方を加熱することにより、貼り合わせ界面に余剰水分が残留することを抑制することができる。これにより、SOI基板190が高温になる工程において、半導体層216の隆起や欠落といった余剰水分に起因する貼り合わせ不良を低減できる。これにより、nチャネル型トランジスタ732またはpチャネル型トランジスタ734の特性および信頼性を向上させることができる。
図9(B)に、図9(A)に示したnチャネル型トランジスタ732およびpチャネル型トランジスタ734の平面図を示す。ここで、図9(B)のA−Bにおける断面が図9(A)に対応している。ただし、図9(B)においては、簡単のため、絶縁膜736、絶縁膜738、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746等を省略している。
なお、本実施の形態においては、nチャネル型トランジスタ732とpチャネル型トランジスタ734が、それぞれゲート電極として機能する電極を1つずつ有する場合(電極708、電極710を有する場合)を例示しているが、開示する発明の一態様は該構成に限定されない。トランジスタは、ゲート電極として機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
本実施の形態では、貼り合わせ不良を十分に低減したSOI基板を用いているため、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。なお、本実施の形態で示した構成は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合について、図10を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、上述の半導体装置を適用する場合について説明する。
図10(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体601、筐体602、表示部603、キーボード604などによって構成されている。表示部603には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。また、筐体601と筐体602の少なくとも一の内部には駆動回路が設けられており、駆動回路には実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。そのため、特性が向上され、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
図10(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体611には、表示部613と、外部インターフェイス615と、操作ボタン614等が設けられている。また、携帯情報端末を操作するスタイラス612などを備えている。表示部613には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。また、本体611内には駆動回路が設けられており、駆動回路には実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。そのため、特性が向上され、信頼性の高い携帯情報端末が実現される。
図10(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍620であり、筐体621と筐体623の2つの筐体で構成されている。筐体621および筐体623には、それぞれ表示部625および表示部627が設けられている。筐体621と筐体623は、軸部637により接続されており、該軸部637を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体621は、電源631、操作キー633、スピーカー635などを備えている。表示部627には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。また、筐体621、筐体623の少なくとも一の内部には駆動回路が設けられており、駆動回路には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。そのため、特性が向上され、信頼性の高い電子書籍が実現される。
図10(D)は、携帯電話機であり、筐体640と筐体641の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体640と筐体641は、スライドし、図10(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、筐体641は、表示パネル642、スピーカー643、マイクロフォン644、操作キー645、ポインティングデバイス646、カメラ用レンズ647、外部接続端子648などを備えている。また、筐体640は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル649、外部メモリスロット650などを備えている。また、アンテナは、筐体641に内蔵されている。表示パネル642には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。また、筐体640と筐体641の少なくとも一の内部には駆動回路が設けられており、駆動回路には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。そのため、特性が向上され、信頼性の高い携帯電話機が実現される。
図10(E)は、デジタルカメラであり、本体661、表示部667、接眼部663、操作スイッチ664、表示部665、バッテリー666などによって構成されている。表示部665には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。また、本体661内には駆動回路が設けられており、駆動回路には実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。そのため、特性が向上され、信頼性の高いデジタルカメラが実現される。
図10(F)は、テレビジョン装置670であり、筐体671、表示部673、スタンド675などで構成されている。テレビジョン装置670の操作は、筐体671が備えるスイッチや、リモコン操作機680により行うことができる。表示部673には、実施の形態3に示す半導体装置が設けられている。また、筐体671およびリモコン操作機680の内部には駆動回路が設けられており、駆動回路には実施の形態3に示す半導体装置が搭載されている。そのため、特性が向上され、信頼性の高いテレビジョン装置が実現される。
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、特性が向上され、信頼性の高い電子機器が実現される。
本実施例では、半導体基板とベース基板との貼り合わせ界面(基板中心部、ここではシリコン層の縁から5mmまでの範囲を除外した部分)における貼り合わせ不良の数を測定した結果について説明する。
まず、半導体基板として126.6mm×126.6mmのシリコン基板を用意した。シリコン基板に熱酸化処理により酸化シリコン膜を100nm形成した。次に、酸化シリコン膜が形成されたシリコン基板中に、酸化シリコン膜を通して水素イオンをドーピングし、脆化領域を形成した。水素イオンのドーピングの条件は、加速電圧を50keVとし、ドーズ量を2.7×1016ions/cm2とし、ビーム電流密度を6.35μA/cm2として行った。
次に、ベース基板として320mm×400mmガラス基板を用意した。次に、ガラス基板およびシリコン基板に表面処理を行った。ガラス基板の表面処理には、ドライ処理として、線状光源のXeエキシマUVランプのスキャン照射を10mm/秒で行った。その後、ウェット処理として、アルカリ系洗浄剤を用いたブラシ洗浄と、2流体洗浄(純水を空気とともに吹きつける方法)を行った。その後、気体を吹きつけてガラス基板を乾燥させた。シリコン基板の表面処理には、ドライ処理として線状光源のXeエキシマUVランプのスキャン照射を10mm/秒で行った。その後、ウェット処理として、アルカリ系洗浄剤を用いたメガソニック洗浄を行った。その後、IPAによる乾燥(水をイソプロピルアルコールの蒸気で置換する方法)でシリコン基板を乾燥させた。
次に、ガラス基板の表面処理がされた面と、シリコン基板の脆化領域が形成され表面処理がされた面と、を対向させて配置し、ガラス基板をホットプレートにより加熱した。加熱条件として、60℃に加熱(条件A:シリコン基板4枚)、90℃に加熱(条件B:同4枚)、60℃に加熱後室温まで冷却(条件C:同2枚)、90℃に加熱後室温まで冷却(条件D:同1枚)、の4つを設定し、ガラス基板の貼り合わせる部分を180秒間加熱した。また、比較例として、ガラス基板を加熱しない条件(条件E:同4枚)も設定した。
次に、条件Aおよび条件Bについては、所望の温度に加熱されたガラス基板と、シリコン基板とを対向させて、ガラス基板を押圧することで、ガラス基板とシリコン基板の端部とを接触させた。この接触により、ガラス基板とシリコン基板との自発接合を生じさせ、ガラス基板とシリコン基板とを貼り合わせた。また、条件Cおよび条件Dについては、ガラス基板を所望の温度に加熱した後、冷却した。その後、ガラス基板とシリコン基板とを対向させて、ガラス基板を押圧することで、ガラス基板とシリコン基板の端部とを接触させた。この接触により、ガラス基板とシリコン基板との自発接合を生じさせ、ガラス基板とシリコン基板とを貼り合わせた。条件Eについては、ガラス基板は室温のまま、ガラス基板とシリコン基板とを対向させて、ガラス基板を押圧することで、ガラス基板とシリコン基板の端部とを接触させた。この接触により、ガラス基板とシリコン基板との自発接合を生じさせ、ガラス基板とシリコン基板とを貼り合わせた。
次に、全ての貼り合わされたガラス基板とシリコン基板に加熱処理を行い、貼り合わせを強固にした後、脆化領域においてシリコン基板を分離した。これにより、ガラス基板上に酸化シリコン膜を介してシリコン層が設けられたSOI基板を得た。加熱処理は、貼り合わせを強固にする目的で200℃、2時間行い、その後分離する目的で600℃、2時間行った。
次に、上記により得られたSOI基板にレーザー光を照射した。レーザー光のレーザー発振器として、XeClエキシマレーザー(波長:308nm、繰り返し周波数:30Hz)を用いた。レーザー光の照射は、光学系により断面を線状に整形し、線状のレーザー光の走査速度を0.5mm/秒、ビームショット数を約20ショットとし、室温にて窒素ガスをSOI基板に吹き付けながら行った。
次に、上記により得られたSOI基板の貼り合わせ不良について顕微鏡で観察した。具体的には基板中心部、ここではシリコン層の縁から5mmまでの範囲を除外した部分116.6mm×116.6mmにおいて、シリコン層の隆起、シリコン層や酸化シリコン膜の欠落などの貼り合わせ不良について観察した。
図11に、貼り合わせ不良の数を測定した結果を示す。図11中の白四角形は各試料の不良数を示し、黒四角形は各条件における不良数の平均値を示す。
図11に示すように、ガラス基板を60℃に加熱(条件A)、および90℃に加熱(条件B)することにより、加熱しない場合(条件E)と比較して、貼り合わせ不良を低減することができた。また、ガラス基板を60℃に加熱した後冷却(条件C)、および90℃に加熱した後冷却(条件D)することでも、加熱しない場合(条件E)と比較して、貼り合わせ不良を低減することができた。
以上の結果より、ガラス基板を加熱した後にシリコン基板と貼り合わせることによって(条件Aおよび条件B)、ガラス基板とシリコン基板との貼り合わせ界面における貼り合わせ不良を低減できることが示された。また、ガラス基板を加熱し冷却した後に、シリコン基板と貼り合わせることによっても(条件Cおよび条件D)、ガラス基板とシリコン基板との貼り合わせ界面における貼り合わせ不良を低減できることが示された。
シリコン層の隆起や、シリコン層や酸化シリコン膜の欠落といった貼り合わせ不良は、基板表面の余剰水分や、パーティクル(ゴミ)、気体の閉じ込めなどが要因である。その中でも貼り合わせ界面の余剰水分は、貼り合わせ不良の大きな要因の一である。ガラス基板を加熱することで、またはガラス基板を加熱後冷却することで、ガラス基板表面に付着した水分の一部が気化する。これにより、ガラス基板表面の貼り合わせに必要な水分量を残存させた上で、余剰水分を低減できる。このため、加熱した場合(条件Aおよび条件B)と加熱後冷却した場合(条件Cおよび条件D)において、余剰水分に起因する貼り合わせ不良が減少したと考えられる。
本実施例では、半導体基板とベース基板との貼り合わせ界面(基板の外周部、ここではシリコン層の縁から4mmまでの範囲)における貼り合わせ不良の数を測定した結果について説明する。
まず、半導体基板として126.6mm×126.6mmのシリコン基板を用意した。シリコン基板に熱酸化処理により酸化シリコン膜を100nm形成した。次に、酸化シリコン膜が形成されたシリコン基板中に、酸化シリコン膜を通して水素イオンをドーピングし、脆化領域を形成した。水素イオンのドーピングの条件は、加速電圧を50keVとし、ドーズ量を2.7×1016ions/cm2とし、ビーム電流密度を6.35μA/cm2として行った。
次に、ベース基板として320mm×400mmガラス基板を用意した。次に、ガラス基板およびシリコン基板に表面処理を行った。ガラス基板の表面処理には、ドライ処理として、線状光源のXeエキシマUVランプのスキャン照射を10mm/秒で行った。その後、ウェット処理として、アルカリ系洗浄剤を用いたブラシ洗浄と、2流体洗浄(純水を空気とともに吹きつける方法)を行った。その後、気体を吹きつけてガラス基板を乾燥させた。シリコン基板の表面処理には、ドライ処理として線状光源のXeエキシマUVランプのスキャン照射を10mm/秒で行った。その後、ウェット処理として、アルカリ系洗浄剤を用いたメガソニック洗浄を行った。その後、IPAによる乾燥(水をイソプロピルアルコールの蒸気で置換する方法)でシリコン基板を乾燥させた。
次に、ガラス基板とシリコン基板を、表面処理がされた面を対向させて配置し、ガラス基板をホットプレートで加熱した。加熱条件として、60℃に加熱(条件A:シリコン基板4枚)、90℃に加熱(条件B:同4枚)、60℃に加熱後室温まで冷却(条件C:同2枚)、90℃に加熱後室温まで冷却(条件D:同1枚)、の4つを設定し、ガラス基板の貼り合わせる部分を180秒間加熱した。また、比較例として、ガラス基板を加熱しない条件(条件E:同4枚)も設定した。
次に、ガラス基板とシリコン基板との貼り合わせを行った。本実施例では、貼り合わせ工程において、貼り合わせ時間を計測した。具体的には、ガラス基板とシリコン基板とを対向させ、ガラス基板を押圧することでシリコン基板と接触させてガラス基板とシリコン基板を貼り合わせる方法において、接触によりガラス基板とシリコン基板との貼り合わせが開始した時から、自発的に接合が進み、接合が完了した時までを、ストップウォッチで計測した。貼り合わせ方法は、実施例1と同様に行った。
次に、貼り合わされたガラス基板とシリコン基板に加熱処理を行い、貼り合わせを強固にした後、脆化領域においてシリコン基板を分離した。これにより、ガラス基板上に酸化シリコン膜を介してシリコン層が設けられたSOI基板を得た。加熱処理は、貼り合わせを強固にする目的で200℃、2時間行い、その後分離する目的で600℃、2時間行った。
次に、上記により得られたSOI基板の貼り合わせ不良について顕微鏡で観察した。このとき、基板の外周部(シリコン層の縁から4mmまでの範囲)の貼り合わせ界面において、ガラス基板と酸化シリコン膜の界面には、気体やパーティクルが閉じこめられたことによって生じる貼り合わせ不良(ボイド)が観察された。
図12に、貼り合わせに要した時間と、ボイド数の測定結果について示す。図12中の黒丸は各試料における貼り合わせに要した時間を示し、棒グラフはボイド数を示す。
図12に示すように、ガラス基板を60℃に加熱した条件Aでは、貼り合わせ時間は7.67秒、8.71秒、12.78秒、ボイド数は27個、7個、7個であった。これに対し、ガラス基板を加熱しなかった条件Eでは、貼り合わせ時間は3.49秒、3.4秒、3.92秒、ボイド数は356個、665個、642個であった。
上記の結果から、ガラス基板を60℃に加熱した(条件A)ことにより、ガラス基板を加熱しなかった(条件E)場合と比較して、貼り合わせに時間がかかることが示された。また、ガラス基板を60℃に加熱したことにより、ガラス基板を加熱しなかった場合と比較して、ボイド数が低減することが示された。以上のことから、ガラス基板を加熱することにより、貼り合わせが急速に進むことを抑制し、基板の外周部においてボイドの発生を低減できることが示された。
また、図12に示すように、ガラス基板を90℃に加熱した条件B、ガラス基板を加熱後冷却した条件Cおよび条件Dについても、ガラス基板を加熱しなかった条件Eと比較して、基板の外周部においてボイドの発生を低減できることが示された。
本実施例では、ガラス基板を加熱することで離脱するガラス基板の水(H2O)およびOHを測定した結果を示す。
まず、ベース基板として320mm×400mmガラス基板を用意した。次に、ガラス基板に表面処理を行った。表面処理には、ドライ処理としてXeエキシマUVランプの照射を10mm/秒で行った。その後、ウェット処理としてアルカリ系洗浄剤を用いたブラシ洗浄と、2流体洗浄(純水を空気とともに吹きつける方法)を行った。その後、気体を吹きつけてガラス基板を乾燥させた。
次に、ガラス基板をホットプレートにより加熱した。加熱条件として、60℃に加熱と、90℃に加熱の2つを設定し、180秒間加熱した。また、比較例として加熱なしの条件も設定した。その後加熱したガラス基板、および加熱しなかったガラス基板を10mm×10mmに切り出し、TDS(昇温離脱ガス分光法、Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、離脱するガラス基板の水(H2O)およびOHを測定した。なお、TDS分析とは、試料を真空容器内で加熱し、昇温中に試料から発生するガス成分を四重極質量分析計で検出する分析方法である。検出されるガス成分はm/z(質量/電荷)で区別される。
図13に、TDS分析結果を示す。図13(A)は、m/z=17(OH)におけるTDSスペクトルであり、図13(B)は、m/z=18(主に、H2O)におけるTDSスペクトルである。図13中に矢印を用いて、60℃に加熱したガラス基板、90℃に加熱したガラス基板、加熱しなかったガラス基板の測定結果と、試料なしで測定した結果を示す。
図13(A)(B)に示すように、60℃に加熱した基板および90℃に加熱したガラス基板は、加熱していないガラス基板と比較して、脱離する水(H2O)およびOHが減少していることがわかる。
上記の結果から、ガラス基板を加熱することによりガラス基板表面に付着した水分量が低減されることが示された。これは実施例1に示した、ガラス基板の加熱によりガラス基板表面の余剰水分が低減され、貼り合わせ不良が低減される効果を裏付けるものである。また実施例2に示した、ガラス基板の加熱により基板外周部のボイドが低減される効果を裏付けるものである。